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本先生の話を聞いた時から 草うし づくりの原点がまさに始まったのである 褐毛についても 黒毛についても まだまだ サシ を追求する時期であり 粗飼料多給の牛では市場からも評価を受けることはできなかった そうした状況の中で 私が結論を出したのは 前期粗飼料多給型 の牛をつくり 健康な内臓と赤身の多い牛

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Academic year: 2021

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井 博明

上田尻牧野組合

特集

上田尻牧野組合の粗飼料生産を基盤に

「草うし」のブランド化を図る

―家族経営で牛を飼い、米・野菜を作り、レストラン「山の里」で提供―

VOl.49 No.585 41

産山村の概要

 筆者が住む熊本県阿蘇郡産うぶやまむら山村は、九州、 熊本県の最北東部に位置し、世界一の複式火 山(カルデラ)である阿蘇山や九州の屋根と いわれる九重火山群および祖母山に囲まれて いる。標高500 ~ 1050mの高原地帯に属し、 阿蘇外輪山と九重山麓が交わる波状高原とそ の浸食された急傾斜部分から構成された高原 型純農山村である。  産山村は、九重山麓に拓けた牧野地帯、そ れより源を発する数条の河川によって開けた 谷部の水田地帯、そして平均標高600mの火 山灰土に覆われた畑作地帯に分けられる。

経営の概要

 筆者はその牧野地域で、表1に示す農業を 営んでいる。特に畜産部門では、上田尻牧野 組合との関係を抜きにしては語れない。  上田尻牧野組合は昭和51年から牧場建設が 始まり、そのあゆみは表2、また組合の概要 は表3の通りである。  上田尻牧野組合は、草づくりに磨きをかけ て「牛は草でつくる」を基本概念に日々努力 を重ねてきた。  今後は、筆者の経営の中で組合での「草づ くり」が一層重要なウエイトを占めるように なる。良質な草を生産することが「草うし」 のブランドの確立につながるからであり、第 一に充分な放牧草地の確保、第二に放牧施設・ パドックの設備を整えることによって親子牛 の放牧管理が容易になる、第三に長期放牧が 可能となることでコストが削減され健康な牛 づくりにもつながる。

前期粗飼料多給型の牛づくり

 今日の畜産の根幹を作ったのは、現在、日 本あか牛登録協会長の滝本勇治先生との出会 いがすべてである。  昭和50年ころ、滝本先生は当時農林省九州 農業試験場に勤務されていた。当時、研究さ れていたのが、前期粗飼料多給型肥育につい てであった。筆者ら(当時25 ~ 26歳)が滝 (表1)経営の概要 区 分 経営の内容 畜産部門 褐毛和種肥育牛90頭、繁殖雌牛13頭 耕種部門 水田280a(うち作付面積180a)、畑30a レストラン・民宿部門 年間自場の肥育牛を15~18頭レストランで提供 親子の放牧風景

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 褐毛についても、黒毛についても、まだま だ「サシ」を追求する時期であり、粗飼料多 給の牛では市場からも評価を受けることはで きなかった。  そうした状況の中で、私が結論を出したの は「前期粗飼料多給型」の牛をつくり、健康 な内臓と赤身の多い牛をつくることであった。  そして、世間は広いようで狭いもので、こ の時に10年先、20年先を見る人が出現したの である。食肉業者㈱サイトウの斉藤社長が滝 本先生の書かれた記事を見た時から歯車が回 り始めたのである。  市場では評価されない前期粗飼料多給型の 牛肉が斉藤氏によって世間に出回り始めたの ので、とにかく試食に重点を置いていた。そ の結果、リピーターも増え、年を追って注文 数も増加した。多い年には80頭近く注文を受 けた。  組合では、㈱サイトウと共同で、生産地、 消費地における顧客との産直交流会を実施す るなどして、お互いが顔の見える農業を実践 してきた。このことが筆者らの「草うし」の 販路拡張にもつながっていった。

地域と企業が協働で取り組むビジネ

スモデル

 スタートから20数年が経過し、この間に農 産物の輸入自由化、情報革命、BSEの問題等 を乗り越えながら共に頑張ってきたが、近年 (表2)上田尻牧野組合のあゆみ 年次 経営および活動の推移 昭和50年 肉用牛導入 171頭 上田尻牧野組合設立(組合員24戸) 51~54年 牧場建設草地造成整備 100ha 広域農業開発事業に取り組み、あか牛と水稲による複合経営によって農業経営を安定させるため牧場建設を行った 52~56年 (4年半) 実証研究 肉用牛の草地畜産技術実証研究【阿蘇入会改良牧野で普及可能な「和牛 の生涯生産技術マニュアル」昭和56年公表】 研究者:農水省九州農業試験場・熊本県 場所:上田尻牧野組合 研究支援:同組合員 55年 広域農業開発事業肥育牛舎完成 肥育牛80頭規模 牧場開設総事業費(865,研究成果を基本に粗飼料多給型肥育開始000千円)、負担額(78,431千円) 59年 タイトベーラーによる採草作業 個別サイロへの貯蔵、組合乾燥施設の使用による収穫が主 60年 周年放牧 繁殖牛40頭 ASPによる放牧期間延長に取り組む 61年 肥育牛販売 年間60頭 愛知県犬山市S社と産直開始 62年 産直交流会開始受賞 顔の見える農業開始全国優良畜産経営管理技術発表会(農林水産大臣賞) 平成5年 ロール生産草地更新 7ha農業機械一式導入 公社営事業:採草・集草・梱包作業等を行う農業機械一式を導入し、ロール生産による牧草収穫にシフト 12年 受賞   【畜産大賞】地域畜産振興部門(最優秀賞) 14年 草地更新 3ha 自己資金(簡易更新機) 17年 草地更新 5ha 特定品種事業(簡易更新機) 18年 新しいブランドポジション ブランドポジションの確率阿蘇のロケーションと田舎での「阿蘇・上田尻産褐毛和牛物語」による新しい 19年 草地更新 草地造成 草地整備 施設整備 農機具導入 10ha 1.38ha 4.3ha 1棟(40頭規模) 1台 自己資金(簡易更新機) 阿蘇東部地区畜産担い手育成総合整備事業 肥育牛舎(2シーズン放牧肥育用) マニュアスプレッダー 20年 草地更新 8.0ha 公共牧場機能強化拡充推進事業 21年 産直先会長訪問 ㈱大丸会長訪問、県知事と「草うし」会食 22年 受賞 全国草地畜産コンクール(農林水産大臣賞)第49回農林水産祭(日本農林漁業振興会会長賞)

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VOl.49 No.585 43 持続可能な家族経営のあり方

特集

の目まぐるしく変化し続ける社会情勢により 年間取引頭数が年々減少してきていた。  今後の販売のあり方等について、新しい販 売戦略、新しいシステム作りを考える時期に 来ていた。そうした中で“人と人との付き合い” の大切さをしみじみ感じさせられる出来事が あった。新たなる販売先である“大丸”を紹介 されたのである。  BSE発生の時に筆者も組合も 牛の出荷ができなくて出荷月齢 を過ぎた牛が畜舎に余りだした。 心のどこかに“草うし”もこれまで かと自分自身あきらめの気持が あったことは偽りのない気持で あった。  以前に大丸の関係者が2度程 当地を訪れ、肉の試食をしてい た。筆者と友人3人で大丸の門 をたたいた時は、これが最後の チャンスだと思った。  大阪の大丸本社に伺った時の あの社会状況下において、一発返 事で取り組みがスタートし、さま ざまな検討課題に対して何回も 何回も協議を重ね、地域と企業 が協働で取り組むビジネスモデ ルを創り上げることができた。  現在、阿蘇産山村の筆者の牧 場、上田尻牧野組合、埜口牧場 の三者が大丸との取り決めに基 づいた前期粗飼料多給型飼育で 育てた“あか牛”、「阿蘇上田尻の 草うし」としてブランド化され つつある。  阿蘇産山でしかできない真の 安全、安心、健康を第一に考え、 お互いが取り交わした生産基準 を順守し、実直に進めていくことが大切であ ると考える。阿蘇の大地、草原、水の地域資 源を大切にし、そして生産者が誇りを持って 進むべき時である。  平成25年現在、「大丸」とは、スタンダー ドタイプ120頭、スーパープレミアムタイプ 5頭の取り引きを行っている。  交渉の席上で、デパート業界の厳しい現状に (表3)上田尻牧野組合の概要 ①組合概要  昭和53年度、組合員数24戸により設立 昭和53年 平成元年 平成15年度 平成17年度 平成25年度 組合員数 24戸 22戸 16戸 15戸 13戸 ※平均年齢52歳(平成21年度) 牧場面積…約280ha(草地64ha、野草地200ha、山林及び河川15ha、施設1ha) 出荷頭数…毎月指定頭数を『大阪大丸(大阪)』『㈱サイトウ(愛知)』へ出荷 ②飼養総数 褐毛和種 黒毛和種 備考 成牛 肥育牛 成牛 肥育牛 個人 組合 個人 組合 平成18年度 76 93 83 66 17 平成19年度 75 103 85 86 18 平成21年度 85 105 97 95 15 平成22年度 86 110 95 100 12 平成24年度 86 110 90 105 10 一部見込 ③機械 機種名 数量 備考 1 ブロードキャスター 2台 2 モアコンディショナー 1台 H13畜産総合対策事業 3 テッターレーキ 2台 H13畜産総合対策事業 4 ジャイロレーキ 1台 5 ヘイレーキ 1台 H13畜産総合対策事業 6 ライムソアー 1台 7 簡易更新機 1台 H12畜産総合対策事業 8 ブームスプレヤー 1台 9 ラッピングマシーン 2台 H13畜産総合対策事業(1) 10 ロールベーラー 2台 H13畜産総合対策事業(1) 11 タイヤショベル 3台 H13畜産総合対策事業(1) 12 マニアスプレッター 1台 H19畜産担い手育成総合整備事業 13 トラクター(80PS) 2台 フォード 14 トラクター(120PS) 2台 ファーガーリン 15 トラクター(90PS) 1台 ファーガーリン 16 洗浄機 1台 17 トラクター(140PS) 1台 ニューホーランド 【施設】 施設名 数量 備考 1 肥育牛舎(Bタイプ) 1棟 2 肥育牛舎(Aタイプ) 1棟 H19畜産担い手育成総合整備事業 3 機械保管庫 1棟 4 堆肥舎 2棟 ※肥育牛舎にそれぞれ確保

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ついて話がなされ、取引頭数が減少することも 頭に入れておかざるを得ない所に来ている。  そうした状況を考慮しながら、筆者らは新 しい販路を見つけることに取り組み始めた。  努力の成果として大丸の他に、㈱サイトウ、 大地を守る会、その他2ヵ所の取引先を増や すことができた。

経営と組合とが共存共栄

 私の経営に占めるウエイトとしては、やは り組合の経営の良し悪しが大きなポイントで ある。牛づくり、草づくりの大切さを組合員 一人一人が認識することが大事であり、常に 前向きでありたいと思っている。  良質の粗飼料である牧草のロールを年間 400 ~ 500個程組合より購入し、また繁殖牛に ついても牧場に全頭放牧しており、放牧頭数 に制限がないので増頭することは充分可能で ある。牧場の施設についてもさまざまなケー スを想定して、特に親子牛の追い込みパドッ クや離乳パドック等の整備が完了している。  肥育についても、最大のポイントである粗 飼料(ロール)については、組合より全量購 入している。そして牧草のロールについては、 地域内、または組合内での消費(分配)を可 能にしている。  組合の基本理念である「牛は草でつくる」 をモットーとして草づくりに専念しても草の 処分に頭を悩まされないですむ所が筆者ら組 もあり、経営と組合とが共存共栄できる理想 的な体系が構築されている。

経営の今後の展望

 昭和51年に上田尻牧野組合が設立された が、筆者の民宿はその3~ 4年前の昭和47年 にスタートした。産山の民宿といえば山菜料 理と漬物が多くの人たちから支持され一躍有 名になり、多くのリピーターが訪れていた。 しかし平成の初めころには顧客のニーズの変 化により客数が年々減少した。  筆者が“レストラン”を営業するきっかけは、 顧客のニーズの変化に対応するということ と、平成3年の農産物の輸入自由化による畜 産物価格の低下であった。食事のメニューの 中に自分で飼育した牛肉を盛り込むメニュー と牛肉の販売を始めた。  これまで山菜料理のメニューだけだった が、肉料理のメニューを追加することにより、 顧客は次第に増加した。また旅行のスタイル も団体のツアー型から、個人、家族型へと移 行していった時でもあった。そして飼育した あか牛料理を看板メニューとした。  食生活が豊かになり、特に旅行スタイルが 家族型に移行した影響で子ども連れの顧客が 増え、肉料理を好む客が増加していった。  肉料理を好む顧客が増えるのと同時に心配 事が一つあった。それは、一度口にした顧客 が「忘れることができない味」、肉の味につ いてであった。  滝本先生の指導の下、その味を実現できた 牧草収穫作業 レストラン「山の里」では、あか牛と山菜料理を提供する サーロインステーキ定食、漬物は12種類が用意されている

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VOl.49 No.585 45 持続可能な家族経営のあり方

特集

ことがリピーターを増やし、そして口コミで 広がり顧客を増加させた。  前期粗飼料多給型肥育による、サシ重視で はなく「赤身の旨さ」を重視し、余分な脂肪 が少ない鮮やかな色の赤身は本当の肉の味が する。肉が嫌いだった子どもや肉が苦手だっ た年配の方が食べられるようになったり、脂 が嫌いだった女性が脂の甘さ、肉の香りを忘 れられなくなったという声が多く聞かれた。  山菜料理で始めた民宿、レストランが今日 では、あか牛の肉を食べたい顧客が9割近く を占め「美味しいものでご満足いただく」こ れが「山の里」の基本方針である。  顧客を満足させることはリピーターを育て ることにつながる。山の里ではあか牛を一頭 丸ごと使用して、来店してくれた顧客に希望 の部位の肉が足りない場合は、事情を説明す ると解っていただき別の注文の品をお出しす ることがある。そして会計の時に「また来ま す」と声をかけていただいている。  筆者らにとっては、対価とその価値を認め ていただいた最高の言葉である。なぜ山の里 のあか牛が美味しいのかを表4に示した。人 間の「感」で物を言うのではなく、「数値」 に裏付けされたデータを利用することも大事 である。  最後に筆者ら夫婦と娘達夫婦4人で牛を飼 い、水田で米を作り、畑で野菜を作り、その 産物である肉や米や野菜をレストランで提供 することにより、顧客の喜ぶ顔が次のステッ プへの励みになっている。  熊本市内に住む従弟が「山の里」の2号店 の開店を希望しており、市内にも進出できれ ばと計画している。また、“草うし”の焼肉の 他に健康な内臓を使用したホルモンとハンバ ーグをメニューの中に盛り込もうと考えている。  “あか牛”が“赤身”が消費者の目にとまり消 費が伸びている。あか牛(草うし)専門店(レ ストラン)として阿蘇の1号店、熊本市内の 2号店で家族経営が自分たちで育てた肉、米、 野菜を使用した「こだわりの店」としてやっ ていきたい。 (い ひろあき・上田尻牧野組合前組合長) 500 400 300 200 100 0 クレアチン含量mg/100g 運動機能向上とコク 50 40 30 20 10 0 レチノール含量μg/100g 抗酸化作用・免疫調整作用 50 40 30 20 10 0 βカロテン含量μg/100g 抗酸化作用・免疫調整作 検出せず 50 40 30 20 10 0 αトコフェロール含量 mg/100g 細胞の老化防止作用 25 20 15 10 5 0 γトコフェロール含量 mg/100g 細胞の老化防止作用 16 12 8 4 0 脂肪酸 n6/n3 比率 健康に良い脂肪酸のバランス n6/n3比率は低い価が望ましい 100 80 60 40 20 0 イノシン酸含量mg/100g うまみ成分 100 80 60 40 20 0 アンセリン含量mg/100g 抗酸化作用 500 400 300 200 100 0 カルノシン含量mg/100g 抗酸化作用 100 80 60 40 20 0 カルニチン含量mg/100g 体脂肪燃焼機能・スタミナ源 調査=(社)熊本県畜産協会 分析=(独)農業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター 調査期間=2004/12∼2006/7 ・各6頭による比較 (表4)成分比較(粗飼料多給型:濃厚飼料多給型) ・粗飼料多給型=生後1∼8ヵ月齢まで親子放牧。その後舎飼い。牧草サイレージ、牧乾草粗飼料を35%以上給与。27.4ヵ月齢。 ・濃厚飼料多給型=全期間舎飼いし濃厚飼料90%、粗飼料は稲わら、サイレージを10%。24.6ヵ月齢。 濃厚飼料多給型(慣行牛) 褐毛和牛 粗飼料多給型

参照

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