Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japanese
Physioal Therapy Assooiation
理 学 療 法 学 第38巻 第4号 229
一
230
頁 (2011
年 )
シ
ン
ポ ジ ウ
厶 皿
新
し
い
職
域
の
中
で
い
か
に
理
学 療 法
ア
プ
ロ
ー チ
を
確
立
す
る か
一
理 学 療 法 士
の
専 門性
と
は
一
産
業保健 分野
*
高野賢
一
郎
* *
産 業 保 健 分 野 と
は
産業 保 健と は労働 者の健 康 対 策を行 う領 域 で あ り
,
目 的 は労
働 条 件と労 働 環 境に関 連 する健 康 障 害の予 防と労 働 者の健 康の
保 持 増進 な ら び に福 祉の 向上 に寄
7
す る こ と に あ り労 働基準 法
およ び労 働 安 全 衛 生 法 に基づ いてい ます
。
産 業 保 健 分 野 を担 う
専 門職は産 業 医 安 全 衛 生 管 理 者
,
保 健 師 などから構 成 さ れ
,
職 域にお ける安 全衛生の確 保 をはかる労 使の活 動に対して専 門
的立場か ら関 連 する情 報の提 供
.
評 価
,
助 言な どの支 援を行い
ます
。
傷 害や疾 病の治 療で はな く予 防 が 仕 事の メ インとな りま
す
。
こ のう ち産 業 医 と安 全 衛 生 管 理 者の みが 法 律に企 業へ の選
任の義 務が記 載さ れ て おり
,
業 種に より また従 業 員 数に よ り選
任
の
数
な ど が
詳
し
く決
め ら れ てい ま
す
。
意
外
なのはこ こに産
業
保 健 師が明 記さ れ てい
ない こ と です。
産 業 保 健 分 野
に
お け る理 学 療 法 士
の
存 在 意 義
さ て
,
こ の現状の中で 理学 療 法 士はこ の分野 に介入 し て成 果
を 上 げ てい け る の で しょうか
。
言換え れ ば
,
我々 の介人を通 じ
て 労 働 者 が 健 康 的 に 働 く こ とが で き る で しょう か
。
理学
療 法
上 が
介
入する
意義
と し て次のよ
う
なこ とが
挙
げ ら れ
ま す
。
1
,
個
人 や
集
団に
合
わ せ て運
動
強
度
,
運
動
量 を
決定
できる
2.従 業 員の疾病や
障害
に 応 じ た 運
動
を
指導
でき る
3.骨 関 節疾 患 や内 部疾 患 な どの予防
・
治 療に精通 してい る
4
.
作 業 時の動 作分 析 か ら安全 な 作 業 方 法 を 指導で き る
5.人 問工学に基 づ き機 器 導 入 など作 業 環 境 改 善を提 示で き る
6
,
統 計 的 手 法 を使っ て介 入効 果 を説 明で きる
7
.
目的 を 達 成 するた めに他 職 種と連 携で きる
,
など が考 え
られ ます
。
ま ず 我々 理 学 療 法 士は患 者の疾 病や障 害の問 題 点 を 抽 出 し
,
短期
お よ び
長期
ゴ
ー
ルを
設定
し
,
運
動
の
種 類
や
強 度
・
運
動
量 を
決 定し
,
プロ グラ ム を作成 し関連 職種と 連 携 し な が ら 指導して
*
Expansion of the ReaLm of Physical Therapist
’
s Responsibility
* *
独立行 政 法 人 労 働 者 健 康 福 祉 機 構 関 西 労 災 病 院 勤 労 者 予 防 医 療
センタ
ー
(〒 660
−
8511 尼 崎 市 稲 葉 荘3
−
1
−
69)
Kenichiro Takano
,
PT:
Japan
Labour IIcalth and Welfare
Organization
Kansai
Rosai
Hosphat
Center
for Prevcntive MedLcinc
キ
ー
ワ
ー
ド:産 業 保 健
,
r
一
防
,
産 業 理 学 療 法 十
い
ます。
この乎 法は産 業保 健の分野 で も大い に
役
立 ち ま す
。
近
年の産 業 保 健の分 野 で は 講習会の ような集 団 指 導よりも オ
ー
ダ
ー
メイ ドの個 別 指 導の方が有 効である と言わ れて い ますか ら
個 別 指 導の得 意 な 理 学 療 法士に とっ ては追い風の情 報です
。
次に作 業 時の動 作の評価と指 導ですが
,
理 学 療 法士 は患 者の
詳 細 な 動作 分 析 がで き
,
よ り正 しい動 きへ と導いてい くこ とが
でき ま す
。
作 業 現 場では 製 造や運 搬の工程
.
事 務や研 究の場 面
であるい は介 護や看 護の業 務 などで特 有 な 作 業の形 態 が あ り
,
入が作 業に合わ せて い る場 面が少 な くあ りませ ん。 職 種に よっ
て は長 期 間の就 業によ り身 体の変 形や運 動 機 能の低下
,
感 覚 神
経の異 常 を きた す 場 合があ りま す
。
また原 因が加 齢のこ と もあ
ります
。
理学 療 法十 はこ の ような 際 に 見 ら れ る作 業時 の 異 常 動
作
を
評価
し
,
筋 力増
強
,
筋緊張
の
緩
和
,
可
動
域を
改善
さ せ
,
あ
るい は機 器
等
を
導
入し て作 業 環 境の改 善 を 図 れるので はないで
しょう か
。
介 入 前 後の調 査よ り介 入 効 果 を 統 計 学 的に証 明 するこ とは 理
学 療 法の研 究 場 面で よ く み ら れ ます
。
その他にも理学 療 法
h
は
チ
ー
ムア プロ
ー
チ で 目 標 を 達成す る こ と に 慣 れ てい ま す が
,
こ
れ は 産 業 保 健の分 野 で も大い に 役 立 ち ま す
。
そ し て
何
より もこ れ ら を総 合し て実 施できる とい
うこ と こそ
理学 療 法十の
専
門 性な の で は ない で しょ
う
か
。
当方
の
産 業 保 健 分 野
の 理
学 療 法
現
在
,
労 働 者 健
康
福祉機 構の9つ
の勤 労 者 予防医 療センタ
ー
に所属 す る 理学 療 法士 は
.
この産業保 健 分 野 を専門 と し てい ま
す
。
各センタ
ー
に は医 師
,
保 健 師
,
管 理 栄 養士
,
理 学 療 法士 が
ひ とりずつ
在 籍 して企 業 を対 象とした産 業 保 健 活 動 を展 開 して
います
。
マ
ー
ケテ ィ ン グ調 査か ら始め
,
企 業へ のアンケ
ー
ト調
査や産 業 医
,
衛 生 管 理 者
,
保 健 師か らの聞 き取 り調 査 または講
習 会の 受 講 者へ
の調 査 を 通
じ てニ
ー
ズ を 把 握 します
。
同時に
ホ
ー
ムペ
ー
ジ
,
印刷 媒体
な どを 通じて
広 報 も実施
しま
す
。
利 潤
を 追求す る 企業と仕 事をするうえで費用 対 効 果を説 明すること
が 大 切で あり
,
理学 療 法に よっ て得ら れ るメリッ ト を提 供して
ニ
ー
ズ を掘 り起こして い き ます
。
当 方の産 業 保 健 分 野の理 学 療 法で は次の こ とを 実 施 して い
ます。
1,勤 労 者に対 する集 団 指 導と個 別 指 導
2
.
産 業 保 健 関 連 職 に 対 す る指 導 方 法の研 修 会と予 防 医 療
N工 工
一
Eleotronio
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理 学 療 法 学 第
38
巻 第
4
号
ネッ トワ
ー
ク の構 築
・
運営
生 活 習 慣 病 予 防 や 腰痛な ど を 予 防 す る た めの運動 指 導の
講 師 を担 当 し ます。 また 企
業
で働 く
保健
師の ほ と ん ど は
ひ とり職 場であ り
,
横のつ な が りが大 切だ とい
う
こ と で
ネッ
トワ
ー
ク を 構 築 し新 しい情 報の提 供 や 情 報 交 換 を し
てい ます
。
3
,
企業に対す る作 業環境調査と改 善 指 導
,
体 操の指 導 者 育
成
,
再雇用時の 運動
機
能 評 価
4
,
産業保 健 分 野 に お け る 理学療 法の研 究
問
題
点
1
.
産 業 保 健 分 野の理 学 療 法のエ ビデ ン スが 少 ない
2
.
こ の分 野の理 学 療 法士 が 圧倒 的に少 ない
3
.
企 業や関 連 職 種へ 十 分に広 報で きて いない
4
.
運 動に関 して個 人の モチベ
ー
ショ ンが低い
5
.
楽し さを 加 味した 指 導がで きる理 学 療 法 士が少 ない
6
.
業務
内
容
が
確
立し てい ない ため
,
収
入が少 ない
7
.
企
業
に お け る産
業衛
生 分野の
予算
が少ない
産 業 保 健 分 野
の
理 学 療 法 確
立 の た
め
に
5
.
000
〜
10
,
000
人そ し て産 業 保 健 分野 で働 く理 学 療 法 士の数は
たっ たの
100
人前 後です
。
理学 療 法の対 象 とな る企 業は非 常に
多 く
,
産業 保健 分
野は
,
今 後
,
理
学 療法
士が
職
域
拡
大の
見
込め
る分 野と言 えます
。
産
業
保
健
分 野の理学
療 法確
立のた め に は
多
くの理 学 療 法士 に関 心 を持っ て
参
入 していた だ くこ と が大 前 提
です が
,
次の こ とが 満たさ れ な くてはならない で しょ
う。
1
.
我々が産 業 保 健 学 会 な どへ の積 極 的 な 発 表 を 実 施し て
,
産 業 保 健 分野 の 理学 療 法 効 果のエ
ビ デンスを提 示 する
2
.
他の産 業 関 連職 大 学 や 病 院 そ し て 理 学 療 法 士 協 会 と連 携
し て情
報交換
や大 規
模
研 究 など を行い
良好
な 関係を築 く
3
,
費 用 対 効 果を示し
,
必 要 十 分で安 定し た保 険 外 収 入 を 定
着 させ る
4.問 題 点を探 す 指
導
か ら脱 却し
,
楽し さ を加 味し た健 康づ
く り を 日指 す
5.産 業 保 健 分 野におい て
一
定の基 準を満たすた めの教 育と
その知 識 を 会 得したことを 認め る理 学 療 法 士 協 会に よ る
認 定 制 度 を設 ける
6
.
産
業
理
学療 法
士 制 度や
事業 所
・
健 康保
険
組 合
へ の理
学療
法
士の配
置
の
法制化
を図る
我 が 国の就 業 者 数は6
,
280 万 人
,
事 業 所 数は590万ヵ
所です
が
,
それに対 する産 業 医の数は65
,
000 人
,
産 業 保 健 師の数は
N工 工
一
Eleotronio
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