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脳 内 硫 化 水 素 産 生 系 と そ の 代 謝 産 物 の 機 能 に 関 す る 研 究
S t u d i e s o f a N o v e l P a t h w a y o f H y d r o g e n S u l f i d e G e n e r a t i o n a n d P h y s i o l o g i c a l F u n c t i o n o f P o l y s u l f i d e
平 成 2 3 年 度 入 学
小 池 伸 (K o i k e , S h i n)
指 導 教 員
石 井 一 行
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目 次
略 語 頁
第 1 部
D-Cy st e i ne を 基 質 と し た 硫 化 水 素 産 生 経 路 の 解 明
序 論 1
第 1 節 マ ウ ス 組 織 ホ モ ジ ネ ー ト に お け る 硫 化 水 素 及 び 3 MP の 測 定
結 果 6
考 察 9
第 2 節 マ ウ ス に お け る D AO 及 び 3 MS T の 発 現 局 在 と 、
L
- Cy st e i ne と D- Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素 産 生 量 の 比 較
結 果 11
考 察 1 4
第 3 節
D-Cy st e i n e の 経 口 投 与 に よ る 組 織 内 Bo und S ul f ur レ ベ ル へ の 影 響
結 果 1 6
考 察 1 8
第 4 節
D-Cy st e i n e の 酸 化 ス ト レ ス 障 害 か ら の 小 脳 ニ ュ ー ロ ン 保 護 作 用 の 解 析
結 果 2 0
考 察 2 2
小 括 2 3
第 2 部 Bo un d S ul fur の 神 経 保 護 作 用 と そ の 機 序 の 解 明
序 論 2 6
3
第 1 節 P o l y sul fi de 処 理 に よ る N e uro 2 A(N 2 A) 細 胞 内 の Bo und S ul f ur レ ベ ル の 測 定
結 果 3 1
考 察 3 3
第 2 節 P o l y sul fi de の 酸 化 ス ト レ ス 障 害 に 対 す る 細 胞 保 護 効 果 の 解 析
結 果 3 5
考 察 3 8
第 3 節 P o l y sul fi de の K e a p1 / N rf2 系 に 与 え る 影 響 1 ) P o l y sul fi de の N rf2 核 内 移 行 促 進 作 用 の 解 析
結 果 3 9
2 ) P o l y sul fi de の K e a p1 タ ン パ ク 質 の 構 造 に 与 え る 影 響
結 果 4 2
考 察 4 5
第 4 節 P o l y sul fi de の P I 3 K / AK T 経 路 に 与 え る 影 響 と P I 3 K / AK T 経 路 の K e a p1 / N rf2 系 へ の 関 与
結 果 4 8
考 察 5 1
小 括 5 4
総 括 5 6
実 験 の 部
材 料 5 8
方 法 6 4
謝 辞 7 7
引 用 文 献 7 8
4
略 語
A R E Ant i o x i da nt re sp o nse e l e m e nt s BS A Bo v i ne a e rum a l bum i n
CAT Cy st e i ne a m i no t ra nsfe ra se C B S Cy st a t hi o ni ne β -s y nt ha se
γ -G CS γ -g l ut a m y l cy st e ine sy nt he t a se CS E Cy st a t hi o ni ne γ -l y a se
D AO
D-a m i no a ci d o x i da se
D MEM D ul b e cco ’s Mo di fi e d Ea g l e Me di um D T T D i t hi o t hre i t o l
ED TA Et hy l e ne di a m i ne t e t ra a ce t i c a ci d EG TA Et hy l e ne g l y co l te t ra a ce t i c a ci d
ERK Ex t ra ce l l ul a r si g na l re g ul a t e d ki na se F BS F e t a l b o vi ne se rum
HEP ES 4 -(2 -hy d ro x y e t hy l ) -1 -pi pe ra zi ne e t ha ne sul fo ni c a ci d
I 2 CA I ndo l -2 -ca rb o x y l i c a ci d α -K G α -K e t o g l ut a ra t e
L D H L a ct a t e de hy dro g e na se LT P L o ng Te rm P o t e nt i a t i o n
MO P S 3 -Mo r pho l i no pro p a ne sul fo ni c a ci d 3 MP 3 -m e rca pt o py ruv a t e
3 MS T 3 -m e rca pt o py ruv a t e sul furt ra n sfe ra se
5
N EM N -Et hy l m a l e i mi de N MD A N -m e t hy l -D -a spa rt a t e P BS P ho spha t e b uff e r e d sa l i ne
P T EN P ho spha t a se a nd Te nsi n Ho m o l o g D e l e t e d fro m Chro m o so m e 1 0
P I 3 K P ho spho i no si t i de 3 -ki na se P L P P y ri do x a l pho sph a t e
P VD F P o l y v i nyl i de ne di fl uo ri de S D S S o di um do d e cy l s ul fa t e
T RPA1 Tra nsi e nt Re ce pt o r P o t e nt i a l Anky ri n 1 WS T-8 Wa t e r so l ub l e Te tra zo l i um sa l t s -8
x CT Cy st i ne / G l ut a m a te t ra nspo rt e r s
1
第 1 部 D -Cy st e i ne を 基 質 と し た 硫 化 水 素 産 生 経 路 の 解 明
序 論
硫 化 水 素 は 、腐 卵 臭 を 伴 う 毒 ガ ス と し て 広 く 認 知 さ れ て い る 。そ
の 毒 性 は ミ ト コ ン ド リ ア の シ ト ク ロ ム c オ キ シ ダ ー ゼ の 阻 害 に よ
っ て 現 れ る
1 )。す な わ ち 、硫 化 水 素 ガ ス は 細 胞 呼 吸 を 阻 害 す る こ と
に よ っ て 、 特 に 酸 素 要 求 性 の 高 い 中 枢 神 経 系 な ど に 障 害 を 与 え て 、
人 体 を 死 に 至 ら し め る 事 も あ る 。公 衆 衛 生 学 的 観 点 か ら も 硫 化 水 素
は 、火 山 地 帯 の 温 泉 な ど か ら 自 然 発 生 的 に 放 出 さ れ た り 、あ る い は
あ る 種 の 工 業 製 品 の 生 産 過 程 で 人 工 的 に 発 生 し た り し て 、悪 臭 被 害
と 中 毒 事 故 を 引 き 起 こ す こ と か ら 、有 害 な 物 質 と い う イ メ ー ジ が 先
行 す る 。実 際 に も 、こ れ ま で 硫 化 水 素 の 毒 性 に 関 す る 研 究 は 数 多 く
為 さ れ て き た 。し か し 、1 9 8 0 年 代 か ら 1 9 9 0 年 代 に か け て 行 わ れ た
研 究 か ら 、哺 乳 動 物 の 生 体 内 で 硫 化 水 素 が 産 生 あ る い は 内 在 す る こ
と が 報 告 さ れ た
2 ) - 4 )。 さ ら に 1 9 9 6 年 、 K i m ura ら は 、 硫 化 水 素 が
海 馬 の 長 期 増 強 (L o ng Te rm P o t e nt i a t i o n : LT P ) の 誘 導 促 進 を 行 う
こ と を 報 告 し 、硫 化 水 素 の 生 理 的 な 役 割 と し て 神 経 調 節 物 質 と し て
働 く と い う 可 能 性 を 示 唆 し た
5 )。そ の 後 、硫 化 水 素 の 神 経 保 護 作 用
や 平 滑 筋 弛 緩 作 用 な ど が 相 次 い で 報 告 さ れ 、現 在 で は 、硫 化 水 素 は
一 酸 化 窒 素 、一 酸 化 炭 素 に 次 ぐ 第 三 の ガ ス 状 生 理 活 性 物 質 と し て 注
目 さ れ る に 至 っ た
6 ) , 7 )。現 在 、硫 化 水 素 は 生 体 内 に お い て 、 Cy st e i ne
代 謝 の 過 程 で cy st a t hi o ni ne γ -l y a se (CS E ) 、 c y st a t hi o ni ne
β-sy nt ha s e (C B S ) 、 3 -m e rca pt o py ruv a t e sul furt ra nsfe ra se (3
MS T ) と い う 三 つ の 酵 素 か ら 産 生 さ れ 得 る こ と が 分 か っ て い る
8 ) , 9 )。
3 MS T は 1 9 5 4 年 に Me i st e r ら に よ っ て ラ ッ ト 肝 臓 に 見 出 さ れ て 以
β-sy nt ha s e (C B S ) 、 3 -m e rca pt o py ruv a t e sul furt ra nsfe ra se (3
MS T ) と い う 三 つ の 酵 素 か ら 産 生 さ れ 得 る こ と が 分 か っ て い る
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降 、 Rho da ne s e と 同 様 に シ ア ン の 解 毒 が 主 な 生 理 機 能 で あ る と い う 理 解 の も と で 研 究 が 進 め ら れ て き た
1 0 )。 し か し な が ら 、 シ ア ン の 解 毒 と い う 特 殊 な 働 き 以 外 に 恒 常 的 な 機 能 と し て 、 3 MS T は 鉄 - イ オ ウ ク ラ ス タ ー 形 成 や モ リ ブ デ ン 酵 素 の 活 性 型 の 構 築 に お け る 役 割 も 示 唆 さ れ て い る
11 ) , 1 2 )。 近 年 、 S hi b uy a ら は 、 マ ウ ス 脳 に お い て 3 MS T が 神 経 細 胞 に 発 現 し て い る こ と を 免 疫 染 色 法 に よ っ て 示 し 、 cy st e i ne a m i no t ra nsfe ra se ( CAT )/ 3 MS T 経 路 か ら 硫 化 水 素 と そ の 貯 蔵 体 で あ る Bo und S ul fur が 産 生 す る こ と を 明 ら か に し た
9 )
。 Bo un d S ul fu r と は O g a sa w a ra ら に よ っ て 定 義 さ れ た D T T 還 元 に よ っ て S2 -を 遊 離 す る イ オ ウ 種 で あ る
1 3 )。 K i m ura ら は マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト に 硫 化 水 素 を 添 加 す る 実 験 に よ っ て 、添 加 し た 硫 化 水 素 が Bo und S u l fur と し て 組 織 内 に 貯 蔵 さ れ る こ と を 確 か め 、 Bo und S ul fur が 生 体 内 で 産 生 さ れ る 硫 化 水 素 の 貯 蔵 体 で あ る 可 能 性 を 示 し た
1 4 )。 こ れ ま で の 研 究 に お い て 、 3 MS T の 基 質 で あ る 3 -m e rca pt o py ruv a t e (3 MP ) の 検 出 法 が 確 立 し て い な か っ た こ と か ら 、 CAT / 3 MS T 経 路 に つ い て は 、 CS E 、 CB S に 対 す る 研 究 に 比 べ 進 展 が 遅 れ て い た 。 そ こ で 筆 者 ら は 、 3 MS T / CAT 経 路 が 生 理 的 に 存 在 し て い る 事 を 明 ら か に す る た め に 、
L-Cy st e i ne と α -K G を 添 加 し た マ ウ ス 脳 、 肝 臓 の ホ モ ジ ネ ー ト に お け る 3 MP 産 生 を 、 新 規 に 開 発 し た 蛍 光 HP L C 法 に よ っ て 検 出 す る こ と を 試 み 、 そ の 生 成 を 証 明 し た
1 5 )3 MP ) の 検 出 法 が 確 立 し て い な か っ た こ と か ら 、 CAT / 3 MS T 経 路 に つ い て は 、 CS E 、 CB S に 対 す る 研 究 に 比 べ 進 展 が 遅 れ て い た 。 そ こ で 筆 者 ら は 、 3 MS T / CAT 経 路 が 生 理 的 に 存 在 し て い る 事 を 明 ら か に す る た め に 、
。 生 体 内 3 MP の 測 定 系 が 確 立 さ れ た こ と に よ り 、 CAT / 3 MS T 経 路 が 硫 化 水 素 及 び B o und S ul fu r の 産 生 経 路 と し て 生 理 的 に 機 能 し て い る 可 能 性 が あ ら た め て 示 唆 さ れ た 。
一 方 、シ ス テ イ ン を 含 む 、多 種 の ア ミ ノ 酸 は 生 命 を 営 む 上 で 重 要
な 化 合 物 で あ る こ と は 言 う ま で も な い が 、こ れ ら ア ミ ノ 酸 に は グ リ
3
シ ン を 除 く す べ て に
L体 と
D体 が 存 在 す る 。と こ ろ が 、ヒ ト に 限 ら ず 、 全 て の 生 命 体 の タ ン パ ク 質 は
L- ア ミ ノ 酸 の み か ら 構 成 さ れ て い る 。 最 近 、 こ の 常 識 が 覆 さ れ つ つ あ り 、D 体 の 生 理 的 な 存 在 が 注 目 さ れ て い る 。 例 え ば 、 水 晶 体 α - ク リ ス タ リ ン の ア ス パ ラ ギ ン 酸 残 基 が 老 化 に 伴 っ て ラ セ ミ 化 し 、
D 体 と し て 存 在 す る こ と が 報 告 さ れ 、 そ の 存 在 と 白 内 障 と の 関 連 が 指 摘 さ れ て い る
1 6 )。 ま た 、 脳 内 ア ミ ロ イ ド タ ン パ ク 質 中 に も
D- ア ス パ ラ ギ ン 酸 と D- セ リ ン が 発 見 さ れ 、 ア ル ツ ハ イ マ ー 病 へ の 関 与 が 示 唆 さ れ て い る 1 7 ) , 1 8 )。 こ の よ う に 、あ る 種 の 生 理 的 条 件 下 で は タ ン パ ク 質 中 の ア ミ ノ 酸 残 基 が ラ セ ミ 化 し て 、
D 体 と し て 存 在 す る こ と が 証 明 さ れ た が 、 そ れ に 加 え 遊 離 型
D- ア ミ ノ 酸 も 哺 乳 動 物 の 体 内 で 検 出 さ れ て お り 、 様 々 な 生 理 機 能 と の 関 連 が 明 ら か に な っ て き て い る 。 特 に 遊 離 型 D- ア ス パ ラ ギ ン 酸 と 遊 離 型 D- セ リ ン の 研 究 が 活 発 に 行 わ れ て い る 。D- ア ス パ ラ ギ ン 酸 は メ ラ ト ニ ン の 分 泌 抑 制 作 用 や 、テ ス ト ス テ ロ ン 合 成 促 進 作 用 を 有 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 1 9 ) , 2 0 )。
D- セ リ ン に つ い て は 、 イ オ ン チ ャ ネ ル 型 グ ル タ ミ ン 酸 受 容 体 で あ る N -m e t hy l -D - a spa rt a t e (N MD A ) 型 グ ル タ ミ ン 酸 受 容 体 の コ ア ゴ ニ ス ト と し て 作 用 し ,記 憶 ・ 学 習 な ど の 脳 の 高 次 機 能 の 制 御 に 深 く 関 与 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 1 )。 こ の よ う に 、 近 年
D - ア ミ ノ 酸 は 、哺 乳 動 物 の 生 体 内 で 様 々 な 生 理 機 能 を 果 た し て い る こ と が 示 唆 さ れ て お り 、今 後 も 分 析 技 術 の 進 歩 と と も に 、こ れ ま で 知 ら れ て こ な か っ た 生 体 内 の 遊 離 型 D - ア ミ ノ 酸 に 関 す る 新 た な 発 見 が 期 待 さ れ て い る 。
- セ リ ン が 発 見 さ れ 、 ア ル ツ ハ イ マ ー 病 へ の 関 与 が 示 唆 さ れ て い る 1 7 ) , 1 8 )。 こ の よ う に 、あ る 種 の 生 理 的 条 件 下 で は タ ン パ ク 質 中 の ア ミ ノ 酸 残 基 が ラ セ ミ 化 し て 、
D 体 と し て 存 在 す る こ と が 証 明 さ れ た が 、 そ れ に 加 え 遊 離 型
D- ア ミ ノ 酸 も 哺 乳 動 物 の 体 内 で 検 出 さ れ て お り 、 様 々 な 生 理 機 能 と の 関 連 が 明 ら か に な っ て き て い る 。 特 に 遊 離 型 D- ア ス パ ラ ギ ン 酸 と 遊 離 型 D- セ リ ン の 研 究 が 活 発 に 行 わ れ て い る 。D- ア ス パ ラ ギ ン 酸 は メ ラ ト ニ ン の 分 泌 抑 制 作 用 や 、テ ス ト ス テ ロ ン 合 成 促 進 作 用 を 有 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 1 9 ) , 2 0 )。
D- セ リ ン に つ い て は 、 イ オ ン チ ャ ネ ル 型 グ ル タ ミ ン 酸 受 容 体 で あ る N -m e t hy l -D - a spa rt a t e (N MD A ) 型 グ ル タ ミ ン 酸 受 容 体 の コ ア ゴ ニ ス ト と し て 作 用 し ,記 憶 ・ 学 習 な ど の 脳 の 高 次 機 能 の 制 御 に 深 く 関 与 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 1 )。 こ の よ う に 、 近 年
D - ア ミ ノ 酸 は 、哺 乳 動 物 の 生 体 内 で 様 々 な 生 理 機 能 を 果 た し て い る こ と が 示 唆 さ れ て お り 、今 後 も 分 析 技 術 の 進 歩 と と も に 、こ れ ま で 知 ら れ て こ な か っ た 生 体 内 の 遊 離 型 D - ア ミ ノ 酸 に 関 す る 新 た な 発 見 が 期 待 さ れ て い る 。
- ア ス パ ラ ギ ン 酸 と 遊 離 型 D- セ リ ン の 研 究 が 活 発 に 行 わ れ て い る 。D- ア ス パ ラ ギ ン 酸 は メ ラ ト ニ ン の 分 泌 抑 制 作 用 や 、テ ス ト ス テ ロ ン 合 成 促 進 作 用 を 有 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 1 9 ) , 2 0 )。
D- セ リ ン に つ い て は 、 イ オ ン チ ャ ネ ル 型 グ ル タ ミ ン 酸 受 容 体 で あ る N -m e t hy l -D - a spa rt a t e (N MD A ) 型 グ ル タ ミ ン 酸 受 容 体 の コ ア ゴ ニ ス ト と し て 作 用 し ,記 憶 ・ 学 習 な ど の 脳 の 高 次 機 能 の 制 御 に 深 く 関 与 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 1 )。 こ の よ う に 、 近 年
D - ア ミ ノ 酸 は 、哺 乳 動 物 の 生 体 内 で 様 々 な 生 理 機 能 を 果 た し て い る こ と が 示 唆 さ れ て お り 、今 後 も 分 析 技 術 の 進 歩 と と も に 、こ れ ま で 知 ら れ て こ な か っ た 生 体 内 の 遊 離 型 D - ア ミ ノ 酸 に 関 す る 新 た な 発 見 が 期 待 さ れ て い る 。
- ア ス パ ラ ギ ン 酸 は メ ラ ト ニ ン の 分 泌 抑 制 作 用 や 、テ ス ト ス テ ロ ン 合 成 促 進 作 用 を 有 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 1 9 ) , 2 0 )。
D- セ リ ン に つ い て は 、 イ オ ン チ ャ ネ ル 型 グ ル タ ミ ン 酸 受 容 体 で あ る N -m e t hy l -D - a spa rt a t e (N MD A ) 型 グ ル タ ミ ン 酸 受 容 体 の コ ア ゴ ニ ス ト と し て 作 用 し ,記 憶 ・ 学 習 な ど の 脳 の 高 次 機 能 の 制 御 に 深 く 関 与 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 1 )。 こ の よ う に 、 近 年
D - ア ミ ノ 酸 は 、哺 乳 動 物 の 生 体 内 で 様 々 な 生 理 機 能 を 果 た し て い る こ と が 示 唆 さ れ て お り 、今 後 も 分 析 技 術 の 進 歩 と と も に 、こ れ ま で 知 ら れ て こ な か っ た 生 体 内 の 遊 離 型 D - ア ミ ノ 酸 に 関 す る 新 た な 発 見 が 期 待 さ れ て い る 。
。 こ の よ う に 、 近 年
D- ア ミ ノ 酸 は 、哺 乳 動 物 の 生 体 内 で 様 々 な 生 理 機 能 を 果 た し て い る こ と が 示 唆 さ れ て お り 、今 後 も 分 析 技 術 の 進 歩 と と も に 、こ れ ま で 知 ら れ て こ な か っ た 生 体 内 の 遊 離 型 D - ア ミ ノ 酸 に 関 す る 新 た な 発 見 が 期 待 さ れ て い る 。
本 研 究 で 注 目 し て い る 硫 化 水 素 及 び 、そ の 貯 蔵 型 と さ れ る Bo un d
S ul fur は 、 従 来 生 体 内 で
L-Cy st e i n e の 代 謝 に よ っ て の み 合 成 さ れ
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る も の で あ る と 考 え ら れ て き た
2 2 )。
L-Cy st e i ne を 脳 ホ モ ジ ネ ー ト に 加 え る と き ホ モ ジ ネ ー ト 中 で の 硫 化 水 素 の 産 生 が 促 進 さ れ る こ と が 分 か る が 、筆 者 ら は 、そ の 実 験 の ネ ガ テ ィ ブ コ ン ト ロ ー ル と し て D-Cy st e i ne を 用 い て 検 討 し た と こ ろ 、D-Cy st e i ne 添 加 時 に お い て も 硫 化 水 素 が 発 生 す る こ と を 発 見 し た 2 3 )。 こ れ ま で に 植 物 や 微 生 物 に お い て は 、
D-Cy st e i ne か ら 硫 化 水 素 が 生 成 さ れ る こ と は 報 告 さ れ て い た が 2 4 )、哺 乳 動 物 で は
D-Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素 産 生 系 は 知 ら れ て い な い 。そ こ で 筆 者 ら は 、D-Cy st i e ne を 基 質 と し て 3 MP に 代 謝 生 成 す る 可 能 性 が 予 想 さ れ て い る D-a m i no a ci d o x i da se (D AO , EC1 . 4 . 3 . 3 ) に よ る 反 応 に 注 目 し た 2 5 )。 D AO は
D- ア ミ ノ 酸 の 酸 化 反 応 を 触 媒 し て 一 旦 イ ミ ノ 酸 を 産 生 す る 。こ の イ ミ ノ 酸 は 非 酵 素 的 に 直 ち に α - ケ ト 酸 に 変 換 さ れ る 2 6 )。 α - ケ ト 酸 で あ る 3 MP は S hi b uy a ら が 報 告 し て い る よ う に 、 3 MS T に よ っ て 硫 化 水 素 、 ま た は Bo un d S ul fur と ピ ル ビ ン 酸 に 代 謝 さ れ る
9 )。 そ こ で 、 筆 者 ら は 生 体 内 に お い て は 、
L-Cy st e i ne だ け で な く D- Cy s t e i ne か ら も 、 D AO に よ る 3 M P の 産 生 と 3 MS T に よ る 3 MP の 代 謝 に よ っ て 硫 化 水 素 及 び Bo u nd S ul fur が 産 生 さ れ 得 る と 考 え 、 こ の 仮 説 の 検 証 を 試 み た 。 生 物 界 に お け る D-Cy st e i ne の 生 理 的 機 能 に つ い て は こ れ ま で に 知 ら れ て お ら ず 、 生 体 内 に お け る D- ア ミ ノ 酸 の 役 割 を 理 解 す る 上 で も 本 検 討 は 意 義 深 い 。
-Cy st e i ne 添 加 時 に お い て も 硫 化 水 素 が 発 生 す る こ と を 発 見 し た 2 3 )。 こ れ ま で に 植 物 や 微 生 物 に お い て は 、
D-Cy st e i ne か ら 硫 化 水 素 が 生 成 さ れ る こ と は 報 告 さ れ て い た が 2 4 )、哺 乳 動 物 で は
D-Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素 産 生 系 は 知 ら れ て い な い 。そ こ で 筆 者 ら は 、D-Cy st i e ne を 基 質 と し て 3 MP に 代 謝 生 成 す る 可 能 性 が 予 想 さ れ て い る D-a m i no a ci d o x i da se (D AO , EC1 . 4 . 3 . 3 ) に よ る 反 応 に 注 目 し た 2 5 )。 D AO は
D- ア ミ ノ 酸 の 酸 化 反 応 を 触 媒 し て 一 旦 イ ミ ノ 酸 を 産 生 す る 。こ の イ ミ ノ 酸 は 非 酵 素 的 に 直 ち に α - ケ ト 酸 に 変 換 さ れ る 2 6 )。 α - ケ ト 酸 で あ る 3 MP は S hi b uy a ら が 報 告 し て い る よ う に 、 3 MS T に よ っ て 硫 化 水 素 、 ま た は Bo un d S ul fur と ピ ル ビ ン 酸 に 代 謝 さ れ る
9 )。 そ こ で 、 筆 者 ら は 生 体 内 に お い て は 、
L-Cy st e i ne だ け で な く D- Cy s t e i ne か ら も 、 D AO に よ る 3 M P の 産 生 と 3 MS T に よ る 3 MP の 代 謝 に よ っ て 硫 化 水 素 及 び Bo u nd S ul fur が 産 生 さ れ 得 る と 考 え 、 こ の 仮 説 の 検 証 を 試 み た 。 生 物 界 に お け る D-Cy st e i ne の 生 理 的 機 能 に つ い て は こ れ ま で に 知 ら れ て お ら ず 、 生 体 内 に お け る D- ア ミ ノ 酸 の 役 割 を 理 解 す る 上 で も 本 検 討 は 意 義 深 い 。
、哺 乳 動 物 で は
D-Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素 産 生 系 は 知 ら れ て い な い 。そ こ で 筆 者 ら は 、D-Cy st i e ne を 基 質 と し て 3 MP に 代 謝 生 成 す る 可 能 性 が 予 想 さ れ て い る D-a m i no a ci d o x i da se (D AO , EC1 . 4 . 3 . 3 ) に よ る 反 応 に 注 目 し た 2 5 )。 D AO は
D- ア ミ ノ 酸 の 酸 化 反 応 を 触 媒 し て 一 旦 イ ミ ノ 酸 を 産 生 す る 。こ の イ ミ ノ 酸 は 非 酵 素 的 に 直 ち に α - ケ ト 酸 に 変 換 さ れ る 2 6 )。 α - ケ ト 酸 で あ る 3 MP は S hi b uy a ら が 報 告 し て い る よ う に 、 3 MS T に よ っ て 硫 化 水 素 、 ま た は Bo un d S ul fur と ピ ル ビ ン 酸 に 代 謝 さ れ る
9 )。 そ こ で 、 筆 者 ら は 生 体 内 に お い て は 、
L-Cy st e i ne だ け で な く D- Cy s t e i ne か ら も 、 D AO に よ る 3 M P の 産 生 と 3 MS T に よ る 3 MP の 代 謝 に よ っ て 硫 化 水 素 及 び Bo u nd S ul fur が 産 生 さ れ 得 る と 考 え 、 こ の 仮 説 の 検 証 を 試 み た 。 生 物 界 に お け る D-Cy st e i ne の 生 理 的 機 能 に つ い て は こ れ ま で に 知 ら れ て お ら ず 、 生 体 内 に お け る D- ア ミ ノ 酸 の 役 割 を 理 解 す る 上 で も 本 検 討 は 意 義 深 い 。
-a m i no a ci d o x i da se (D AO , EC1 . 4 . 3 . 3 ) に よ る 反 応 に 注 目 し た 2 5 )。 D AO は
D- ア ミ ノ 酸 の 酸 化 反 応 を 触 媒 し て 一 旦 イ ミ ノ 酸 を 産 生 す る 。こ の イ ミ ノ 酸 は 非 酵 素 的 に 直 ち に α - ケ ト 酸 に 変 換 さ れ る 2 6 )。 α - ケ ト 酸 で あ る 3 MP は S hi b uy a ら が 報 告 し て い る よ う に 、 3 MS T に よ っ て 硫 化 水 素 、 ま た は Bo un d S ul fur と ピ ル ビ ン 酸 に 代 謝 さ れ る
9 )。 そ こ で 、 筆 者 ら は 生 体 内 に お い て は 、
L-Cy st e i ne だ け で な く D- Cy s t e i ne か ら も 、 D AO に よ る 3 M P の 産 生 と 3 MS T に よ る 3 MP の 代 謝 に よ っ て 硫 化 水 素 及 び Bo u nd S ul fur が 産 生 さ れ 得 る と 考 え 、 こ の 仮 説 の 検 証 を 試 み た 。 生 物 界 に お け る D-Cy st e i ne の 生 理 的 機 能 に つ い て は こ れ ま で に 知 ら れ て お ら ず 、 生 体 内 に お け る D- ア ミ ノ 酸 の 役 割 を 理 解 す る 上 で も 本 検 討 は 意 義 深 い 。
。 α - ケ ト 酸 で あ る 3 MP は S hi b uy a ら が 報 告 し て い る よ う に 、 3 MS T に よ っ て 硫 化 水 素 、 ま た は Bo un d S ul fur と ピ ル ビ ン 酸 に 代 謝 さ れ る
9 )。 そ こ で 、 筆 者 ら は 生 体 内 に お い て は 、
L-Cy st e i ne だ け で な く D- Cy s t e i ne か ら も 、 D AO に よ る 3 M P の 産 生 と 3 MS T に よ る 3 MP の 代 謝 に よ っ て 硫 化 水 素 及 び Bo u nd S ul fur が 産 生 さ れ 得 る と 考 え 、 こ の 仮 説 の 検 証 を 試 み た 。 生 物 界 に お け る D-Cy st e i ne の 生 理 的 機 能 に つ い て は こ れ ま で に 知 ら れ て お ら ず 、 生 体 内 に お け る D- ア ミ ノ 酸 の 役 割 を 理 解 す る 上 で も 本 検 討 は 意 義 深 い 。
-Cy st e i ne の 生 理 的 機 能 に つ い て は こ れ ま で に 知 ら れ て お ら ず 、 生 体 内 に お け る D- ア ミ ノ 酸 の 役 割 を 理 解 す る 上 で も 本 検 討 は 意 義 深 い 。
本 研 究 で は 、 D AO が 発 現 し て い る マ ウ ス 小 脳 、 腎 臓 に お い て 、
D
-Cy st e i ne か ら 硫 化 水 素 及 び Bo und S ul fur が 産 生 さ れ る こ と を 証
明 し 、
D-Cy st e i n e を 基 質 と す る 新 た な 硫 化 水 素 産 生 機 構 を 詳 細 化
す る た め 個 体 レ ベ ル で の 生 理 的 意 義 を 示 す べ く 検 討 を 行 っ た 。
す る た め 個 体 レ ベ ル で の 生 理 的 意 義 を 示 す べ く 検 討 を 行 っ た 。
5
Fig.1 哺乳動物における L-Cysteine 代謝による Bound Sulfur 産生経路
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第 1 節 マ ウ ス 組 織 ホ モ ジ ネ ー ト に お け る 硫 化 水 素 及 び 3 MP の 測 定
結 果
脳 に お け る 硫 化 水 素 は 、
L-Cy st e i ne を 基 質 と し て 、C B S 、あ る い は CAT / 3 MS T に よ る 酵 素 的 な 反 応 に よ っ て 産 生 さ れ る と 考 え ら れ て き た 8 ) , 9 )。そ の 検 証 の た め 、マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト に
L-Cy st e i ne を 添 加 加 温 し て 産 生 さ れ る 硫 化 水 素 を 測 定 し た 。 そ の 結 果 、
L
-Cy st e i ne 処 理 に よ っ て 濃 度 依 存 的 に 硫 化 水 素 の 産 生 が 確 認 さ れ た が 、 予 想 外 に L-Cy st e i ne の ネ ガ テ ィ ブ コ ン ト ロ ー ル と し て 用 い て い た D-Cy st e i n e を 添 加 し た 試 料 か ら も 硫 化 水 素 の 産 生 が 認 め ら れ た (F i g . 2 A) 。こ れ ま で に 哺 乳 動 物 組 織 に お い て 、D- Cy st e i ne か ら 硫 化 水 素 が 産 生 さ れ る 経 路 は 知 ら れ て い な い 。 筆 者 ら は 、
-Cy st e i n e を 添 加 し た 試 料 か ら も 硫 化 水 素 の 産 生 が 認 め ら れ た (F i g . 2 A) 。こ れ ま で に 哺 乳 動 物 組 織 に お い て 、D- Cy st e i ne か ら 硫 化 水 素 が 産 生 さ れ る 経 路 は 知 ら れ て い な い 。 筆 者 ら は 、
D
-Cy st e i ne を 基 質 と し た 硫 化 水 素 産 生 経 路 の 解 明 に 取 り 組 ん だ 。
ま ず 始 め に 、
D-Cy st e i ne を 基 質 と し た 硫 化 水 素 の 産 生 が 、 P L P 依
存 酵 素 に よ っ て 触 媒 さ れ る も の で あ る か 否 か を 検 討 す る た め に 、
P L P 依 存 酵 素 阻 害 剤 を 用 い た 検 討 を 行 っ た 。L-Cy st e i ne を 添 加 し
た マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト か ら の 硫 化 水 素 産 生 は 、 P L P 依 存 酵 素 阻 害
剤 で あ る ヒ ド ロ キ シ ル ア ミ ン で 処 理 す る と き 、濃 度 依 存 的 に 抑 制 さ
れ た 。 一 方 、
D-Cy st e i ne を 添 加 し た マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト か ら の
硫 化 水 素 産 生 は 、ヒ ド ロ キ シ ル ア ミ ン 処 理 に よ っ て 抑 制 さ れ な か っ
た (F i g . 2 B) 。 次 に 、 マ ウ ス 脳 に お け る
D-Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素
を 産 生 す る 細 胞 内 小 器 官 を 明 ら か に す る 目 的 で 、核 、ミ ト コ ン ド リ
ア 、 細 胞 質 画 分 を 調 製 し 、 各 々 の 画 分 に
D-Cy st e i ne を 添 加 し て 硫
化 水 素 産 生 量 を 測 定 し た 。そ の 結 果 、ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 か ら の 硫
化 水 素 の 産 生 が 最 も 顕 著 で あ り 、全 体 の 約 7 0 % が ミ ト コ ン ド リ ア に
存 酵 素 に よ っ て 触 媒 さ れ る も の で あ る か 否 か を 検 討 す る た め に 、
P L P 依 存 酵 素 阻 害 剤 を 用 い た 検 討 を 行 っ た 。L-Cy st e i ne を 添 加 し
た マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト か ら の 硫 化 水 素 産 生 は 、 P L P 依 存 酵 素 阻 害
剤 で あ る ヒ ド ロ キ シ ル ア ミ ン で 処 理 す る と き 、濃 度 依 存 的 に 抑 制 さ
れ た 。 一 方 、
D-Cy st e i ne を 添 加 し た マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト か ら の
硫 化 水 素 産 生 は 、ヒ ド ロ キ シ ル ア ミ ン 処 理 に よ っ て 抑 制 さ れ な か っ
た (F i g . 2 B) 。 次 に 、 マ ウ ス 脳 に お け る
D-Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素
を 産 生 す る 細 胞 内 小 器 官 を 明 ら か に す る 目 的 で 、核 、ミ ト コ ン ド リ
ア 、 細 胞 質 画 分 を 調 製 し 、 各 々 の 画 分 に
D-Cy st e i ne を 添 加 し て 硫
化 水 素 産 生 量 を 測 定 し た 。そ の 結 果 、ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 か ら の 硫
化 水 素 の 産 生 が 最 も 顕 著 で あ り 、全 体 の 約 7 0 % が ミ ト コ ン ド リ ア に
た マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト か ら の 硫 化 水 素 産 生 は 、 P L P 依 存 酵 素 阻 害
剤 で あ る ヒ ド ロ キ シ ル ア ミ ン で 処 理 す る と き 、濃 度 依 存 的 に 抑 制 さ
れ た 。 一 方 、
D-Cy st e i ne を 添 加 し た マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト か ら の
硫 化 水 素 産 生 は 、ヒ ド ロ キ シ ル ア ミ ン 処 理 に よ っ て 抑 制 さ れ な か っ
た (F i g . 2 B) 。 次 に 、 マ ウ ス 脳 に お け る
D-Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素
を 産 生 す る 細 胞 内 小 器 官 を 明 ら か に す る 目 的 で 、核 、ミ ト コ ン ド リ
ア 、 細 胞 質 画 分 を 調 製 し 、 各 々 の 画 分 に
D-Cy st e i ne を 添 加 し て 硫
化 水 素 産 生 量 を 測 定 し た 。そ の 結 果 、ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 か ら の 硫
化 水 素 の 産 生 が 最 も 顕 著 で あ り 、全 体 の 約 7 0 % が ミ ト コ ン ド リ ア に
を 産 生 す る 細 胞 内 小 器 官 を 明 ら か に す る 目 的 で 、核 、ミ ト コ ン ド リ
ア 、 細 胞 質 画 分 を 調 製 し 、 各 々 の 画 分 に
D-Cy st e i ne を 添 加 し て 硫
化 水 素 産 生 量 を 測 定 し た 。そ の 結 果 、ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 か ら の 硫
化 水 素 の 産 生 が 最 も 顕 著 で あ り 、全 体 の 約 7 0 % が ミ ト コ ン ド リ ア に
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お い て 生 成 す る 事 が 示 さ れ た (F i g . 2 C) 。 ま た 、 脳 ミ ト コ ン ド リ ア 画
分 に
D-Cy st e i ne 、L-Cy st e i ne + α K G 、L-Cy st e i ne を 各 々 添 加 す る
と 、そ れ ぞ れ の 試 料 に お い て 基 質 濃 度 依 存 的 に 3 MP が 産 生 さ れ る
こ と が 確 認 さ れ た (F i g . 2 D ) 。更 に 、
D-Cy st e i ne を 基 質 と す る 硫 化 水
素 産 生 系 に お け る D AO の 働 き に つ い て 検 討 し た 。 D AO の 選 択 的 な
阻 害 剤 で あ る i nd o l -2 -ca rb o x y l i c a ci d (I 2 CA )
2 7 )で 脳 抽 出 試 料 を 前
処 理 し た と こ ろ 、
D-Cy st e i ne 添 加 後 に お け る 3 MP の 生 成 は 阻 害 剤
濃 度 依 存 的 に 減 少 し た 。 一 方 で 、
L-Cy st e i ne + α K G 、L-Cy st e i ne
か ら 産 生 さ れ る 3 MP の 産 生 は I 2 C A 前 処 理 に よ っ て 抑 制 さ れ な か
っ た (F i g . 2 E) 。 ま た 、 脳 ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 に お け る
D-Cy st e i ne
か ら の 硫 化 水 素 産 生 量 も 、 I 2 CA 前 処 理 に よ っ て 顕 著 に 減 少 し た
(F i g . 2 F ) 。以 上 の 結 果 か ら 、 D AO は D-Cy st e i ne を 基 質 と し て 3 MP
を 産 生 す る 事 で 硫 化 水 素 生 成 に 関 わ る 事 が 示 唆 さ れ た 。
-Cy st e i ne を 各 々 添 加 す る
と 、そ れ ぞ れ の 試 料 に お い て 基 質 濃 度 依 存 的 に 3 MP が 産 生 さ れ る
こ と が 確 認 さ れ た (F i g . 2 D ) 。更 に 、
D-Cy st e i ne を 基 質 と す る 硫 化 水
素 産 生 系 に お け る D AO の 働 き に つ い て 検 討 し た 。 D AO の 選 択 的 な
阻 害 剤 で あ る i nd o l -2 -ca rb o x y l i c a ci d (I 2 CA )
2 7 )で 脳 抽 出 試 料 を 前
処 理 し た と こ ろ 、
D-Cy st e i ne 添 加 後 に お け る 3 MP の 生 成 は 阻 害 剤
濃 度 依 存 的 に 減 少 し た 。 一 方 で 、
L-Cy st e i ne + α K G 、L-Cy st e i ne
か ら 産 生 さ れ る 3 MP の 産 生 は I 2 C A 前 処 理 に よ っ て 抑 制 さ れ な か
っ た (F i g . 2 E) 。 ま た 、 脳 ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 に お け る
D-Cy st e i ne
か ら の 硫 化 水 素 産 生 量 も 、 I 2 CA 前 処 理 に よ っ て 顕 著 に 減 少 し た
(F i g . 2 F ) 。以 上 の 結 果 か ら 、 D AO は D-Cy st e i ne を 基 質 と し て 3 MP
を 産 生 す る 事 で 硫 化 水 素 生 成 に 関 わ る 事 が 示 唆 さ れ た 。
素 産 生 系 に お け る D AO の 働 き に つ い て 検 討 し た 。 D AO の 選 択 的 な
阻 害 剤 で あ る i nd o l -2 -ca rb o x y l i c a ci d (I 2 CA )
濃 度 依 存 的 に 減 少 し た 。 一 方 で 、
L-Cy st e i ne + α K G 、L-Cy st e i ne
か ら 産 生 さ れ る 3 MP の 産 生 は I 2 C A 前 処 理 に よ っ て 抑 制 さ れ な か
っ た (F i g . 2 E) 。 ま た 、 脳 ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 に お け る
D-Cy st e i ne
か ら の 硫 化 水 素 産 生 量 も 、 I 2 CA 前 処 理 に よ っ て 顕 著 に 減 少 し た
(F i g . 2 F ) 。以 上 の 結 果 か ら 、 D AO は D-Cy st e i ne を 基 質 と し て 3 MP
を 産 生 す る 事 で 硫 化 水 素 生 成 に 関 わ る 事 が 示 唆 さ れ た 。
-Cy st e i ne を 基 質 と し て 3 MP
を 産 生 す る 事 で 硫 化 水 素 生 成 に 関 わ る 事 が 示 唆 さ れ た 。
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A B C
D E F
F i g . 2 マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト に お け る 、L-Cy st i e ne 及 び D-Cy st e i ne を 基 質 と し た 硫 化 水 素 の 産 生 能 の 評 価
-Cy st e i ne を 基 質 と し た 硫 化 水 素 の 産 生 能 の 評 価
( A )は D- C y s t e i n e ま た は L- C y s t e i n e か ら の 硫 化 水 素 産 生 量 を 示 し た 。( B )
は P L P 酵 素 阻 害 剤 の 硫 化 水 素 産 生 能 に 対 す る 影 響 を 示 し た 。1 0 m M
D- C y s t e i n e 添 加 し 、 ヒ ド ロ キ シ ル ア ミ ン 未 処 理 群 の 硫 化 水 素 産 生 能 を 1 0 0 %と し て 評 価 し た 。*P <0 . 0 5 ( C )は マ ウ ス 脳 の 各 画 分 に お け る 硫 化 水 素 産 生 量 を 示 し た 。 各 画 分 に 1 0 m M D- C y s t e i n e 添 加 し 、 全 脳 ホ モ ジ ネ ー ト の 硫 化 水 素 産 生 能 を 1 0 0 %と し て 評 価 し た 。* *P <0 . 0 1 ( D )は ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 に お け る 3 M P 産 生 量 を 示 し た 。( E , F )は D A O 阻 害 剤 の 3 M P ( E )ま た は 硫 化 水 素( F )の 産 生 量 に 対 す る 影 響 を 示 し た 。ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 は 1 0 m M D- C y s t e i n e、1 0 m M L- C y s t e i n e、 お よ び 1 0 m M L- C y s t e i n e と 2 . 5 m M α- K G を 添 加 し た 。 * *P <0 . 0 1 , m e a n s±S E , ( n = 3 )
9
考 察
マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト に
L-Cy st e i ne の ネ ガ テ ィ ブ コ ン ト ロ ー ル と し て D-Cy st e i ne を 添 加 し た と こ ろ 、D-Cy st e i ne を 添 加 し た 試 料 か ら も 硫 化 水 素 が 産 生 さ れ る こ と を 偶 発 的 に 発 見 し た 。 こ れ ま で 、 哺 乳 動 物 に お い て D-Cy st e i ne か ら 硫 化 水 素 が 産 生 さ れ る と い う 報 告 は な く 、新 た な 産 生 経 路 の 存 在 が 予 想 さ れ た 。脳 に お い て は 既 知 の 硫 化 水 素 産 生 経 路 と し て 、L- Cy st e i ne を 基 質 と す る C B S 、 C AT / 3 MS T 経 路 が 知 ら れ て お り 、 い ず れ も P L P 依 存 的 に 硫 化 水 素 を 産 生
-Cy st e i ne を 添 加 し た 試 料 か ら も 硫 化 水 素 が 産 生 さ れ る こ と を 偶 発 的 に 発 見 し た 。 こ れ ま で 、 哺 乳 動 物 に お い て D-Cy st e i ne か ら 硫 化 水 素 が 産 生 さ れ る と い う 報 告 は な く 、新 た な 産 生 経 路 の 存 在 が 予 想 さ れ た 。脳 に お い て は 既 知 の 硫 化 水 素 産 生 経 路 と し て 、L- Cy st e i ne を 基 質 と す る C B S 、 C AT / 3 MS T 経 路 が 知 ら れ て お り 、 い ず れ も P L P 依 存 的 に 硫 化 水 素 を 産 生
- Cy st e i ne を 基 質 と す る C B S 、 C AT / 3 MS T 経 路 が 知 ら れ て お り 、 い ず れ も P L P 依 存 的 に 硫 化 水 素 を 産 生
す る
8 ) , 9 )。
D- Cy st e i ne 添 加 時 の 硫 化 水 素 産 生 量 が P L P 依 存 酵 素 阻
害 剤 で 変 化 し な か っ た こ と か ら 、
D- Cy st e i ne は C B S 、C AT / 3 MS T 経 路 非 依 存 的 に 代 謝 さ れ て 硫 化 水 素 が 生 成 す る 事 が 示 唆 さ れ た 。
D
-Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素 の 産 生 能 は 、 脳 に お い て は ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 で 最 も 高 か っ た 。 ミ ト コ ン ド リ ア で は L-Cy s t e i ne を 基 質 と し て C AT / 3 MS T 経 路 に よ っ て 硫 化 水 素 が 産 生 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る 9 ) , 2 8 )。 こ の 経 路 で は
L-C y st e i ne か ら ア ミ ノ 基 が 転 移 し 3 MP が 生 じ る 1 5 )。 一 方 、 哺 乳 動 物 の 細 胞 に お い て D - ア ミ ノ 酸 の 酸 化 酵 素 で あ る D A O に よ っ て 、
D- ア ミ ノ 酸 か ら α - ケ ト 酸 が 産 生 さ れ 得 る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 5 ) , 2 9 ) , 3 0 )。 そ こ で 筆 者 ら は D AO に 注 目 し 、 D AO 阻 害 剤 を 用 い て
D- Cy st e i ne 添 加 時 の 3 MP 、 硫 化 水 素 の 産 生 量 を 調 べ た と こ ろ 、 マ ウ ス 脳 ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 に お け る
。 こ の 経 路 で は
L-C y st e i ne か ら ア ミ ノ 基 が 転 移 し 3 MP が 生 じ る 1 5 )。 一 方 、 哺 乳 動 物 の 細 胞 に お い て D - ア ミ ノ 酸 の 酸 化 酵 素 で あ る D A O に よ っ て 、
D- ア ミ ノ 酸 か ら α - ケ ト 酸 が 産 生 さ れ 得 る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 5 ) , 2 9 ) , 3 0 )。 そ こ で 筆 者 ら は D AO に 注 目 し 、 D AO 阻 害 剤 を 用 い て
D- Cy st e i ne 添 加 時 の 3 MP 、 硫 化 水 素 の 産 生 量 を 調 べ た と こ ろ 、 マ ウ ス 脳 ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 に お け る
。 そ こ で 筆 者 ら は D AO に 注 目 し 、 D AO 阻 害 剤 を 用 い て
D- Cy st e i ne 添 加 時 の 3 MP 、 硫 化 水 素 の 産 生 量 を 調 べ た と こ ろ 、 マ ウ ス 脳 ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 に お け る
D
-Cy st e i ne か ら の 3 MP 及 び 硫 化 水 素 の 産 生 が 阻 害 さ れ た こ と か
ら D AO の 関 与 が 示 さ れ た 。 ま た こ の 結 果 は 、 こ れ ま で 3 MP の 測
定 系 が 確 立 さ れ て い な か っ た こ と か ら 不 明 瞭 で あ っ た 、 D -Cy st e i ne
が D AO に よ っ て α - ケ ト 酸 で あ る 3 MP に 変 換 さ れ 得 る こ と を 初 め
て 示 唆 す る も の と な っ た 。 一 般 に 、 D AO は 細 胞 内 で は ペ ル オ キ シ
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ソ ー ム に 局 在 す る こ と が 知 ら れ て い る
3 1 )。 本 論 文 中 に は 示 し て い な い が 、筆 者 ら は 本 研 究 で 分 画 し た 粗 ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 に ペ ル オ キ シ ソ ー ム が 含 ま れ て い る こ と を 確 認 し て お り 、本 検 討 で 用 い た 粗 ミ ト コ ン ド リ ア 画 分 は D AO 活 性 を 含 有 し て い る と 思 わ れ る 。 本 検 討 か ら 、筆 者 ら が 見 出 し た
D- Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素 産 生 が D AO に よ る 酸 化 的 代 謝 に 依 存 し 、 3 MP 生 成 を 介 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。
以 上 の 結 果 か ら 筆 者 ら は 、 ペ ル オ キ シ ソ ー ム で
D-Cy st e i ne が
D AO に よ っ て 3 MP に 変 換 さ れ 、 こ の 3 MP が ミ ト コ ン ド リ ア で 3
MS T に よ っ て 代 謝 さ れ て 硫 化 水 素 が 生 成 さ れ る 、 D A O / 3 MS T 経 路
と い う 新 た な 産 生 経 路 の 存 在 を 提 案 す る に 至 っ た 。
と い う 新 た な 産 生 経 路 の 存 在 を 提 案 す る に 至 っ た 。
11
第 2 節 マ ウ ス に お け る D AO 及 び 3 MS T の 発 現 局 在 と 、
L-Cy st e i ne と D- Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素 産 生 量 の 比 較
結 果
D AO は 、マ ウ ス 脳 ホ モ ジ ネ ー ト 中 に お い て D- Cy st e i ne か ら の 硫
化 水 素 を 産 生 す る こ と が 分 か っ た 。 そ こ で 筆 者 ら は D AO の マ ウ ス
脳 に お け る 発 現 部 位 を ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ 法 で 解 析 し た 。そ
の 結 果 、 D AO は マ ウ ス 脳 で は 小 脳 に 最 も 多 く 発 現 し て お り 、大 脳 、
脳 幹 、 間 脳 で は ほ と ん ど 発 現 し て い な か っ た (F i g . 3 A) 。 次 に 、 マ ウ
ス の 各 臓 器 に お け る D AO の 発 現 を ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ 法 で
解 析 し た 。 そ の 結 果 、 D AO は 小 脳 の 他 に 腎 臓 に 発 現 し て い る こ と
が 分 か っ た が 、 他 の 臓 器 で の 発 現 は 確 認 で き な か っ た (F i g . 3 B)。 ま
た 、 3 MS T の 脳 に お け る 発 現 に つ い て も ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン
グ 法 で 解 析 し た 結 果 、 大 脳 、 小 脳 、 間 脳 、 脳 幹 そ れ ぞ れ で の 発 現 が
確 認 さ れ た が 、部 位 間 で の 発 現 量 に 差 は な か っ た (F i g . 3 C) 。さ ら に 、
マ ウ ス の 各 臓 器 に お け る 3 MS T の 発 現 を ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン
グ 法 で 解 析 し た 結 果 、 肝 臓 > 大 腸 > 腎 臓 の 順 で 多 く 発 現 し て お り 、
他 の 各 臓 器 に お い て も 、 3 MS T の 発 現 が 確 認 さ れ た (F i g . 3 D ) 。こ の
結 果 か ら 、腎 臓 と 小 脳 に お け る 硫 化 水 素 の 産 生 量 を 、マ ウ ス 腎 臓 ホ
モ ジ ネ ー ト と 小 脳 ホ モ ジ ネ ー ト に 各 々
D-Cy st e i e n を 添 加 し た 場 合
と
L-Cy st e i ne を 添 加 し た 場 合 に お け る 比 較 を 試 み た 。 そ の 結 果 、
小 脳 、 腎 臓 共 に
D-Cy st e i ne 添 加 時 に お け る 硫 化 水 素 の 産 生 量 の 方
が
L-Cy st e i ne よ り も 圧 倒 的 に 多 か っ た (F i g . 3 E, F ) 。脳 に 関 し て は 、
大 脳 、 脳 幹 、 間 脳 で も
D-Cy st e i ne 添 加 時 に お け る 硫 化 水 素 の 産 生
量 の 測 定 を 行 っ た が 、検 出 さ れ な か っ た (F i g . 3 E) 。以 上 の 結 果 か ら 、
化 水 素 を 産 生 す る こ と が 分 か っ た 。 そ こ で 筆 者 ら は D AO の マ ウ ス
脳 に お け る 発 現 部 位 を ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ 法 で 解 析 し た 。そ
の 結 果 、 D AO は マ ウ ス 脳 で は 小 脳 に 最 も 多 く 発 現 し て お り 、大 脳 、
脳 幹 、 間 脳 で は ほ と ん ど 発 現 し て い な か っ た (F i g . 3 A) 。 次 に 、 マ ウ
ス の 各 臓 器 に お け る D AO の 発 現 を ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ 法 で
解 析 し た 。 そ の 結 果 、 D AO は 小 脳 の 他 に 腎 臓 に 発 現 し て い る こ と
が 分 か っ た が 、 他 の 臓 器 で の 発 現 は 確 認 で き な か っ た (F i g . 3 B)。 ま
と
L-Cy st e i ne を 添 加 し た 場 合 に お け る 比 較 を 試 み た 。 そ の 結 果 、
小 脳 、 腎 臓 共 に
D-Cy st e i ne 添 加 時 に お け る 硫 化 水 素 の 産 生 量 の 方
が
L-Cy st e i ne よ り も 圧 倒 的 に 多 か っ た (F i g . 3 E, F ) 。脳 に 関 し て は 、
大 脳 、 脳 幹 、 間 脳 で も
D-Cy st e i ne 添 加 時 に お け る 硫 化 水 素 の 産 生
量 の 測 定 を 行 っ た が 、検 出 さ れ な か っ た (F i g . 3 E) 。以 上 の 結 果 か ら 、
が
L-Cy st e i ne よ り も 圧 倒 的 に 多 か っ た (F i g . 3 E, F ) 。脳 に 関 し て は 、
大 脳 、 脳 幹 、 間 脳 で も
D-Cy st e i ne 添 加 時 に お け る 硫 化 水 素 の 産 生
量 の 測 定 を 行 っ た が 、検 出 さ れ な か っ た (F i g . 3 E) 。以 上 の 結 果 か ら 、
量 の 測 定 を 行 っ た が 、検 出 さ れ な か っ た (F i g . 3 E) 。以 上 の 結 果 か ら 、
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D
-Cy st e i ne か ら の 硫 化 水 素 の 産 生 は 、 D AO の 発 現 の 有 無 に 依 存 す
る こ と が 分 か っ た 。
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A B
C D
E F
F i g . 3 D AO 及 び 3 MS T の マ ウ ス 各 組 織 に お け る 発 現 解 析 と 、 脳 の 各 部 位 及 び 腎 臓 に お け る 硫 化 水 素 産 生 量 の 解 析
( A - D )は マ ウ ス 脳( A , C )ま た は マ ウ ス 末 梢 組 織( B , D )に お け る D A O ( A , B )と 3 M S T ( C , D )タ ン パ ク 質 発 現 量 の ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ テ ィ ン グ 法 に よ る 結 果 を 示 し た 。 * *P <0 . 0 1 . ( E , F ) 1 0 m M D- C y s t e i n e ま た は L- C y s t e i n e を 添 加 し た と き の マ ウ ス 脳( E )ま た は マ ウ ス 腎 臓( F )に お け る 硫 化 水 素 産 生 量 を 示 し た 。 * *P <0 . 0 1 . m e a n s±S E , ( n = 3 )
14
考 察
D AO は 高 等 動 物 に お い て 、 小 脳 、 腎 臓 、 肝 臓 に 発 現 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 3 2 )。筆 者 ら は 、マ ウ ス の 各 臓 器 に お け る D AO の 発 現 を 解 析 し た 。 そ の 結 果 、 D AO は マ ウ ス で は 小 脳 と 腎 臓 に 特 異 的 に 発 現 し て い る こ と が 分 か っ た 。 マ ウ ス 肝 臓 で の D A O の 発 現 は 確 認 で き な か っ た 。 ま た 、 小 脳 と 腎 臓 に は 3 MS T も 発 現 し て い た 。 D AO は 小 脳 に お い て 、 ア ス ト ロ サ イ ト 、 バ ー グ マ ン グ リ ア 、 さ ら に ゴ ル ジ 細 胞 や プ ル キ ン エ 細 胞 を 含 む 多 く の 神 経 細 胞 に 発 現 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る
3 3 ) , 3 4 )。 3 MS T に 関 し て も 、 小 脳 の プ ル キ ン エ 細 胞 を 含 む 多 く の 神 経 細 胞 で 発 現 し て い る こ と が 確 認 さ れ て い る
9 )。 ま た 、 腎 臓 で は 、 D AO 、 3 MS T 共 に 近 位 尿 細 管 細 胞 に 発 現 し て い る こ と が 報 告 さ れ て い る
3 5 ) , 3 6 )。 こ の よ う に 、 小 脳 と 腎 臓 に は 3 MS T と D AO が 共 に 存 在 し て い る こ と か ら 、マ ウ ス で は 主 に 小 脳 と 腎 臓 に お い て
D-Cy st e i ne を 基 質 と し て 3 M S T / D AO 経 路 か ら 硫 化 水 素 が 産 生 さ れ る と 思 わ れ る 。 そ こ で 実 際 に D-Cy st e i ne を マ ウ ス 小 脳 、腎 臓 ホ モ ジ ネ ー ト に 添 加 す る と 硫 化 水 素 の 産 生 が 認 め ら れ 、 そ の 産 生 量 は L-Cy st e i ne よ り も 顕 著 に 多 く 、 脳 で は
-Cy st e i ne を マ ウ ス 小 脳 、腎 臓 ホ モ ジ ネ ー ト に 添 加 す る と 硫 化 水 素 の 産 生 が 認 め ら れ 、 そ の 産 生 量 は L-Cy st e i ne よ り も 顕 著 に 多 く 、 脳 で は
L
-Cy st e i ne の 7 倍 、 腎 臓 で は L-C y st e i ne の 80 倍 も 多 く 硫 化 水 素 が 合 成 さ れ る こ と が 分 か っ た 。 S t i p a nu k ら は 、L- Cy s t e i ne の 代 謝 経 路 は 亜 硫 酸 や タ ウ リ ン が 産 生 さ れ る 好 気 的 代 謝 経 路 の 方 が 、嫌 気 的 な 脱 硫 経 路 に よ る 代 謝 よ り も 優 位 に 機 能 し 得 る と 指 摘 し て お り
- Cy s t e i ne の 代 謝 経 路 は 亜 硫 酸 や タ ウ リ ン が 産 生 さ れ る 好 気 的 代 謝 経 路 の 方 が 、嫌 気 的 な 脱 硫 経 路 に よ る 代 謝 よ り も 優 位 に 機 能 し 得 る と 指 摘 し て お り
3 7 )
、 例 え 余 剰 に
L-Cy st e i ne を 外 部 か ら 摂 取 し て も 、 脱 硫 経 路 に よ
る 代 謝 産 物 で あ る 硫 化 水 素 あ る い は Bo und S ul fur の 生 合 成 は 積 極
的 に は 行 わ れ な い 可 能 性 が あ る 。そ れ に 対 し て 、
D-Cy s t e i ne は D AO
に よ っ て の み 代 謝 を 受 け て 硫 化 水 素 を 生 合 成 す る と 考 え ら れ る 。こ
15
の よ う に 、 小 脳 と 腎 臓 で は
L-Cy st e i ne を 基 質 と し た 既 知 の 経 路 か
ら よ り も 、 D AO / 3 MS T 経 路 に よ る
D-Cy st e i n を 基 質 と す る 代 謝 系
か ら 、 よ り 効 率 的 に 硫 化 水 素 を 産 生 し 得 る こ と が 明 ら か に な っ た 。
か ら 、 よ り 効 率 的 に 硫 化 水 素 を 産 生 し 得 る こ と が 明 ら か に な っ た 。
16
第 3 節
D-Cy st e i ne の 経 口 投 与 に よ る 組 織 内 Bo u nd S ul fur レ ベ ル へ の 影 響
結 果
硫 化 水 素 は 、 生 体 内 で Bo un d S ul fu r と し て 貯 蔵 さ れ る と 考 え ら れ て い る
1 4 )。筆 者 ら は 、マ ウ ス 小 脳 、大 脳 、腎 臓 に お い て
D-Cy st e i ne か ら の Bo un d S ul fur 産 生 に つ い て 検 討 し た 。マ ウ ス に D -Cy st e i ne ま た は L-Cy st e i ne を 経 口 投 与 し た と こ ろ 、 小 脳 の B o und S u l fu r レ ベ ル は 、D- Cy st e i ne 投 与 後 3 0 分 で 定 常 時 の 2 1 2 %に ま で 増 加 し 、 3 時 間 後 に は 定 常 時 の レ ベ ル に ま で 下 が っ た 。一 方 、L-Cy st e i ne 経 口 投 与 群 で は Bo u nd S ul fu r レ ベ ル に 変 化 は な か っ た (F i g . 4 A) 。 大 脳 で は D-Cy st e i n e 、L-Cy st e i ne 共 に Bo un d S ul fu r レ ベ ル の 変 動 は 見 ら れ な か っ た (F i g . 4 B) 。 腎 臓 に お け る Bo un d S ul fur レ ベ ル は
- Cy st e i ne 投 与 後 3 0 分 で 定 常 時 の 2 1 2 %に ま で 増 加 し 、 3 時 間 後 に は 定 常 時 の レ ベ ル に ま で 下 が っ た 。一 方 、L-Cy st e i ne 経 口 投 与 群 で は Bo u nd S ul fu r レ ベ ル に 変 化 は な か っ た (F i g . 4 A) 。 大 脳 で は D-Cy st e i n e 、L-Cy st e i ne 共 に Bo un d S ul fu r レ ベ ル の 変 動 は 見 ら れ な か っ た (F i g . 4 B) 。 腎 臓 に お け る Bo un d S ul fur レ ベ ル は
-Cy st e i n e 、L-Cy st e i ne 共 に Bo un d S ul fu r レ ベ ル の 変 動 は 見 ら れ な か っ た (F i g . 4 B) 。 腎 臓 に お け る Bo un d S ul fur レ ベ ル は
D
-Cy st e i ne 投 与 後 3 0 分 で 定 常 時 に 比 べ て 2 3 6 % ま で 増 加 し 、 3 時
間 後 に は 2 1 8 %、 6 時 間 後 に は 1 9 6 % と 徐 々 に 減 少 し 、 1 2 時 間 後 に
は 定 常 時 の レ ベ ル に ま で 下 が っ た 。 ま た 、 腎 臓 で は
L-Cy st e i ne 投
与 群 で も 投 与 後 3 0 分 で 1 7 2 % の Bo und S u l fu r レ ベ ル の 増 加 が 確 認
さ れ た が 、 3 時 間 後 に は 定 常 時 の レ ベ ル に 下 が っ た (F i g . 4 C) 。 以 上
の 結 果 は 、 D AO が 局 在 す る 小 脳 と 腎 臓 に お い て は 、
L-Cy st e i ne よ
り も
D-Cy st e i ne 投 与 時 に お い て B o und S ul fu r を 効 率 よ く 産 生 す
る こ と を 示 す も の で あ る 。
与 群 で も 投 与 後 3 0 分 で 1 7 2 % の Bo und S u l fu r レ ベ ル の 増 加 が 確 認
さ れ た が 、 3 時 間 後 に は 定 常 時 の レ ベ ル に 下 が っ た (F i g . 4 C) 。 以 上
の 結 果 は 、 D AO が 局 在 す る 小 脳 と 腎 臓 に お い て は 、
L-Cy st e i ne よ
り も
D-Cy st e i ne 投 与 時 に お い て B o und S ul fu r を 効 率 よ く 産 生 す
る こ と を 示 す も の で あ る 。
る こ と を 示 す も の で あ る 。
17
A B
C
F i g . 4
D-Cy st i e ne マ ウ ス 経 口 投 与 に よ る 組 織 内 Bo u nd S ul fur レ ベ ル の 測 定
( A - C )は マ ウ ス へ の 8 m m o l / k g b o d y w e i g h t D- C y s t e i n e ま た は L- C y s t e i n e 経 口 投 与 後 、各 時 間 に お け る 小 脳( A )、大 脳( B )及 び 腎 臓( C )の B o u n d S u l f u r レ ベ ル を 示 し た 。 *P <0 . 0 5 . m e a n s±S E , ( n = 3 )
18
考 察
マ ウ ス に
D- Cy s t e i ne を 経 口 投 与 し た 結 果 、D AO が 存 在 す る 小 脳 と 腎 臓 に お い て 、 硫 化 水 素 の 貯 蔵 体 で あ る Bo un d S ul fur レ ベ ル の 上 昇 が 確 認 さ れ た 。一 方 で D AO が 存 在 し て い な い 大 脳 で は Bo un d S u l fur レ ベ ル に 変 化 は な か っ た 。 こ の 結 果 は 、 D A O が 存 在 す る 臓 器 特 異 的 に 、D-Cy st e i ne か ら 3 MS T / D AO 経 路 に よ っ て 硫 化 水 素 が 産 生 さ れ 、 直 ち に Bo und S ul fur と し て 貯 蔵 さ れ た こ と を 示 唆 す る 結 果 で あ る 。 こ れ は 、 結 果 に は 示 し て い な い が マ ウ ス に
D
-Cy st e i ne を 経 口 投 与 し て も 、 小 脳 、 腎 臓 で D-Cy s t e i ne は 検 出 さ
れ な か っ た こ と か ら も 支 持 さ れ る 。 ま た 、 経 口 投 与 し た 場 合 、 両 臓
器 に お い て
D- Cy st e i ne の 方 が L- Cy st e i ne に 比 べ 組 織 内 Bo un d
S ul fur レ ベ ル を 上 昇 さ せ る こ と が 分 か っ た 。 こ れ は 第 二 節 で 行 っ
た 小 脳 、 腎 臓 に お け る
D-Cy st e i ne 、L-Cy st i e ne か ら の 硫 化 水 素 産
生 量 の 測 定 結 果 と 一 致 す る 。こ の 理 由 と し て は 以 下 の 二 つ が 考 え ら
れ る 。 一 つ は 、 第 二 節 で も 述 べ た よ う に 、
L-Cy st e i n e は 細 胞 内 で
好 気 的 に 代 謝 さ れ る 可 能 性 が 高 く
3 7 )、
D-Cy st e i ne に 比 べ て 硫 化 水
素 や Bo un d S ul fu r の 産 生 能 は 相 対 的 に 低 く な っ て い る と 考 え ら れ
る こ と 。も う 一 つ は 、
D-Cy st e i ne は 容 易 に 消 化 管 よ り 吸 収 さ れ て 、
速 や か に 血 流 に 入 る こ と が 知 ら れ て い る こ と で あ る
3 8 )。 以 上 の 理
由 で 経 口 投 与 で は
D-Cy st e i ne の 方 が 組 織 内 B o und S ul fur レ ベ ル
に 影 響 を 与 え や す い と 考 え ら れ る 。 さ ら に 、 小 脳 で は 産 生 さ れ た
Bo und S ul fur は 速 や か に 消 失 し て い る が 、 腎 臓 で は 小 脳 に 比 べ て
Bo und S ul fu r の 消 失 速 度 が 遅 い こ と が 分 か っ た 。 sul phi de q ui no ne
re du ct a se (S Q R ) は 自 ら を 過 硫 化 し て 硫 化 水 素 を 代 謝 す る 。 こ の
S Q R -P e rs ul fi de は e t hy l m a l o ni c e nce pha l o pa t hy 1 (ET HE1 ) に よ
れ な か っ た こ と か ら も 支 持 さ れ る 。 ま た 、 経 口 投 与 し た 場 合 、 両 臓
器 に お い て
D- Cy st e i ne の 方 が L- Cy st e i ne に 比 べ 組 織 内 Bo un d
S ul fur レ ベ ル を 上 昇 さ せ る こ と が 分 か っ た 。 こ れ は 第 二 節 で 行 っ
た 小 脳 、 腎 臓 に お け る
D-Cy st e i ne 、L-Cy st i e ne か ら の 硫 化 水 素 産
生 量 の 測 定 結 果 と 一 致 す る 。こ の 理 由 と し て は 以 下 の 二 つ が 考 え ら
れ る 。 一 つ は 、 第 二 節 で も 述 べ た よ う に 、
L-Cy st e i n e は 細 胞 内 で
好 気 的 に 代 謝 さ れ る 可 能 性 が 高 く
3 7 )、
D-Cy st e i ne に 比 べ て 硫 化 水
素 や Bo un d S ul fu r の 産 生 能 は 相 対 的 に 低 く な っ て い る と 考 え ら れ
る こ と 。も う 一 つ は 、
D-Cy st e i ne は 容 易 に 消 化 管 よ り 吸 収 さ れ て 、
速 や か に 血 流 に 入 る こ と が 知 ら れ て い る こ と で あ る
3 8 )。 以 上 の 理
由 で 経 口 投 与 で は
D-Cy st e i ne の 方 が 組 織 内 B o und S ul fur レ ベ ル
に 影 響 を 与 え や す い と 考 え ら れ る 。 さ ら に 、 小 脳 で は 産 生 さ れ た
Bo und S ul fur は 速 や か に 消 失 し て い る が 、 腎 臓 で は 小 脳 に 比 べ て
Bo und S ul fu r の 消 失 速 度 が 遅 い こ と が 分 か っ た 。 sul phi de q ui no ne
re du ct a se (S Q R ) は 自 ら を 過 硫 化 し て 硫 化 水 素 を 代 謝 す る 。 こ の
S Q R -P e rs ul fi de は e t hy l m a l o ni c e nce pha l o pa t hy 1 (ET HE1 ) に よ
た 小 脳 、 腎 臓 に お け る
D-Cy st e i ne 、L-Cy st i e ne か ら の 硫 化 水 素 産
生 量 の 測 定 結 果 と 一 致 す る 。こ の 理 由 と し て は 以 下 の 二 つ が 考 え ら
れ る 。 一 つ は 、 第 二 節 で も 述 べ た よ う に 、
L-Cy st e i n e は 細 胞 内 で
好 気 的 に 代 謝 さ れ る 可 能 性 が 高 く
3 7 )、
D-Cy st e i ne に 比 べ て 硫 化 水
素 や Bo un d S ul fu r の 産 生 能 は 相 対 的 に 低 く な っ て い る と 考 え ら れ
る こ と 。も う 一 つ は 、
D-Cy st e i ne は 容 易 に 消 化 管 よ り 吸 収 さ れ て 、
速 や か に 血 流 に 入 る こ と が 知 ら れ て い る こ と で あ る
3 8 )。 以 上 の 理
由 で 経 口 投 与 で は
D-Cy st e i ne の 方 が 組 織 内 B o und S ul fur レ ベ ル
に 影 響 を 与 え や す い と 考 え ら れ る 。 さ ら に 、 小 脳 で は 産 生 さ れ た
Bo und S ul fur は 速 や か に 消 失 し て い る が 、 腎 臓 で は 小 脳 に 比 べ て
Bo und S ul fu r の 消 失 速 度 が 遅 い こ と が 分 か っ た 。 sul phi de q ui no ne
re du ct a se (S Q R ) は 自 ら を 過 硫 化 し て 硫 化 水 素 を 代 謝 す る 。 こ の
S Q R -P e rs ul fi de は e t hy l m a l o ni c e nce pha l o pa t hy 1 (ET HE1 ) に よ
生 量 の 測 定 結 果 と 一 致 す る 。こ の 理 由 と し て は 以 下 の 二 つ が 考 え ら
れ る 。 一 つ は 、 第 二 節 で も 述 べ た よ う に 、
L-Cy st e i n e は 細 胞 内 で
好 気 的 に 代 謝 さ れ る 可 能 性 が 高 く
3 7 )、
D-Cy st e i ne に 比 べ て 硫 化 水
素 や Bo un d S ul fu r の 産 生 能 は 相 対 的 に 低 く な っ て い る と 考 え ら れ
る こ と 。も う 一 つ は 、
D-Cy st e i ne は 容 易 に 消 化 管 よ り 吸 収 さ れ て 、
速 や か に 血 流 に 入 る こ と が 知 ら れ て い る こ と で あ る
3 8 )。 以 上 の 理
由 で 経 口 投 与 で は
D-Cy st e i ne の 方 が 組 織 内 B o und S ul fur レ ベ ル
に 影 響 を 与 え や す い と 考 え ら れ る 。 さ ら に 、 小 脳 で は 産 生 さ れ た
Bo und S ul fur は 速 や か に 消 失 し て い る が 、 腎 臓 で は 小 脳 に 比 べ て
Bo und S ul fu r の 消 失 速 度 が 遅 い こ と が 分 か っ た 。 sul phi de q ui no ne
re du ct a se (S Q R ) は 自 ら を 過 硫 化 し て 硫 化 水 素 を 代 謝 す る 。 こ の
S Q R -P e rs ul fi de は e t hy l m a l o ni c e nce pha l o pa t hy 1 (ET HE1 ) に よ
素 や Bo un d S ul fu r の 産 生 能 は 相 対 的 に 低 く な っ て い る と 考 え ら れ
る こ と 。も う 一 つ は 、
D-Cy st e i ne は 容 易 に 消 化 管 よ り 吸 収 さ れ て 、
速 や か に 血 流 に 入 る こ と が 知 ら れ て い る こ と で あ る
3 8 )。 以 上 の 理
由 で 経 口 投 与 で は
D-Cy st e i ne の 方 が 組 織 内 B o und S ul fur レ ベ ル
に 影 響 を 与 え や す い と 考 え ら れ る 。 さ ら に 、 小 脳 で は 産 生 さ れ た
Bo und S ul fur は 速 や か に 消 失 し て い る が 、 腎 臓 で は 小 脳 に 比 べ て
Bo und S ul fu r の 消 失 速 度 が 遅 い こ と が 分 か っ た 。 sul phi de q ui no ne
re du ct a se (S Q R ) は 自 ら を 過 硫 化 し て 硫 化 水 素 を 代 謝 す る 。 こ の
S Q R -P e rs ul fi de は e t hy l m a l o ni c e nce pha l o pa t hy 1 (ET HE1 ) に よ
に 影 響 を 与 え や す い と 考 え ら れ る 。 さ ら に 、 小 脳 で は 産 生 さ れ た
Bo und S ul fur は 速 や か に 消 失 し て い る が 、 腎 臓 で は 小 脳 に 比 べ て
Bo und S ul fu r の 消 失 速 度 が 遅 い こ と が 分 か っ た 。 sul phi de q ui no ne
re du ct a se (S Q R ) は 自 ら を 過 硫 化 し て 硫 化 水 素 を 代 謝 す る 。 こ の
S Q R -P e rs ul fi de は e t hy l m a l o ni c e nce pha l o pa t hy 1 (ET HE1 ) に よ
S Q R -P e rs ul fi de は e t hy l m a l o ni c e nce pha l o pa t hy 1 (ET HE1 ) に よ
19
っ て 代 謝 さ れ て 亜 硫 酸 に な り 、亜 硫 酸 は 亜 硫 酸 オ キ シ ダ ー ゼ に よ り 硫 酸 に 、 あ る い は Rho da ne se に よ っ て チ オ 硫 酸 に 変 換 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る
3 9 )。 脳 で は S Q R の 存 在 が 確 認 さ れ て お ら ず 、 末 梢 臓 器 と は 硫 化 水 素 の 代 謝 シ ス テ ム が 異 な っ て い る 可 能 性 が 指 摘 さ れ て お り
4 0 )、そ の 影 響 で 脳 と 腎 臓 で Bo und S ul fur の 消 失 時 間 に 差 が 生 じ て い る 可 能 性 が あ る 。 ま た は 、 D AO 活 性 は 小 脳 よ り も 腎 臓 の 方 が 高 い こ と か ら 、 腎 臓 の 方 が 相 対 的 に
D- Cy st e i ne か ら の Bo und S u l fu r 産 生 量 が 高 く な る こ と が 予 想 さ れ 、 こ の こ と か ら Bo und S ul fur の 消 失 時 間 が 見 か け 上 遅 く な っ て い る と も 考 え ら れ る 。
3 MS T は ミ ト コ ン ド リ ア に 局 在 し て い る の に 対 し 、 D AO は ペ ル
オ キ シ ソ ー ム に 局 在 し て い る
3 1 )。 i n vivo 条 件 下 で 行 っ た 本 検 討 で
の 結 果 か ら 、 D AO / 3 MS T 経 路 は 、 細 胞 内 局 在 が 異 な る ペ ル オ キ シ
ソ ー ム の D A O と ミ ト コ ン ド リ ア の 3 MS T の 連 動 に よ っ て 硫 化 水 素
と Bo und S ul fur を 産 生 す る 経 路 で あ る こ と が 示 さ れ た 。
20
第 4 節
D-Cy st e i ne の 酸 化 ス ト レ ス 障 害 か ら の 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 保 護 作 用 の 解 析
結 果
硫 化 水 素 に は 酸 化 ス ト レ ス 障 害 に 対 す る 神 経 保 護 効 果 が あ る こ と が 報 告 さ れ て い る
6 )。 こ れ ま で の 検 討 に よ っ て 、
D- Cy st e i ne か ら 硫 化 水 素 が 産 生 さ れ る こ と と 、 マ ウ ス へ の D-Cy st e i ne 経 口 投 与 に よ っ て 小 脳 で B o und S ul fu r レ ベ ル が 上 昇 す る こ と が 分 か っ た 。 筆 者 ら は 、D-Cy st e i ne に 酸 化 ス ト レ ス 障 害 に 対 す る 神 経 保 護 効 果 が あ る か ど う か を 検 討 す る た め 、マ ウ ス 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 に 過 酸 化 水 素 (H
2O
2) 処 理 に よ る 酸 化 ス ト レ ス 障 害 を 誘 導 し 、
-Cy st e i ne に 酸 化 ス ト レ ス 障 害 に 対 す る 神 経 保 護 効 果 が あ る か ど う か を 検 討 す る た め 、マ ウ ス 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 に 過 酸 化 水 素 (H
2O
2) 処 理 に よ る 酸 化 ス ト レ ス 障 害 を 誘 導 し 、
D
-Cy st e i ne の 細 胞 保 護 効 果 を WS T-8 ア ッ セ イ で 検 討 し た 。そ の 結 果 、 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 に 5 0 µ M H
2O
2を 処 理 す る と 2 1 時 間 後 に は 約 6 0 % 生 存 率 が 低 下 し た 。
D-Cy st e i ne ま た は L-C y st e i ne を 添 加 す る と 、 F i g . 5 に 示 す よ う に Cy st e i ne 濃 度 依 存 的 に 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 の 生 存 率 が 上 昇 し た 。 1 m M
D-Cy st e i ne ま た は L-Cy st e i ne を 前 処 理 し た 群 で は 共 に 、 コ ン ト ロ ー ル 群 に 比 べ て 2 0 0 % 以 上 生 存 率 が 上 昇 し た 。こ の 結 果 か ら 、D-Cy st e i ne 、L-Cy st e i n e 共 に 、H2O
2
-Cy st e i ne を 前 処 理 し た 群 で は 共 に 、 コ ン ト ロ ー ル 群 に 比 べ て 2 0 0 % 以 上 生 存 率 が 上 昇 し た 。こ の 結 果 か ら 、D-Cy st e i ne 、L-Cy st e i n e 共 に 、H2O
2
-Cy st e i n e 共 に 、H2O
2
に よ る 酸 化 ス ト レ ス 障 害 か ら 小 脳 神 経 細 胞 を 保 護 す る 効 果 が あ る
こ と が 示 唆 さ れ た 。
21
F i g . 5
D-Cy st e i ne の 酸 化 ス ト レ ス に 対 す る 細 胞 保 護 効 果 の 解 析
マ ウ ス 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 に 5 0 µ M H2O2 を D - C y s t e i n e ま た は L - C y s t e i n e 各 濃 度 存 在 下 で 処 理 し た と き の 、W S T- 8 a s s a y に よ る 細 胞 生 存 率 の 評 価 結 果 を 示 し た 。 * *P <0 . 0 1 . m e a n s±S E , ( n = 3 )
22
考 察
本 検 討 で 、
D-Cy st e i ne に H
2O
2誘 導 の 酸 化 ス ト レ ス 障 害 に 対 す る 小 脳 神 経 細 胞 保 護 効 果 が あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。筆 者 ら は 、マ ウ ス に D -Cy st e i n e を 経 口 投 与 す る と 、小 脳 に お い て Bo und S ul fur レ ベ ル が 上 昇 す る こ と を 確 認 し て い る 。し か し 、そ の 小 脳 に お い て
D
-Cy st e i ne が 検 出 さ れ な か っ た こ と か ら 、 小 脳 に 到 達 し た
D
-Cy st e i ne は 速 や か に 代 謝 さ れ て B o und S ul fu r へ と 変 換 さ れ る も の と 判 断 し た 。 マ ウ ス 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 に D-Cy s t e i ne 前 処 理 し た 本 検 討 で も 、D-Cy st e i ne は 細 胞 内 で 速 や か に B o und S ul fu r へ と 変 換 さ れ て い る 可 能 性 は あ る と 考 え ら れ る 。ま た 、マ ウ ス へ の 経 口 投 与 で は Bo un d S ul fur の 上 昇 が 認 め ら れ な か っ た L-Cy st e i ne に お い て も 、D-Cy st e i ne と 同 様 に 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 に お い て 酸 化 ス ト レ ス 障 害 に 対 す る 保 護 効 果 が み ら れ た 。こ の 結 果 は 、経 口 投 与 で は 小 脳 ま で 到 達 で き な か っ た L-Cy st e i ne が 、 直 接 神 経 細 胞 に 到 達 で き る i n v i t ro の 系 で は 、細 胞 に 容 易 に 取 り 込 ま れ て 、 C B S、
-Cy st e i ne は 細 胞 内 で 速 や か に B o und S ul fu r へ と 変 換 さ れ て い る 可 能 性 は あ る と 考 え ら れ る 。ま た 、マ ウ ス へ の 経 口 投 与 で は Bo un d S ul fur の 上 昇 が 認 め ら れ な か っ た L-Cy st e i ne に お い て も 、D-Cy st e i ne と 同 様 に 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 に お い て 酸 化 ス ト レ ス 障 害 に 対 す る 保 護 効 果 が み ら れ た 。こ の 結 果 は 、経 口 投 与 で は 小 脳 ま で 到 達 で き な か っ た L-Cy st e i ne が 、 直 接 神 経 細 胞 に 到 達 で き る i n v i t ro の 系 で は 、細 胞 に 容 易 に 取 り 込 ま れ て 、 C B S、
-Cy st e i ne と 同 様 に 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 に お い て 酸 化 ス ト レ ス 障 害 に 対 す る 保 護 効 果 が み ら れ た 。こ の 結 果 は 、経 口 投 与 で は 小 脳 ま で 到 達 で き な か っ た L-Cy st e i ne が 、 直 接 神 経 細 胞 に 到 達 で き る i n v i t ro の 系 で は 、細 胞 に 容 易 に 取 り 込 ま れ て 、 C B S、
3 MS T / CAT 経 路 に よ っ て 硫 化 水 素 ま た は Bo u nd S ul f ur と し て 代 謝
さ れ た 後 、 H
2O
2に 対 す る 細 胞 保 護 効 果 を 発 揮 し た と 解 釈 す る こ と
も で き る 。こ れ ま で に 、硫 化 水 素 に 酸 化 ス ト レ ス 障 害 に 対 す る 細 胞
保 護 効 果 が あ る こ と は 報 告 さ れ て い た が
6 )、 Bo un d S ul fur に 同 様
の 効 果 が あ る か ど う か 否 か と い う 点 に つ い て は 十 分 な 研 究 が 為 さ
れ て い な い 。 本 検 討 の 結 果 は 、 Bo u nd S ul fu r に も 酸 化 ス ト レ ス 障
害 に 対 す る 神 経 細 胞 保 護 効 果 が あ る 可 能 性 を 示 唆 す る も の で あ り 、
今 ま で 知 ら れ て い な い Bo un d S ul fu r の 新 た な 生 理 機 能 解 明 の 一 助
と な っ た 。
23
小 括
こ れ ま で 硫 化 水 素 は 、 生 体 内 に お い て
L-Cy st e i ne か ら の み 生 成 さ れ る と 考 え ら れ て き た 。 本 研 究 で 筆 者 ら は 、 F i g . 6 で 示 す よ う に マ ウ ス 脳 硫 化 水 素 お よ び Bo un d S ul fur の 新 規 産 生 経 路 と し て
D
-Cy st e i ne を 基 質 と し た D AO / 3 MS T 経 路 の 存 在 を 見 出 し た 。 こ の 発 見 は 、 硫 化 水 素 及 び Bo un d S ul fur の 生 体 内 に お け る 機 能 を 研 究 す る 上 で 重 要 な 知 見 で あ る と 共 に 、 生 体 内 D- ア ミ ノ 酸 の 生 理 的 意 義 解 明 の 一 助 に な る と 考 え ら れ る 。近 年 の 研 究 に お い て 、硫 化 水 素 は 酸 化 ス ト レ ス 障 害 等 に 対 す る 細 胞 保 護 作 用 が あ る こ と が 報 告 さ れ た こ と か ら 、そ の 臨 床 応 用 が 期 待 さ れ て い る 4 1 )。一 方 で 、 D AO は ヒ ト で は マ ウ ス と 同 様 に 小 脳 と 腎 臓 に 発 現 し 、さ ら に 肝 臓 に も 発 現 す る こ と が 知 ら れ て い る
3 2 )。 本 研 究 に お い て 、 マ ウ ス を 用 い た 実 験 か ら
D-Cy st e i ne は L-Cy st e i n e よ り も 効 率 良 く 臓 器 に 到 達 し 、 D AO が 発 現 す る 臓 器 特 異 的 に 硫 化 水 素 を 産 生 す る こ と が 分 か っ た 。 こ の 事 は 、 硫 化 水 素 の 発 生 源 と し て D-Cy st e i ne を 臨 床 応 用 す る 可 能 性 を 示 す 結 果 で あ る 。 さ ら に 、L- Cy st e i ne は 他 の ア ミ ノ 酸 に 比 べ て 興 奮 毒 性 を 示 し や す い こ と が 指 摘 さ れ て い る が 4 2 ) , 4 3 )、
。一 方 で 、 D AO は ヒ ト で は マ ウ ス と 同 様 に 小 脳 と 腎 臓 に 発 現 し 、さ ら に 肝 臓 に も 発 現 す る こ と が 知 ら れ て い る
3 2 )。 本 研 究 に お い て 、 マ ウ ス を 用 い た 実 験 か ら
D-Cy st e i ne は L-Cy st e i n e よ り も 効 率 良 く 臓 器 に 到 達 し 、 D AO が 発 現 す る 臓 器 特 異 的 に 硫 化 水 素 を 産 生 す る こ と が 分 か っ た 。 こ の 事 は 、 硫 化 水 素 の 発 生 源 と し て D-Cy st e i ne を 臨 床 応 用 す る 可 能 性 を 示 す 結 果 で あ る 。 さ ら に 、L- Cy st e i ne は 他 の ア ミ ノ 酸 に 比 べ て 興 奮 毒 性 を 示 し や す い こ と が 指 摘 さ れ て い る が 4 2 ) , 4 3 )、
-Cy st e i ne を 臨 床 応 用 す る 可 能 性 を 示 す 結 果 で あ る 。 さ ら に 、L- Cy st e i ne は 他 の ア ミ ノ 酸 に 比 べ て 興 奮 毒 性 を 示 し や す い こ と が 指 摘 さ れ て い る が 4 2 ) , 4 3 )、
、
D
-Cy st e i ne に は L-Cy st e i ne の よ う な 毒 性 あ る い は 人 体 へ の 影 響 は な い こ と が 報 告 さ れ て い る 4 4 ) , 4 5 )。 神 経 細 胞 の 中 で も 小 脳 の プ ル キ ン エ 細 胞 は 虚 血 傷 害 に 極 め て 脆 弱 な 細 胞 で あ る
4 6 )。 ま た 一 例 と し て 、自 閉 症 は 、有 効 な 治 療 法 が 確 立 さ れ て い な い 脳 疾 患 の 一 つ で あ り 、小 脳 神 経 細 胞 の 酸 化 的 な ス ト レ ス 障 害 と の 関 連 が 示 唆 さ れ て い
。 神 経 細 胞 の 中 で も 小 脳 の プ ル キ ン エ 細 胞 は 虚 血 傷 害 に 極 め て 脆 弱 な 細 胞 で あ る
4 6 )。 ま た 一 例 と し て 、自 閉 症 は 、有 効 な 治 療 法 が 確 立 さ れ て い な い 脳 疾 患 の 一 つ で あ り 、小 脳 神 経 細 胞 の 酸 化 的 な ス ト レ ス 障 害 と の 関 連 が 示 唆 さ れ て い
る
4 7 )。 従 っ て 、 酸 化 的 な ス ト レ ス 障 害 を 受 け 易 い 小 脳 神 経 細 胞 に
対 し て 細 胞 保 護 効 果 が あ る
D- Cy st e i ne の 臨 床 応 用 が 期 待 さ れ る 。
ま た 、マ ウ ス へ の
D-Cy st e i ne 経 口 投 与 に よ っ て 、小 脳 で の Bo un d
24
sul fur レ ベ ル が 上 昇 し た こ と と 、D- Cy st e i ne が 小 脳 初 代 培 養 神 経 細 胞 に お い て 酸 化 ス ト レ ス 障 害 に 対 す る 保 護 効 果 を 示 し た 事 は 、硫 化 水 素 の み な ら ず Bo und S ul fur に 細 胞 保 護 作 用 が あ る 可 能 性 を も 示 唆 す と 考 え ら れ る 。
以 上 、 第 一 部 で 明 ら か に な っ た 知 見 か ら 、 Bo un d S ul fur の 神 経
保 護 作 用 に つ い て 検 討 す る こ と が 望 ま れ た 。
25
F i g . 6 小 脳 と 腎 臓 に お け る D- Cy st e i e n を 基 質 と し た 硫 化 水 素
Bo und S ul f ur 産 生 経 路
Bo und S ul f ur 産 生 経 路
26
第 2 部 Bo un d S ul fur の 神 経 保 護 作 用 と そ の 機 序 の 解 明
序 論
Bo und S ul fur と は 1 9 9 3 年 に O g a sa w a ra ら に よ っ て 定 義 さ れ た
“ di t hi o t hre i t o l ( D T T ) に よ っ て S2 -を 遊 離 す る イ オ ウ 種 ”で あ る
1 3 )。
F i g . 1 に 示 す よ う に P o l y sul fi de の 内 側 の イ オ ウ 原 子 や 、 P e r sul fi de
の 外 側 の イ オ ウ 原 子 な ど が Bo un d S ul fur に 相 当 す る 。 よ り 先 駆 的
な 研 究 と し て We s t l e y ら は 、そ の 還 元 状 態 の イ オ ウ の 生 理 的 存 在 意
義 は 、 毒 性 の 強 い シ ア ン イ オ ン の 解 毒 で あ る と 考 え 、 こ れ を “ ス ル
フ ァ ン プ ー ル ” と し て 概 念 付 け さ れ て い た
4 8 ) - 5 0 )。 そ の 一 方 で 栄 養
化 学 の 分 野 で 、S t i pa nuk ら は 、脱 硫 代 謝 系 に お い て 生 成 さ れ る S2 -
は 、還 元 状 態 を 保 っ た ま ま 何 ら か の 形 で 細 胞 内 に 貯 蔵 さ れ 、必 要 に
応 じ て 生 体 内 で 利 用 さ れ る 可 能 性 を 指 摘 し た
5 1 )。 We st l e y ら は シ ア
ン イ オ ン と 反 応 し て チ オ シ ア ン 酸 に な る イ オ ウ 種 、 ま た は
Rho da ne s e の 基 質 と な り 得 る イ オ ウ 種 を S ul fa ne S ul fur と 名 付 け
た 。し か し 、 S ul fa n e S ul fur の 生 体 内 で の 存 在 形 態 は 不 明 瞭 で あ り 、
そ の 存 在 量 も 正 確 に 測 定 さ れ て は い な か っ た 。そ こ で 、O g a sa w a ra
ら は D T T に よ っ て S2 -を 遊 離 す る イ オ ウ 種 の 測 定 法 を 独 自 に 考 案 し 、
対 象 と な る イ オ ウ 種 を“ Bo und S ul f ur ”と 名 付 け 、 “ S u l fa ne S ul fur ”
と は 別 に 新 た な 概 念 を 導 入 し た
1 3 )。 O g a sa w a ra ら は ラ ッ ト の 各 臓
器 で の Bo un d S ul fur の 存 在 量 、 存 在 分 布 と 生 成 能 に つ い て 明 ら か
に し た 。 雄 ラ ッ ト の 各 臓 器 で は 、 Bo und S ul fu r は 腎 臓 に 3 2 4 nm o l
/ g と 最 も 多 く 分 布 し 、 肝 臓 に は 4 1 nm o l / g 、 脳 に は 1 9 nm o l / g
存 在 す る 事 を 報 告 し た
5 2 )。 し か し 、 Bo un d S ul fu r の 生 理 的 な 機 能
に は 依 然 と し て 不 明 な 点 が 多 く 、そ の 存 在 意 義 は 解 明 さ れ て い な い 。
は 、還 元 状 態 を 保 っ た ま ま 何 ら か の 形 で 細 胞 内 に 貯 蔵 さ れ 、必 要 に
応 じ て 生 体 内 で 利 用 さ れ る 可 能 性 を 指 摘 し た
5 1 )。 We st l e y ら は シ ア
ン イ オ ン と 反 応 し て チ オ シ ア ン 酸 に な る イ オ ウ 種 、 ま た は
Rho da ne s e の 基 質 と な り 得 る イ オ ウ 種 を S ul fa ne S ul fur と 名 付 け
を 遊 離 す る イ オ ウ 種 の 測 定 法 を 独 自 に 考 案 し 、
対 象 と な る イ オ ウ 種 を“ Bo und S ul f ur ”と 名 付 け 、 “ S u l fa ne S ul fur ”
と は 別 に 新 た な 概 念 を 導 入 し た
1 3 )。 O g a sa w a ra ら は ラ ッ ト の 各 臓
器 で の Bo un d S ul fur の 存 在 量 、 存 在 分 布 と 生 成 能 に つ い て 明 ら か
に し た 。 雄 ラ ッ ト の 各 臓 器 で は 、 Bo und S ul fu r は 腎 臓 に 3 2 4 nm o l
/ g と 最 も 多 く 分 布 し 、 肝 臓 に は 4 1 nm o l / g 、 脳 に は 1 9 nm o l / g
存 在 す る 事 を 報 告 し た
5 2 )。 し か し 、 Bo un d S ul fu r の 生 理 的 な 機 能
に は 依 然 と し て 不 明 な 点 が 多 く 、そ の 存 在 意 義 は 解 明 さ れ て い な い 。
27
そ の 一 方 で 、 K i m ura ら に よ っ て 硫 化 水 素 が 神 経 調 節 物 質 と し て 機 能 し 得 る こ と が 提 唱 さ れ て 以 降 、硫 化 水 素 の 新 た な 生 理 機 能 を 報 告 す る 研 究 は 枚 挙 に 暇 が な い
5 3 )。 K i m ura ら は 、 P ol y sul fi de が Tra nsi e nt Re ce pt o r P o t e nt i a l Anky ri n 1 (T RPA 1 ) チ ャ ネ ル の 活 性 化 を 引 き 起 こ し て 、細 胞 内 へ の カ ル シ ウ ム 流 入 を 促 進 す る こ と を 証 明 し た
5 4 )。 こ の 活 性 化 作 用 は 硫 化 水 素 の 3 2 0 倍 と 極 め て 強 力 で あ っ た 。 ま た 、 G re i ne r ら は 硫 化 水 素 の 前 駆 体 と し て 汎 用 さ れ る 硫 化 ナ ト リ ウ ム ( N a2S ) が 溶 媒 中 で 酸 化 さ れ て P o l y sul fi de と し て 存 在 し 、 P T EN の シ ス テ イ ン 残 基 を 酸 化 さ せ る と 報 告 し た
5 5 )。 ま た 、 最 近 で は 硫 化 水 素 が タ ン パ ク 質 中 の シ ス テ イ ン 残 基 に 共 有 結 合 し た 状 態 と な る “ su l fhy dry l 化 ”、 つ ま り “ 過 硫 化 ( p r o t e i n -S S H )”
が 注 目 を 集 め て い る が
5 6 )、 To o he y は こ の 現 象 は S ul fa ne S ul fur の 媒 介 に よ る も の で あ る と 主 張 し て い る
5 7 )。 即 ち 、 共 に 求 核 性 を 持 つ HS-と チ オ ー ル 基 の 反 応 が 起 き づ ら い こ と は 明 白 で あ る 。 従 っ て 、今 ま で 硫 化 水 素 の 作 用 だ と 報 告 さ れ た 現 象 の 一 部 は 実 際 に は P o l y sul fi de を 含 む Bo und S ul f ur 種 の 反 応 に 基 づ い て い る 可 能 性 が あ る と 指 摘 さ れ る に 至 っ た 。
近 年 、酸 化 ス ト レ ス が 哺 乳 動 物 に お け る 様 々 な 疾 患 に 深 く 関 与 し
て い る こ と が 明 ら か に な っ て い る 。特 に 中 枢 神 経 系 に お い て は パ ー
キ ン ソ ン 病 や ア ル ツ ハ イ マ ー 病 と の 関 連 も 指 摘 さ れ て い る
5 8 ) , 5 9 )。
好 気 的 生 物 と し て 日 常 的 に 酸 化 ス ト レ ス に 曝 さ れ て い る に も か か
わ ら ず 、私 た ち 人 類 が 数 十 万 年 も の 長 い 間 命 を 繋 い で こ ら れ た の は 、
進 化 の 過 程 で 酸 化 的 ス ト レ ス に 対 す る 防 御 機 構 を 獲 得 し て き た こ
と に よ る も の で あ る 。 nucl e a r fa ct o r e ry t hro i d 2 re l a t e d fa ct o r 2
(N rf2 ) は 細 胞 内 の 抗 酸 化 遺 伝 子 群 を 制 御 す る 因 子 と し て 、 1 9 97 年
28
に I t o h ら に よ っ て そ の 機 能 が 明 ら か に さ れ た
6 0 )。 転 写 因 子 で あ る N rf2 は 非 ス ト レ ス 時 に は 細 胞 質 内 で K e l ch - l i ke e ry t hro i d ce l l -de ri v e d pro t e i n w i t h CN C ho m o l o g y [EC H]-as sociated pro t e i n 1 (K e a p1 ) に 捕 捉 さ れ る 。K e a p1 は Cul l i n3 型 E 3 ラ イ ゲ ー ス の ア ダ プ タ ー タ ン パ ク 質 と し て の 機 能 も 有 す る た め 、 K e a p1 に 捕 捉 さ れ た N rf2 は ユ ビ キ チ ン 化 を 受 け た 後 、 プ ロ テ ア ソ ー ム に よ り 分 解 さ れ る 。し か し 、細 胞 が ス ル フ ォ ラ フ ァ ン や ク ル ク ミ ン な ど の 親 電 子 性 物 質 ま た は 活 性 酸 素 種 に 曝 さ れ る と 、 細 胞 質 に お い て N rf2 は K e a p1 の 捕 捉 か ら 逃 れ て 核 内 に 移 行 す る 。 核 内 に 移 行 し た N rf2 は sm a l l Ma f pro t e i ns (s Ma f ) と の ヘ テ ロ ダ イ マ ー を 形 成 し て a nt i o x i da nt re spo nse e l e m e nt s ( AR E ) に 結 合 し 、 AR E の 下 流 に 存 在 す る 多 種 多 様 な 抗 酸 化 遺 伝 子 群 の 発 現 を 誘 導 す る
6 1 )。 こ の よ う に K e a p1 / N rf2 系 は 、細 胞 の 酸 化 ス ト レ ス に 対 す る 優 れ た 防 御 機 構 と し て 知 ら れ て い る 。 ご く 最 近 Ho u ri ha n ら は 、 水 硫 化 ナ ト リ ウ ム (N a HS ) か ら 発 生 し た 硫 化 水 素 が 、 K e a p1 の シ ス テ イ ン 残 基 の 過 硫 化 を 促 し 、 K e a p1 の 立 体 構 造 を 変 化 さ せ て 、 N rf2 の 核 内 移 行 を 誘 導 す る と 報 告 し た
6 2 )。 し か し 、 こ の 報 告 は 、 4 0 0 µ M と い う 高 濃 度 の N a HS を 細 胞 に 処 理 し て い る 点 を 慎 重 に 考 察 し な け れ ば な ら な い 。生 体 内 の 硫 化 水 素 濃 度 は n M の オ ー ダ ー で あ る と 報 告 さ れ て お
り
6 3 )、 4 0 0 µ M は 生 理 的 な 硫 化 水 素 濃 度 か ら 明 ら か に 逸 脱 し て い る 。
さ ら に N a HS 処 理 に よ っ て 過 酸 化 水 素 が 発 生 し 、こ の 過 酸 化 水 素 が
ま ず K e a p1 の シ ス テ イ ン 残 基 に 作 用 し て K e a p1 上 の 別 の シ ス テ イ
ン 残 基 と の 間 で ジ ス ル フ ィ ド 結 合 を 形 成 さ せ る と 述 べ て い る 。更 に
こ の ジ ス ル フ ィ ド 結 合 が 硫 化 水 素 に よ っ て 還 元 さ れ て 、シ ス テ イ ン
残 基 の 過 硫 化 を 引 き 起 こ す と し て い る 。し か し 、生 理 的 条 件 下 の 細
29
胞 質 内 に は m M レ ベ ル で グ ル タ チ オ ン が 存 在 し て お り 、上 述 の 還 元 反 応 を n M レ ベ ル と い う 極 め て 微 量 に し か 存 在 せ ず 、還 元 能 も グ ル タ チ オ ン よ り は る か に 劣 る 硫 化 水 素 が 優 先 的 に 行 う 事 は 考 え に く い 。 ま た 、 こ れ と は 別 に Wa ng ら は 、 硫 化 水 素 が K e a p1 上 の シ ス テ イ ン 残 基 を 過 硫 化 し て 、立 体 構 造 的 に K e a p1 の N rf 2 に 対 す る ユ ビ キ チ ン 化 を 妨 害 す る と 報 告 し て い る
6 4 )。 し か し 彼 ら は 、 こ の ユ ビ キ チ ン 化 妨 害 機 構 に つ い て 実 験 的 に は 全 く 証 明 し て お ら ず 、そ れ を 支 持 す る よ う な 報 告 は 知 ら れ て い な い 。 K e a p1 に は 複 数 の シ ス テ イ ン 残 基 が 存 在 し 、 こ れ に 対 す る 修 飾 が K e a p1 の 細 胞 質 で の 存 在 形 態 に 深 く 関 わ っ て い る こ と が 明 ら か に な っ て い る
6 5 )。 To o he y も 指 摘 し て い る よ う に 、硫 化 水 素 が 直 接 シ ス テ イ ン 残 基 を 過 硫 化 さ せ る こ と は 考 え づ ら く 、 S ul fa ne S ul f ur あ る い は B o un d S ul fu r が 、 シ ス テ イ ン 残 基 の 過 硫 化 を 効 率 良 く 促 進 さ せ る こ と が で き る 反 応 種 で あ る こ と が 予 想 さ れ た 。 Bo u nd S ul fur の K e a p1 / N rf2 系 に 対 す る 影 響 の 検 証 は 、 硫 化 水 素 と Bo u nd S ul fu r の 生 理 的 機 能 と そ の 作 用 メ カ ニ ズ ム の 差 異 を 明 確 に し 、生 理 的 機 能 を 担 う イ オ ウ 種 の 理 解 を 深 め る た め の 一 助 に な る と 考 え 、 本 研 究 を 行 っ た 。
こ の 2 0 年 間 で 硫 化 水 素 に 関 す る 研 究 状 況 は そ れ 以 前 と は 大 き く
変 化 し た 。こ の 変 化 は 極 め て 目 ま ぐ る し く 、細 胞 内 硫 化 水 素 の 正 確
な 生 体 内 濃 度 も 把 握 さ れ な い ま ま に 研 究 が 進 め ら れ て き た の が 現
状 で あ る 。 硫 化 水 素 の 生 理 的 な 濃 度 は 1 9 9 0 年 代 に は 数 十 か ら 数 百
µ M で あ る と す る 報 告 も 見 ら れ た 2 ) - 4 )。 し か し 、 測 定 系 の 進 歩 に 伴
っ て 、現 在 で は 生 体 内 硫 化 水 素 の 濃 度 は n M レ ベ ル へ と 大 幅 に 下 方
修 正 さ れ る に 至 っ た
6 3 )。 こ の よ う な 背 景 が 、 実 際 に は 様 々 な イ オ
ウ 種 が 関 わ る 生 理 的 現 象 を 、短 絡 的 に 硫 化 水 素 に よ る も の で あ る と
30
い う 画 一 的 な 解 釈 へ と 誤 導 し て き た 可 能 性 も 予 想 さ れ る 。筆 者 ら は 、 硫 化 水 素 の 貯 蔵 型 と さ れ る Bo u nd S ul fur の 生 理 的 機 能 に 注 目 し 、 本 研 究 で は 、そ の 新 た な 役 割 と し て 、酸 化 ス ト レ ス に 対 す る 神 経 細 胞 保 護 効 果 に つ い て 検 証 し 、 そ の メ カ ニ ズ ム を 解 明 し た 。
31
第 1 節 P o l y sul fi de 処 理 に よ る N e uro 2 A(N 2 A) 細 胞 内 の Bo un d S ul fur レ ベ ル の 測 定
結 果
本 研 究 で は 、 マ ウ ス 神 経 芽 腫 細 胞 で あ る N 2 A 細 胞 を 用 い 代 表 的
な Bo und S ul fur 種 で 、 高 純 度 市 販 品 と し て 供 給 さ れ 得 た S o di um
t e t ra sul fi de ( N a
2S
4) を 処 理 し た 後 、 N 2 A 細 胞 内 の Bo und S ul fu r 量
を 測 定 し た 。 N 2 A 細 胞 は 通 常 1 0 %F BS 含 有 培 地 で 培 養 を 行 う が 、
N a
2S
4が 血 清 成 分 に 結 合 し 消 費 さ れ る 可 能 性 を 考 慮 し 、 N a2S
4 処 理
時 の 培 地 中 の F B S 濃 度 は 、 2 % と し た 。 以 後 、 全 て の 実 験 に お い て
こ の 培 養 条 件 を 用 い た 。N 2 A 細 胞 抽 出 液 中 の Bo un d S ul fur 含 量 を
測 定 し た 結 果 、 N 2 A 細 胞 内 に は 、 約 0 . 7 nm o l / pro t e i n m g 存 在 し
て い る こ と が 分 か っ た 。 2 5 µ M N a2S
4 処 理 5 分 後 で 、 Bo und S ul fur
量 は 最 高 値 ( 2 . 8 nm o l / pro t e i n m g ) に 達 し た 。 そ の 後 、 徐 々 に 減
少 し て 、 2 4 時 間 後 に は 未 処 理 時 と 同 レ ベ ル に ま で 減 少 し た (F i g . 7 A) 。
こ の 測 定 に お い て 、 細 胞 に 処 理 し た Bo und S ul fur が 細 胞 内 に 到 達
せ ず 、 細 胞 膜 に 結 合 し た 状 態 で 存 在 し て い る か 否 か を 調 べ る た め 、
N 2 A 細 胞 の 膜 画 分 を 調 製 し 、 Bo u nd S ul fur 含 量 を 測 定 し た 。 そ の
結 果 、膜 画 分 に は Bo und S ul fur は ほ と ん ど 存 在 し て お ら ず 、 2 5 µ M
N a
2S
4 5 分 間 処 理 の 膜 画 分 と の 間 に も 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。
一 方 、膜 以 外 の 画 分 で は N a2S
4 処 理 か ら 5 分 後 に Bo u nd S ul fu r 含
量 の 上 昇 が 確 認 さ れ た (F i g . 7 B ) 。こ の 事 は 、処 理 し た N a2S
4 は 膜 に
吸 着 す る こ と な く 細 胞 内 に 取 り 込 ま れ る 事 を 示 し て い る 。
S
4処 理 5 分 後 で 、 Bo und S ul fur
量 は 最 高 値 ( 2 . 8 nm o l / pro t e i n m g ) に 達 し た 。 そ の 後 、 徐 々 に 減
少 し て 、 2 4 時 間 後 に は 未 処 理 時 と 同 レ ベ ル に ま で 減 少 し た (F i g . 7 A) 。
こ の 測 定 に お い て 、 細 胞 に 処 理 し た Bo und S ul fur が 細 胞 内 に 到 達
せ ず 、 細 胞 膜 に 結 合 し た 状 態 で 存 在 し て い る か 否 か を 調 べ る た め 、
N 2 A 細 胞 の 膜 画 分 を 調 製 し 、 Bo u nd S ul fur 含 量 を 測 定 し た 。 そ の
結 果 、膜 画 分 に は Bo und S ul fur は ほ と ん ど 存 在 し て お ら ず 、 2 5 µ M
N a
2S
4 5 分 間 処 理 の 膜 画 分 と の 間 に も 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。
一 方 、膜 以 外 の 画 分 で は N a2S
4 処 理 か ら 5 分 後 に Bo u nd S ul fu r 含
量 の 上 昇 が 確 認 さ れ た (F i g . 7 B ) 。こ の 事 は 、処 理 し た N a2S
4 は 膜 に
吸 着 す る こ と な く 細 胞 内 に 取 り 込 ま れ る 事 を 示 し て い る 。
S
4は 膜 に
吸 着 す る こ と な く 細 胞 内 に 取 り 込 ま れ る 事 を 示 し て い る 。
32
*
*
* *
*
* *
A
B
N . S .
*
F i g . 7 N 2 A 細 胞 に お け る N a
2S
4処 理 時 の 細 胞 内 Bo u nd S ul fur レ ベ ル の 解 析
( A ) 2 5 µ M N a2S4処 理 時 の 各 時 間 に お け る N 2 A 細 胞 内 B o u n d S u l f u r レ ベ ル を 示 し た 。 ( B ) 2 5 µ M N a2S4 処 理 5 分 後 の N 2 A 細 胞 内 及 び 細 胞 膜 の B o u n d S u l f u r レ ベ ル を 示 し た 。 m e a n s±S D , *P <0 . 0 5 ( n = 3 )
33
考 察
K i m ura ら は 、 ラ ッ ト ア ス ト ロ サ イ ト の 細 胞 膜 に お い て 、
P o l y sul fi de が T RPA1 チ ャ ネ ル を 活 性 化 す る こ と を 報 告 し て い る
5 4 )
。 こ の 活 性 化 は P o l y sul fi de に よ る T RPA1 チ ャ ネ ル の シ ス テ イ
ン 由 来 S H 基 の 修 飾 に よ る も の で あ る と 推 察 さ れ る が 、 T RPA1 チ
ャ ネ ル に 限 ら ず 、他 の 多 く の チ ャ ネ ル や ト ラ ン ス ポ ー タ ー が 同 様 の
制 御 を P o l y sul fi de か ら 受 け る と 考 え ら れ る 。 従 来 の 研 究 に お い て
神 経 細 胞 で は 、硫 化 水 素 が N MD A 受 容 体 を 活 性 化 さ せ て LT P を 誘
導 促 進 す る こ と が 報 告 さ れ て い る
5 )。 N MD A 受 容 体 は そ の 分 子 内
の ジ ス ル フ ィ ド 結 合 の 還 元 に よ っ て 活 性 化 さ れ る が 、こ の 活 性 化 機
構 に P o l y sul fi de が 関 与 す る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 N a2S
4 の 、 N 2 A
細 胞 内 へ の 取 り 込 み に つ い て 検 討 し た 結 果 か ら 、添 加 後 極 め て 速 く
N a
2S
4 が 細 胞 内 に 移 行 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。 そ の 一 方 で 、 細
胞 膜 に 結 合 す る B o und S ul fu r レ ベ ル に 変 化 は な か っ た 。 こ の 結 果
は 、細 胞 に 外 部 か ら 処 理 さ れ た P o l y sul fi de は 、T RPA1 の よ う な 細
胞 膜 タ ン パ ク 質 の み な ら ず 、細 胞 内 の タ ン パ ク 質 の シ ス テ イ ン 残 基
や G S H な ど の チ オ ー ル 化 合 物 と 、 処 理 後 短 時 間 の う ち に 反 応 す る
可 能 性 を 示 唆 す る も の で あ る 。一 方 、存 在 状 態 が 硫 化 水 素 で は な く
Bo u n d S ul fur で あ っ た と し て も 、 そ れ に よ る 過 剰 な シ ス テ イ ン 残
基 の 修 飾 が 起 こ っ た 場 合 、 細 胞 に 異 常 を も た ら す 事 が 想 像 さ れ る 。
硫 化 水 素 の 毒 性 に つ い て は 序 論 で 述 べ た が 、 生 体 に お け る Bo u n d
S ul fur の 毒 性 に 関 し て の 知 見 は 少 な い 。 生 体 内 に は 、 硫 化 水 素 及
び Bo und S ul fur の 産 生 経 路 が あ る と 同 時 に 代 謝 系 も 存 在 す る 。 第
一 部 で 述 べ た よ う に 、 硫 化 水 素 と Bo und S ul fu r 種 で あ る
P e rsul fi d e は 生 体 内 で そ れ ぞ れ S Q R と ET HE1 を 介 し て 亜 硫 酸 へ
細 胞 内 へ の 取 り 込 み に つ い て 検 討 し た 結 果 か ら 、添 加 後 極 め て 速 く
N a
2S
4が 細 胞 内 に 移 行 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。 そ の 一 方 で 、 細
胞 膜 に 結 合 す る B o und S ul fu r レ ベ ル に 変 化 は な か っ た 。 こ の 結 果
は 、細 胞 に 外 部 か ら 処 理 さ れ た P o l y sul fi de は 、T RPA1 の よ う な 細
胞 膜 タ ン パ ク 質 の み な ら ず 、細 胞 内 の タ ン パ ク 質 の シ ス テ イ ン 残 基
や G S H な ど の チ オ ー ル 化 合 物 と 、 処 理 後 短 時 間 の う ち に 反 応 す る
可 能 性 を 示 唆 す る も の で あ る 。一 方 、存 在 状 態 が 硫 化 水 素 で は な く
Bo u n d S ul fur で あ っ た と し て も 、 そ れ に よ る 過 剰 な シ ス テ イ ン 残
S ul fur の 毒 性 に 関 し て の 知 見 は 少 な い 。 生 体 内 に は 、 硫 化 水 素 及
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