Cauchy 完備化
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2016 年 5 月 15 日
余完備な V-豊穣圏 C に対して,small projectiveな対象からなる充満部分 V-豊穣圏 A ⊂ Cで,包含関手がstrongly generatingになるものがあれば,A ∼b=C となるのであっ た.そこで次の定義をする.
定義. 小V-豊穣圏Cに対して充満部分V-豊穣圏C ⊂ CbをOb(C) :={F ∈C |b F はsmall projective }で定める.C をC のCauchy完備化という.*1
命題 1. c∈ C に対してy(c)∈Cbはsmall projective.
証明. Cb(y(c),−) : C −→ Vb が余連続であることを示せばよいが,Cb(y(c),−)∼= evcは余連 続である.
定理 2. 米田埋込y: C −→Cbは埋込y: C −→ Cを定める.
定理 3. bC ∼=Cb.
証明. F: C −→Cbを包含関手とすれば次の随伴を得る.
bC
C Cb
y
F y†F
F†y
C はsmall projectiveな対象からなるので,F がstrongly generatingであることを示せ ばよい.それにはF が稠密であることを示せばよい.
例. (X, d)を距離空間として,通常の Cauchy列による完備化を(X, d)e とする.(X, d) を小R+-豊穣圏とみなしてCauchy完備化X を考える.
a ∈ Xe に対して関数fa: X −→ R+ をfa(x) := d(a, x)で定める.これはR+-関手 fa: X −→R+とみなせる.このときfa ∈Xが分かる.これにより関数F: Ob(X)e −→
Ob(X)がF(a) := faにより定まる.これはR+-関手F: Xe −→X を与える.これは忠 実充満かつ本質的全射となる.故に距離空間をR+-豊穣圏とみなしたとき,そのCauchy 完備化とはCauchy列による完備化と一致する.
以下,V =Setの場合を考える.
定義. 圏Cにおいて,対象x∈C がc∈C のレトラクト
⇐⇒i: x−→c,r: c−→xが存在してr◦i= idx となる.
定義. Cを圏とする.
(1) Cの射e: c−→cがidempotent ⇐⇒e◦e=e. (2) idempotente: c−→cが分裂する
⇐⇒cのレトラクトi: x−→c,r: c−→xが存在してe =i◦rと書ける.
補題 4. 圏C のidempotente: c−→cに対して以下の条件は同値.
(1) e=i◦rと分裂する.
(2) eとidc のequalizer iが存在する.
(3) eとidc のcoequalizer rが存在する.
従ってe=i◦rと分裂するとき,iはモノ射,rはエピ射である.更にiは絶対equalizer, rは絶対coequalizerとなる.
証明. (1 =⇒ 2)i: x−→c,r: c−→xをレトラクトでe =i◦rとする.このとき図式
x i c x c
r i
idc
がequalizerであることを示す.まず r◦i = idx だから(i◦r)◦i = iである.次に射
f:a −→cで(i◦r)◦f =f となるものを任意に取る.
x i c r x i c
idc
c a
f f r
このとき点線のようにh:=r◦f: a −→xを取れば可換となる.逆にhがi◦h=f を満 たせばr◦f =r◦i◦h=hとなるから,このようなhは一意である.
(2 =⇒ 1) eとidc のequalizer i: x−→cが存在するとする.
x i c c
e idc
c
r e
e◦e = eだから,iの普遍性によりr: c −→xが一意に存在してi◦r =eとなる.故に i, rがレトラクトを与えることを示せばよい.
iの取り方からi◦r◦i=e◦i=iだから次の三角形は可換となる.
x i c e c
idc
c x
i i r
よってiの普遍性からr◦i= idx でなければならない.
(1 ⇐⇒ 3) 同様.
またe=i◦rが分裂するidempotentでF: C −→Dを関手とする.次がequalizerで あることを示せばよい.
F x F i F c F c
F e idF c
e◦e=eだからF e◦F e=F eである.即ちF eもidempotentである.f: a−→F cを
F e◦f =f となるように取る.
F x F i F c F c
F e idF c
F c a
f f
F r
h:= F r◦f とすればF i◦F r◦f =F(i◦r)◦f =F e◦f = f だから可換である.逆に h: a −→F xがF i◦h=f を満たせばF r◦f =F r◦F i◦h=F(r◦i)◦h=hとなるか ら,このようなhは一意である.
命題 5. P ∈Cbがsmall projective ⇐⇒F はあるc∈C に対するy(c)のレトラクト.
証明. (=⇒) P ∈Cbをsmall projectiveとする.P ∼= colim
⟨c,α⟩∈y↓Py(c)と書ける.よって HomCb(P, P)∼= HomCb(P, colim
⟨c,α⟩∈y↓Py(c))∼= colim
⟨c,α⟩∈y↓PHomCb(P, y(c))
で,HomCb(P, P)̸=∅だから,ある⟨c, α⟩ ∈y↓P とβ ∈HomCb(P, y(c))が存在する.こ のときα◦β = idF だからP はy(c)のレトラクトである.
(⇐=) ι: P =⇒ y(c),α: y(c) =⇒ P をy(c) のレトラクトとする.J を小圏として T: J −→Cbを関手とする.colim Hom(P, T−)∼= Hom(P,colimT)を示す.
補題4により次の図式は絶対equalizerである.
P α y(c) P y(c)
α ι
idy(c)
よって次の図式もcoequalizerである.
HomCb(y(c),colimT) HomCb(y(c),colimT) HomCb(P,colimT) HomCb(y(c), T j) HomCb(y(c), T j) HomCb(P, T j)
y(c)はsmall projectiveなので次の図式もcoequalizerである.
colim HomCb(y(c), T−) colim HomCb(y(c), T−) HomCb(P,colimT)
coequalizerは余極限と交換するから次の図式もcoequalizerである.
colim HomCb(y(c), T−) colim HomCb(y(c), T−) colim HomCb(P, T)
よってcoequalizerの一意性からHomCb(P,colimT)∼= colim HomCb(P, T)である.
故に
定理 6. C ={P ∈Cb |P はあるy(c)のレトラクト}であり,故にC は小圏である.
定理 7. Cの任意のidiempotentが分裂する.
証明. P ∈ C で,θ: P =⇒ P がidempotentだとする.P ∈ Cb だから,あるc∈ C と ι: P =⇒y(c),β: y(c) =⇒P が存在してβ◦ι= idP となる.
Cbは余完備だから,idempotentθはCbの中で分裂する.即ちι′: Q=⇒P,β: P =⇒Q が存在してβ◦ι′ = idQ,ι′◦β =θと書ける.このときι◦ι′: Q=⇒y(c),β◦α: y(c) =⇒Q はレトラクトを与えるから,Q ∈C である.よってP はC の中で分裂する.
定義. CがCauchy完備⇐⇒y: C −→C が圏同値を与える.
定理 8. 小圏Cに対して以下の条件は同値.
(1) CはCauchy完備
(2) Cの任意のidempotentが分裂する
(3) J を小圏,T: J −→ C を関手とする.余極限 colimy ◦T が絶対余極限ならば colimT ∈C である.
証明. (1 =⇒ 2)明らか.
(2 =⇒ 1) Cの任意のidempotentが分裂するとする.ι: P =⇒y(c)をα: y(c) =⇒P をy(c)のレトラクトとする.ι◦α: y(c) =⇒ y(c)だから,ある e: c −→ cが存在して y(e) =ι◦αとなる.ι◦αがidempotentだからeもidempotentで,よって分裂するか らi: x−→c,r: c−→x,r◦i= idx,i◦r =eと書ける.このときy(i) : y(x) =⇒y(c), y(r) : y(c) =⇒ y(x)はレトラクトでι◦α = y(i)◦y(r)となるから,補題4とequalizer の一意性によりP ∼=y(x)である.よってC ∼=C が分かる.
(1 =⇒ 3) ⟨P, µ⟩をy◦T の余極限とすると
HomCb(P, P)∼= HomCb(P,colim(y◦T))∼= colim HomCb(P, y(T−))
µj: y(T j) =⇒ P はµj ◦α = idP を満たす.よってP はy(T j) のレトラクトであり,
P ∈C ∼=Cとなる.
(3 =⇒ 1) P ∈ Cb をある y(c) のレトラクトとすると,補題 4 により,P はある T: J −→C に対する,絶対余極限colim(y◦T)で書ける.よって仮定3よりP ∈ C で ある.
定義. F: C −→Dを関手として,λは正則基数を表すとする.
(1) 圏Cがλ-余フィルター圏
⇐⇒T: J −→C が関手で|Mor(J)|< λを満たすならば,あるc∈C と自然変換
∆c=⇒T が存在する.
(2) F がλ-平坦
⇐⇒任意のd∈Dに対してd↓F がλ-余フィルター圏.
(3) F が絶対平坦⇐⇒任意のλに対してF がλ-平坦.
定理 9. C, Dを圏とする.C はCauchy完備でF: C −→ Dを絶対平坦関手とし,更に solution set conditionを満たすとする.このときF は左随伴を持つ.
証明. 任意のd∈Dに対してd↓F が始対象を持つ事を示せばよい.
...
) d↓F が始対象⟨c, f⟩を持てば極限lim(d↓F −→π C −→id C)は存在しlim(d↓F −→π C −→id C) =cとなる.
1 D
d↓F C C
=⇒ F
idC
d
π
よって右Kan拡張F‡idC が存在する.また極限lim(d↓F −→π C −→id C −→F D)も存 在してlim(d↓F −→π C −→id C −→F D) = F cとなるからF ◦(F‡idC) = F‡(F ◦idC) が分かる.即ちF は右Kan拡張F‡idC と交換するからF‡idC ⊣F である.
d ∈ D を取り S ⊂ Ob(d↓F)を solution setとする.S を離散圏と思って包含関手 I: S −→ d↓F を考えれば,F が絶対平坦だからある⟨c, f⟩ ∈ d↓F とα: ∆⟨c, f⟩ =⇒I
が存在する.
s c s′
αs
αs′
d
F s
k
F c
f
F s′
k′
F αs
F αs′
{⟨c, f⟩} ⊂d↓F を充満部分圏とみなして包含関手J: {⟨c, f⟩} −→d↓F を考えれば,再び F の絶対平坦性よりある⟨c′, f′⟩ ∈ d↓F とβ: ∆⟨c′, f′⟩ =⇒J が存在する.u:= β⟨c′,f′⟩
と置く.
s c c′
αs
u
d
F s
k
F c
f
F c′
f′
F αs
F u
任意の射e: ⟨c, f⟩ −→ ⟨c, f⟩に対してe◦u =uである.Sがsolution setだから,ある
⟨s, k⟩ ∈Sとv: s−→c′が存在してF v◦k =f′となる.
s c c′
αs
u
v d
F s
k
F c
f
F c′
f′
F αs
F u
F v
uの性質から u◦v◦αs がidempotentであることが分かる.今C がCauchy 完備だか ら,あるx∈ C,i: x −→c,r: c−→xが存在してr◦i= idx,i◦r =u◦v◦αsと書 ける.
s c c′
αs
u
x v r
i
d
F s
k
F c
f
F c′
f′
F αs
F u
F x F v F r
F i
h := F r◦f と置けば ⟨x, h⟩ ∈ d↓F である.このとき射⟨x, h⟩ −→ ⟨x, h⟩ はidx しか
...
) w: ⟨x, h⟩ −→ ⟨x, h⟩を射とする.即ちw: x−→xでF w◦h=hである.この とき
i◦w◦r =i◦w◦(r◦i)◦r
=i◦w◦r◦u◦v◦αs
=i◦r◦u◦v◦αs
=i◦r◦i◦r
=i◦idx◦r 今iがモノでrがエピだからw = idxである.
⟨x, h⟩ が始対象であることを示せばよい.その為に任意の ⟨z, l⟩ ∈ d↓F を取る.S が solution set だから ⟨s′, k′⟩ ∈ S と射 v′: ⟨s′, k′⟩ −→ ⟨z, l⟩ が存在する.従って射
⟨x, h⟩ −→ ⟨i c, f⟩−−→ ⟨αs′ s′, k′⟩ −→ ⟨v′ z, l⟩が存在する.次にp, q: ⟨x, h⟩ −→ ⟨z, l⟩を射とする とF の絶対平坦性からある⟨c′′, f′′⟩ ∈ d↓F とg: ⟨c′′, f′′⟩ −→ ⟨x, h⟩でp◦g= q◦gを 満たすものが取れる.
z c c′′
p q
g
d
F z
l
h F c F c′′
f′′
F p F q
F g
Sがsolution setだから⟨s′′, k′′⟩ ∈S と射v′′: ⟨s′′, k′′⟩ −→ ⟨c′′, f′′⟩が存在する.
s′′
c x
r
i
z
p q
c′′
g αs′′
v′′
射⟨x, h⟩ −→ ⟨x, h⟩はidx しかなかったから,g◦v′′ ◦αs′′◦i = idx である.故に p=p◦g◦v′′◦αs′′ ◦i=q◦g◦v′′◦αs′′ ◦i=q
となる.従って⟨x, h⟩が始対象であることが分かった.
参考文献
[1] F. Borceux and D. Dejean. Cauchy Completion in Category Theory. Cahiers Topologie Géom. Différentielle Catégoriques, 27 (1986), 133–146, http://www.
numdam.org/item?id=CTGDC_1986__27_2_133_0