最綱彩色の色彩効果
TheColorEffectofUngen‑saishiki
栗 田 美 由 紀
MiyukiKURITA
量綱彩色 の色彩 効果3
は じめに
量 綱 彩 色 とは 、 色 を ぼ か しに よ っ て で は な く、 淡 い 青 、 青 、 濃 い青 と い う ように 淡 い色 か ら濃 い色 へ と段 階 的 に変 化 させ て 色 の階 梯(グ ラデー シ ョ ン)を つ く り、 ま た 、 青 系 量 綱 と赤 系 量 綱 な ど対 照 的 な 色 の 量 綱 を組 み 合 わ せ て 用 い て 、 花 文 や 唐 草 文 、 宝 相 華 文 な どを あ らわ す 装 飾 彩 色 の 一一技 法 で あ る。 わ が 国 へ は 中 国 よ り伝 わ り、奈 良 ・平 安 時 代 を 中 心 に 寺 院 の 堂 塔 の 内 部 装 飾 や 仏 像 、 仏 具 、 仏 画 な ど の彩 色 に さか ん に 用 い られ た 。
量 綱 彩 色 に は 立 体 感 や 多 色 感 と い っ た色 彩 効 果 が あ る こ とは 一 般 に よ く い わ れ て い るが 、 この 色 彩 効 果 と い う点 に つ い て は 、 これ ま で あ ま り論 じ られ て こ なか った 。 本稿 で は 、量 綱 彩 色 の 主 要 な 色彩 効 果 と して 、 立 体 感 ・ リズム感 ・明 るい 多 色 感 ・躍 動 感 ・彩 色 面 全 体 を 緊 張 した もの に 仕 上 げ る 効 果 の五 つ を あ げ 、 奈 良 か ら鎌 倉 時 代 にか け て の作 例 を 中 心 に 、 量 綱 彩 色 に用 い られ た 材 料 お よび 彩 色 技 法 に つ い て整 理 し、 量綱 彩 色 の 色 彩 的 特 徴 を 明 らか にす る こ とで 、 これ ら色 彩 効 果 が ど の よ うに 実 現 され て い るの か 検 討 、考 察 を 試 み る。
1量 綱彩色の材料 と技法
(1)材 料
量 綱 彩 色 に用 い られ た絵 の 具 は 、 ほ とん ど が岩 絵 の 具 で あ り、 基 本 的 に は膠 を接 着 剤 と して用 い る。 量 綱 彩 色 は極 彩 色 とい う言 葉 で も表 現 され 、 非 常 に 多 くの 色 が使 わ れ て い る よ う に感 じ られ る が 、 実 際 の 絵 の 具 の 種 類 は決 して 多 い もの で は な い 。 以 下 、 色 別 に絵 の具 の 種 類 を あ げ る。
赤 色 朱 ・ベ ソガ ラ
朱 は硫 化 水 銀(HgS)を 主 成 分 と し、 奈 良時 代 に は 朱 沙 と も称 され た 。 ベ ソガ ラは天 然 の赤 鉄 鉱 を 原 料 と し、 主 成 分 は酸 化 第 二鉄(Fe203)で あ る。
榿 色 鉛 丹
鉛 丹 の主 成 分 は 四酸 化 三 鉛(Pb,0、)で 、 鉛 を 溶 融 酸 化 して製 造 す る。
黄 色 藤 黄 ・黄 土
藤 黄 は イ ソ ド ・タイ ・中 国 南 部 な ど に 自生 す る海 藤 樹(garcinia科)の 樹 液 を棒 状 に 固 め た もの で 、 膠 は 用 い ず 、 水 にす りお ろ して使 用 す る 。 透
明 な黄 色 を 呈 す るた め 、 白色 の 上 に塗 って 発 色 させ る。 黄 土 の 主 成 分 は 含 水 酸 化 鉄(Fe,03・nH,0)で あ るが 、 この ほ か 多 量 の ア ル ミナ(Al、0,) や 珪酸(SiO2)が 混 ざ る。
緑 色 岩 緑 青 ・白緑 ・草 の 汁
岩 緑 青 の 主 成 分 は塩 基 性 炭 酸 銅(2CuCO,・Cu(OH),)で あ り、 原 料 は 孔 雀 石(マ ラ カ イ ト)で あ る。 岩 緑 青 の粒 子 の 細 か い もの を と くに 白緑 と 呼 び 、 色 は 淡 い 緑 色 を呈 す る。 草 の汁 とは 、 藍 と藤 黄 の 混 色 に よ って 作 ら れ る緑 色 の こ とで あ る。
青 色 岩 群 青 ・白群 ・藍 ・代用 群 青
岩 群 青 は緑 青 と同 じ塩 基 性 炭 酸 銅(2CuCO,・Cu(OH)、)を 主 成 分 とす る。 そ の粒 子 の細 か い もの を 白群 とい い 、 淡 い 青 色 を 呈 す る。 原 料 は藍 銅 鉱(ア ズ ライ ト)で あ り、 非 常 に 高 価 な 絵 の 具 で あ る1)。 藍 は タデ藍 を原 料 と し、 主 成 分 は イ ソ デ ィ ゴ(IndigoC16Hl。0,N、)で あ る 。 代 用 群 青 は 黄 土 を藍 で染 め た 青 色 の 絵 の 具 で 、 高 価 な 岩 群 青 の 代 用 品 と して用 い られ た。
紫 色 エ ソ ジ ・紫 土 ・合 わ せ 紫
エ ソ ジは 姻 子 ・姻 紫 ・嚥 脂 ・燕 脂 な ど と も書 く。 わ が 国 古 代 に お け る エ ソ ジは 、 イ ソ ドや ビル マ に 生 育 す る熱 帯 植 物 に寄 生 す る ラ ック ・カ イ ガ ラ ム シの 色 素(ラ ッカ イ ソ酸)を 抽 出 した もので 、正 倉 院薬 物 帳 の 「紫 鑛 」 が これ に あ た る と考 え られ て い る2)。 大 変 高 価 な絵 の具 で 、透 明 感 の あ る 赤 紫 色 を 呈 す る3)。 紫 土 は 奈 良 時 代 で は紫 色 が か っ た べ ソガ ラを 指 して い た が、 平 安 時代 以 降 、 しだ い に朱 を藍 の混 色 に よる紫 を 意 味 す る よ うに な っ
量綱 彩色の色彩効 果5 た と考 え られ て い る 。 合 わ せ 紫 とは べ ソガ ラと藍 、 エ ン ジ と 白 と藍 な ど の 混 色 に よっ て作 られ た 紫 色 を い う。
白色 白 土 ・鉛 白 ・鉛 系 白色 顔 料
白土 は天 然 に産 す る 白色 粘 土 を 原 料 と して お り、主 体 とな る 粘 土 鉱 物 は カ オ リナ イ ト(Al2si205(oH)、)で あ る。 下 地 と して 多 用 され る。 鉛 白の 主 成 分 は 塩 基 性 炭 酸 鉛(2PbCO、 ・Pb(OH)、)で あ り、 奈 良 時 代 は 胡粉 と 呼 ば れ た 。 ま た 、 鉛 系 白 色 顔 料 に は 塩 化 鉛(PbCl,)、 塩 基 性 塩 化 鉛 (PbOHCI)、 酸 化 塩 化 鉛(Pb,C1(0,0H),‑X・x=0〜0.32)を 主 成 分 と す る もの の三 種 類 が あ る こ とが 確 認 され て い る。
こ の ほ か具 色 と呼 ば れ る もの が あ る。 これ は青 や 赤 な ど各 色 の 色 料 と 白 の混 色 の こ とで 、 白群 具 、 朱 の 具 な ど と呼 ぶ 。
(2)製 作 技 法
量 綱 彩 色 は絵 画 とは 異 な る 彩 色 装 飾 の 一 技 法 で あ り、作 業 の効 率 性 と と もに文 様 や 色彩 に は統 一 性 が あ り、 全 体 に バ ラ ンス の よい もの で あ る こ と が 要 求 さ れ る。 そ の た め に 、 と くに 建 築 装 飾 の 製 作 現 場 で は 、 古 くか ら分 業 制 が と られ て い た こ とが知 られ て い る。
『大 佛 殿 廟 給 書 師作 物 功 銭 帳 』(『 大 日本 古 文 書 』 四 一三 五 三 、 正 倉 院 文 書 続 々修 二 十 六 秩 六 裏書)に は 、 建 築 の 装 飾 彩 色 の工 程 別 の 賃 金 や 各 工 程 に 関 わ った 画工 の名 前 、 仕 事 量 な どに つ い て の記 述 を見 る こ とが で きる 。
同功 銭 帳 に よれ ば 、作 業 は 分 業 制 が と られ 、 工 程 に は塗 白土 ・木 画 ・堺 ・ 彩 色 の 四 段 階 が あ っ た。 塗 白土 とは 白土 を 塗 って 下 地 を整 え る こ と、 木 画 は 念 紙 な ど を用 い て下 描 き線 を つ け る こ と、 堺 は花 文 の輪 郭 を 描 くこ と、
彩 色 は色 を塗 る工 程 を指 して い る と考 え られ て い る4)。
以 下 、 量 綱 彩 色 の製 作 技 法 に つ い て 下 描 き、 彩 色 、輪 郭 線 の 描 き起 こ し の 順 に述 べ る。
下 絵 つ け ・下 描 き
彩 色 面 に 白土 な どで 下地 を 施 した あ と、 図 様 の 下 描 きを 行 う。 この下 描 き に は多 くの場 合 、捻 紙 の よ うな 型 が使 わ れ た もの と考 え られ る。 捻 紙 と は念 紙 と も書 き 、 図様 を 描 い た 面 の 裏 側 に ベ ソ ガ ラ な ど を塗 っ た もの で 、 図様 を ヘ ラな ど で な ぞ って 彩 色 面 に 転 写 す る型 紙 を い う。 この捻 紙 の使 用 が確 認 さ れ て い る作 例 と して は 、 法 隆 寺 金 堂 壁 画 や 薬 師 寺 三 重 塔 初 重 堂 天 井 画 、唐 招 提 寺 金 堂 天 井 画 、 醍 醐 寺 五 重 塔 堂 内装 飾 、興 福 寺 北 円 堂 の 笈 形 文 な ど が あ げ られ る5)。 ま た 、 室 生 寺 金 堂 文 殊 菩 薩 立 像 の板 光 背 や 当麻 寺 本 堂板 光背 に も文 様 に 沿 って ヘ ラな どで つ け られ た と思 わ れ る 刻 線 が 確 認 され て お り6)、 こ れ らの 製 作 に あ た って も型 紙 が 使 用 され た の で あ ろ う。
この捻 紙 の遺 例 と考 え られ て い るの が 、 正 倉 院 の 「造 花 様 」 と呼 ば れ る 宝 相 華 を 描 い た 版 画 で あ る。 これ は 紙 本 木 版 、裏 に は べ ソ ガ ラが 塗 られ 、 輪 郭 を ヘ ラ形 の もので 圧 した 痕跡 が 見 られ る とい う。 また 、図 中 に は 「六 」 、
「白六 」 、 「子 」 な どの 文 字 が あ り、 そ れ ぞ れ緑 青 、 白緑 、 紫 土 とい っ た 絵 の 具 を 指 定 して い る もの と考 え られ て い る7)。
この よ うな 型 紙 に よ って つ けた 線 の上 を 、黒 や赤 の 線 で 描 き起 こ して 下 描 き とす る場 合 が 多 い が 、 こ の描 き起 こ し線 を そ の ま ま 輪 郭 線 とす る もの もあ る。 この よ う な下 描 き線 を塗 り残 して輪 郭 線 とす る例 と して は 、唐 招 提 寺 金 堂 の折 上 組 入 天 上 の 彩 色 や 興 福 寺 北 円 堂 の 笈形 文 などが あげ られる8)。
この ほ か 、 法 隆 寺 金 堂 天 井 格 間 に 描 か れ た 六 弁 花 で は 、 花 文 の 中心 と六 弁 の 花 弁 の 頂 点 に コ ソパ ス の使 用 痕 が確 認 され て お り9)、 捻 紙 な どの 型 紙 の 使 用 は な くと も、 あ る程 度 の基 準 点 を定 め て 下 絵 が 描 か れ た こと が想 像 で き るほ か 、平 等 院 鳳 鳳 堂 の 堂 内 装 飾 の よ うに 、 そ の 文 様 の 多様 さか ら、
捻 紙 等 は使 用 せ ず 自在 に 下絵 が 施 され た と考 え られ て い る もの もあ る10)。
彩 色
量 綱 彩 色 で は通 常 、淡 色 か ら濃 色 へ 順 次 色 を 塗 り重 ね て 色 の 帯 を あ らわ して ゆ く。
量綱彩 色の色彩効 果7 中 国宋 代 の建 築 技 法 書 で あ る 『営 造 法 式 』 に は 、畳 量 の 法 と して わ が 国 の量 綱 彩 色 に あ た る彩 色 装飾 の 技 法 に 関 す る記 述 が あ る。 そ の 彩 書 作 中 の 五 彩 偏 装 の第 五 項 に
「畳 量 之 法。 自淺 色 起 。 先 以 青 華 。 緑 以緑 華 。 紅 以 朱 華 粉 。 次 以 三 青 。 緑 以 三 緑 。 紅 以三 朱 。 次 以 二 青 。 緑 以 二 緑 。 紅 以二 朱 。 次 以 大 青 。 緑 以 大 緑 。 紅 以 深朱 。 」
とい う一 節 が あ る。 青 華 ・緑 華 ・朱 華 粉 、三 青 ・三 緑 ・三 朱 、 二 青 ・二 緑 ・ 二 朱 、大 青 ・大 緑 ・深 朱 とは い ず れ も顔 料 の 名 称 で あ る。 これ らは そ れ ぞ れ 層 青 、石 緑 、朱 砂 とい う鉱 物 を 砕 き、 水 簸 の技 法 に よっ て 三 種 類 に 選 り 分 け られ る。 そ れぞ れ粒 子 の 細 か い 、 す な わ ち色 の淡 い もの か ら、 青 色 で は青 華 ・三 青 ・二 青 ・大青 、緑 色 で は 緑 華 ・三 緑 ・二 緑 ・大緑 、 赤 色 で は 朱 華 粉 ・三 朱 ・二 朱 ・深朱 と呼 ば れ て い る。 畳 量 之法 、 わ が 国 で い う と こ ろの 量 綱 彩 色 は浅 い色 か ら起 こす 、 つ ま り最 も淡 い 色 か ら彩 色 を 始 め る こ とが 基 本 と な っ て い た の で あ る 。
わ が 国 にお い て も、現 存 す る作 例 の 中 に は、 長 い年 月 に よ り劣 化 が す す み 、 塗 り重 ね た顔 料 の一 番上 の 層 が 剥 が れ 落 ちて しま い 、 そ の 下 に 一・段 下 の 量 綱 の 層 が見 え て い る の を確 認 で き る もの が あ る。 よっ て基 本 的 に は 淡 い 色 か ら濃 い色 へ 順 次 塗 り重 ね られ て い った もの と思 わ れ る が 、 室 生 寺 金 堂 の 薬 師 如 来 立 像(伝 釈 迦 如 来)の 板 光 背 で は、 量 綱 の各 色 帯 は 「一 部 の 細 か い文 様 を除 い て は 、淡 色 の 上 に 濃 い 色 を 塗 り重 ね る の で な く、 塗 り分 け て い る」 と報 告 され て お りu)、 当麻 寺 本 堂 の 板 光 背 一 号 の彩 色 で も、 量 綱 の 最 も外 側 の 最 淡 色 で あ る 白色 は 、 そ れ よ り も一 段 階 濃 色 の 淡 赤 色 の 上 か ら塗 られ て い る の が確 認 で き るほ か 、 浄 瑠 璃 寺 吉 祥 天 立 像 の 台 座 蓮 弁 の 彩 色 で は 、 表 面 の最=濃色 が槌 色 した た め 、 そ の下 の一 段 階淡 い 色 が 透 け て 見 え る状 態 に な り、本 来 は蓮 弁 全体 に 塗 布 され るで あ ろ う彩 色 が 途 中 ま で
しか 行 わ れ て い な い様 子 を確 認 す る こ とが で き る。
以 上 の こ とか ら、基 本 的 に は 、 量 綱 彩 色 は塗 り重 ね に よ って 表 現 され て
い た が 、 完 成 時 、表 面 か ら見 え な い部 分 に つ い て は 、 実 際 の 作 業 現 場 で は 適 宜 簡 略 化 され 、作 業 の効 率 と と もに絵 の 具 の 節 約 を は か った もの と考 え
られ る。
この よ うに淡 い色 か ら濃 い 色 へ順 次 塗 り重 ね る こ と に よ っ て あ らわ され る量 綱 の 段 数 は 、少 な い もの で は 二 段 、 多 い もの で は八 段 とい う もの が あ る。 この段 数 は彩 色す る 面 積 に よ って 適 宜 増 減 され る が 、三 、 四段 とす る もの が最 も多 い。 これ つ い て は 野 間 清 六 氏 が 早 くに 「量 綱 彩 色 の 展 開 とそ の法 則 」(『 仏 教 芸 術』37号1958)の 中 で 、量 綱 の段 数 を 多 い もの と し た場 合 、 「淡 色 の 間 の 色 差 は 不 鮮 明な もの と な っ て 、量 綱 彩 色 独 自の 新 鮮 で溌 刺 と した 色 彩 美 は 発 揮 され ず 、 段 数 を 多 くす る こ とは却 って 効 果 の な い こ とに な り、 五 段 六 段 を 最 高 と して 、三 、 四段 の と こ ろに 大 きな 効 率 を 発 見す るの で あ る」 と、 色 彩 効 果 の 面 か ら三 、 四段 が 適 当 で あ る とす る 見 解 を 述 べ て お られ る。
量 綱 彩 色 で は 前 述 の よ うな 限 られ た 色数 の絵 の 具 を 用 い 、 しか も広 範 囲 に わ た って 統 一 され た 色 彩 を実 現 しな け れ ば な らな い 。 微 妙 な濃 淡 の違 い を 混 色 に よ って あ らわ し、広 い面 積 を彩 色す る とい うの は 、 困 難 で 煩 雑 な 作 業 で あ る。 また 、隣 り合 う色 と明確 な 色 の違 い を 保 ちつ つ 、全 体 に統 一 され た 、 ぼ か しに よ らな い淡 い 色 か ら濃 い 色 へ の 連 続 的 な変 化 を実 現 す る た め に は、 野 間 氏 の いわ れ る よ うに 三 、 四 段 とす るの が 最 も適 した段 数 で あ る と い え よ う。
次 に量 綱 の 各段 の 幅 に つ いて み てみ る と、 これ は(1)淡色 か ら濃 色 に 向か っ て 徐 々 に幅 が狭 くな る もの 、(2)反対 に 濃 色 に 向か って 広 くな る もの 、(3)青 系 な らば青 、赤 系 な らば 赤 とい う よ うに 、 そ の 量 綱 の 中心 色 が も っ と も幅 広 くに あ らわ され る もの 、(4)各段 と もほ ぼ 等 幅 の もの の大 き く四 種 類 に 分 け る こ とが で き る 。 しか し、 実 際 の 作 例 で は等 幅 とす る もの は 少 な く、(1) か ら(3)のよ うな何 らか の 形 で 幅 に 変 化 を もた せ る て い る もの が 多 い 。
実 際 の製 作 に お い て は 、 量 綱 は 「塗 る」 と い うよ り もむ しろ 「描 く」 よ
量綱 彩色の色彩 効果9 うに して 彩 色 す る こ とが 必 要 な の だ と いわ れ る。 各 段 の 幅 を 機 械 的 に 等 幅 に した り、 あ ま り こ ぎれ い に 「塗 って 」 しま っ た りす る と、 か え って 生 気 が失 わ れ て しま うの だ とい う12)。
ま た 、数 多 くの 量綱 彩 色 の 復 原 を 手 が け て こ られ た 山 崎 昭 二 郎 氏 は 、 彩 色 の作 業 に つ い て 、 「古 代 以 来 、 建 築 にお け る彩 色文 様 の 仕 事 に は 分 業 化 がみ られ 、 流 れ作 業 で あ った た め に 、 相 当 な速 度 で進 行 した で あ ろ う。 そ の速 度 の うち に 生 気 と美 しさが 生 ま れ た もの と思 わ れ る 」(「 社 寺 建 築 彩 色 文 様 復 原 模 写 に つ い て 」 『日本 の 美 術 』2461986)と 述 べ て お られ る 。
この よ うに量 綱 彩 色 は 、 主 に 塗 り重 ね に よ っ て表 現 され る が 、 中 に は 適 宜 、 この作 業 を簡 略 化 した もの もあ る。 段 数 は三 、 四段 とす る もの が 最 多 で 、各 段 の 幅 は 等 幅 で な く、 何 らか の 変 化 を もたせ て い る もの も多 い 。 ま た 、画 面 全体 を 生 気 あ る もの に 仕 上 げ るた め に は 、作 業 は あ る 速 度 を も っ て 行 う こ とが必 要 と され る の で あ る。
描 き起 こ し
彩 色 の後 、 多 くの場 合 は最 終 的 な 仕 上 げ 作 業 と して 、文 様 の輪 郭 線 を 描 き起 こす 。 しか し、文 様 の外 側 か ら内 側 に 向か っ て色 が淡 くな る い わ ゆ る 逆 量 綱 や 、最 淡 段 を下 地 の 白 と して い る場 合 は、 新 た に を 描 き起 こす こ と な く、 下 描 き線 をそ の ま ま輪 郭線 と して る例 が 多 い。 描 き起 こ しは 、 文 様 の 最 終 的 な形 を整 え る重 要 な作 業 で あ り、 前 掲 の 正 倉 院 文 書 『大 佛 殿 廟 給 豊 師 作 物 功 銭 帳 』 に は 、須 理 板 の 彩 色 に 関 わ った 三 十 六 名(画 工 司 九 人 、 式 部 位 子0人 、 司人 十 人 、里 人 十 六 人)の 内 、 この 輪 郭 線 の描 き起 こ し作 業 に あた る と考 え られ る 「堺 」 の作 業 は 、 ほ とん ど が画 工 司 に所 属す る 画 師 二 名 に よ って 行 わ れ 、そ の 内 の 一 人 は 画 工 司 の 長 で あ る上 牛 養 で あ る こ とか ら、 熟 練 工 に よ っ て行 わ れ た もの と考 え られ る。
H量 綱の種類と組合せ
量 綱 彩 色 は極 彩 色 とい う言 葉 で も表 現 され 、一 見 、非 常 に た く さん の 色 を使 って い る よ うに 見 え る。 しか し、 実 際 に は量 綱 の種 類 は 、 色 系 統 別 に 見 る と決 して 多 い もの で は な く、 主 な量 綱 は 、赤 系 ・赤 澄 系 ・燈 系 ・緑 黄 系 ・緑 系 ・紫 系 量 綱 の 六 種 類 で あ り、 これ らの うち 三 、 四 種 類 を 同時 に組 み 合 わ せ て 用 い て い るに す ぎ な い。 こ こで は これ ら量綱 の 詳 細 と組 合 せ パ ター ソに つ い て 述 べ る。
赤 系 量 綱
赤 系 量 綱 は 最 淡 色 を 白 ま た は淡 赤 と し、 最 濃 色 を 濃 赤 また は黒 とす る 。 中 心 色 に 朱 を 用 い る もの と、 ベ ソガ ラを 用 い る もの の 二 種 類 が あ る。
朱 を 中 心 色 とす る量 綱 の場 合 、淡 色 は 白や 朱 具 、 濃 色 は べ ソガ ラ、墨 と 朱 の 混 色 、 また は墨 を用 い る。 唐 招 提 寺 金 堂 堂 内 装 飾 の 支 輪 板 の宝 相 華 で は 白 ・朱 具 ・朱 ・墨 の 四段 量 綱 が 確 認 され て お り13)、興 福 寺 北 円堂 の小 壁 笈 形 文 で は 白 ・朱 具 ・朱 ・ベ ソ ガ ラ ・墨 に よ る と思 わ れ る五 段 量 綱 が み ら れ る'4)。
ベ ソガ ラに よる 量綱 は 、 淡 色 に は 白や ベ ソ ガ ラ具 を用 い 、 濃 色 は 黒 とす る場 合 が 多 い 。 海 住 山 寺 五 重 塔 の 内陣 柱 の 宝 相 華 文 な ど に 白 ・薄 い ベ ソ ガ ラ具 ・濃 い ベ ソ ガ ラ具 ・黒 の 赤 系4段 量 綱 と して用 い られ て い る15)ほか 、 富 貴 寺 大 堂 の 無 目鴨 居 見 付 の 宝 相 華 文 、 中尊 寺経 蔵 の冠 木 長 押 見 付 の 宝 相 華 文 に も同 じ くべ ソ ガ ラを 用 いた と思 わ れ る量 綱 が確 認 され て い る16)。こ れ らベ ソ ガ ラ系 量 綱 は 、 現 在 で は茶 褐 色 に変 色 して い る こ とが 多 い。 室 生 寺 薬 師 如 来 立 像(伝 釈 迦 如 来)の 板 光 背 に は 、 現 在 、 淡 赤 ・赤 ・黒 に見 え る ベ ソ ガ ラ系 三 段 量 綱 と 、 白 ・赤 ・茶 ・赤 紫 ・黒 に 見 え る ベ ソ ガ ラ系 五 段 量 綱 が 確 認 され て い る17)。
な お 、 ベ ンガ ラに は赤 褐 色 か ら紫 色 に近 い もの ま で 様 々 な色 味 が あ り、
赤 色 の 色 料 と して も、 ま た 奈 良 時 代 に は 紫 土 とい う紫 色 の 色 料 と して も使
量綱彩 色の色彩効 果11 わ れ て い た こ と、藍 な ど と混 色 して 紫 色 が 作 られ て い た こ とは 前 述 の とお
りで あ る。 こ う した こ とか ら現 在 、 ベ ンガ ラと され て い る 部 分 は 、 当 初 紫 色 で あ っ た可 能 性 も考 え られ る。 しか し、 現 段 階 で は ベ ンガ ラを 使 用 した 紫 が ど の よ うに槌 色す る の か 等 、 不 明 な 点 が 多 く問 題 を 含 ん で い る。
赤 榿 系 量 綱
赤 澄 系 量綱 は赤 色 を 中心 色 と しな が ら、そ の淡 色 を燈 とす る量綱 で あ る。
最 淡 色 に は 白、黄 、燈 が 用 い られ 、 黄 は藤 黄 、燈 は鉛 丹 、 中 心 色 の赤 は 朱 、 ベ ソガ ラ、 エ ソ ジな ど を使 用 し、 濃 色 に は ベ ンガ ラ、墨 な どを 重 ね る。 な お 、藤 黄 は透 明 な黄 色 を 呈す る絵 の 具 で あ り、量 綱 の一 番 最 後 に 白色 の 下 地 の上 に塗 布 され る。
正 倉 院 宝 物 の粉 地 彩 絵 八角 几 の 赤 燈 系 量 綱 は 、鉛 丹 ・エ ソ ジ ・墨 ・藤 黄 の 順 で 塗 り重 ね て い る こ とが確 認 され て い る'8)。また 、 同 じ く正 倉 院 宝 物 の 百 索 縷 軸 に用 い られ た赤 燈 系 量 綱 は 、 淡 色 か ら白 ・燈 ・赤 ・濃 赤 ・黒 の 五 段 を なす が 、 こ こに使 用 され て い る燈 は 鉛 丹 、赤 は朱 で あ る こ とが 化 学 分 析 の結 果 、 明 らか に され て い る。 正 倉 院 宝 物 で は赤 燈 系 の 量綱 の 赤 色 は 鉛 丹 に エ ン ジを か け て表 現 され る こ とが 多 く、 朱 を用 い て い る の は 珍 しい と い う19)o
榿 系 量 綱
鉛 丹 に よる燈 色 を 中心 色 とす る量 綱 で あ る。 最 淡 色 は 白ま た は 黄 、 濃 色 は墨 な ど を か け て表 現す る。
栄 山寺 八 角 堂 で 多用 され る が 、 そ れ 以 外 は正 倉 院 宝 物 の 粉 地 彩 絵 几(中 倉117‑10)の 華 足 な ど ご く一一部 に 確 認 され る のみ で 、使 用 例 は ほ とん ど な い。 栄 山寺 八 角 堂 で は 、 鉛 丹 は 現 在 で は 赤 褐 色 ま た は紫 褐 色 に 変 色 して い る が20)、粉 地 彩 絵 几 の華 足 に は黄 ・淡 澄 ・澄 ・濃 褐 色 の 色彩 が よ く残 って い る。
緑 黄 系 量 綱
中心 色 の緑 の淡 色 と して 黄 色 を 用 い る量 綱 で あ る。 最 淡 色 は 白 また は黄
色 とす る。 黄 色 は一 番 最 後 に 、藤 黄 と考 え られ る黄 色 の 有 機 顔 料 を 白 の 上 に塗 って 表 現 され る。 濃 色 は 岩緑 青 に 草 の 汁 や 墨 を 重 ね て 表 現 す る。
正 倉 院 宝物 の粉 地 彩 絵 八 角 几 の床 脚 表 面 にみ られ る緑 黄 系 五段 量 綱 で は 、 白緑 ・岩 緑 青 ・草 の汁 ・墨 ・藤 黄 の 順 に 顔 料 を 塗 り重 ね て い る こ とが確 認 され て い る21)。
緑 系 量 綱
最 淡 色 を 白ま た は 淡 緑 、 最 濃 色 を 濃 緑 また は黒 と し、 中心 色 に は 主 に 岩 緑 青 を用 い る。
ほ とん どの場 合 、 淡 色 は 白、 白緑 と し、濃 色 は 草 の汁 、 ベ ソガ ラま た は エ ン ジ と思 わ れ る有 機 系 赤 色 顔 料 、墨 を重 ね て表 現す る 。 岩 緑 青 は 槌 色 し に く く、 他 の 顔 料 に 比 べ 残 存 して い る例 が 多 い が 、 草 の 汁 は 藍 と藤 黄 の 有 機 系 顔 料 ど う しの 混 色 で あ るた め 、変 色 した り、槌 色 して ほ とん ど残 っ て い な い 場 合 もあ る。
唐 招 提 寺 金 堂 の 折 上 組 入天 井 の緑 系 四段"̀=iで は 、 白 ・白緑 ・岩 緑 青 ・ 墨 の 順 に 、 慈 尊 院 弥 勒 菩 薩 坐 像 の 台座 蓮 弁 の 緑 系 四 段 量 綱 で は、 白緑 ・岩 緑 青 ・ベ ソガ ラ ・墨 の順 に塗 り重 ね られ て い る22)。ま た 、 海 住 山 寺 五 重 塔 の 内陣 柱 で は 、岩 緑 青 の 上 に 草 の 汁 を 重 ね て 量 綱 の 最 濃 段 を あ らわ す23)。
珍 しい例 と して は 、正 倉 院 宝物 の 百 索 縷 軸 の 木 口お よび 両 側 棲 形 部 の花 弁 にみ られ る緑 系量 綱 が あ る 。 こ こで は 緑 色 を 岩 群 青 の 上 に濃 淡 の有 機 系 の 緑 色 顔 料 を塗 り重 ね る こ とで 表 現 し、 中 心 の 濃 色 部 に は有 機 系 赤 色顔 料 を 重 ね て い る こ とが 報 告 され て い る24)。
青 系 量 綱
青 系 量綱 彩 色 は 最 淡 色 を 白ま た は 淡 青 、 最 濃 色 を濃 青 ま た は黒 と し、 中 心 色 に は 岩 群 青 、 代 用 群 青 、 群 緑 を 用 い る。 淡 色 に は下 地 の 白、 白群 具 、 白群 、 藍 、 藍 の 具 な どを 用 い 、 濃 色 は 中 心 色 に墨 ま た は赤 色 の 色 料 を 重 ね て 表 現 す る。
建 築 装 飾 で は 白 ・白群 ・白群 具 ・群 青 ・墨 の順 に塗 り重 ね て い る例 が 多
量綱彩色 の色彩効果13 い 。 正 倉 院 宝 物 の 粉 地 彩 絵 八 角 几 の天 板 側 面 上 段 の 地 の 部 分 で は 、青 系 五 段 量綱 が淡 色 よ り、 下地 の 白(塩 基 性 塩 化 鉛)・ 藍 の 具 ・岩 群 青 ・エ ソジ ・ 墨 の 塗 り重 ね に よ って 表 現 され る25)。こ の有 機 系赤 色 顔 料 を 上 塗 り して 青 の 濃 色 とす る方 法 は 、 同 じ く正 倉 院 宝 物 の絵 紙 の軸 端 側 面 の 青 系 量 綱 で も 確認 され て い る26)。ま た 、 慈 尊 院 弥 勒 菩 薩 坐 像 の 台座 蓮 弁 の 青 系 °.;̀:1は淡 色 一段 目か ら、 白地 に 藍 か と思 わ れ る青 色 有 機 顔 料 、 一 段 目に 墨 を か け た もの 、群 青 、 群 青 に ベ ン ガ ラを か け た もの 、群 青 に 墨 を か け た もの で 表 現 され て い る とい う四)。
岩 群 青 を 用 い た 量 綱 はす で に 法 隆 寺 金 堂 壁 画 よ りみ られ認)、この ほ か 正 倉 院 宝物 な どの 器 物 に も使 用 例 が 多 い。 代 用 群 青 は槌 色 しや す く、 現 在 で はそ の使 用 箇 所 の ほ とん どは 黄 褐 色 に変 化 して い る。 使 用 例 と して は 、 唐 招 提 寺 金 堂 、平 等 院鳳 鳳 堂 な どの 建 築 装 飾 や 室 生 寺 薬 師 如 来 立 像(伝 釈 迦 如 来)を は じめ とす る 板 光 背 な どが あ げ られ る29)。群 緑 は石 山寺 多 宝塔 の 天 井 格 縁 、 金 剛三 昧 院 多 宝 塔 の 四 天 柱 の 文 様 帯 に使 用 され て い る30)。建 築 装 飾 で は彩 色面 が 大 き い た め 、 高 価 な 岩 群 青 は使 わ れず 、 入 手 しや す い 代 用 群 青 が広 く用 い られ た 。 ま た 、 板 光 背 を 持 つ 諸 像 の 多 くは 、 当 時 の 一 流 派 の 仏 師 に よ る もの で は な い とい わ れ て お り31)、板 光 背 に代 用 群 青 の使 用 例 が 多 い の もそ うい っ た こ と と無 関 係 で は な い と思 わ れ る。
紫 系 量 綱
紫 系 量 綱 に は 中心 色 に エ ソ ジ、 紫 味 の つ よ い ベ ンガ ラ(紫 土)、 合 わ せ 紫 を 用 いた もの の大 き く分 け て 三 種 類 が あ る。 淡 色 に は 白 ま た は そ れ ぞ れ の 具 色 、 濃 色 は墨 な ど を か け て 表 現 す る。 現 在 で は エ ソ ジは 白変 、 ベ ン ガ
ラお よび 合 わ せ 紫 は褐 色 に変 色 して い る例 が 多 い 。
エ ソ ジを 中 心 色 と して用 い た例 は 正 倉 院 宝 物 に 多 く、粉 地 彩 絵 八角 几 で は 最 淡 色 を 下 地 の 白色 と し、 エ ソ ジの 具 、 エ ソ ジ、 墨 を重 ね て紫 系 四段 量 綱 を あ らわ して い るsz)。ベ ソガ ラ(紫 土)に よ る紫 系 量 綱 は 、醍 醐 寺 五 重 塔 の 初 重 天 井 格 間 の花 文 に 、 ベ ソガ ラ具 ・ベ ソ ガ ラ ・墨 を か け た紫 系三 段
量 綱 が 確 認 され て い る33)。また 、合 わ せ 紫 の例 と して は 、 早 い もの で は 唐 招 提 寺 金 堂 の 折 上 組 入天 井 の彩 色 に 、 白、 ベ ソ ガ ラに 藍 を 混 入 した もの と 考 え られ る合 わ せ 紫 、墨 の量 綱 が認 め られ る34)ほか 、 慈 尊 院 弥 勒 菩 薩 坐 像 の 台 座 蓮 弁 に 白 と有 機 系 の 赤 色 顔 料 の 混 色 を 中 心 色 とす る量 綱 が あ り、 こ
こで は 白 と赤 色 の 混 色 の割 合 を 変 え て 濃 淡 を つ く り、最 濃 部 に は 墨 を 重 ね て い る35)。
組 合 せ パ タ ー ン
これ ら量 綱 彩 色 は 時代 に よって 差 違 が あ る が 、 三 、 四種 類 を 同時 に 用 い 、 あ る一 定 の 配 色 パ ター ソの もと 、組 み 合 わせ て 用 い られ る。 主 な 組 合 せ パ ター ンは 以 下 の 通 りで あ る。
ABCDE
四種類 四種類 四種類 四種類 三種 類
青 系 と赤 燈 系 、緑 黄 系 と紫 系 青 系 と赤 澄 系 、 緑 系 と紫 系 青 系 と赤澄 系 、 緑 系 と赤 系
青 系 と赤 系 、 緑 系 と紫 系 青 系 と赤 系 と緑 系
こ れ ら の 内 、 と く にAは 奈 良 時 代 に 、B・C・Eは 平 安 時 代 、D・Eは 鎌 倉 時 代 に 多 い 組 合 せ で あ る36)。
皿 色彩効果
(1)色 の 特 徴
色 は 色 相 ・明度 ・彩 度 の三 属 性 に よ って あ らわ す こ とが で き る。 色 相 と は 赤 、 青 な ど の基 本的 な 色 の種 類 で あ り、 明 度 は 明 るい 赤 、暗 い赤 とい っ た 色 の 明 る さを意 味 し、 明 る い 色 を 明 度 が 高 い 色 、 暗 い色 を 明度 が低 い 色 と い う。 彩 度 は鮮 や か な 青 、 くす ん だ 青 とい う色 の 鮮 や か さの こ とで 、 鮮 や かで あ る ほ ど彩 度 が 高 い 色 、 反 対 に くす ん だ 色 は彩 度 が低 い 色 と表 現 す
る。
量綱彩色 の色彩効果15 これ ら色 相 ・明度 ・彩 度 を数 値 で あ らわ し、 色 を 客 観 化 で き る よ うに し た もの が 表 色 系 で あ る。 こ こで は マ ソセ ル 表 色 系37)を用 い て 量 綱 彩 色 に用 い られ た 色 の 特 徴 を 、 色 相 ・明度 ・彩 度 の 面 か ら 明 らか に した い と思 う。
色 相
前 述 の 代 表 的 な量 綱 の組 合 せ パ ター ソA〜Dを 色 相 環 上 に配 置 して み る と図1の よ うに な る。 色 相 環 上 で は 、 隣 り合 った 色 相 か ら180度 離 れ た 正 反 対 に 位 置 す る色 相 まで 、二 色 の距 離 が 離 れ れ ば 離 れ る ほ ど 、相 互 に 色 を 強 調 しあ う、 コ ソ トラス トの強 い配 色 とい う こ とが で き る。
色 相 環 上 で 見 る とA〜Cの 配 色 、 つ ま りAの 青 と赤 燈 、緑 黄 と赤 紫 、B の 青 と赤 燈 、 緑 と赤 、Cの 青 と赤 、 緑 と紫 の そ れ ぞ れ は 、 お互 い が 色 相 環 上 、 ほ ぼ 反 対 側 に位 置 す る 関係 に あ る こ とが わ か る。 これ らは補 色 に 近 い 色 ど う しで あ り、相 互 の色 を強 調 しあ う強 い 色 相 対 比 の 関係 に あ る とい う こ とが で き る。Dで は赤 ・緑 ・青 の 三 色 を 組 み 合 わ せ て い る が 、 この 赤 ・ 緑 ・青 は色 の 三 原 色 で あ る。 色 相環 上 で は 二 等 辺 三 角 形 を 描 く よ うに 配 置
され 、 この 配 色 は三 色 を使 っ た もの で は 最 も強 い色 相 対 比 を お こす 配 色 と して 知 られ て い る。
この よ うに量 綱 彩 色 で は 、補 色 に 近 い 色 また は色 の三 原 色 を組 み 合 わ せ て 用 い、 強 い色 相 対 比 を作 り出 して い る。 色 に は対 比 関係 に あ る色 ど う し を 組 み 合 わ せ る と調 和 す る とい う性 質 が あ り、量 綱 彩 色 は そ の 色 相 か ら見 た 場 合 、 強 い 色彩 対 比 に よ る調 和 が 実 現 され て い る と い うこ とが で き よ う。
明 度
量 綱 は淡 い色 か ら、濃 い 色 へ 段 階 的 に 色 が 変 化 す る。 この 淡 い 色 か ら濃 い色 へ の変 化 は 、色 の属 性 か らい え ば 、 明度 を段 階 的 に 変 化 させ て い る と い うこ と がで き る。 この 明 度 が 、 濃 色 か ら淡 色 へ徐 々 に 境 目な く、 自然 に 変 化 して い くの が ぼ か しで あ り、 ぼ か しと量 綱 の 大 きな 違 い は 、 この 明度 変 化 が 明確 な段 階 を も って 表 され て い るか ど うか とい う点 に あ る。 また 、 同一一色相 内 で 明 度 が 異 な る色 ど う しを組 み 合 わせ た 配 色 は 、 調 和 す る と い
う色 彩 調 和 の 法 則 が あ るが 、 量 綱 彩 色 で は 同 一 ま た は 隣 り合 う色 相 内で 、 明 度 の 異 な る色 を 淡 い色 か ら濃 い色 へ段 階 的 に配 して お り、 そ こ に は 明度 差 に よ る類 似 色 の 調 和 と い う色 彩 調 和 が成 り立 って い る と い う こ とが で き よ う。
量 綱 彩 色 で は、 色 相 の異 な る二 種 類 以 上 の 量 綱 を 組 み 合 わ せ て 用 い る場 合 、 基 本 的 に 同 じ段 数 と し、そ れ ぞ れ 対応 す る段 の 明度 もほ ぼ等 しい もの を 用 い る と い う特 徴 が あ る。 例 え ば 、 淡 い 青 ・青 ・暗 い青 か らな る青 系 三 段 量 綱 は、 基 本 的 に淡 い赤 ・赤 ・暗 い 赤 で 構 成 され る赤 系 三 段;̀.jと 組 み 合 わ せ て 用 い られ る。 この と き、 対 応 す る一 段 目の 淡 い青 と淡 い赤 、 二 段 目の 青 と赤 、三 段 目の 暗 い 青 と暗 い 赤 の 明 度 は、 そ れ ぞ れ ほ ぼ 等 しく、 全 体 に 明度 の調 和 が保 た れ る。 これ に 対 し、 白 ・青 ・暗 い青 の青 系 三 段:'.j と淡 い 赤 ・赤 ・黒 の赤 系 三 段 量 綱 の 組 合せ で は 、 いず れ も段 数 は 等 しい が 、 対 応 す る各 段 の 色 は 、 白 と淡 い 赤 、 青 と赤 、 暗 い青 と黒 とな り、 前 者 に 比 べ て 明度 の 差 が 大 き く、 この よ うな 組 合 せ は調 和 的 で あ る とい う こ とは で き な い。
量 綱 彩 色 で は 同 一 ま た は 隣 り合 う色 相 内で 、 明度 を段 階 的 に 変 化 させ る こ とに よ って 類 似 色 の 調 和 が 実 現 され て い る。 ま た 、 二 種 類 以 上 の 量 綱 の 帯 を組 み 合 わ せ て 用 い る場 合 に も、 対 応 す る各 段 の 明 度 は ほ ぼ 等 し くな る た め 、 この 明 度 差 に よ る類 似 の 調 和 は全 体 に バ ラ ソ ス良 く保 た れ て い る の で あ る。
彩 度
こ こに 実 際 の 量 綱 彩 色 に使 用 さ れ て い る 色 を 、 マ ソセ ル 表 色 系 に基 づ い て 表 色 した 値 を 例 と して あ げ る。 以 下 に示 す の は 、 山 崎 昭 二 郎 氏 作 成 の薬 師 寺 東 塔 の 支 輪 板 に描 かれ た宝 相 華 文 の復 原 彩 色 の 色 で あ る38)。
青 系 五 段 量 綱 白(N9)・ 極 淡 青(10B8/4(4))・ 淡 青(7.5B6/6(6))・
青10B3/10(10))・ 黒(N2)
緑 黄 系 五 段 量 綱 白(N9)・ 黄(5Y9/6(6))・ 緑(2.5G5/6(10))・
赤榿系四段量綱
紫系四段量綱
量 綱 彩 色 の 色 彩 効 果17
暗 緑(IOGY4/4(4))・ 黒(N2)
白(N9)・ 澄(10R5/12(12))・ 赤(5R4/14(14))・
黒(N2)
白(N9)・ 淡 赤(2.5RP8/6(6))・ 淡 赤 紫(7.5RP 5/10(12))・ 赤 紫(2.5R4/14(14))
()内 の/の 後 の 数 値 が 彩 度 を 表 して い る。 青 系 量 綱 の 最 淡 色 の 極 淡 青 で い え ば 、10B8/4の10Bが 色 相 、8が 明度 、4が 彩 度 で あ る。 な お 、 最 高 の 彩 度 は 各 色 相 の 明 度 ご と に異 な る た め 、そ の 色 相 ・明度 を もつ 色 の 最 高 の 彩 度 を 各 色 の 後 に()内 に記 した。
この よ うに して 見 て み る と、 量 綱 彩 色 に用 い られ て い る色 は 非 常 に 彩 度 が 高 く、 鮮 や か で あ る こ とが わ か る。 色 が に ごる 、 つ ま り彩 度 の 低 い 色 と な る 大 きな 原 因 の 一 つ と して 混 色 が あ げ られ る が 、 前述 の よ うに 量 綱 彩 色 で は 混 色 に よ って つ く られ る色 は 、 草 の汁 、 合わ せ 紫 な ど ご くわ ず か で あ る。 ま た 、 量綱 の 濃 淡 は 、 主 に 塗 り重 ね に よ っ て 表 現 され て い る。 こ う し た こ とが 高 い 彩 度 を 保 ち 、 明 るい 色 彩 を実 現 す る 要 因 とな って い る もの と 思 わ れ る。
(2)色 彩 効 果
量 綱 彩 色 独 自の 色彩 効 果 と して は 、 大 きな もの と して立 体 感 ・リズ ム感 ・ 明 る い 多 色感 ・躍 動感 ・彩 色 面 全 体 を ひ き しめ る効 果(緊 張 感)の 五 つ が あ げ られ る。 そ れ で は 、 これ ら色 彩 効 果 は前 述 の量 綱 彩 色 の 色 彩 的 な 特 徴 と ど う関係 し合 っ て 実 現 され て い るの で あ ろ うか。
立 体 感
まず 立 体 感 に つ いて で あ るが 、 立体 感 の 表 現 に は 明度 、彩 度 、 そ して個 々 の色 の 面積 比 が 大 き く関 わ って い る もの と思 わ れ る。
量 綱 にみ られ る淡 色 か ら濃 色 へ の 色 の 変 化 は 、基 本 的 に は 色 の 明 度 変 化 で あ る。 最 淡 色 と最 濃 色 の 明 度 差 の 大 きい 量 綱 ほ ど傾 斜 感 が 強 く、 立 体 的
に 見 え 、反 対 に 最 淡 色 と最 濃 色 の 明度 差 が 小 さ い ほ ど 、傾 斜 感 の 少 な い な だ らか な 印 象 を 与 え る もの とな る。
最 淡 色 か ら最 濃 色 の 間 で 同程 度 の 明度 差 を もつ量 綱 の場 合 は 、 段 数 の 多 い もの ほ ど隣 り合 う色 との 間 の 明度 差 は小 さ くな る た め 、 や わ らか な 印 象 を 与 え るが 、 あ ま り段 数 を 多 くす る と 色 の 階梯 は 不 明 瞭 とな り、 量 綱 彩 色 の 特 徴 の 一 つ で あ る色 の段 階 的変 化 が 失 わ れ 、 ぼ か しの よ うに 見 え る。 ま た 、 同 じ条 件 で 段 数 を少 な く し、 隣 り合 う色 の 間 の 明度 差 を 大 き く しす ぎ る と、 濃 淡 に よ る色 の連 続 性 が 薄 れ 、違 和 感 の あ る配 色 と な って しま う。
量 綱 彩 色 で は最 淡 色 か ら最 濃 色 ま で 、 は っ き りと色 の 違 い が 認識 で き る 適 度 な 明度 変 化 を用 い る こ とに よ って 色 の 階 梯 を 作 りだ し、立 体 感 が 表 現 さ れ て い る の で あ る 。
ま た 、量 綱 を構 成 して い る色 は 、 前 述 の とお りそ の ほ とん どが 非 常 に 高 い 彩 度 を保 つ とい う特 徴 が あ る。 こ こで 図2を 参 照 して い た だ きた い 。 こ れ らは 明度 は等 し く、彩 度 のみ を変 化 させ て 作成 した量 綱 の モ デ ルで あ る。
図2‑1は 中心 色 と な る青 色 の 彩 度 の み 低 い もの と し、 図2‑2は す べ て 高 彩 度 の もの を 用 い た 。 両 者 を 見比 べ てわ か る よ うに 、 す べ て 高 い 彩 度 を保 ち 明 度 の み 変 化 させ た 図2‑2で は 自然 な 立 体 感 が 感 じ られ るの に対 し、 途 中 、 明度 の異 な る色 を 交 え た 図2‑1で は 、彩 度 の 低 い 色 の 部 分 だ け は 落 ち込 ん で 見 え、 表 面 に 凹 凸 が あ る よ うに感 じられ る。 この よ う に量 綱 のそ れぞ れ の 色 帯 の 中で 彩 度 の統 一 が とれ て い な い と、 そ こだ け が 落 ち込 ん だ り浮 き 上 が っ て 見 え 、 自然 な 立 体 感 は 表 現 す る こ とが で き な い。 自然 な 立体 感 を あ らわす に は 、 全体 の 彩 度 が 統 一 され て い なけ れ ば な らな い の で あ る。 量 綱 に使 わ れ て い る色 が 全 体 に 高 い 彩 度 で 統 一 され て い る の は 、 彩 色 面 を 明 る くす ると い う以 外 に、 自然 な立 体 感 を あ らわ す た めに も必 要 な こ とで あ っ た とい え る。
この ほ か 立 体 感 の 表 現 に は量 綱 各 段 の幅 の比 率 、 つ ま り面 積 比 も大 き く 関 係 して い る(図3)。 淡 色 に 向 か って 幅 が 狭 くな る量 綱(図3‑1)と 、
量綱彩 色の色彩効果19 反 対 に濃 色 に 向か っ て 幅 が 狭 くな る量 綱(図3‑2)と で は 、 前 者 の 方 が 濃 色 や 中 心 色 が 強 調 され 、鮮 や か な強 い 立 体 感 を 持 つ 色 彩 と な る。 これ に 対 し後 者 で は、 中心 色 や 濃 色 よ り も淡 色 部 分 が 大 き くな る の で 、 色調 の や わ らか な、 なだ らか な立 体 感 を もつ量 綱 とな る。 また 、す べ て の段 の 幅 を 、 等 し く して しま う と立 体 感 は 薄 れ 、 全 体 の 印 象 は平 板 化 して しま う(図 3‑3)。
実 際 の 作 例 にお いて も、量 綱 の各 段 の 幅 は 濃 色 また は 中心 色 の部 分 が 最 も広 く、 淡 色 に 向か っ て狭 くな って い る もの が 多 い。 等 幅 に描 か れ た もの もあ るが 、 そ う した 作 例 で は立 体 感 は あ ま り感 じ られ ず 、 む しろ 、 多 色 で 描 い た 縞 模 様 よ うな 印象 を受 け る。
以 上 の こ とか ら、量 綱 の立 体 感 は 主 に 隣 接 す る色 と 、適 度 な差 を もた せ た 明 度 の 段 階 的 変 化 に よ る もの で あ り、 統 一 され た 彩 度 の も と、量 綱 の 各 段 が 適 度 な 面 積 比 を もっ て配 置 され る こ とに よ って 、 自然 な傾 斜 が 表 現 さ れ て い る もの と考 え られ る の で あ る。
リズ ム 感
次 に リズ ム感 につ いて で あ る が 、 これ は 明 確 な 色 の段 階 的 変 化 を もつ 、 立 体 感 の あ る量 綱 を重 ね る こ とで表 現 され て い る もの と思 わ れ る。
二種 類 以 上 の 量 綱 を重 ね た場 合 、 色 は 淡 く印 象 の や わ らか な 色 、 中 程 度 の 色 、 濃 く鮮 や か な 印象 の強 い 色 、 再 び 、 淡 く印 象 のや わ らか な 色 、 中 程 度 の 色 、 濃 く鮮 や か な印 象 の 強 い 色 と、色 の強 弱 の 変 化 を 繰 り返 して ゆ く。
色 は 淡 い 色 か ら濃 い色 へ の段 階 的変 化 を 繰 り返 し、 ま さ に リズム を 刻 ん で ゆ くの で あ る。 こ の よ うな リズ ム感 は 、 淡 色 か ら濃 色 へ 境 界 を つ け ず に 変 化 させ るぼ か しで は表 現 す る こ とは で きな い 。 リズ ム感 は ぼ か しで は 得 ら れ な い 、 量 綱 彩 色 独 特 の色 彩 効 果 で あ る とい う こ と がで き よ う。
明 るい 多 色 感
また 、 量 綱 彩 色 で は前 項 で述 べ た よ うに 、 対 比 関 係 に あ る 色 を組 み 合 わ せ て 用 い て い る ほか 、 高 い彩 度 を もつ とい う特 徴 が あ る。 補 色 ま た は 補 色
に 近 い 関係 に あ る色 は 、 お互 い の色 を強 調 し合 い強 い色 相 対 比 を 作 り出 す 。 量 綱 彩 色 に み られ る青 と赤(青 と赤 澄)、 緑 と紫(緑 黄 と紫 、 緑 と紫)と い う四 色 の 組 合 せ 、 あ る い は青 と赤 と緑 に よ る三 色 の 組 合 せ で は、 お 互 い に 強 い 対 比 関 係 に あ る た め 、そ れ らの 色 は 強 調 し合 い 、 高 い彩 度 を保 つ こ と に よ って 色 彩 は さ らに 明 る さを増 し、 鮮 や か な 多 色 感 を表 して い る もの と思 わ れ る。 加 え て 、 同 じ色 相 内 に あ る色 で も濃 淡 の 区 別 が あ る た め に 、 一 層 多色 感 が強 調 され、 実 際 の 色 数 よ りも豊 富 な種 類 が あ る よ うに 見 え る の で あ る。
量 綱 彩 色 で 用 い られ る色 の 種 類 は 決 して 豊 富 と は い え な い が 、 そ れ ら を 対 比 的 に 用 い 、 高 い 彩 度 を 保 ち なが ら同一 色 相 内で 濃淡 の 変 化 を つ け る こ
とに よ り、 独 特 の 明 るい 多 色 感 に満 ち た色 彩 を 実 現 して い るの で あ る。
躍 動 感
この よ うな 明 るい 多 色 感 が前 述 の リズ ム感 の あ る配 色 に加 え られ た と き、
さ らに リズ ム感 は強 調 され 、澄 刺 と した躍 動 感 が 生 まれ る。 量 綱 彩 色 に み られ る躍 動 感 は 、 明確 な 明度 の段 階 的 変 化 に よ る立 体 感 、 そ してそ の立 体 感 あ る量 綱 を重 ね る こ とに よ って 生 ま れ る リズ ム感 、 強 い色 相 対 比 と高 彩 度 の色 彩 に よる 明 る い 多彩 感 が 結 び つ い た 結 果 、 得 られ る 色彩 効 果 とい う
こと がで き よ う。
緊張 感
こ う した 様 々 な 色 の 配 色 効 果 に よ り、 見 た 目の面 積 や重 量 感 は 大 き く変 化す る。 量 綱 彩 色 が 施 され た もの の 中 に は 、全 体 が ひ き しま った よ う な 印 象 を 与 え る もの が あ る。 これ は彩 色 面 に緊 張 感 が感 じ られ るた め で あ り、
す べ て の 量 綱 彩 色 が 施 され た 作 品 に い え る こ とで は な い 。 立 体 感 が 十 分 に 表 現 され ず 、 平 板 化 して 見 え た り、色 彩 が 全 体 に 調 和 的 で な い 場 合 は 、 か え って 散 漫 な 印 象 を与 え る もの もあ る。 これ ま で 述 べ た よ うな 立 体 感 、 リ ズ ム感 、 多 彩 感 、躍 動 感 が十 分 に 発揮 され 、 全 体 が 調 和 した 色 彩 で 整 え ら れ た と き、 彩 色 面 を一 つ に ま とめ 、 全体 を ひ き しめ る一 種 の 緊 張 感 が 生 ま
量綱彩色 の色彩効果21 れ て い る の で あ る 。
IVま と め
量綱 彩 色 の 製 作 工 程 は 、 下 地 づ く り、下 描 き、 彩 色 、 輪 郭 線 の 描 き起 こ しの 四段 階 に 分 け られ る。 下 描 き に は 、捻 紙 な ど型 紙 を 使 用 した と考 え ら れ 、彩 色 で は 量綱 の 色 の 帯 は 基 本 的 に塗 り重 ね に よ って あ らわ され る。 輪 郭 線 は 下 描 き線 を そ の ま ま 塗 り残 す もの と 、彩 色 後 に 、 描 き起 こす もの が あ り、 この輪 郭 線 の 描 き起 こ しは 最 終 的 な文 様 の形 を 整 え る重 要 な作 業 で あ った た め 、 正 倉 院 文 書 に は 、 熟 練 工 に よ っ て行 わ れ た こ とが 記 され て い る。
ま た 、量 綱 彩 色 に 用 い られ る絵 の 具 の種 類 は 、 決 して 豊 か で あ る と は い えず 、量 綱 の種 類 の 主 な もの は 、 赤 系 、 赤 澄 系 、緑 黄 系 、 緑 系 、 青 系 、 紫 系 のわ ず か六 種 類 にす ぎな い 。 実 際 の 作 例 で は これ らの うち 、 対 比 的 な 関 係 に あ る三 、 四種 類 を組 み 合 わ せ て 用 いて い る。 平 安 時 代 の 『二 中 歴 』 に み られ る 「紺 丹 緑 紫 」 の配 色 法 則 に もとづ き 、基 本 的 に は 、 四 種 類 の 量 綱 を 同時 に用 い る場 合 に は 、 青 系 と赤 燈(赤)系 、緑(緑 黄)系 と紫 系 を 組 み 合 わ せ て い る こ とが 多 い 。 ま た 、 三 種 類 の量 綱 を用 い る場 合 に は 青 系 と 赤 系 と緑 系 を組 み 合 わせ とす る もの が0般 的 で あ る。
こ う した量 綱 彩 色 にみ られ る色 彩 を 色 の 三 要 素 、 色相 、 明 度 、 彩 度 の 観 点 か らと らえ る と 、そ こに は 、(1)補色 に 近 い色 、 ま た は 色 の 三 原 色 を 組 み 合 わ せ て 強 い色 相 対 比 を つ く りだ す 、(2)明度 を段 階 的 に変 化 させ る こ と に よ って 色 の 階梯 を あ らわ し、 二 種 類 以 上 の量 綱 を組 み 合わ せ て 用 い る場 合 、 段 数 が 等 し く対 応 す る各 段 の 明 度 もほ ぼ 等 しい もの を用 い る、(3)非常 に 鮮 や か な彩 度 の 高 い色 を用 い る、 とい う色 彩 的 特徴 が あ る こ とが 明 らか とな っ た 。 量 綱 彩 色 で は 、強 い 色相 対 比 に よ る対 比 の 調 和 と、 明 度 の段 階 的 変 化 に よ る類 似 の調 和 の二 つ の 色彩 調 和 が 、 高 い彩 度 を保 ち な が ら同 時 に 実 現
され て い るの で あ る。
そ して 、 これ ら色 彩 的 特 徴 と量 綱 彩 色 独 自の 立 体 感 ・リズ ム感 ・明 る い 多 色 感 ・躍 動 感 ・緊 張 感 とい った 色 彩効 果 とは 、 次 の よ うな関 係 に あ る も の と考 え られ る。
まず 、 立体 感 は 主 に 隣接 す る色 と適 度 な 差 を もた せ た 明 度 の 段 階 的 変 化 に よる もの で あ り、 統 一 され た 彩 度 と、 量 綱 の各 段 が適 度 な 面 積 比 を も っ て配 置 され る こ とに よ って 、 自然 な傾 斜 が 表 現 され る 。 リズ ム感 は 明確 な 色 の 段 階 的 変 化 を もつ 、 立 体 感 の あ る量 綱 を重 ね る こ とで あ らわ され 、 こ れ は ぼ か しで は 得 る こ と ので き な い 色彩 効 果 で あ る とい え る。 また 、 多 色 感 は 強 い 色 相 対 比 か ら生 ま れ て い る もの で あ るが 、 そ れ は 高 彩 度 の 色彩 に よ って さ らに 明 る さを増 し、対 比 関係 に あ るそ れ ぞ れ の 色 相 内 で 色 の 濃 淡 が 段 階 的 に変 化 して い る こ とに よ り、 一 層 強 め られ 、量 綱 独 自の 明 る い 多 色 感 が実 現 され て い るの で あ る。 この よ う な リズ ム感 と 明 る い 多 彩 感 が 結 び つ い て 、躍 動感 が 生 ま れ 、 そ して 、 これ ら立 体 感 、 リズ ム感 、 多 彩 感 、 躍 動 感 が 十 分 に 表 され 、 全 体 が 調 和 した 色 彩 で 整 え られ た と き、 初 め て 彩 色 面 全 体 に … 種 の 緊 張 感 が 生 じ、量 綱 彩 色 は 独 自の 色 彩 美 を 十 分 に 発 揮 す る もの とな るの で あ る。
(平成9年 度 文 化 財 史 料 学 専 攻 博 士 前 期 課 程 修 了 奈 良 大 学 文 学 部 文 化 財 学 科 助 手)
註
1)正 倉院 文 書 にみ られ る金青 ・金 青 ・空 青 ・曾 青 が岩 群 青 に あた る と され 、 『佛 像 彩 色料 布 施 等 注文 』(大 日本 古 文 書十 ニ ノニ 五 五 正倉 院 文書 続 々修 二十 四秩 六 裏)に は、 一両 目(三 匁 三 分 、約13グ ラム)が 七 百文 との 記録 が あ る。
2)渡 邊 武 ・柴 田承二 ・朝 比 奈正 二 郎 ・亘理 俊 次 「紫鑛 」(『 正 倉院 薬 物 』植 物 文 献 刊 行 会1955)。
3)1)の 『佛 像 彩 色料 布 施 等 注文 』 に よれば 、 当時 の エ ソ ジは 一枚 半 七百 五 十文 した こ とが知 られ る。
量綱彩 色の色彩効 果23 4)こ こで い う木画 が どの よ うな作 業 内 容 を意 味 して いた か に つ い て は定 説 が な い。
白土 の 下 地 に あた りを つ け る こ と(澤 村 専 太 郎 「天 平 時 代 に於 け る絵 画」 『日本 絵 画史 の 研 究』1931)、 定 規 や コ ソパ スを 用 い て 、下 地 を 施す 部 分 や 花文 を描 く た め の基 準 線 を ひ く こ と(久 野 健 「法隆 寺 金 堂 天井 板 落 書 」 『美術 研 究』140号) な ど とす る意 見が あ る。 ここに あ げ た 『大 佛 殿 廟給 書 師 作 物功 銭 帳 』 に よれ ば、
各作 業 の 工 賃 は 、彩 色 は花 一 根 に つ き五 文 、 堺 は花 一 根 に つ き 一文 、 木 画 は花 二 根 に つ き一 文 、塗 白土 は板 八 枚 に つ き一 文 とあ り、木 画 は 工 賃 か らみ て も、そ れ ほ ど複 雑 な 作 業で あ った とは考 え られず 、彩 色 を行 う前 段 階 の 下描 き、 も し くは そ れ に類 す る作 業 で あ った もの と考 え られ る。
5)小 口八郎 「法 隆寺 金 堂 壁 画」(『 古 美術 の科 学 一 材料 ・技 法 を探 る 一』 日本書 籍 1980)、 茂 木 曙 ・中 里寿 克 ・江 本義 理 「国 宝唐 招 提 寺 金堂 内 部天 井 彩 色保 存 処置 」
(『保 存 科 学』14号)、 上野 ア キ 「装飾 文 様 」(『 醍 醐 寺 五 重塔 の壁 画 』 吉 川弘 文 館1959)、 薬 師 寺 東塔 お よび 唐 招提 寺 金 堂 に つ い て は、 山 崎昭 二 郎 氏 作成 の 興 福寺 北 円堂 の建 築 装 飾 の 白描 図(国 立 歴 史民 俗博 物 館 蔵)に よる。
6)『 大和 古 寺 大 観 当麻 寺』(岩 波 書 店1980)、 『大和 古 寺 大 観 室 生 寺 』(岩 波 書店1976)の 解 説 に よる。
7)『 正 倉院 図 録』(奈 良 国 立博 物 館1966)の 解 説 に よる。
8)5)参 照 。
9)久 野 健 「法 隆寺 金 堂 天 井板 落 書 」(『 美術 研 究 』140号)。
10)山 崎 昭二 郎 「彩 色装 飾 」(『 平 等 院 大観 第 一 巻 建 築』 岩 波 書店1988)。
11)6)参 照 。
12)大 山 昭彦 氏(正 倉院 事 務 所)に ご教 示 い た だ いた 。 13)5)参 照 。
14)5)参 照 。
15)山 崎 昭 二郎 氏 作成 の海住 山寺 五重 塔 の建 築 装 飾 の 白描 図(国 立 歴 史民 俗博 物 館 蔵) に よる。
16)15)参 照 。 富 貴 寺大 堂 の 建 築装 飾 の 白描 図(国 立 歴 史 民俗 博 物 館 蔵)に よ る。
17)6)参 照 。
18)永 嶋 正 春 「粉 地彩 絵 八 角几 の 彩 色」(『 正 倉 院 の 木工 』 日本経 済新 聞 社1978)。
19)『 正 倉 院年 報 』10号 の 「年 次報 告 」 中 の 成瀬 正 和 氏 の 材 質調 査 の 結 果 に よ る。
20)福 山 敏 男 ・秋 山 光和 『美 術 研 究 所 研 究 報 告 栄 山寺 八角 堂 の研 究 』(便 利 堂 1951)0
21)18)参 照。
22)5)参 照。 秋 山 光和 ・柳 澤 孝 「慈 尊 院 弥 勒 仏坐 像 台 座 蓮 弁 の装 飾 文 様 」(『 美 術 研 究 』183号)。
23)16)参 照 。 24)19)参 照 。 25)18)参 照 。 26)19)参 照 。 27)22)参 照 。
28)山 崎一 雄 「法 隆寺 の 金 堂 、五 重 塔 な どに用 い られ て い る顔 料 に つ いて 」(『 古 文 化 財 の科 学 』 同朋 社1987)。
29)5)、6)参 照。 平 等 院 鳳鳳 堂 の 建 築装 飾 につ い て は、 山 崎 一雄 「建 築 装飾 の彩 色 」(『 平 等 院 大観 第 三 巻 建 築 』 岩波 書 店1988)。
30)山 崎 昭二 郎 氏 作成 の金 剛 三 昧院 多 宝 塔 の建 築 装 飾 の 白描 図(国 立歴 史 民 俗 博物 館 蔵)に よ る。
31)久 野 健 「板 光 背 像 に つ いて 」(『 美 術 研 究』199号)。
32)19)参 照。
33)山 崎 一 雄 「彩 色 顔 料」(『 醍 醐寺 五 重 塔 の壁 画 』1959)。
34)5)参 照。
35)22)参 照。
36)拙 稿 「量綱 彩 色 の 研 究 一 色彩 の 歴 史的 変 遷 一」(『 奈 良 大学 紀 要 』27号1999年 刊 行 予 定)。
37)1905年 、 ア メ リカの 画 家 マ ソセル が 考案 した 表 色法 で 、 色 を 色相(Hue)・ 明度 (Value)・ 彩 度(Chroma)の3要 素 で 表記 す る。 現 在 で は 改 良が 加 え られ 、 科学 全 般 、 工業 用 に 世 界 的 に広 く用 い られ て い る表 色 法 で 、 日本 で も 日本工 業 規 格(JIS)に 採 用 され て い る。 色相 とは赤 、青 な どの 色 を意 味 して お り、赤(R)、
黄(Y)、 緑(G)、 青(B)、 紫(V)の5色 相 と そ れ ぞ れ の 中 間 色 の 黄 赤 (YR)、 緑黄(GY)、 青 緑(BG)、 紫 青(VB)、 赤紫(RV)の5色 相 の10色 相 を基 本 色 相 とす る。 さ らに 各色 相 を10段 階 に 分 け 、計100色 相 に分 類 す る。 例 え ば 、赤(R)で あ れ ば 、1Rか ら10Rま で の10色 相 が あ り、 こ の う ち、5 Rが 中心 と な る赤 で 、最 も赤 ら しい 赤 で あ る。 明度 は そ の 色の 明 る さを 示す もの で 、 理想 的 な 白を0、 理 想 的 な黒 を10と す る。 彩 度 は色 の 鮮 や か さ を示 し、 マ ソ セル が表 色系 を 考 案 した 当 時 、表 す こ とので きた 最 も鮮 や か な 色 を10と した 。 し か し、 現在 で は 、 そ れを 上 回 る彩 度 を 持 つ 色 が出 て きてお り、 最 高 の彩 度 は 色相 に よ って 異 な る。 色 相 がR(赤)5、 明度 が4、 彩 度 が10で あれ ば 、5R4/10と 表 記 す る。
38)5)参 照 。
量綱 彩色の色彩 効果25 附記 本稿 は修 士 論文(1998年1月 本 学 大学 院 提 出)の 一部 に加 筆訂 正 した もの で あ
る。執 筆 にあ た り、本 学 光森 正 士 教 授 に ご指 導 い た だ き、 正 倉 院事 務 所 の 大 山昭 彦 氏 、国立 歴 史 民俗 博 物 館 の濱 島 正 士 氏 、浄 瑠 璃 寺 の佐 伯 効 勝 副 住職 を は じめ 、多 くの方 々に ご助 力 いた だ き ま した。 こ こに記 して、 深 く感 謝 の意 を 申 し上 げ ます 。
参 考文 献
野 間 清 六 「量i燗彩 色 の展 開 とそ の 法 則 」 『仏 教 芸 術』371958 久 野 健 「法 隆 寺 金堂 天 井 板落 書 」 『美術 研 究 』140号1947
『醍 醐寺 五 重 塔 五重 塔 図 譜』 文 化 財 保護 委 員 会1959
福 山 敏 男 ・秋 山 光和 『美 術研 究 所 研 究 報告 栄 山 寺 八角 堂 の 研 究』 便 利 堂1951 茂 木 曙 ・中 里 寿克 ・江 本 義理 「国 宝唐 招 提 寺 金 堂 内 部天 井 彩 色保 存 処 置 」 『保 存 科
学』14号1975
秋 山 光和 「醍 醐 寺五 重 塔 五重 堵 壁 画 の様 式 と技 法 に就 いて 」 『美術 研 究 』196号1957
『平 等院 鳳 鳳 堂 大観 一一 建 築 』 岩 波書 店1988
『平 等院 鳳 鳳 堂大 観 三 絵 画 』 岩 波書 店1988
永 嶋正 春 「粉地 彩 絵 八 角 几 の彩 色 」 『正 倉院 の 木 工』 日本 経 済新 聞 社1978 秋 山 光和 ・柳 澤 孝 「慈 尊 院弥 勒 仏 坐 像 台 座 蓮 弁 の 装 飾 文様 」 『美術 研 究 』183号
東 京 国 立文 化 財 研 究 所1973
『大和 古 寺 大観 室 生 寺』 岩 波 書 店1976
『大和 古 寺 大観 当麻 寺』 岩 波 書 店1980
久野 健 「板 光背 像 に つ い て」 『美術 研 究 』199号1958 高 田 修 編 『醍 醐 寺 五 重塔 の壁 画』 吉川 弘 文 館1959
『二 中歴 』(『 改 訂 史 籍集 覧 第23冊 』)
竹 島卓 一 『営造 法 式 の 研究 三 』 中央 公 論 美 術 出版1997
山崎 昭 二 郎 「社 寺 建 築 彩 色文 様 復 元模 写 につ い て」 『日本 の 美術 』 日本建 築 装 飾 の 装 飾No.2461986
平 田 寛 『絵 仏 師 の 時 代[研 究 編]』 中央 公論 美術 出版1994 澤村 専 太 郎 『日本 給 書 史 の研 究 』 星野 書 店1931
小 口八 郎 『古美 術 の 科学 一材 料 ・技 法 を探 る一』 日本 書 籍1980 山崎 一 雄 『古文 化 財 の科 学 』 同 朋社1987
「年 次 報 告」 『正 倉 院 年報 』9〜14号 宮 内 庁 正倉 院 事 務 所1986〜1991
成 瀬 正 和 「奈 良時 代 の鉛 系 白色 顔 料 」 『正 倉 院 年 報 』14号 宮 内 庁 正倉 院 事 務 所 1991
山崎 一 雄 「鳳 風 堂 の 彩 色 に用 い られた 「顔 料 」 に つ いて 」 『仏 教 芸 術』31号1957 山崎 一 雄 「鳳 鳳 堂 壁 画顔 料 の 化 学 的研 究 」 『美術 研 究 』144号
秋 山 光和 「日本 上 代 絵 画 に お け る紫 色 とそ の 顔 料 」 『美 術研 究 』220号 東 京 国立 文 化 財 研 究 所1962
美 術手 帖 増 刊 号編 集 部 編 『材料 と表 現 日本 画』 美術 出 版社1986 野 間 清六 「奈 良朝 に於 け る顔 料 の 種類(上 ・下)」 『国 華』619・620号
渡邊 明義 「古 代 の彩 書 材料 と技 術 一 奈 良時 代 を 中心 と して 一」 『鈴 木敬 先 生 還 暦 記 念 中 国絶 書 史論 集 』 吉 川 弘文 館1981
塩 田 力蔵 『東 洋絵 具考 』 ア トリエ社1942 小林 重 順 『新 ・カ ラー イ メー ジ事 典』 講 談 社1993 中 原勝 嚴 『科学 の話 シ リー ズ9色 の科 学 』 培 風館1991 福 田邦 夫 『色 彩調 和 論 』 朝 倉書 店1996
量綱 彩色 の色彩 効果27
A青 系 と赤燈 系 ・緑黄 系 と赤紫 系 B青 系 と赤燈 系 ・緑 系 と紫系
C青 系 と赤 系 ・緑系 と赤 系 D青 系 と赤系 ・緑 系 と紫 系
E青 系 と赤 系 と緑 系 図1組 み 合 わ せ パ ター ン
2‑1彩 度 の 低 い 段 を 含 む 量 綱2‑2各 段 と も高 い 彩 度 を も つ 量 綱 図2量 綱 と 彩 度
3‑1淡 色 に 向 か っ て 狭 い 量 綱 3‑2濃 色 に 向 か っ て 狭 い 量 綱
3‑3各 段 と も等 幅 の 量 綱 図3量 綱 の 幅