序 編
編者の解説
-質問の意図と回答結果に対する感想-
商標法において、「商標の使用」か否かは、商標権の侵害や商標登録の維 持において問題となりますが、その判断はしばしば非常に難しいものです。
かかる「商標の使用」の判断について世界各国はどのように考えるかを知 るため、本書では、大きくは商標権侵害における商標の使用と不使用取消審 判における商標の使用に分け、世界 52 カ国の実務家に具体的な事例を挙げ て質問をし、それに対する有益な回答を得ました。
以下に、各質問の意図と感想について簡単に述べたいと思います。
1.商標権侵害における商標の使用
Q . 1 真正商品の並行輸入について
(1)質問の意図
真正商品の並行輸入が商標権侵害になるか否かについては、日本では、パー カー事件(大阪地裁昭和 45 年 2 月 27 日判決)以来、一定の要件(①真正 商品性、②内外権利者の同一性、③品質の同一性)を具備すれば真正商品 の並行輸入は商標権侵害ではないとされ、その考え方が「メイプルシロッ プ事件」(平成 13 年 10 月 31 日東京地裁判決・平成 12(ワ)15912 号)、
「バイアグラ錠剤事件」(平成 14 年 3 月 26 日東京地裁判決・平成 12(ワ)
13904 号)、「フレッドペリー事件」(平成 15 年 2 月 27 日最高裁判決・平 成 14 年(受)第 1100 号)、ダンロップ事件(平成 16 年 1 月 30 日大阪地 裁判決・平成 15 年(ワ)11200 号)、ボディ・グローヴ事件(平成 15 年 6 月 30 日東京地裁判決・平 15(ワ)3396 号)などに引き継がれています。
そこで、各国の考え方はどうかを知るため、本質問を取り上げました。
(2)回答結果についての感想
真正商品の並行輸入は商標権侵害を構成しないと回答した国は、アメリカ 合衆国の他多数を占めました。
欧州裁判所では、1998 年 7 月 16 日のいわゆる「シルエット判決」において、
欧州経済圏 (EEA) 域外からの並行輸入を禁止する権利を商標権者に認めるこ
とは欧州連合加盟各国の義務であり、それに反する国内法規定は許容されな いと判示しています。欧州諸国では、この影響を受けて、域内の並行輸入を 認め、域外からの並行輸入は禁止されています。
欧州諸国の特殊な取扱いを除けば、世界の趨勢は並行輸入は非侵害とする 方向に向かっていると思われます。
Q . 2 登録商標の使用と商標権の行使
(1)質問の意図
日本では、登録商標を使用していなくとも、商標権の行使はできますが、
欧州の多くの国々では、登録商標を使用していなければ、商標権を行使し、
第三者の使用を商標権侵害として禁止できないと聞きます。この点について、
各国の取り扱いを知るため、本質問を取り上げました。
(2)回答結果についての感想
回答内容は、大きくは以下の 3 つの類型に分かれました。
①商標の使用は商標権の行使の要件であるが、最初の登録後 5 年は要件 ではない(例えば共同体商標、イギリス、ドイツ、フランスなど)。②商標 の使用は損害賠償請求権の要件であるが、差止請求権の要件ではない(中国、
タイなど)。③商標の使用は商標権行使の要件ではない。これらのうち上記
③の回答をした国が全体の 5 割弱を占めました。
Q . 3 音楽 CD の題号と商標権侵害
(1)質問の意図
日本では、アンダー・ザ・サン事件(平成 7 年 2 月 22 日東京地裁・平成 6 年(オ)第 1102 号)においてこの問題が取り上げられ、音楽 CD の題号 は商標としての使用ではないと判示されました。この点について各国がどう 考えるかを知るため本質問を取り上げました。
(2)回答結果についての感想
音楽 CD を指定商品とする他人の登録商標と同一の商標を音楽 CD の題号
に使用することは商標権侵害でないとする国は 5 割強と多く、逆に侵害し 得るとしたのは数カ国、その他の国は状況によるとの回答でした。その中で、
特に、アメリカ合衆国では、「楽曲の名称や題号は、書籍とは異なり、商標 としての役割を果たす」ため、本件の場合商標権侵害であるとされる点が注 目されます。
Q . 4 T シャツの胸の全面の図形と商標権侵害
(1)質問の意図
日本では、ポパイ第 2 事件(昭和 51 年 2 月 24 日大阪地裁)において、
アンダーシャツの胸部にポパイの絵や文字を表した行為は意匠的な使用で あって、本来の商標としての使用ではないから、商標権の侵害とはいえない と、判示されています。この点について各国がどう考えるかを知るため本質 問を取り上げました。
(2)回答結果についての感想
他人の登録商標と同一又は類似の図形を胸の全面に表示することは他人の 商標権を侵害するとした国は約 7 割と多数を占めました。これに対し、日 本のポパイ第 2 事件判決と同様に非侵害とした国は、デンマーク、ニュージー ランドの 2 カ国であり、極めて少数であったのが印象的です。
一方、文字を胸の全面に表示した場合には、商標権侵害の可能性が高いの は、ほとんど世界共通の見解のようです。
Q . 5 フリーギフトと商標権侵害
(1)質問の意図
他人の登録商標と同一又は類似の商標を商品でないフリーギフト(例えば、
ボールペンやジャケット)に付して使用することは許されるでしょうか。日 本では、例えば BOSS 事件(2007 年 6 月 28 日大阪地裁判決・昭 61(ヮ)
7518 号)において、他人の登録商標を自己の商品の広告媒体たる物品(フ リーギフト)に使用しても商標権侵害とならない、と判示されました。この
問題が各国ではどのように考えられるか、との観点から、本質問を取り上げ ました。
(2)回答結果についての感想
他人の登録商標をフリーギフトとしての物品に使用することが商標権の侵 害であるとした国は約 40%、侵害でないとする国は約 30%であり、その他 は場合によるとの回答でした。本事例は大いに争いのある問題であるといえ ます。
Q . 6 他社製品の部品と商標権侵害
(1)質問の意図
他社の完成品(例えばインクジェットプリンター)の専用部品(前記イン クジェットプリンター用のインク)を製造している場合、その専用部品を販 売するためには、他社の完成品を特定する必要がありその特定のために他社 の完成品の商標を引用する場合が考えられます。例えば日本では、ブラザー 事件(平成 16 年 6 月 23 日 東京地裁判決 平成 15(ワ)29488 号)が あります。このような引用は、公正使用(fair use)として許される場合が あるのではないでしょうか。この観点から、本質問を各国代理人に投げかけ ました。
(2)回答結果についての感想
共同体商標制度は、「商品の用途を示すために、他人の登録商標を表示す ることが公正な慣行に従ったものであれば、公正使用として、商標権の侵 害とはならない」という見解を示しており、これと同様の考え方を採用する 国が多数を占め、60%強でした。一方、明らかに侵害するとした国は、約 20%と少なく、残りの国は「場合による」との回答でした。
Q . 7 商標登録の表示
(1)質問の意図
Ⓡ等の登録商標であることの表示が義務かどうか、また、その表示は、商
標権行使の要件となるかどうかの観点から、本質問をしました。
(2)回答結果についての感想
商標の登録表示が義務とする国は皆無であることが確認されました。商標 登録表示がない場合に不利に取り扱われる国がいくつか存在することが注目 されます。例えば、①アメリカ合衆国では、登録表示がされていない場合、
侵害者は不知侵害の抗弁をすることが可能になること、②フィリピンでは「登 録表示があれば被告が登録商標の存在を認識していたと推定される効果があ る」、と規定されていること、③メキシコでは、侵害訴訟において登録表示 をして商標の使用が行われていたことの証明が要求されていること、が注目 されます。
2.不使用取消審判における商標の使用
(1)質問の意図
商標の不使用に絡む問題には種々のものがありますが、本書では、以下の 3 つの動向を契機として、インターネット上のウェブサイトにおける登録商 標の使用の問題に焦点を絞りました。
① 共同勧告
2001 年の工業所有権保護のためのパリ同盟総会及び世界知的所有権機関
(WIPO)一般総会において、「インターネット上の商標及びその他の標識に 係る工業所有権の保護に関する共同勧告(Recommendation Concerning The Protection Of Marks, and Other Industrial Property Rights In Signs, On The Internet)」が採択され、一定の指針が示されています。同勧告において は、商標権の抵触の問題のみならず、商標権の維持の観点からの一定の 言及もなされています(同勧告の第Ⅲ部「標識に係る権利の取得及び維持
(ACQUISITION AND MAINTENANCE OF RIGHTS IN SIGNS)」)。
② 日本の判決例
ウェブサイト上の広告が登録商標の使用に該当するか否かが争点の1つと して争われた事件が日本においても発生しました(PAPA JOHN'S 事件:知
財高裁平 17( 行ケ )10095 平成 17 年 12 月 20 日判)。当該事件において、
商標権者はウェブサイト上の広告が登録商標の使用にあたる旨の主張をしま した。しかし、知財高裁は、商標権者(米国籍)が米国に設置したサーバー によって運営していたウェブサイトはその内容からみて、日本の需要者を対 象としたものとは認められず、登録商標の使用には当たらないと判示しまし た。
③ 日本国特許庁の出願審査における取り扱い
商標法第 3 条第 1 項柱書の使用又は使用意思の要件に関して、商標登録 出願の出願人がインターネットによる通信販売を行っている場合、特許庁は、
「その運営者が日本国内を対象としているサイトであることが必要」である として、「サイトの規約で日本国内のみ対象としているサイトであること、
あるいは商品の販売が日本国内を対象とするようなもの、例えば、サイト内 の表示が日本語で記載されており、国内への買い上げ商品の配送が可能であ ること」の証明を求めています(平成 18 年度小売等役務商標制度説明会<
説明会テキスト>等)。
以上の動向を踏まえて、諸外国に商標登録を有する商標権者は、ウェブサ イト上の広告によって商標登録の維持を図らんとする場合、どのような条件 を備えたウェブサイトを構築すべきなのでしょうか。この点を明らかにすべ く、各国における実務の状況を探らんとしたのが、第Ⅱ部「不使用取消審判 における商標の使用」における質問(Q . 8乃至Q . 16)の狙いです。
質問にあたっては、仮説事例として、以下の条件を満たすウェブサイトを 設定しました(詳細については、第 22 頁の「質問事項」(詳細版)のQ . 9 をご参照下さい。)。そして、下記の条件を満たすウェブサイトの存在のみを 以って登録商標の使用と判断されるのか(Q . 9)、また下記の条件のいず れかを欠く場合はどうなるのか(Q . 11乃至Q . 15)について質問を行 いました。
ⅰ)当該広告のサーバーは当該外国に設置されている。
ⅱ)当該広告は、現地の公用語で表示されている。
ⅲ)当該広告は、現実に販売可能な商品の写真を掲載している。
ⅳ)当該商品には、登録商標が付されている。
ⅴ)当該商品の仕様、価格(米国ドル通貨及び現地通貨による表示)、問 い合わせ先、注文先、注文方法、代金決済方法が掲載されている。
(2)回答結果についての感想
前記条件を満たすウェブサイト上の広告が登録商標の使用として認められ る可能性が高いと回答してきた国は、52 カ国中、10 カ国余りありました。
この割合を多いと見るか、少ないと見るかは見解の分かれるところであると 思いますが、編者としては、ウェブサイト上の広告によって商標登録の維持 を図ることは検討に値するという思いを抱きました。
一方、残りの諸国の多くは、登録商標としての使用を否定し、その理由と して、ウェブサイトによる広告か否かを問わず、広告だけではそもそも登録 商標の使用としては不十分であり、実際の販売事実が不可欠であることを指 摘しています。かかる指摘は、ウェブサイト上の広告を構築するに当たって 十分に留意すべきことであると思われます。また、多くの国が、ウェブサイ ト上の広告は、当該国の消費者を対象としているものでなければならないと いう基本原則を挙げ、当該国の消費者を対象としているかどうかの最低限の 要件として、「当該国の消費者が、当該国においてその商品を注文・購入す ることができ、当該国にその商品を配送してもらうことができること」を挙 げています。この点も、ウェブサイトの設計にあたって、十分に留意すべき ことであると思われます。
では、広告を掲載するウェブサイトのサーバーが当該外国に置かれておら ず、本国(例えば、日本)に置かれていても何ら問題はないのでしょうか
(Q . 11)。この点については、ほとんどの国が、当該国の消費者がそのウェ ブサイトにアクセスすることができる限り、ウェブサイトの設置場所(国)
は商標の使用の有無の判断に影響しないと回答してきました。
世界でも特殊な言語を有する日本にとっては、ウェブサイト上の広告にお
ける言語の種類が気になるところです。前述の PAPA JOHN'S 事件及び日本 国特許庁の審査実務においても、言語の種類への言及がなされています。で は、諸外国における実務も日本と同じなのでしょうか(Q . 12)。この点 については、相当数の国が、英語による表示があれば十分であると回答して きた一方、自国語の表示をほぼ必須の要件とする国も数カ国ありました。
ウェブサイト上の広告に掲載される通貨の種類は、商取引において重要な 地位を占めると思われます。この点についての質問(Q . 15)に対しては、
米国ドル通貨による表示があれば十分であると回答してきた国が相当数にの ぼる一方、自国通貨の表示をほぼ必須の要件とする国も数カ国ありました。
言語及び通貨に関する回答結果は、各国毎の緻密な対応の必要性を示唆し ているものと言えます。
ところで、最近では、インターネット上の登録商標の使用を商標の使用と 認定するための明確な基準を設ける国も出てきているようです(台湾等)。
このような基準を設定する国が今後も増加することが予想されます。した がって、インターネット上の登録商標の使用を以って、各国における登録商 標の維持を図らんとする商標権者は、直近の情報を各国の現地代理人に問い 合わせることが望ましいと思われます。
最後に、ほとんどの国が、登録商標の使用か否かの判断の基準となる概念 として、「誠実かつ真正な使用(bonafide use)」又は「真正な使用(genuine use)」を挙げていることを指摘したいと思います。結局のところ、インター ネット上のウェブサイト広告が登録商標の使用として認められるためには、
各国における「誠実かつ真正な使用(bonafide use)」又は「真正な使用
(genuine use)」の要件を満たすことが必要であり、その要件が具体的に何 を意味するかについては、読者ご自身において、本編「Q&A」の各国の回 答を綿密にご検討頂きたいと思います。
3.総括
お気づきのように、本書に掲げた質問の多くは、具体的な事実の状況いか んによってその結論が異なり得る類いのものです。このため、質問に対して、
「答えはどちらとも言えない。」又は「答えは事実次第である。」といった留 保を伴った回答が多く見られます。これらの回答状況を見ますと、回答者が 回答に当たっていかに苦慮されたかが窺い知れます。
また、質問の多くは、たとえ具体的な事実が明確であっても、論者により 結論が二分されるような限界事例を対象としています。
このような難問ばかりであるにもかかわらず、各国の実務家からは非常に 真摯な回答を頂きました。編者として改めてお礼を申し上げる次第です。
質問の性質と回答の状況に鑑みると、各国の回答から学ぶべきものは、結 論そのものよりもむしろ結論が導かれるに至った論理や視点ではないかと思 われます。
本書を通じて、読者は、日本の実務と共通する概念や視点を各国の回答か ら見い出し、それらを確認することとなる一方、各国に特有の概念や視点を 発見し、新鮮な刺激を受けることも期待されます。このような確認や発見が 皆様の今後の実務のお役に立てば、編者として幸甚の至りです。
編者
弁理士 竹内耕三 弁理士 向口浩二
本 編
Q&A
質問事項(詳細版)
QUESTIONNAIRE Regarding use of trademarks
Ⅰ.商標権侵害における商標の使用
Use of a trademark in a trademark right infringement case
Q.1 商標権の侵害となる行為について説明して下さい。併せて、真正商品 の並行輸入が商標権の侵害を構成するかについて簡潔に論評して下さい。
Please explain about acts that constitute infringement of trademark rights.
In addition, please briefly comment as to whether parallel imports of genuine goods constitute infringement of a trademark right.
Q.2 商標権者が登録商標を使用していることが商標権行使の要件となりま すか。
Is the fact that a holder of trademark right is using the registered trademark a requirement for the holder to exercise his/her trademark right?
Q.3 音楽 CD を指定商品とする他人の登録商標「LOVE」と同一である「love」
を音楽 CD のジャケット上に題号として表示する使用は、他人の商標権を侵害し ますか。
Does the use of a title like "love" indicated on a music CD jacket, which is identical with another person’s registered trademark "LOVE" designating music CDs, constitute infringement of a trademark right of another person?
Q.4 他人の登録商標と同一の図形を T シャツの胸全面に表示することは、
他人の商標権を侵害しますか。その場合、図形でなく文字の場合はどうですか。
Does the indication on the entire chest area of a T-shirt, of designs that are identical with another person’s registered trademark, infringe another person’s trademark right? Similarly, how about an indication consisting of words instead of designs?
Q.5 「ボールペン」を指定商品とする他人の登録商標「ABC」が存在する 場合において、金融サービスの提供のためのフリーギフトとして配布されるボー ルペンに「ABC」を表示して使用することは、他人の商標権を侵害しますか。
In the case where there is another person's registered trademark "ABC"
designating the goods "ballpoint pens", does the use of an indication of the mark "ABC" on ballpoint pens which are distributed as "free gifts" for the provision of financial services infringe another person's trademark right?
Q.6 商品の用途を示すために他人の登録商標を表示することは、他人の商 標権を侵害しますか。例えば、XX 会社が「インクジェットプリンター及びインク ジェットプリンターインク」を指定商品とする登録商標「ABC」を所有しており、
それらの商品を「ABC」商標を付して製造・販売している場合において、第三者が、
XX の許諾を受けることなく、「ABC インクジェットプリンター用のインクジェットプ リンターインク」という表示の下で、「インクジェットプリンターインク」を製造・
販売することは、XX の商標権を侵害しますか。
Does the indication of another person’s registered trademark for the purpose of indicating the usage of goods, infringe another person’s trademark right?
For example, in the case where XX Company owns the registered trademark
"ABC" covering the goods "inkjet printers and inkjet printer ink" and is manufacturing and selling them under the trademark "ABC", does a third party's manufacturing and selling "inkjet printer ink" under an indication of
"inkjet printer ink for ABC inkjet printers" without obtaining XX's permission constitute infringement of the XX's trademark right?
Q.7 Ⓡ等の登録商標であることの表示は必ず要求されますか。また、その 表示は、商標権行使の要件となりますか。
Is it required to indicate that a trademark is a registered trademark, such as
®? Is such indication a requirement for the exercise of trademark rights?
Ⅱ.不使用取消審判における商標の使用
Use of a trademark in a non-use cancellation proceeding
Q.8 不使用取消の手続が第三者から請求された場合に、登録商標が取り消さ れる要件を説明して下さい。
Please explain the requirements for cancellation of a registered trademark in the case where a request for cancellation based on non-use is filed by a third party.
Q.9 下記の事例において、貴国において、「万年筆」を指定商品とする登 録商標 XYZ を所有している XX 社は、下記の広告をウェブサイトに掲げてさえい れば、貴国において当該万年筆を全く販売したことがなくても、登録商標の十 分な使用をしていると言えますか。 (言い換えれば、当該広告が継続してなさ れていたことを主張・立証すれば不使用取消審判を克服できますか。) 一定数 以上のアクセス数の証明が必要となりますか。
XX 社は、貴国に販売代理人、販売拠点、ライセンシーを有しない外国の会 社である。
XX 社は、自国において各種万年筆の製造又は販売の事業を行っている。
ⅰ)XX 社の当該ウェブサイトのサーバーは、自国のみならず、貴国にも置か れており、貴国の消費者が当該ウェブサイトにアクセスすることが当然可能であ
る。当該ウェブサイトは、以下の公告を掲載している。
ⅱ)当該広告は3カ国語で表示されている。即ち、
XX 社の国の公用語のアイコンをクリックすれば当該公用語で表示され、
英語のアイコンをクリックすれば英語で表示され、
貴国の公用語のアイコンをクリックすれば、貴国の公用語で表示される。
ⅲ)当該広告は、XX 社の国内で現実に販売されている万年筆を対象として いる。当該万年筆又はその包装の写真が掲載されている。
ⅳ)当該万年筆又はその包装には登録商標「XYZ」が付されている。
ⅴ)当該製品の仕様、価格、問い合わせ先、注文先、注文方法、代金決済 方法が掲載されている。価格は、3つの通貨、即ち、XX 社の国の自国通貨、
米国ドル通貨、貴国通貨で表示されている。
In the following case, is XX company who holds a registered trademark XYZ designating the goods “fountain pens” in your country, considered to be sufficiently using the registered trademark as far as XX company's website contains the advertisement as stated below even if XX company has never sold such fountain pens in your country? (In other words, if XX company claims and proves the fact that such advertisement has been continuously posted, can XX company win in a non-use cancellation proceeding?) In this case, is it necessary to prove that the number of accesses to the website exceeds a certain number?
- XX company is a foreign company without any agents, sales offices or licensees in your country.
- XX company is conducting the manufacture or sales of various fountain pens in its own country.
i)XX company’s server for this website is located not only in its own country but also in your country and consumers in your country can, of course,
access this website. The website contains the following advertisement:
ii)The advertisement is indicated in three languages. In other words,
if the icon for the official language of XX company 's country is clicked, the website is indicated in such official language;
if the icon for English is clicked, the website is indicated in English; and if the icon for the official language of your country is clicked, the website is indicated in the official language of your country.
iii)This advertisement is for fountain pens actually sold in XX company's country. The picture of said fountain pens or their package is contained on the website.
iv)Said fountain pens or their package bear the mark "XYZ".
v)Specifications, prices, contact number, order contact, order method and payment method for the products are contained on the website. The prices are indicated in three currencies, i.e., the currency of XX company’s country, US dollars and the currency of your country.
Q.10 上記Q.9に対する回答が「否」である場合、貴国の消費者が当 該広告を見て商品を個人輸入したという事実を立証できれば、貴国に XX 社の 販売代理人、ライセンシー等が存在しなくても登録商標の使用として十分と言え ますか。
If the answer to the above Q.9 is “No,” is it sufficient to say that the registered trademark has been used if XX company proves the fact that a consumer in your country has seen such advertisement and privately imported the product even if there is no sales agent, licensee, etc. of XX company in your country?
Q.11 前記事例のⅰ)において、当該ウェブサイトのサーバーが貴国に置 かれていないが、貴国の消費者がアクセスできる場合はどうですか。
In the above case i), what if the server of the website is not located in your country but consumers of your country can still access the website?
Q.12 前記事例のⅱ)において、貴国の公用語による表示がされていない 場合はどうですか。
In the above case ii), what if there is no indication in the official language of your country?
Q.13 前記事例のⅲ)において、当該広告が現実に販売されている具体 的な「万年筆」を対象としておらず(即ち、具体的な商品の写真が掲載されて おらず、また、商品の購入に必要な前記ⅴ)のような情報も掲載されておらず)、
単に以下の事項が掲載されている広告の場合はどうですか。
・登録商標「XYZ」
・商品名「万年筆」の文言又は万年筆の抽象的なイラストレーション
・XX 社の会社名・住所・問合せ先
In the above case iii), what if the advertisement is not for specific “fountain pens” that are actually sold (in other words, the advertisement contains neither pictures for any specific goods nor information necessary for the purchase of the goods such as those stated in the above v)) and merely states the following:
- the registered trademark “XYZ”;
- the word representing the product name “fountain pens” or abstract illustrations of fountain pens; and
- the name, address and contact number of XX Company.
Q.14 前記事例のⅳ)において、ウェブサイトの表題又は商品説明として 登録商標「XYZ」が使用されているが、当該万年筆又はその包装に登録商標
「XYZ」が付されていない場合はどうですか。URL の一部として「XYZ」が組
み込まれているのみである場合はどうですか。
In the case of above iv), what if, even though the registered trademark “XYZ”
is used in the title or explanation of goods in the website, the registered trademark “XYZ” is not affixed to such fountain pens or their packages?
What if “XYZ” is contained only in the URL?
Q.15 前記事例のⅴ)において、貴国の通貨の表示がない場合はどうで すか。
In the above case v), what if there is no indication of the currency of your country?
Q.16 ウェブサイト上の使用の問題に関して登録商標の不使用が争われた 事例があれば、その審決・判決の要旨を記入して下さい(複数事例回答可)。
If there are any cases in which the non-use of a registered trademark was disputed in relation to the issue of use on the website, please state a summary of board decisions or court decisions of such cases (multiple answers may be given).
北米
(NORTH AMERICA)
カナダ
カナダ (Canada)
Ⅰ.商標権侵害における商標の使用
Q.1 商標権の侵害となる行為について説明して下さい。併せて、真正商品の並 行輸入が商標権の侵害を構成するかについて簡潔に論評して下さい。
A.1 カナダでは、登録商標は商標権者に対してカナダ全国に亘って当該 商標を使用する独占的権利及び当該権利の如何なる侵害をも救済する法的権 利を付与します。登録商標の侵害行為は、商標法第 20 条に以下のとおり規 定されています。
「商標権者がその登録商標を独占的に使用する権利は、本法によりその使 用をする権利を有しない者が、混同を生じる商標又は商号に関連して、商品 又は役務を販売、頒布又は広告する場合に侵害されたものとする。」
真正商品の並行輸入、すなわち、正規の製品が正式な製造者の供給経路外 からカナダに輸入される場合、一般に、商標権の侵害を構成しません。
Q.2 商標権者が登録商標を使用していることが商標権行使の要件となりますか。
A.2 カナダは商標の使用主義を採用しています。したがって、商標権者 は、その商標権を行使するためには、当該商標の使用を証明することが要件 となります。少なくとも、商標権者は、当該商標を放棄する意思がないこと を証明できなければならないと言うべきです。当該商標が使用されていない 場合は、侵害者は不使用を理由として当該商標を無効にすることを試みるこ とが可能であり、それは侵害者にとって有用な抗弁となります。
Q.3 音楽 CD を指定商品とする他人の登録商標「LOVE」と同一である「love」
を音楽CDのジャケット上に題号として表示する使用は、他人の商標権を侵害しますか。
A.3 カナダにおいては、音楽 CD のジャケット上に題号として語句又は 文字(例えば、「love」)を使用することは、「商標の使用」とは判断されず、
したがって、音楽 CD を指定する同一の語句又は文字(例えば、「LOVE」)
に係る商標登録を保有する他人の商標権の侵害を構成しません。
Q.4 他人の登録商標と同一の図形を T シャツの胸全面に表示することは、他人 の商標権を侵害しますか。その場合、図形でなく文字の場合はどうですか。
A.4 この質問への回答は、登録商標の指定商品が T シャツ又は関連する 被服の品目に及んでいるかどうかによります。登録商標が T シャツに及ん でいる場合は、そのような同一の表示は、ある業者の商品を他の業者の商品 から識別することが可能な商標として機能するため、それが図形であろうが 文字であろうが、侵害を構成する可能性が高いと思われます。このような判 断の根拠は、「商標権者がその登録商標を独占的に使用する権利は、本法に より、その使用をする権利を有しない者が混同を生じる商標又は商号に関連 する商品又は役務を販売、頒布又は広告する場合に侵害されたものとする。」
(強調部は筆者による)と規定する商標法第 20 条に起因します。
Q.5 「ボールペン」を指定商品とする他人の登録商標「ABC」が存在する場合 において、金融サービスの提供のためのフリーギフトとして配布されるボールペンに
「ABC」を表示して使用することは、他人の商標権を侵害しますか。
A.5 「ABC」ボールペンは「フリーギフト」として頒布されているため、
ペン自体の「販売、頒布又は広告」とは判断されません。これらのペンが金 融サービスの提供の促進のために無償で頒布されているという事実は、商標 法に定義されている商標の「使用」が存在しないことを意味し、したがって、
このような使用はカナダにおいて商標権の侵害を構成しません。
Q.6 商品の用途を示すために他人の登録商標を表示することは、他人の商標 権を侵害しますか。(設定した事例の詳細については、第 21 頁の「質問事項」(詳 細版)のQ.6の箇所をご参照下さい。)
A.6 互換性のある交換用インクを製造・販売する第三者による「ABC」
商標の使用が、商標権者である XX 社による後援(sponsorship)又は承認
カナダ
(endorsement)を暗示していない限り、侵害は存在しません。この特定の 事案において、第三者により販売される交換用インクの製品が、「ABC」商 標を使用しなければ用途を容易に特定できない場合は、その製品、すなわち、
ABC インクジェットプリンターに対する使用の互換性を特定するために合 理的に必要な範囲で、商標「ABC」を使用することは可能でしょう。カナダ においては、準拠すべき原則は、当該表示は、「ABC」を付した互換性のあ る交換用インクの製造・販売の際に、当該第三者が XX 社の許諾を受けてい るか又は XX 社の系列であるかのように一般消費者を誤信させてはならない というものです。
Q.7 Ⓡ等の登録商標であることの表示は必ず要求されますか。また、その表示 は、商標権行使の要件となりますか。
A.7 カナダは、商標権者が、商標表示Ⓡのように、その商標が登録商標 であることを表示することを要求していません。
商標権者は、その商標権の行使前に、そのような表示を行っていることを 要求されることはありません。しかしながら、商標権者がその商標をライセ ンシーにライセンスする場合は、商標表示Ⓡがライセンシーの商品及び / 又 は役務に表示されることをお勧めします。これは、カナダ商標法が、登録商 標は、商標権者の商品及び / 又は役務の出所を他の業者から識別し得るもの でなければならないことを要求しているからです。「ライセンスされた使用」
の状況においては、商標の有効性を維持する目的上、一般消費者が商品及び / 又は役務の出所を容易に特定できる必要はありませんが、商標の使用は、
一般消費者に商標権者の同一性について疑義を抱かせるようなものではあっ てはなりません。後者の状況は、その商標を識別力を有しないものとするで しょうし、取消しの理由となります。
Ⅱ.不使用取消審判における商標の使用
Q.8 不使用取消の手続が第三者から請求された場合に、登録商標が取り消さ れる要件を説明して下さい。
A.8 商標法第 45 条により、登録証が発行されてから 3 年以上経過後に、
第三者は不使用に基づく登録商標の取消しを請求することができます。商標 の有効性を維持するために、商標権者は、通知(取消しの請求の受領後、カ ナダ知的財産庁により発行される通知)の日の直前の 3 年間のいずれかの 時において、当該商標が登録証に記載のすべての商品 / 役務に関してカナダ において使用されていたことを証明する証拠を提出しなければなりません。
商標が使用されていなかった場合、商標権者は、それが最後に使用された日 を述べるとともに、その日以降の不使用について理由を述べなければなりま せん。商標法第 45 条(3)は、「特別な事情」による不使用について言及し ています。一般に、そのような不使用を免責する理由は、商標権者の支配の 及ばないものに起因しなければならず、単に商業上の都合によるものであっ てはなりません。
第三者からの取消請求のほかにも、カナダにおいては、商標の登録官が自 己の裁量で商標権者に対していつでも第 45 条の通知を行うことができます。
Q.9 下記の事例において、貴国において、「万年筆」を指定商品とする登録商標 XYZ を所有している XX 社は、下記の広告をウェブサイトに掲げてさえいれば、貴国に おいて当該万年筆を全く販売したことがなくても、登録商標の十分な使用をしていると 言えますか。一定数以上のアクセス数の証明が必要となりますか。(設定した事例の 詳細については、第 22 頁の「質問事項」(詳細版)のQ.9の箇所をご参照下さい。)
A.9 カナダにおいては、広告は、役務についての商標の「使用」を構成 する可能性がありますが、広告はそれ自体としては、商品についての商標の
「使用」とは判断されません。
商品に関する「使用」は商標法第 4 条(1)に定義されています。商標は、
通常の取引の過程において、商品の所有又は占有が移転されるときに、商品
カナダ
自体又はそれらが頒布される際の包装に付されている場合、又は如何なる方 法であれ、商品と関連付けられることにより、その関連性が所有又は占有の 移転を受ける者に知らされる方法で付されている場合は、商品について使用 されていると判断されます。したがって、商品についての「使用」が認定さ れるためには、以下の「如何なる状況で、どのように、いつ及びどこで」が 満たされなければなりません。登録商標は、
・如何なる状況で - 通常の取引の過程において、
・どのような方法で - 商品自体又はそれらが頒布される際の包装に付 され、;又は如何なる方法であれ、商品と関連付けられることにより、その 関連性が所有又は占有の移転を受ける者に知らされる方法で、
・いつ - 商品の所有又は占有の移転の時点で、
・どこで - カナダにおいて、
使用されていなければなりません。
商標法第 4 条(1)に規定されている要件を考慮すると、商標法のすべて の条件を満たさない限り、外国の商標権者が登録商標の「使用」を証明する ことはかなりの負担となります。したがって、カタログや価格表における商 標の単なる表示は商品に関する「使用」とは判断されません。しかしながら、
個々の事案における事実によっては、カタログ及びパンフレットは、販売時 に利用されるのであれば、商標の「使用」と判断される可能性があります。
なぜなら、カタログは、通常の取引の過程において、購入注文をする目的で 主に使用される可能性があるからです。一方、商品を市場に売り出そうと企 てて、販促用の印刷物に商標を単に表示することは、当該商品についての商 標の「使用」とは判断されません。同様に、注文用の書式のみが記載された 広告用のチラシも「使用」ではありません。他方、商標が掲載されており、
かつ商品購入の証拠として返送されるべき注文用の書式が掲載されている折 り込み広告の形式による販売の申出は、注文書が記入されかつ商品の受領が なされる際に商標と商品との十分な関連性がありますから、商標の「使用」
を構成します。同様の文脈で、商品の占有の移転時に、商品に使用されてい
る商標を顧客に気付かせるために、店舗内で、商品にごく近接して商標を表 示することは、「使用」と判断されます。
前述したこと、及び本質問の(ⅰ)から(ⅴ)の項目のすべての具体的事 情、その他本質問に示された XX 社による広告を考慮すると、このような広 告は、XX 社が、カナダにおけるその登録商標 XYZ の「使用」を主張するに、
事実上十分であると議論することは可能かもしれません。
Q.10 上記Q.9に対する回答が「否」である場合、貴国の消費者が当該広告 を見て商品を個人輸入したという事実を立証できれば、貴国に XX 社の販売代理人、
ライセンシー等が存在しなくても登録商標の使用として十分と言えますか。
A.10 カナダにおける XX 社の販売代理人又はライセンシー等を通じず になされる、カナダの消費者による登録商標 XYZ を付した万年筆の個人輸 入は、それが商標法第 4 条(1)を満たす限りにおいて、「使用」を構成す る可能性があります。XX 社がカナダにおいて販売代理人又はライセンシー 等を有していないことを考慮すると、個人による直接的な購入が「通常の取 引過程」と判断されることになりそうです。問われるべき重要な問題は、万 年筆の所有又は占有の移転時に、そのような所有又は占有の移転がカナダに おいて実際に生じるかどうかです。「はい」の場合は「使用」と判断され得 ると言えます。「いいえ」の場合は、「使用」と判断されそうにありません。
したがって、個人的に輸入された製品が「FOB カナダ」である場合は、製 品の所有権はカナダにおいて変更され、その商標はカナダで「使用された」
と判断されます。そうでなければ、使用されたとは判断されません。
Q.11 前記事例のⅰ)において、当該ウェブサイトのサーバーが貴国に置かれ ていないが、貴国の消費者がアクセスできる場合はどうですか。
A.11 XX 社のウェブサイトのサーバーが、カナダの消費者が当該ウェ ブサイトにアクセスすることを可能にするために、カナダに置かれているか 否かは、むしろカナダの裁判所の管轄権の問題です。しかしながら、「使用」
カナダ
を確かめるための基本原則は変わりません。すなわち、商品の単なる広告だ けでは、カナダにおける、商品についての商標の「使用」とは一般に判断さ れません。
Q.12 前記事例のⅱ)において、貴国の公用語による表示がされていない場 合はどうですか。
A.12 XX 社のウェブサイトのサーバーがカナダの公用語(フランス語 又は英語)を使用していない場合は、当該ウェブサイトはカナダの顧客を対 象にしていないようにみえるので、XX 社がカナダにおける商標の「使用」
を主張することは一層難しいと言えます。このことと、商品の単なる広告だ けではカナダにおける商品についての商標の「使用」とは判断されないとい う一般原則とを併せて考えると、当該商標の「使用」が認定される可能性は 低いと思われます。
Q.13 前記事例のⅲ)において、単に以下の事項が掲載されている広告の場 合はどうですか。
・登録商標「XYZ」
・商品名「万年筆」の文言又は万年筆の抽象的なイラストレーション ・XX 社の会社名・住所・問合せ先
A.13 XYZ の商標が付された万年筆と XX 社との「結びつき」が一層少 ないことを考慮すると(強調部は筆者により追加されたもの)、そのような 広告が万年筆についての XX 社による商標の「使用」を構成すると主張する ことは一層難しいでしょう。
Q.14 前記事例のⅳ)において、ウェブサイトの表題又は商品説明として登録 商標「XYZ」が使用されているが、当該万年筆又はその包装に登録商標「XYZ」
が付されていない場合はどうですか。URL の一部として「XYZ」が組み込まれてい るのみである場合はどうですか。
A.14 商標の使用を認定するためには、登録商標が商品に付されている
ことは望ましいことですが必須ではありません。登録商標は、例えば購入注 文をする目的で具体的な商品を特定するためにカタログに表示される可能性 があり、その場合には、なお「使用」と判断される可能性があります。これは、
商標法が、「…登録商標は…如何なる方法であれ、商品と関連付けられるこ とにより、その関連性が所有又は占有の移転を受ける者に知らされる方法で 付されなければならない。」と規定しているからです。したがって、XYZ が ウェブサイトにおいて表題又は商品の説明にしか使用されていなくても、商 標の「使用」があると主張し得る可能性があります。そうは言うものの、カ ナダにおいては、商品の広告だけでは商品についての商標の「使用」とは通 常判断されないため、XX 社はそのような主張を推し進めることにおいて困 難に遭遇することになりそうです。
「XYZ」が URL のみに含まれている場合、カナダの公衆は、当該万年筆と 当該登録商標とを関連付けることは、不可能ではないにしても、非常に困難 であると思うでしょうから、当該商標が当該万年筆に関連して「使用」され ているとの XX 社の主張を大いに弱めてしまうと思われます。
Q.15 前記事例のⅴ)において、貴国の通貨の表示がない場合はどうですか。
A.15 カナダの消費者は商品をオンラインで購入する際に米国ドルを支 払うことに慣れているため、XX 社のウェブサイトにカナダの通貨の表示が ないことは、その商標の「使用」を確認する際の主要な決定要因ではありま せん。XX 社にとって、広告だけでは商品についての登録商標の「使用」と は通常判断されない、というより大きな難題は残ります。
Q.16 ウェブサイト上の使用の問題に関して登録商標の不使用が争われた事例 があれば、その審決・判決の要旨を記入して下さい(複数事例回答可)。
A.16 2001 年に、オンタリオ州控訴裁判所は、Pro-C Ltd. v. Computer City Inc.(2001)、14C.P.R(4th)441 の事件おいて、外国においてのみ 販売される商品を掲示した受動的なウェブサイトは、カナダにおいて、そ
カナダ
れらの商品についての商標の「使用」を構成しない旨の判決を下しました。
当該事件の事実は、以下のように要約できます。:Computer City はアメリ カ合衆国においてウェブサイトを運営し、アメリカ合衆国のみで販売され る、商標 WINGEN を付したパーソナルコンピュータの新製品を受動的に広 告していました。Computer City はカナダにおいてアウトレットの小売店 を有していましたが、WINGEN コンピュータをカナダ人には販売していま せんでした。Pro-C は、登録商標 WINGEN を所有するカナダの会社です。
Computer City がその WINGEN 系列のコンピュータを発表したとき、Pro-C は、WINGEN コンピュータに関して、送信先を間違えた、オンラインによ る問合せをあまりに大量に受けたため、Pro-C のサーバーが麻痺し、機能不 全に陥るに至りました。Pro-C は Computer City を商標権侵害で訴えました。
第一審裁判所は、商標の「使用」の解釈をするのに少々独特の「全体論的ア プローチ」を採用することにより、Pro-C に勝訴の判決を下しました。第一 審裁判所は、Computer City がそのコンピュータを広告した際の、その受動 的ウェブサイト上における WINGEN 商標の使用は、Pro-C の商標権を侵害 していたと認定しました。控訴裁判所は、下級審の判決を覆し、Computer City によるカナダにおける WINGEN 商標の「使用」はなかったと判示しま した。控訴裁判所は、何が商標の「使用」を構成するかについての伝統的原 則に依拠しました。商品と関連した商標の「使用」を認定するためには、そ の商標が商品又はその包装に現われるか、又は如何なる方法であれ、商品と 関連付けられることにより、その関連性が商品の購入者に知らされる方法で 現われていなければなりません。Computer City は、カナダの購入者には販 売されない、当該商標が付されたコンピュータを広告する受動的なウェブサ イトを単に運営していたに過ぎないとして、控訴裁判所は、当該商標は「使 用」されておらず、それゆえに商標権は侵害されていないとの判決を下しま した。したがって、外国のウェブサイトにおける商品の単なる広告は、カナ ダ人がアクセスすることが可能であっても、カナダにおいては、その広告さ れた商標は「使用」を構成しません。
(原稿受領日 2008 年 3 月 29 日)
Author: Mr. Wing T. Yan
Nelligan O'Brien Payne LLP Suite 1500 - 50 O'Connor Ottawa, ON K1P 6L2, Canada Tel: +1 613 231-8343 Fax: +1 613 788-3686 Email: [email protected] Website: http://www.nelligan.ca/
カナダアメリカ合衆国
アメリカ合衆国 (U.S.A)
Ⅰ.商標権侵害における商標の使用
Q.1 商標権の侵害となる行為について説明して下さい。併せて、真正商品の並 行輸入が商標権の侵害を構成するかについて簡潔に論評して下さい。
A.1 商標権の侵害 米国における登録商標の侵害は 1946 年改正商標法 第 32 条(15USC§1114)によって、以下のように規定されています。
(1)登録権者の同意を得ないで以下の行為をする者は何人も、登録権者の 提起する民事訴訟において、後述の救済措置の責を負うものとする。
(a)取引において、登録商標の再製標章、偽造標章、複製標章、又はもっ ともらしい模造標章を、商品若しくは役務の販売、販売の申出、頒布、又は 広告について使用する行為であって、その使用が混同を生じさせ、誤認を生 じさせ、又は他人を欺くおそれがある場合
(b)登録商標を再製し、偽造し、複製、又はもっともらしく模造し、かつ、
その再製標章、偽造標章、複製標章、又はもっともらしい模造標章を、商品 若しくは役務の販売、販売の申出、頒布、若しくは広告について、又はこれ らの行為に関連して取引に使用する意図を以って、ラベル、看板、印刷物、
包装、包み紙、容器、又は広告物に付する行為であって、その使用が混同を 生じさせ、誤認を生じさせ、又は他人を欺くおそれがある場合
ここに規定する(b)に基づき、その模造標章が混同、誤認、又は欺瞞を 目的として使用されることを知りながら当該行為がなされたものでない限 り、商標権者は、利益又は損害の回復をする権利を有しない。
米国においては、未登録商標も、侵害に対して権利行使することが可能で す。商標法第 43 条(15USC§1125)は以下のように規定しています。
(a)(1)商品若しくは役務又は商品の容器について、又はそれに関連して、
以下の言葉、用語、名称、記号、図形若しくはこれらの組み合わせ、又は虚 偽の原産地表示、事実について、虚偽若しくは誤認を生じさせる記述、又は
アメリカ合衆国
事実について虚偽若しくは誤認を生じさせる表示を、取引上使用する者は何 人も、その行為による損害を受けたか又は受けるおそれがあると信じる者に よって提起される民事訴訟において、その責めを負う。
(A)その者と他の者との系列関係(affiliation)、関連性(connection)若 しくは提携関係(association)について、又はその者と他の者の商品、役 務若しくは商業活動の出所(origin)、後援(sponsorship)若しくは承認
(approval)について、混同を生じさせ、誤認を生じさせ、又は他人を欺く おそれのあるもの、又は
(B)商業広告若しくは販売促進において、その者又は他の者の商品、役務、
又は商業活動の性質、特性、品質若しくは原産地を不実表示するもの。
権利行使に係る商標が登録されたものか未登録のものかにかかわらず、商 標権侵害の基本的争点は、問題となっている商標間に混同のおそれがあるか どうかです。この争点は、購入者が、その第三者の商品は商標の所有者を出 所としている、又は商標の所有者と関連があると、誤信するおそれに集中し ます。2 つの商標間に混同のおそれがあるかどうかについての分析において、
様々な要因が考慮されます。これらの要因は、有名なInreI.E.duPontde Nemours&Co.,476F.2d1357,177U.S.P.Q.563(CCPA1973) 及び AMF,Inv.
v.SleekcraftBoats, 599 F.2d 341 (9th Cir. 1979) の事件において明らかにさ れました。du Pont と Sleekcraft の要因のうち、現在の状況に関連するもの として、以下のものがあります。(1)外観、称呼、観念及び商業的印象に ついて、その商標の全体としての類似性又は非類似性。(2)商標が使用さ れる商品の性質及びその類似性又は非類似性。(3)商標の強さ。(4)取引 経路の類似性又は非類似性。(5)販売が行われる状況及び購入者。(6)い ずれか一方当事者の拡大の可能性。(7)先行商標の使用者の意図。(8)実 際の混同の性質と程度。
並行輸入
米国商標法、15USC§1124 は、登録商標を複製又は模倣した標章を付し た製品の輸入を禁止しています。この条項は、非真正商品にのみ適用されま
カナダアメリカ合衆国
す。その商標の所有者によって米国における販売が許諾された商品と並行輸 入品との間に実質的な差異がある場合、商品は非真正商品であると判断され ます。前記 1114 条は、混同のおそれのある、登録商標の再製標章、偽造標 章、複製標章又はもっともらしい模造標章を取引において使用することを禁 止しています。そのような混同のおそれは、許諾された商品と並行輸入品と の間に実質的な差異がある場合に起こる可能性があります。つまり、米国に おいて販売することが許諾されている商品と並行輸入品との間に実質的な差 異がなければ、米国法の下では商標権侵害は生じません。
Q.2 商標権者が登録商標を使用していることが商標権行使の要件となりますか。
A.2 登録商標を現在実際に使用していることは、商標権者が権利行使す るための要件ではありません。しかしながら、商標権者は、その権利を放棄 していてはなりません。商標の放棄に関する議論をご参照下さい。下記の議 論にみられるように、米国において登録商標が継続して 3 年間不使用であっ た場合は、商標の放棄と推定されます。
また、米国商標法、15USC§1126(e)に基づけば、出願人の本国におい て正当に登録された商標は、米国における商標の使用を証明することなく、
米国において登録されます。この米国商標法の規定に基づいて登録された商 標は、たとえ商標の使用が米国において生じていなくても、権利行使の適格 性を有します。
さらに、現在使用されてはいないが、登録がされている商標を侵害する者 に対する、差止による救済や金銭的な損害賠償を得ることのできる商標権者 の能力は、被疑侵害行為から生ずる損害を立証する商標権者の能力に基づく ことになるでしょう。例えば、差止による救済は、裁判所が両当事者の状況 を審査して行う衡平法上の救済です。商標の使用について本案的差止命令を 得るためには、商標所有者は一般的に、(1)回復不能の損害、(2)法上の その他の救済では不十分であること、(3)差止命令に有利に働く比較衡量 上の不利益、及び(4)差止によって公衆の利益が損なわれないこと、を証
アメリカ合衆国
明しなければなりません。さらに仮差止命令を得るためには、商標所有者は 一般的に、(1)本案判決の最終審において勝訴する強い可能性、(2)本案 の審理終結までに回復不能の損害を被るおそれがあること、(3)仮差止命 令が論争に先立つ「現状」を維持すること、(4)商標所有者に有利に働く 比較衡量上の不利益、及び(5)仮差止命令は第三者を保護するために必要 であること、を立証しなければなりません。商標権者が有効に登録された商 標を現在使用していない場合、これらの要因の多くは、証拠の観点から、証 明することが困難であると思われます。
Q.3 音楽 CD を指定商品とする他人の登録商標「LOVE」と同一である「love」
を音楽 CD のジャケット上に題号として表示する使用は、他人の商標権を侵害しますか。
A.3 この質問は、CD の題号と CD の販売に係るブランドとの相違に関 する問題を提起しています。音楽 CD に関して広く知られたブランドには、
Sony BGM、Motown、Apple Records、Columbia Records、Universal 及 び Warner があります。これは CD の名称又は題号とは異なります。米国法に おいては、書籍がシリーズの一部であるか、又はシリーズ名が記述的である場 合は、そのシリーズ名がセカンダリーミーニングを獲得したことを証明しない 限り、書籍の題号は商標として保護されません。単行本の場合は、セカンダリー ミーニングの獲得を証明したとしても、登録することはできません。
音楽の題号は、書籍とは異なった取り扱いを受けます。米国では、楽曲の 名称又は題号は、商標としての役割を果たします。それゆえに、本質問の状 況においては、音楽 CD のジャケット上に「love」の題号を使用することは、
音楽 CD を指定する他人の登録商標「love」を侵害します。
Q.4 他人の登録商標と同一の図形を T シャツの胸全面に表示することは、他人 の商標権を侵害しますか。その場合、図形でなく文字の場合はどうですか。
A.4 T シャツの胸全面における他人の登録商標と同一の図形は、他人の 商標権の侵害を構成します。しかしながら、その図形の使用は、商品の出所
カナダアメリカ合衆国
を表示又は商標権者との提携関係を暗示することにより、商標としての機能 を果たすものでなければなりません。一般購入者が、その図形を商品の出所 表示ではなく、単なる装飾であると考える場合、その図形は商標としては保 護されません。
本事案では、その図形が T シャツの胸部全体を覆っているという事実は、
その図形は単なる装飾であり、商標として使用されていないという結論をも たらし得ることになります。その表示は単なるデザインであるという抗弁に 対して、商標権者は、そのデザインが商標として販売促進に供されてきたこ とを示すことにより、これを克服できる可能性があります。本事案では、そ のデザインを登録することは、そのような証拠を提供することになります。
その表示が図形ではなく、文字からなるということは、その表示が単なる 装飾であるという事実を必ずしも変えるものではありません。InreDimitri's Inc., 9 U.S.P.Q.2d 1666 (T.T.A.B. 1988) 事件において、T シャツ上の「sumo」
の文字は美的装飾に過ぎないと認定されました。この点に関して、Grupke v.LindaLoweSportswearInc., 921 F. Supp. 987 (E.D.N.Y. 1996) もご参照下 さい。(「cats coming and going」との表題が付されて、猫の前面と背面を 描いた T シャツのデザインが出所表示の意味を有しないと認定され、した がって単なる装飾であると判断されました。) 他方、VuittonetFilsS.A.v.J.
YoungEnters., 644 F.2d 769, 775(9th Cir. 1981) の事件において、LV の 反復使用及びフラ・ダ・リ(fleur-de-lis)パターンは有効な商標であると判 示されました。
Q.5 「ボールペン」を指定商品とする他人の登録商標「ABC」が存在する場合 において、金融サービスの提供のためのフリーギフトとして配布されるボールペンに
「ABC」を表示して使用することは、他人の商標権を侵害しますか。
A.5 ABC の標章が付されたボールペンが販売されたのではなく、「フリー ギフト」として配布されたという事実は、商標権侵害に対する抗弁を可能に するものではありません。前述したように、15USC§1114 は、商標権の侵
アメリカ合衆国
害は商品の販売又は販売の申出からだけではなく、商品の頒布からも発生す ることを明示しています。
Q.6 商品の用途を示すために他人の登録商標を表示することは、他人の商標 権を侵害しますか。(設定した事例の詳細については、第 21 頁の「質問事項」(詳 細版)のQ.6の箇所をご参照下さい。)
A.6 商品の用途を表示する目的で他人の登録商標を表示することは、登 録商標の侵害にはなりません。そのような使用は「指示的使用」(nominative use)であると考えられます。米国の裁判所は、登録商標の指示的使用が許 容されるかどうかを判断するための 3 つの要因テストを創り出しました。
1.問題となっている製品又は役務が、登録商標を使用することなしには 容易に特定することができないものでなければならない。
2.商標は、製品又は役務を特定するのに合理的に必要な最小限の範囲で 使用されなければならない。
3.使用者は、商標権者による後援(sponsorship)又は承認(endorsement)
を暗示させる如何なることもしてはならない。
Q.7 Ⓡ等の登録商標であることの表示は必ず要求されますか。また、その表示 は、商標権行使の要件となりますか。
A.7 米国登録商標にⓇの表示を付することは可能ですが、そのような表 示は義務ではありません。そのような表示が付されていない場合、被疑侵害 者は不知侵害の抗弁をすることが可能になります。この抗弁は、侵害者がそ の標章が他人によって商標として登録されていること又は使用されているこ とを知らなかったという論拠に基づいてなされます。そのような抗弁が成功 すると、過去の侵害に対する損害賠償を請求することができません。米国商 標第 29 条(15USC§1111)は、「そのような表示による登録の告知をしな かった商標権者が本法に基づいて提起する如何なる侵害訴訟においても、本 法の規定に基づく利益及び損害を回復することはできないものとする。ただ
カナダアメリカ合衆国
し、被告がその登録を現実に認識していた場合はこの限りではない。」と規 定しています。
Ⅱ.不使用取消審判における商標の使用
Q.8 不使用取消の手続が第三者から請求された場合に、登録商標が取り消さ れる要件を説明して下さい。
A.8 第三者は、連邦裁判所に訴訟を提起することにより、又は米国特許 商標庁の商標審判部(T.T.A.B.)に取消審判を請求することによって、登録 商標の取消しを求めることができます。商標審判部における取消審判請求は、
取消通知書を提出することにより開始されます。商標登録全体の取消しとは 対象的に、商標登録の一部取消しを求めることも可能です。審判請求人は、
取消しを求める商標登録の存在により、損害を受けている旨を主張しなけれ ばなりません。この要件は、当該登録商標と請求人の商標との間に混同のお それがある旨の申立てを十分に行うことにより満たすことができます。
商標審判部の規則に基づき、取消通知書には以下の事項が記載されていな ければなりません。
1.請求人が、取消しを求める商標登録によって損害を受けている又は受 けるおそれのある、手短で簡潔な理由
2.取消理由の手短で簡潔な陳述 実質的要件
不使用取消しの実質的要件として、米国商標法は以下のように規定してい ます。
商標は、以下の場合に放棄されたものとする。
(1)その使用が、使用を再開しない意図を以って中断されているとき。
再開しない意図は、状況証拠から推認されるものとする。継続した 3 年間 の不使用は、放棄の一応の証拠とする。商標の「使用」とは,通常の取引過 程において行われる誠実かつ真正な使用を意味し、単に商標に係る権利を維 持するために行われるものを意味しない。15USC§1127。