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クレーム行動経験と個人特性の関係

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Academic year: 2021

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(1)

たなかやすえ:社会学部社会情報学科准教授 にしかわちとせ:大学院心理学研究科博士後期課程 さわぐちうきょう:大学院心理学研究科博士後期課程 しぶやしょうぞう:社会学部社会情報学科教授

クレーム行動経験と個人特性の関係

Complaining behavior and personal traits

田中 泰恵 西川 千登世 澤口 右京 渋谷 昌三

(Yasue Tanaka Chitose nishikawa Ukyo sawaguChi shozo shibuYa)

Abstract

Recently, an increase in self-centered and unreasonable complaints has become a social problem. whereas, others that suffer losses, or damages are unable to make complaints. This study examined differences in personal traits related to complaining behavior. an internet questionnaire survey was conducted with people aged 30 ─ 40 years (n=620). The responses of those that indicated, “Recently i made a complaint” (n=256) and “i did not make a complaint” (n=278) were analyzed (n=534), with complaining behavior (making a complaint or not) as the independent variable and aggressiveness, logical thinking, communication skills scale scores, which were considered to be related to complaining behavior, as dependent variables. The results indicated that people making complaints showed high scores for “logical thinking,” “interpersonal stress skills,” “general management skills,” and “communication skills.” Moreover, males had high scores for “verbal aggression” when making complaints, whereas females had high scores for “inquiring mind” and “objectiveness”. Furthermore,

“hostility” and “physical aggression” were higher in males than in females, however, there were no gender differences in complaining behavior, suggesting that these two items were not related to complaining behavior.

キーワード: クレーム、攻撃性、論理的思考力、コミュニケーションスキル Keywords:claim, aggressiveness, logical thinking, communication skills

(2)

1.問題と目的

自己中心的で理不尽な要求をするクレームの 増加が社会問題として話題となる一方で、実際 に何らかの被害を受けながらもクレームを伝え ない、または伝えられない人々も多く存在す る。苦情行動における先行研究をみると、藤村

(1999)が病院とビジネスホテルで調査を実施 したところ、不満を抱いた人の中で苦情を直接 表明した人の割合は、病院の外来患者で19%、

病院の入院患者で22%、ビジネスホテルで29%

に過ぎないとことを見出している1)。また池内

(2006)は、日本人の大学生133名を対象に質 問紙調査を実施した結果、商品に対して不満を 抱いても、実際に苦情を表明した人の割合は約 20%であったと報告している2)。さらに、田中 ら(2012)が都内の私立大学生231名を対象 に調査した結果においても、クレームを言いた くなるような体験をした後、相手に直接対面し てクレームを伝えたかどうかの質問項目に対し て「まあまあする」(26.77%)「かなりする」

(6.57%)と答えた人は合計で33%であった3)。 ところで、クレーム(claim)は、語源とし て「(権利としての)要求、請求、主張」など の意味を有しており、筆者らはクレームを「問 題解決を求めている場合の要求・主張」と定義 して研究を進めている。またクレームにも、利 己的なクレーム(主に個人の利益喪失の回復を 要求するもの)と利他的なクレーム(社会や他 者の利益や問題解決を望むもの)が考えられる が、利他的なクレームの非発信は、社会全体の 利益の喪失にもつながりかねない。つまり各種 の社会問題解決や新しい社会の創造を考える 時、クレームを適正に発信する能力を有する

(論理的意見として相手に伝達できる)人々が 多く存在することが、社会基盤として必要であ ると考えている。

さらに筆者らは、自己中心的で理不尽な要求 をするクレームと利他的なクレームの非発信 は、実はどちらにも適正なクレームを発信する ために必要な能力とそれを習得する環境の欠如 が関与しているのではないかと仮説を立てた。

そこで人々のクレーム行動を分析・分類するこ とにより、「自己中心的で理不尽な要求をする

クレームの発信」および「利他的なクレームの 非発信」の要因を明らかにしたいと考えた。さ らに最終的には、それを踏まえ、「適正なクレ ームの発信」に必要な要素を導き出し、その教 育方法や環境を提示したいと考えている。

上記視点から、「適正なクレーム発信能力の 育成に必要な視点」を考える上での基礎研究と して、2012年度はクレーム発信の有無・基準・

手段等などの視点から大学生のクレーム行動の 実態を質問紙調査の結果から分析した。本報告 では、ここにおいて得られた傾向や分類を基盤 に調査票を精査し、30代・40代の男女620名 に対してクレーム行動経験および個人特性(攻 撃性、論理的思考力、コミュニケーションスキ ル)に関する質問紙調査を実施している。

なお個人特性として「攻撃性」「論理的思考 力」「コミュニケーションスキル」を選択した 理由は以下の通りである。まず攻撃性について は、池内(2010)が「苦情行動の心理的メカ ニズム」において、消費者の苦情行動を葛藤解 決の一手段である攻撃方略としてとらえ、社会 心理学の「欲求不満―攻撃仮説」を基に「苦情 行動の生起モデル」を提示している4)。同モデ ルでは、言語的攻撃性の苦情行動への影響が確 認 さ れ て お り、 こ れ に 関 し て は、 彼 谷 ら

(2012)の研究においても同様であった5)。こ れらの結果から、攻撃性がクレーム行動に影響 を与える可能性を推測したためである。またク レーム行動は相手に意思や感情、思考を伝達す ることであり、当然にコミュニケーションスキ ルとの関連が推測される。さらに今後の検討課 題として、クレームを正しく伝え適切な問題解 決につなげられる能力を考えた時、論理的思考 力に関連するのではないかと予測した。

以上から本研究は、クレーム行動経験と個人 特性の関係について分析することを目的とす る。

2.方法

(1) 調査対象者と調査方法

首 都 圏 在 住 の30~ 49歳 の 成 人 男 女620名

(男性310名,女性310名)を対象にweb調査 を実施した注1)平均年齢は39.72歳(SD=5.52)

(3)

であった。

(2) 調査時期 2013年3月

(3) 調査内容

ⅰ)クレーム経験

クレームをした経験についての①クレーム経 験程度、および「最近の経験」と「記憶に残る 経験」についてそれぞれ②クレームの場面(時 期・場所・状況・出来事)、③伝達状況、④伝 達方法、⑤クレームの理由を回答してもらっ た。本研究においては、③の最近の伝達状況の うち、「他の人に頼んで言ってもらった(12 名)」と「他の人が先に言った(13名)」およ び「その他(8名)」を除いた「自分で言った

(256名)」と「言わなかった(278名)」と回 答した者534名を対象とした。

ⅱ)クレーム経験後の行動

クレーム経験をした後の行動について「クレ ームを相手に直接対面して伝える」「クレーム を相手に電話で伝える」「周囲の人に内容を話 す」などの10項目に対して「1. 全くしない」

~「5. かなりする」の5件法で回答してもら った。

ⅲ)攻撃性

攻撃性を測定する尺度として日本版buss- Perry攻撃性質問紙(安藤ら,1999)の24項 目を用いた。回答は「1. まったくあてはまら ない」~「5. 非常によくあてはまる」の5件 法で回答してもらった。

ⅳ)論理的思考力

論理的思考力を測定する尺度として批判的思 考態度尺度(平山・楠見,2004)の26項目を 用いた。回答は「1. あてはまらない」~「5.

あてはまる」の5件法で回答してもらった。

ⅴ)コミュニケーションスキル

コミュニケーションスキルを測定する尺度と してkiss-18(菊池,2004)の18項目を用い た。「1. いつもそうでない」~「5. いつもそ うだ」の5件法で回答してもらった。

ⅵ)個人属性

個人属性として性別・年齢のほか、婚姻状

況、同居家族、学歴、職業、ライフスタイルな どを回答してもらった。

なお、本研究で使用しない調査項目について は詳細を省略した。

3.結果

(1) 各尺度の因子分析

本研究での調査協力者は30~ 49歳であり、

分析に用いる各尺度が作成されたときの協力者 と年齢が異なるため改めて因子分析を行うこと にした。

日本版buss-Perry攻撃性尺度24項目につい て主因子法プロマックス回転により因子分析を 行った。解釈可能性から1項目を除いた23項 目を採用し4因子とした(表1)。因子は安藤 ら(1999)を参考に「短気」「敵意」「身体的 攻撃」「言語的攻撃」とした。また各因子につ いてクロンバックのα係数を算出したところ順 にα=.79、α=.77、α=.77、α=.72と十分な 信頼性が得られた。

批判的思考態度尺度26項目について主因子 法プロマックス回転により因子分析を行ったと ころ、解釈可能性から2項目を除いた24項目を 採用した(表2)。因子名は平山・楠見(2004)

を参考とし「論理的思考への自覚」「探究心」

「客観性」「証拠の重視」とした。各因子につい てクロンバックのα係数を算出したところ順に α=.91、α=.90、α=.75、α=.73と十分な信 頼性が得られた。

kiss-18は18項目について主因子法プロマッ クス回転により因子分析を行ったところ、解釈 可能性から1項目を除いた17項目を採用した

(表3)。因子名については、調査対象者の世代 が近かった篠原・三浦(1999)の結果とほぼ 同様の結果を示したため参考とし、「対人スト レススキル」「コミュニケーションスキル」「一 般的マネージメントスキル」とした。各因子に ついてクロンバックのα係数を算出したとこ ろ、 第 一 因 子 か ら 順 にα= .87、α= .85、

α=.85と十分な信頼性が得られた。以上の因 子分析の結果から各尺度は30~ 49歳において

(4)

番号 項目 短気 敵意 身体的攻撃 言語的攻撃

8 ばかにされると,すぐ頭に血がのぼる .83 -.03 -.07 -.05

6 かっとなることを抑えるのが難しいときがある .72 .05 -.12 .11

11 いらいらしていると,すぐ顔に出る .64 -.06 -.04 -.06

4 ちょっとした言い合いでも,声が大きくなる .62 -.12 .00 .22

13 たいした理由もなくかっとなることがある .59 .09 .06 -.20

15 私を嫌っている人は結構いると思う -.11 .81 .04 .04

23 友人の中には,私のことを陰であれこれ言っている人がいるかもしれない .15 .64 -.06 .01

10 私を苦しめようと思っている人はいない .16 -.54 .12 -.03

20 嫌いな人に出会うことが多い .07 .51 .22 -.01

7 陰で人から笑われているように思うことがある .35 .45 -.04 -.22

18 人からばかにされたり,意地悪されたと感じたことはほとんどない .02 -.45 .19 -.04

16 人とよく意見が対立する .10 .45 .15 .20

19 権利を守るためには暴力もやくをえないと思う -.12 .02 .76 .00

2 どんな場合でも,暴力に正当な理由があると思えない .24 .06 -.62 .10

21 なぐられたら,なぐり返すと思う .14 -.18 .61 .16

14 挑発されたら,相手をなぐりたくなるかもしれない .31 -.10 .60 -.04

17 人をなぐりたいという気持ちになることがある .05 .17 .56 .01

5 相手が先に手を出したとしても,やりかえさない -.07 .16 -.40 -.02

3 誰かに不愉快なことをされたら,不愉快だとはっきり言う -.02 .08 -.05 .73

9 友達の意見に賛成できないときには,はっきり言う -.06 -.05 .03 .63

22 自分の権利は遠慮しないで主張する .02 .07 .04 .62

1 意見が対立したときは,議論しないと気がすまない .27 -.05 -.10 .60

12 でしゃばる人がいても,たしなめることができない .33 -.06 -.01 -.45

※ かっとなって,物を壊したくなることがある

表2 批判的思考態度尺度 因子分析結果(主因子法 プロマックス回転)

番号 項目 論理的思考

への自覚 探究心 客観性 証拠の重視

2 考えをまとめることが得意だ .93 -.05 -.05 -.03

3 物事を正確に考えることに自信がある .85 -.06 .00 -.02

1 複雑な問題について順序立てて考えることが得意だ .84 -.03 -.06 .03

4 誰もが納得できるような説明をすることができる .79 .00 -.09 -.04

9 道筋を立てて物事を考える .68 .00 .06 .15

8 一筋縄ではいかないような難しい問題に対しても取り組みつづけることができる .63 .08 .04 .02

6 公平な見方をするので、私は仲間から判断を任される .58 .05 .12 -.08

7 何かの問題に取り組む時は、しっかりと集中することができる .49 .08 .07 .08

13 さまざまな文化について学びたいと思う -.04 .93 -.13 .00

11 生涯にわたり新しいことを学びつづけたいと思う .04 .88 .01 -.09

12 新しいものにチャレンジするのが好きである .14 .84 -.17 -.08

15 自分とは違う考え方の人に興味を持つ -.02 .75 -.06 .04

16 どんな話題に対しても、もっと知りたいと思う -.02 .70 -.04 -.02

14 外国人がどのように考えるかを勉強することは、意義のあることだと思う -.18 .69 .00 .16

10 いろいろな考え方の人と接して多くのことを学びたい .07 .68 .08 -.06

19 物事を決めるときには、客観的な態度を心がける .01 -.01 .79 .04

20 一つ二つの立場だけではなく、できるだけ多くの立場から考えようとする .02 .07 .78 .02 21 自分が無意識のうちに偏った見方をしていないか振り返るようにしている .04 .17 .53 .07

18 物事を見るときに自分の立場からしか見ない .05 .17 -.49 -.01

17 いつも偏りのない判断をしようとする .01 .28 .46 .02

22 自分の意見について話し合うときには、私は中立の立場ではいられない -.03 .14 -.40 .24

24 結論をくだす場合には、確たる証拠の有無にこだわる .02 -.01 -.22 .90

25 判断をくだす際は、できるだけ多くの事実や証拠を調べる .04 .04 .04 .77

26 何事も、少しも疑わずに信じ込んだりはしない -.02 -.09 .10 .49

※ 何か複雑な問題を考えると、混乱してしまう

※ たとえ意見が合わない人の話にも耳をかたむける

注)※は今回使用しなかった項目 因子間相関 F1 F2 F3 F4

F1 .43 .52 .44

F2 .57 .43

F3 .52

F4

注)※は今回使用しなかった項目 因子間相関 F1 F2 F3 F4

F1 .54 .60 .33

F2 .46 .02

F3 .33

F4

(5)

も先行研究と同様の因子構造となり、より広い 年齢で使用可能なことが示唆された。

(2) クレーム行動経験と個人特性

以上の因子分析の結果をふまえ各尺度の合成 得点を算出した。また自分でクレームを言った 人(256名)を「伝達群」、自分でクレームを 言わなかった人(278名)を「非伝達群」とし、

クレーム経験(伝達・非伝達)と性別を独立変 数、各尺度の因子得点を従属変数とした2×2 要因の分散分析を行った。

ⅰ)攻撃性

日本版buss-Perry攻撃性尺度の下位因子合計 得点を従属変数とした分散分析結果を表4に示 す。「攻撃性」は有意な主効果と交互作用はみ られなかった。「敵意」と「身体的攻撃」は性 別の主効果が有意であり、下位検定の結果「敵 意」は伝達群では男性の方が女性よりも有意に 高く、非伝達群においても男性の方が女性より も高い傾向がみられた。「身体的攻撃」は伝達 群、非伝達群ともに男性の方が女性よりも高か った。

「言語的攻撃」では交互作用が有意であり、

下位検定の結果、伝達群の方が非伝達群よりも

「言語的攻撃」が高かった。また伝達群では男 性の方が女性よりも「言語的攻撃」が高かった。

以上の結果から、男性は女性に比べて「敵 意」と「身体的攻撃」が高かったといえる。ま た、伝達群の方が非伝達群よりも「言語的攻 撃」が高かったが、とりわけ伝達群の男性は

「言語的攻撃」が高かったといえる。

ⅱ) 論理的思考態度

批判的思考態度の下位因子合計得点を従属変 数とした分散分析の結果を表5に示す。「論理 的思考への自覚」の性別の主効果とクレーム経 験の主効果が有意であり、下位検定の結果、伝 達群は非伝達群よりも「論理的思考への自覚」

が高く、伝達群では性差はないが、非伝達群で は男性の方が女性よりも「論理的思考への自 覚」が高い傾向にあった。

「探究心」「客観性」はクレーム経験の主効果 が有意であり、下位検定の結果、伝達群は非伝 達群よりも「探究心」「客観性」が高かった。

また伝達群の女性は言わなかった女性よりも

「探究心」と「客観性」が高かったが、男性に 有意差はなかった。

以上の結果から、伝達群は非伝達群よりも

「論理的思考への自覚」「探究心」「客観性」が

表3 KiSS-18 因子分析結果(主因子法 プロマックス回転)

番号 項目 対人ストレス

スキル コミュニケー

ションスキル 一般的マネー ジメントスキル

7 こわさや恐ろしさを感じたときに、それをうまく処理できる .84 -.14 .07

8 気まずいことがあった相手と、上手に和解できる .72 .16 -.11

6 まわりの人たちとの間でトラブルが起きても、それを上手に処理できる .72 .13 .01

11 相手から非難されたときにも、それをうまく片付けられる .66 .09 .05

4 相手が怒っているときに、うまくなだめることができる .39 .30 .06

1 他人と話していて、あまり会話が途切れない .06 .72 -.10

15 初対面の人に、自己紹介が上手にできる .11 .69 -.05

10 他人が話しているところに、気軽に参加できる .19 .62 -.08

3 他人を助けることを、上手にやれる -.07 .59 .30

13 自分の感情や気持ちを、素直に表現できる .00 .51 .20

16 何か失敗したとき、すぐに謝ることができる -.21 .41 .33

2 他人にやってもらいたいことを、うまく指示することができる .26 .41 .14

18 仕事の目標を立てるのに、あまり困難を感じない -.06 .05 .75

9 仕事をするときに、何をどうやったらよいか決められる -.01 .01 .75

12 仕事上で、どこに問題があるかすぐにみつけることができる .27 -.16 .69

17 まわりの人たちが自分と違った考えを持っていても、うまくやっていける .02 .23 .48

14 あちこちから矛盾した話が伝わってきても、うまく処理できる .37 -.02 .48

※ 知らない人とでも、すぐに会話が始められる

注)※は今回使用しなかった項目 因子間相関 F1 F2 F3

F1 .71 .69

F2 .67

F3

(6)

高く、非伝達群の中では男性は女性よりも「論 理的思考への自覚」が高かった。また伝達群の 女性は非伝達群の女性よりも「探究心」「客観 性」が高かった。

ⅲ)コミュニケーションスキル

kiss-18尺度の下位因子合計得点を従属変数

とする分散分析の結果を表6に示す。「対人ス トレススキル」と「一般的マネージメントスキ ル」のクレーム経験の主効果が有意であり、下 位検定の結果、伝達群は非伝達群に比べて「対 人ストレススキル」と「一般的マネージメント スキル」が高かった。

表4 性別とクレーム経験による攻撃性の分散分析結果 クレーム経験 伝達群(n=253) 非伝達群(n=276) 主効果

性別 男性 交互作用

(n=136) 女性

(n=117) 男性

(n=124) 女性

(n=152) 性別 クレーム 経験

短気 3.04 3.04 2.97 2.98 .01 1.07 .01

(.80) (.78) (.76) (.73)

敵意 2.98 2.76 2.97 2.85 11.35 ** .71 .95

(.56) (.63) (.58) (.53)

身体的攻撃 2.69 2.37 2.65 2.36 30.45 ** .21 .05

(.68) (.64) (.64) (.59)

言語的攻撃 3.25 3.02 2.81 2.79 5.35 * 40.39 ** 4.05 *

(.56) (.68) (.61) (.58)

* p<.05 ** p<.01  ( )内はSD

表5 性別とクレーム経験による批判的思考態度の分散分析結果 クレーム経験 伝達群(n=254) 非伝達群(n=277) 主効果

性別 男性 交互作用

(n=137) 女性

(n=117) 男性

(n=125) 女性

(n=152) 性別 クレーム 経験 理論的思考

への自覚 3.40 3.26 3.20 3.05 5.50 * 12.16 ** .01

(.67) (.67) (.66) (.71)

探究心 3.58 3.70 3.51 3.48 .37 4.76 * 1.23

(.69) (.75) (.81) (.81)

客観性 3.42 3.54 3.37 3.36 1.38 6.00 * 2.07

(.54) (.58) (.58) (.52)

証拠の重視 3.57 3.57 3.55 3.42 1.04 1.90 1.15

(.77) (.67) (.70) (.61)

* p<.05 ** p<.01  ( )内はSD

表6 性別とクレーム経験によるKiSS-18の分散分析結果 クレーム経験 伝達群(n=256) 非伝達群(n=277) 主効果

性別 男性 交互作用

(n=138) 女性

(n=118) 男性

(n=125) 女性

(n=152) 性別 クレーム 経験

対人ストレス 3.00 2.99 2.76 2.75 .03 16.42 ** .01 スキル (.69) (.67) (.67) (.68)

コミュニケー 3.14 3.26 2.95 3.11 5.27 * 8.53 ** .16 ションスキル (.66) (.70) (.66) (.69)

一般的マネー 3.32 3.40 3.15 3.22 1.69 8.91 ** .01 ジメントスキル (.62) (.65) (.67) (.68)

* p<.05 ** p<.01  ( )内はSD

(7)

「コミュニケーションスキル」は性別とクレ ーム経験の主効果が有意であった。下位検定の 結果、伝達群は非伝達群に比べて「コミュニケ ーションスキル」が高かったが、非伝達群では 女性の方が男性よりも「コミュニケーションス キル」が高い傾向にあった。

以上のことから、伝達群は非伝達群に比べ て、「対人ストレススキル」「一般的マネージメ ントスキル」「コミュニケーションスキル」が 高かったが、とりわけ女性は非伝達群でも「コ ミュニケーションスキル」が高い傾向にあっ た。

4.総合考察

以上の分析結果から、男女ともに伝達群は

「論理的思考」「対人ストレススキル」「一般的 マネージメントスキル」「コミュニケーション スキル」の得点が高く、クレームを伝達する行 動と関連すると考えられる。また、男性は「言 語的攻撃」の得点が高いことから言語的な伝達 をしていたと推測されたのに対し、女性は「探 究心」「客観性」の得点が高く、論理的な伝達 をしていたのではないかと推測された。一方、

「敵意」「身体的攻撃」は女性よりも男性の方が 高いが、クレーム伝達の有無による差異がみら れなかったため、クレームを言うかどうかとは 関連しないと推測された。

これらのことから、相手にクレーム(問題解 決を求めている場合の要求・主張)を伝える能 力として、論理的思考力、コミュニケーション スキルが関与していることが示唆されたと考え る。つまり、適正なクレームの発信能力を育成 するためには、これらの教育が必要であること が示されたと考える。

最後に、本研究において最近のクレームの伝 達状況として「自分で言った」と回答した者は 約半数であり、これは先に挙げた先行研究に比 較すると、かなり高い割合となった。この要因 として、池内(2006)および田中ら(2012)

の調査対象者が大学生だったのに対し、本調査 対象者は30代~ 40代であり、大学生に比較し て論理的思考力およびコミュニケーションスキ ルを身に付けた者の割合が高い可能性が推測さ

れる。また本調査は環境を特定せずに最近のク レームの伝達状況を調査しているが、藤村

(1999)は病院とビジネスホテルという非日常 的な環境に限定した調査であり、この環境の違 いが何らかの影響を及ぼしている可能性も考え られる。これらについては、今後の検討課題で ある。

【引用文献】

1) 藤村和宏(1999).「適切な苦情処理がもたら す効用と抑制される苦情行動」,香川大学經濟論 叢 72(2),pp.325─366.

2) 池内裕美(2006).「苦情行動に影響を及ぼす 社会心理学的諸要因の検討」,関西大学経済・政 治研究所研究双書 142,pp.101─131.

3) 田中泰恵・渋谷昌三・西川千登世・吉田正穂

(2012).「大学生のクレーム行動について ─

「クレーム体験の頻度」と「クレーム体験後の行 動」に着目して─」,目白大学総合科学研究第9 号,pp.71─79.

4) 池内裕美(2010).「苦情行動の心理的メカニ ズム」,社会心理学研究第25巻第3号,pp.177.

5) 彼谷直子・野本加奈・丸田美穂子・菅優一 郎・松井豊(2012).「どのような人がどのよう なときに苦情を言うのか? ─従業員に対する期 待と不満・苦情との関係─」,日本社会心理学会 第53回大会

6) 安藤 明人・曽我 祥子・山崎 勝之・島井 哲 志・嶋田 洋徳・宇津木 成介・大芦 治・坂井 明 子(1999).「日本版buss-Perry攻撃性質問紙

(baQ)の作成と妥当性,信頼性の検討」,心理 学研究 70(5), pp.384─392.

7) 平山 るみ・楠見 孝(2004).「批判的思考態 度が結論導出プロセスに及ぼす影響 : 証拠評価 と結論生成課題を用いての検討」教育心理学研 究 52(2), pp.186─198.

8) 菊池章夫(2004).「kiss-18研究ノート」岩 手 県 立 大 学 社 会 福 祉 学 部 紀 要 第6巻 第2号,

pp.41─51.

9) 篠原 一光・三浦 麻子(1999).「www掲示 板を用いた電子コミュニティ形成過程に関する 研究」,社会心理学研究 14(3), 144─154.

注1)㈱マクロミルを通じてweb調査を実施した。

参照

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