ナノスケール厚さの薄膜を有する半無限異方性弾性体の接触解析
Contact analysis for a half-anisotropic elastic region with a nano-scale thin film
林 祐太(長岡技大・工) 古口 日出男(長岡技大・機)
Yuta HAYASHI, Nagaoka University of Technology Hideo KOCHI, Nagaoka University of Technology
E-mail: [email protected]
It is known that the surface and interface mechanical property may effect on deformation in nano-scale structures. Contact problem considering surface mechanical property has been already analyzed. In the present study, a Green’s function for anisotropic half-space with an anisotropic thin film considering surface and interface mechanical properties is firstly derived and is used in contact analysis. The effect of interface mechanical properties on the deformation in a contact is presented.
1.緒 論
近年,ナノスケール厚さの薄膜を積層した材料がハードデ ィスクなどの電子機器に用いられている.このような材料の 硬度や機械的性質の測定には,接触試験が用いられる.しか し,ナノスケール厚さの薄膜では,体積に対して表面,界面 の割合が非常に大きくなるため,表面,界面の力学的特性が 接触試験の結果に影響を及ぼすと考えられる.これまでに表 面の力学的特性を考慮した接触解析は行われてきたが,界面 の力学的特性が接触解析に与える影響については調べられ ていない.そこで,本研究では接触試験を模した表面グリー ン関数を用いたシミュレーションを行い,界面特性が接触解 析に与える影響を明らかにする.特に,本報では膜厚の影響 について検討する.
2
.表面応力を考慮した薄膜を有する半無限異方性弾性体の 表面グリーン関数接触解析に用いる変位場を表面グリーン関数を用いて算 出する.異方性材料における平衡方程式は弾性定数テンソル
C
ijklと変位ベクトルu
を用いて以下のように表すことができ る.C
ijklu
k,lj= 0 (1)
変位
u
iに対して次式のように(x
1,x
2)
平面に関する2
次元フー リエ変換をする.ここで,k=1,2,3である.
u %
i(!
1,!
2, x
3) = "" u
i(x
1, x
2, x
3)e
i(!1x1+!2x2)dx
1dx
2(2)
式(2)より,式(1)は以下のように示される.
C
i!k"#
!#
"u %
k+ i(C
i!k3+ C
i3k")#
!u %
k,3$ C
i3k3u %
k,33= 0 (3)
式(3)
の一般解は以下のように示される.% u(!
1,!
2, x
3) =
!
ae
"ip#x3(4)
ここで,pと
a
は以下の固有関係を満たす.!
Q + p(R + R
T) + p
2T
{ } a = 0 (5)
Q
ik=C
ijksn
αn
β,R
ik=C
ijksn
α,T
ik=C
ijksm
jm
s,m=[0,0,1]
T,n=[n
1,n
2,0]=[cos
θ,sin
θ,0]
Tである.つぎに,薄膜,界面の境界条件を以下に2つ示す.
(a)薄膜表面の境界条件
f = % t
1+ !
2F
(0)u %
1(6) (b)界面の境界条件
% u
1= u %
2(7)
% t
1! % t
2= "
2F
(1,2)u %
2(8)
上記の添字は1:
薄膜,2:
半無限異方性弾性体を示す.F =
d
1!1"n
!n
"d
1!2"n
!n
"0
d
2!1"n
!n
"d
2!2"n
!n
"0
0 0 #
$!0
n
$n
!%
&
' ' '
( )
* *
* a
,!
"#0 :表面応力,d
!"#$:表面弾性定数,F
(0):
薄膜表面の力学特性の行列,
F
(1,2):界面の力学特性の行列,f
:集中荷重ベクトルである.
これらの境界条件を考慮して平衡方程式を解いて逆フーリ エ変換し,変位場
u
1,u
2を表すと,!
u1(x1,x2,x3)= 1
(2")2 #e$ir#cos(% $%0)
$&
'
0 02"
'
() A1 e$ip*1#x3 g1
* + +A 1 e$ip *1#(x3+h) q1, - . d#d%
(9)
!
u2(x1,x2,x3)= 1
(2")2 #e$ir#cos(% $%0)
$&
'
0 02"
'
() A2 e$ip*2#(x3+h) g2
* +
, - . d#d%
(10)
となる
. g
1, g
2, q
1は,境界条件から求めることができる複素ベ クトル,!
pi+3=p i , ai+3=a i , A=[a1, a2, a,3] ,A =[a 1, a 2, a ,3]
, h
は膜厚である.また,(i = 1, 2, 3)
とする.3.接触解析
3.1 接触解析への表面グリーン関数の適用 一般に,単 位集中荷重に対する表面の応答を
K(x
1, x
2)で表すと,接触圧
力p(x
1, x
2)に対する応答変位 w(x
1, x
2)は次式で求めることが
できる.w(x
1, x
2) = p(!
1,!
2)K(x
1" !
1, x
2" !
2)
"#
$
#"#
$
#d!
1d!
2(11)
ここで,K(x1
, x
2)=u
3(x
1,x
2,x
3)である.この式を Fourier
変換 すると,畳み込み積分はそれぞれの関数をFourier
変換した 関数の積で表され,
% w(!
1,!
2) = p(! %
1,!
2) K(! %
1,!
2) (12)
と 書 く こ と がで き る . 本 研 究 で は ,Liu ら(1)が 提 案 し たDC-FFT
法を用いて接触問題を解く.3.2 接触解析の離散化解法 接触面を含む
2L
0! 2L
0の領 域を微小領域に分け,中心座標を(xi, x
j)とする.接触時の二
面間の間隔g
ijは,微小領域の変位w
ijを用いて以下の式から 求めることができる.g
ij= h
ij! " ! w
ij(13)
ここで,
h
ijは初期二面間の間隔で,δは押し込み深さである.
また,接触時の圧力分布
p
ijはg
ijについて以下の関係式から 得られる.In!contact :g
ij= 0!then ! p
ij> 0 In! separation : g
ij> 0!then! p
ij= 0
p
ij= P
0!
"
# $$
%
$ $
(14)
ここで,第一式は接触格子点での
g
ijと圧力p
ijの関係,第二 式は非接触格子点でのg
ijと圧力p
ijの関係,第三式は圧力分 布の総和p
ij,押し込み荷重P
0の関係式である.これらの連 立方程式を解くにあたり,Polonsky
とKeer
(2)が提案した共役 勾配法を用いた.3.3 解析モデル及び解析条件
式(8),(9)
を用いて変位場 を算出し,接触解析を行う.解析対象は,薄膜にAu(111),半
無限異方性弾性体にNi(111)
を用いた積層材料である.表面 特性は林ら(3)が,界面特性はLadan
(4)らが算出した値(表2)を
用いた.本研究では,膜厚h
を1.0
~12.0nm
に設定し,それ ぞれの膜厚でBerkovich, Vickers, Knoop
圧子の3
種類の圧子 用いて解析を行い,薄膜の膜厚が接触解析に及ぼす影響につ いて検討する.解析モデルは要素数256×256,格子点間隔
0.5nm
である.圧子の長軸をx
軸方向に向け,押し込み荷重を
1000nN~10000nN
まで徐々に増やしていく.圧子の材料は剛体とした.また,接触解析の結果に対して押し込み深さ と押し込み荷重の関係を林が提案した
!
P
0= aE
*"
nを用いて フィッティングし,係数a,n
を求めた.P0は押し込み荷重,δは押し込み深さ, E*
は球状圧子を用いた接触解析の結果か ら算出した複合ヤング率である.解析に使用した材料の弾性 定数C
ijksを表1
,表面,界面応力!
"
#$,および表面,界面弾性定数
d
!"#$を表2
に示す.なお,表面グリーン関数を用いた影響係数の計算では,集中荷重(f1
,f
2,f
3) = (0,0,1.0)nN,z
方向 深さz=- 0.14418nm(Au
の格子点間隔の1/2)としている.
3.4 解析結果および考察 Berkovich, Vikers, Knoop
圧子 を用いて接触解析を行った結果を図1
に示す.膜厚が1.0
~8.0nm
までは膜厚が厚くなるに伴い,荷重P
0−圧子押し込み量δの線が図の右に移動しているが,
10.0nm
と12.0nm
の結 果を比べるとほとんど変化していないことがわかる.これは,薄膜が薄い場合は下地の
Ni
の影響が現れ,押し込み深さが 小さくなり,薄膜が厚くなるにつれ,Ni
の影響が小さくなり,押し込み深さが大きくなったと考えられる.
また,フィッティングの定数は,膜厚に関係なく,ほぼ一 定の値を示し,
Berkovich
圧子の場合はa=0.072
,n=3.34
,Vickers
圧子の場合はa=0.052,n=3.31,Knoop
圧子の場合はa=1.367
,n=3.30
となった.このときの結果も図1
に合わせて記載する.
以上のことから,押し込み荷重と押し込み深さの関係は,
複合ヤング率
E*に依存していることがわかった.よって,
膜厚を任意に設定しても,角錐形状の圧子で押し込み荷重と 押し込み深さの関係から材料の特性を算出できる可能性を 示している.
4
.結言表面応力を考慮した薄膜を有する半無限異方性弾性体の 表面グリーン関数を導出し,薄膜に
Au[111]
,半無限異方性弾性体に
Ni[111]を用いた接触解析を行った.その結果,膜
厚薄い場合は,下地の材料の影響が大きく現れ,その影響が 非常に小さくなるのは,膜厚が
10.0nm
以上の場合であるこ とがわかった.また,押し込み荷重に対する押し込み深さの 関係を林が提案した式!
P
0= aE
*"
nでフィッティングした結果,定数
a,n
は膜厚に関係なく,ほぼ一定であることから,膜厚を任意に設定しても,角錐形状の圧子で押し込み荷重と 押し込み深さの関係から材料の特性を算出できる可能性を 示した.
文献
(1) Liu, S., Wang Q. and Liu G., A versatile method of discrete convolution and FFT (DC-FFT) for contact analyses, Wear ,
vol.243(2000), pp.101-111.
(2) Polonsky,I.A. and Keer,L.M.,A numerical ethod for sloving rough contact problems based on the multi-level multi-summation
and conjugate gradient techniques, Wear, Vol.231, 1999, pp.
206-219
(3) Koguchi,H.,Hayashi,T.,Contact analysis for anisotropic material considering surface stresses and surface elasticity, Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers,Ser.A,Vol.75,No.756(2009), pp. 1029-1036.
(4) Ladan, Pahlevani., Hossein, M., Shodja ., Surface and Interface Effects on Torsion of Eccentrically Two-Phase fcc Circular Nanorods:Determination of the Surface/Interface Elastic Properties via an Atomistic Approach,Vol.78(2011), pp.011011-1.
Table.1 Elastic Constants [GPa]
Au(111)
Ni(111)
C
11213.5
325.7
C
12147.8 128.0
C
13138.7 103.2
C
33222.7
351.6
C
4423.7
72.5
C
6632.8
98.30
Table.2 Surface and Interface mechanical property [N/m]
Au(111) Au(111)-Ni(111)
τ11,τ22