• 検索結果がありません。

短期大学生における中小企業のイメージ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "短期大学生における中小企業のイメージ"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

要旨  中小企業は,異質多元的といわれるように,その言葉から連想されるイメージは各人各様である。こうし た中小企業に対するイメージは個人的な主観であるが,中小企業の政策や経営などに影響を与えてきた。本 研究では,経済学や経営学を主に学ぶ短大生を対象に中小企業のイメージ調査を自由記述方式にて行い,短 大生がもつ中小企業のイメージを明らかにした。短大生は中小企業へ就職する人が多くいる。そのため,短 大生がもつ中小企業のイメージを明らかにし,授業やキャリア支援,あるいは中小企業研究において意義が あることを示唆した。 キーワード:中小企業,イメージ,短大生,授業,キャリア支援

Ⅰ.はじめに

 中小企業は,異質多元的といわれるように,その言 葉から連想されるイメージは各人各様である。そもそ もイメージとは,あくまで個人の主観的概念であり, 典型的なイメージであっても時代によって大きく変化 する(三輪 1989,p.39;後藤 2014,p.5)。  こうした「中小企業とは何か」という問い対して, 認識面から考えるのが中小企業研究における本質論的 研究である。そこには,中小企業がもっている問題を 重視する問題型中小企業認識論と,中小企業が社会・ 経済において果たす役割・貢献を重視する貢献型中小 企業認識論という対極的な考え方が存在する(瀧澤 1996,pp.15-16)。こうした中小企業に対する認識の あり方は,人々がもつ中小企業に対するイメージとも 深く関連し,政策や経営などにも影響を与えてきた。 そのイメージについては,大学生や労働者などを対象 とした研究がいくつか蓄積されてきたが,「これまで 必ずしも厳密に分析されてきたわけではない」(関 2017,p.85)。また,短期大学の学生(以下,短大生) がもつ中小企業のイメージについては,ほとんど研究 が行われてこなかった。  たしかに,短期大学(以下,短大)は学校数が少な く,学生数も少ない1)。短大生がもつ中小企業のイ メージを把握することは,日本全体から見ても,大学 生全体から見ても一部のイメージにすぎない。しかし, 短大生は 2 年間で,学問的な考え方を身に付けたり, 資格や検定を取得したり,就職活動を行ったりする。 その意味において,四年制大学の学生とは少し異なっ た過程を歩み,社会へと巣立っていく。また,短大生 は中小企業への就職を意識する学生が多いことも特徴 である。各短大の就職リストをみると,中小企業の名 前が並んでいる。中小企業にとって短大生は将来を担 う貴重な人材なのである。以上を踏まえれば,社会へ 巣立つ前の短大生が中小企業をどのようにイメージし ているかを把握することは,授業,キャリア支援,そ して中小企業研究にとって意義があると考えられる。  本稿では,短大生がもつ中小企業のイメージを明ら かにする。その上で,授業やキャリア支援,そして中 小企業研究における意義について若干の考察を加えて みたい。

Ⅱ.中小企業のイメージに関する研究

 中小企業のイメージに関しては,労働者や大学生な

短期大学生における

中小企業のイメージ

─経済・経営系短期大学での調査を基に─

The Journal of Economic Education No.38, September, 2019

Research on the image of SMEs in junior college students majoring in economics and management

KARASAWA, Katsuki

(2)

どを対象とした研究が蓄積されてきた。  中小企業庁の研究(中小企業白書:1972 年版, 1983 年版,1992 年版)は,それぞれの時代における 中小企業のイメージ調査である。1972 年版は,「変化 と多様性の時代」のなかで,「『中小企業とは何か』を あらためて問い直してみる必要がある」として,学者, 金融機関関係者,大企業関係者,中小企業経営者を対 象とした中小企業のイメージ調査を掲載している(中 小企業庁 1972,Web 版)。そして,中小企業のイメー ジを「即時的」「消極的」「積極的」「その他」に区分 し,消極的な傾向が強いことを指摘している。1983 年版は,「大企業と中小企業の間に有機的な連環構造 が形成・維持」されたとして,大企業を対象とした中 小企業のイメージ調査を掲載している(中小企業庁 1983,Web 版)。そして,「分業構造を担う協力者」 「対応の早さ・小回り性」など積極的な項目が多く, 「中小企業の存在に高い評価が与えられた」と指摘し ている。佐藤(1983)は,1983 年版中小企業白書を 踏まえて,中小企業には低賃金などの消極的イメージ が強くありながら海外や大企業からの評価が高まって いることを指摘している。1992 年版は,「中小企業全 体をマイナスイメージをもってとらえるべきではな い」として,労働者を対象とした中小企業のイメージ 調査を掲載している(中小企業庁 1992,Web 版)。そ して,プラスとマイナスのイメージが混在しているこ とや,学生時代よりも中小企業のイメージが良くなっ ていることを指摘している。  滋賀県中小企業情報センター(1980)は,高校生, 大学生,労働者を対象とした中小企業のイメージ調査 である。中小企業に「良いイメージ」をもつ人よりも 「悪いイメージ」をもつ人の方が多いことを明らかに している2)。一方,大学生の約 7 割は,「能力を発揮で きるから」などの理由から,高校生の約 5 割は「人間 関係に親しさがあるから」などの理由から就職先とし て中小企業を考えていることが明らかになっている。  これらの研究は,調査の対象や方法が異なるため, 一概に比較することはできない。しかし,時代背景, 職業,立場などによって中小企業のイメージが異なる ことや,積極的評価と消極的評価を持ち合わせている ことが伺える3)。特に,大学生の場合には,生活環境 や働く場として中小企業をイメージしているように見 える。そこで,大学生がもつ中小企業のイメージを詳 しくみていこう。  大学生がもつ中小企業のイメージに関する研究は, 2000 年以降に多くなっている。寺岡(2005)は,有 名私立大学で就職活動を終えた学生約 200 名を対象に 中小企業のイメージを尋ねている。この研究は,大企 業と対比する学生が多いこと,マイナスイメージをも つ学生が多いこと,下請企業という恒等式をもつ学生 が多いこと,大学入試と就職試験を対比する学生が多 いことを明らかにしている4)  松井(2009)は,自身が担当する授業で予め用意し た項目から 8 個を選択する方式で中小企業のイメージ を尋ね,「活力のイメージ」よりも「暗いイメージ」 が強いことを明らかにしている5)。この背景は,「バ ブル経済崩壊後の日本経済の長期的な低迷を反映して のものであろう」と指摘している(松井 2009,p.6)。  後藤(2014)は,2013 年に大阪や京都の大学生と 大学院生に自由記述方式で中小企業のイメージを尋ね, プラスイメージよりもマイナスイメージの方が強いこ とを明らかにしている。他方,老舗企業などが多い地 域性やテレビなどで中小企業が注目される機会が多い 時期だったことから,「『技術力の高さ』を挙げた学生 の数が群を抜いて多かった」と指摘している(後藤 2014,pp.11-12)。  関(2017)は,2013 年度に 3 大学 996 人に中小企業 のイメージを 5 つ以上回答してもらう方式で尋ね, KH Coder を使った分析を行っている。そして,給料 が少ないなどのマイナスイメージと技術力が高いなど プラスイメージが混在していること,下請など製造業 に関連したイメージが形成されていること,薄い縁の 下の力持ちなど独立したイメージがあることを明らか にしている。関(2018)は,関(2017)と同様の方法 で 338 人の大学生を対象に調査を行っている。そして, 製造業のイメージが強いこと,大企業の下請で日本を 支える一方で給料が低いイメージがあること,縁の下 の力持ちなど独立したイメージが存在していることを 明らかにしている。  これらは,大学生(一部に大学院生を含む)がもつ 中小企業のイメージをとらえた貴重な研究である。た だし,これらの研究には短大生が含まれていない。短 大生を対象とした研究として,沓沢(1993),沓沢 (2004)をあげることができる。沓沢(1993)は,北 海道地方の短大で 1993 年入学生を対象として,予め 用意した 10 項目から複数選択する方式で中小企業の イメージを 1,208 人に尋ねている。そして,「経営が不 安定である」「給料が安い」「労働条件が悪い」といっ た消極的評価が強い一方,「家庭的で親しみ易い」「個 性が生かされる,働きがいがある」「発展性がある」 といった積極的評価も見受けられることを明らかにし

(3)

ている。沓沢(2004)は,沓沢(1993)とほぼ同じ方 法で2003年度入学生525人を対象に中小企業のイメー ジを尋ねている6)。そして,「経営が不安定である」 「給料が安い」「知名度が低い」など消極的評価が強い 一方,「発展性がある」「個性が生かされる」「家庭的 で親しみ易い」などの積極的評価も見受けられること を明らかにしている。また,1993 年度入学生調査と 比較して,2003 年度入学生調査の方が「発展性があ る」「先端産業であるの」といった積極的評価が増加 していること,「労働条件が悪い」「知名度が低い」 「経営が不安定である」「給料が安い」といった消極的 評価が減少していること,「若い社員が少ない」「個性 が生かされる」「家庭的で親しみやすい」はほぼ変化 がないこと,「女性が働きやすい」が減少しているこ とを指摘している。

Ⅲ.短大生がもつ中小企業のイメージ調査

1.調査概要  筆者は,2013 年度から担当する授業の初回に事前 アンケート調査を行っている。この調査は,本研究の 目的とも合致する。すなわち,学生の興味関心,卒業 後の進路,中小企業のイメージを把握し,その結果を 可能な限り授業に取り入れること,学生のキャリアに 役立つ授業を展開すること,中小企業研究のデータと して活用することである。この調査項目のひとつとし て,「中小企業と聞いて思い浮かぶことをご記入くだ さい」と問いを投げかけ,自由に記述してもらってい る。中小企業が異質多元的であることを踏まえて,あ えて選択肢を設けず自由記述方式で調査を行っている。  本研究において調査対象とした短大は,筆者が授業 を担当した A 私立短大(以下,A 短大)と B 公立短 大(以下,B 短大)である。いずれの短大も,関東地 方に立地し,学生たちは経済学や経営学を主に学んで いる。卒業後は,大企業で活躍する人や四年制大学へ 編入学する人もいるが,多くの人は中小企業で活躍す る。  調査は,A 短大の中小企業論(2013 年~ 2014 年) と B 短大の日本企業論(2013 年~ 2015 年)で行った (表 1)。いずれの短大も小規模であり,回答者数が少 ないため,両者を合せて年ごとに分析した。なお,B 短大では 2 年生を対象としている。B 短大では,中小 企業論の授業はないが,日本経済論や経営学などの従 業で中小企業に触れる機会は少なからずある。また, 毎年の傾向として,調査時点で就職活動をしている学 生や内定を得ている学生が半数ほど,編入学を希望す る学生が半数ほどである。したがって,全員が就職活 動を経験しているわけではない。分析にあたっては, 関(2017)などの先行研究を参考に,質的データの分 析が可能な KH Coder を用いた。本調査では,語と語 の関係を含めた分析を行った。 2.調査結果  分析にあたって,データの事前処理を行った。はじ めに,送り仮名の修正や統一をした。例えば,下請け はすべて下請と表記した7)。KH Coder は 1 語 1 語を 抽出するため,複数語が抽出できないことがある。そ こで,年ごとに出現回数 3 回以上の語を強制抽出する 語として,語尾に用いられる語を使用しない語として 指定した(表 2)。その上で,出現回数 2 回以上の語か ら抽出語リストを作成した(表 3)。なお,出現回数 1 回の語は 2013 年が 63 件,2014 年が 74 件,2015 年が 51 件であった8)。抽出語リストの上位をみると,2013 年は「小さい」「大企業」「多い」「日本」,2014 年は 「支える」「地域」「町工場」,2015 年は「経営」「大企 業」「下請」などが抽出された。次に,語の最小出現 数を 2 に設定し,階層的クラスター分析を行った(図 1)。これらの分析から,各年における主なキーワード をとらえることができよう。  2013 年からは,①縁の下の力持ち・倒産リスク, ②中小企業数・国内・コツコツ,③高い技術力・下 請・頑張る,④大企業との対比や関連・組織規模・従 業者数・身近な存在・町工場・産業,⑤日本を支える, 表 1 調査対象の概要 (出所:筆者作成) 短大名 調査年度 学期 調査実施日 授業名 年次 回答者数 A 短大 2013 年度2014 年度 前期前期 2013 年 4 月 11 日2014 年 4 月 10 日 中小企業論中小企業論 1,2 年生1 年生 107 B 短大 2013 年度2014 年度 後期後期 2013 年 9 月 26 日2014 年 9 月 25 日 日本企業論日本企業論 2 年生2 年生 4251 2015 年度 後期 2015 年 10 月 1 日 日本企業論 2 年生 37

(4)

表 2 強制抽出する語と使用しない語 (出所:調査結果を基に筆者作成) 強制抽出する語 使用しない語 2013 年 2014 年 2015 年 中小企業 製造業 中小企業 企業 大企業 大企業 大企業 会社 従業員 従業員 従業員 イメージ 町工場 町工場 印象 思う 感じる 表 3 抽出語リスト (出所:調査結果を基に筆者作成) 2013 年 2014 年 2015 年 抽出語 出現回数 抽出語 出現回数 抽出語 出現回数 抽出語 出現回数 抽出語 出現回数 小さい 9 下町 2 支える 4 地方 2 経営 5 大企業 7 頑張る 2 地域 4 部分 2 大企業 5 多い 6 技術 2 町工場 4 分野 2 下請 4 日本 6 苦しい 2 人 3 名前 2 占める 3 経営 5 工場 2 日本 3 日本 3 地方 5 高い 2 たくさん 2 苦しい 2 規模 4 国内 2 下請 2 従業員 2 少ない 4 仕事 2 海外 2 小規模 2 経済 3 支える 2 経営 2 地域 2 従業員 3 持つ 2 仕事 2 地方 2 大きい 3 身近 2 社員 2 中小企業 2 地元 3 人 2 従業員 2 町工場 3 数 2 小さい 2 倒産 3 地域 2 小規模 2 コツコツ 2 中 2 人数 2 違う 2 中小企業 2 製造業 2 縁 2 密着 2 専門 2 下 2 力持ち 2 多い 2 下請 2 知る 2 ⑥地域密着・経営状況といったキーワードが見えてく る。2014 年からは,①従業者数・意思疎通・賃金, ②仕事内容・専門性,③中小企業数・企業名・日本を 支える・産業,④大企業との対比や関係・下請・海外 との関係,⑤組織規模・地方立地といったキーワード が見えてくる。そして 2015 年からは,①経営状況・ 組織規模・従業者数,②日本を支える・中小企業数, ③大企業との対比や関係・下請・地域密着・地方立地 といったキーワードが見えてくる。これらを踏まえて, 年ごとにコーディングした上で単純集計を行った(表 4)。これをみると,2013 年は「大企業との対比や関 連・組織規模・従業者数・身近な存在・町工場・産 業」(61.54%)に回答が集中している。2014 年は, 「 大 企 業 と の 対 比 や 関 係・ 下 請・ 海 外 と の 関 係 (27.59%)が最も多く,2015 年は「大企業との対比や 関係・下請・地域密着・地方立地」(27.03%)が最も 多くなっている9)  この結果から,年ごとに大きな違いは見られない。 しかし,共通点や社会的潮流との関連性を伺うことが できる。第一に,2013 年と 2014 年は「町工場」「下 町」といった回答が多く見受けられる。この背景には, 後藤(2014)が指摘するように,この時期にマスメ ディアなどで中小企業が取り上げられ,それを意識的 に注目する機会が多かったと推測される。製造業,高 い技術力,製造業といったイメージも,そのような背 景があると考えられる。一方,出現回数 1 回を確認す ると,年を問わず,建設業,商店街,短大が立地する 地域で活躍するスーパーや食品加工会社など特定の企 業名が見受けられる。それゆえに,マスメディアなど の影響もあって製造業のイメージは強いものの,建設 業や商業など他の産業も見ていることが伺える。第二 に,日本の経済や社会を支えていることである。第三 に,地域との関係についてである。第四に,経営状況 や働き方に関して問題を抱えていることである。この ことは,学生の就職活動や就職後に関連するため,出 現回数 1 回の語を確認した。しかし,自分自身の就職

(5)

活動や就職後の姿に直接関連するイメージは見られな かった。その他の特徴として,関(2018)などと同様 に,積極的評価と消極的評価が混在している様子が見 られた。また,沓沢(2004)が指摘するように,積極 的評価がやや多いようにも見受けられる。加えて,寺 岡(2005)などが指摘するように,大多数の学生は中 小企業を大企業と対比しながらイメージしていること が伺える。例えば,従業者数や地域との密着など質的 ないし量的に何らかの基準を設けて大企業との比較を 行う様子が見受けられる。

Ⅵ.おわりに

 本稿では,短大生がもつ中小企業のイメージを明ら 図 1 階層的クラスター分析の結果 (出所:調査結果を基に筆者作成) 表 4 コーディング後の集計 (出所:調査結果を基に筆者作成) 2013 年 2014 年 2015 年 項目 度数 比率 項目 度数 比率 項目 度数 比率 *中小企業数・国内・ コツコツ 4 7.69% *仕事内容・専門性 5 8.62% *日本を支える・中小企業数 6 16.22% *高い技術力・下請・ 頑張る 5 9.62% *中小企業数・企業 名・日本を支える・産 業 10 17.24% *中小企業数・企業 名・日本を支える・産 業 8 21.62% *大企業との対比や関 連・組織規模・従業者 数・身近な存在・町工 場・産業 32 61.54%*大企業との対比や関係・下請・海外との関 係 16 27.59% *大企業との対比や関 係・下請・地域密着・ 地方立地 10 27.03% *日本を支える 6 11.54% *日本を支える 7 12.07% #コード無し 19 51.35% *地域密着・経営状況 11 21.15% #コード無し 26 44.83% #コード無し 8 15.38%

(6)

かにした。それは,イメージを列挙したにすぎないの かもしれない。しかし,このイメージこそが短大にお ける授業やキャリア支援において貴重なデータとなる ものと考えられる。また,中小企業の政策,経営,労 働を考える上でも貴重なデータとなるであろう。この データを研究教育にどのように生かすかは今後の課題 である。短大での授業やキャリア支援に関していえば, 「自分自身が働く場としての中小企業」を考える場を 設けることの重要性がみえてくる。働く場として中小 企業を考えることは,就職活動やその後の生活におい て有益ではないだろうか。実際には,こうした取り組 みが各大学や各授業担当者によって行われている場合 もあるだろう。しかし,相田(2007)が指摘するよう に,中小企業の労働というキーワードを考える機会は 少ないのが実態である。  さいごに,本研究の課題と展望についてみていこう。 第一に,先述したように本研究から得られたデータを 今後の授業やキャリア支援,そして中小企業研究にお いて活用することである。第二に,研究対象や方法の 課題である。短大は小規模ゆえに調査対象が少ない。 また,調査方法については,特に分析において回答数 との関係,文言のとらえ方,分析ツールの精査などが 必要である。第三に,研究の継続性である。2016 年 以降は,A 短大と B 短大以外の短大で継続的な調査を 行っている。その結果を提示することや比較も今後の 課題である。第四に,大企業に対するイメージとの比 較である。本稿では言及できなかったが,筆者は調査 項目の中で大企業に対するイメージを尋ねている。こ れらを今後の課題として研究を発展させていきたい。 註 1) 文部科学省の調査によれば,平成 29 年度時点で,全国の 短大数は 399 校,学生数は 119,728 人である。短大数と短 大の学生数は年々減少傾向にある。 2) 「良いイメージ」「悪いイメージ」は,集計で分類したも のと思われる。良いイメージは,「能力が発揮できる」 「家庭的で意思の疎通が良い」などである。悪いイメージ は,「賃金が安い」「労働条件(福利厚生)が悪い」など である。 3) イメージの表記は各研究によって異なる。本稿において は,先行研究の記述は各研究で用いられる表記を用いる。 筆者の記述ではプラスや良い評価を「積極的評価」,マイ ナスや悪い評価を「消極的評価」として表記する。 4) 明記されていないが,自由記述方式と思われる。プラス イメージは,「社長の顔がよく見える」「人間味とロマン」 などである。マイナスイメージは「ノーブランド」「低賃 金・長時間労働・休みなし」などである。 5) 暗いイメージは,「下請企業」「倒産」「知名度不足」など である。活力のイメージは,「大企業のパートナー」「日 本経済の担い手」「専門性」などである。 6) 1993 年から 2003 年の間に大学名の改称や学科の再編が行 われている。 7) 関(2018)が指摘するように,一般的に下請けと表記す る場合もあるが,中小企業研究では下請と表記するため である。 8) 中小企業が異質多元的なことを踏まえれば,出現階数 1 回も分析対象としたいところである。しかし,量が多い ため本稿では 2 回以上に限定し,必要な場合に 1 回を用 いることとした。なお,2013 年の出現回数 1 回の主な言 葉は,「家族」「商店街」「活性」「リスク」「ブラック」 「残業」などである。2014 年の出現回数 1 回の主な言葉は, 「資金」「中流」「地元」「社長」「文字通り」「B to B」など である。2015 年の出現回数 1 回の主な言葉は,「部品」 「連携」「製品」「平和」「厳しい」「個人」などである。ま た,各年でその地域で名高い中小企業名や全国的に知ら れている大企業名(スーパーマーケットや量販店など) もあった。その大企業を中小企業として認識している可 能性がある。 9) 2014 年と 2015 年は,「コード無し」が目立っている。こ れは,回答数が少ないことや出現回数 1 回の語が影響し ている。 参考文献 [1] 相田利雄「『中小企業の労働問題』をどのようにとらえる か」『中小企業季報』,2007(3), 2007 年,pp.1-11 [2] 沓沢隆「北海道女子短大 1993 年入学者の社会に対する意 識調査』,28,2003 年,pp.107-113 [3] 沓沢隆(2004)「北海道浅井学園大学短期大学部 2003 年 入学者の社会に対する意識調査」『北海道浅井学園大学短 期大学部研究紀要』,42,2004 年,pp.113-124 [4] 後藤康雄『中小企業のマクロ・パフォーマンス』日本経 済新聞出版社,2014 年 [5] 佐藤芳雄「” 中小企業 ” のイメージ」『労働と経営』,21 (8),1983 年,p.1 [6] 滋賀県中小企業情報センター『若者の意識調査結果報告 書』,1980 年 [7] 関智宏「中小企業をイメージする」『同志社商学』,69 (1),2017 年,pp.85-148 [8] 関智宏「中小企業をイメージする(2014 年)」『同志社商 学』, 69(4),2018 年,pp.515-542 [9] 瀧澤菊太郎「中小企業とは何か」『中小企業とは何か』, 小林靖雄・瀧澤菊太郎 編,有斐閣,1996 年,pp.1-34 [10] 中小企業庁『中小企業白書』(1972 年版,1983 年版,1992 年版)Web 版 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/kako_ hakusho.html(2019 年 1 月 22 日閲覧) [11] 寺岡寛『中小企業の政策学』信山社,2005 年 [12] 松井敏邇『増補版 中小企業論』晃洋書房,2009 年 [13] 三輪芳郎「日本の中小企業の『イメージ』,『実態』と 『政策』」『日本の中小企業』,土屋守章・三輪芳郎編,東 京大学出版会,pp.39-59 [14] 文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp(2019 年 1 月 22 日閲覧)

参照

関連したドキュメント

森 狙仙は猿を描かせれば右に出るものが ないといわれ、当時大人気のアーティス トでした。母猿は滝の姿を見ながら、顔に

手話の世界 手話のイメージ、必要性などを始めに学生に質問した。

子どもたちは、全5回のプログラムで学習したこと を思い出しながら、 「昔の人は霧ヶ峰に何をしにきてい

しかしながら、世の中には相当情報がはんらんしておりまして、中には怪しいような情 報もあります。先ほど芳住先生からお話があったのは

モノづくり,特に機械を設計して製作するためには時

 講義後の時点において、性感染症に対する知識をもっと早く習得しておきたかったと思うか、その場

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので

のニーズを伝え、そんなにたぶんこうしてほしいねんみたいな話しを具体的にしてるわけではない し、まぁそのあとは