厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
総合分担研究報告書
1) 尋常性白斑病変における細胞浸潤パターンの検討および樹状細胞活性化機序 の解明
2) 進行性尋常性白斑に対するステロイドミニパルス療法の治療効果
研究分担者 種村 篤 大阪大学医学部皮膚科 助教
研究要旨
1) Th17細胞だけでなく表皮・真皮樹状細胞に注目しその浸潤パターンをヒト白斑皮膚 を用いて検討した。さらに、表皮ランゲルハンス細胞の形態変化を共焦点レーザー 顕微鏡および電子顕微鏡を用いて詳細に観察した。
2) 病変が拡大する進行性尋常性白斑症例に対するステロイド全身投与の有用性を検討 した。
A.研究目的
1)尋常性白斑は境界明瞭な脱色素斑を特徴と する後天性色素脱失症である.病因については 自己免疫説をはじめ,様々な説が提唱されてい る.自己免疫が関与する尋常性白斑では主に細 胞障害性T細胞による色素細胞の障害が唱え られ久しい。しかし最近の報告で、表皮細胞で の色素細胞機能を制御するサイトカインの発 現や末梢血中のIL-17/TGF-betaの上昇などが 次々報告され、白斑がより包括的な自己免疫疾 患の一つである可能性が示唆されている。そこ で、我々は多種多様な免疫応答に関与する炎症 細胞群の白斑局所における浸潤を観察し、白斑 形成への関与を探る手がかりとしたい。
2)次に、尋常性白斑診療ガイドラインで提示 されている治療法は、外用療法・紫外線療法・
皮膚移植術などに限られており、難治である。
その中で、ステロイドの全身投与の有効性に関
する報告が少なく、その位置付けが確立してい ないため、進行する症例に対する有効性を検討 した。
B.研究方法
1)2007‐2012年に当科を受診した汎発型白 斑患者16例の病理組織を用い、病変部におけ る免疫担当細胞の浸潤を個別に把握するため、
CD3, CD4, CD8, Foxp3, IL-17A, HLA-DR, AHR, CD1a, CD11c,CD56,CD123, CD207 の免疫組織化学染色を行った.また、Th17細 胞関連の代表疾患として知られる尋常性乾癬 皮膚との比較も同時に行った。さらに,CD1a 陽性ランゲルハンス細胞の分布パターン、白斑 病変部・辺縁部・健常部における形態変化に関 して共焦点レーザー顕微鏡および電子顕微鏡 を用い詳細に観察した。
(倫理面への配慮)
本研究におけるヒト皮膚組織の提供者、その家
族・血縁者、その他の関係者の人権及び利権の 保護の取り扱いについて十分配慮する。
免疫染色・電子顕微鏡での組織検討は、診断目 的に採取した皮膚組織の余剰分を用い行った。
また、得られたデータは匿名化し、学会および 学術論文発表においても個人を特定できない ように配慮した。
2)治療抵抗性の進行性汎発型白斑の6症例に 対し、ステロイドミニパルス療法を行い、その 治療効果を白斑の縮小を観察および色彩計を 用いた色調変化を定量した。なお、ミニパルス 療法は、重篤な合併症を有しない成人症例を対
象とし、1日メチルプレドニゾロン500㎎を3日
間点滴投与、1−1.5ヶ月の間隔で3クール施行 するプロトコールとした。Lab値を色調変化の パラメータとし、極力季節による紫外線暴露の 影響が少ない病変を選択し、研究期間中固定し 治療前後で測定・比較した。
C.研究結果 1)
1)CD8陽性細胞は明らかに白斑部および境界 部に多く浸潤し、基底層直下に分布していた。
しかし、浸潤部位の基底膜障害はみとめなかっ た。
2)Th17細胞は健常部より病変部で有意に多く 浸潤していた。
3)制御性T細胞数はいずれも差がみられなかっ た。
4) 表皮ランゲルハンス細胞が基底層直上に主 に分布し、數は有意に境界部で多く、白斑部で も明らかに増加していた。
5)CD11c陽性樹状細胞は境界部に有意に多く みられた。
6)白斑部でみられた表皮ランゲルハンス細胞 の樹状突起数が増加し、かつ伸長していた。
7)真皮樹状細胞数は病変部に有意に多く、主に 真皮上層の血管周囲に浸潤していた。
8)NK細胞数に差はなかった。
9)白斑では成熟色素細胞が完全に消失してい るとされるが、病変部基底膜上にBirbeck顆粒 およびプレメラノソームを持たない樹状細胞 が局在していた。
これらの結果より、白斑皮膚に於いて細胞障 害性T細胞に加え、Th17細胞およびランゲルハ ンス細胞が白斑部および境界部により多くみ られた。さらに、これらのランゲルハンス細胞 の活性化を示唆する樹状突起の伸長がみられ、
さらに真皮樹状細胞も増加していた。白斑部で は成熟色素細胞に代わり、Birbeck顆粒および プレメラノソームを持たない樹状細胞がみら れた。
2)
1)6例全ての症例が治療を完遂した。6例中4例 に病状の進行停止がみられた一方、2例では進 行した。進行が停止した症例で病変の再発は出 現していない。
2)進行が停止した症例では、白斑の境界が不明 瞭化し、スコア化していないものの治療に対し て十分な満足が得られた。
3)色素再生率を定量することは出来なかった が、紫外線療法後に得られる毛孔型より辺縁型 色素再生が大部分であった。
4)分光測色計でのデルタL値(L値は白さを意味 し、デルタL値は“白斑部L値-健常部L値”を表
す)が、進行停止例で縮小傾向がみられた。a 値の変化と病勢には相関がなかった。
今回の研究で、進行性の汎発型白斑に対し早期 の全身ステロイドによる治療介入が今後の治 療アルゴリズムに含有される可能性が示唆さ れた。
D.健康危険情報 特になし
E.研究発表 1. 論文発表
1. Tanemura A, Kotobuki Y, Itoi S, Takata T, Sano S, Katayama I. Possible link between STAT3 activation and Th17 cell infiltration to the lesional skin in vitiligo vulgaris. J Dermatol Sci, 67(3):207-209, 2012.
2. Tanemura A, Yajima T, Nakano M, Nishioka M, Itoi S, Kotobuki Y, Higashiyama M, Katayama I. Seven cases of vitiligo complicated by atopic dermatitis: suggestive new spectrum of autoimmune vitiligo. Eur J Dermatol, 22(2):279-280, 2012.
3. Kotobuki Y, Tanemura A, Yang L, Itoi S, Wataya-Kaneda M Murota H, Fujimoto M, Serada S, Naka T, Katayama I. Dysregulation of melanocyte function by Th17-related cytokines: significance of Th17 cell infiltration in autoimmune vitiligo vulgaris. Pigment Cell Melanoma Res,
25(2):219-230, 2012
4. Itoi S, Tanemura A, Nishioka M, Sakimoto K, Iimuro E, Katayama I.
Evaluation of the clinical safety and efficacy of a newly developed 308-nm excimer lamp for vitiligo vulgaris. J Dermatol, 39(6):559-561, 2012.
5. Tanemura A, Takahashi A, Ueki Y, Murota H, Yamaguchi Y, Katayama I.
Therapeutic comparison between sun irradiation vs. narrowband UVB phototherapy along with concomitant topical tacalcitol for vitiligo vulgaris.
JCDSA, 2:88-91, 2012.
6. 種村 篤、壽 順久、片山一朗.尋常性 白斑の病態update.Aesthetic
Dermatology, 22:11-17, 2012.
7. 種村 篤、高橋 彩、上木裕理子、山中 隆嗣、室田浩之、片山一朗、山口裕史.
尋常性白斑に対する活性型ビタミンD3 外用と紫外線照射併用療法の有効性につ いての検討.皮膚の科学, 10(6):485-493, 2012.
8. Hashimoto N, Tanemura A, Yamada M, Itoi S, Katayama I. Hepatitis C-related mix type vitiligo in a patient with Ivemark syndrome. J Dermatol 2014, Epub ahead of print (co-1st author).
9. Itoi S, Tanemura A, Kotobuki Y, Wataya-Kaneda M, Tsuruta D, Ishii M, Katayama I. Coexistence of Langerhans cells activation and immune cells infiltration in progressive
nonsegmental vitiligo. J Dermatol Sci, 73(1):83-85, 2014. (co-1st author).
10. Oiso N, Tanemura A, Kotobuki Y, Kimura M, Katayama I, Kawada A.
Role of macrophage infiltration in successful repigmentation in a new periphery-spreading vitiligo lesion in a male Japanese patient. J Dermatol 2013, Epub ahead of print.
2. 学会発表
1. Tanemura A, Itoi S, Kotobuki Y, Wataya-Kaneda M, Tsuruta D, Ishii M, Katayama I: Morphological and
Ultrastractual Assessment for Activation of Derndritic Cell in the Lesional Skin in Generalized Vitiligo Vulgaris: Link between Cellular
Autoimmune Response and Melanocyte Disappearance. XVII Pan American Society of Pigment Cell Research , Salt Lake City, USA. 2012.9.19-22
2. 種村 篤、糸井沙織、壽 順久、金田眞 理、鶴田大輔、石井正光、片山一朗尋常 性白斑局所での樹状細胞を中心とした炎 症細胞の免疫組織学的および電子顕微鏡 での詳細な観察―成熟メラノサイト消失 機構の新しい提案―.第24回日本色素細 胞学会学術大会,長浜,2012.11.24-25 3. 種村 篤、楊 怜悧、金田眞理、深井和
吉、鶴田大輔、片山一朗.ロドデノール 含有化粧品使用後白斑における炎症性変 化からの病態検討.第25回日本色素細胞 学会学術大会,大阪,2013.11.16-17
F.知的財産権の出願・登録状況 特になし
1. 特許取得 特になし
2. 実用新案登録 特になし
3.その他 特になし
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
総合分担研究報告書
遺伝性対側性色素異常症と網状肢端色素沈着症の病態解析
研究分担者 河野通浩 名古屋大学大学院医学系研究科皮膚科学分野
遺伝性対側性色素異常症患者に認めた ADAR1遺伝子5’UTR上の1塩基置換の機能 解析
A.研究目的
遺伝性対側性色素異常(dyschromatosis symmetrica hereditaria; DSH)は遺伝子診 断により確定診断を行っているが、典型的な 皮疹を持つ患者にもかかわらず、ADAR1遺伝 子の通常の遺伝子診断で検索する、ADAR1 遺伝子のコード領域もしくはスプライス供 与・受容部位に変異が認められない症例があ る。1症例で見つかった5’非翻訳領域(UTR)
の変異候補について、ADAR1遺伝子変異とな りえるかを検討する。
B.研究方法
名古屋大学皮膚科で遺伝子診断を行った DSH症例のADAR1遺伝子のコード領域もし くはスプライス供与・受容部位に変異が認め られず、5’非翻訳領域(UTR)にて候補変異 を認めた症例のうち、翻訳開始点より60bp上 流での塩基置換について検討した。患者ヒト
ゲノムDNAからADAR1遺伝子の5’UTR領域 配 列 をPCRに て 増 幅 し 、 そ れ ら の 配 列 を pGL3 Luciferase Reporter VectorのSV40プ ロモータの下流に導入した。野生型と変異型 が得られたら、それぞれを用いたルシフェラ ーゼアッセイを行い、野生型と変異型での発
現効率を比較する。
(倫理面への配慮)
DSH患者の遺伝子診断については名古屋 大学医学部より承認を受けている。本研究を 進めるうえでも、承認を受けた研究計画に沿 って行っている。
C.研究結果
NCC-melan5に導入した実験では病的変 異と特定するには至らなかった。
D.考察
アッセイ系の最適化とヒトメラノサイト での検討が必要である。
研究要旨 (1) 遺伝性対側性色素異常症の原因遺伝子ADAR1の変異スクリーニングを 行うと、ADAR1遺伝子のコード領域もしくはexon-intron境界部に遺伝子変異が同定で きない症例が認められる。今回はADAR1遺伝子のUTR領域に1塩基置換を認めた症例 について、ルシフェラーゼアッセイを用いた変異機能解析を行った。病因となる変異と は断定するに至らなかった。
(2) 網状肢端色素沈着症はこれまで原因不明であったが、次世代シークエンスにより原 因遺伝子をADAM10と同定した。本疾患の病態にADAM10がどのように関わっている かを明らかにするため、皮膚でのADAM10の働きについて検討した。現在までに新知見 は得られていない。
E.結論
5’UTR領域の変異によるDSH発症につい ては現在のところは証明できていない。
F.健康危険情報 特になし。
網状肢端色素沈着症の病態解析 A.研究目的
網 状 肢 端 色 素 沈 着 症 ( reticulate acropigmentation of Kitamura、RAK)は原 因不明の遺伝性色素異常症の1つである。本 疾患家系の患者および家族の協力を得て、次 世 代 シ ー ク エ ン ス に よ り 原 因 遺 伝 子 を ADAM10と同定した。そこで、ADAM10が本 疾患の特徴的な皮疹の形成にどのように関与 しているかを明らかにするため、培養細胞お よび遺伝子改変マウスを用いて、皮膚におけ るADAM10の働きを検討する。
B.研究方法
ADAM10が皮膚を構成する細胞の色素細 胞、角化細胞、線維芽細胞のそれぞれにどの ように働いているかを検討する。ADAM10の siRNAを用いて細胞内のADAM10の発現抑 制を行い、細胞形態やそれぞれの細胞機能に 関与する遺伝子発現の変化を検討する。また、
ADAM10ノックアウトマウスは胎生致死で あることが報告されている。Cre-loxシステム を用いたコンディショナルノックアウトマウ スを用いて、皮疹の出現が再現できるかどう か、また、マウス皮膚におけるADAM10の働 きを検討する。
(倫理面への配慮)
ARK患者の遺伝子診断および遺伝子改変 マウスを用いた研究については名古屋大学医 学部よりそれぞれ承認を受けている。
C.研究結果
ヒト角化細胞にsiRNAを導入して形態学 的変化の検討を試みた。siRNAによる遺伝子 抑制効果が乏しく、条件検討中である。また、
マウスの実験は遺伝子改変マウスを入手し、
交配の段階である。
E.結論
現在までの実験ではADAM10の皮膚での影 響の新規知見は得られなかった。
F.健康危険情報 特になし。
G.研究発表 1. 論文発表
1. Kono M et al. Novel ADAR1 mutations including single amino acid deletion in the deaminase domain underly
dyschromatosis symmetrica
hereditaria in Japanese families. Int J Dermatol (in press)
2. Sawada M, Yokota K, Matsumoto T, Shibata S, Yasue S, Sakakibara A, Kono M, Akiyama M. Proposed classification of longitudinal melanonychia based on clinical and dermoscopic criteria. Int J Dermatol (in press)
3. Kono M et al. Dyschromatosis symmetrica hereditaria by ADAR1 mutations and viral encephalitis: a hidden link? Int J Dermatol 52:1582-4, 2013.
4. Kono M et al. Whole-exome sequencing identifies ADAM10 mutations as a cause of reticulate acropigmentation of
Kitamura, a clinical entity distinct from Dowling-Degos disease. Hum Mol Genet 22: 3524-33, 2013.
5. Mori M, Sugiura M, Kono M et al.
Clinico-pathologic Analysis of 66 Japanese Thin Melanomas with Metastasis of Sentinel or Regional Lymph Node. J Cutan Pathol 40:
1027-34, 2013.
6. Kantaputra PN, Chinadet W, Ohazama A, Kono M. Dyschromatosis
symmetrica hereditaria with long hair on the forearms, hypo/hyperpigmented hair, and dental anomalies: report of a novel ADAR1 mutation. Am J Med Genet A. 158A(9):2258-65, 2012.
7. Kono Met al. Oculocutaneous albinism 1 minimal pigment type: A case report on the analysis of genotype of an OCA1MP patient. Br J Dermatol 166(4): 896-8, 2012.
8. Kono M et al. Four novel ADAR1 gene mutations in patients with
dyschromatosis symmetrica
hereditaria. J Dermatol 39: 819-821, 2012.
2. 学会発表(全国規模以上)
1. 河野通浩ら.網状肢端色素沈着症は
ADAM10遺伝子変異によって発症する.
第25回日本色素細胞学会学術大会.
2013年11月16-17日.吹田市.
2. Kono M et al.Novel ADAR1 mutations including single amino acid deletion in
the deaminase domain underly dyschromatosis symmetrica
hereditaria. The 36th Annual Meeting of the Japanese Society for
Investigative Dermatology. Dec 7-9, 2012. Naha
3. 著書
1. Kono M, Akiyama M. Dyschromatosis symmetrica hereditaria and RNA editing enzyme. In: Naoki Oiso, eds.
Current Genetics in Dermatology.
Rijeka, Croatia: InTech, 2013: 105-20.
H.知的所有権の取得状況 1. 特許取得
発明の名称:フィラグリン遺伝子変異検出法 及びその用途(出願番号:特願2013-222829、
出願日:平成25年10月26日)
2. 実用新案登録 特になし。
3.その他 特になし
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
総合分担研究報告書
色素異常症に対する新規治療法の開発
研究分担者 川口雅一 山形大学医学部皮膚科 講師
研究要旨 メラニンはメラノサイトの細胞内小器官の1つであるメラノソーム内で作られ、
近隣のケラチノサイトに受け渡される。メラニン合成に必要な蛋白は、メラノサイト内で 粗面小胞体、ゴルジ体、エンドソームなどを経てメラノソームに輸送される。これらのメ ラニン合成反応にかかわる分子や、メラノサイト内でのシグナル伝達や膜輸送に関わる分 子、あるいはメラノサイトの発生や分化に関与する分子の異常などによって色素異常症が 生じる。
現時点では、遺伝性色素異常症の有効な治療法はほとんどない。本研究では新規治療法 を開発するために既存の薬剤を用いて研究を行い、diacylglycerol kinase (DGK)がメラニン 合成に関与すること、ADAM (a disintegrin and metalloprotease) 阻害剤がメラノソーム形成 を抑制することを明らかにした。本研究を進めることにより、メラニン合成機構を理解す るための基盤となる知見が得られ、将来的に治療につながることが期待される。
A. 研究目的
①色素異常の分子機構
メラニンはメラノサイトの細胞内小器官の 1つであるメラノソーム内で作られ、近隣のケ ラチノサイトに受け渡される。メラニン合成 に必要な蛋白は、メラノサイト内で粗面小胞 体、ゴルジ体、エンドソームなどを経てメラ ノソームに輸送される。これらのメラニン合 成反応にかかわる分子や、メラノサイト内で のシグナル伝達や膜輸送に関わる分子、ある いはメラノサイトの発生や分化に関与する分 子の異常などによって色素異常症が生じる。
現時点では、遺伝性色素異常症の有効な治 療法はほとんどない。本研究では新規治療法
を開発するために現存する薬剤を用いて研究 を行ない、メラニン合成に影響を与えるか検 討した。
脂質性2次メッセンジャーのdiacylglycero l (DAG)は培養メラノサイトのメラニン合成 を促進し、UVB照射により細胞内で増加する ことが知られている。DAGの標的分子の一つ であるprotein kinase C (PKC) はメラノサ イトのチロシナーゼを活性化し、メラニン合 成を促進させることが知られている。
ADAMs (a disintegrin and metalloprotease) は細胞膜上の増殖因子、受容体、接着分子の シェディングやインテグリンなどへの結合に より、細胞の接着、運動、増殖に関与する多
機能分子である。ADAM17はTNF-α、TNF r eceptor、KIT ligand (KITL)やその受容体KIT のシェディングに関与する。ADAM17のノッ クアウトマウスでは毛の色素異常を呈し、ま たADAM17は東アジア人の皮膚の色調を決定 する遺伝子の一つである可能性が報告されて いる。 ADAM10はCD44、E-cadherin、N-cadh erinなどのシェディングに関与しており、最近、
網状肢端色素沈着症の原因遺伝子であると報 告された。
本研究では、DAGの代謝に関与するdiacylgl ycerol kinase (DGK)と ADAMに着目し、両阻 害剤のメラニン合成に対する効果を検討した。
②遺伝性対側性色素異常症(DSH)の遺伝 子診断と病態解析
DSH症例の遺伝子診断を行い、培養ヒトメ ラノサイトにおけるRNA干渉の実験系を確立 し病態を解析した。
B. 研究方法
培養正常ヒトメラノサイトやメラノーマ細胞 株を用いて、メラニン量、チロシナーゼ活性、
およびメラニン合成関連分子の発現などに対 する効果を検討した。また、RNA干渉により同 様に検討を行った。
(倫理面への配慮)
本研究におけるヒト由来血液、あるいは唾液 の提供者、その家族・血縁者、その他の関係 者の人権及び利権の保護の取り扱いについて 十分配慮する。本研究における遺伝子診断は 山形大学医学部倫理委員会にすでに承認され ている。プライバシー保護の確約およびサン プル採集後も本人の要請によりサンプルを破 棄できることを文章で説明する。サンプルは コード化し、学会および学術論文発表におい
ても個人を特定できないように配慮する。
遺伝子組み換え実験については学内倫理委員 会の承認を得ている。
C. 研究結果
メラノサイトやメラノーマにおけるDGK isof ormの発現を解析し、いくつかのisoformが発 現していることを確認した。またDGK阻害剤 は低濃度ではチロシナーゼ蛋白の発現のみを 抑制しメラニン量を減少させるが、高濃度で はMITFの発現を抑制しチロシナーゼ以外の メラニン合成関連タンパク(TRP-1、DCT、pm el17)の発現にも影響を与え、メラノサイトの 細胞増殖を抑制した。
ADAM阻害剤はヒトメラノサイトのメラニ ン量を低下させ、マウスB16F10 cellにおいて αMSH誘導性のメラニン合成を抑制した。電 子顕微鏡で観察したところ、阻害剤で処理し た細胞ではstageⅡ、Ⅲのメラノソーム数が減 少していた。このことからADAM阻害剤はメ ラノソーム形成に関与する可能性が示唆され、
現在、siRNAによるknockdown実験や機能解析
を行なっている。
DSH症例の遺伝子診断を行い、11の新規遺 伝子変異を報告した。これまでの報告例では、
多くの遺伝子変異はdeaminase domain内の変 異あるいは、ノンセンスまたはフレームシフ トによりdeaminase domainが欠失する変異で あるが、今回dsRNA binding domainにミスセ ンス変異を認めた症例 (A561V)を報告した。
さらに培養ヒトメラノサイトにおけるRNA干 渉の実験系を確立した。この系を用いてヒト メラノサイトでADAR1遺伝子をノックダウン することが可能であった。
D. 健康危険情報
なし
E. 研究発表 1. 論文発表
1. Kawaguchi M, Hayashi M, Murata I, Hozumi Y, Suzuki N, Ishii Y,
Wataya-Kaneda M, Funasaka Y, Kawakami T, Fukai K, Ochiai T, Nishigori C,
Mitsuhashi Y, Suzuki T. Eleven novel mutations of the ADAR1 gene in dyschromatosis symmetrica hereditaria. J Dermatol Sci. 2012, 66: 244-5.
2. Bilen N, Aktürk AŞ, Kawaguchi M, Salman S, Erçin C, Hozumi Y, Suzuki T.
Dyschromatosis symmetrica hereditaria: a case report from Turkey, a new association and a novel gene mutation. J Dermatol. 2012, 39: 857-8.
3. Shimanuki M, Takeda K, Kawaguchi M, Suzuki T, Shibahara S. Lipocalin-type prostaglandin D synthase as a marker for the proliferative potential of melanocyte-lineage cells in the human skin. J Dermatol. 2012, 39:699-704.
4. Rice GI, Kasher PR, Forte GM, Mannion NM, Greenwood SM, Szynkiewicz M, Dickerson JE, Bhaskar SS, Zampini M, Briggs TA, Jenkinson EM, Bacino CA, Battini R, Bertini E, Brogan PA, Brueton LA, Carpanelli M, De Laet C, de Lonlay P, Del Toro M, Desguerre I, Fazzi E,
Garcia-Cazorla A, Heiberg A, Kawaguchi M, Kumar R, Lin JP, Lourenco CM, Male AM, Marques W Jr, Mignot C, Olivieri I, Orcesi S, Prabhakar P, Rasmussen M, Robinson RA, Rozenberg F, Schmidt JL, Steindl K, Tan
TY, van der Merwe WG, Vanderver A, Vassallo G, Wakeling EL, Wassmer E, Whittaker E, Livingston JH, Lebon P, Suzuki T, McLaughlin PJ, Keegan LP, O'Connell MA, Lovell SC, Crow YJ.
Mutations in ADAR1 cause
Aicardi-Goutières syndrome associated with a type I interferon signature. Nat Genet.
2012, 23; 44:1243-8.
5. Kawaguchi M, Valencia JC, Namiki T, Suzuki T, Hearing VJ. Diacylglycerol kinase regulates tyrosinase expression and function in human melanocytes. J Invest Dermatol.
2012, 132: 2791-9.
6. Kawaguchi M, Suzuki T. Gene expression and in situ localization of ADAM17 during skin wound healing. Int J Dermatol. 2013 Jul 8. doi: 10.1111/ijd.12119.
7. Kawaguchi M, Suzuki T. ADAM17 is involved in the regulation of chemokine expression in keratinocytes. Int J Dermatol.
2013 Jun 20. doi: 10.1111/ijd.12090.
8. 川口雅一、鈴木民夫. 遺伝性色素異常症 のスキルアップ「診断のポイントと最新 の知見」. MB Derma 203, 79-84, 2013 2. 学会発表
1. 川口雅一, 鈴木民夫, Vincent J. Hearing:
Diacylglycerol kinaseはメラノサイトの tyrosinase発現と機能を調節する.
第19回分子皮膚科フォーラム, 青森市, 2012.4.14
2. 川口雅一, Julio C. Valencia, Takeshi Namiki, 鈴木民夫, Vincent J. Hearing:
Diacylglycerol kinaseはメラノサイトの tyrosinase発現と機能を調節する.
第24回日本色素細胞学会, 長浜市,
2012.11.24
3. Masakazu Kawaguchi, Julio C. Valencia, Takeshi Namiki, Tamio Suzuki, Vincent J.
Hearing: Diacylglycerol kinase regulates tyrosinase expression and function in human melanocytes. 第24回日本色素細胞学会, 那覇市, 2012.12.7
4. Masakazu Kawaguchi, Yutaka Hozumi, Tamio Suzuki: ADAM protease inhibitor regulates chemokine expression in human keratinocytes, and modulates melanogenesis in human melanocytes. International Investigative Dermatology, Edinburgh, Scotland, 2013.5.8-11
5. 川口雅一: 色素沈着のメカニズム. 第 112 回日本皮膚科学会総会 教育講演, 横浜市, 2013.6.14
6. 川口雅一、穂積 豊、鈴木民夫: ADAM プ ロテアーゼ阻害剤はヒトメラノサイトの melanogenesis を調節する. 第 25 回日本 色素細胞学会学術大会, 大阪市, 2013.
11.16
F. 知的財産権の出願・登録状況 1. 特許取得
なし
2. 実用新案登録 なし
3. その他 なし
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
総合分担研究報告書
さまざまな遺伝性・母斑性・多因子性色素異常症の病態解明
研究分担者 大磯直毅 近畿大学医学部皮膚科准教授
研究要旨 色素異常症にはさまざまな遺伝性・母斑性・多因子性の疾患が存在する。その多くは 難治性であり、いまだ病態が解明されていない疾患が数多い。病態を解明し、新規治療法の開発 が求められている。われわれは、希少なさまざまな遺伝性・母斑性・多因子性色素異常症を症例 ごとに基礎研究的手技を用いて病態を解析した。本研究で解明された結果は今後の難治性色素異 常症の治療法開発の基盤になりうる。
A.研究目的
色素異常をきたすマウスモデルは
800種類以上知られている。すなわち、マウス では色素に関連する遺伝子は800以上存在する。
一方で、ヒトにおいて、さまざまな遺伝性・母 斑性・多因子性色素異常症が知られているが、
800以上もの疾患は知られていない。色素異常 症を理解するために、まだまだ病態解明が必須 であることを意味する。われわれは、さまざま な遺伝性・母斑性・多因子性色素異常症の病態 を症例ごとに解析し、その結果を積み重ねるこ とで、疾患ごとの病態解明を試みた。対象疾患 として、遺伝性色素異常症としてまだら症、母 斑性として色素性母斑・cutis tricolor・lin ear
atrophodermaof Moulin、多因子性として尋常 性白斑・erythema discromicum perstans・id iopathic eruptive macular
pigmentation とした。
本研究斑での研究成果を基盤とし、尋常性白斑 の本邦・国際斑会議に参加し、診断基準と診療 ガイドライン策定に関与した。さらに、新規知
見を含めた概説を作成し、近年の研究成果の普 及に努めた。
B.研究方法
皮膚生検標本を用いて免疫染色・蛍光染色によ る病理学的検討なら
びに電子顕微鏡を用いた検討を実施した。
末梢血からゲノムDNAを抽出し、遺伝子解析を 実施した。
(倫理面への配慮)
近畿大学医学部で承認された臨床・組織写真を 学術雑誌などで公表する同意書に記載を得た。
遺伝子解析は近畿大学医学部遺伝子倫理委 員会で承認された方法で実施し、患者もしくは 親権者からの同意書に記載を得た。
C.研究結果
(1)遺伝性色素異常症 まだら症
完全色素脱失部の色素再生は、エクリン汗管に 存在する幹細胞から分化するメラノサイトに 由来する可能性を示した。今後はこの分化機構
を解明していくことで、治療法開発に結びつく。
(2)母斑性色素異常症 色素性母斑
足底の色素性母斑と悪性黒色腫はダーモスコ ピーを用いることで鑑別しやすい。色素性母斑 は平行皮溝パターン、悪性黒色腫は平行皮丘パ ターンをとる。平行皮丘パターンを示した足底 色素性母斑の病理組織学的特徴を解析した。
cutis tricolor
一側に色素脱失性の母斑疾患と反対側に色素 増強型の母斑疾患を有する症例は
cutis tricolorとされる。染色体異常で発症す る。胎生初期で生じると、発育異常や精神遅滞 を併発し、胎生のやや遅く生じると皮膚病変の みとなる。本邦でもcutis
tricolorの症例があることを示した。
linear atrophodermaof Moulin
linear atrophodermaof Moulinは小児期もし くは思春期に生じるブラシュコ線に沿って発 症する萎縮した皮膚と色素沈着を特徴とする。
近年、色素脱失型も報告されている。色素沈着 斑をともなう色素脱失型を経験し、ダーモスコ ピーと病理組織学的に検討した。表皮・真皮の 構築異常とメラノサイト分布とケラチノサイ トへのメラニン供給異常を明らかにした。
(3)多因子性色素異常症
尋常性白斑:ケブネル現象について
尋常性白斑はケブネル現象を生じることが知 られているが、乾癬と比べてその発症初期の臨 床的特徴は知られていない。われわれは猫に腕 を繰り返し引っかかれている患者の初期病変 をダーモスコピーで解析し、創部の深さとケブ ネル現象発生との関連性を明らかにした。
尋常性白斑:速やかな色素再生とともに治癒し たundetermined / unclassified vitiligo組 織学的に検討した。発症初期の病変部真皮への
マクロファージの著明な浸潤が、色素再生と免 疫寛容を誘導に重要である可能性を示唆でき た。色素再生機構解明は治療戦略開発に向けて、
重要な所見を得たと考えている。
erythema discromicum perstans (EDP) 小児例では電子顕微鏡を用いて解析した結果、
幼弱で未熟なメラノソームがメラノサイトか らケラチノサイトへ転送される所見とメラノ サイトとケラチノサイトの接着がかなり未熟 になっていることを明らかにした。
EDPとannular lichenoid dermatitis of youth (ALDY) を併発している症例を病理組織 学的に検討し、両者がオーバーラップしうる疾 患であることを示した。
ブラシュコ線に沿うEDP症例を提示し、EDP 発症に遺伝的素因が関与しうることを示した。
idiopathic eruptive macular pigmentation (IEMP)
クリスマスツリー状に分布するIEMP症例を報 告した。EDPはブラシュコ線に沿い、遺伝的影 響が大きい可能性があり、IEMPは環境的影響が 大きい可能性を示した。
EDPとIEMPは鑑別困難な症例があり、分布の違 いが診断に役立つ可能性を示した。
D.健康危険情報 特記事項なし
E.研究発表 1. 論文発表
1. Makino T, Yanagihara M, Oiso N, Mizawa M, Shimizu T. Repigmentation of the
epidermis around the acrosyringium inpiebald skin: an ultrastructural examination.Br J Dermatol 2013; 168(4): 910-912.
2. Oiso N, Kawada A. Acral melanocytic nevus
of the sole with the parallel ridge pattern.
Eur J Dermatol, in press.
3. Oiso N, Matsuda H, Kawada A. Cutis tricolor of pure cutaneous trait as leukoderma and nevus spilus. J Dermatol 2013; 40(6):
490-491.
4. Oiso N, Kimura M, Itoh T, Kawada A.
Variant of linear atrophoderma of
Moulin:hyper- and hypopigmented linear atrophoderma with aberrant area cutanea and lentiginosis following the lines of Blaschko.
J Dermatol 2012; 39(12): 1097-1099.
5. Oiso N, Kawada A. House cat
scratch-induced linear vitiligo as Köbner phenomena. J Dermatol 2012; 39(9):
798-799.
6. Oiso N*, Tanemura A* (*co-first
authors),Kotobuki Y, Kimura M, Katayama I, Kawada A. Role of macrophage infiltrationin successful repigmentation in a new
periphery-spreading vitiligo lesion in a male Japanese patient. J Dermatol 2013; 40(11):
915-918.
7. Oiso N, Tsuruta D, Imanishi H, KobayashiH, Kawada A. Erythema dyschromicum perstans in a Japanese child. Pediatr Dermatol 2012;
29(5): 637-640.
8. Oiso N, Kawada A. Erythema dyschronicum perstans showing an ash-colored
hperpigmented lesion and an adjacent incompletely hypopigmented lesion surrounded by an erythematous border: a boundary spectrum to annular lichenoid dermatitis of youth? Eur J Dermatol 2012;
22(6): 793-794.
9. Oiso N, Kawada A. Erythema dyschronicum
perstans with both a macular lesion and a linear lesion following the line of Blaschko. J Dermatol2013; 40(2): 127-128.
10. Oiso N, Kawada A. Idiopathic eruptive macular pigmentation following a Christmas tree pattern. J Dermatol 2013; 40(11):
934-935.
2. 学会発表
1. Oiso N, Kawada A. A variant of linear atrophoderma of Moulin: hyper-and hypopigmented linear atrophoderma with peculiar area cutanea and lentiginosis following Blaschko’s lines. The 24th annual meeting of the Japanses Society of Pigment Cell Research. November 24-25, 2012.
Nagahama, Shiga, Japan(Pigment Cell Melanoma Res 25(6); 904–922)
2. 大磯直毅.教育講演 臨床医にとっての研 究 基礎研究的手技を用いた色素異常症 の病態解析、第112回日本皮膚科学会総 会 平成25年6月14‐16日、横浜市 3. 大磯直毅.教育講演 わかりやすい色素異
常症 尋常性白斑研究と臨床的意義、第 112回日本皮膚科学会総会 平成25年6
月14‐16日、横浜市
4. 大磯直毅.尋常性白斑におけるQuality
Indicator.第64回日本皮膚科学会中部支
部学術大会.平成25年11月2‐3日 名 古屋市
5. 大磯直毅,種村 篤,壽 順久,木村雅 友,片山一朗,川田 暁.新規辺縁拡大 病変部へのマクロファージ浸潤を認め、
その後に完全に色素再生した尋常性白斑 の1例.第25回日本色素細胞学会学術大 会 平成25年11月16‐17日 吹田市
F.知的財産権の出願・登録状況
(予定を含む。)
1. 特許取得 なし
2. 実用新案登録 なし
3.その他 なし
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
総合分担研究報告書
尋常性白斑・脱色素斑の治療における活性型ビタミンD3の作用機序とエキシマライト照射 ミニグラフト術による治療効果の検討そしてヒトiPS細胞を使用した治療方略
研究分担者 川上民裕 聖マリアンナ医科大学皮膚科 准教授
A.研究目的 尋常性白斑は、境界鮮明なほぼ完全な脱色 素斑である。色素脱失をきたす皮膚疾患の中 で最も多く、人種差はあるものの全人口の約 1%が罹患している。随伴する全身症状は乏し いが、その色調が目立つことから、患者さん の精神的な負担は想像以上である。
先天性に白斑をもつ色素異常症の遺伝性対 側性色素異常症は、1910年遠山により初めて 報告され、日本人と中国人に多く見られる。
常染色体優性遺伝で、両手背と両足背に色素 斑と白斑の混在する皮疹を特徴とする。最近、
RNA編集酵素の一つである2本鎖RNA特異的 adenosine deaminase遺伝子(ADAR1)が病 因遺伝子として同定された。
白斑・脱色素斑、色素異常症の治療方法に は、外用剤による治療法、紫外線療法、外科
療法に大別される。最近、注目されている治 療法は、軟膏療法での活性型ビタミンD3軟膏、
紫外線療法でのエキシマライト照射、外科療 法でのミニグラフト術である。
活性型ビタミンD3軟膏は、白斑・脱色素斑 に対する有効性に一定の評価がなされている。
しかし、あくまでも臨床での結果であり、活 性型ビタミンD3の白斑への作用機序は、まだ 不明な点が多い。そこで、ヒト皮膚色素細胞 とヒト皮膚メラノブラストを使用し、活性型 ビタミンD3の作用を検討した。
紫外線療法では、かつてのPUVA療法、最 近ではnarrow band UVB、そして最新の治 療としてエキシマライト照射があげられる。
また、外科療法では、かつては侵襲が多い分 層植皮術が試行されたが、最新の治療として ミニグラフト術があげられる。そこで、現状 研究要旨 尋常性白斑は、色素脱失をきたす皮膚疾患の中で最も多く、全人口の約1%が 罹患している。随伴する全身症状は乏しいが、その色調が目立つことから、患者さんの 精神的な負担は想像以上である。遺伝性対側性色素異常症は、ADAR1が病因遺伝子とし て同定された。活性型ビタミンD3は白斑の治療外用薬として、レチノイン酸は肝斑など 色素沈着症の治療外用薬として使用されている。ヒト色素細胞は、活性型ビタミンD3添 加で濃度依存性にチロシナーゼ活性が亢進、レチノイン酸添加で濃度依存性にチロシナ ーゼ活性が低下した。この結果は、各薬効を裏付ける。白斑と遺伝性対側性色素異常症 では、エキシマライト照射併用ミニグラフト術が奏功した。iPS細胞から色素細胞を誘導 し、白斑・脱色素斑での再生医療への応用をめざす。
の治療法をより改革する意味で、エキシマラ イト照射とミニグラフト術を組み合わせた治 療法を用いて、治療効果を検討していく。
こうした治療でも難治な症例の治療として、
ヒトiPS細胞を樹立し、色素細胞へ分化させ、
白斑・脱色素斑に植皮する治療の確立をめざ す。
B.研究方法 世界で最も流通しているIntrogenGibco社 のヒト皮膚色素細胞と、広部博士から譲渡さ れたヒト皮膚メラノブラストを使用し、活性 型ビタミンD3(1, 25-dihydroxyvitamin D3) とレチノイン酸を各細胞に添加し、その変化 を比較、検討した。
白斑と遺伝性対側性色素異常症に、エキシ マライト照射併用ミニグラフト術を行う。正 常皮膚部をエキシマライト照射後、1mmトレ パンパンチを用い採皮、1mmトレパンパンチ で穴をあけた脱色素斑部に植皮、以降、植皮 部を定期的にエキシマライト照射し、色素を 回復させる。
iPS細胞のマウス胎児線維芽細胞下での培 養を軌道にのせ、MatrigelにiPS細胞をまき、
色素細胞分化へ誘導する。
(倫理面への配慮)
本試験では、患者のプライバシー保護のた め、患者の全てのデータは症例登録番号、イ ニシャル、カルテ番号、生年月日で識別、同 定、照会される。また、試験成績の公表など に関しても、患者のプライバシー保護に十分 配慮する。データの二次利用は行わない。被 験者のデータ等を病院外に出す場合は、個人 情報管理者を置く。
C.研究結果
ヒト色素細胞は、活性型ビタミンD3添加と レチノイン酸添加で細胞増殖が阻害された。
一方、ヒトメラノブラストは、レチノイン酸 添加で細胞増殖が阻害されたが、活性型ビタ ミンD3添加での影響はなかった。さらに、チ ロシナーゼ活性への影響を検討した。色素細 胞は、活性型ビタミンD3添加で濃度依存性に チロシナーゼ活性が亢進した。対して、レチ ノイン酸添加で濃度依存性にチロシナーゼ活 性が低下した。一方、メラノブラストは、活 性型ビタミンD3、レチノイン酸ともチロシナ ーゼ活性での変化はなかった。今後は、エン ドセリンレセプター発現を絡ませて検証する 予定である。
白斑と遺伝性対側性色素異常症では、エキ シマライト照射併用ミニグラフト術が奏功し、
患者のQOLも向上した。
iPS細胞の培養は、マウス胎児線維芽細胞下 で良好に培養された。色素細胞誘導培養の条 件設定で、特許出願中である。
D.考察
活性型ビタミンD3は白斑の治療外用薬と して、レチノイン酸は肝斑など色素沈着症の 治療外用薬として、使用されている。今回の 実験で、色素細胞は、活性型ビタミンD3添加 で濃度依存性にチロシナーゼ活性が亢進した。
対して、レチノイン酸添加で濃度依存性にチ ロシナーゼ活性が低下した。この結果は、実 臨床での活性型ビタミンD3外用薬とレチノ イド外用薬の効果を裏付けると考えられる。
メラノブラストでは、こうした現象は認めら れなかった。
白斑・脱色素斑に対する外科的治療におい て、エキシマライト照射併用ミニグラフト術
は、今後、試みるべき有効な治療法と考える。
iPS細胞から色素細胞をいかに効率よく、か つ大量に誘導できるか、その条件設定を今後、
吟味していく。そして、色素細胞の再生医療 を軌道にのせるための充分な研究が今後も必 要である。
E.結論 本研究の結果は、活性型ビタミンD3が白斑 治療外用薬、レチノイン酸が肝斑など色素沈 着症の治療外用薬として作用するメカニズム を示したデータとして有用と考える。
白斑と遺伝性対側性色素異常症には、エキ シマライト照射併用ミニグラフト術は、積極 的に施行されるべき治療と考えた。
iPS細胞からの色素細胞誘導は、白斑・脱色 素斑の再生医療への先駆けとなる。
F.研究発表 1. 論文発表 1. Kawakami T, Soma Y.
Tyrosinase-related protein1 in mouse melanocytes at early embryonic stage.
J Dermatol Sci. 2012; 67 (3): 194-196 2. Kawaguchi M, Hayashi M, Murata I,
Hozumi Y, Suzuki N, Ishii Y, Wataya-Kaneda M, Funasaka Y, Kawakami T, Fukai K, Ochiai T, Nishigori C, Mitsuhashi Y, Suzuki T.
Eleven novel mutations of the ADAR1 gene in
dyschromatosissymmetricahereditaria.
J Dermatol Sci. 2012; 66: 244-245 3. Oiso N, Suzuki T, Wataya-Kaneda M,
Tanemura A, Tanioka M, Fujimoto T, Fukai K, Kawakami T, Tsukamoto K,
Sano S, Mitsuhashi Y, Nishigori C, Morita A, Nakagawa H, Mizoguchi M, Katayama I, Yamaguchi Y. Guidelines for the diagnosis and treatment of vitiligo in Japan. J Dermatol. 2013;
40(5): 344-354
4. Kawakami T, Otaguchi R, Kyoya M, Soma Y, Suzuki T. A patient with dyschromatosissymmetricahereditaria treated with mini punch grafting, followed by excimer light therapy. J Dermatol. 2013; 40(9): 771-772 5. Fumimori T, Tsuruta D, Kawakami T,
Ohata C, Furumura M, Hashimoto T.
The effect of monochromatic excimer light on palmoplantarpustulosis: A clinical study performed in a private clinic by a dermatological specialist. J Dermatol. 2013 in press
2. 学会発表 1. Kawakami T, Ohgushi A, Soma Y,
Hirobe T. Effects of 1,
25-dihydroxyvitamin D3 and all-trans retinoic acid in human epidermal melanocyte and melanoblast. The 25th Annual Meeting of the Japanese Society for Pigment Cell Research (JSPCR meeting 2013), 2013, Osaka (Pigm. Cell Res. (Pigm. Cell Melanoma R.), 26 (E): E6, 2013.) 11月17日 大阪 2. Otaguchi R, Kyoya M, Kawakami T,
Soma Y, Suzuki T. A patient with dyschromatosissymmetricahereditaria treated with mini punch grafting, followed by excimer light therapy. The 25th Annual Meeting of the Japanese
Society for Pigment Cell Research (JSPCR meeting 2013), 2013, Osaka (Pigm. Cell Res. (Pigm. Cell Melanoma R.), 26 (E): E7, 2013.) 11月17日 大阪 H.知的財産権の出願・登録状況(予定を含 む。)
1. 特許取得
発明の名称: iPS細胞を使用した色素細胞
(メラノサイト)の分化誘導 発明者: 川上 民裕
出願番号または公開番号: 出願にむけて準備 中(聖マリアンナ医科大学発明委員会の承認 は終了)
2. 実用新案登録 3. その他 現在のところなし。
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
総合分担研究報告書
アミノグリコシドによるナンセンス変異リードスルー効果による 白皮症治療にむけての基礎実験
研究分担者 深井和吉 大阪市立大学 准教授
研究要旨 白皮症を治療する方向での研究はこれまでほとんどなされてこなかった。平成 24年度の研究成果を踏まえて、リードスルー効果による白皮症治療の研究を推進した。
日本人OCA1のチロシナーゼ変異として一番頻度が高いものはP310incCの54%であり、次 にR77Qで20%、その次がR278Xナンセンス変異であり9%となっている。このR278につい ては、ミスセンス変異の報告がなく、違うアミノ酸が置換されたとしても酵素としての機 能は保たれる可能性が高い。ナンセンス変異に対する、リードスルー効果の高い薬剤とし てすでに、アミノグリコシドは翻訳を止めないように働くことが知られている。日本人OC A1に頻度が高いR278X変異について、アミノグリコシドによる治療が可能かどうかについ ての基礎実験を行った。チロシナーゼのwild type tyrosinase cDNAとR278X変異導入tyr osinase cDNAをレンチウイルスベクターでヒト線維芽細胞由来NIH 3T3細胞、ヒト胎児 腎細胞由来HEK293細胞株に感染させた。ベクターにヒグロマイシン耐性遺伝子を導入し、
感染した細胞のみヒグロマイシンにてセレクションし、野生型およびR278Xチロシナーゼ を定常的に発現する、NIH 3T3細胞株およびHEK293細胞株を作成した。この細胞株にア ミノグリコシ抗生物質である。G418を800μg/ml、400μg/ml 、200μg/mlの濃度にて24時 間培養し、抗FLAG抗体および抗チロシナーゼ抗体によるウェスタンブロット解析を行った。
HEK293細胞株では、濃度依存性のリードスルー効果を確認できた。現在、筋ジストロフ ィーで臨床試験が行われているPTC124を添加して観察を行ったが、リードスルー効果は認 められなかった。
A.研究目的
これまでに、白皮症に対する治療にむけて の実験ないし取り組みはなされてこなかった。
白皮症の治療にむけての戦略としては、①酵 素補充、②ケミカルシャペロン、③リードス ルー治療の3つが考えられる。酵素補充治療 は、血液脳関門により視力回復が見込めない。
またケミカルシャペロンについては、適当な 化学物質の候補の絞り込みが困難である。し たがって、今回はリードスルー治療にむけて 検討することとした。日本人OCA1のチロシ ナーゼ変異として一番頻度が高いものはP31 0incCの54%であり、次にR77Qで20%、その 次がR278Xナンセンス変異であり9%となっ ている。このR278については幸いこのコドン のミスセンス変異の報告がなく、違うアミノ 酸が置換されたとしても酵素としての機能は
保たれる可能性が高い。リードスルー効果の 高い薬剤としてすでに、アミノグリコシドは 翻訳を止めないように働くことが知られてい る。今回、日本人OCA1にもっとも頻度が高 いR278X変異について、アミノグリコシドに よる治療が可能かどうかについての基礎実験 を行うこととした。
B.研究方法・結果
チロシナーゼのwild type tyrosinase cD NAとR278X変異導入tyrosinase cDNAをレ ンチウイルスベクターで、melan-c細胞に定常 的に一定に発現させすべく感染させたところ、
melan-c細胞は残念ながら、レンチウイルスベ クターの毒性によりすべて死亡してしまい、
この実験系では使えないことがわかった。そ こで、NIH3T3、HEK293細胞にチロシナー
ゼ野生型cDNAを組み込んだウイルスを感染 させ野生型およびR278Xチロシナーゼを定常 的に発現する、NIH 3T3細胞株、HEK293細 胞株を作成した。この細胞株にアミノグリコ シド抗生物質であるG418を800μg/ml、400μ g/mlおよび200μg/mlの濃度にて24時間培 養し、抗FLAG抗体および抗チロシナーゼ抗 体によるウェスタンブロット解析を行った。
G418の添加によりR278Xのナンセンス変異 リードスルー効果を濃度依存的に認めた。一 方、PTC124ではこのようなリードスルー効 果は認めなかった。
(倫理面への配慮)
該当しない
C.健康危険情報 該当なし
D. 研究発表(平成24-25年度)
1. 論文発表
1. Sunohara M, Ozawa T, Morimoto K, Harada T, Ishii M, Fukai K. Dye laser photodynamic therapy for Bowen's disease in a patient with epidermodysplasia verruciformis.
Osaka City Med J. 2012 Dec;58(2):77-82.
2. Oiso N, Suzuki T, Wataya-Kaneda M, Tanemura A, Tanioka M, Fujimoto T, Fukai K, Kawakami T, Tsukamoto K, Yamaguchi Y, Sano S, Mitsuhashi Y, Nishigori C, Morita A, Nakagawa H, Mizoguchi M, Katayama I. Guidelines for the diagnosis and treatment of vitiligo in Japan. J Dermatol. 2013 May;40(5):344-54.
doi:10.1111/1346-8138.12099. Epub 2013 Feb 27.
3. Pediatric case report: Clinical profile of a patient with PCWH with p.Q377X nonsense mutation in the SOX10 gene.
Oshimo T, Fukai K, Abe Y, Hozumi Y,
Yokoi T, Tanaka A, Yamanishi K, Ishii M, Suzuki T. J Dermatol. 2012 Dec;39(12):1022-5. doi:
10.1111/j.1346-8138. 2012.01671.x.
Epub 2012 Sep 11.
4. Piebaldism. Oiso N, Fukai K, Kawada A, Suzuki T. J Dermatol. 2012 Jun 1.
doi: 10.1111/j.1346-8138.2012. 01583.x.
[Epub ahead of print]
5. Eleven novel mutations of the ADAR1 gene in dyschromatosis symmetrica hereditaria. Kawaguchi M, Hayashi M, Murata I, Hozumi Y, Suzuki N, Ishii Y, Wataya-Kaneda M, Funasaka Y, Kawakami T, Fukai K, Ochiai T, Nishigori C, Mitsuhashi Y, Suzuki T. J Dermatol Sci. 2012 Jun;66(3):244-5.
Epub 2012 Jan 28.
6. Nonsegmental vitiligo and autoimmune mechanism. Oiso N, Suzuki T, Fukai K, Katayama I, Kawada A. Dermatol Res Pract.
2011;2011:518090. Epub 2011 Jul 26.
7. Generalized vitiligo and associated autoimmune diseases in Japanese patients and their families. Narita T, Oiso N, Fukai K, Kabashima K, Kawada A, Suzuki T. Allergol Int. 2011 Dec;60(4):505-8. Epub 2011 Jul 25.
8. Two cases of infantile linear
immunoglobulin A/immunoglobulin G bullous dermatosis. Kanayama Y, Tsuruta D, Tateishi C, Hasegawa Y, Amo K, Fukai K, Kobayashi H, Ishii M.
J Dermatol. 2012 Feb;39(2):176-8. doi:
10.1111/j.1346-8138.2011.01239.x.
Epub 2011 Jul 18.
9. 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性白 斑診療ガイドライン鈴木民夫, 金田眞理, 種村 篤, 谷岡未樹, 藤本智子, 深井和吉,
大磯直毅, 川上民裕, 塚本克彦, 山口裕 史, 佐野栄紀, 三橋善比古, 錦織千佳子, 森田明理, 中川秀巳, 溝口昌子, 片山一 朗 日本皮膚科学会雑誌
122(7):1725-1740(2012.06)
10. 目で見る小児科 点状軟骨異形成症の1 例 鶴原昭史, 齊藤三佳, 新宅治夫, 深 井和吉 小児科
53(3):273-274(2012.03)
11. 自己免疫疾患と白斑 深井和吉 皮膚科 臨床アセット11 シミと白斑最新診療 ガイド 古江増隆総編集、初版、東京、
中山書店 p.197-199(2012.8月)
12. 銀色の毛髪と露出部色素沈着から疑う Chediak-Higashi症候群 深井和吉 皮 膚科臨床アセット20 忘れてはならな い症候群 古江増隆総編集、初版、東京、
中山書店 p174-177, 2013
13. Malignant skin tumors in patients with oculocutaneous albinism: a review of a Japanese case series. Yasumizu M, Nishigori C, Kawaguchi M, Takada T, Oiso N, Suzuki T, Umekoji A, Tsuruta D, Fukai K. (submitted)
2. 学会発表
1. Livedo reticularisの1例 清水奈美、深 井和吉、安水真規子、堀口悠衣、石井 正 光、橋本祐介、中村博亮 第431回日本 皮膚科学会大阪地方会 平成 24年5 月 19日(大阪市)
2. リドカインによる接触皮膚炎症候群と全 身性接触皮膚炎が合併した一例 青木 麻子、深井和吉、大迫順子、森本真規子、
小林裕美、石井正光 第 42 回日本アレ ルギー・接触皮膚炎学会総会学術大会 平成24年7月13日〜7月15日(軽井 沢)
3. アミノグリコシドによるナンセンス変異 リードスルー効果による白皮症治療にむ けての基礎実験 深井和吉、國本浩之、
中嶋弘一、鈴木民夫、石井正光 第 24 回日本色素細胞学会学術大会月平成 24 年11月24〜25日(長浜市)
4. ワールデンブルグ症候群と関連疾患(教 育講演)深井和吉 第112回日本皮膚科 学会総会平成25年6月14−16日(横浜 市)
5. 白皮症の生活指導−遺伝子診断を行った
OCA1Aの症例を経験して。安水真規子、
深井和吉、鶴田大輔、磯野員倫、皆川京 子、羽田孝司、山西清文、阿部優子、穂 積豊、鈴木民夫 第106回近畿皮膚科集 団会 平成25年7月21日(大阪市)
6. IL36RN遺伝子解析を行った膿胞性乾癬 の2例。白鳥隆宏、深井和吉、安水真規 子、田口理映子、鶴田大輔、阿部優子、
穂積 豊、鈴木民夫。日本皮膚科学会中 部支部総会
7. 眼皮膚白皮症における皮膚がん発症リス クについての文献的考察。深井和吉、安 水真規子、鶴田大輔、大磯直毅、鈴木民 夫。第25回日本色素細胞学会 平成25 年11月16−17日(吹田市)
8. ロドデノール含有化粧品使用後白斑にお ける炎症性変化からの病態検討。種村篤、
揚怜悧、金田眞理、深井和吉、鶴田大輔、
片山一朗。第25回日本色素細胞学会 平 成25年11月16−17日(吹田市)
E. 知的財産権の出願・登録状況 1.特許取得
なし
2.実用新案登録 なし
3.その他
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
総合分担研究報告書
結節性硬化症の白斑
研究分担者 金田眞理 大阪大学大学院医学研究科皮膚科学 講師
研究分担者 片山一朗 大阪大学医学部皮膚科 教授
研究要旨 結節性硬化症(TSC)は原因蛋白ハマルチン、チュベリンの異常の結果、その下 流のmTORの活性化がおこり、全身に過誤腫を生じる遺伝性疾患で、全身の腫瘍以外に、精 神発達遅滞、てんかん、自閉症などの神経症状や白斑を特徴とする。TSCの白斑は遺伝性の 白班の中では最も多いといわれているが、本症における白斑の病態に関しては、不明である。
我々はmTOR阻害剤のラパマイシンがTSCの白斑改善に有効であり、TSCの白斑においても mTORが関与する事を示した。さらに本症白斑部の組織を電顕、光顕を用いて組織学的に検
討し、TSCの白斑では成熟メラノサイトが存在するが、メラノサイト内のメラノゾームの数
が各メラノサイト内で不均一であり、縮小、あるいは凝集したメラニン顆粒が認められ、メ ラニン合成過程での異常が原因であることを示した。さらに、これらの異常を引き起こす原 因の1つとして、尋常性白斑と同様に、TH17関連サイトカインの生体内環境が関与すること を、免疫組織科学的に示した。
A.研究目的
結節性硬化症(TSC)はmTORの活性化の結 果、全身に過誤腫を生じる遺伝性疾患で、白 斑以外に、精神発達遅滞、てんかん、自閉症 などの神経症状と全身の腫瘍を特徴とする。
TSCの腫瘍性病変の病態に関しては、最近よ く解析が進んできているが、白斑の病態に関 しては、いまだに不明である。本症の白斑に 関しては、1975年にJimbowらが症例報告とし て、TSCの白斑においては、メラノサイトの 数は正常で、メラノゾームの発達が悪いと報 告している。2012年には我々が、mTOR阻害 剤であるラパマイシンにより、本症の白斑が 改善治癒することを報告した。これらの背景
を踏まえて、今回我々はこのTSCにおける 白斑の病因病態の解明目的として以下の研究 を行った。
BC.研究方法及び結果
日本皮膚科学会のTSCの診断基準でTSCと 確定診断できた種々の臨床症状のTSC患者の 白斑部の生検標本を,melanA、CD4,
CD8,CD1a,IL-17、FoxP3に対する抗体で染色 し尋常性白斑と比較検討した。同時に電子顕 顕微鏡下で、TSC白斑部のメラノサイト内の メラノソームの状態を検討した。さらに、正 常メラノサイトに上記サイトカインを作用さ せメラノサイト内のメラノソームの変化を検
討した。
1)TSC患者白斑部の組織学的検討
TSC患者白斑部、尋常性白斑、及びTSC患
者顔面の血管線維腫の組織を,HEで染色する と同時に、melanA、CD4,
CD8,CD1a,IL-17,FoxP3に対する抗体で染色 し、染色結果を比較検討した。その結果、TSC ではmelanAの染色は陽性であったが、尋常性 白斑においてはmelanAの染色が認められな かった(平成21-23 年報告書図1)。一方TSC の顔面の血管線維腫ではmelanAの染色像が 認められた。以上より尋常性白斑ではメラノ サイトそのものが消失しており、TSCの白斑 ではメラノサイトにおけるメラニン顆粒の形 成異常が示唆された。さらに、TSCの白斑で は尋常性白斑と同様に、CD4, CD1a, IL-17に よる染色像は増強しており、FoxP3の染色像 は減少していた。しかしながら、CD8の染色 像は尋常性白斑とは異なり増強は認められな かった。一方TSCの顔面血管線維腫ではCD1a の染色像の増強は認められたが、IL-17の染色 は認められなかった(表 1)。これらの結果 より、CD4, CD1a, IL-17等のサイトカインが TSCの白斑の形成に何等かの間如をしている 可能性が示唆された。
2)TSC患者白斑部の電子顕微鏡を用いた組 織学的検討
TSC患者白斑部と、対象として尋常性白斑
の白斑部とコントロール組織の正常部につい てメラノサイト内のメラノソームの形態、数 の異常の有無、および、ケラチノサイトにお けるメラノソームの形態、数について電子顕 微鏡を用いて検討した。尋常性白斑の白班部 ではメラノサイトが消失していたが、TSCの 白斑部ではメラノサイトは正常部と同等に認
められた。しかしながらメラノサイト内のメ ラノソームに関しては、Ⅲ、Ⅳ期のメラノソ ームが認められ、成熟障害は認められなかっ たが、メラノソームの数、分布に関しては、
殆ど認められないものから多数認められるも のまでメラノサイトごとにばらつきが認めら れた。ケラチノサイト内のメラノソームは、
近傍のメラノサイト内のメラノソームを反映 しており、メラノサイトからケラチノサイト への転送障害は認められなかった(平成21-23 年報告書図 2)。
そこで、各患者の同一白斑部より、ランダム に10個のケラチノサイトを選出し1ケラチノ サイトあたりのメラノソームの数を測定した。
その結果TSCの白斑では1患者を除く7例で メラノソームの数が 0 から70 の間でばらつ いていたが、尋常性白斑では3例全例でほぼ 0のところに集束していた。また、正常コン トロールでは、35から50の間ににピークが認 められた(表 1)。
3)コントロールの培養メラノサイトに対す るTh17関連サイトカインの影響の検討;
コントロールのメラノサイトに、1 ng/mlの TNF-α,10 ng/ml のIL-1β, IL-6, IL-17A, TNF-α及びそれぞれ1ng/mlの全てのサイト カインを添加して5日間培養し、メラノソーム の変化を観察した。その結果IL-6のみを添加 した群以外の全ての群でメラノソームの数の 不均一性や、メラノソームの凝集像など、TSC の白斑で認められるのと同様の所見が認めら れた(表 2)。以上より、これらサイトカインが TSC白斑形成に何等かの関与している可能 性が示唆された
(倫理面への配慮)
検査に使用した患者組織は、診断目的で生 検した皮膚組織を利用した。皮膚生検に当た っては被験者に対して、研究の目的と意義、
利益と不利益、個人情報の保護、研究に同意 しない場合でも被験者が治療上の不利益を被 らないこと、医療者側の守秘義務、同意が得 られた後でもいつでも撤回が可能であること 等を含む項目について、あらかじめ十分に説 明し、原則的に直接本人から(未成年者など 動意能力のないものについては代理人から)
同意書による承諾を得た。さらに、検体は研 究の期間中、本学皮膚科にて保存し、被験者 よりの破棄の要請があれば破棄することにし た。検体は個人名が特定できないようにする ため、連結可能匿名化を行った。
D.考察・結論
以上の結果より、メラノサイトそのものが 消失している尋常性白斑と異なり、TSCの白 斑ではメラノサイトは存在するがメラノサイ ト内のメラノソームの形成異常が認められ、
これらの異常を引き起こす原因のひとつとし て、尋常性白斑と同様にTH17関連サイトカイ ンにより引き起こされる生体内の環境がTSC の白斑形成にも関与している可能性が示唆さ れた。今後これらの異常を引き起こす病態に 関してさらに詳細な研究が必要と思われる。
参考文献
1. Jimbow K, Fitzpatrick TB, Szabo G et al. Congenital circumscribed
hypomelanosis: a characterization based on electron microscopic study of tuberous sclerosis, nevus
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F.研究発表(平成24年度)
1. 論文発表
1. Hope Northrup MD, Darcy A Kruger MD PhD on behalf of the International Tuberous Sclerosis Complex
Consensus GroupMari Wataya-Kaneda et al. Tuberous Sclerosis Complex Diagnostic Criteria Update:
Recommendations of the 2012 International Tuberous Sclerosis Complex Consensus Conference Pediatric Neurology 49, 243-254, 2013 2. Darcy A. Krueger MD PhD, Hope
Northrup MD, on behalf of the International Tuberous Sclerosis Complex Consensus GroupMari Wataya-Kaneda et al Tuberous Sclerosis Complex Surveillance and Management: Recommendations of the 2012 International Tuberous Sclerosis Complex Consensus Conference
Pediatric Neurology 49, 255-265, 2013 3. Mari Wataya-Kaneda, Mari Tanaka,
Toshimitsu Hamasaki, Ichiro
KatayamaTrends in the Prevalence of Tuberous Sclerosis Complex
Manifestations: An Epidemiological Study of 166 Japanese Patients PLOS ONE Vol.8 issue5 e63910, 2013 4. Naoki Oiso, Tamio Suzuki, Mari
Wataya-Kaneda, Atsusi Tanemura, Miki Tanioa Ichiro Katayama Guidelines for the diagnosis and treatment of vitiligo in Japan Journal
of Dermatology:40: 344-35 2013 5. Tanaka M, Wataya-Kaneda M,
Nakamura A, Matsumoto S, Katayama I. First left-right comparative study of topical rapamycin versus vehicle for facial angiofibromas in patients with tuberous sclerosis complex. Br J Dermatol Aug 5. doi:
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Tanemura,M.D.,Ph.D.,Yorihisa
Kotobuki, M.D., Ph.D.,Mari W Kaneda, M.D. Ph.D., Daisuke Tsuruta,
M.D.Ph.D., Masamitsu Ishii, M.D.Ph.D., Ichiro Katayama,
M.D.Ph.D.Coexistence of Langerhans cells activation and immune cells infiltration in progressive
nonsegmental vitiligo Journal of Dermatological Science 2013 Sep 13.
doi:pii: S0923-1811(13)00311-3.
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OI SO, H. ARAS E, I KATAYAM CD1a-positive familial cutaneous mastocytosis without germ-line or somatic mutations in c-kit Br J Dermatol 2013 Jul;169(1):201-4. doi:
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8. Okita M, Nakanishi G, Fujimoto N, Shiomi M, Yamada T, Wataya-Kaneda M, Takijiri C, Yokoyama Y, Sunohara A, Tanaka TNEMO gene
rearrangement (exon 4-10 deletion) and genotype-phenotype relationship in Japanese patients with
incontinentia pigmenti and review of published work in Japanese patients. J Dermatol. 2013 Apr;40(4):272-6 9. Yukako MURAKAMI, Mari
WATAYA-KANEDA, Mari TANAKA, Ichiro KATAYAMA A case of tuberous sclerosis complex complicated by segmental neurofibromatosis type 1 Journal of Dermatology 2013:
413-414
10. Wataya-Kaneda M, Tanaka M.
Nakamura A, et al: A novel application of topical rapamycinformulation, an inhibitor of mTOR, for patients with hypomelanotic macules in tuberous sclerosis complex. Arch Dermatol. vol 148(1):138-9 (2012)
11. Tanemura A, Nakano M, Iwasaki T, Yokomi A, Arase N, Wataya-Kaneda M, Miyazaki M, Yakushijin T, Takehara T, Katayama I An extremely rare case of Merkel cell carcinoma metastasized to the duodenum. An extremely rare case of Merkel cell carcinoma metastasized to the duodenum. Eur J Dermatol. vol 22(4):568-70 (2012)
12. Masakazu Kawaguchi; Masahiro Hayashi; Ichidai Murata; Yutaka Hozumi; Noriyuki Suzuki; Yoshiyuki Ishii; Mari Wataya-Kaneda; Yoko Funasaka; Tamihiro Kawakami;
Kazuyoshi Fukai; Toyoko Ochiai;
Chikako Nishigori; Yoshihiko Mitsuhashi,Tamio Suzuki Eleven novel mutations of the ADAR1 gene in dyschromatosis symmetrica