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規制下の国内線航空運賃に関する一考察

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規制下の国内線航空運賃に関する一考察

著者 鶴田 雅昭

雑誌名 同志社商学

巻 63

号 5

ページ 686‑704

発行年 2012‑03‑15

権利 同志社大学商学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012868

(2)

規制下の国内線航空運賃に関する一考察

鶴 田 雅 昭

はじめに

Ⅰ 分析の方法

Ⅱ 長距離路線

Ⅲ 中距離路線

Ⅳ 短距離路線 おわりに

は じ め に

規制下の航空運賃は,国際線航空運賃がIATA(国際航空運送同盟)の合意にもとづ く協定運賃であるのに対し,国内線航空は監督官庁の旧運輸省(現,国土交通省)によ る許認可運賃であった。国内線航空運賃が許認可運賃であったのは,航空事業が鉄道そ の他の交通事業や電気事業・ガス事業等と同様に,公益事業の一つに位置づけられてい たことに起因する。

こうした公益事業では運賃・料金の算出で原価主義がとられていた。原価主義とは,

費用に一定割合の収益を上乗せしたものを原価とし,各企業は事業活動を通じてこれを 回収するというものであった。公益事業で原価主義が採られた背景には独占的経営の問 題が存在した。電気事業・ガス事業では地域分割のもとにそこで独占的に事業展開した のに対して,交通事業とりわけ鉄道業の一部では並行して営業されていたため競争的側 面も見られたが,沿線という視角から見ると旅客の棲み分けが行われており,独占的経 営であったと言えよう。

しかし,航空事業に限って見ると,既に昭和30年代前半期には国内線における一部 幹線で2社運航が始まっていた。「45・47体制」では,航空3社に対して事業の棲み分 けが行われ,日本航空(JAL)は国際線と国内幹線,全日空(以下,ANA と略す)は 国内幹線・主要ローカル線および国際チャーター便の運航,新たに誕生した東亜国内航 空(以下,TDAと略す)は主にローカル線が割り当てられ,それぞれ独占的に運航し た。

ところで,規制下の国内線航空運賃を対象とした考察は,拙稿「航空運賃とその変化 について −全日空を事例として

1

−」のほか,これまでの研究成果として公益事業の視

────────────

1 拙稿「航空運賃とその変化について −全日空を事例として−」(『大阪明浄大学紀要』5号),2005 ! 322(686

(3)

角から航空運賃問題への考

2

察,規制下の航空運賃政策という視角からの考

3

察,規制緩和 と運賃政策という視角からの考

4

察,情報公開と運賃問題という視角からの考

5

察,法律の 視角から航空政策や航空運賃への考

6

察等が挙げられる。

本稿は,こうした規制下における国内線航空運賃の考察を課題としている。本稿で は,一般に「45・47体制」と呼ばれた,航空3社体制下にあった1974年度,76年度,

78年度,80年度月,87年度おけるTDA路線とANA路線を考察の対象として,両社 の租税および特別料金を含む普通運賃を運航距離で除して1 Km当たりの運賃率を求 め,これを比較することで国内線航空運賃ついて考察する。

Ⅰ 分析の方法

規制下における航空事業の運賃改正は次の手順で行われる。最初に,航空各社が自社 で運行する各路線の新運賃を算出し,これを監督官庁である旧運輸省(現,国土交通 省)に提出する。旧運輸省は航空各社から出され新運賃案の可否について,運輸大臣名 をもって運輸政策審議会に対して諮問する。運輸政策審議会は新運賃の可否を審議し,

その結果を運輸大臣に答申する。その結果が可であれば,新運賃賃として認可されるの である。こうした手順は,鉄道やバスなど交通事業でも同様であった。

ところで,航空事業で各路線運賃を決定する場合に考慮すべきものとして,路線需要

・使用機材のほか,旧国鉄路線と並行する場合には当該路線における運賃面での棲み分 けなどを挙げることができる。まず路線需要であるが,旧国鉄との競争関係の変化が大 きな変化もたらしたことがあった。その事例として,新幹線の開通が上げられる。1960 年代中頃まで,東京・名古屋線は全日空では高収益路線であったが,64年に東海道新 幹線が開通し,旅客が新幹線にシフトしたため,需要が大きく減少した。同様の現象は 1980年代前半に東北新幹線部分開通により,東京・仙台線でも見られた。こうした旅 客需要の変化に対して,航空各社は便数を削減させて利用率の低下を抑制した。繁忙期 と閑散期の格差が大きい場合にも,閑散期には同様の措置が採られている。

次に,使用機材面では以下のことが言える。輸送効率についてジェット機とプロペラ 機を比較すると,両機材は輸送効率が大きく相違する。また,飛行機は燃料消費の面で

────────────

! 3

2 岡野行秀『航空運賃をめぐる諸問題』(航空政策研究会編,航政研シリーズNo.87)197510 3 藤井弥太郎『航空運賃を考える −運賃懇の議論めぐって−』(航空政策研究会編,航政研シリーズ

No.231)198712

4 丸山博『国内線幅運賃制度の導入について』(航空政策研究会編,航政研シリーズNo.328)19961

5 山内弘隆『航空法改正に伴う情報公開と運賃問題について −航空輸送サービス懇談会の報告を踏まえ て』(航空政策研究会編,航政研シリーズNo.370)199911

6 古城誠『日本の航空運賃規制』(航空政策研究会編,航政研シリーズNo.328)20034

規制下の国内線航空運賃に関する一考察(鶴田) 687)323

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以下の特徴がある。即ち,離陸から決められた高度まで上昇する数分間と,空港に向け て降下する着陸前の数分間は大きなエンジン質力を必要とするので,決められた高度を 一定の速度で飛行する時と比べて燃料の消費率が大きい。このため長距離路線は短距離 路線と比べて燃料費が割安となる。同様のことは飛行高度についても言える。一定の速 度で飛行する高度と燃料消費率は反比例の関係にある。飛行高度が低ければ空気の抵抗 が大きいため燃料消費が多くなり,飛行高度が高ければ空気の抵抗も小さいため燃料消 費が少ない。これらを踏まえると,運航高度が高く速度も速いジェット機は,運航高度 が低く速度も遅いプロペラ機よりも,輸送効率に対する燃料消費率が小さい。

いまひとつ,旧国鉄運賃との棲み分けについては,航空が再開された1950年代以降 における国内線航空と旧国鉄の運賃格差の変化から読み取ることができる。70年以前 は両者間の運賃格差が比較的大きいものであった。新幹線が開通した60年代中頃でも,

東京・大阪間の航空運賃は新幹線の2等運賃・料金と比べて2倍を上回った。両者の運 賃格差は第1オイルショック以降には急激に是正され,1970年代末期には拮抗するま でとなったが,逆転するまでには至らなかった。

70年代後半は国内線でボーイング747型やロッキードL 1011型などの広胴体機が普 及した時期にあたる。ANAが導入したL 1011型やボーイング747型は一度に300人か ら500人程度の旅客輸送を可能とした。同社が運賃改正時に際し,旧国鉄との棲み分け を考慮せず,航空運賃だけを対象として,新運賃の算出で基準とするイールド(会計学 では損益分岐点に相当する)を高く置けば,国内線航空と旧国鉄の運賃・料金がジェッ ト機路線で逆転したかも知れない。

航空会社が新運賃の算出で基準とするイールドを高く置かなかった理由の一つとし て,運航コストが高いプロペラ機路線運賃とのバランスの問題が存在し,加えて旧運輸 省における新運賃への諾否の問題を考慮されたものと見てよい。或いは,航空会社が新 運賃における路線全体の収支バランスを配慮したものであったのかも知れない。これら は旅客利用率の問題である。航空運賃だけを対象とし,プロペラ機路線も含めてイール ドを一定基準に置けば,全路線で1 km 当たりの運賃率が均衡するため,ジェット機路 線の運賃が上昇し,プロペラ機路線の運賃が低下する。その反面で,一般に内部補助と 呼ばれる黒字路線の収益による赤字路線の損失補填も大きく変化し,旧国鉄との棲み分 けに何らかの影響を与えることになったであろう。いずれにせよ,路線で使用する機材 の選択は旅客需要の大きさが,路線の便数は座席利用率の高さが決定要因であったと思 われる。

以上を踏まえると,航空運賃の分析では旅客需要よりも座席利用率が重要であること がわかる。そこで,本稿では,TDAおよびANAの各路線において 運賃

運航距離により1 km当たり運賃率を算出し,次にジェット機路線とプロペラ機路線に分け,それぞれに

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おける1 km 当たり運賃率の平均値を算出した。これら各路線の数値をもとに,プロペ ラ機路線では

当該路線1 km当たり運賃率

全路線の1 km 当たり運賃率平均値×プロペラ機全路線1 km あたり運賃率 全路線の1 km当たり運賃率平均値 により指数化した。ジェット機路線も同様の方法で指数値を算出した。

こうして求めたANA とTDAの各路線における運賃率とその指数値を,1,000 km以 上,1,000 km未満500 km以上,500 km未満の三つに分け,1,000 km以上を長距離路 線,1,000 km未満500 km以上を中距離路線,500 km未満を短距離路線とした。つい で,距離区分別・各年度別に,全路線の運賃率とその指数値の平均および,プロペラ機 路線ならびにジェット機路線の運賃率とその指数値の平均を比較し考察する。

Ⅱ 長距離路線

第1表は,一般に「45・47」体制と呼ばれる,航空各社会社がいまだ旧運輸省の規制 下にあった1974年度・76年度・78年度・80年度・87年度における,TDAおよびANA 国内線で運航距離が1,000 kmを超える長距離路線について,各路線の1 km 当たり運賃 率とその指数値をプロペラ路線・ジェット機路線別に示したものである。

まず1974年度のTDAから見ると,同社はプロペラ機3路線とジェット機1路線の4 路線しかない。1 km 当たり運賃率では,全路線の平均が25.66円であったのに対し,

長距離路線の平均値は21.38円と4.13円下回っている。プロペラ機路線ならびにジェッ ト機路線でも同様の傾向が見られる。このなかで東京・旭川線はプロペラ機路線であり ながら,1 km当たりの運賃率で20.28円と低く,指数値も全路線の平均指数値よりも20

%下回る0.80であった。プロペラ機路線では東京・帯広線が22.39円(0.89),東京・

釧路線が運賃率23.46円(0.93)である。ジェット機路線は唯一幹線の東京・福岡線だ けであった。この東京・福岡線はJALを含めた3社が運航しており,一路線一運賃の 原則に従って運賃が統一されていた。同路線の運賃率は19.38円(0.69)であった。

他方,ANAはプロペラ機では東京・長崎線1路線とジェット機7路線の8路線が運 航されていた。東京・長崎線の19.47円(0.97)は,プロペラ機全路線の平均24.39円

(1.22)に対して運賃率で5円程度低く,指数値で0.25低い。ジェット機路線では東京

・沖縄線の17.27円(0.69)が最も低く,名古屋・沖縄線17.69円(0.70),大阪・沖縄 線18.52円(0.74),東 京・福 岡 線19.38円(0.77),東 京・鹿 児 島 線19.82円(0.79),

名古屋・札幌線20.99円(0.84),大阪・札幌線22.95円(0.91)の順に続いている。

TDAとANA を比較すると,プロペラ機の平均賃率 はTDAが22.04円 でANAの

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(6)

19.47円よりも2.57円高い。反対にジェット機路線ではTDAがローカル線よりも運賃 が若干低い幹線であったため,ANAの平均値よりも運賃率では0.14円,指数値では0.09 小さい。

1976年度のTDA路線は,東京・釧路線のジェット化によってプロペラ機路線が東京 を起点とする旭川線および帯広線の2路線に減少した。旭川線は運賃率20.28円(指数

値0.78),帯広線は同じく22.39円(0.84)であった。ジェット機路線は,先の東京・釧

路線のほか,TDAがANA 路線に後発参入した東京・長崎線および東京・鹿児島線の2 路線を加え,4路線に増加した。各路線の運賃率とその指数は,東京・福岡線19.98

(0.68)と東京・長崎線20.00円(0.68)が最も低く,東京・鹿児島線20.36円(0.69),

東京・釧路線で24.01円(0.82)であった。運賃率は全路線の平均値27.25円に対して 長距離路線は21.17円と6.21円低い。プロペラ機路線の平均値は全路線の28.01円に対 して長距離路線では21.33円と6.68円低い。ジェット機路線は航空機騒音公害対策費と して600円の特別料金が課されたため運賃の上昇が見られたが,運賃率では全路線の 25.25円に対して4.16円低い21.09円であった。

ANAでは,TDAが後発参入した東京・長崎線でジェット機への転換が見られ,反対 に同社がTDA路線に後発参入した東京・釧路線もジェット機で運航した。このため長 距離路線は全線がジェット機路線となった。各路線の運賃率および指数値は,東京・沖 縄 線17.63円 (0.73), 名 古 屋 ・ 沖 縄 線18.10 円 (0.75), 大 阪 ・ 沖 縄 線 18.99円

(0.79),東京・鹿児島線19.98円(0.83),東京・長崎線20.00円(0.83),名古屋・札幌

1表 全日空および旧東亜国内航空の長距離路線における1 km当たり運賃

出典:JNR編「時刻表」19753月,773月,793月,813月および,883月の各号をもとに作成する。

1:上記運賃は10% の通行税および,ジェット機路線は航空機公害対策としての特別料金を含む。

2:斜文字は旧東亜国内航空路線,太文字のジェット機路線では特別料金を含む。

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線21.52円(0.89),大阪・札幌線23.44円(0.97),東京・釧路線24.01円(1.00)に順 に続いている。運賃率は全路線の平均値22.30円に対して長距離路線では20.45円と1.85 円低い。ジェット機路線だけで見ると,全路線の平均値20.61円に対し長距離路線は

20.45円であり,運賃率では格差はない。

TDAとANA の運賃格差を比較すると,全路線に対するプロペラ機路線の比率でい

まだ70% を超えるTDAは,プロペラ機・ジェット機ともに全路線平均27.25円と長距

離路線の平均21.17円との格差が6.08円もの開きがある。しかし,全路線でプロペラ機 が占める割合が40% 程度でしかないANA は,全路線平均と長距離路線平均の格差が 1.8円程度と小さく,ジェット機の全路線平均と長距離路線平均では格差が見られない。

1978年度のTDAは新たに,プロペラ機で大阪・徳之島線,ジェット機で福岡・仙台 線が加わり,プロペラ機3路線とジェット機5路線の8路線となった。プロペラ機の運 賃率は,既存の2路線では変化がなかったが,新路線が21.93円であったため,平均値 は78年度に対して運賃率で21.53円と0.2円,指数値も0.85と0.05押し上げた。ジェ ット機路線も同様に運賃率で21.09円から21.15円に上昇し,指数値も0.72から0.77 に増加している。一方のANAは路線数,各路線の運賃率とその指数ともに1976年度 と変化がない。

1980年度を見ると,TDAはプロペラ機路線で東京・女満別線が加わり,プロペラ機 4線とジェット機5線の9路線となった。各路線の運賃率とその指数値は,新路線の東 京・女満別線では運賃率が26.40指数値が0.82であった。既存路線は航空運賃の改正に

規制下の国内線航空運賃に関する一考察(鶴田) 691)327

(8)

よって運賃がプロペラ機路線では12% から20%,ジェット機路線では20% から23%

の範囲で引き上げられ,これに伴って各路線の運賃率が上昇した。しかし,指数値では 低下した路線もある。例えば,プロペラ機路線で運賃の上昇が12% と低い大阪・徳之 島線では指数値が0.87から0.76に低下し,ジェット機路線でも長距離路線全線で若干 程度の低下が見られる。

ANAはジェット機路線で新たに仙台・沖縄線が加わり,10路線に増加した。仙台・

沖縄線は運賃率が20.19円,指数値が0.70であった。既存路線の運賃は68年度と比べ

て15% から30% 値上げされ,路線単位で指数値を見ると若干程度上昇あるいは低下し

ている。そのなかで,沖縄への各路線は札幌への各路線に比べて運賃率の変化が小さ く,指数値も低い。これは沖縄への各路線運賃が相対的に低く抑えられていたことを示 している。

TDAとANA を比較すると,運賃率の平均では,ジェット機路線だけを見てもTDA が1.6円高い。その理由はANAにおける沖縄への各路線運賃が相対的に低いところに ある。長距離路線で既存全路線に対する,沖縄への各路線を除

7

く運賃値上げ率平均値の 比較では,TDAの20% がANA の22% より低

8

い。これは航空運賃が,航空各社のコ スト構造などを踏まえた政策的運賃であったことを示唆しているのかも知れない。

最後の1987年度は日本で航空規制緩和が始まる直前の時期でもある。また,87年度 は80年度と比べて航空運賃が長距離路線では平均値で13% 値上げされている。まず TDAから見ると,東京・女満別および帯広がジェット化され,長距離全路線がジェッ ト機路線となった。TDAでは各路線の運賃が9% から20% の範囲で値上げされてお り,その平均値は15% であった。しかし,運賃値上げに伴う指数値の変化を見ると,

既存の全路線で0.05から0.08の範囲で低下している。指数値の変化が0.05低下した路 線として福岡・仙台線,東京・女満別および旭川の3路線,0.08低下した路線として東 京・福岡線が挙げられる。

ANAを見る

9

と,新路線として札幌・広島線,広島・沖縄線および大分・沖縄線の3 路線があり,路線数が13路線に増加している。これら新路線の運賃率と指数値は,広 島・札 幌 線 で28.08円(0.86),広 島・沖 縄 線25.68円(0.79)大 分・沖 縄 線 で28.10

(0.86)であった。既存路線で指数値だけを見ると,東京から長崎と鹿児島および名古 屋・札幌の3路線では若干の上昇が見られるが,その他の路線では0.03までの範囲で 低下している。

TDAとANA を比較すると,運賃率平均でTDAの29.68円はANAの26.91円に対

────────────

7 沖縄線の優遇措置については,全日空30年史編集委員会編『限りなく大空へ・資料編 −全日空の30 年−』全日本空輸株式会社(以下,全日空30年史資料編と略す),昭和583月,176頁を参照。

8 同上,103−4頁を参照。

9 同上,103−4頁を参照。

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して2.77円高いが,指数値では0.73に対して0.84とTDAが0.11低い。この原因は両 社の全路線におけるジェット化率の違いにある。

Ⅲ 中距離路線

第2表は,先の第1表と同様に,運航距離で500 km 以上1,000 km未満を中距離路線 とし,そこでのTDAとANA における各路線の運賃率とその指数値にいて,プロペラ 路線およびジェット機路線別に示したものである。

1974年度から見ると,TDAはいまだプロペラ機9路線とジェット機2路線の11路 線しかない。しかも,運航距離が比較的長い路線でジェット化が集中し,プロペラ機路 線は運航距離が短い路線に集中しているところに特徴がある。運賃率では,全路線の平

均が25.66円であるのに対し,中距離路線の平均値は23.25円と2.41円下回っている。

この数値は先の長距離路線と比べて若干高い程度であった。プロペラ機路線の運賃率と その指数値は,東京・南紀白浜線22.08円(0.87)が最も低く,鹿児島・徳島線22.36 円(0.88),東京・青森線22.61円(0.89),鹿児島・徳之島線23.77円(0.94),大阪・

新潟線24.48円(0.97),宮崎・岡山線および鹿児島・沖永良部線で25.00円(0.99)と いう順に続き,東京・徳島線25.27円(1.00)が最も高い。ジェット機路線では幹線の 東京・札幌線が19.20円(0.68),東京・長崎線が20.15円(0.72)であった。

ANAはプロペラ機11路線とジェット機21路線の32路線を運航している。各路線の 運賃率とその指数値を見ると,プロペラ機路線では東京・小松・福井線16.86円(0.84)

が最も低く,東京・富山線18.18円(0.90),東京・福井・小松線18.48円(0.92),東 京・広島線18.82円(0.94),同・山口線18.98円(0.94),同・秋田線19.57円(0.97),

同・岡 山 線20.03円(0.99),大 阪・長 崎 線21.00円(1.04),東 京・米 子 線21.18円

(1.05),同・高知線21.63円(1.07),同・高松線22.20円(1.10)の順に続いた。

ジェット機路線では,東京・宮崎線の15.82円(0.63)が中距離路線で最も低く,東 京・小松線17.99円(0.72),幹線の東京・大阪線18.49円(0.74)および大阪・福岡線 18.65円(0.74),大阪・熊本線18.67円(0.74),名古屋・福岡線18.76円(0.75),福岡

・沖縄線19.02円(0.76),東京・函館線19.11円(0.76),同・札幌線19.20円(0.76),

名古屋・鹿児島線19.23円(0.77),大阪・鹿児島線の19.40円(0.77),名古屋・長崎 線19.53円(0.78),東京・松山線19.83円(0.79)等が運賃率で20円を下回っていた。

運賃率で20円を超える路線では,名古屋・大分線20.00円(0.80),東京・熊本線20.34 円(0.81),鹿児島・沖縄線20.73円(0.83),名古屋・宮崎線21.39円(0.85),福岡・

沖縄線21.99円(0.88),東京・宮崎線22.25円(0.89),仙台・札幌線22.52円(0.90),

新潟・札幌線22.88円(0.91)の順に続いている。

規制下の国内線航空運賃に関する一考察(鶴田) 693)329

(10)

TDAとANA を比較すると,運賃率格差では中距離全路線の平均値でTDAの23.25 円はANA の19.78円に対して3.47円高く,プロペラ機路線になるとTDAの24.05円 はANAの19.73円より4.32円も上回っている。しかし,ジェット機路線ではTDAの

2表 全日空および旧東亜国内航空の中距離路線における1 km当たり運賃

出典:JNR編「時刻表」19753月,773月,793月,813月および,883月の各号をもとに作成する。

1:上記運賃は10% の通行税および,ジェット機路線は航空機公害対策としての特別料金を含む。

2:斜文字は旧東亜国内航空路線,太文字のジェット機路線では特別料金を含む。

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19.68円はANA の19.80円よりも若干低い。その原因はTDAのジェット機路線がコス ト面で有利となる運航距離が比較的長い路線に集中したことにある。

1976年度のTDA路線は,プロペラ機路線では東京・徳島線,福岡・奄美大島線の2

規制下の国内線航空運賃に関する一考察(鶴田) 695)331

(12)

路線で運航が停止されていたが,大阪・青森線26.62円(1.00),同・種子島線25.77円

(0.97),同・奄美大島線24.57円(0.93),同・秋田線24.24円(0.91),東京・高松線22.20 円(0.84)の5路線が新たに加わり,12路線に増加した。ジェット機路線では東京・三

沢線25.53円(0.86)が加わり,3路線に増加している。指数値の平均値を見ると,プ

ロペラ機路線では74年度に対して大差がないものの,新規参入の運賃が割高であった ため,既存の各路線では若干程度の低下が見られる。ジェット機路線では航空機騒音公 害対策費として600円の特別料金が課されたこと,東京・三沢線の運賃が割高であった ことから,74年度の19.68円に対して2.38円上昇している。

ANAでは,プロペラ機路線は新たに大阪・仙台線21.49円(1.07)が加わり,その反 面で大阪・長崎線のジェット化と東京・小松間および福井間運航が停止によって,9路 線に減少した。ジェット機路線では熊本・沖縄線20.90円(0.87)および大阪・長崎線

21.67円(0.90)の2路線が加わり,23路線に増加した。こうしたなかで,プロペラ機

の運賃に対する変更はなかったが,ジェット機については先述のように特別料金が課さ れたため,ジェット機路線で運賃率が上昇し,指数値も若干程度の増加している。

TDAとANA を比較すると,運賃率の平均値ではプロペラ機路線,ジェット機路線 ともにTDAがANAよりも高い数値を示しているが,その格差でプロペラ機路線の 4.00円はジェット機路線の1.29円よりも高い。その原因はTDAのプロペラ機による新 路線の運賃が割高であっことに求められる。

1978年度を見ると,TDAの路線構成は,プロペラ機路線で鹿児島・与論島線25.61 円(1.01)と函館・仙台線23.74円(0.94)の2路線が加わり,15路線に増加した。ジ ェット機路線でも東京・熊本線20.95円(0.76),同・函館線19.83円(0.72),名古屋

・長崎線20.27円(0.74),同・仙台線19.83円(0.72)などANA 路線への後発参入ほ か,大阪・新潟線のジェット化によって,8路線に増加した。大阪・新潟線は25.52円

(0.93)であった。運賃率とその指数値を見ると,プロペラ機路線およびジェット機路 線ともに運賃率では変化がないものの,指数値では若干程度の増加が見られる。

ANAでは,プロペラ機路線は路線数および各線の運賃率では変化がないのに対し,

指 数 値 が 大 幅 に 増 加 し て い る。他 方,ジ ェ ッ ト 機 路 線 は,長 崎・沖 縄 線20.00円

(0.83),東京・大分線20.81円(0.86),宮崎・沖縄線21.05円(0.87),小松・福岡線21.69 円(0.90),名古屋・長崎線20.27円(0.84),名古屋・仙台 線19.83円(0.82),同・新 潟線22.70円(0.94)など7路線が加わ

10

り,30路線に増加している。既存路線では,プ ロペラ機路線・ジェット機路線の運賃率は変化がない。しかし,指数値ではジェット機

────────────

10 1970年代末期の急激なジェット機路線の背景には,航空運賃と旧国鉄運賃との間に存在した格差が是 正されたことにある。これについては「国内長距離輸送における鉄道から航空へのシフト −全日空路 線を中心として−」(『大阪明浄大学紀要』第6号),20063月を参照

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(13)

路線は変化がないのに対し,プロペラ機路線は若干程度低下している。

TDAとANA を運賃率とその指数値で比較すると,プロペラ機路線ではTDAの運賃 率平均24.34円はANA運賃率平均20.24円よりも3.7円高い。しかし,ジェット機路 線ではTDAの21.57円に対してANA が20.68円と格差は0.89円でしかなく,76年度 の1.36円よりも是正されている。

1980年度には航空運賃が平均で12.3% 上昇していた。TDA路線は,プロペラ機路線 では東京・出雲線と鹿児島・岡山線2路線の参入が見られるが,函館・仙台線と鹿児島

・徳之島線2路線でのジェット化および,宮崎・岡山線の撤退などにより,13路線に 減少した。新たに運航が開始された路線の運賃率とその指数値は,東京・出雲線が25.90 円(0.80),鹿児島・岡山線が26.92円(0.83)であった。既存路線では航空運賃の値上げ により,運賃率が平均値で4.5円程度上昇したものの,指数値では大きな変化がない。

ジェット機路線では,ANA路線への後発参入として大阪・鹿児島線25.52円(0.76)

があり,先述の函館・仙台線および鹿児島・徳之島線のジェット化などにより,12路 線に増加した。既存路線ではプロペラ機路線と同様に運賃率の平均で4.8円程度上昇し たが,指数値では大差がない。

ANAでは,プロペラ機の路線数は東京・鳥取線29.47円(1.22)の運航を開始してい たが,東京・山口線,同・広島線および大阪・仙台線3路線のジェット化などにより,

7路線に減少した。プロペラ機路線は運賃率で同社運賃に対する平均21.4% の値上げに より,5.72円の上昇が見られるものの,指数値の平均では0.18減少している。ジェッ ト機路線では,名古屋・新潟線から撤退しているが,東京・山口線と同・広島線ともに 24.31円(0.84),大阪・仙台線27.45円(0.95)のジ ェ ッ ト 化,名 古 屋・函 館 線26.30 円(0.91)の運航開始などにより,33路線に増加した。既存路線では,航空運賃の値上 げに起因し,運賃率が平均で4.87円,指数値でも若干程度の上昇が見られる。

TDAとANA を運賃率などで比較すると,プロペラ機路線では,TDAの運賃率平均 値28.58円はANA の運賃率平均値26.12円よりも2.46円高いが,指数値ではANAの 1.08に対してTDAの0.88が0.2低い。この平均値での運賃率と指数値の逆転は,TDA がANAよりも運賃で割高であったこと,いまだ短距離路線のウエイトが大きいことに 起因していると思われる。

1987年度を見ると,TDAのプロペラ機路線は東京・出雲線のジェット化によって1 路線減少し,12路線となった。ジェット機路線では,東京・函館線で撤退が見られた が,先述の東京・出雲線ジェット化31.49円(0.78)のほか,新たに大阪:山形線31.62 円(0.78),名古屋:花巻線32.71円(0.81)等が開設され,13路線に増加した。

ANAでは,プロペラ機路線は東京・秋田線,同・米子線,同・鳥取線,同・高知線 など4路線のジェット化により,3路線に減少している。反対に,ジェット機路線で

規制下の国内線航空運賃に関する一考察(鶴田) 697)333

(14)

は,先の4路線のほか,新たに東京・鳥取線36.99円(1.16),名古屋・秋田線34.66円

(1.09),小松・仙台線35.07円(1.10),成田・大阪線27.32円(0.86),名古屋・新潟33.51 円(1.05)などが運航されており,41路線に増加している。

TDAとANA を運賃率の平均値で比較すると,中距離路線全体ではTDAが32.90 円,ANA が29.97円で,2.93円の格差があった。プロペラ機路線に限ると,TDAの34.57 円に対してANAが32.20円で,その格差は2.37円でしかない。この格差は80年度の 2.87円と比べて若干減少している。ジェット機路線では,中期距離路線における両社間 の格差が1.54円と更に小さくなる。これらから TDAとANA の運賃格差が是正されて いたことが分かる。

Ⅳ 短距離路線

第3表は,先の第1表・第2表と同様に,TDAとANAの国内線における500 km以 下の路線とその運賃率および指数値をプロペラ機路線・ジェット機路線別に示したもの である。

1974年度のTDAは,プロペラ機26路線およびジェット機4路線の30路線を運航し ている。プロペラ機路線から見ると,その運賃率と指数値は,札幌を起点とする路線 で,女 満 別 線23.12円(0.91),稚 内 線28.21円(1.21),釧 路 線25.43円(1.01),帯 広 線33.33円(1.33),函館線32.96円(1.32),秋田線24.76円(0.98)などがある。大阪 を起点とする路線では,松本線19.00円(0.75),白浜線26.42円(1.05),隠岐線27.38 円(1.08),出 雲 線24.15円(0.96),広 島 線24.06円(0.95),山 口 線19.81円(0.78),

徳島線42.73円(1.69),高知線22.02円(0.87)などを運航している。福岡を起点とす る路線では,広島線19.33円(0.76),高 松 線27.94円(1.11),松 山 線28.62円(1.13)

などがある。

このほか,東京・花巻 線24.02円(0.95),岡 山・松 山 線25.65円(1.01),宮 崎・松

山線20.34円(0.80),を運航していた。また,九州地域の離島線として,鹿児島から種

子島線27.61円(1.09),奄美大島線23.26円(0.92),奄美大島から沖永良部線29.70円

(1.19),徳之島線28.18円(1.11),喜界島線54.29円(2.15)などが見ら れ る。他 方,

ジェッ ト 機 路 線 で は,東 京・新 潟 線24.04円(0.86),福 岡・宮 崎 線22.99円(0.82),

福岡・鹿児島線31.30円(1.12),大分・鹿児島線27.83円(1.00)など4路線を運航し ていた。

ANAは,プロペラ機23路線とジェット機5路線の28路線を運航している。プロペ ラ路線から見ると,その運賃率と指数値は,東京を起点とする路線で仙台線18.29円

(0.91),八丈島線22.75円(1.13),三宅島線27.23円(1.35),大島線27.78円(1.38),

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(15)

大島・三宅島間30.00円(1.49)などがある。大阪を起点とする路線では,高松線31.58 円(1.57),松 山 線17.68円(0.88),高 知 線22.02円(1.09),鳥 取 線30.11円(1.49),

北九州線17.49円(0.87)を運航している。名古屋からは八丈島線28.99円(1.44),白 浜線22.48円(1.12),小松線39.26円(1.95)のほか,名古屋・小松・福井線の名古屋

・福井間26.90円(1.33),同小松・福井間37.84円(1.88)がある。九州地域の路線で は,鹿児島・奄美大島線23.26円(1.15),奄美大島・沖縄線22.19円(1.10),高知・

宮 崎 線23.76円(1.18),熊 本・宮 崎 線22.98円(1.14),長 崎・鹿 児 島 線24.18円

(1.20),奄美大島・沖永良部線29.70円(1.47),長崎・福江線32.17円(1.60),福岡・

壱 岐 線42.86円(2.13)が 見 ら れ る。他 方,ジ ェ ッ ト 機 で は,東 京・山 形 線18.46円

(0.73),同・名古屋線14.73円(0.58),大阪・大分線18.94円(0.75),小松・新潟線22.79 円(0.90)の5路線であった。

両社の運賃率および指数値の平均を比較すると,TDAとANAの運賃率はプロペラ 機路線の運賃率で大差はないが,ジェット機路線ではTDAが6.85円高い。指数値では プロペラ機路線でANAが0.26,ジェット機路線ではTDAが0.18上回っている。これ らからは,TDAでは全路線に占めるプロペラ機路線の比率が大きく,そこでの運賃も 相対的に割高であったことを示唆している。

1976年を見ると,TDAのプロペラ機路線は,札幌・青森線30.79円(1.16),鹿児島

・屋久島線25.25円(0.95)2路線で参入があり,その反面で札幌・釧路線および福岡

・松山線2路線のジェット化,福岡・広島線,岡山・松山線,大阪・白浜線3路線の運 航停止により,23路線に減少した。他方,ジェッツト機路線では先述の2路線の参入 および,札幌・三沢線32.35円(1.10)の路線開設により,7路線に増加した。ジェッ ト化された2路線の運賃率と指数値は,札幌・釧路線が25.43円(0.86),福岡・松山線 が30.86円(1.05)であった。

ANAでは,プロペラ機路線は福岡・対馬線30.11円(1.02)の新規参入が見られる が,東京・仙台線19.76円(0.82),大阪・松山線19.26円(0.80)2路線のジェット化,

名古屋・福井間,奄美大島・沖永良部線の運航停止により,19路線に減少した。ジェ ット機路線は先述の2路線が参入し,7路線に増加した。

TDAとANA における運賃率の平均値を比較すると,TDAはANAに対してプロペ ラ機路線では,全路線平均での格差3.35と比べて短距離路線平均での格差1.99はANA よりも1.36小さい。ジェット機路線では,全路線平均での格差が4.64となり,プロペ ラ機路線の格差よりも大きく,短距離路線平均との比較ではその格差が8.55へと拡大 する。これは短距離路線におけるジェット機運賃ではTDAがANAよりも大きく上回 っていたことが分かる。

1978年を見ると,TDAのプロペラ機路線は,新規参入路線で名古屋・高知線22.67

規制下の国内線航空運賃に関する一考察(鶴田) 699)335

(16)

3表 全日空および旧東亜国内航空の短距離路線における1 km当たり運賃

出典:JNR編「時刻表」19753月,773月,793月,813月および,883月の各号をもとに作成する。

1:上記運賃は10% の通行税および,ジェット機路線は航空機公害対策としての特別料金を含む。

2:斜文字は旧東亜国内航空路線,太文字のジェット機路線では特別料金を含む。

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(17)

規制下の国内線航空運賃に関する一考察(鶴田) 701)337

(18)

円(0.90),岡山・松山線25.65円(1.02)の2路線があったものの,札幌・函館線のジ ェット化,大阪・山口線の撤退により,路線数では変化がない。他方,ジェット機路線 では宮崎・長崎線27.54円(1.00)の参入,札幌・函館線36.31円(1.32)のジェット 化により,8路線に増加した。

ANAは,プロペラ機路線では広島・鹿児島線31.54円(1.96),福岡・福江線32.52 円(2.02)2路線の参入があったものの,長崎・鹿児島線のジェット化および,東京・

三宅島線,東京・大島線,大島・三宅島線の3路線が日本近距離航空に移管されたた

11

め,17路線に減少した。ジェット機路線は,先述の長崎・鹿児島線のほか,成田・名

古屋線14.17円(0.59)の参入により,9路線となった。

運賃率および指数値の平均についてTDAとANA を比較すると,TDAのANAに対 する運賃率は,プロペラ機路線では全路線平均の格差1.34,短距離路線平均の格差1.06 と,後者が0.28小さい。この数値は78年度の1.36から大きく縮小し,全路線平均と短 距離路線平均が拮抗しつつあることが分かる。ジェット機路線では,ANAの4.0に対 してTDAが9.28と,5.28大きい。この二つから,ジェット機路線ではTDAがANA よりもいまだ割高であったが,プロペラ機路線では両社の運賃率が拮抗しつつあったこ とが分かる。

1980年度は78年度に対し,航空運賃が平均で30.4% 上昇している。TDAの運賃上 昇率は全路線平均では28.5% であった。TDA路線の変化を見ると,プロペラ機路線で は,宮崎・松山線がジェット化されてものの,新たに札幌・花巻30.85円(0.95),熊本

・高 松 線32.27円(0.99),鹿 児 島・喜 界 島 線29.94円(0.92),大 阪・高 知 線28.52円

(0.88),出雲・隠岐線53.23円(1.64),米子・隠岐線54.12円(1.67)5路線で参入が あったため,27路線に増加した。ジェット機路線では,札幌・山形線42.29円(1.26),

鹿児島・松山線39.18円(1.17),大分・長崎線38.28円(1.14),宮崎・松山線34.83円

(1.04)など4路線に新規参入し,13路線となった。

ANAでは,プロペラ機路線は名古屋・白浜線および福岡・福江線を撤退し,14路線 に減少した。ジェット機路線では,高知・鹿児島線および小松・新潟線から撤退した が,東京・仙台線25.85円(0.90)および仙台・新潟線36.51円(1.27)2路線の新規参 入があり,路線数では変化がない。

1980年度は航空運賃が値上げされていたため,TDAとANAはともに運賃率が上昇 している。両社間の運賃率格差は,プロペラ機路線ではTDAの36.76円がANA の33.33 円よりも3.43円大きく,ジェット機路線に至っては TDAの39.16円がANA の28.44 円よりも10.72円大きい。指数値では,プロペラ機路線でTDAの1.11がANAの1.38 に対して0.27小さいが,ジェット機路線では TDAの1.16がANAの0.99に対して0.27

────────────

11 日本近距離航空への路線移管については,30年史資料編,51頁および53頁を参照。

同志社商学 第63巻 第5号(2012年3月)

338(702

(19)

大きい。

1987年度も80年度と比べて,国内線航空運賃が平均で24.1% 値上げされていた。

TDAは平均で23.6%,ANA は25.0% であった。TDAの路線構成から見ると,プロペ

ラ機路線では,出雲・福岡線41.83円(1.15)と米子・福岡線47.12円(1.29)で新に 運航されていたが,東京・花巻線,鹿児島・喜界島線,札幌・女満別線,大分・長崎 線,長崎・対馬線,大分・鹿児島線,札幌・帯広線,奄美大島線・沖永良部線,奄美大 島・与論島線10路線から撤退し,札幌・女満別線,名古屋・高知線,札幌・秋田線3 路線をジェット化したため,17路線に減少した。ジェット機路線では,東京・新潟線 の運航を停止していたが,先の3路線のジェット化および福岡・高知線40.93円(1.01)

の新規参入により,16路線に増加した。

ANAでは,プロペラ機路線は大阪・北九州線,鹿児島・奄美大島線,広島・鹿児島 線,名古屋・八丈島線,奄美大島・沖縄線,東京・八丈島線,熊本・宮崎線7路線で撤 退し,5路線に減少した。ジェット機路線でも東京・名古屋線,出雲・福岡線,仙台・

新潟線3で運航を停止し,6路線に減少した。

TDAとANA の運賃率とその指数値を見ると,TDAでは短距離路線の運賃率平均で プロペラ機路線の45.30円はジェット機路線の45.31円と拮抗したが,ANAではプロペ ラ機路線の43.65円はジェット機路線の33.64円よりも10.01円大きい。またTDAと ANAの運賃率平均を比較すると,プロペラ路線ではANAとの格差が1.65円と大差が 無いものの,ジェット機路線ではTDAが11.67円大きい。

お わ り に

TDAおよびANAの運賃率の平均について,運航距離別区分で見ると,運賃率と運 航距離は反比例の関係にあり,長距離路線では低く,短距離路線では高い。同じ距離別 区分であれば,プロペラ機路線の運賃率平均がジェット機路線の運賃率平均を上回って いる。長距離路線でTDAは,ジェット化の進展に従ってANAに対するジェット機路 線の運賃率格差が拡大した。中距離路線では,ジェット機路線の運賃率平均で当初TDA がANAを下回っていたが,ジェット化の進展とともに逆転した。短距離路線でのジェ ット機路線の運賃率格差は長距離路線と同様の傾向が見られた。

他方,プロペラ機路線は,ANA が完全ジェット化をいち早く達成した長距離路線を 除けば,中距離路線ではTDAのANAに対する運賃率格差が1970年代には4円程度 であったものが,80年代には2円程度に減少した。短距離路線では2円程度から3円 程度の範囲で推移し,大きな変化が見られない。TDAと比べてジェット化が進展して いたANAでは,中距離および短距離のプロペラ機路線の運賃率が同社全路線の運賃率

規制下の国内線航空運賃に関する一考察(鶴田) 703)339

(20)

平均を引き上げていたのである。

このほか,TDAでは短距離路線の運賃が割高であったため,全路線の運賃率平均を 引き上げ,ANAでは中距離および短距離のプロペラ機路線が同社全路線の運賃率平均 を引き上げたと言えよう。また,両社間の比較から,とりわけジェット機路線でTDA がANAよりも運賃が割高であった。

国内線の航空運賃は,先述のように,航空会社が新たな運賃を監督庁に提示し,認可 を得て実施される,許認可制がとられていた。航空会社が自社路線の新たな運賃を算出 する際には,コスト構

12

成とその変化が運賃改正の要件となった。何らかの原因でコスト が大幅に増加し,それが赤字をもたらした場合に,航空各社は新たな運賃を算出して監 督庁にその認可を求めた。こうしたコスト構成の一つとして,使用する機材とその運航 に関するコス

13

ト,即ち機材の減価償却や運航に伴う燃料費その他がある。これらは航空 会社のコスト構成において比較的大きな比率を占めており,運賃の算出で比較的大きな 影響を与えるものであつた。

本稿で考察の対象とした1970年代中頃から80年代後半におけるANAおよびTDA の機材構成を見ると,プロペラ機では両社ともにYS 11型を諸力機材としていた。同 機は旧通産省を中心として,官民からなる国家的事業の一つに位置づけられ開発され た,座席数60程度の双発機であった。しかし,ジェット機では,

14

ANAは1960年代後 半より米国ボーイング社の727型(129〜178席)・737型(115〜126席)を主力機と し,70年代後半には旧運輸省の行政指導に従って広胴体機のロッキード社L 1011型

(通称トライスター,303〜326席)を導入した。さらに,80年代には高需要路線機とし て,L 1011からボーインク747型(通称ジャンボ機,500席)へと更新し,ローカル線 では727型よりも輸送力が大きい767型(235席)を導入した。他方,

15

TDAは1973年 より旧ダグラス社DC 9型(128席)を導入し,80年代初頭にはその発展型のMD 81 型(163席),MD 87型(134席)へと更新した。また,80年代初頭より,広胴体機と して,エアバス社のA 300-B(276〜295席)を導入している。このように,ジェット 機においてANAとTDAの所有機材が大きく相違したが,機材の輸送規模を比較する と,TDAがANA よりも小さいことから,減価償却額が割高の運賃をもたらしたとは 思えない。だとすれば,機材関係ではその使用頻度と座席利用率,その他では路線構成 の相違が,ANAと比べてTDAに割高の運賃をもたらした原因であったと見てよい。

────────────

12 航空会社のコスト構成とその変化については,拙稿「国内線ジェット化とその経営効果に関する一考察

−規制下の全日空を事例として−」(『大阪明浄大学紀要』第4号),20043月を参照。

13 航空会社の機材投資と減価償却の事例として,拙稿「全日空の経営戦略 −機材投資とその資金調達

−」(『経営史学』第32巻第4号)を参照。

14 全日空(ANA)の機材については,前掲,全日空30年史資料編,65−71頁を参照。

15 旧東亜国内航空(TDA)の機材については,www.jal.com/ja/history(2012/01/09)のHistory of Aircraft を参照

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