「自然条件に規定されている人間社会」

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関大トピックス

「自然条件に規定されている人間社会」

編集後記

 社会安全学部が設置されている高槻に有馬高槻活断層帯が 走っている。この断層帯は1596年にマグニチュード7.5前後の慶 長伏見の大地震を起こしている。秀吉の伏見城天守と高槻にある 今城塚古墳を倒壊させている。高槻は、京都の西山山系と大阪の 生駒山系の隙間の地峡の南部にある。この地峡は淀川がつくった ものであり、大阪平野の扇状帯の起点となっている。淀川の上流に は京都盆地、琵琶湖、山城国の畿内の河川がつくった平地が連なっ

ている。この地峡帯は地勢上の日本の要所であり、古くからの交差 点となっている。山手に芥川山城、麓に今城塚古墳、高槻城がある。

 天下分け目の「山崎の合戦」、「鳥羽・伏見の戦い」などはこの地峡 を挟んで繰り広げられている。人々が往来する国道、高速道路、鉄 道、新幹線がこの地峡を通り、さらに名神と新名神のジャンクショ ン・インターチェンジの巨大工事が進められている。高槻にいると 自然条件に規定されて社会がつくられていることがよくわかる。

 表紙のひときわ大きな「500」の文字は、この『関西大学通信』が第500号であることを表しています。1969(昭和44)年の創刊以来、50有余年 を経ての達成です。これを記念して、今月号は『関西大学通信』や50年にまつわる話題を取り上げました。他にも、この季節に注意が必要な食中 毒、ユニークなゼミ、現役関大生の活躍など、皆さんの学生生活を豊かにするヒントが満載です。決算報告にも関西大学のイマとミライを知る情 報が詰まっています。皆さん、ぜひご友人に声を掛けてみてください。「関大通信読んだ?」 (広報委員長・総合情報学部准教授 西田晃一)

高鳥毛 敏雄

社会安全学部教授

2022.7   Vol. 500

第2学舎1号館前広場がリニューアルオープン

 大学昇格100年記念事業の一つとして、第2学舎1号館前広場が正式にリニューアル オープンしました。

 この広場は、ちょうど100年前に学是「学の実化」

を提唱された山岡順太郎先生の銅像を囲むように、

休憩用のベンチを設置し、周辺においては夜間照 明の再整備を行いました。また植栽エリアには千里 山キャンパスにゆかりのある草花が植えられ、一部 にはボランティア学生が植えた花が咲き誇ってい ます。友達との待ち合わせや空き時間の休憩に絶

好の場所となっていますので、ぜひご利用ください。リニューアルオープンされた広場

漕艇部女子がダブルスカルで大活躍  漕艇部の新川真梨(文学部4年次生)・細野花歩

(社会安全学部2年次生)ペアは、3年ぶりに開催され た第73回朝日レガッタにおいて、ダブルスカルで見 事優勝を達成。また第100

回全日本選手権大会にお いても軽量級ダブルスカ ルで第3位に入賞するなど

大活躍しました。 朝日レガッタ優勝の細野さん(左)と 新川さん(右)(写真提供:漕艇部)

3年ぶりの総合関関戦で見事優勝

 1978年に始まった総合関関戦は、本学体育会と関西学院大学体育会の全クラブが良きライ バルとして対戦し、親睦を深めています。この2年間は、新型コロナウイルス感染症の影響により 中止となりましたが、今年は2019年以来3年ぶりの開催となり、千里山キャンパスを主会場に開 催されました。

 両校体育会は各競技の戦力が拮抗している ため、前哨戦は5勝5敗4分の五分。最終日(6月 19日)を前にして14勝11敗5分と本学がやや リードの状況でした。そして迎えた最終日。この日 も大接戦となりましたが、フェンシング部と弓道 部が勝ち、総合成績を16勝15敗5分として4年 ぶりの総合優勝を達成。この結果、通算成績は本

学の18勝23敗1分(3大会中止)となりました。 優勝杯と賞状を手にする実行委員長の城野吏哉さん(左)と体育会 本部長の里見柊音さん(右)、真ん中は学生センターの松村吉信所長

(写真提供:関大スポーツ編集局)

アーチェリー部、関西学生リーグで準優勝、

全日本学生王座決定戦に期待

 関西学生男子1部リーグ戦において、Aブロック の本学は最終戦で同志社大学と対戦。全勝同士と いうことで、手に汗握る展開となりましたが、3205−

3200の僅差で見事勝利を挙げると共に、1982年 のリーグ戦よりブロック制が取り入れられてから初 のブロック優勝を果たしました。

 その後、Bブロック優勝校との優勝決定戦に敗れ はしたものの、準優勝校として全日本学生アーチェ リー王座

決定戦に 臨みます。

アーチェリー部男子(写真提供:関大スポーツ編集局)

『関西大学通信』が  できるまで

発行日:2022年7月1日 発行:関西大学広報委員会

〒564-8680 大阪府吹田市山手町3-3-35 電話:06-6368-1121(大代表)

関西大学は2022年に大学昇格100年を迎えました

感染拡大予防策を講じた上で、

取材や制作を行っています。

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『関西大学通信』

制作スタート

 社会情勢やタイムリーな話題から、

学生の皆さんが関心を持ちそうな事柄 を選んでいます。

 学生の皆さんの知識を深め、教養を 身に付けてもらえるように、時事的で 社会的なテーマを設定しています。

 関大の歴史や伝統・トリビアを紹介してい ます。このコーナー

を 読 め ば 、普 段 、 キャンパス内で疑 問に思っていること が解決できるかも しれませんよ。

 各学部・研究科のゼミや研究 室、授業を紹介しています。その 授業やゼミを履修する学生にも 簡単なインタビューをしますの で、取材陣が訪れた際はご協力 をお願いします。

 学生の皆さんと年齢が近い卒業生(卒業後10年程度)

を紹介しています。さまざまな業界、職種で活躍されてい る方が登場していますので、就職活動の参考にしてくだ さい。

各コンテンツ紹介 !

 『関西大学通信』は、1969年6月19日に創刊され、今月号で通算500号です。 

 創刊から約40年間は新聞形式でしたが、その後変遷を重ね、第411号(2012年1月)で現在のスタイルに落ち着 きました。第417号から「KANDAI STYLE」

というニックネームも決定し、今日まで皆さんに親しまれてきました。

 今月号では、 『関西大学通信』を身近に感じてもらえるよう、企画立案から発行までの工程や各企画の趣旨を紹介 したいと思います。

(約 5 カ月

企画

前)

※学生からニックネームを募集し、83点の中から「KANDAI  STYLE」が選ばれました。このニックネームには、学生一人一人違うものがあり、その自分らしさを失ってほ しくないという思いが込められています。

誌面デザインを作成する。

デザインや原稿をチェックする。

修正する。

校閲をする。

色校正をする。

校了 !

社会情勢や学生の皆さんにとって役立ちそう な知識から企画を考える。

各学部から選出された教員と事務職員で会 議を行い、企画を決める。

企画を基に編集会議が行 われ、誌面の内容と大ま かなデザインを決める。

校正・編集

(約 2 カ月前)

印刷・発行

『関西大学通信』は、

各学部オフィス前や 図書館、正門、食堂などで 手に入れることができます。

編集会議

写真撮影

取材の日時や場所を決める。

取材当日!ライターがインタビューし、

 カメラマンが写真撮影を行う。

原稿作成とチェック。

アンケートやインタビューに 協力してくれた学生には謝礼として

図書カードをプレゼントします!

※誌上教室のアンケートでは、抽選で20人の  協力者に図書カードをプレゼント!

取材・写真 撮影

(約 3 カ月前)

インタビュ

確認と修正を 繰り返します。

特集

アンケート などで 情報収集

1

関西大学通信 2022.7 vol.500 関西大学通信 2022.7 vol.500

2

 この企画の主役は、学生の皆さ んです。勉学のほかに、クラブ活動 やボランティア活動などに意欲的 に取り組んでいる学生を紹介して います。人選方法もユニークで、掲 載された学生が次の号に登場す る学生を推薦していますので、このコーナーのサブタイ トルは「関大生の友の輪」となっています。

(3)

DOCTORʼS COMMENTS

 保健管理センター 医師 井上澄江先生 次回のテーマは… 「読書の秋」

 関大生は、普段どのように図書館を利用しているのでしょうか。10月号 の誌上教室は、「読書の秋」をテーマに図書館を特集します。学生の図書 館利用状況や活用法などについて、アンケート調査を実施します。

アンケート結果を拝見して、食中毒にかかった経験のある方 の多さに驚きました。

焼き鳥屋や居酒屋で、鶏ささみや鶏たたきのメニューを見

たら、つい注文したくなる気持ち、よく分かります。でも、カンピロ バクターによる食中毒の危険があるので、一般的には控えて おく方が賢明だと思います。カンピロバクターによる食中毒は、

アンケートの回答にあるように、かなり重い症状になることがあ ります。さらにギラン・バレー症候群といって、運動神経の障 害により、手足の筋肉に麻痺が生じたりすることがあります。呼

吸筋に麻痺が生じれば、呼吸困難によって人工呼吸器が必要 となることもあります。

口を付けたペットボトル飲料の常温放置にも、十分に注意を 払いましょう。あなたのお口の中にいた細菌が繁殖します。

高温多湿は、多くの細菌にとって最適な増殖環境ですので、

夏季にはなおいっそう注意しましょう。

0 20 40 60 80 100 120 140 160(人)

3時間以内 6時間以内 半日 12時間 以内 1日 24時間 以内 2日 48時間 以内 3日 72時間 以内 1週間以内 1カ月以内 その他

5256

76 148

8 20 05

3

1. 開けたら、早めに   飲みきろう!

 時間をおいて飲むのは、や めましょう。飲み残したら、

冷蔵庫に入れて、なるべく早 めに飲みきりましょう。

2. きちんとコップに   ついで飲もう!

 外ではムリかもしれない けれど、家ではボトルから 直接飲まないで、コップに ついで飲みましょう。

 暑い部屋では、ボトルが破 裂することも!飲み残しはき ちんと捨てて、容器はリサイ クルへ。

3. 部屋や車の中に   置き忘れない !

細菌がもたらす食中毒は夏場(6月〜 8月)に多く発生します。食中毒を引き起こす細菌の多くは、室温で増殖が活発になり、

人間の体温ぐらいの温度で増殖のスピードが最も速くなります。

今月号の誌上教室では、食中毒に関する皆さんの経験談や考えを取り上げながら、日常に潜む食中毒のキケンを紹介します!

読めばこれからの行動が変わるかも!?

アンケート期間:4月28日〜 5月12日 対象者:学生 回答者数:368人

こんなことに注意しよう

!

ペットボトルを開けて、口を付けて飲んだ ものの残りを、いつまでなら大丈夫だと 思って飲みますか?

  (夏場に室温で置いている場合)

宮崎市ウェブサイト「【緊急のお知らせ】鶏肉の生食を原因とするカンピロバクター食中毒について」

(https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/health/food̲and̲health/300568.html(参照2022.5.12))

より引用し原稿の一部を編集

実は、 「新鮮な鶏肉だから安心」ではありません!

 今回のアンケートにおいて、食中毒の原因として突出して多かったのは「生 の鶏肉」。カンピロバクターによる食中毒は、生や加熱不十分な肉が主な原 因とされていますが、特に鶏肉はカンピロバクターが内部に浸潤しやすいた め、高確率で菌を保有、排出しています。

 カンピロバクターは水洗いやあぶった程度では完全に殺菌することはで きません。しかも、菌は時間の経過により減少していくため、新鮮な鶏肉ほ どカンピロバクター属菌が多く付着しているのです。

「新鮮な鶏肉だから安心」は間違いです。鮮度に関わらず、鶏肉は中心部 までよく加熱(75℃1分間以上)したものを食べるようにしてくださいね!

   居酒屋などで鳥刺しを勧められたら食べますか?

    ※鶏肉や鳥刺しが元々嫌いな人は除く

アンケート

カンピロバクター(生の鶏肉)には気を付けて!

食中毒のキケンが潜む“ペットボトルの飲み残し”

 意外と見落としがちな「飲み物からの食中毒」。何か食べなが ら、ペットボトル飲料を飲む。皆さんよくやっていることかと思い ます。食べ物や口からは、色々な菌が必ず飲み物に入ります。そ して飲み物によっては、その栄養を菌に利用されて、どんどん増 えていってしまうのです。特に、菌の栄養となる炭水化物やタン パク質を多く含む飲み物には注意が必要です。

 ちなみに、強い酸性の飲料(例:100%オレンジジュース、スポーツドリンク)や、カテキンを 含む緑茶などは、細菌の増殖を抑制する場合もあります。しかし、さまざまな成分を含んだ 多くの種類の飲料が市販されており、このような種類の飲み物であっても一概に安全とは 言えず、気を付けるに越したことはありません。

容器に口を付けて飲んだ直後から48時間後までの菌数

(夏場の室温を想定した30℃に放置)

930

9,100 3

3

開封・飲用 24時間後 48時間後

ミルクコーヒー

麦 茶

内閣府食品安全委員会ウェブサイト「キッズボックス総集編(2019年3月発行)ペットボトル、飲み残しに気をつけよう!」 

(https://www.fsc.go.jp/kids-box/kidsbox̲magazine/page09.html(参照2022.5.12))より引用 宇都宮市ウェブサイト「(9)口をつけたペットボトル飲料、飲み残しは飲まない方がいい?」

(https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/kurashi/eisei/shikenjo/1014682.html

(参照2022.5.12))より引用

55 %

(126人)

45 %

(102人) 食べる 食中毒の 食べる

不安があるため 食べない

特に気にせず、

勧められたら食べる :

食中毒の不安がありつつも 食べたいので食べる :

70

32

アンケート

見た目やにおいでは分からない?細菌がもたらす食中毒のキケン

 「この食べ物大丈夫かな?」と感じたら、においを嗅いだり、

見た目や味に異常が無いか確認したりすることもあるで しょう。自分では大丈夫だと思っていても、食中毒を引き起 こす細菌は、腐敗を起こす菌とは違い、食べ物の味やにお い、見た目では分からないことが多いです。ほんの少しの量 で食中毒を引き起こすこともあるので要注意 ! 細菌が体の 中で増えたり、毒素を生み出すことで、食中毒の症状が現れ

ます。 札幌市ウェブサイト「覚えて防ごう!食中毒の基礎知識」

(https://www.city.sapporo.jp/hokenjo/shoku/chudoku/chudoku.html(参照2022.5.12))より引用

カンピロバクター  細菌性食中毒の原因として第1位の食中毒菌。生や加熱不十分な肉が主な原因です。

サルモネラ  重症化しやすい食中毒菌の一つ。主な原因食品は卵料理です。

腸管出血性大腸菌O157  主に牛肉などの肉類が原因。高齢者や子どもは重症化する危険性があります。

ウェルシュ菌  カレーやシチュー、スープなど、一度に大量に加熱調理する時に注意が必要です。

セレウス菌  主にチャーハン、ピラフ、オムライス、スパゲティなどの米飯類・麺類が原因で起きています。

代表的な菌の種類

アンケート結果

   食中毒の原因は何でしたか?

21

生の鶏肉件 (50%)

5

件 (11.9%)

腐った食べ物

3

件 (7.1%)

2

件 (4.8%) その他

生卵

3

件 (7.1%)

生魚

5

件 (11.9%)

貝類(生がきなど)

ノロウイルス

3

件 (7.1%)

 アンケートに回答した368人中、52人(14%)が食中毒にか かった経験がありました。

 その中で、原因が思い当たる42件のうち、なんと半数の21 件が「生の鶏肉」でした。鶏肉による食中毒(カンピロバクター)

にかかった皆さんの多くは、居酒屋などでつい生の鶏肉を食べ てしまい、症状が出てから後悔の念に苛まれているようです…。

生の鶏肉

 焼き鳥屋で食べてしまった。その時はとて もおいしく感じていて、まさか食中毒にな るとは思わなかった。 

  (文学部2年次生)

 物珍しさで危険だと思いながらも食べたた め、二度と食べないと誓った。

  (商学研究科M2)

 ひたすらお腹が痛く、食欲もなく、ちょうど 一週間何も食べることができなかった。 

(政策創造学部3年次生)

腐った食べ物

 

お弁当を学校に持って行く際は、氷で冷や しながら持っていくべきだったと反省した。 

(外国語学部3年次生)

 

夏の食べ物の腐敗速度を侮らないように しようと思った。 

  (社会学部2年次生)

生魚

 海鮮定食屋さんで食べた「ぶり丼」にあた り、お腹を下して2時間ほど歩けなかった。

浜辺のお店なので新鮮だと思い疑わな かった。 (文学研究科M1)

ノロウイルス

 

吐き気と下痢が数日間続いた。

  (総合情報学部4年次生)

 

2〜3日、嘔吐と下痢が止まらなかった。

  (理工学研究科M2)

生卵

 

賞味期限の過ぎている卵を生で食べた。

下痢の症状が数日間続いた。

  (社会学部2年次生)

貝類

(生がきなど)

 

嘔吐、下痢の症状。家族でかき鍋をした際、

生がきを食べた人だけが翌日撃沈した。 

(法務研究科2年次生)

3

関西大学通信 2022.7 vol.500 関西大学通信 2022.7 vol.500

4

(4)

総合印刷業/マーケター

身近な社会的課題を発見

総合情報学部 総合情報学科

「専門演習・卒業研究」

岡田 朋之 教授

必須アイテムは、ノートPC、会社用スマートフォン、手帳。そしてリモート ワークに必須のマイクスピーカーとイヤホン。

 総合情報学部の岡田朋之教授のゼミでは「メディアで社会を動かす」をテーマに、

メディア・社会に関する知識の修得と、フィールドワークやメディア制作の実践から得 た経験や成果を卒業論文の制作に生かします。

 専門演習の春学期にはJR 西日本グループの協力を得て、梅田近辺の街づくりに関す るワークショップを実施。実際に駅周辺を歩き、景観的な配慮やトイレ設備などの課題 を見いだし、メディアを使って課題解決するための企画をJR 西日本グループの方々に 提案し、評価をいただきました。並行して、社会とメディアの把握や、メディア制作に 必要なリサーチ方法などを学びます。

 秋学期は、沖縄県石垣市の一般社団法人と連携し、多様な形で継続的に街を支える 関係人口の形成を目的とするプロジェクトに取り組みました。より深い興味を持って、

若者に石垣島を訪れてもらうためのメディアとして、学生自ら考案した「泡盛」とスイー ツを関連付けた『泡盛×sweets』、伝統工芸品「ミンサー織り」のロマンティックな由 来に着目しアピールする『Minsah(ミンサー)』の2種類のリーフレットを作成し配架。

 さらに伝統行事に関わる人々の思いを伝える『絆ぐ想い〜石垣島の人々と伝統行 事〜』の動画を作成し、2022年3月にYouTubeに公開しました。メディア制作を通し て、現地の方と何度も打ち合わせを行い、外部の評価を受け、課題にぶつかりそれを乗 り越え、新たな視点を見いだす。評価を得るまで繰り返し取り組む姿勢が身に付くと言 います。

 「自分が取り組むテーマについては、徹底的に掘り下げていくこと。その過程では、

好きなことだけを扱うのではなく、苦手なことも視野におさめて探求していく姿勢を持っ てください。メディア本来の役割は『社会をより良くしていく』ことです。メディアに限 らず、実践で得た成功体験を生かして、社会の課題、それがたとえ小さなものであっ てもチャレンジし続けてほしい」とエールを送ります。

Marketer Marketer

ある1日の スケジュール

母校の仕事を通して卒業生の才能や 発想に触れることが幸せです

 マスコミ業界に憧れて、関西大学社会学部のマス・コミュニケーション学 専攻(現在のメディア専攻)に入学した来司さん。マスコミの中でも広告に興 味があり、写真や絵に新たな意味を持たせることで世界を変えることができ る、クリエイティブな業界に魅力を感じ、制作ディレクターとしてDNPコミュ ニケーションデザインに入社しました。撮影や取材の現場に立ち合い、カメラ マン、グラフィックデザイナー、コピーライターといった才能に特化した人た ちのアイデアに触れ、自分一人の発想だけでは生まれてこない、斬新な作品 に出合えることがディレクターの醍醐味の一つで、何よりも楽しいと言い ます。

 2011年から『関西大学通信』の企画・制作という形で、学生に身近に感 じてもらえる広報誌作りに励みました。仕事を通して母校と関われることが うれしくて、苦労と感じたことはなかったそう。「『働く関大人』の取材では、多 種多様な業界で活躍している卒業生の話を聞くことができ、どんな職種で も熱意を持って仕事と向き合えば、人として信頼されるのだと感じ、私自身 の仕事の取り組み方を見直すきっかけにもなりました」と振り返ります。

 昨年10月にはマーケティングソリューション部門に異動。社内のディレク ターがお得意先様により良い提案ができるように、市場調査や基礎資料の 作成などのサポートを行っています。今後はマーケティングのスキルをさら に磨き、今注目されているSDGsやサスティナビリティなどの情報を収集し て知識を深め、「この分野は彼に任せよう」と信頼されるように、専門性を高 めていきたいと話します。

 最後に、「関西大学は学生の多様性を尊重し、自由な発想を受け入れてく れる場所です。大学時代の先生や友人との関わりはコミュニケーション能力 として、そして授業をはじめ大学での学びは会話のきっかけや発想の種とし て、社会人になってから生かされます。遊びも勉強も、興味があることには全 力で取り組み、たくさんの経験を積んでください」と締めくくりました。

大阪府立高槻南高等学校出身 1989年社会学部卒業

株式会社DNPコミュニケーションデザイン

来司 将 さん

メディアを使って何ができるか考え実践する

2種類のリーフレットを東京の 公立図書館、大阪市内の沖縄 料理店や沖縄物産店など関連 施設に配架しました。

つな

5 6

 映像だけでなく、紙媒体など幅広いメディアに 携わることができ、新たな分野にも挑戦できると 思いこのゼミを選びました。ゼミでの取り組みは スケールが大きく、想像以上の発信力がありま す。泡盛のリーフレット作成を通して、商品を作る 人の思いを正しくくみ取って発信するという、メ ディアの持つ責任を実感しました。自分たちで全 て考え実践するため、計画性や、周囲の評価をば ねに頑張れる、意欲のある方にお勧めです。

成冨彩花さん(4年次生) 森岡遼太郎さん(4年次生)

 ゼミではメディアの影響力やメッセージ性など社 会的側面について学ぶことができます。自ら考案し たドキュメンタリー動画の制作では、自分の発信し たいことと、現地の方の考えをまとめ、矛盾なく伝え ることに苦労しました。取材で現地の方から悩みや 考えを聞き出すという経験から、将来はいろいろな 人の手助けができる仕事に就きたいです。岡田教授 のゼミで、企業との連携や現地での取材など、学生 時代だからできることをぜひ体験してください。

関西大学通信 2022.7 vol.500 関西大学通信 2022.7 vol.500

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総合印刷業/マーケター

身近な社会的課題を発見

総合情報学部 総合情報学科

「専門演習・卒業研究」

岡田 朋之 教授

必須アイテムは、ノートPC、会社用スマートフォン、手帳。そしてリモート ワークに必須のマイクスピーカーとイヤホン。

 総合情報学部の岡田朋之教授のゼミでは「メディアで社会を動かす」をテーマに、

メディア・社会に関する知識の修得と、フィールドワークやメディア制作の実践から得 た経験や成果を卒業論文の制作に生かします。

 専門演習の春学期にはJR 西日本グループの協力を得て、梅田近辺の街づくりに関す るワークショップを実施。実際に駅周辺を歩き、景観的な配慮やトイレ設備などの課題 を見いだし、メディアを使って課題解決するための企画をJR 西日本グループの方々に 提案し、評価をいただきました。並行して、社会とメディアの把握や、メディア制作に 必要なリサーチ方法などを学びます。

 秋学期は、沖縄県石垣市の一般社団法人と連携し、多様な形で継続的に街を支える 関係人口の形成を目的とするプロジェクトに取り組みました。より深い興味を持って、

若者に石垣島を訪れてもらうためのメディアとして、学生自ら考案した「泡盛」とスイー ツを関連付けた『泡盛×sweets』、伝統工芸品「ミンサー織り」のロマンティックな由 来に着目しアピールする『Minsah(ミンサー)』の2種類のリーフレットを作成し配架。

 さらに伝統行事に関わる人々の思いを伝える『絆ぐ想い〜石垣島の人々と伝統行 事〜』の動画を作成し、2022年3月にYouTubeに公開しました。メディア制作を通し て、現地の方と何度も打ち合わせを行い、外部の評価を受け、課題にぶつかりそれを乗 り越え、新たな視点を見いだす。評価を得るまで繰り返し取り組む姿勢が身に付くと言 います。

 「自分が取り組むテーマについては、徹底的に掘り下げていくこと。その過程では、

好きなことだけを扱うのではなく、苦手なことも視野におさめて探求していく姿勢を持っ てください。メディア本来の役割は『社会をより良くしていく』ことです。メディアに限 らず、実践で得た成功体験を生かして、社会の課題、それがたとえ小さなものであっ てもチャレンジし続けてほしい」とエールを送ります。

Marketer Marketer

ある1日の スケジュール

母校の仕事を通して卒業生の才能や 発想に触れることが幸せです

 マスコミ業界に憧れて、関西大学社会学部のマス・コミュニケーション学 専攻(現在のメディア専攻)に入学した来司さん。マスコミの中でも広告に興 味があり、写真や絵に新たな意味を持たせることで世界を変えることができ る、クリエイティブな業界に魅力を感じ、制作ディレクターとしてDNPコミュ ニケーションデザインに入社しました。撮影や取材の現場に立ち合い、カメラ マン、グラフィックデザイナー、コピーライターといった才能に特化した人た ちのアイデアに触れ、自分一人の発想だけでは生まれてこない、斬新な作品 に出合えることがディレクターの醍醐味の一つで、何よりも楽しいと言い ます。

 2011年から『関西大学通信』の企画・制作という形で、学生に身近に感 じてもらえる広報誌作りに励みました。仕事を通して母校と関われることが うれしくて、苦労と感じたことはなかったそう。「『働く関大人』の取材では、多 種多様な業界で活躍している卒業生の話を聞くことができ、どんな職種で も熱意を持って仕事と向き合えば、人として信頼されるのだと感じ、私自身 の仕事の取り組み方を見直すきっかけにもなりました」と振り返ります。

 昨年10月にはマーケティングソリューション部門に異動。社内のディレク ターがお得意先様により良い提案ができるように、市場調査や基礎資料の 作成などのサポートを行っています。今後はマーケティングのスキルをさら に磨き、今注目されているSDGsやサスティナビリティなどの情報を収集し て知識を深め、「この分野は彼に任せよう」と信頼されるように、専門性を高 めていきたいと話します。

 最後に、「関西大学は学生の多様性を尊重し、自由な発想を受け入れてく れる場所です。大学時代の先生や友人との関わりはコミュニケーション能力 として、そして授業をはじめ大学での学びは会話のきっかけや発想の種とし て、社会人になってから生かされます。遊びも勉強も、興味があることには全 力で取り組み、たくさんの経験を積んでください」と締めくくりました。

大阪府立高槻南高等学校出身 1989年社会学部卒業

株式会社DNPコミュニケーションデザイン

来司 将 さん

メディアを使って何ができるか考え実践する

2種類のリーフレットを東京の 公立図書館、大阪市内の沖縄 料理店や沖縄物産店など関連 施設に配架しました。

つな

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 映像だけでなく、紙媒体など幅広いメディアに 携わることができ、新たな分野にも挑戦できると 思いこのゼミを選びました。ゼミでの取り組みは スケールが大きく、想像以上の発信力がありま す。泡盛のリーフレット作成を通して、商品を作る 人の思いを正しくくみ取って発信するという、メ ディアの持つ責任を実感しました。自分たちで全 て考え実践するため、計画性や、周囲の評価をば ねに頑張れる、意欲のある方にお勧めです。

成冨彩花さん(4年次生)

森岡遼太郎さん(4年次生)

 ゼミではメディアの影響力やメッセージ性など社 会的側面について学ぶことができます。自ら考案し たドキュメンタリー動画の制作では、自分の発信し たいことと、現地の方の考えをまとめ、矛盾なく伝え ることに苦労しました。取材で現地の方から悩みや 考えを聞き出すという経験から、将来はいろいろな 人の手助けができる仕事に就きたいです。岡田教授 のゼミで、企業との連携や現地での取材など、学生 時代だからできることをぜひ体験してください。

関西大学通信 2022.7 vol.500 関西大学通信 2022.7 vol.500

(6)

Yuya Asada

浅田 悠耶 さん

商学部 4年次生

仲間と一緒につかんだ勝利は、何倍もの喜びに チームへの貢献が自らの原動力に!

攻撃する浅田選手(右)

なるほど・ザ・関大!

さん

今月の

関大生 の友の

KANDAI STY LE  KAN

DAI ST YLE  K

  KANLEDAI STY

DA AN

I STYLE  

DAI  KAN LE  STY NDA  KA TYL I S AN E  K

I S DA

LETY

  KANDAI S

TYLE  KANDAI STYLE KANDAI STYLE 

 小さなビルの2階でお好み焼き店「ヤネ」を開いて54年という矢根和子さんはコツコツと商い を続け、各種お好み焼きが550円前後という値段はこの10年あまり変わりません。変わったのは 客である学生。コロナ前は常連の学生が卒業するまでに後輩を次々に連れて来てくれたのが、そ うはいかなくなりました。ここ2年、学生人脈が途切れたのです。

 その傾向はこの店に限りません。「つい昨日も…」と矢根さん。「目と鼻の先で喫茶店をやって いた女性が、えっちらおっちら階段を上がってきて言うのです。“私、店閉じたで。客足は落ちたし、

私も夜中に手が痛うなって、かなわんねん”」。44年間の歴史はあっさり幕を閉じました。

 それでも矢根さんは言います。「ぼちぼち学生さんも戻ってきたし、人間、元気なうちは…。ボケ 防止になるし」。

 40年ほど前から多国籍風のカフェレストラン「CAPE COD」を夫の三千雄さんと営む木村 清子さん。コロナでしんどい思いをしましたが「やめよう」と思ったことは一度もなかったそうです。

売り上げがドドドーンと落ちた時も、根拠はありませんでしたが「流行り病には必ず終わりがある」

と信じて、「持ち帰り弁当」を始めました。一人で1万枚のビラを周辺の住宅に配ったと言います。

 そしてこの4月「あと10年は働きたい」と“人生最後の賭け”に出ました。1カ月間店を閉じて 改装し、念願のソフトクリームの製造機を手に入れました。「この界隈ではなぜかソフトクリー ムをその場で作ってくれる店がないから、当たるのは間違いなし」と確信して開店。その翌日、

木村さんは気付きました。なんと5軒先に小さな「ソフトクリーム専門店」がオープンしていた のです。それでも木村さんはニコニコと「何でもやってみんと分からんやん」。専門店の店主・

榊祐二さんは「私もびっくりしましたが、2つの店で学生に楽しんでもらえたら」と前向きです。

浅田悠耶さんは、昨年6月に関西学生リーグで48年ぶりに1部に復帰した体育会フェンシン グ部のキャプテンを務めています。高校に入学してから初めて剣を握り、フェンシン

グの面白さに引かれて入部。個人戦でインターハイに出場するほどの実力を身 に付けました。関大に入学した当初はサークル活動をしていましたが、フェン シング部の同級生に声を掛けられ、再びフェンシングの道を歩み始めます。「高 校では個人戦での技術を磨いてきましたが、大学ではチームとして1部昇格に貢 献したいと思い入部を決めました」と言います。

フェンシングには3種目あり、それぞれルールや体の使い方が異なりま す。1部昇格という目標に向けて取り組んだのは、種目別にリーダーを 決め、練習メニューやアドバイスを任せること。浅田さんは各種目の リーダーたちと連携しながら練習全体を取りまとめるようにしました。

特に印象に残っているのが、昨年3月の当時の1部チーム・龍谷 大学との練習試合です。全種目で龍谷大学に勝てたことは、大きな 自信になり、6月のリーグ戦での勝利につながりました。「勝てる チームをつくるには、仲間の存在が大切。積極的に部員間でのコ ミュニケ―ションの場をつくったり、部員の個性を理解した上でアド バイスしたりするように心掛けています」と浅田さん。練習と休憩時間 での部内の雰囲気にメリハリを付けることを意識していたそうです。

目標を達成した後は、部員のモチベーションを維持するために、他大学の 選手と合同練習を行うなど、フェンシングに集中できる環境づくりに努めま した。その成果として、今年5月の大会では1部リーグ初勝利を収めました。

キャプテンとしての経験やチーム戦を通して、誰かを支えることが好き だと気付いた浅田さんは、チームのために、今まで磨いてきた技術を後輩 に伝えることが使命だと感じているそうです。

「フェンシングは大学から始めても、努力次第で勝てる競技です。体格や 性格でプレイスタイルを選べ、さまざまな戦術を組めるのが魅力です。新 たにスポーツを始めたいと思っている人はぜひ入部してください」と締め くくりました。

くん

学生街の様変わりと変わらぬ店主気質

──学生密着の編集方針、商店街も取材──

 今月号で本誌は500号を迎えました。学生に密着した編集方針で時折本誌で取り上げた大学前の商店街も、半世紀 経つとさすがに様変わりしました。書店は次々に消え、逆にラーメン店が増えました。それでも変わらない人たちがいます。

 80歳を超えても「ボケ防止です」とお好み焼き店を続ける女性、飲食店をリニューアルしながらたくましくコロナ禍を生 きる夫婦、一昔前の下宿屋の雰囲気を大切にする学生マンションの経営者ら。それぞれの今をのぞいてみます。

約半世紀で

『関西大学通信』は

500号

コロナ禍で途切れた学生人脈と、途切れない元気

な、なんと別々のソフトクリーム店が同時開店

小洒落た学生マンションも「廊下掃除で家賃割り引きます」

 この界隈で学生マンションをいくつか経営する横山正和さんは 2代目です。亡くなった父親は九州・筑豊炭田の出身で、一念発起 して関西大学の当時の第2部(夜間)に入学。苦学しながら大学 職員になった人物です。「父は、学生時代からまだ地価の低かった 大学周辺の土地をコツコツと買い、学生下宿を始めた」と言います。

 横山さんは小さい頃から下宿している関大生と同じ屋根の下で 暮らし、食事を共にしていました。今もその気分は変わりません。自 分と同じマンションに住む学生が、廊下などの共用部分を掃除して くれたら、「家賃を割り引く(学生コミュニティーに委託金を支払う)」

そうです。洒落た学生マンションでも「大家さん」は健在です。

次回は、浅田さんからのご 紹介で池田匠吾さん

( 人 間 健 康 学 部 2年次生)が登場。

お楽しみに!

7

関西大学通信 2022.7 vol.500 関西大学通信 2022.7 vol.500

8

(7)

Yuya Asada

浅田 悠耶 さん

商学部 4年次生

仲間と一緒につかんだ勝利は、何倍もの喜びに チームへの貢献が自らの原動力に!

攻撃する浅田選手(右)

なるほど・ザ・関大!

さん

今月の

関大生 の友の

KANDAI STY LE  KAN

DAI ST YLE  K

  KANLEDAI STY

DA AN

I STYLE  

DAI  KAN LE  STY NDA  KA TYL I S AN E  K

I S DA

LETY

  KANDAI S

TYLE  KANDAI STYLE KANDAI STYLE 

 小さなビルの2階でお好み焼き店「ヤネ」を開いて54年という矢根和子さんはコツコツと商い を続け、各種お好み焼きが550円前後という値段はこの10年あまり変わりません。変わったのは 客である学生。コロナ前は常連の学生が卒業するまでに後輩を次々に連れて来てくれたのが、そ うはいかなくなりました。ここ2年、学生人脈が途切れたのです。

 その傾向はこの店に限りません。「つい昨日も…」と矢根さん。「目と鼻の先で喫茶店をやって いた女性が、えっちらおっちら階段を上がってきて言うのです。“私、店閉じたで。客足は落ちたし、

私も夜中に手が痛うなって、かなわんねん”」。44年間の歴史はあっさり幕を閉じました。

 それでも矢根さんは言います。「ぼちぼち学生さんも戻ってきたし、人間、元気なうちは…。ボケ 防止になるし」。

 40年ほど前から多国籍風のカフェレストラン「CAPE COD」を夫の三千雄さんと営む木村 清子さん。コロナでしんどい思いをしましたが「やめよう」と思ったことは一度もなかったそうです。

売り上げがドドドーンと落ちた時も、根拠はありませんでしたが「流行り病には必ず終わりがある」

と信じて、「持ち帰り弁当」を始めました。一人で1万枚のビラを周辺の住宅に配ったと言います。

 そしてこの4月「あと10年は働きたい」と“人生最後の賭け”に出ました。1カ月間店を閉じて 改装し、念願のソフトクリームの製造機を手に入れました。「この界隈ではなぜかソフトクリー ムをその場で作ってくれる店がないから、当たるのは間違いなし」と確信して開店。その翌日、

木村さんは気付きました。なんと5軒先に小さな「ソフトクリーム専門店」がオープンしていた のです。それでも木村さんはニコニコと「何でもやってみんと分からんやん」。専門店の店主・

榊祐二さんは「私もびっくりしましたが、2つの店で学生に楽しんでもらえたら」と前向きです。

浅田悠耶さんは、昨年6月に関西学生リーグで48年ぶりに1部に復帰した体育会フェンシン グ部のキャプテンを務めています。高校に入学してから初めて剣を握り、フェンシン

グの面白さに引かれて入部。個人戦でインターハイに出場するほどの実力を身 に付けました。関大に入学した当初はサークル活動をしていましたが、フェン シング部の同級生に声を掛けられ、再びフェンシングの道を歩み始めます。「高 校では個人戦での技術を磨いてきましたが、大学ではチームとして1部昇格に貢 献したいと思い入部を決めました」と言います。

フェンシングには3種目あり、それぞれルールや体の使い方が異なりま す。1部昇格という目標に向けて取り組んだのは、種目別にリーダーを 決め、練習メニューやアドバイスを任せること。浅田さんは各種目の リーダーたちと連携しながら練習全体を取りまとめるようにしました。

特に印象に残っているのが、昨年3月の当時の1部チーム・龍谷 大学との練習試合です。全種目で龍谷大学に勝てたことは、大きな 自信になり、6月のリーグ戦での勝利につながりました。「勝てる チームをつくるには、仲間の存在が大切。積極的に部員間でのコ ミュニケ―ションの場をつくったり、部員の個性を理解した上でアド バイスしたりするように心掛けています」と浅田さん。練習と休憩時間 での部内の雰囲気にメリハリを付けることを意識していたそうです。

目標を達成した後は、部員のモチベーションを維持するために、他大学の 選手と合同練習を行うなど、フェンシングに集中できる環境づくりに努めま した。その成果として、今年5月の大会では1部リーグ初勝利を収めました。

キャプテンとしての経験やチーム戦を通して、誰かを支えることが好き だと気付いた浅田さんは、チームのために、今まで磨いてきた技術を後輩 に伝えることが使命だと感じているそうです。

「フェンシングは大学から始めても、努力次第で勝てる競技です。体格や 性格でプレイスタイルを選べ、さまざまな戦術を組めるのが魅力です。新 たにスポーツを始めたいと思っている人はぜひ入部してください」と締め くくりました。

くん

学生街の様変わりと変わらぬ店主気質

──学生密着の編集方針、商店街も取材──

 今月号で本誌は500号を迎えました。学生に密着した編集方針で時折本誌で取り上げた大学前の商店街も、半世紀 経つとさすがに様変わりしました。書店は次々に消え、逆にラーメン店が増えました。それでも変わらない人たちがいます。

 80歳を超えても「ボケ防止です」とお好み焼き店を続ける女性、飲食店をリニューアルしながらたくましくコロナ禍を生 きる夫婦、一昔前の下宿屋の雰囲気を大切にする学生マンションの経営者ら。それぞれの今をのぞいてみます。

約半世紀で

『関西大学通信』は

500号

コロナ禍で途切れた学生人脈と、途切れない元気

な、なんと別々のソフトクリーム店が同時開店

小洒落た学生マンションも「廊下掃除で家賃割り引きます」

 この界隈で学生マンションをいくつか経営する横山正和さんは 2代目です。亡くなった父親は九州・筑豊炭田の出身で、一念発起 して関西大学の当時の第2部(夜間)に入学。苦学しながら大学 職員になった人物です。「父は、学生時代からまだ地価の低かった 大学周辺の土地をコツコツと買い、学生下宿を始めた」と言います。

 横山さんは小さい頃から下宿している関大生と同じ屋根の下で 暮らし、食事を共にしていました。今もその気分は変わりません。自 分と同じマンションに住む学生が、廊下などの共用部分を掃除して くれたら、「家賃を割り引く(学生コミュニティーに委託金を支払う)」

そうです。洒落た学生マンションでも「大家さん」は健在です。

次回は、浅田さんからのご 紹介で池田匠吾さん

( 人 間 健 康 学 部 2年次生)が登場。

お楽しみに!

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関西大学通信 2022.7 vol.500 関西大学通信 2022.7 vol.500

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【関西大学DX推進構想】

 2021年度決算は、常任理事会の審議を経て、理事会(2022年5月 12日)において議決・承認され、評議員会(2022年5月26日)に報告 いたしました。

 2021年度も新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行が続く 中、本学では対策本部会議を定期的に開催し、学生生徒などの学習 機会の確保、ステークホルダーの安全確保に努めました。さらに、新 型コロナワクチン職域接種(大学拠点接種)を1日900人規模で実施 し、計2万6,000人以上の学生・教職員とそのご家族などへ接種の機 会を提供しました。

 また2021年度は、創立150周年を見据えて策定した長期ビジョン

「Kandai Vision 150」における10年の政策目標を掲げて5年目の 折り返し年度にあたることから、前半5年間の進捗状況および後半5 年間の方向性を報告書として取りまとめました。これも踏まえて、寄 附行為において中期的な計画と位置付ける2022年度からの中期行 動計画(5年)を策定し、評議員会の議を経て理事会で決定しました。

今後とも、教育研究環境の質的向上と財政基盤の確立に向けて、

オール関大で取り組んでまいります。

1 決算の概要

 文部科学省による「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プ ラン」に、「関大LMSで繋がる『今の学び』と『未来の自分』−学習環境 の再構築とキャリア支援−」および「越える・広がる・交り合う−関西 大学グローバルスマートキャンパス構想−」の2件の取り組みが採択 され、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を強力に推進しま した。

 ポストコロナ時代における授業の受講スタイルの多様化を念頭 に、従来の学習支援システム「関大LMS」を大幅に機能強化すべく、ク ラウド型動画編集配信ソフト(Panopto)を導入しました。Panopto を活用したオンデマンド配信授業では、解説動画とスライド動画が 1画面で視聴可能で、解説動画には自動字幕が付き、動画にメモを 残すことや、キーワード検索が可能になり、学習効率が向上します。ま た、動画の保存容量が無制限になり、視聴ログを活用した授業改善 や、教育の高度化・最適化につながる環境整備となりました。

2 事業の概要

 2021年度に実施した事業のうち主なものは、次のとおりです。

(1)教育研究活動

ア DXによる大学教育の高度化

 さらに、対面授業に近いリアリティのある遠隔授業はもちろんのこ と、デジタル技術を活用したグローバルスマートクラスルーム

(GSC)やオンライン授業支援アプリ、VR(仮想現実)による教育コン テンツを活用することで、キャンパス間や国・地域を越えてオンライ ンでつながり共に学べる環境を整えました。

 「KU-SMART  PROJECT「人に届く」関大メディカルポリマー

(KUMP)による未来医療の創出」では、事業開始5年満了の節目を 機に、2021年4月に先端科学技術推進機構の傘下に関大メディカ ルポリマー研究センターを設置しました。研究面では、実施計画に 基づき研究ステージを進め、医療器材・医療システムの実用化を 目指した活動を活発に行い、また、広報面では、1月に「関大メディカ ルポリマーシンポジウム」、3月に「関大メディカルポリマー実践講 座」と題した講演会を実施しました。

 「オープン・プラットフォームが開く関大の東アジア文化研究

(KU-ORCAS)」では、これまでの研究活動の総括を目的とした研 究集会や国際シンポジウムを実施したほか、日英研究者協同によ る展覧会〔大坂画壇展〕を京都国立近代美術館にて開催しました。

広報面では、KU-ORCASのデジタルアーカイブ資料を国立国会 図書館サーチ(NDL  SEARCH)およびJAPAN  SEARCHからも検 索できるよう、データ連携を行いました。

ク 「関西大学研究ブランディング事業」の推進

2021年度 学校法人関西大学 決算の概要

 DXによる社会の大変革が進む中、変革の原動力となる人工知能

(AI)を利活用できる人材が世界的に不足しており、政府も育成目標 を掲げて取り組んでいます。

 本学では、複数の学部・研究科における実践教育に加えて、2021 年4月から全キャンパスの学生が履修できる全学的カリキュラムとし て、共通教養科目「活用法を見聞するAI・データサイエンス」、「活用 法を体験するAI・データサイエンス」を開講しました。また、2022年 度から新たに「社会のためのデータサイエンス実践基礎」、「AI・デー タエンジニアリング実践基礎」を開講します。これらの4科目は、それ ぞれ1年以上の実施実績を経て、文部科学省が定める「数理・データ サイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル、応用基 礎レベル)」への申請を予定しています。

 また、梅田キャンパスにおいても企業とタイアップした実践の場を 展開するなど、法人・教学をあげて全学生がデジタル社会の基礎知 識を学べる環境を整えています。

イ 数理・データサイエンス・AI教育の推進

 2021年4月から法政大学との交換派遣留学を開始しました。この プログラムは、2020年12月に締結した「法政大学と関西大学との 学生交流に関する協定書」および「覚書」に基づき、1年間または1学 ウ 関西大学・法政大学学生交流プログラム(国内留学制度)の開始

 本学教員のさまざまな研究・教育活動、学外との共同・連携活動 などを動画で伝える、教員の魅力紹介ウェブサイト「関大先生チャン ネル−気づきを与える、知の動画アーカイブ−」を立ち上げました。

 同ウェブサイトでは、

教員の活動の動画検索 のほか、本 学 の 特 色 あ る研究・教育活動のテー マに沿った動 画をプレ イリストとしてまとめた コン テ ンツ も あり、今 後、さらなる動画数の充 実を図ってまいります。

キ 「関大先生チャンネル−気づきを与える、知の動画アーカイブ−」

の開始

【システム理工学部におけるAI・IoT教育システムの構築】

 5年計画の4年目となる2021年度は、大学間連携により高等教育の 更なる国際通用性・競争力の強化を図る組織として、文部科学省の主 導のもと「国際化促進フォーラム」が発足し、本学が幹事校の一つに選 ばれました。同フォーラムの1プロジェクトとして、本学は「Japan  Multilateral COIL/VE Project (J-MCP)」を担い、国内外の大学を 対象に、世界中の学生がオンラインで協働学習を行う「21st  Century  Skillsプログラム」、「UMAP-COIL Joint Honors Program2021」、

「Online Global Mindset Program」、「BUSINESS CAMP」を実施し ました。また、COIL / VEが今後の国際教育の発展に果たす重要な役 割について、同フォーラムのオンラインセミナーとワークショップを開 催し、世界各国から参加がありました。

 文学部では、教育課程の充実と活性化を図るため、2021年度に専 修の改編を行い、「ヨーロッパ文化専修」、「教育文化専修」、「アジア文 化専修」の3つの専修がスタートしました。

 経済学部では、留学プログラム(台湾)をオンラインで実施し、協定 校との交流発表会を行ったほか、最終の合同授業においては、グルー プワークで台湾や日本について調べたことを発表し、語学交流のみな らず、相互理解を促進す

る機会となりました。

 また、政策創造学部で も、SDGsや経済学に関 する講義、現地学生との 交流などを行う、オンラ インでの国際教育プロ グラムを実施しました。

カ 学部における教育改革の推進

エ 文部科学省「大学の世界展開力強化事業(COIL型教育を活用 した米国等との大学間交流形成支援)」の展開

 総合情報学部では、2021年度から、文理融合の情報教育カリキュ ラムを基盤として、「データサイエンス教育プログラム」を開設しまし た。このプログラムは、データの収集・表現・解析の基礎を学ぶ「基 礎プログラム」と、データを高度に活用する理論やAIを利用した情報 システムの構築等を学ぶ「応用プログラム」からなり、2021年度は、

4名が基礎プログラムを修了しました。

 また、システム理工学部では、データサイエンス分野で活躍しうる AI・IoT人材の育成を、産業界・大学・高校の連携による取り組みで実 施しており、2017年度から、オープンラボ、研究体験・見学会、企業と のAI・IoTインターンシップを行っています。2021年度は、電気電子 情報工学科の「データサイエンティスト育成プログラム(2020年度 開始)」で実践的なデータ分析技術を体験するデータサイエンス基 礎PBLを実施しました。また2022年度から、機械工学科では、物理現 象を計測して「意味のある情報」を抽出する実践的な教育プログラム

「機械工学データサイエンス教育プログラム」を開始します。

オ 総合情報学部およびシステム理工学部におけるデータサイエ ンス教育の取り組み

期間、交流先の大学で学び、修得した科目を単位認定する制度です。

法政大学からは5名の学生を受け入れ、本学からは1名の学生を派 遣しました。7月には、それぞれの留学生を招いて学長主催の座談会 が開催され、和やかな雰囲気の中、関東圏と関西圏の文化や表現の 違いについて懇談しました。

【政策創造学部国際教育プログラム(タイ)の様子】

【関大先生チャンネル】

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