第81回(平成30年度)
九州農業研究発表会
専門部会発表要旨集
果樹部会
とき・ところ 平成30年9月12日 熊本市九州農業試験研究機関協議会
The Association of the Kyushu Agricultural Research Institution1. 加温栽培ヒリュウ台‘肥の豊’の成木初期における安定生産のための適正着果量・・・・・・・・・・・・・藤澤珠子 ・・・ 1 川端義実・北園邦弥 2. ハウスミカン栽培における一体送風型ヒートポンプの効率的な暖房運転技術・・・・・・・・・・・・・・・・・松元篤史 ・・・ 2 池田繁成・夏秋道俊 3. スプリンクラー散水による露地温州ミカン「おおいた早生」の日焼け果軽減・・・・・・・下岡 萌・吉澤栄一 ・・・ 3 4. 福岡県内カンキツ園における微量要素の実態および‘早味かん’の施肥体系の検討・・・・・・・・・・・谷川宏行 ・・・ 4 平井茂昭・藤島宏之・藤冨慎一・鍋谷佳太・豊福ユカリ・満田幸恵 5. 早生カンキツ‘熊本EC12’の特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三原崇史・北園邦弥・榊 英雄 ・・・ 5 藤田賢輔・北村光康・坂西 英 6. 早生カンキツ‘みはや’の予措・貯蔵程度が果実品質に及ぼす影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中村健吾 ・・・ 6 相川博志・北園邦弥 7. 施設不知火園における環状剝皮による生産力向上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・久間祥子・池田繁成・古賀孝明 ・・・ 7 8. 土壌水分目視計の水位低下速度に与えるカンキツ‘大将季’の地上部の有無および設置位置の影響 ・・・ 8 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・川村秀和・熊本 修 9. 反射マルチ敷設によるカボスの果皮緑色向上効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・桂 奈央・楢原 稔 ・・・ 9 10. スモモ‘カラリ’の大玉系統の特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・稲森博行・久米隆志 ・・・ 10 11. ニホンナシ‘秋麗’における除芽及び摘蕾が着果管理作業時間に及ぼす影響・・・・・・・岩谷章生・藤丸 治 ・・・ 11 1. ブドウ‘ゴルビー’における環状剥皮処理による着色向上対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・城戸皓大・栗野太貴 ・・・ 12 佐藤吉史・生賴由喜男・山口秀一・金丸俊徳 2. ハウスミカン栽培におけるヒートポンプ加温技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・池田繁成・古賀孝明・末永達郎 ・・・ 13 (第10報)ヒートポンプ導入による炭酸ガス排出削減量のJ-クレジット化 久間祥子 3. 普通ウンシュウミカンを長期貯蔵できる冷温定湿貯蔵システムの性能および果実品質への影響 ・・・ 14 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・荒牧貞幸・藤山正史・服部國彦 4. 香酸カンキツ‘辺塚ダイダイ’の果実に含まれる香気成分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・岩部友里 ・・・ 15 吉﨑由美子・濱中大介・渡部由香 5. 香酸カンキツ‘辺塚ダイダイ’の果実に含まれるフラボノイド・・・・・・・・・・・木村由華・渡部由香・濱中大介 ・・・ 16 6. 冷凍前の高圧処理による褐変防止剤の浸透がライチ果皮色に及ぼす影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・塩屋百華 ・・・ 17 藤本佳奈枝・濱中大介・渡部由香 7. 沖縄県で栽培されたマンゴーの成熟に伴うカロテノイド含量の変動・・・・・・・・・・・・・・・菅原晃美・西場洋一 ・・・ 18 島尻庸平・小林拓也・伊波 聡・松村まさと
目 次
(果樹部会)
講 演 発 表 ( 1 1 ) ポ ス タ ー 発 表 ( 7 )加温栽培ヒリュウ台‘肥の豊’の成木初期における安定生産のための適正着果量 ○藤澤珠子・川端義実1)・北園邦弥 (熊本農研セ果樹・1)熊本県農林水産部) 【目的】 熊本県の加温栽培‘不知火’においては,糖度 不足によりデコポンの基準を満たさない低品質果 実が問題となっている。ヒリュウ台‘肥の豊’は, カラタチ台‘不知火’に比べて糖度が高い果実が 生産されやすいことから,高品質なデコポンの生 産が期待されている。しかし,ヒリュウ台‘肥の 豊’における,安定生産のための適正着果量は明 らかにされていない。そこで,着果量の違いが果 実階級,果実品質,翌年の着花に及ぼす影響を明 らかにし,連年安定生産が可能な成木初期の適正 着果量を明らかにする。 【材料および方法】 供試樹は,熊本県農業研究センター果樹研究所 (熊本県宇城市)内の加温栽培ヒリュウ台‘肥の 豊’5~6年生を用いた。2月5日に 15℃で加温 開始したハウスにおいて,5月下旬に内・裾の粗 摘果を行い,6月中旬に単位樹冠容積当たり 18~ 20 果に粗摘果を行った。その後,7 月中旬に単位 樹冠容積当たりの着果数が異なる 11 果(以下 11 果/㎥区),14 果(以下 14 果/㎥区),17 果(以下 14 果/㎥区)に仕上げ摘果を行った。各区4樹に ついて,2016 年,2017 年に調査を実施した。 果実階級は 12 月6日に収穫した樹毎の全ての 果実を調査した。果実品質は 11 月 30 日(2016 年), 12 月 6 日(2017 年)に樹毎に平均的な5果を採取 し 12 月 2 日(2016 年),12 月 13 日(2017 年)に 調査した。着花状況は,開花期の3月 14 日(2017 年),3月 16 日(2018 年)に,各調査樹の平均的 な長さの結果母枝4本ずつの枝長,有葉総状花数, 単生有葉花数,直花数,総花数,無着花新梢数を 調査した。 【結果および考察】 果実階級は,単位樹冠容積当たりの着果数が少 ないほど5L以上の大玉果が多くなる傾向があり, 17 果/㎥区では2L以下の小玉果が 41%と 11 果/ ㎥区,14 果/㎥区より多かった(第1図)。樹容積 あたり収量は,単位樹冠容積当たりの着果数が多 いほど多かったが,1 果重は 17 果/㎥区で 11 果/ ㎥区,14 果/㎥区より小さかった(第 1 表)。 果実品質の糖度は,2016 年には 17 果/㎥区が最 も高く,11 果/㎥と 14 果/㎥は同程度であった。 クエン酸濃度は 2017 年では 17 果/㎥区でやや高く なる傾向がみられた(データ略)。 着花状況は,単位樹冠容積当たりの着果数が多 い区ほど,結果母枝長は短くなり,総花数は少な くなり,無着花新梢数は多くなった(第2表)。 以上のことから, 17 果/㎥では翌年の着花が少 な過ぎることまた,11 果/㎥では収量が少ないこ とから,安定して着花を確保するための成木初期 の単位樹冠容積当たりの着果数は,3L・4L 階 級の果実割合が高く,翌年の着花や収量も確保で きる14 果/㎥程度が適正であると考えられる。 処理区 着果数 1樹あた り収量 樹容積 あたり 収量 樹容積 1果重 (果/樹) (kg/樹) (kg/m3) (m3) (g) 11果/㎥ 46 15.9 4.10 4.5 346 14果/㎥ 69 24.4 5.24 5.2 359 17果/㎥ 79 23.2 5.60 5.4 294 第1表 加温栽培ヒリュウ台‘肥の豊’における単位樹冠 容積当たりの着果数の違いが収量に及ぼす影響 (2016 年,2017 年平均) 区分 (着果数/㎥) 結 果 母枝長 節数 総花 本数 有 葉 単生花 無着花 新梢数 新梢数 cm 節 本 本 本 本 11 19.7 a 11.8 a 4.7 a 3.9 a 0.8 a 5.5 a 14 16.5ab 10.3 ab 2.8b 2.6 ab 1.5ab 4.3ab 17 13.9 b 8.7 b 1.2 c 1.2 b 2.3 b 3.4 b 有意性 * * * ** * ** 注)縦の異なる文字は、Tukeyの多重検定により有意差あり(*5%水準、**1%水準) 第2表 加温栽培ヒリュウ台‘肥の豊’における単位樹冠容積当たりの 着果数の違いが着花等に及ぼす影響(2016 年,2017 年平均) 第 1 図 加温栽培ヒリュウ台‘肥の豊’における単位樹冠容 積当たりの着果数の違いが果実階級に及ぼす影響 (2016 年,2017 年平均)
0 20 40 60 80 100 18℃設定 20℃設定 24℃設定 加温開始の設定温度 削 減 割 合( %) 図1 dif条件と重油消費量の削減割合 (2016年)
dif1.5 dif2.0 dif3.0
ハウスミカン栽培における一体送風型ヒートポンプの効率的な暖房運転技術 ○松元篤史・池田繁成1)・夏秋道俊 (佐賀果樹試・1)東松浦農業改良普及セ) 【目的】 一体送風型ヒートポンプ(以下,一体型HPとい う。)は,既存の重油加温機の吸気部に熱交換器(室 内機)を装着する仕様で,冷房機能の排除と重油加 温機の送風ファンの共用により,低価格での導入 が可能である。 本研究では,省エネ加温技術を確立するため, 効率的に暖房運転を行うための一体型HPと重油 加温機の始動温度差(以下,difという。)条件を 検討した。 【材料および方法】 佐賀県果樹試験場内の硬質フィルム被覆の屋根 型鉄骨ハウス(単棟3a,宮川早生)において,重油 加温機(7.5万Kcal)と一体型HP(3.44kW)による 複合運転を行った(加温期間:【2015年】2015.1 1.30-2016.5.8,【2016年】2016.12.15-2017. 5.23)。処理は表1通りとし,ハイブリット制御 盤により1日単位で変更した。調査項目は,地表1. 5m高の室内温度と外気温,一体型HPおよび重油 加温機の運転回数・時間,重油加温機の重油消費量 および一体型HPの消費電力量とした。 表1 処理区及び処理方法 ※各加温開始温度の期間は,18℃設定(12月下旬~ 2月下旬まで),20℃設定(2月下旬~3月下旬), 24℃設定(3月下旬以降)とした。 【結果および考察】 1)2015年の外気温は,1月下旬から3月上旬に 平均気温で5℃以下となるような低温の日が多く, 2016年より低かった(データ省略)。 2)2015年の室温は,加温開始が18℃設定の期間に おいては,dif1.5では設定温度±1℃以内での室 温維持が可能で,20℃設定の期間においては,dif1. 5およびdif2.0では設定温度の±1.5℃以内での室 温維持が可能であったが,dif3.0は何れの設定温 度でも室内温度の維持が困難であった。24℃設定 の期間においては,difによる差はなく室温維持が 可能だった(データ省略)。 3)一体型HP導入による重油消費量の削減割合 は,加温開始の設定温度と加温期間の外気温との 差の縮小に伴い高くなる傾向にあり,2016年の設 定温度が20℃以上の期間では,dif2.0およびdif3. 0で削減割合が高まる傾向にあった(図1)。 4)年間の暖房経費は,dif3.0で運転した場合に最 も安く95万円/10a程度となり,dif1.5の85%程度、 重油加温の65%程度となった(図2)。 5)重油価格に基づき一体型HP導入後の所得試算 を行った結果,difが大きいほど所得の向上および 維持効果が高かった。dif3.0で運転した場合は, 重油価格が36円/Lから導入前の所得を上回り,損 益分岐点となる重油価格は導入前より77円/L高い 181円/Lとなった(データ省略)。 以上のことから,12月加温のハウスミカンにお いて一体送風型ヒートポンプを導入する場合,重 油加温機との始動温度差を加温開始から3月頃ま では1.5℃~2.0℃差に設定して室内温度の維持を 図り,外気温が高まる4月以降においては,3.0℃ 差に設定して暖房経費の低減を図ることが効率的 である考えられた。 一体 型HP 重油 加温機 一体 型HP 重油 加温機 一体 型HP 重油 加温機
dif1.5
16.5
18.5
22.5
dif2.0
16
18
22
dif3.0
15
17
21
重油加温-
18
-
20
-
24
加温開始温度(℃)
18
20
24
18
20
24
x)重油単価は,70円/L y)電気料金は,九州電力の低圧季時別電力プラン 111 103 95 145 0 30 60 90 120 150dif1.5 dif2.0 dif3.0 重油加温
暖房経費 (万円 /10a ) 図2 dif条件と年暖房経費(2016年) 重油量料金x) 電気量料金y) 電気基本料金y)
スプリンクラー散水による露地温州ミカン「おおいた早生」の日焼け果軽減 ○下岡 萌・吉澤栄一 (大分農林水産研指果樹) 【目的】 近年,温暖化による夏期の高温,強日射のため露 地温州ミカンの日焼け果が増加している。対策とし て,遮光ネット被覆や樹冠表層摘果などが行われて いるが,台風への対応や小玉果の増加等の課題もあ り,より簡易で省力的な日焼け果軽減対策が求めら れている。 そこで,スプリンクラー散水による果面温度の低 下が日焼け果軽減に及ぼす影響について調査した。 【材料および方法】 大分県国東市に植栽された6 年生の極早生温州ミ カン「おおいた早生」を用いた。梅雨明け後の2017 年7 月 19 日(満開後 66 日)から 9 月 15 日(満開 後124 日)まで,スプリンクラーで散水する区と対 照区をそれぞれ9 樹設定した。散水区では 2 樹おき にマイクロスプリンクラー(サンホープ社製DN884) を設置し,樹冠上部50cm から樹冠全面に散水した。 散水条件は,10:00~17:00 の間で,直射日光が当た るように樹冠上部に設置したセンサーが35℃以上 の条件で,20 分間隔で 5 分間の散水設定を行った。 また,散水区,対照区ともに6 月 6 日から収穫(10 月3 日)までシートマルチを被覆し,その他栽培管 理は慣行通り行った。 果面温度は,熱電対(T 型)により測定を行い,日焼 け果発生率,日焼け果発生度はランダムに 1 樹から 100 果を選び調査した。日焼け果発生度は無,少, 中,甚の 4 段階で評価し,以下の式で計算した。 無×0+少×1+中×2+甚×3 ×100 発生果数×3 【結果および考察】 日最高気温が 35℃を越えた 2017 年 8 月 1 日にお いて,対照区の樹冠表層の果面温度は日焼け果発生 の目安となる 40℃以上になったが,散水区では 40℃ 未満だった(図 1)。収穫時の日焼け果発生率・発生 度は,ともに散水区で低くなった(表 1)。黒点病発 生率は,有意差がなかった(表 1)。浮皮は,散水区, 対照区ともにほとんど発生しなかった(表 1)。収穫 時の収量,果皮厚,Brix,クエン酸含量はいずれも処 理による有意差は認められなかった(表 2)。 以上より,スプリンクラー散水を行うことで,果 実表面からの気化熱により果面温度が低下したため, 日焼け果の発生が減少したと考えられる。また,Brix, 浮皮等の果実品質に影響を及ぼすことなく,簡易に 日焼け果の発生を軽減させることができた。 表1 収穫時の日焼け果発生率と発生度(2017 年 10 月 3 日) ※t検定により*は 5%水準で有意差あり,n.s は有意差がないこ とを表す(n=9)。 表2 収穫時の収量,1 果重,果実品質(2017 年 10 月 3 日) 図1 果面温度と気温の推移(2017 年 8 月 1 日)
福岡県内カンキツ園における微量要素の実態および‘早味かん’の施肥体系の検討 ○谷川宏行・平井茂昭1)・藤島宏之・藤冨慎一2)・鍋谷佳太2)・豊福ユカリ3) ・満田幸恵4) (福岡農林試・1)東罐マテリアルテクノロジー株式会社・2)南筑後普及指導セ・ 3)朝倉普及指導セ・4)経営技術支援課) 【目的】 ‘早味かん’は良食味の極早生ウンシュウミカ ンで,産地への導入が進んでいるが,園地造成を 伴う栽植が多く,要素欠乏等による生育不良が問 題となっている。また,着花が多く,樹勢低下に よる収量低下が懸念されている。 そこで,県内カンキツ園(南筑後地域)における 微量要素の実態調査および微量要素欠乏園におけ る改善対策の検証と,‘早味かん’の樹勢強化を目 的とした増肥効果の検証を行った。 【材料および方法】 試験1:南筑後地域における微量要素の実態 2017 年春期または秋期に,福岡県南筑後地域 (みやま市,大牟田市)内の 11 園地(第1表)につ いて,葉および土壌を採取し,微量要素の含量を 測定した。供試園地の土壌母岩は結晶片岩,花崗 岩類および第三紀堆積岩である。 試験2:マンガン欠乏対策の検証 2016 年にマンガン欠乏症が発生した大牟田市 (第1表中 A 園:花崗岩類)に栽植の‘早味かん’ 4 年生(2017 年次)を供試した。3 月 8 日にク溶 性マンガン資材 45g/樹(成分 30%)処理区および無 処理区を設置した(1 区 1 樹 3 反復)。葉の障害発 生率および葉の成分含量を調査した。 試験3:増肥効果の検証 2017 年に農林試果樹部ほ場(筑紫野市)に栽植 の‘早味かん’9 年生を供試した。慣行区は窒素 成分 12.5kg/10a とし,10 月 12 日に 60%,3 月 18 日に 40%となるように有機配合肥料(8-6-5)を施 用した。増肥区は慣行区より窒素成分施用量を 40%増量し,増量分は燐硝安カリ(18-11-11)を使用 した。着花数,葉色,葉柄中硝酸態窒素,葉の大 きさ,樹冠容積,収量,果実品質,土壌pH を調 査した。 【結果および考察】 試験1:土壌分析の結果,pH が低く,鉄およびホ ウ素の欠乏園が多かった(第1表)。マンガンおよ び銅は欠乏,過剰のいずれも見られ,亜鉛は 2 園 で欠乏が見られた。なお,土壌母岩による微量要 素含量の違いは見られなかった。 試験2:2017 年は未結実で,新梢伸長が盛んであ った。葉の障害発生率は,旧葉および夏葉で処理 区が無処理区より低く,マンガン資材処理による 効果が確認された(第2表)。処理により旧葉の症 状が回復したものの,夏葉の障害発生率が春葉よ り高かったことから分施の必要性が示唆された。 葉中マンガン濃度は処理による影響が判然としな かった(データ略)。 試験3:増肥処理による葉色や葉の大きさ等への 影響はなく,効果は判然としなかった(データ略)。 樹勢に及ぼす影響は短期間で現れにくいため,継 続した試験が必要である。 以上のことから,県内のカンキツ園では,土壌 母岩に関わらず,鉄,ホウ素等の欠乏の事例が多 く,‘早味かん’栽植時には各種微量要素資材の施 用または慣行配合肥料の微量要素成分の増量が必 要と考えられた。また,マンガンの過不足は園地 により異なり,不足する園地では,マンガン資材 の施用により発生を軽減でき,樹勢強化に繋がる 可能性が示唆された。 第1表 カンキツ園における土壌のpHおよび微量要素の含量(2017年) (乾土当り) 熱水可溶性 マンガン 鉄 亜鉛 銅 ホウ素* ppm ppm ppm ppm ppm A(試験2) 5.3 3.1 64 9.7 1.8 0.34 B 4.7 7.9 30 1.1 0.8 0.17 C 4.9 11.8 60 7.6 3.2 0.43 D 4.4 11.7 17 9.5 3.5 0.60 E 4.4 41.0 38 7.3 5.8 0.81 F 5.3 4.6 53 6.2 1.5 0.35 G 5.5 3.9 9 12.0 0.8 0.35 H 5.6 2.3 13 2.8 0.5 0.25 I 5.5 7.6 13 17.5 13.9 0.85 J 5.1 6.6 19 5.5 1.7 0.30 K 4.5 14.5 41 8.5 4.3 0.45 適値 5.5~6.5 4~8 20~300 4~40 1~3 0.5~1.3 注)抽出方法:マンガン(1M-酢酸アンモニウムpH7.0)、交換性鉄(1M-酢酸アンモニウムpH4.5) 可溶性亜鉛・銅(0.1M-塩酸)、熱水可溶性ホウ素(土壌:水=1:2、5分間煮沸) 熱水可溶性ホウ素の分析は、クルクミンシュウ酸法の改良法で測定 表中では、適値下限以下を下線部、適値上限以上を太字として標記 交換性 可溶性 園地 pH 第2表 マンガン資材処理と各葉の障害発生率(2017年) 春葉 夏葉 3/8 6/26 10/11 10/11 10/11 % % % % % 処理区 74 7 2 0 14 無処理区 90 48 47 8 44 t検定 ns * ** ns † 旧葉 新葉 注)1区1樹3反復とし、各樹3枝調査 葉脈間が面状に黄白色化したものを障害葉とした 障害発生率=障害葉数/調査全葉数 アークサイン変換後のt検定により、**、*、†はそれぞれ 1、5、10%水準で有意差あり。nsは有意差なし
早生カンキツ‘熊本EC12’の特性 ○三原崇史・北園邦弥・榊 英雄・藤田賢輔1)・北村光康・坂西 英2) (熊本農研セ果樹・1)熊本県上益城地域振興局・2)熊本県天草広域本部) 【目的】 熊本県における温州ミカンは,これまで県育成 オリジナル品種によるリレー出荷体制を構築して きたが,中晩柑においては,不知火類,甘夏を中 心に多くの品種が栽培されているものの,需要の 多い 12 月に成熟し出荷できる主力品種が加温栽 培の‘不知火’‘肥の豊’等以外になく,生産者 からの要望も大きい。また,12 月から出荷可能な 中晩柑の育成は,年末需要による収益向上と労力 配分の面から農家経営に寄与するものである。 そこで,12 月に成熟し出荷できる高品質で食 味が良く,栽培しやすい早生カンキツを育成した ので,その栽培特性について報告する。 【育成の経過】 本品種は,2005 年に‘はれひめ’に‘はるみ’ の花粉を交配した交雑品種であり,2017 年 6 月 26 日に品種登録種出願公表された。 【特性の概要】 .樹姿は開張性で,樹勢はやや強く,葉の大きさ, 新梢長,節間長は‘はれひめ’と同程度である。 トゲの発生は‘はれひめ’と同程度で、強い夏梢 等には中程度の発生がみられる(表省略)。 果実の大きさは250g程度,果形指数は 120 程 度で果形は扁球形で玉揃いが良く、‘はれひめ’ と同程度である。果皮の着色は,10 月中旬に始ま り,12 月中旬に完全着色となり黄橙色を呈するが ,その後も着色は進んで,赤橙色を呈し、‘はれ ひめ’より赤味(a 値)が強い。赤道部の果皮の厚 さは 3.2mm 程度で‘はれひめ’より薄く,果面は 非常に滑らかで剥皮性は中である(第1表)。 果実品質は,12 月中旬には糖度(Brix)が 12 以上,クエン酸濃度が1%以下となり‘はれひめ’ より糖度が高い。じょうのう膜は薄く,果肉は軟 らかいため、食味は良好である。なお、種子はで きにくいが、周囲に甘夏等の花粉が多いカンキツ があると種子が入ることがある(第2表)。 また、クラッキングやこはん症等の果皮障害は ほとんど発生しない(第2表)。 以上のことから,‘熊本EC12’は外観が良好 なうえ,糖度が高く,さらにじょうのう膜が薄く, 果肉も軟らかいため食味は良好であり,年内に出 荷可能な早生カンキツとして期待できる。 写真1 ‘熊本EC12’(左:着果状況、中:果実3方向、右:果実断面) 第1表 ‘熊本EC12’の果実形態および外観 (2015~2016年の2ヵ年平均) 果皮の 果面の 剥皮の a値 a/b値 厚さ 粗滑 難易 mm 熊本EC12 扁球 118.6 赤橙 30.1 0.47 3.20 滑 中 はれひめ 扁球 122.8 黄橙 22.7 0.32 4.85 滑 ヤヤ易 有意差Z ** ** ** ** Z)**:1%で有意差あり、NS)有意差なし 注1)2015年:‘熊本EC12’‘はれひめ’12月15日収穫・調査 2016年:‘熊本EC12’12月12日収穫・調査、‘はれひめ’12月8日収穫、12月12日調査 注2)果皮色は色差計を用いて測定 第2表 ‘熊本EC12’の果実品質 (2015~2016年の2ヵ年平均) じょうのう 果汁の クラッキング 膜の硬さ 多少 発生 g % % 熊本EC12 250.9 79.4 12.8 1.00 12.9 薄 ヤヤ多 少 少 はれひめ 270.9 72.2 10.2 0.66 13.1 薄 中 少 少 有意差Z NS ** ** ** ** Z)**:1%で有意差あり、NS)有意差なし 注)2015年:‘熊本EC12’‘はれひめ’12月15日収穫・調査 2016年:‘熊本EC12’12月12日収穫・調査、‘はれひめ’12月8日収穫、12月12日調査 品種名 糖酸比 品種名 果実 の形 果径 指数 果皮 の色 果皮色 1果重 果肉 歩合 糖度 (Brix) クエン酸 濃度 種子数
早生カンキツ‘みはや’の予措・貯蔵程度が果実品質に及ぼす影響 ○中村健吾・相川博志1)・北園邦弥 (熊本農研セ果樹・1)熊本県農林水産部) 【目的】 カンキツ‘みはや’は,果皮が鮮やかな赤橙色 で外観が美しく,糖度が高くて酸味が少なく,食 味の良い品種であるが,適正な予措:貯蔵方法が 不明である。そこで,適正な予措程度,貯蔵温度 を明らかにする。 【材料および方法】 熊本県農業研究センター果樹研究所に植栽され た‘みはや’(2012 年高接ぎ,中間台木‘熊本 EC10’) 4樹を供試した。 試験1 予措程度の検討 予措程度を「無予措(0%),3%予措,5%予 措,裸果」で検討した。2017 年 12 月 14 日に採取 した果実を各区 20 果に区分し,各減量率に達した 時点でポリ個装を行い常温貯蔵庫で貯蔵した。 収穫時と貯蔵後に糖酸度,食味等果実品質と果皮 色を調査した。 試験2 貯蔵温度の検討 貯蔵温度を5℃区 ,10℃区、常温区で検討した。 収穫後3%予措した後各温度に設定した貯蔵庫に コンテナごと搬入し,裸果で貯蔵した。果実品質 と果皮色について調査した。 【結果および考察】 予措程度では,1月 24 日調査で無予措に比べ予 措をかけた区の糖度が高い傾向がみられたが,2 月 23 日調査では差がなかった。食味は裸果区が最 もよく,ついで5%予措区が良好であった(表1)。 また,予措後にポリ個装した果実(予措区)は, 裸果でそのまま貯蔵した果実(裸果区)と比較し て赤味(a 値、a/b 値)が劣る傾向がみられた。 貯蔵温度では,貯蔵後 42 日目で糖度の差がなか ったが,貯蔵後 64 日目では5℃区と比較して常温 区が高かった。減量率は,常温区,10℃区,5℃ 区の順に大きく,常温区は果皮のしなびが目立っ た。果皮色は,5℃区と比較して 10℃区の赤味(a 値、a/b 値)が濃かった(表2)。5℃区では,低 温障害と考えられる油胞黒変が散見された。 以上の結果より,‘みはや’では,予措をかけな い裸果区で食味が高く,果皮色も赤みが強い傾向 であった。貯蔵温度では,常温区で糖度がもっと も高いが,減量率,しなびも高かった。果皮色は 10℃区が最も赤味が強かった。
施 設 不 知 火 園 に お け る 環 状 剝皮 に よ る 生 産 力 向 上 ○久間祥子・池田繁成・古賀孝明1) (東松浦農業改良普及セ・1)佐賀県庁農産課) 【目的】 当管内の施設不知火栽培では,地根が発生し,着 花・果不良,裂果により収量や果実品質が低下して いる。そこで,自根発生園で加温前に環状剝皮処理 を行い,着果・花量や果実肥大・品質,樹体栄養等 に及ぼす影響を検討した。 【材料および方法】 佐賀県唐津市の施設栽培で地根が発生し,単収 が著しく低い 15 年生の不知火に環状剝皮処理を 行い,近隣の同じ栽培条件で連年安定生産してい る不知火を対照とした。剝皮区は 2017 年 1 月上 旬に主枝単位で 1 樹あたり 3~4 か所に,枝外周 の 1/2 に木質部が露出する程度の環状剝皮を行っ た。2 月上旬に加温を開始し,一般管理を行いなが ら,2017 年 12 月中旬に収穫した。調査項目は 6 月 中旬から果実肥大と葉色を経時的に計測し,収穫 時には果実品質と単収を調査した。収穫後に剪定 をして昨年と同じ手順で環状剝皮処理を行った。 また,剪定程度のバラツキが大きかったので,2018 年 4 月に剝皮園における弱剪定樹と強剪定樹を抽 出し,着花調査と葉分析を行った。 【結果および考察】 果実肥大について剝皮区は対照区に比べて,初 期肥大が劣ったが後期肥大し同等となった(図1)。 収穫時には剝皮園の単収は過去 2 年に比べて約 2.5 トン増加した(図 2)。果実品質について剝皮 区は対照区と比較して果肉歩合は低く,糖度・酸含 量ともに低い傾向であった(表 1)。 2018 年の着花は環状剝皮処理園で剪定の強弱 によりバラツキがかなり大きかった(表 2)。樹体 栄養は着花の多かった弱剪定樹と着花の少なかっ た強剪定樹で大きな差はなかった(表 3)。そのた め着花量の多少は剪定の強弱の影響が大きいと考 えられた。 以上のことより自根が発生した施設不知火は環 状剝皮により収量は増加するが,果実品質につい ては剝皮強度を上げるなどの追加の対策が必要で あると考えられた。また環状剝皮を処理しても剪 定の程度が着花の多少に影響を及ぼすことから, 弱剪定で対応することが望ましいと考えられた。 自根発生による着花減少や品質低下に対する根 本的な対策は自根の切除や若木への改植であるの で,当技術は自根が根の大半を占め,自根切除に よる樹勢低下が著しいと予測される場合に,改植 準備期間に短期的に果実生産を継続する際に活用 できると考えられた。 図1 果実肥大の推移 表1 収穫時の果実品質 図2 環状剝皮園における収量の推移 N Mg K Ca 弱剪定樹 2.55 0.25 0.37 3.52 強剪定樹 2.52 0.26 0.36 3.69 N.S. N.S. N.S. N.S. 乾物100g中g(%) 表 3 環状剝皮樹の剪定程度による樹体栄養 ※N.S.は T 検定により 5%水準で有意差なし。 表2 環状剝皮樹の剪定程度による着花量 ※*はT 検定により 5%水準で有意差あり。N.S.は有意差なし。 総着花数 有葉花数 直花数 弱剪定樹 6.59 6.42 0.17 強剪定樹 1.03 1.03 0.00 * * N.S. 葉100枚あたり(個) 果重 縦径 横径 果皮重 果肉歩合 糖度 酸含量 (g) (cm) (cm) (g) (%) (brix) (%) 剥皮区 329 83.7 89.5 77.2 76.6 11.3 1.01 対照区 319 77.0 89.4 56.0 82.4 12.1 1.50 処理区
土壌水分目視計の水位低下速度に与えるカンキツ‘大将季’の地上部の有無および設置位置の影響 ○川村秀和・熊本 修 (鹿児島農総セ) 【目的】 加温栽培カンキツ‘大将季’では,満開 80~ 140 日に pF2.7~2.9 の土壌乾燥により,水スト レスを付与することで,糖度が高まることを報 告した(久木田ら 2017)。これまで,土壌の 水分状態は,テンシオメーターを用いて測定し ていたが,近年,ウンシュウミカンでは,pF2.8 以 上 の 土 壌 水 分 を 測 定 で き る 土 壌 水 分 目 視 計 ((株)藤原製作所製)を利用した水分管理技 術が開発されている(黒瀬,2016)。そこで, 本研究では,鹿児島県の加温栽培‘大将季’園 地 に お い て ,土 壌 水 分 目視 計 を 利 用 す る に当 た り,計測値と地上部の有無および設置位置の関 係を明らかにすることを目的とした。 【材料および方法】 (試験 1)鹿児島農総セのビニルハウスにおいて, 赤玉土を主体とした培養土を充填した直径 50cm 深さ 36cm の鉢で育成した‘大将季’2 年生 6 樹 を供試した。2017 年 9 月 15 日 9 時頃に主幹基部 から切断した剪除区と切断しないでそのままにし た無処理区を各3樹設定した。水管理は,鉢底か ら流れる程度に灌水後,9 月 7 日~10 日まで無灌 水として,9 月 11 日~21 日まで毎日鉢当たり3 mm 相当量を灌水した。土壌水分目視計は,樹の 株元から約 10cm の位置,ポーラスカップの先端 が深さ 20cm になるように設置した。土壌水分目 視計の水位は,9 月 8 日~21 日まで毎日 9 時に測 定し,前日に測定した水位との差を日当たりの水 位低下速度として示した。 (試験 2)鹿児島農総セの硬プラスチックハウス において,2017 年 9 月 11 日~12 月 22 日まで無 灌水とした‘大将季’5 年生 1 樹を供試した。土 壌水分目視計は,供試樹の株元から約 70cm の樹 冠外周を樹の東側から5等分した位置に,ポーラ スカップの先端を深さ 20cm および 40cm になるよ うに設置した。土壌水分目視計の水位は,10 月 27 日~2018 年 1 月 5 日まで 1 週間間隔で 9 時に 測定した。 【結果および考察】 (試験 1)土壌水分目視計の水位低下速度は,灌 水停止後から徐々に早まり,2~4cm/日の範囲で 推移した。剪除区では,主幹の剪除後から,水位 低下速度は,0~2cm/日の範囲で推移し,無処理 区に比べて遅くなった(図 1)。 (試験 2)土壌水分目視計は,樹冠外周直下に等 距離に設置した条件下では,水位低下速度の変動 係数は 20cm 深では 30~70%程度,40cm 深では 40 ~55%程度となり,前者では後者より変動が大き い傾向であった(表 1)。 以上のことから,pF2.8 以上の土壌水分状態に おいて,‘大将季’の地上部からの蒸散が土壌水 分目視計の水位低下速度に反映されること,同じ 樹の樹冠外周直下の範囲においても,設置位置に より,水位低下速度が 30%以上変動することを明 らかにした。 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 9/8 9/10 9/12 9/14 9/16 9/18 9/20 9/22 土壌水分 目視計 水位低 下速度 ( cm/ 日 ) 月/日 剪除区 無処理区 剪除区:主幹剪除 調査日 (月/日) 20cm 深 水位低下速度 (cm/日) 変動 係数 (%) 40cm 深 水位低下速度 (cm/日) 変動 係数 (%) 11/3 0.66 40.4 0.72 49.1 11/10 0.52 46.6 0.66 54.3 11/17 0.39 71.1 0.67 52.4 11/24 0.47 46.6 0.59 55.1 12/1 0.62 30.5 0.75 39.9 表1‘大将季’の樹冠外周直下(株元から 70cm)の 土壌水分目視計の水位低下速度 図1 ‘大将季’の地上部の簡易土壌水分計の水位 低下速度に及ぼす影響 注)エラーバーは標準誤差(n=3) 注)1.水位低下速度は,1 日当たりに換算した 2.変動係数=標準偏差/平均値×100(n=5)
反射マルチ敷設によるカボスの果皮緑色向上効果 ○桂 奈央・楢原 稔 (大 分 農 林 水 産 研 指 果 樹 ) 【目的】 近年,カボスの加工需要が増す一方で,青果量は 減少傾向にある。特に貯蔵向けカボスが足りず, 貯蔵後半に出荷の空白期間が発生するなど流通上 の問題となっている。貯蔵用果実には十分に日光 をあて緑色を濃くしておく必要があるが,生産者 の高齢化によって作業労力が低下し,摘葉などの 管理作業が行えなくなり,果皮緑色の濃いものが 少なくなることが懸念されている。そこで省力的 に果皮緑色を向上させる事を目的として,反射資 材の敷設が果実品質(外観)に与える効果につい て調査した。 【材料および方法】 場内の 40年 生 カ ボ ス ‘ 大 分 1 号 ’ を 供 試 し た( 2017年 5月 13日 満 開 )。 生 理 落 果 終 了 後 の 2017年 7月 11日 に 反 射 マ ル チ 資 材( 白 王 シ ー ト M(水 抜 穴 付:柴 田 屋 加 工 紙 ),タ イ ベ ッ ク ,シ ル バ ー マ ル チ ) を 株 元 1 m 弱 空 け ,幅 1.5m ず つ で 列 に 沿 っ て 敷 設 し た( 図 1 )。対 照 区 は 資 材 を 使 わ ず 裸 地 と し た 。2017年 8月 28日 に 収 穫 し , 県 南 柑 橘 選 果 場 の CA貯 蔵 庫 に て 1 区 1 コ ン テ ナ (18kg)で 貯 蔵 を 行 っ た 。 反 射 マ ル チ に よ る 果 皮 緑 色 の 向 上 効 果 を 確 認 す る た め ,各 資 材 敷 設 前 に 裾 部 の 果 実 を 1 樹 30果 選 び ,果 皮 色 測 定 部 位 を マ ー キ ン グ し ,色 彩 色 差 計 を 用 い て 貯 蔵 終 期 ま で 経 時 的 に 測 定 し た 。 試 験 は 1 区 1 樹 3 反 復 で 行 っ た 。 【結果および考察】 白王シート区及びタイベック区は対照区に比べ 敷設後約2週間で果皮緑色の向上に有意差が現れ た(表1)。収穫時にはシルバーマルチ区と対照区 の間にも果皮緑色の向上に有意差が見られた。貯 蔵終期は差が大きくなり,白王シート・タイベック が優れる結果となった(表1,図2)。果実内品質 については収穫時では大きな差はなかったが,貯 蔵終期では対照区が優れる傾向が見られた(表2)。 以上のことから,生理落果後に反射マルチ資材 を敷設することで裾部の果実について果皮緑色が 向上し,貯蔵中の果皮緑色維持も優れたため,反射 マルチ資材の活用は効果的であると言える。果実 内品質については問題となる程度ではないが引き 続き調査を行う。 図2 各区の果皮色の推移 図1 マルチの敷き方 表2 貯蔵前後の果実内品質 表1 マルチ前~貯蔵終期のハンターの黄化
スモモ‘カラリ’の大玉系統の特性 ○稲森博行・久米隆志1) (鹿児島農総セ・1)鹿児島農総セ大島) 【目的】 スモモ‘カラリ’は,低温要求量が少ない品種 で,奄美大島における栽培面積は67ha(2014年) に及ぶ。奄美地域では,2002年頃から‘カラリ’ の有望系統の探索を行い,2004年には12系統を収 集し,その中から,果実が大きく,結果率が高い 大玉系統を選抜した。そこで,大玉系統‘カラ リ’の特性を明らかにすることを目的として調査 を実施した。 【材料および方法】 調査は大島郡大和村の現地ほ場で実施した。 2016年に樹齢11年生の大玉系統‘カラリ’2樹, 既存‘カラリ’2樹を用いた。摘果は地域の栽培 基準に準じて,1果そう当たり果実1個を残し, 着果間隔は6cm程度とした。 2015年と2016年には,開花期に着花数を,生理 落果後に着果数を数え,結果率を求めた。2014~ 2016年には収穫果実数を数え,2016年には樹当た り収量を測定した。2014~2016年には7分着色し た果実を樹当たり10個採取し,果実品質を評価し た。 【結果および考察】 大玉系統は既存‘カラリ’と比較して,開花盛 期は同時期であったが,収穫盛期は同時期か5日 程度遅れた(データ略)。2015年および2016年の 結果率は,大玉系統ではそれぞれ33.5%および 14.2%と,既存‘カラリ’よりも高かった(デー タ略)。 2014~2016年における樹当たり収穫果実数およ び樹冠占有面積当たり収穫果実数は,大玉系統で は既存‘カラリ’よりも多かった(表1)。2016 年における平均果実重は,大玉系統は60.2gで既 存‘カラリ’より大きかった。果実の糖度および リンゴ酸含量は,大玉系統では既存‘カラリ’よ りも低かった。 以上の結果から,大玉系統‘カラリ’は,既存 ‘カラリ’に比べて,糖度およびリンゴ酸含量は 低いものの,果実が大きく,収穫果実数も多く, 生産が安定することが示唆された。 表1 樹当たり収穫果実数,樹冠占有面積当たり収穫果実数,樹当たり収量,平均果実重および果実 品質の比較 樹当たり収穫 樹冠占有面積当た 樹当たり 平均果実 糖度 リンゴ酸 果実数(個) り収穫果実数(個) 収量(kg) 重(g) (Brix) 含量(%) 2014年 大玉系統 500 19.5 - - 9.5 1.17 既存‘カラリ’ 246 10.6 - - 9.8 1.13 2015年 大玉系統 865 31.2 - - 9.2 1.22 既存‘カラリ’ 256 12.6 - - 9.9 1.39 2016年 大玉系統 403 12.6 24.8 60.2 9.3 1.26 既存‘カラリ 186 10.5 7.8 41.1 9.9 1.49 系統 * * - - ** ** 年次 ns ns - - ns ** 交互作用 ns ns - - ns * 注)1.樹冠占有面積は,平棚栽培ではないが平面に結果しており,樹冠投影法により求めた 2.果実品質は,45~85gの果実を供試した 3.分散分析により,**:1%水準,*:5%水準で有意差あり,ns:有意差なし
表1 「秋麗」における除芽・摘蕾処理による果実品質への影響 除芽4芽 354 a(z 14.7 a 3.3 a 除芽6芽 421 b 14.6 a 3.7 a 摘蕾 399 b 14.6 a 3.6 a 無処理 362 a 14.6 a 3.6 a 除芽4芽 357 a 14.2 a 3.5 a 除芽6芽 357 a 14.5 a 3.2 a 摘蕾 349 a 14.5 a 3.6 a 無処理 326 a 14.5 a 3.6 a z) Tukey法により同年における同列間の異符号間には5%水準で有意差あり y) 良い:5~悪い:1の5段階評価 2015年 2016年 試験区 1果重 糖度 果形y) (g) (Brix) 調査年 ニホンナシ‘秋麗’における除芽及び摘蕾が着果管理作業時間に及ぼす影響 ○岩谷章生・藤丸 治1) (熊本農研セ果樹・1)熊本県農林水産部) 【目的】 ニホンナシ‘秋麗’は,高品質な早生ナシとし て,熊本県において 2009 年から産地化を進めてお り,現在約 15ha で栽培されている。当該品種は着 果が非常に多く,大玉果の生産には早期の予備摘 果を必要とするため,摘果作業に多大な労力を要 し,特に予備摘果時期には短期間に大きな作業負 担が発生する。そこで,せん定後の花芽除芽と開 花前の摘蕾が摘果等着果管理に係る作業時間と果 実品質に及ぼす影響を明らかにする。 【材料及び方法】 熊本県農業研究センター果樹研究所(熊本県宇 城市)内圃場に植栽された4本主枝‘秋麗’2樹 を使用し,側枝1m当たり花芽を4つ(以下除芽 4芽区)と6つ(以下除芽6芽区)残し,残りの 花芽を折り取る区に加え,出蕾時に摘蕾をした区 (以下摘蕾区)を設定して,各樹処理区ごとに1 主枝を供し,2015,2016 年に調査を実施した。 除芽,摘蕾,予備摘果,本摘果時の各作業時間 を計測し,無処理と比較した。併せて,収穫時に 各区の果実品質を調査し,無処理と比較した。除 芽処理は,2015 年は 3 月 17 日,2016 年は 3 月 16 日に実施した。全ての区で,予備摘果は各年満開 20 日後に,本摘果は 40 日後に実施し,側枝1m 当たり4果を最終着果量とした。作業時間の計測 は各区2年生以上の側枝,1年生側枝各 20 本に対 して実施した。 【結果及び考察】 側枝1m当たりの作業時間について,2年生以 上の側枝(以下短果枝側枝)では,予備摘果に要 する時間が無処理に比べて除芽4芽区で 35%程 度に,除芽6芽区で 50%程度に,摘蕾区で 75%程 度に低減した。また,予備摘果に除芽,摘蕾,本 摘果を加えた時間では,除芽4芽区で無処理に比 べて 50%程度に,除芽 6 芽区で 75%程度に低減し たが,摘蕾区はほぼ変わらなかった(図1)。1年 生側枝(以下長果枝)も,短果枝側枝と同様の傾 向であったが,全処理区で予備摘果及び除芽,摘 蕾,本摘果を加えた作業時間の無処理に対する削 減効果は短果枝側枝より少なかった(データ略)。 収穫果の1果重は,除芽6芽区や摘蕾区で大き くなる傾向にあり,糖度や果形には処理による差 はなかった(表1)。また,階級は除芽6芽区で大 玉果(3L以上)の比率が最も高く,除芽4芽区 や摘蕾区は無処理より大玉果の比率は高くなるも のの,除芽6芽区より低かった(図2)。 除芽や摘蕾を実施すると,着果数が減ることから, 予備摘果の作業時間が低減し,かつ大玉果生産が可 能となる。しかし,摘蕾は,除芽と異なり,全ての 果叢に果実が残ることから,除芽に比べ作業時間の 低減効果が低かった。また,除芽では残す花芽が少 ないほうが,作業時間低減効果は高いが,本摘果時 に果実が選べなくなる。したがって,最終着果量よ りやや多めに花芽を残すことが大玉果生産にはよ り効果があることが明らかとなった。
ブドウ‘ゴルビー’における環状剥皮処理による着色向上対策 ○城戸皓大・栗野太貴1)・佐藤吉史・生賴由喜男2)・山口秀一・金丸俊徳 (宮崎総農試・1) 西臼杵支庁・2) 東臼杵農林振興局) 【目的】 近年,温暖化の影響により西南暖地におけるブ ドウ栽培では着色不良が大きな問題になっており, 宮崎県内産地でも着色系ブドウにおいて,着色不 良が散見されている。ブドウの着色向上対策とし て,環状剥皮処理が行われているが,この処理は根 の伸長を一時的に停止させ,剥皮部の癒合が不良 な場合は根の伸長が回復せず,樹勢の低下を引き 起こす場合がある。そこで,環状剥皮処理技術の確 立を目的とし,果実品質および連年処理による樹 体への影響を検討した。 【材料および方法】 宮崎県総合農業試験場内のフルオープンハウス 内にある,H型整枝‘ゴルビー’18年生を供試 し,無核栽培で行った。環状剥皮処理は2016,20 17年の2年連続処理とし,満開(2016年:4月26 日,2017年:5月5日)の45日後に地上1mの主幹 部に2cm幅で行った。剥皮部位は保護のため接ぎ 木用の接ぎ木テープで被覆し,処理から1ヶ月後 に外した。2016年8月9日および2017年8月8日に一 斉収穫し,収穫した果実について果房重,粒数, 1粒重,果皮色,Brixおよび酸含量を調査した。B rixは糖度計(アタゴPR-101)を用いて,酸含量 はデジタルビューレット(タイトレット)による 0.1 N NaOHの滴定量から測定した。 樹勢への影響を確認するため,環状剥皮処理を した翌年の花穂着生を確認し,全芽座あたりの花 穂新梢着生数を算出した。 【結果および考察】 果皮色およびBrixは処理を行うことで高くなり (表1),特に果皮色では高い着色向上効果が観 察された(図1)。酸含量では無処理で高くなる 傾向がみられた(表1)。剥皮部位は約1ヶ月で癒 合した(データ無し)。花穂着生率はすべての処 理区で50 %以上であり,1芽座あたり1花穂は確保 されており,環状剥皮による翌年の花穂着生への 影響はみられなかった(表2)。 環状剥皮は形成層を含む薄皮状の師部組織を除 去することから,根への養分分配を阻止する一方 で,果実への分配を促して,着色が向上すると考 えられている。今回の処理ではBrix値も高くなっ たことから,着色向上だけでなく,糖度が上がる 可能性が考えられた。処理による翌年の花穂着生 への影響はみられなかったことから樹勢低下等の 影響は今回確認できなかった。剥皮中は根の伸長 が一時的に停止するといわれているが,1ヶ月以 内に癒合すれば樹勢への影響は低いと考えられ た。 以上のことから‘ゴルビー’において満開45日 後に2 cm幅で主幹部へ環状剥皮処理を行うことで 着色および糖度が向上し,処理による翌年の花穂 着生への影響はなく,樹勢低下はみられないこと が分かった。 c.c.値はゴルビー専用カラーチャート(山梨県総合理工学研究機構)を用い,0~6 の 7 段階で評価 z:異なる英数字は Mann-Whitney U 検定(5%)で有意があることを示す y:異なる英数字は t 検定(5%)で有意があることを示す 表 1 環状剥皮による果実品質 表 2 環状剥皮による翌年の 花穂着生率 花穂着生率 = 花穂着生新梢数 / 全芽座数 × 100 環状剥皮処理 無処理 図 1 環状剥皮処理による収穫果房
ハ ウ ス ミ カ ン 栽 培 に お け る ヒ ー ト ポ ン プ 加 温 技 術 (第 10 報)ヒートポンプ導入による炭酸ガス排出削減量の J-クレジット化 ○池田繁成・古賀孝明1)・末永達郎2)・久間祥子 (東松浦農業改良普及セ・1)佐賀県庁農産課・2)唐津農業協同組合) 【目的】 佐賀県唐津・東松浦地区では,重油高騰によりヒ ートポンプ(以下,HP)導入による省エネ対策が 進んでいる。この結果,ハウスミカン栽培における 重油消費量は著しく減少しており,コスト低減と ともに炭酸ガス排出量も削減されている。よって 炭酸ガス排出量をクレジット化して売却する J-クレジットの取り組みを行った。 【材料および方法】 省エネと生産コスト低減を図るため,平成 26~ 27 年度に燃油高騰緊急対策施設園芸省エネ設備 リース事業を活用して HP の大規模な導入を行っ た。HP 導入の効果を確認するために,生産園地台 帳を作成し,園地ごとの重油消費量を調査して HP 未導入園との比較を行った。重油削減量から地域 内で大幅な炭酸ガス排出が低減されていると試算 されたため,これをクレジット化し売却する, J-クレジットの創出にむけた取り組みを開始した。 J-クレジットの創出に必要な認証手続きや取り組 み組織の結成等はJAからつが行い,佐賀県東松 浦農業改良普及センターでは,炭酸ガス排出量の 試算や認証手続きの支援を行った。 【結果および考察】 平 成 26~ 27 年 度 支 援 事 業 を 活 用 し て 合 計 1,323 台の HP が現地ハウスに導入された。導入 面積は 5,253aであり,全栽培面積の 61.2%で 導 入 さ れ ,導 入 農 家 戸 数 は 137 戸 で 部 会 員 の 73%にのぼる(表1)。 部会全体での HP 導入園における重油使用量 は,H29 年度産で 1,089KL 削減された。また,10a 当たりでは 7.28KL 削減された(表2)。 これにより炭酸ガス排出量が 8,000~10,000t 削減されていると試算された。 炭酸ガス排出量を J-クレジット化してクレ ジットの創出や売却を行う組織として,「からつ エコ・ハウス倶楽部」を結成した。J-クレジッ ト制度事務局に対し,プログラム型排出削減プ ロジェクト計画書を提出し,H29 年に認証され た。これにより,H30 年度生産分よりクレジッ ト創出へ取り組みを開始した。現在は HP 導入園 全てで電力使用量の記帳を行っており,1作分 の使用電力を炭酸ガス排出削減量として確定す る作業を実施している。 今後の課題としては,クレジット売却利益の 有効活用による環境保全型農業の推進が挙げら れる。 HP導入数 導入農家戸数 導入面積 *普及率 年度 (台) (戸) (a) (%) H26 1,201 107 4,737 55.2 H27 122 30 516 6.0 累計 1,323 137 5,253 61.2 *導入面積(a)/栽培面積(a) 表1 燃油高騰緊急対策施設園芸省エネ設備リース事業活用 によるHPの導入状況 表2 HP導入による重油使用量の削減(H29実績) 総重油使用量 園地重油使用量 *削減率 園地 (KL) (KL/10a) (%) HP導入園 5,255 10.48 未導入園 6,344 17.76 園地間差 -1,089 -7.28 59.0 *HP導入園重油使用量(KL/10a)/未導入園重油使用量(KL/10a)
普通ウンシュウミカンを長期貯蔵できる冷温定湿貯蔵システムの性能および果実品質への影響 ○荒牧貞幸・藤山正史1)・服部國彦2) (長崎県県北振興局・1)長崎農林技開セ果樹・2)大青工業(株)) 【目的】 貯蔵した普通ウンシュウミカンは,3~4月出 荷において高単価で取引されている。長崎県では, 古くから土蔵貯蔵庫を利用した普通ウンシュウの 貯蔵が実施されてきたが,気候温暖化に対応でき る長期貯蔵技術の開発が必要となった。そこで, 普通ウンシュウを3月下旬まで長期貯蔵する技術 として,既存の土蔵貯蔵庫を活用した,貯蔵に最 適な庫内環境を制御する冷温定湿貯蔵システムを 開発し,その性能および果実品質への影響につい て検討した。 【材料および方法】 ① 冷温定湿貯蔵システムの作成と温度湿度測定 冷温定湿貯蔵システムは,機械による自動貯蔵 管理(設定:温度 5~6℃,湿度 85~88%)とし た。本体は大青工業株式会社製で,長崎農林技開 発セとの共同研究で開発し 2013 年に試作した。 仕様は,冷凍機,送風機等で構成され可動式の貯 蔵機器で,温度・湿度センサにより外気温と庫内 温度を計測しながら設定温湿度に制御する仕組み。 本 体 か ら 庫 内 へ の 送 風 は , 既 存 貯 蔵 庫 の 壁 に 20cm の穴を開け不織布ダクトを天井下部に吊り 下げて送風した(図1)。貯蔵期間中(2014 年 12 月26 日から 2015 年 3 月 31 日)の温度,湿度は, 温湿度ロガーを庫内(天井下)および果実を収納 した木箱内に設置し1時間毎に測定した。対照は、 隣接地にある土壁造りの慣行貯蔵庫で,天候に応 じて戸を開閉して貯蔵管理を行った。 ② 冷温定湿貯蔵システムによる貯蔵性の検討 2014 年9月にジベレリン 3.3ppm+プロヒドロ ジャスモン25ppm を処理し,2014 年 12 月上旬 に収穫した普通ウンシュウを用い,約 20 日間の 予措後,2014 年 12 月 26 日から 2015 年 3 月 31 日まで貯蔵した。出庫後は,減量率,腐敗率,果 実障害発生率,青果率,果実糖度,酸含量,腐敗 臭を調査した。 【結果および考察】 貯蔵庫内および果実を収納している木箱内では, 冷温定湿貯蔵システムが温度5~6℃,湿度 82 ~97%で,慣行貯蔵より有意に温湿度が安定して いた(表1)。最適温湿度とされている温度3~ 6℃,湿度 85%(80~90%)が同時に出現した 時間の割合は,冷温定湿貯蔵システムの庫内およ び木箱内で 70%以上と高かった(表1)。果実の 減量率,腐敗果発生率は,冷温定湿貯蔵システム が慣行貯蔵より有意に低くなった(表2)。果皮障 害発生指数は,しなび果,へた枯れで冷温定湿貯 蔵システムが慣行貯蔵より有意に低かった(表2)。 青果率は,冷温定湿貯蔵システムが慣行貯蔵より 有意に高かった(表2)。果実糖度,酸含量は,冷 温定湿貯蔵システムと慣行貯蔵に差はないが,貯 蔵臭は冷温定湿貯蔵システムが慣行貯蔵より有意 に低かった(表2)。 以上の結果,普通ウンシュウの長期貯蔵用に開 発した冷温定湿貯蔵システムは,慣行貯蔵より最 適な温度湿度の貯蔵環境に調整し,果実品質を保 持できることが明らかとなった。 z浮皮果,しなび果は無(0)~甚(3)4 段階で指数=(Σ(発生程度別果数×発生 程度))/(3×調査果数)×100,ヘタ枯は,無(0)~甚(4)の 5 段階で指数=(Σ (発生程度別果数×発生程度))/(4×調査果数)×100 で算出 y 青果率は,着色歩合9分以上,浮皮果,しなび果は軽(1)以下,ヘタ枯は軽 (2)以下の発生果数から算出 x 貯蔵臭は無(0),やや感じる(1),強く感じる (2)の官能調査の平均 w*は,t検定により5%の水準で有意差あり,ns は有意差なし z 温度3~6℃および湿度80~90%(85%±5%)内に同時に出現した時間の割合(参 考文献:牧田好高,農文教農業技術体系第1-Ⅰ巻,技359) y *は,t検定により5%の水準で有意差あり 図1 冷温定湿貯蔵システムの概要図(2014) 標準偏差 標準偏差 冷温定湿貯蔵 5.8 1.0 81.9 3.4 71.7 慣行貯蔵 8.8 3.3 67.5 9.9 0.0 有意差y - - -冷温定湿貯蔵 5.6 0.7 88.8 2.5 71.9 慣行貯蔵 7.3 2.8 82.6 8.0 16.9 有意差y - - -区 分 最適温湿度z 出現時間率(%) 湿度(%RH) 温度(℃) 平均 平均 * 木 箱 内 * * 庫 内 * 表1 冷温定湿貯蔵システムによる貯蔵庫内および収納 木箱内の温湿度(2014) 表2 冷温定湿貯蔵システムによる普通ウンシュウの貯 蔵果実への影響(2014) 冷温定湿貯蔵 8.0 2.1 3.1 11.9 17.7 88.6 11.9 0.53 0.4 慣行貯蔵 11.4 3.6 7.4 29.5 31.8 61.4 12.0 0.48 1.1 有意差w * * ns * * * ns ns * 区分 腐敗率 しなび果 へた枯れ 貯蔵臭x (g/100g) 酸含量 減量率 (%) 糖度 (Brix) (%) 果皮障害果発生指数z 青果率y (%) 浮皮果
1)香酸柑橘類の果皮精油の匂い特性の比較.楊ら 日本食品工業学会誌 Vol.39 No.1 16~24,1992 香酸カンキツ‘辺塚ダイダイ’の果実に含まれる香気成分 ○岩部友里・吉﨑由美子・濱中大介・渡部由香 (鹿児島大農) 【目的】 辺塚ダイダイは昨年地理的表示保護制度(GI)に登 録された鹿児島県大隅地方に特有の香酸カンキツで ある。香りが豊かでカボスやスダチのように緑色果 実から搾った果汁を料理や酒の風味付けに使用する ことが多いが,その香気成分については詳しく知ら れていない。本研究は辺塚ダイダイの香気成分を明 らかにすることで,特性や機能性の解明につながる 情報を得,さらに収穫後に香りを持続させる貯蔵法 を確立することを目的としている。 【材料および方法】 2017 年 10 月 10 日に果実を採取後,0.03mm ポリ袋 内で 4℃で 8 ヵ月 MA 貯蔵した果実のフラベドと果汁 を用いた。フラベド重量の 5 倍の 100%エタノールを 加えてミルミキサー(IFM-C20G 岩谷産業株式会社) で摩砕した。上清 10μL と 10%エタノール 10mL をボ トルに入れ,ツイスターに香気成分を吸着させた。 果汁は 100μL と 10%エタノール 10mL を使用した。 その後,ツイスターを蒸留水ですすぎ,水分を取り 除いた後,TDS(加熱脱着システム)にセットし,GC-MS (アジレント・テクノロジー株式会社,G3172A)で 分析を行った。カラムは InertCap Pure-WAX 0.25mm I.D.×60m,df 0.25μm(ジーエルサイエンス株式会 社)を使用し,カラム温度は 50℃で 5 分保持した後, 50℃から 240℃まで 3℃/分で昇温させ,240℃で 5 分保持した。キャリアガスは He を使用した。GC-MS の面積百分率法(各ピークの比率=ピーク面積/ピ ークの総面積×100)で各成分の含有率を求めた。 【結果および考察】 表 1 にフラベド,表 2 に果汁の香気成分を示した。 果皮には Limonene,果汁にはγ-Terpinene が最も多 く含まれていた。楊らはスダチ,カボスの果皮には 80%程度の Limonene が含まれると報告しているが(1), それと比較すると辺塚ダイダイは Limonene が約 70% と若干低い割合であり,逆にα-Pinene,β-Pinene やγ-Terpinene が多かった。フラベドにはテルペン 類のほかに,アルデヒド類が同定された。Citral は Geranial と Neral の混合物であり,フラベドには 0.59%含まれていたが,これは楊らの報告でのスダチ, カボスの含有量よりも少なかった。Furfral はヘツ カダイダイにのみに見いだされた。表1,2には比 較的割合の大きな成分を示したが,微量でも大きな 貢献をしている他の成分があるかもしれない。 今後は貯蔵条件や貯蔵期間を変えた果実での測定 を行い,収穫時との香気成分の差異を調べることで, ヘツカダイダイ特有の香りを維持させる貯蔵方法を 確立させたい。 表1 ヘツカダイダイフラベドの主な香気成分 表2 ヘツカダイダイ果汁の主な香気成分 aaaa成分名 Area%
aaa Limonene aaaa70.44
aaa γ-Terpinene aaaa10.10
aaa β-Myrcene aaaaa3.81
aaaα-Pinene aaaaa2.34
aaa3-Carene aaaaa1.28
aaaβ-Pinene aaaaa1.14
aaaTerpinolene aaaaa0.82
aaaCitral aaaaa0.59
aaaLinalool aaaaa0.25
aaaFurfral aaaaa0.08
aaaothers aaaaa9.15
aaaa成分名 Area%
aaaaγ-Terpinene aaaa45.92
aaaaLimonene aaaa29.83
aaaaα-Pinene aaaaa4.76
aaaaTerpinolene aaaaa2.32
aaaaβ-Pinene aaaaa1.99
aaaaβ-Myrcene aaaaa1.85
aaaaβ-Phellandrene aaaaa1.84
aaaaα-Terpinene aaaaa1.18
aaaaCaryophyllene aaaaa1.12
香酸カンキツ‘辺塚ダイダイ’の果実に含まれるフラボノイド ○木村由華・渡部由香・濱中大介 (鹿児島大農) 【目的】 辺塚ダイダイは鹿児島県の大隅半島南部の辺塚 地域を中心に栽培されている香酸カンキツであり, 昨年 12 月には農林水産省の特定農林水産物の登 録を受けた。 主に刺身や焼き魚に絞って香りを楽 しむものとして自家用で消費されてきたが,近年 ではジュースやドレッシング等の加工品も開発・ 販売されており,果実に含まれる機能性成分を明 らかにすることで今後のさらなる消費拡大へ繋げ ることが期待されている。現地では小玉系・大玉 系の2系統があるとされるが,果実成分の詳細は 不明である。本研究はフラボノイド組成を中心に この2系統に差異が見いだされるか調査した。 【材料および方法】 収穫後,冷凍保存しておいた2系統の辺塚ダイ ダイ(2016 年 7 月 5 日・7 月 28 日・8 月 24 日・ 9 月 16 日採取)のフラベドに含まれるフラボノイ ドについてHPLC 法を用いて分析した。果皮のフ ラベド部分をを暗冷所でメタノールを用いて1 昼 夜浸漬した後ミキサーで粉砕し,遠心分離をした 後 0.45 μ m の フ ィ ル タ ー で ろ 過 し た も の を HPLC 用試料とした。HPLC 分析の溶離液には 20mM リン酸とアセトニトリルを用いて,グラジ エント溶出を行った。初期条件はアセトニトリル 15%,20mM リン酸 85%とし,30 分間でアセト ニトリル25%,20mM リン酸 75%とした。カラ ムは MightysilRP-18(H)GP250-4.6(5μm),検出 波長は220nm,流量は 1ml/min,カラムオーブン 温度は50℃とした。 【結果および考察】 表 1 に小玉系,大玉系それぞれの重量の推移を 示した。6 月 17 日から 7 月 28 日にかけて系統間 に大きな差は見られなかったが小玉系の肥大が若 干早かった。しかし,8 月 24 日と 9 月 16 日は大 玉系の方が大きくなっており,7 月 28 日から 8 月 24 日の間に小玉系と逆転して大玉系が急速に 肥大することが分かった。表2 に小玉系,表 3 に 大玉系の主要フラボノイド量の推移を示した。小 玉系の最多フラボノイドは7 月 5 日ではナリンギ ンであったが,7 月 28 日から 8 月 24 日の間では ネオヘスペリジンとなり,9 月 16 日に再びナリン ギンとなった。大玉系の最多フラボノイドは7 月 28 日ではナリンギンであったが,8 月 24 日から 9 月 16 日ではネオヘスペリジンとなった。ネオヘ スペリジンに注目すると,小玉系では7 月 5 日か ら7 月 28 日にかけて増加し,8 月 24 日も同様の 傾向を示したが,大玉系では果実が急速に肥大す る7 月 28 日から 8 月 24 日にかけて増加し小玉系 に近い値となった。本研究で明らかになった2 系 統間の違いを踏まえ,今後果肉部分も含め,リモ ノイド類,糖,有機酸の定量分析においても系統 間で差異があるか検証したい。 表 1.辺塚ダイダイの重量(g)の推移 系統 6.17 7.5 7.28 8.24 9.16 小玉系 6.0 16.8 35.7 46.4 59.8 大玉系 5.6 15.6 33.8 76.0 95.4 採取日 表 2.小玉系フラベド中の主要フラボノイド量 (mg/100g)の推移 フラボノイド 7.5 7.28 8.24 9.16 ナリルチン 106 75 63 61 ナリンギン 528 498 500 392 ヘスペリジン 65 105 67 54 ネオヘスペリジン 236 782 676 227 採取日 表 3.大玉系フラベド中の主要フラボノイド量 (mg/100g)の推移 フラボノイド 7.5 7.28 8.24 9.16 ナリルチン - 113 47 43 ナリンギン - 608 311 307 ヘスペリジン - 90 78 53 ネオヘスペリジン - 384 526 399 採取日
冷凍前の高圧処理による褐変防止剤の浸透がライチ果皮色に及ぼす影響 〇塩屋百華・藤本佳奈枝・濱中大介・渡部由香 (鹿児島大農) 【目的】 近年,生鮮食品を輸入する手段として冷凍輸送 が一般化しており,ライチもその一つであるが, 輸送中に果皮の褐変が進行し,消費者のもとに届 く頃には本来の色を失っていることが多い。食品 を評価する際に視覚情報は重要であり,変色を防 ぐことができれば消費者の購買意欲を高めること が期待できる。本研究では,冷凍前のライチ果実 に高圧処理で褐変防止剤を浸透させ,果皮の褐変 を抑制できるかどうかを検討した。 【材料および方法】 ライチ果実は,鹿児島大学農学部附属農場指宿 試験場で採取した‘チャカバット’(採取日:2016 年6 月 13 日)を用いた。浸透液は 1%クエン酸水 溶液,1%塩化ナトリウム水溶液,蒸留水を用いた。 処理区ごとにライチ3 個と浸漬液 100ml をポリエ チレン袋(ユニパック0.04mm)に入れ,袋の中 の空気を抜き密閉した。 高圧処理装置(株式会社東洋高圧 まるごとエ キス)で処理温度を25℃とし 10MPa,50MPa の 圧力を1 分間加えた後,果実を浸透液から取り出 し6 月 13 日から 11 月 22 日まで-30℃で冷凍し た。また,高圧処理を行わずそのまま冷凍を行っ た無処理区も設けた。 簡易型分光色差計(日本電色工業株式会社)を 用いて,処理前と処理後の明度と色相角度を測定 した。測定部位は果実の赤道面とした。 【結果および考察】 明度は全ての処理区で低くなり果皮が暗色化し たが,クエン酸区では比較的高い明度を維持し, 特に50MPa の圧力を加えたクエン酸区では処理 前の値から5程度低下したのみであった。蒸留水 区では,無処理区よりも明度が下がり,処理前と 比べて顕著に暗色化した。塩化ナトリウム区とク エン酸区においては,より高圧のほうが明度の低 下が抑えられた(表1)。 色相角度は全ての処理区において増大し褐色化 したが,クエン酸区での変化は小さく本来の赤色 をある程度維持した。高圧処理区間で比較すると, 蒸留水区ではより高圧であるほうが色相角度の増 大が抑えられたが,クエン酸区と塩化ナトリウム 区では低圧であるほうが元の色相角度との差は小 さく,特に 10MPa の圧力を加えたクエン酸区で は処理前と比べて 3°程度の増加にとどまった (表2)。 クエン酸水溶液はライチ果皮の褐変を防止する 作用があると推測できるが,浸透液の濃度や組み 合わせによる効果も今後検討したい。また,クエ ン酸の効果がポリフェノールオキシダーゼの活性 抑制であるのか,酸性条件下での果皮アントシア ニンの安定化が関与しているのかも検討したい。 表1. 異なる浸透液を用いた高圧処理によるライ チ果実の冷凍後の明度(L*)の変化 表2. 異なる浸透液を用いた高圧処理によるライ チ果実の冷凍後の色相角度(h*)の変化 処理前 処理後 ΔL* ー ー 42.5 28.3 -14.2 10 44.8 26.9 -17.9 50 47.1 28.5 -18.6 10 45.9 29.6 -16.3 50 38.8 29.1 ..-9.7 10 41.9 34.1 ..-7.8 50 38.5 33.6 ..-4.9 浸透液 圧力 (MPa) L* 1%クエン酸 水溶液 蒸留水 1%塩化ナトリウム 水溶液 処理前 処理後 Δh* ー ー 27.7 35.4 7.7 10 28.4 35.7 7.3 50 29.7 35.5 5.8 10 32.4 39.0 6.6 50 26.1 33.7 7.6 10 29.4 32.5 3.1 50 25.7 31.5 5.8 1%クエン酸 水溶液 浸透液 圧力 (MPa) h* 蒸留水 1%塩化ナトリウム 水溶液