C A N C E R 6 (1997), p. 23-26 23
ナミクダヒゲエビの飼育の試み
大富
潤・中畑勝見
ナミクダヒゲエビ Solelwcera m elantho D e Man.
1907は,イ ンド ・太平洋の大陸棚縁辺から陸棚斜 面上部にかけての水深1 5 0 - 4 0 0 mに生息する十腕l 目,クルマエピ上科,クダヒゲエビ科のエビであ り,基産地はインドネシア近海の水深216 - 274 m である( 馬場ら, 1986). [ " クダヒゲエビ」の名は 第1触角鞭状音1¥を合わせると管状になることに由 来すると考えられている(林, 1992). 本穫は比較的大型になる種で産業的量袈種とな るが,本種を主対象とした漁業が行われているの は世界の中でも脱児島湾のみであろう.
I
司湾で は,垂水市および鹿屋市沖を中心に10t未満の小 型底曳網l抑制} により ,禁漁期] である6
月を除いて 周年漁獲されており ,重要資i)J;l
とな っている . 本 種の生物学的研究はこれまでにChalayondeja andT anoue (1 97 1). Ohtomi and Irieda (1997) により
行われているが,飼育実験がt試み られた例はな く,生態については未だ不明な点が多い. 鹿児山地方ではナミクダヒゲエビは「あかえび」 という地方名で呼ばれているが,身近な鹿児山
i
巧 で漁獲されていながらも 一般市民にはその存紅は あまりよく知られていない. 1997年5月オープン 子定のかごしま水族館では本種の初の飼育民示が 予定されており,最適な飼育環境を検討する必要 がある. そこで,まず試験的に本種の削育実験を ぷみた. 材料と 方法 飼育実験に用いたナミクダヒゲエピは, 1996年 6月25日に脱児向湾中央部の水深2 1 8 mの地点に おいて小型成曳網により採集した. なお,採集個 体へのダメージを少なくするために ,揚網速度は Jun OIlTOMI and Katsumi NAKA IIATA: Rearing trialof the deep-water mud shrimp Solenocera m elantho D e M all . 1907 通常の操業時よりも遅くした 持ち帰 った本稜例体の中から生きのよい141同体 ( 体長8 0 - 148mm) を選別し ,
A
とB
の2つの水槽 で7
個体ずつを飼育した. なお,A
水槽では他の 生物と! 司!バさせ,B
水槽では本種のみを飼育した. 両水槽 の飼育環境は表 1 に示す通りである . 自l
f
料 は,両水槽ともにオキアミ ,マアジの切り身 , ア サリの剥き身,市販の配合飼料 (ヒガシマル社製) の4種類を与えた. 結果と考察 飼育期間中の水ift
はA
水槽が13.1::!:0.40 C,B
水 槽 が14.4::!:0.30 C, 塩 分 はA
水 槽 が30.1士 1. 7%0,B
水 槽 が30.5::!:2.0%0,pH はA
水 槽 が 7.89::!:0 .16, B水槽が8.02士0 .16であ った. 天然海域におけ る本種の食性は未だ明らかでは アサリの争JIき身に対しては 捕食行動がみ られた が,それ以外に つ いては全く興味を示さなか っ た. 飼育{ 同体は水槽内 ではあまり出発に移動するこ とはな く,水成 で白1
ト止し ていることが多か った (図 1 ) . また ,"i伶砂行動も みられなか った. 地 中 海 に 生 息 す る ln]属 の Solenocera m embranacea (Risso. 1816) は夜行性で,民間は 完全に泥中にi
待って第I触角のみを水中に 出し, 夜間は第2削! 角で泌氏上を払いながら索餌するといわれ ている が (H eegaard. 1967),今回の実験ではそのよう な行動を確認することはできなかった. 同2
に,A
,B
j i I 可水槽における本種の生残の様 子を示した. A水槽では飼育開始後13日目で全て の個体が死亡したが,B
水槽では飼育開始当初の 生残率は低か ったものの, 13日目ではまだ 7 個体 中4個体が生残していた. そして最長で56日間生 きていた . なお ,A 水槽内 の他の ln])"';-生物でこの24 ナミクダヒゲエピの飼育の試み 表,
A
,B
両水槽におけるナミクタヒゲヱビの飼育環境 A 水 槽 飼育個体数 71肉体 (体長8 0 - 148mm) 水槽サイズ 150x
60x
50cmi
l
主過槽サイ ス 50 X 60X30cm 貯水槽サイズ 3 0 X 6 0 X 3 0叩 総水量 0 .50 t 使JII 冷却機 レ イ シ ー ク ー ラ -R X -400 H -Y !永f昔、の粒径 O . 5 -1.0mm 底砂の!字さ 2側 サガミアカザエビ4 1同体 (体長150 - 200mm) カルイシヤドカリ 21附{本 (経石の直径5 0 - 7 0mm ) ギンエビスカイ141同{本 ( 政長30mm) テラマチオキナエビスガイ l倒{本W1
H:
60mm ) カブトアヤボラ3 1附{本w
立H;5 0 - 8 0mm) B 水 槽 7 11.11休 (体長90 - 126mm) 90 X 45x
45cm ! まruiil
主過(rfii
積9 0 X 4 5叩) なし 0 .14 t レイ シ ー ク ー ラ -R Z -llOY O .5 -1.0mm 5 cm なし 図1 飼育中のナ ミクダ ヒゲエビた( 閃3) . 10 % ホルマ リン固定後に測定した卵 径は2 2 0 - 2 3 0 μm であった . 産卵時刻 は不明だが, 午後5 時から翌日午前 8 時30分の 聞に行われたこ とは確実である. 今後は卵の発生や幼生の形態等 についての研究も可能であろう . 今回, 初めてナミクダヒゲエビの水槽飼育を試 みたが,生存期 間は最も長い個体でも約
2
カ月で あった. 本種を採集した鹿児島湾中央部の底質が 泥であるのに対し,本実験に用いたのはより粒径 の大きい砂で、あった. 飼育個体のほとんどで歩脚, 腹肢の)llfolに損傷が著しかったが,こ れは水槽内の 底質が本種にと って不適であったためであろう. かごしま水族館での飼育展示に際しては ,いかに より粒径の小さい底質を用い ,かっ透明度を保っ かが今後の課題となろう . また,鹿児鳥湾で、は6
月の水温は200m 層が約16
0C
なのに対し,表層は 約230 C である (野日ら, 1991 ). 採集時期を 表肘 と底! 脅の水IRL差の小 さい時期 ( 冬) とし,漁獲に よるダメージのより少ない個体を厳選すれば¥ さ らに長期の飼育が可能になると思われる. 最後に ,貴重なごWJ
行をい ただいたかごしま水 族館の荻野洗太郎氏と池上邦広氏,本種の採集を 行うにあたりお世話にな った垂水市漁業協同組合 の浜島秀文,日出武夫の両氏,および尖験の 一部25
I問 ・中畑勝見 聞に死亡したのはギンエビスガイとサガ ミアカザ エピが各1 例体のみであった. B 水槽に比べて A 水槽で三本種の生存期間が短かったことは ,他の生 物との同情にも原因があるのかもしれない. 飼育実験に 供した個体の中には外骨格を通して 黄樺色の肥大した卵巣が透けて見える雌の成熟個 体が含まれていたが,B
水槽では飼育開始後3
日 目の6月28日に水底に沈降した産出卵が確tE
され 大宮 ω 55-←
A水繍-・
-
B水繍 関 4 5 4 0 25 30 35 飼 育 回 数 20 10 15 5 100ω
ω 割3 20。
。
10 関 40ω
70 ( 災 ) 凶 鮒 飯 川 明 飼育下における ナミ クタ ヒゲエビの生残 図2 水槽内で産出されたナミクダヒゲ工ビの卵( 矢印) 図326
ナミクダヒゲエビ の飼育の試み を手伝っていただいた鹿児島大学水産学部資源育 成科 学講座大学院生の山本掌子氏とかごしま水 族 館のl俄員の皆様に感謝の意を 表します. 参考文献 1986. 日本│ 陸棚周辺 の十脚月l殻類. 336pp.,日本水雌資源保護協会,東京.C halayond cja. K. & Tanolle T . 197. . O n the shrimp 1 f
ishery and biology of 5 0lenocera trominentis Kubo (D ecapoda. Pcnac idae) in K agoshima Bay. M emoirs of Faculty of Fishcri cs K agoshim a U ni vcrsity. 20 : 99
11
。
林
iitt
J992. 日 本 産 エ ビ 類 の 分 布 と'1:態 I. 根自問F日 300pp . , 生 物 研 究 社 東 京
H eegaard. P. 1967. O n behaviour守 scx- raUo and growth
of 5 0似叩cera m em b r a n acea (Risso) (D ecapoda. Penaeidac) . Crll staceana, 13: 227-237
野 巴忠 秀 ・三 浦 俊 一 ・柿 本 亮 , 1991 . 鹿児島湾喜入 1中の水質環境. 鹿児島大学水産学部紀要 ,40・35-46. Ohtomi. J. & Iricda S.. 1997. G rowth of thc dccp-watel
mlld shrimp 5 0 leIIocera 川"lalltho Dc M an. 1907
(D ccapoda守 Penacoidca . Solenoceridac) in K agoshima
Bay守sOllthern Japan. C rllstaceana. 70: 45-58
(大出 1閏: 鹿児 島大学:水産学部