卒業研究論文
大学受験モデルと入学金返還による 入学者数の予測
学籍番号 00D8101037F
阿久澤 あずみ
中央大学理工学部情報工学科 田口研究室 2004 年 3 月
あらまし
本研究では,大学受験における入学金の役割を「入学者を確定するための保証金」と考 える.受験者と大学の期待効用を定式化し,両者の総期待効用が最大となる妥当な金額を 算出することを目的とする.
ここでは入学金が返還されることで,どのくらい入学者の確定が不安定になるのか,受 験回数と入学者数の面からシミュレーションを行い予測し,上述の効用を算出する基本と なる量を得る.入学金の影響を大きく受ける私立大学を対象とし受験モデルを作成する.
この受験モデルを用いて入学金納入における受験者の意思決定を考える.受験者は合格し た際に入学金納入の有無を決定し続けて最終的に入学校を定める.最適決定を行ったとき の受験者の期待効用を確率的多段決定過程を用いて定式化し,求めた受験者の期待効用が 最大になる受験回数を推定する.入学金の有無による受験回数の変化から入学者数がどの くらい変化するのか,つまり入学者の確定がどのくらい不安定になるのか予測する.
キーワード:受験シミュレーション,確率的多段決定過程,動的計画法
目次
第1章 はじめに... 1
第2章 受験モデル 2.1 合否状況データについて...2
2.2 受験者の偏差値の設定 2.2.1 受験者数の設定...4
2.2.2 正規分布...5
2.2.3 Box-Muller法(極座標法) ...6
2.3 志望大学の設定 2.3.1 乱数の決定...8
2.3.2 志望大学を決定するアルゴリズム...12
2.4 実力発揮の度合の設定...15
2.5 募集人数に対する水増し率の設定 2.5.1 水増し率設定の目的...16
2.5.2 水増し率の設定方法...16
第3章 動的計画法 3.1 動的計画法の特徴...19
3.2 多段決定過程(multi-stage decision process) 3.2.1 基本構造...19
3.2.2 要素間の関係...20
3.2.3 n段決定過程...21
3.2.4 多段決定問題...22
3.3 最適性の原理による多段決定問題の解法 3.3.1 最適性の原理(Principle of Optimality) ...22
3.3.2 最適性の原理の数学的表現...22
3.3.3 逐次関係と最適化...23
3.4 確率的多段決定過程...24
第4章 受験回数の推定 4.1 確率的多段決定過程の適用 4.1.1 基本構造...26
4.1.2 第n段階で得られる効用の設定...29
4.2 受験回数別期待効用の算出...31
第5章 入学金返還による入学者数の予測... 34
第6章 おわりに... 38
謝辞 39
参考文献 39
第 1 章 はじめに
現在,商品・サービスの多様化の進展による消費者の選択の自由が拡大する反面,消費 者と事業者との間にある情報・交渉力の格差を背景に,消費者が事業者との間で締結する 消費者契約にかかわるトラブルが増加している.こうした中で,平成 13 年 4 月 1 日に「消 費者契約法」が施行された.この法律は,「事業者」と「消費者」との間の消費者契約で消費 者に不当な不利益が生じないことを目的としており,適用除外を設けず全ての取引を対象 としている.この「事業者」には大学等の学校法人や専門学校が,「消費者」には大学等の受 験者が含まれ,授業料や入学金などの納入金も消費者契約の例外ではない.つまり,「すべ りどめ」として入学試験を受け合格したものの,その後本命の大学にも合格した場合に,「す べりどめ」の大学にすでに納めた入学金や授業料などの前納金が返還されないという問題 が消費者契約法の対象となる.納入金をめぐって,入学辞退者が返還を求める訴えが各地 裁で起こされ,平成15年9月以降,授業料返還を各大学に命じる判決が相次いでいる.9 月の京都地裁判決では,授業料だけでなく入学金を含めた返還が認められた.現在,入学 金は返還されないことが慣行となっているが,消費者契約法を契機に大学側は入学金の返 還が求められている.
入学金は,学生としての籍を確保するとともに,入学に伴う手続きや準備に要する手数料 としての役割をもつ.それだけでなく,入学者数を予想する上での重要な目安ともなってい る.
入学金が返還されることにより,以下のメリット・デメリットが考えられる.
メリット
1) 受験者は経済面に余裕が出る.
2) 受験者は多数の大学を受験しやすくなり,学校を選択する幅が広がる.
デメリット
1) 学校経営に影響し,授業料の値上げにつながる可能性がある.
2) 特定の大学の競争率が高くなり,大学の二極化が進む.
3) 受験者の受験回数が増加し,偏差値の高い受験者が複数の大学に入学手続きを行い定 員を占めてしまう.このため,入学できたはずの受験者が入学できなくなる.
4) 入学者数の予測が困難になり,実際の入学者と定員との過不足が大きくなる.
本研究では上記のデメリットに注目し,入学金を返還することで入学者の確定がどのく らい不安定になるのかシミュレーションにより予測する.
第 2 章 受験モデル
2.1 合否状況データについて
参考文献[1]より「合否グラフ[学部集計]」,「併願の実態と合否状況[学部集計]」を,参考 文献[2]より「募集人数」データを利用した.
「合否グラフ[学部集計]」とは,大学学部別の合否状況を,受験者の成績と受験者数・合格 者数・不合格者数についてまとめたものである.表2.1に例を示す.これらの表をもとに,
各大学の受験者・合格者の偏差値分布・合格率を設定した.
「併願の実態と合否状況[学部集計]」とは,受験者が受験した大学とその併願大学の受験 者数・合格者数・入学者数を集計したものである.表2.2に例を示す.これらの表から併願 傾向を見つけ,志望大学を選ぶ際の基準とした.ただし,これらのデータは旺文社の模試 を受けた学生のみを対象としている.よって,サンプル数が少ないためデータに偏りがあ ると考えられる.
現在の入試制度より,国立大学の合格発表は私立大学より後であり,第一志望として受 ける受験者が多いことから,入学金の影響を大きく受けるのは私立大学であると考えられ る.したがって,本研究では1996年度入学試験の私立大学の理学部・工学部を対象とする.
対象とした大学を表2.3に示す.
表2.1 大学学部別の合否状況
表2.2 併願大学の実態と合否状況
表2.3 研究対象とした私立大学
埼玉工大(工) 成蹊大(工) 東京理科大(理工) 明星大(理工) 城西大(理) 拓殖大(工) 東京理科(基礎工) 立教大(理) 千葉工大(工) 玉川大(工) 東京理科大(工) 早稲田大(理工) 青山学院大(理工) 中央大(理工) 東邦大(理) 神奈川大(理) 学習院大(理) 帝京大(理工) 東洋大(工) 神奈川大(工) 北里大(理) 東海大(理) 日本大(理工) 神奈川工科大(工) 慶応大(理工) 東海大(工) 日本大(工) 関東学院大(工) 工学院大(工) 東京工科大(工) 日本大(生産工) 湘南工科大(工) 国士舘大(工) 東京電機大(理工) 法政大(工) 東京工芸大(工) 芝浦工大(工) 東京電機大(工) 武蔵工大(工)
上智大(理工) 東京理科大(理) 明治大(理工) 以上42学部
2.2 受験者の偏差値の設定
2.2.1 受験者数の設定
全受験者数を予測するモデルとして以下の式を用いた.
) :
( )
18
( 都道府県
現役志願者数 全志願者数 理工学部の志望割合
進学率 歳の人口
全受験者数
i
i pi
xi× × ×
=∑
(2.1) ただし,対象とする都道府県は埼玉・千葉・東京・神奈川の1都3県とする.
式(2.1)を求めるために必要なデータは,以下の4つである[3,4,5].
1) 埼玉・千葉・東京・神奈川の18歳の人口(表2.4) 2) 大学等の進学率(表2.5)
3) 学科別学生の構成比(表2.6) 4) 現役・浪人別志望者数(表2.7)
以上のデータより算出した58,041人を全受験者数とし,シミュレーションを行う.
表2.4 都道府県別18歳人口(人) 計 埼玉 千葉 東京 神奈川 398,646 86,993 73,354 138,019 100,280
表2.5 高等学校卒業者の都道府県別
現役大学等進学率,専修学校(専門課程)進学率及び就職率(%)
区分
大学等 進学率
専修学校 (専門課程)
進学率
就職率
埼玉 43.9 20.6 12.4
千葉 42.3 20.1 11.7
東京 52.5 15.0 6.6
神奈川 48.8 17.8 8.7
表2.6 学科別学生の構成比(%)
計 人文科学 社会科学 理学 工学 農学 医・歯学 薬学 家政 教育 その他
100.0 16.6 39.9 3.6 18.9 2.8 2.6 1.5 1.8 5.6 6.7
表2.7 現浪別・男女別志願者数(人) 男子 女子 男女計 現役 245,166 184,860 430,026 浪人等 110,198 41,734 151,932 現浪計 355,364 226,594 581,958
2.2.2 正規分布
正規分布は様々な統計的処理をする上で中心的な役割を果たす分布で,ランダムな要素 が数多く合成される場合は,この分布で近似されることが多い.
正規分布の定義
連続型の確率変数X のとる値は実数全体であるとして,その確率密度関数が
) (
2 ) 1
( 2
2
2 ) (
∞
<
<
−∞
=
− −
x e
x f
x
σ
µ
σ π
であるとき,X は正規分布(normal distribution)に従うという.
ここで,µとσ は定数でありσ >0とする.すなわち,正規分布は2つの母数µとσ2
により決定されるのでN(µ,σ2)と表される.特に,正規分布N(0,1)を標準正規分布とい う.なお,µとσ2はそれぞれX の平均と分散である.
正規分布が統計的処理をする上で重要であるのは,確率分布に関して次の中心極限定理 が成り立つからである.
中心極限定理
X1,X2,L,Xnは互いに独立で,いずれも平均µ,分散 をもつ同じ分布に従ってい る と す る . こ の と き , も と の 分 布 が 何 で あ っ て も , が 十 分 大 き け れ ば , 和
の分布は正規分布 に従い,平均
σ2
n Xn
X
X1+ 2 +L+ N(nµ,nσ2) =
∑
i
Xi
X n1
の分布は正
規分布 ⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜
⎝
⎛ N n
2
,σ
µ に従う.
すなわち,
n X n
n X Z i
i
σ µ σ
µ = −
−
=
∑
は,n→∞のとき,極限分布としてN(0,1)に従う.
受験者の能力値は正規分布に従うものと仮定する.大学の偏差値との整合をとるため,
受験者の能力値を大学の偏差値同様,参考文献[1]をもとに設定する.参考文献[1]での偏差 値は全学部を対象として換算された値であるため,理工学部のみを対象としている本研究 において,受験者の能力値は平均50 の正規分布に従わない.2.1節で説明した「合否グラ フ[学部集計]」の偏差値別受験者数を対象学部においてすべて合計し,理工学部における全 受験者の能力値の平均・標準偏差を求めた.この結果より,平均 47.7,標準偏差 7.7 の正 規分布に従う乱数を発生させ,その値を受験者の能力値とする.これ以降,受験者の能力 値を受験者の偏差値と呼ぶ.正規乱数の発生方法として,次の2.2.3節のBox-Muller法を 用いる.
2.2.3 Box-Muller法(極座標法)
2 次元の標準正規分布を考える.
{ }
∫
∫
− +
−
−
=
×
=
∈
A y x A
y x
dxdy e
dxdy e
e A
Y X P
2
2 2
2 2
2 2
2 1
2 1 2
) 1 , (
π
π
π (2.2)
このとき同時密度関数が二つの密度関数の積となっているので, は独立である.
を極座標
Y X, Y
X, R,Θ (0≤R<∞,0≤Θ<2π)に変換すると
{R ∈A}=
∫
A e−r rdrdP θ
π
2
2
2 ) 1
,
( Θ (2.3) となる.このことから,確率変数R,Θは独立で,Rは
[
0,∞)上で確率密度が2 r2
re− (2.4) となる分布に従い,Θは
[
0,2π]
上で確率密度π 2
1 (2.5) に従う一様分布になることがわかる.Rの分布関数は
2 0
2
2 2
1 ) (
r
r s
e ds se r
F
−
−
−
=
=
∫
(2.6)であり,その逆関数は
) 1 log(
2 )
1(
u u
F− = − − (2.7) と計算できる.
したがって正規分布に従う乱数は,次のような手続きで生成できることがわかる.
Step1
区間
[
0,1]
上の独立な一様乱数U,Vを生成する.Step2 V
U, を式(2.5),(2.7)を用いて変換し,
V U R
π 2
log 2
= Θ
−
=
よりR,Θを得る.
(U が
[
0,1]
上の一様乱数なら1−U も[ ]
0,1上の一様乱数となる.) Step3さらにR,Θを変換し,
Θ
=
Θ
= sin cos
R Y
R X
二つの正規乱数X,Yを得る.
2.3 志望大学の設定
受験者に各大学に対する志望度を与える.ただし本研究では,志望度は正規分布に従う ものと仮定する.偏差値α と正規乱数εの和を平均,乱数σ を標準偏差とする正規分布
を発生させ,受験者の各大学に対する志望度とする.偏差値に加える乱数 )
, (α+ε σ2
N εは,
「自分の偏差値よりどのくらい上を志望するのか」を表す.
β
大学の偏差値
α ε
志望度 σ
図2.1 受験者の志望度 2.3.1 乱数の決定
発生させる乱数εの平均を決定するために,2.1 節で説明した「合否グラフ[学部集計]」
から偏差値別に受験大学の偏差値の平均を求めた.結果を表2.8に示す.
表2.8 受験者の偏差値と志望大学の偏差値との関係
受験者の 偏差値(A)
受験大学の 偏差値の
平均(B)
受験大学の 偏差値の 標準偏差(C)
(B−A) 受験者の 偏差値(A)
受験大学の 偏差値の
平均(B)
受験大学の 偏差値の 標準偏差(C)
(B−A)
36 46.82 3.05 10.82 54 57.71 4.70 3.71 38 47.36 3.39 9.36 56 58.83 4.66 2.83 40 48.41 3.30 8.41 58 60.23 4.55 2.23 42 49.67 3.82 7.67 60 61.19 4.83 1.19 44 51.07 4.22 7.07 62 62.72 5.23 0.72 46 52.21 4.34 6.21 64 64.69 4.96 0.69 48 53.59 4.15 5.59 66 65.81 4.13 -0.19
50 54.93 4.63 4.93 68 66.66 3.68 -1.34 52 56.31 4.82 4.31 70 67.5 2.99 -2.5
求めたい乱数は受験者の偏差値に加える値であるので,表 2.8 の(B−A)列を考える.(B
−A)列をもとに,受験者の偏差値を変数とする1次関数の近似式εµ(α)=a+bαを単回帰
分析より求める.分析結果を図2.2,および表2.9,表2.10に示す.
-4 -2 0 2 4 6 8 10 12
35 45 55 65
受験者の偏差値
(B-A)
(B-A)列 y=a+b+a+b εµ(α)=a+bα
図2.2 εµ(α)の近似式
表2.9 εµ(α)の回帰統計 表2.10 係数 係数 標準偏差
a 22.89484 0.404437
b -0.3568 0.007489 重相関R 0.996494
寄与率R2 0.993001 補正R2 0.992564 標準誤差 0.329674
寄与率 値とは回帰式の当てはまりの良さをはかる基準である.しかし,説明変数を増 やしていくと寄与率 は1に近づくので,自由度調整済決定係数の補正 を説明変数選択 基準として用いる.表 2.9 より,求めた回帰式は当てはまりが良いといえるので,この 1 次関数は偏差値を用いて乱数
R2
R2 R2
εの平均を連続的に表している.
発生させる乱数εの標準偏差についても同様に,回帰分析より近似式を求める.表2.8の
(C)列を目的変数,偏差値を説明変数とする.1次関数よりも2次関数で近似した方が当て
はまりがよかったので,2 次関数の近似式 を用いる.分析結果を図 2.3,および表2.11,表2.12に示す.
) 2
(α α α
εσ =a+b +c
0 1 2 3 4 5 6
35 45 55 65
受験者の偏差値
(C)
(C)列
y=a+b+c+a+b+c εσ(α)=a+bα+cα2
図2.3 εσ(α)の近似式
表2.11 εσ(α)の回帰統計 表2.12 係数 重相関R 0.905862
寄与率R2 0.820586 補正R2 0.796665 標準誤差 0.278745
係数 標準偏差
a -8.87566 1.882922
b 0.478021 0.072932
c -0.00417 0.000685
表2.11の補正 より,求めた2次回帰式は当てはまりが良いといえるので,この2次関 数は偏差値を用いて乱数
R2
εの標準偏差を連続的に表している.
したがってεµ(α),εµ(α)より,発生させる乱数εは,偏差値αを変数とする関数
) :
( )
( ) ( )
(α N ε α ε α N 標準正規乱数 ε = × µ + σ
と表せる.よって,志望度とする正規分布の平均µは
) (α ε α µ = +
となる.
次に,志望度とする正規分布の標準偏差σ を考える.受験者個人の併願大学データがな いため,表2.2の大学に対する併願大学データを代用する.表2.2から受験大学と併願大学 の偏差値の関係をみる.受験大学に対する併願大学の偏差値の最小値,最大値を表2.13に 示す.「(C)−(B)」を受験者の志望度のばらつき,つまり図2.1のβ と等しいと仮定する.
標準正規分布の標準正規分布表からσ を設定する.志望大学の偏差値が「(C)−(B)」内で 99.7%占めると仮定する.標準正規分布表より,標準正規分布の累積密度関数
z e z
z z
z
d 2
) 1
( 2
− 2
∫
−=
Φ π
が0.997となる はz
997 . 0 ) 3
( =
Φ つまり,
997 . 0 ) 3 (
003 . 0 ) 3 (
= + Φ
=
− Φ
σ µ
σ µ
である.したがって,
6 )) B ( ) C ((
)) B ( ) C ((
) 3 ( ) 3 (
= −
−
=
−
− +
σ σ µ σ µ
と設定する.この値から偏差値を変数とする2次関数の近似式σ(α)を求める.
表2.13 受験大学と併願大学の偏差値との関係 受験大学の
偏差値(A)
併願大学の 偏差値 最小値(B)
併願大学の 偏差値 最大値(C)
受験大学の
偏差値(A) (B) (C) 受験大学の
偏差値(A) (B) (C)
43.2 43 51.6 49.2 43 62.3 53.2 43.7 62.0 43.7 43 53.8 49.5 42.2 59.5 53.8 43.7 67.5 44.6 43 51.6 49.7 43 57.7 53.8 45.8 67.5 45.3 43 53.6 49.9 43 62.3 54.6 47.3 59.5 46.1 42 54.2 50.0 43.7 57 56 48.3 67.5 46.2 43.7 54.2 50.7 43.2 59.5 56.5 48.3 67.5 46.3 43.7 53.8 51.4 45.8 63.3 57.2 51.4 67.5 46.8 43.2 55.1 51.4 43.2 59.5 57.7 46.1 67.4 46.8 43 52.1 51.6 43.2 62.3 59.5 46.1 67.6 47.3 43 58.9 52.5 48.3 59.5 62 48.3 67.6 48.3 43.2 62 52.7 48.3 62.0 67.5 53.8 71.8 48.7 43 59.5 52.8 46.1 58.9
以上のε(α),σ(α)を用いて,偏差値α の受験者の 大学に対する志望度i f(i)は
) :
) ( (
) (
) ( 2 ) 1 ,
( 2
2
) ( 2
) ) ( (
大学の偏差値
i i rank
e i
f
i rank
α ε α µ
α σ
α π σ α
µ
+
=
=
− −
(2.8)
となる.この式(2.8)から,志望大学を選択するアルゴリズムを考える.
2.3.2 志望大学を決定するアルゴリズム
各受験者において,偏差値と乱数の和を平均とする正規分布を与え,その分布を受験者 の各大学に対する志望度とする.次に,志望度の累積を求める.このとき,募集人数が多 い大学には多くの学生が受験するよう,正規分布を募集人数に比例するように 軸を拡張す
る(図2.4).発生させた一様乱数に対応する大学を志望大学とする(図2.5).
x
図2.4 受験者の大学別志望度分布
図2.5 一様乱数に対応する大学の選択
偏差値α の受験者の志望大学を決定するアルゴリズムは以下のようにする.
偏差値αの受験者の志望大学を決定するアルゴリズム
Step1
乱数εを発生させ,受験者が志望する大学の偏差値の平均をµ=α+ε,標準偏差をσ
とおく.正規分布に従う志望度 f(i) 2 2
)2 ) ( (
2 ) 1
( σ
µ
σ π
− −
=
i rank
e i
f (0≤i<N) を求める.
Step2
:=0
i からNまで,志望度の累積F(i) ∑
=
×
= i
k
k cp k f i F
0
) ( ) ( ) (
を求める.
Step3
:=0
i から1ずつ増やし,r≤F(i)となるまで[0,F(N)]の一様乱数rを発生させる.
Step4
iを志望大学とし,
) 1 ( ) (i =F i− F
) ( ) ( )
(k F k f i
F = − (i+1≤k ≤N) とする.
Step5
n個の が集まるまでi Step3,4を繰り返す.
Step6
集めた 個のn iを志望度f(i)の大きい順にソートする.
上記のアルゴリズムより受験者の志望大学を決定した結果生成した受験者分布と,実デ ータの受験者分布を比較する.これを図2.6に示す.
0 20 40 60 80 100
36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 偏差値
受験者数(人)
0 200 400 600 800 1000
実データの受験者数 (人) 実データの受験者数
受験者数
大学の偏差値:45.3 受験者の偏差値
(実データ)平均:42.8 標準偏差:4.6 (実行結果)平均:40.6 標準偏差:4.6
図2.6 実データとの比較
0 10 20 30 40 50 60
36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 偏差値
受験者数(人)
0 500 1000 1500 2000
実データの受験者数 (人)
0 5 10 15 20 25 30
36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 偏差値
受験者数(人)
0 200 400 600 800 1000
実データの受験者数 (人) 0
20 40 60 80 100 120 140
36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 偏差値
受験者数(人)
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
実データの受験者数 (人)
大学の偏差値:49.9 受験者の偏差値
(実データ)平均:44.9 標準偏差:5.1 (実行結果)平均:45.8 標準偏差:5.3
大学の偏差値:56.0 受験者の偏差値
(実データ)平均:50.8 標準偏差:6.4 (実行結果)平均:50.6 標準偏差:5.3
大学の偏差値:67.5 受験者の偏差値
(実データ)平均:60.4 標準偏差:8.0 (実行結果)平均:58.1 標準偏差:5.6
実データのサンプル数が少ないので単純には比較できないが,分布傾向としては近い形 となった.しかし,下位の大学における偏差値30台の受験者数と上位の大学における偏差 値60台,70台の受験者数に大きな違いが見られた.これは,志望度として受験者に与える 正規分布の標準偏差を設定する際に,受験者個人の併願データではなく大学に対する併願 大学のデータを代用したためと考えられる.大学の偏差値はおよそ40から70の間であり,
受験者の偏差値はおよそ30から80の間と,受験者の偏差値に比べ偏差値の幅が小さい.
よって,大学に対する併願大学のデータからは偏差値の低い受験者と高い受験者の志望傾 向をみることができなかったためと考えられる.
2.4 実力発揮の度合の設定
表2.1の合否分布より,受験者分布と合格者分布には図2.7の関係が見られた.Aは4.70,
Bは11.13となった.これらの関係をもとに各受験者の実力発揮の度合を設定した.受験者
の偏差値をもとに平均µ,分散σ を与え,正規分布 に従う乱数を発生させる.発 生させた乱数の値を試験結果とする.標準偏差は,常に自分の実力を発揮できる人や良い ときと悪いときの差が大きい人など,受験者の実力発揮の不確定さを表す.本研究では,
平均
) , (µ σ2 N
の正規乱数 偏差
受験者の偏差値+標準 1.5
µ = ,−4.3から4.3の一様乱数とする.
:受験者分布
:合格者分布 A
B
人数
C D E
偏差値
A:合格者偏差値の平均値と受験者偏差値の平均値との差 4.70
B:合格者偏差値の平均値と最小値との差 11.13
C:合格者偏差値の平均値と受験者偏差値の最小値との差 15.21
(大学の偏差値によって7.2から29.5まで変動する.)
D:合格者偏差値の最大値と平均値との差 12.10
E:受験者偏差値の最大値と最小値との差 27.31
(大学の偏差値によって19.3から41.6まで変動する.)
図2.7 合否分布の傾向
2.5 募集人数に対する水増し率の設定
2.5.1 水増し率設定の目的
シミュレーションを行う前に,大学ごとに合格者の入学辞退を見越した定員を定める必要がある.
よって,以下の方法を用いて募集人数に対する水増し率を求める.水増し率とは募集人数に対す る合格者数の割合とする.募集人数とは大学側が確保したい人数であり,参考文献[2]を用いる.
2.5.2 水増し率の設定方法
受験回数は,すべての受験者において等しいものと仮定する.水増し率の設定について,
表2.14,図2.8,図2.9を用いて説明する.表2.14に,ある受験者の志望大学を示す.図
2.8に各大学における試験結果を示す.図2.9に水増し率設定の手順を示す.ローマ字は受 験者の名前,添え字はその受験者の試験結果における初期順位とする.なお,α 大学の募 集人数はcp(α)=100,β 大学の募集人数はcp(β)=100とする.
表2.14 受験者の志望大学
第1志望 第2志望 第1志望 第2志望
A α 大学 β 大学 C β 大学 α 大学
B α 大学 β 大学 D β 大学 α 大学
100
・・・ ・・・
順位 1 2 3 4 99 101 102 103
A1 D2 C3 N4 K99 Z100 B101 P102 E103
B1 F2 A3 G4 T99 S100 D101 Y102 C103 α
β 大学 大学
図2.8 各大学における試験結果
大学ごとに試験を行い,試験結果の得点順に受験者をソートする.Aから順に志望大学に おける試験順位をみる.Aは第1志望であるα大学の受験者のうち試験順位がcp(α)番以内 なので,α 大学を仮決定(黄色の枠)とする.この時点で A は第 2志望以降の大学に入学す ることはないので,仮決定した大学より志望度の低い大学においてAを除去し(赤色の枠),
試験順位がA より低い受験者の順位を上げる.全受験者において同様の操作を繰り返す.
各大学,募集人数と仮決定した受験者数が等しくなった時点で終了とする(図2.9).つまり,
番目の受験者の試験順位が 番目だったとき,i大学は 番目まで合格発表をすれば 入学辞退者が出たとしても募集人数分入学者を確保できることになる. 番目に仮決定 した受験者の初期順位を定員とし,シミュレーションを行う.以下の例では,
) (i
cp k k
) (i cp
α 大学は試 験順位350番,β 大学は292番まで合格させればよいとわかる.水増し率は合格者数kを
募集人数cp(i)で割ることにより求まる.以上のモデルを適用した結果を図2.10に示す.
A1 D2 C3 N4 K99 Z100 B101 P102 E103
B1 F2 A3 G4 T99 S100 D101 Y102 C103 α
1 2 3 4 順位
β 大学 大学
100
・・・ 99 101 102 103 ・・・
A:第1志望のα大学を仮決定とし,
第2志望以降を除く.
図2.9 水増し率設定の手順
A1 D2 C3 N4 K99 Z100 B101 P102 E103
B1 F2 G4 H5 S100 D101 Y102 C103 U104 α大学
β 大学
順位 1 2 3 4 ・・・ 99 100 101 102 103 ・・・
A1 C3 N4 M5 Z100 B101 P102 E103 V104
B1 F2 G4 H5 S100 D101 Y102 C103 U104 α大学
β 大学
順位 1 2 3 4 ・・・ 99 100 101 102 103 ・・・
A1 C3 N4 M5 Z100 B101 P102 E103 V104
V6
F2 G4 H5 D101 Y102 C103 U104 Z105 α大学
β 大学
順位 1 2 3 4 ・・・ 99 100 101 102 103 ・・・
A1 C3 N4 O10 S348 H350 L353 I354
V6
F2 G4 J12 K280 P292 X300 Q304 R305 α大学
β 大
W352
学
1 2 3 4 ・・・ 99 100 101 102 103 ・・・
以後,各大学 と仮決定した受験者数が 等しくなるまで同様に繰り返す.
) (i cp
B:第2志望のβ 大学を仮決定とする.
C:第2志望のα大学を仮決定とする.
D:第1志望のβ大学を仮決定とし,
第2志望以降を除く.
A:第1志望のα大学を仮決定とする.
B:第1志望のβ 大学を仮決定とし,
第2志望以降を除く.
順位
0 1 2 3 4 5 6 7
40 45 50 55 60 65 70
大学の偏差値
水増し率
受験回数2回 受験回数3回 受験回数4回 受験回数5回 受験回数7回
図2.10 受験モデルにおける受験回数別水増し率
図2.10より,受験回数が増加するにつれて各大学水増し率が増加することがわかる.大 学の偏差値によって水増し率の増加に特徴が見られた.この特徴から,大学を 3 つのグル ープに分ける.偏差値が65より大きい大学を「上位大学」,偏差値55以上65以下の大学 を「中堅大学」,偏差値55未満の大学を「下位大学」と定義する.
上位大学では受験者偏差値のばらつきが大きいが,入学辞退者が少ないため水増し率の 変動が小さい.中堅大学では受験者偏差値のばらつきが大きく,合格者が他の大学へ入学 する可能性が高いため水増し率が高い.下位大学ではすべりどめとして受験する学生が多 いため,偏差値がより低い大学ほど水増し率が高いと推測される.
第 3 章 動的計画法
3.1 動的計画法の特徴
与えられた制約条件のもとで,目的関数を最大または最小にする最適解を求める問題を 最適化問題という.最適化問題に対する手法としては,微分法や変分法等の古典的方法,
ならびに,線形計画法(Linear Programming ;LP),非線形計画法(Non-Linear
Programming ;NLP)などがある.動的計画法(Dynamic Programming ;DP)は,非線形の場 合や不確実性のある場合を含む広範囲の多段決定過程の解法として,ベルマン(R.Bellman) により1950年代に開発され,以後ベルマンのほか,ハワード(Howard),ドレィフィス (Dreyfus),アリス(Aris),ロバーツ(Roberts),コーフマン(Kaufmann),ネンハウザー
(Nenhauser)らにより発展した数理計画法である.多段決定過程については3.2節に述べる.
動的計画法は次の2点を特徴とする.
(1)逐次関係の関数方程式を用いて解を求める.
(2)電子計算機を利用する.
3.2 多段決定過程(multi-stage decision process)
多段決定過程とは,その過程(process)がいくつかの段階(stage)から成り,かつその各段 階においてその過程の状態を決める決定変数があり,各段階においてその決定変数の値を 決めると次の段階に移るような過程をいう.
3.2.1 基本構造
多段決定過程の基本構造は,次の5つの要素からなる.
1) 状態の集合S:各段階における系を記述するために用いられる変数の集合.Sの要 素を状態変数といい,通常はベクトルで表される.
2) 決定の集合D:各段階で決定者に許容される選択.この決定は,各段の状態の変換 に影響を与え,しかも多段にわたり最終状態に関係してくる.
3) 状態変換T :各段階での決定の結果として,状態の推移法則を与えるもの.
4) 段階利得R:各段階で状態および決定により定まる定数.
5) マルコフ性:各段階でのシステムの状態と選択した決定だけが次の段階での状態に影 響を与え,プロセスの履歴には無関係であるという性質.動的計画法の 取り扱う多段決定過程では,系の過去の履歴は,未来の行動を定めるこ