九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
コンピュータ リレイテッド デザイン ノ ホウホウ ニ カンスル ケンキュウ
富松, 潔
Kyushu University Faculty of Design Department of Art and Information Design : Professor : Industrial Design, Interaction Design
https://doi.org/10.11501/3134569
出版情報:Kyushu Institute of Design, 1997, 博士(芸術工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
氏 名・本籍(国籍) 富 松 潔 (福岡県)
学 位 の 種 類 博士(芸術工学)
学 位 記 番 号 乙第4号
学位授与の日付 平成10年2月18日 学位授与の要件 学位規則第4条第2項該当
学位論文題 目 コンピュータリレイテッドデザインの方法に関する研究 審 査 委 員 会 幹事 教 授 古 賀 唯 夫
委員 教 授 川 北 和 明 委員 教 授 藤 村 直 美 論文内容の要旨
コンピュータは情報環境に外在化した情報内容を、ユーザの選択的な求めに応じて可視 化・表示することで、ユーザと情報内容の対話を可能にしたメディアであるといわれてい る。
CRD(Computer Related Design)は、このようなメディア的機能を備えた製品と情報 内容を計画・具体化するために、ハードウェア、ソフトウェアの両面から問題をとらえて 解決するデザインである。すなわち設計・生産の自動化を目的として導入されたCAD/
CAMシステムに対応して、3次元形状データを作成し、有効に活用してハードウェアをデ ザインする方法と、情報処理機能を備えた製品ソフトウェアのデザインを行うものである。
本論文はCRDの領域で実験的研究を行い、デザインプロセスを考察することでCRD の領域におけるデザイン諸要素を抽出・分類し、デザイン諸要素の問題解決を図るデザイ ン作業を構造化することでCRDのデザイン方法を求めたものである。
本論文の構成は5章からなり、第1章総論では本研究の全般について述べた。
第2章は「コンピュータによるデザイン支援」に関する研究である。
CAID(Computer Aided lndustrial Design)のデザイン方法では、3次元形状データ 作成を中核としたデータの利用・展開方法として図形データや画像データの利用による技 術文書作成や、多面体データの利用による 3 次元CGのレンダリングやアニメーションお よび NCデータの利用によるモックアップの自動加工方法を明らかにした。
CGによるデザインシュミレーションでは 3 次元形状データをデザインの創造段階に適 用する具体的方法として、3次元CGを利用して可変的に形状と属性を変化させて表示させ る方法を明らかにした。
CAIDのインターフェースデザイン開発では、デザイナにとって困難とされる3次元 CADによる形状データ作成を容易にするためのインターフェースのデザイン開発方法と して、工業デザイナが 3 次元形状を作成する思考プロセスを考察し、モデル化を図り、形 状を容易に作成する操作フローと必要なコマンドを導きだし、3次元CADシステムのイン ターフェースデザインに適用した。
以上のように 3 次元形状データの有効な活用によるデザイン作業の高度化と効率化、お
よびデザイン作業で使用する 3 次元CADシステムのインターフェースデザインについて デザイン方法を求めたものである。
第 3 章は情報内容の構成と情報環境に外在化した情報内容を検索して表示する機能を備 えた製品、すなわちユーザが情報内容を利用する際のメディア(Retrieval Media )製品デ ザインを対象とした「HCI(Human Computer lnteraction)のデザイン」に関する研究 である。
空間映像による仮想空間とユーザのインタラクションでは、ユーザの移動経路モデル(パ スモデル)を空間のデザインに取り入れることで、写実的である実写映像による空間の表 示方法にユーザの求めに応じて映像を表示するような情報内容に選択的表示機能を与える 方法を明らかにした。
カーナビゲーションシステムの操作性評価では、HCIのデザインにおいて、ユーザが 機器を操作する際の認知的問題を抽出することで、操作性を良くするためのデザイン指標 を明らかにした。
以上のようにメディア製品を介してユーザが接する画像情報空間のデザインと、メディ ア製品のソフトウェアデザインについてデザイン方法を明らかにしたものである。
第4章考察では、「コンピュータによるデザイン支援」と「HCIのデザイン」のデザイ ンプロセスを考察することで CRDの領域におけるデザイン諸要素の抽出・分類を行い、
デザイン諸要素の問題解決を図るデザイン作業を構造化した。
メ デ ィ ア (Retrieval Media) 製 品 は 、 人 間 (Human) が 情 報 環 境 (Infomation Environment)を利用する際に使われるもので、コンピュータによる情報処理機能を備え、
ハードウェア、ソフトウェア両面で構成されている。デザイン諸要素としては、人間の認 知的要素、メディア製品の機能的要素、情報環境の構成要素が、人間を中心とした階層構 造をなしている。
第 5 章結論では、デザイン諸要素の問題を抽出して解決を図るCRDの一方法としてH IERM(Human lnformation Environment Retrieval Media)法を提唱した。 CRD におけるHIERM法ではハードウェアデザインに関して、デザインを支援するための方 法として 3 次元形状データ作成を中核とし、仮説生成−制作−検証からなる創造的なプロ セスにおいてデータを利用・展開するスター型のデザイン方法を明らかにした。ソフトウ ェアデザインではユーザがメディア製品を操作する際の行動が十分理解できていないこと から、ソフトウェアの動作モデルであるプロトタイプを作成することで仮説生成−制作を 行ない、プロトタイプをユーザがテストすることで検証し、仮説モデルとユーザのメンタ ルモデルの一致を図る方法を明らかにした。
HIERM法は人間(H)と情報環境(IE)の間に介在するメディア(RM)をデザ インするための方法であり、CRDのデザインプロセスで最も重要な創造の段階において、
仮説生成−制作−検証を繰り返すことで、製品のソフトウェアとハードウェアを改善する デザイン方法であると確信する。
論文審査の結果の要旨
コンピュータリレイテッドデザインはメディア的機能を備えた製品と情報内容を計画・
具体化するために、ハードウェア、ソフトウェアの両面から問題をとらえて解決するデザ インと言われている。
設計部門にCAD/CAMシステムが導入されるとともにデザインの領域にもデジタル 化されたデザイン情報の出力が要求されるようになり、2次元CADによる製図や3次元C ADによる形状の生成、3次元CGによるシミュレーション、ネットワークによるデザイン データの伝達、静止画像や動画像によるデザイン意図のプレゼンテーションなどデザイン 業務に新しい伝達メディアが必要になってきた。特に電子化された製品デザインにおいて は、利用者にとって操作の分かりやすさとともに、対話を必要とする製品のデザインにお いてはユーザの視点にたってユーザと製品の対話の流れを考え、プログラム開発のための モデルを提示するとともにデザインの重要な要素であることに注目し、ハードウェアデザ インの方法としてのCAID(Computer Aided Industrial Design)とソフトウェアのデザ イン方法としてのHCI(Human Computer Interaction)を統合したコンピュータリレイ テッドデザインの一方法としてHIERM(Human lnformation Environment Retrieval Media)法の構築を試みたものである。
ハードウェアデザインとしての「コンピュータによるデザイン支援」では 3 次元形状デ ータの活用によるデザイン作業の高度化と効率化、デザイン作業で使用する 3 次元CAD システムのインターフェースデザインについて事例研究をおこない、CAIDのデザイン 方法では 3 次元形状データ作成を中核とした方法、CGによるデザインシュミレーション では 3 次元形状データをデザインの創造段階に適用し、CAIDのインターフェースデザ イン開発では、CAIDによる形状データ作成を容易にするためのインターフェースデザ インを求め、これらを総合し「コンピュータによるデザイン支援」に関するデザイン要素 と問題解決をはかる方法をもとめている。ソフトウェアデザイン方法としての「コンピュ ータを対象としたデザイン」即ちHCI(Human Computer Interaction)ではメディアを 介した情報環境とのインタラクションデザインおよびインターフェースデザインを事例と して、パノラマ映像とユーザのインタラクションでは情報の写実性と情報の選択による対 話性を考慮した表示デザイン、カーナビゲーションシステムの操作性評価ではパフォーマ ンス分析、プロトコール分析、主観評価法による製品評価をおこないこれらを総合し「コ ンピュータを対象としたデザイン」に関するデザイン要素と問題解決をはかる方法をもと め、それから「スター型のコンピュータ支援デザイン方法」と「プロタイピングとユーザ テスティングによるデザイン法」を導きだし、これらを統合した総合的デザイン方法とし たHIERM(Human Information Environment Retrieval Media)法を提唱している。
このHIERM法は今後工業デザインの領域で有効なデザイン方法と為りうるものと思わ れ、本論文は博士論文として適当であると言える。
よって、本論文が博士(芸術工学)の学位を得るに値するものであることを本委員会は
認めた。
学力の確認の結果の要旨
公開発表会は工業デザイン関係、コンピュータグラフィック関係の研究者および家庭電 気製品メーカーのデザイナーなどの出席のもとに開催された。
コンピュータリレイテッドデザインに関する研究の全世界での研究数、デザイン領域に おける三次元CAIDの今後の向かうべき方向、コンカレントエンジニアリングのなかで 三次元CADがどのように機能するか、パノラマ映像による実験のHIERM法の中での 位置づけなどについて活発な質疑があり、いずれについても著者から納得のいく説明がな された。
学力の確認においては 3 名の審査委員からHIERM法を導きだすために行った実験法 のオリジナリティに関する質疑やこの方法の今後のデザイン領域での活用の可能性などに ついて質疑がなされ、その可能性に期待がもたれ、製品デザインに貢献できるものと判断 した。
よって、審査委員合議の結果、合格と決定した。