説
一
切
有
部
に
お
け
る
静
慮
阿
部
真
也
仏 教 に お け る 禅 定 に つ い て は 、 こ れ ま で に 多 く の 研 究 が あ る 。(1) 本 論 考 は 、 そ れ ら に 多 く の 示 唆 を 受 け つ つ 、 特 に 説 一 切 有 部 論 書 に み ら れ る 四 静 慮 ( 四 禅 ) に つ い て 考 察 を 加 え る も の で あ る 。 資 料 と し て は 、 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ 、 ﹃ 婆 沙 論 ﹄ 、 ﹃ 順 正 理 論 ﹄ を 中 心 と す る 。(2) 禅 定 の 体 系 と し て は 、 八 等 至 、 九 次 第 定 が 有 名 で あ る 。 四 静 慮 、 四 無 色 定 を 合 わ せ て 八 等 至 、 さ ら に 、 滅 尽 定 を 加 え て 九 次 第 定 と す る も の で あ る 。 こ の 三 つ が 、 元 々 は 別 々 に 説 か れ て い た こ と は こ れ ま で に も 指 摘 さ れ て い て 、 明 ら か な こ と で あ る 。 ま ず 、 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ を 中 心 に 四 静 慮 に つ い て ま と め て お く こ と に す る 。 有 部 に お い て は 、 三 界 と 禅 定 の 階 位 が 密 接 に 関 係 し て い て 、 四 静 慮 は 色 界 に 当 た る 。 こ の 結 合 に よ っ て 、 静 慮 を 生 静 慮 と 定 静 慮 の 二 種 に 分 け 、 果 と 因 で あ る 、 と す る 。 前 者 が 色 界 の 諸 天 の 住 む 階 層 で あ り 、 後 者 が 静 慮 の 境 地 の 段 階 で あ る 。 生 静 慮 に つ い て は 、 世 間 品 に 諸 天 の 名 を 挙 げ て 解 説 を 加 え て い る ( ) 。 詳 し い 記 述 が あ る ﹃ 順 正 理 論 ﹄ か ら 見 る こ と に す る 。 第 一 靜 慮 庭 有 三 者 、 一 梵 衆 天 、 二 梵 輔 天 、 三 大 梵 天 。 第 二 靜 慮 處 有 三 者 、 一 少 光 天 、 無 量 光 天 、 三 極 光 淨 天 。 第 三 靜 慮 威 有 三 者 、 一 少 淨 天 、 二 無 量 淨 天 、 三 遍 淨 天 。 第 四 靜 慮 處 有 八 者 、 一 無 雲 天 、 二 福 生 天 、 三 廣 果 天 、并 五 淨 居 處 合 成 八 。 五 淨 居 者 、 一 無 繁 天 、 二 無 熱 天 、 三 善 現 天 、 四 善 見 天 、 五 色 究 竟 天 。 廣 善 所 生 故 名 爲 梵 。 此 梵 即 大 、 故 名 大 梵 。 由 彼 獲 得 中 間 定 故 、 最 初 生 故 、 最 後 歿 故 、 威 徳 等 勝 故 、 名 爲 大 。 大 梵 所 有 、 所 化 、 所 領 、 故 名 梵 衆 。 於 大 梵 前 、 行 列 侍 衞 故 、 名 梵 輔 。 自 地 天 内 光 明 最 小 故 、 名 少 光 。 光 明 轉 勝 量 難 測 故 、 名 無 量 光 。 淨 光 遍 照 自 地 處 故 、 名 極 光 淨 。 意 地 受 樂 説 名 爲 淨 。 於 自 地 中 此 淨 最 劣 故 、名 少 淨 。 此 淨 轉 増 量 難 測 故 、 名 無 量 淨 。 此 淨 周 普 故 、 名 遍 淨 。 意 顯 更 無 樂 能 過 此 。 以 下 空 中 天 所 居 地 、 如 雲 密 合 故 、 説 名 雲 。 此 上 諸 天 、 更 無 雲 地 。 在 無 雲 首 故 、 説 無 雲 。 更 有 異 生 勝 福 方 所 可 往 生 故 、 説 名 福 生 。 居 在 方 所 、 異 生 果 中 此 最 殊 勝 故 、 名 廣 果 。 離 欲 諸 聖 、 以 聖 道 水 、 濯 煩 惱 垢 故 、 名 爲 淨 。 淨 身 所 止 故 、 名 淨 居 。 或 住 於 此 、 窮 生 死 邊 、 如 還 債 盡 故 、 名 爲 淨 、 印 度 學 佛 教 學 研 究 第 五 十 五 巻 第 二 号 平 成 十 九 年 三 月 一 一説 一 切 有 部 に お け る 静 慮 (阿 部 ) 一 二 淨 者 所 住 故 、 名 淨 居 。 或 此 天 中 、 無 異 生 雜 。 純 聖 所 止 故 、 名 淨 居 。 繁 謂 繁 雜 。 或 謂 繁 廣 。 無 繁 雜 中 此 最 初 故 、 繁 廣 天 中 此 最 劣 故 、 説 名 無 繁 。 或 名 無 求 。 不 求 趣 入 無 色 界 故 。 已 善 伏 除 雜 脩 靜 慮 上 中 品 障 、 意 樂 調 柔 、 離 諸 熱 惱 故 、 名 無 熱 。 或 令 下 生 煩 惱 名 熱 。 此 初 離 遠 、 得 無 熱 名 。 或 復 熱 者 、 熾 盛 爲 義 。 謂 上 品 脩 靜 慮 及 果 、 此 猶 未 證 故 、 名 無 熱 。 已 得 上 品 雜 修 靜 慮 、 果 徳 易 彰 故 、 名 善 見 。 雜 修 定 障 、 餘 品 至 微 見 、 極 清 徹 故 、 名 善 見 。 更 無 有 處 於 有 色 中 能 過 於 此 、 名 色 究 竟 。 或 此 已 到 衆 苦 所 依 身 最 後 邊、 名 色 究 竟 。 有 言 色 者 、 是 積 集 色 。 至 彼 後 邊 、 名 色 究 竟 。 此 十 七 處 、 諸 器 世 間 、并 諸 有 情 、總 名 色 界 。 ( ) 列 挙 し て い る 天 の 名 、 数 に つ い て は ﹃ 倶 舎 論 ﹄ と ほ ぼ 一 致 す る 。 た だ 、 第 四 静 慮 の 無 繁 天 以 下 を 五 淨 居 處 と し て ま と め て い る 点 が 異 な っ て い る 。 し か し 、 続 く 天 の 名 に つ い て の 説 明 は ﹃ 倶 舎 論 ﹄ に は な い も の で あ る 。 た だ し 、 ﹃ 称 友 疏 ﹄ に は そ の 説 明 が あ り 、 一 致 す る 記 述 も あ る 。 初 静 慮 の 諸 天 の 名 は 、 梵 の 語 で ま と め ら れ る 。 善 よ り 生 ず る 所 で あ る か ら だ 、 と あ る 。 第 二 静 慮 の 名 に は 、 光 の 語 が あ る 。 光 の 量 に よ っ て 三 分 さ れ る 。 第 三 静 慮 の 名 は 、 浄 の 語 で ま と め ら れ る 。 意 地 の 楽 を こ こ で は 浄 と す る と あ り 、 そ の 段 階 に よ っ て 名 付 け て い る 。 第 四 静 慮 の 名 は 、 特 に 統 一 さ れ て は い な い 。 五 淨 居 に つ い て は 、 聖 者 の み が 住 す る 所 で あ る か ら だ 、 と す る 。 こ れ ら の 生 静 慮 に つ い て の 記 述 に は 、 定 静 慮 と 関 連 し て く る も の が ほ と ん ど な く 、 も と も と 別 の も の で あ っ た こ と が 分 る 。 定 静 慮 に つ い て は ﹃ 倶 舎 論 ﹄ 定 品 に 記 述 が あ り 、 そ れ を 中 心 と し て 以 下 に 述 べ る こ と に す る 。 そ こ で は 、 四 静 慮 の 内 容 に つ い て 様 々 に 説 か れ て い る 。 最 初 に 、 静 慮 の 自 性 に つ い て 見 て い く 。 次 の よ う な 文 が あ る 。 ﹁ 静 慮 は 善 心 の 一 境 性 ( ) で あ る 。 三 昧 ( ) を 自 性 ( ) と す る か ら で あ る 。 ﹂ ( ) 既 に 指 摘 さ れ て き て い る こ と で あ る が 、 静 慮 の 原 語 は で あ り 、 四 無 色 定 に 使 わ れ る と 明 ら か に 区 別 さ れ て い る 。 そ の の 自 性 を で あ る 、 と す る も の で あ る 。 こ れ に 加 え て 、 ﹁随 伴 す る も の を あ わ せ て ( ) 、 五 蘊 を 自 性 と す る 。 ﹂ ( ) と あ る 。 静 慮 を 修 す る に は 、 他 の 無 数 の 諸 法 な し に は な し え ず 、 そ れ ら を 合 わ せ る な ら ば 五 蘊 を 自 性 と す る 、 と い う も の で あ る 。 ﹃ 順 正 理 論 ﹄ を 見 る と 、 ほ ぼ 同 じ で あ る ( ) 。 し か し 、 ﹃婆 沙 論 ﹄ は 異 な る 説 明 を し て い る 。 ﹁答 各 以 自 地 五 蘊 爲 自 性 。 是 名 静 慮 自 性 我 物 自 體 相 分 本 性 。 ﹂ ( ) た だ 、 五 蘊 を 自 性 と す る 、 と し て い る の み で あ る 。 と こ ろ が 、 他 の 箇 所 を 見 る と 次 の よ う に あ る 。 ﹁修 得 者 。 即 彼 地 攝 心 一 境 性 。 若 并 助 伴 即 五 蘊 性 。 生 得 者 。 隨 地 所 繋 餘 五 蘊 爲 性 。 ﹂ ( ) こ れ を 見 る と 、 前 半 部 分 は ﹃ 倶 舎 論 ﹄ と ﹃ 順 正 理 論 ﹄ と 同 様 で あ る 。 先 に 挙 げ た 引 用 文 は 、 後 半 部 分 の み を 説 い た も の と 思 わ れ る 。 生 静 慮 の 自 性 に
つ い て の 文 で あ ろ う 。(3) こ こ で 、 静 慮 の 自 性 に つ い て 説 く 時 に 重 要 な 項 目 で あ る 一 境 性 ( ) に つ い て 見 て お く こ と に す る 。 こ の 語 は 、 三 昧 と 同 義 語 と し て 使 わ れ て も い る 。 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ で は 問 答 形 式 の 記 述 に な っ て い る( ) 。 ま ず 、 一 境 性 と は 所 縁 を 一 に す る こ と ( ) で あ る 、 と 言 う 。 そ し て 、 世 親 の 説 と し て は 、 一 境 を と る 心 が 三 昧 で あ っ て 、 別 に 心 所 法 を 必 要 と は し な い 、 と す る も の で あ る 。 一 方 、 毘 婆 沙 師 の 説 は 、 心 が 三 昧 な の で は な く 、 心 が 一 境 を と っ て お こ る ゆ え ん で あ る 法 が 三 昧 で あ り 心 一 境 性 で あ る 、 と す る 。 ﹃ 順 正 理 論 ﹄ に は 次 の よ う に あ る 。 ﹁若 依 止 一 所 依 根 。 專 一 所 縁 名 一 境 性 。 ﹂ ( ) 世 親 の 一 境 性 の 説 明 を 修 正 す る も の で あ り 、 毘 婆 沙 師 の 説 を 正 し い と し て い る 。 次 に 、 四 静 慮 の 支 ( ) に つ い て 述 べ よ う 。 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ で は 、 四 静 慮 全 て で 十 八 あ る と す る ( ) 。 初 静 慮 は 尋 ( ) ・ 伺 ()・喜 ( ) ・ 楽 ( ) ・ 心 一 境 性 ( ) の 五 支 が あ る 。 た だ し 、 心 一 境 性 は 支 で も あ る が 静 慮 そ の も の で も あ る 、 と し て 他 の 支 と 区 別 す る 説 と 、 五 支 が 静 慮 で あ る 、 と す る 説 を 続 け て 示 し て い る 。 第 二 静 慮 は 内 等 浄 ( ) ・ 喜 ・ 楽 ・ 心 一 境 性 の 四 支 が あ る 。 こ の 内 、 内 等 浄 に つ い て は 別 に 説 明 を 加 え て い る 。 そ れ は 、 初 静 慮 地 か ら 離 れ る こ と に お い て 生 じ る 深 信 ( ) の こ と で あ る 、 と す る 。 第 三 静 慮 は 捨 ( ) ・ 念 ( ) ・ 慧 ( ) ・ 楽 ( ) ・ 安 住 () の 五 支 が あ る 。 こ れ は 頌 に 挙 げ ら れ た 名 称 で あ る が 、 続 く 解 説 の 部 分 で 、 慧 は 正 慧 ( ) と 言 い 換 え ら れ 、 安 住 は 三 昧 の こ と で あ る 、 と し て い る 。 ま た 、 ﹃ 称 友 疏 ﹄ に よ れ ば 、 捨 は 行 捨 ( ) で あ る と さ れ ( ) 、 心 所 法 と し て の 捨 で あ る こ と が 分 る 。(4) 第 四 静 慮 は 不 苦 不 楽 受 ( ) ・ 捨 清 浄 () ・ 念 清 浄 ( ) ・ 三 昧 の 四 支 で あ る 。 称 友 疏 に よ れ ば 、 捨 清 浄 と は 、 捨 に と っ て の 清 浄 さ で あ る 、 と し て 、 念 清 浄 も 同 様 で あ る 、 と す る () 。 以 上 の 各 支 の 合 計 は 十 八 で あ る が 、 実 質 的 に は 重 な る も の も あ り 、 四 静 慮 全 体 と し て の 支 は 十 一 に な る と 説 明 を 加 え て い る 。 ( ) こ の 説 明 の 中 に は 異 説 も あ り 、 か な り 長 い も の に な る の で 詳 し く は 触 れ な い が 、 簡 潔 に 述 べ る と 次 の 様 で あ る 。 初 静 慮 と 第 二 静 慮 の 喜 ・ 楽 、 第 三 静 慮 と 第 四 静 慮 の 捨 ・ 念 、 お よ び 四 静 慮 全 て の 支 と さ れ る 三 昧 は そ れ ぞ れ 実 質 は 同 じ も の で あ る か ら 、 実 質 的 に は 十 一 と な る 、 と す る も の で あ る 。 こ の 説 の 中 で 、 特 に 楽 の 異 同 が 問 題 に さ れ て い る 。 上 記 の 説 で は 、 初 静 慮 ・ 第 二 静 慮 は 軽 安 の 楽 で あ り 、 第 三 静 慮 に お け る そ れ は 受 の 楽 で あ っ て 別 で あ る と さ れ て い る 。 こ れ に 対 し て 、 三 つ 共 に 身 受 の 楽 で あ る 、 と す る 説 が 挙 げ ら れ る 。 す な わ ち 、 説 一 切 有 部 に お け る 静 慮 (阿 部 ) 一 三
説 一 切 有 部 に お け る 静 慮 (阿 部 ) 一 四 十 と す る 説 で あ る 。 数 に つ い て は ﹃ 婆 沙 論 ﹄ ( ) 、 ﹃ 順 正 理 論 ﹄ ( ) 共 に 一 致 す る 。 こ れ ら の 四 静 慮 各 々 を 区 別 す る 時 に は 尋 ・ 伺・喜 ・ 楽 の 有 無 に よ る と す る ( ) 。 す な わ ち 、 段 階 が 上 が る に つ れ て 減 っ て い く 、 と す る の で あ る 。 し か し 、 前 述 の 十 八 支 の 部 分 と 支 の 内 容 が 少 し 異 な っ て く る 。 違 う 伝 承 に 依 る も の か 、 分 か り や す く す る た め の も の か 、 不 明 で あ る 。 ま た 、 ﹃ 婆 沙 論 ﹄ に は 、 こ の よ う な 記 述 は 見 当 た ら な い 。 ﹃ 順 正 理 論 ﹄ に お い て も 、 簡 単 に 触 れ る だ け で あ る 。 四 静 慮 の 階 位 に つ い て は 、 各 々 を さ ら に 二 分 し て 、 そ れ と は 別 に 、 中 間 静 慮 を 説 く ( ) 。 各 静 慮 地 を 根 本 定 と し て 、 そ れ と は 別 に 根 本 ( ) 定 に 向 う 段 階 を 近 分 ( ) 定 と 呼 ん で い る 。 初 静 慮 の 近 分 に つ い て は 、 特 に 、 未 至 ( ) 定 と 呼 ぶ 。 こ の 近 分 と 根 本 は 四 無 色 定 に も 同 様 に あ る 。 そ し て 、 初 静 慮 と 第 二 静 慮 の 間 に 中 間 静 慮 ( ) を 置 き 、 尋 と 相 応 し て い な い 初 静 慮 の こ と を い う 、(5) と す る 。 そ の 果 と し て は 、 大 梵 と な る こ と を 言 っ て い る 。 こ の 中 間 静 慮 の 位 置 付 け に つ い て は 、 初 静 慮 と 全 く 別 な の か 重 な る の か 、 は っ き り し な い 所 が あ る 。 両 漢 訳 か ら は 別 で あ る と 読 め る が 、 ﹃ 称 友 疏 ﹄ で は 同 じ も の で あ る と さ れ る 。 果 で あ る 大 梵 が 初 静 慮 地 に 属 す る こ と を 考 え る と 、 初 静 慮 と 重 な る よ う に も 考 え ら れ る 。 こ こ ま で 四 静 慮 の 体 系 を 中 心 に 見 て き た が 、 最 後 に 静 慮 の 語 の 意 味 に つ い て 述 べ る こ と に す る 。 ま ず 、 最 も 簡 潔 に ま と め て い る ﹃ 順 正 理 論 ﹄ の 記 述 を 引 用 し て お く 。 依 何 義 故 立 靜 慮 名 。 由 依 此 寂 靜 方 能 審 慮 故 。 審 慮 即 是 實 了 知 義 。 如 説 心 在 定 能 如 實 了 知 。 審 慮 義 中 置 地 界 故 。 此 論 宗 審 慮 定 以 慧 爲 髄 。 依 訓 繹 理 此 是 凝 寂 、 思 度 境 處 得 靜 慮 名 。 定 令 慧 生 。 無 濁 亂 故 。 ( ) 寂 静 に し て 審 慮 す る か ら 静 慮 と 呼 ぶ 、 と す る 。 審 慮 と は 、 よ く 了 知 す る こ と で あ る 、 と 説 明 し て い る 。 つ ま り 、 あ り の ま ま に よ く 知 る 、 と い う こ と で あ る 。 そ し て 、 慧 を そ の 体 と し て い る 。 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ の 記 述 も ほ ぼ 同 じ で あ る 。 ま と め る と 次 の よ う に な る 。 ﹁静 慮 ( ) の 意 味 は 静 思 す る ( ) で あ る 。 す な わ ち 、 了 知 す る ( ) と い う 意 味 で あ る 。 静 思 す る () の 語 根 は 審 慮 ( ) の 意 味 を 持 つ 。 そ し て 、 審 慮 ( ) は 慧 ( ) で あ る 。 ﹂ ( 抄 訳 ) ﹃ 婆 沙 論 ﹄ は 異 な る 説 明 を し て い る 。 諸 説 を 挙 げ る が 、 正 し い 説 と し て は 、 結 を 断 ず る こ と と 良 く 正 観 す る こ と の 二 つ を 備 え た も の が 静 慮 で あ る 、 と い う も の を 採 用 し て い る 。 ( ) さ ら に 、 欲 界 と 無 色 界 と の 比 較 を し て い る 点 が 特 徴 と し て あ る 。 以 上 、 倶 舎 論 を 中 心 に 四 静 慮 に つ い て 見 て き た 。 ま と め る と 次 の よ う に な る 。 ま ず 、 五 蘊 を 体 と す る 生 静 慮 と 三 昧 を 体
と す る 定 静 慮 に 分 け る こ と が で き る 。 た だ し 、 こ の 二 つ は 本 来 別 の も の で あ り 、 深 く 関 連 す る も の で は な い 。 二 つ の 内 、 特 に 定 静 慮 に つ い て 述 べ た 。 自 性 と さ れ る 三 昧 と 同 一 視 す る こ と の 多 い 一 境 性 と い う 概 念 が あ る 。 有 部 の 説 と し て は 、 心 と は 別 に 一 境 を と る ゆ え ん と な る 心 所 法 を 三 昧 と し 、 ま た 心 一 境 性 と す る 。 支 は 十 八 あ り 、 全 体 で 見 る と 実 質 は 十 一 と さ れ る 。 支 の 中 に は 、 心 一 境 性 す な わ ち 三 昧 も 含 ま れ る 。 そ し て 、 四 静 慮 の 階 位 は 、 各 々 を 近 分 と 根 本 に 分 け 八 と し 、 さ ら に 、 初 静 慮 と 第 二 静 慮 の 間 に 中 間 静 慮 を た て て い る 。 有 部 の 他 の 教 理 と 関 連 し て 、 か な り 複 雑 な も の と な っ て い る 。 し か し 、 語 の 原 義 の 記 述 を 見 る と 、 本 来 の 意 味 も 決 し て 失 わ れ て い る わ け で は な い こ と が 分 る 。 有 部 の 教 理 の 複 雑 さ に と ら わ れ 過 ぎ ず に 考 え る こ と が 重 要 で あ る 。 1 池 田 練 太 郎 ﹁色 界 第 四 禅 に つ い て ﹂ (﹃ 印 度 學 佛 教 學 研 究 ﹄ 第 40 巻 第 2 号 ) 、 藤 田 宏 達 ﹁原 始 仏 教 に お け る 禅 定 思 想 ﹂ (﹃ 佐 藤 博 士 古 稀 記 念 仏 教 思 想 論 叢 ﹄ ) 、 金 児 黙 存 ﹁四 禅 説 の 形 成 と そ の 構 造 ﹂ (﹃ 名 古 屋 大 学 文 学 部 研 究 論 集 ﹄ 哲 学 ) 、 吉 瀬 勝 ﹁八 等 至 に つ い て ﹂ (﹃ 花 園 大 学 研 究 紀 要 ﹄ 第 4 号 ) 、 並 川 孝 儀 ﹁初 期 仏 教 に お け る 四 無 色 定 の 成 立 ﹂ (﹃ 印 度 哲 学 仏 教 学 ﹄ 第 14 号 ) 、 宮 地 廓 慧 ﹁禅 定 と 念 仏 ﹂ (﹃ 日 本 佛 教 學 會 年 報 ﹄ 第 41 号 ) 、 玉 城 康 四 郎 ﹁禅 定 か ら 解 脱 へ ﹂ (﹃ 勝 呂 信 靜 博 士 古 稀 記 念 論 文 集 ﹄ ) 等 が あ る 。 2 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ は そ の 漢 訳 は 玄 奘 訳 ・ 真 諦 訳 と も に 大 正 蔵 第 29 巻 を 使 用 。 ﹃ 婆 沙 論 ﹄ は 大 正 蔵 第 27 巻 、 ﹃ 順 正 理 論 ﹄ は 大 正 蔵 第 29 巻 。 ﹃ 称 友 疏 ﹄ は な お 、 ﹃ 倶 舎 論 ﹄ ﹁定 品 ﹂ の 翻 訳 と し て 櫻 部 建 ・ 小 谷 信 千 代 ・ 本 庄 良 文 ﹃ 倶 舎 論 の 原 典 研 究 智 品・ 定 品 ﹄ 二 〇〇 四 年 、 が あ り 、 そ れ に 依 る 所 が 大 き い 。 3 直 前 に ﹃ 品 類 足 論 ﹄ の 引 用 が あ り 、 そ の 影 響 で あ る 可 能 性 も あ る 。 4 玄 奘 訳 、 ﹃ 婆 沙 論 ﹄ 、 ﹃ 順 正 理 論 ﹄ も 行 捨 と し て い る 。 5 櫻 部 訳 参 照 。 ︿ キ ー ワ ー ド ﹀ 説 一 切 有 部 、 静 慮 、 倶 舎 論 、 色 界 、 禅 ( 大 正 大 学 綜 合 佛 教 研 究 所 講 師 ) 説 一 切 有 部 に お け る 静 慮 (阿 部 ) 一 五
Journal of Indian and Buddhist
Studies
Vol. 55, No.3, March
2007
(207)
readings of the Vimalakirtinirdesa than does the Tibetan translation.
96. Dhyana in the Sarvastivada
ABE Shin'ya
This paper contributes to considerations on the four-dhyanas of the
Sarv-dstivdda. Data center on the Abhidharmakosa, Abhidharma-mahavibadsa,
and Abhidharma-nydydusdra. In the Sarvastivdda, the four-dhyanas are
ap-plied to the rupa-dhdtu. In this combination, dhyana is divided into two
sorts, upapattidhydna and samdpattidhydna, cause and effect. Originally
these two seem to have been separate. Now, the essence of dhyana is
samad-hi, and samddhi is cittaikdgratd. Apparently using several terms help clarify
the idea. In order to understand dhyana from a different viewpoint 18
subdi-visions are introduced in the 4 dhydnas. These, it is said, may be subsumed
under eleven. Two levels each are introduced into each dhyana. Overall, it is
a very complicated system. But the meaning of dhyana is abundantly clear.
97. On the Sila of Monastic Bodhisattvas in Early Mahayana Sutras
KAGAWA
Shinji
In earlier Mahayana texts, two types of bodhisattvas are described: firstly,
the lay bodhisattva(在 家 菩 薩)and, secondly, the monastic bodhisattva(出 家
菩 薩).Modern scholarship, however, has not paid as much attention to the
latter as to the former. In this article, we will attempt to show what kind of
person the monastic bodhisattva was seen to be. This will be done through a
comparison with monks(bhiksu)in Buddhist schools using two Mahayana
texts that detail the monastic bodhisattva. In the Jingxing ping(浄 行 品)of the
Huayan jing(華 厳 経), the manner of ordination(upasampada for monastic
bo-dhisattvas is the same as that for monks in Buddhist schools;moral conduct
(sila)too is considered in the same way for both. Thus, it becomes clear that
the monastic bodhisattva is differentiated from the layperson. However, in
the Ugrapariprccha(郁 伽 長 者 所 問 経), it is notable that the sila for the
monas-tic bodhisattva includes the fourfoid attitudes(四 聖 種:caturaryavamsa)and the