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はじめに 本調査研究は 平成 28 年度子ども 子育て支援推進調査研究事業の補助を受けて実施したものです この研究のねらいは 近年 里親制度の普及 委託率の向上は進んでいるものの 依然として 里子候補児童にふさわしい里親が見つからない また 里親の登録は多いが 実際に委託されている里親は半数にも満た

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平成28年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業

里親委託におけるマッチングの実施

及び広域調整に関する調査研究

報告書

平成29年3月

大阪国際大学

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は じ め に

本調査研究は、平成28年度子ども・子育て支援推進調査研究事業の補助を受けて実施した

ものです。この研究のねらいは、近年、里親制度の普及、委託率の向上は進んでいるものの、依然と

して、里子候補児童にふさわしい里親が見つからない、また、里親の登録は多いが、実際に委託され

ている里親は半数にも満たないなど児童と里親のマッチングにギャップがあることが背景にあります。

一昨年、児童相談所への里親委託に関する取り組みの調査と海外(オーストラリア)の状況調

査を行い、また昨年には、里親支援機関の取り組みの状況について調査研究を行いました。この結

果、里親委託推進には、児童相談所、里親支援機関の体制の充実と里子を中心にした里親を含

むケアのチームワークの重要性が指摘されています。

今回の調査では、里親のアセスメントから里子とのマッチングに至る過程を中心に、児童相談所の

管轄範囲を超えた広域でのマッチングの可能性について、また、アセスメントからマッチングへの流れの

中で、委託後の支援につながる手続き・方法、情報収集と管理等について、調査を行い課題を抽

出しています。

今回の調査研究を実施するにあたり、全国の児童相談所と里親担当者の方々に、お忙しい中ご

協力いただいたことに感謝します。この調査研究が、里親委託推進の課題を明らかにし、里親制度

の改善と関係機関の取り組みの参考になれば幸いです。

なお、この調査研究は、大阪国際大学短期大学部幼児保育学科教授山内稔が主任研究者と

して実施取りまとめたものです。あわせて、NPO 法人キーアセット代表、渡邊守氏に参画して頂き、調

査の分析と海外の取り組みを参考に考察して頂いています。 最後に、調査研究の補助として望野

由文氏と山田晴子氏にご協力を頂きました。

平成29年3月

大阪国際大学短期大学部幼児保育学科教授 山内稔

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調査研究結果の概要

1 調査研究の目的 本調査研究は、厚生労働省の子ども・子育て支援推進調査研究事業の補助を受け実施したものである。 調査研究の目的は次の2点である。 ⑴ 里親委託の推進には、里親候補児童にふさわしい里親とのマッチングが重要である。しかしながら、現状 では未委託里親が6割との報告もあり、里親と候補児童とのミスマッチが里親委託に結びついていない 原因でもある。このため、児童相談所の管内だけでなく、広域でのマッチングについて現状の取り組みと課 題を明らかにし、マッチングの選択肢を広げることが可能か、また、可能であればどのような方策があるのか について調査検討した。 ⑵ 里親委託は児童を中心に、里親、児童相談所、里親支援機関、里親支援専門相談員等が連携して 養育と支援に取り組む必要がある。しかしながら、児童相談所は専任の担当者が少なく、異動もあり増加 する里親委託に応じきれていない。里親支援機関と里親支援専門相談員は訪問支援には一定の成果 を出しているが、里親委託全般について継続的一貫した支援が十分でない。里親は社会的養護の担い 手として期待されるが、アセスメントから登録、マッチングに至る過程で十分に説明されているとは言えない。 未委託の里親が多い状況にある。このため、里親関係機関の連携の状況と課題、里親への説明について 調査し、里親業務についての問題点を明らかにすることで、より効果的な関係機関の連携の在り方を探る ことを目的としている。 2 調査研究の方法及び体制 ⑴ 児童相談所調査 質問紙による全国の児童相談所への悉皆調査を行った。 ⑵ 児童相談所の聞き取り調査 児童相談所への質問紙調査の結果、広域での里親委託の多い自治体、関係機関の連携による里親 委託の進んでいる自治体、政令市・児童相談所設置市と都道府県それぞれから2自治体を選び、訪問 による聞き取り調査を実施した。 ⑶ 調査研究体制については、 全体の調査研究は、大阪国際大学短期大学部幼児保育学科の山内稔が主任研究者として実施した。 児童相談所調査と聞き取り調査及び分析については、山内稔が担当した。 海外の取り組みから見たマッチングの課題については、NPO 法人キーアセットの渡邉守が担当した。 3調査の結果

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4 ⑴ 児童相談所調査 ① 調査回答率 調査は全国209か所の児童相談所とその支所、229か所に質問紙を送付し、158か所から回 答を得た。回答率は69%であった。 ⓶ 調査期間 調査は平成29年1月~3月までの期間行った。 ③ 里親委託の状況 里親委託数は平成28年1月現在の養育里親(専門里親を含む)が2809世帯、養子縁組里 親が185世帯、親族里親が395世帯であった。 ④ 広域での里親委託(同一自治体内) 養育里親の場合 同一自治体の中で児童相談所の管轄を超えて、他児童相談所の里親へ委託しているのは、106児 童相談所で、自治体に複数の児童相談所のある140か所の75.7%であった。また、委託数は 528世帯で養育里親全体の18.8%であった。 養子縁組里親の場合 養子縁組里親は、140か所のうち36児童相談所で、25.7%であった。委託数は、63世帯 で養子縁組里親全体の34.1%であった。 親族里親の場合 親族里親は、140か所のうち1児童相談所で、委託数は1世帯であった。 ⑤ 広域での里親委託(他自治体) 養育里親の場合 自治体の範囲を超えて里親委託をしているのは、49児童相談所で、158か所の31%であった。 また、委託数は92世帯で養育里親全体の3.3%であった。 養子縁組里親の場合 養子縁組里親は、140か所のうち2児童相談所で、委託数は、2世帯であった。 親族里親の場合 親族里親は、140か所のうち4児童相談所で、委託数は4世帯であった。 ⑥ 広域での里親委託の検討

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5 広域での里親委託の検討は、養育里親では、同一自治体での検討が74か所、52.9%であり、他 自治体は20か所12.7%であった。養子縁組里親では、同一自治体が55か所、39.3%で あり、他自治体は14か所8.9%であった。 また、同一自治体での広域での里親委託については、養育里親の場合困難ではないが69%であったが、 他自治体への委託については、89.2%が困難であると回答している。養子縁組里親についてもほぼ 同様な結果であった。 ⑦ マッチングと委託について 平成28年度に新規登録された里親へのマッチングは、6月以内にマッチングしたのは養育里親で 41.1%で、養子縁組里親は41.5%だった。登録後委託実績のない里親は、養育里親で 35.8%であり、養子縁組里親では80.7%であった。 ⑧ 里親支援機関、里親専門相談員の関与 マッチングに関わっていない里親支援機関は58.9%の児童相談所でマッチングには関わっていなかった。 また、マッチングの際に里親への委託後の支援について里親に児童相談所が文書で説明しているのは76 か所、口頭での説明が112か所と口頭での説明が多くなっている。 ⑨ 広域でのマッチングについての考え 里親委託に当たって児童の住む地域の重視については、36.1%が賛成で60.8%がどちらでもない 回答であった。虐待等により状況によって離れたほうが良い場合も多いとの意見が多かった。また、広域での マッチングに必要なものは、委託後の支援について、児童相談間の連携方法の確立が48.2%、一元 化された情報も有用であるが、担当者が集まって里親と児童の相性を多角的に検討する場が必要との意 見が27.2%であった。 広域での里親委託の可能な範囲としては、指定都市等とその都道府県が40.5%、近隣の都道府県 と指定都市が39.2%であった。 ⑵ 児童相談所聞き取り調査 ① 広域での里親委託について ・里親が他自治体の児童を受託している場合、児童の情報は入ってくるが、措置権がないので伝えていくし かない。相談に乗りにくい。距離が遠いとすぐに動けない、一時保護が必要でも委託本の児童相談所にな るのでタイミングが難しい。現状では、保護者の転居による広域の里親委託がほとんど(ケースの移管)で あり、相談所内での委託推進が優先され、広域の必要性はあまり感じない。

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6 ・管外の里親に委託すると、里親支援は委託したところが行うことになるので同じ自治体でも距離が離れてい ると困難である。児童相談所によっては、委託になると支援は里親の管轄相談所になるところもあり、連携 が難しい。不調の兆しもキャッチしにくい。 ⓶ 里親業務について ・里親支援専門相談員は施設の職員であり、相談所と契約している推進員とは違うので、動いてもらうごと に協議が必要になる。里親業務は実親、子ども、里親の関係の中で、支援機関と支援専門相談員、児 童相談所が全体としてソーシャルワークすることが大切である。里親へのアセスメントから、支援機関等に関 わってもらったほうがうまくいくと思う。 ・里親支援専門相談員はスキルもあって、児童や里親への関わりも上手でくぁる。できるだけ早くアセスメント、 マッチングから一貫して業務に入ってもらうほうがよい。児童相談所は児童の候補の掘り起こしにもっと取り組 めると思う。 4 考察及び提言 ⑴ 広域での里親委託 広域での里親委託については、同一自治体では里親業務のルールが定まっており、連携も図りやすいこ とから、現在でもマッチングの検討を行う拡大マッチング会議の開催等が行われており、今後も取り組みが期 待される。しかしながら、自治体を超えると、児童相談所によって業務の進め方、考え方が違うこと、距離が 離れて委託後の支援困難なことから、必要性が乏しいと考えている相談所が多い。 このため、今後広域での委託を進めるには、情報の一元化だけでなく、自治体を超えて里親担当者が集ま って協議する場を定例的に持つこと、また、児童相談所間の連携のルールを確立することが求められる。 ⑵ 支援機関、里親支援専門相談員と児童相談所との連携 里親業務の中で、児童相談所は里親業務の進捗管理と里子の担当への連絡調整など多くの業務を 抱えている。今後里親委託が増加すると人手が不足する可能性が高い。特に里親業務の中で里親支援 は、支援機関、専門相談員の役割りが大きくなっている。このためには、今後、支援につながる募集、アセス メント、研修、登録の段階から関与できるよう働きかけるべきである。 ⑶ 里親と児童相談所の取り決め

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7 里親は児童を中心とする養育、支援のチームの一員である。このため、児童相談所がアセスメントやマッチ ングの際に、里親の役割りを十分説明し、児童相談所、支援機関等との関係について説明の文書を渡し 委託契約行為を行うべきである。 ⑷ 里親業務の見直し 里親業務の中で児童の委託を概観すると、里親募集から登録までの業務が、委託に結びついていないこ とが課題である。アセスメントから候補児童を想定できるように、里親委託の全体の進捗管理と児童の担当 と施設児童の掘り起こし、新規ケースの際の里親情報の提供など業務全体を委託に向けて見直す必要が 高い。 5 海外の取り組みから見るマッチングの課題 ⑴ 丁寧なマッチングの重要性 マッチングのプロセスは非常に重要せある。他に委託先がないから、経験豊富だからということがあってはな らない。同時に迅速なマッチングも求められている。丁寧で迅速なマッチングは、里親家庭にとって重要なだ けでなく、地域社会においても新たな養育里親候補者の獲得の面できわめて大きな意味がある。Oxford 大学の研究では、地域社会のマイナスイメージが養育里親制度促進の障壁なっていることが指摘されてい る。 ⑵ マッチングに必要な情報とアセスメント 今回の調査では、マッチングの際に重要と考える項目について、半数以上の児童相談所が「里親と児童の 相性」と回答している。この相性の点について、オーストラリアやイングランドの実践からアセスメント及び児童 と里親側の両方の情報の重要性が指摘されている。このアセスメントと情報は、我が国では児童相談所や 里親支援機関等のソーシャルワークから得られるものであり、各機関の専門性の向上が期待されるところで ある。 ⑶ まとめ 里親と児童相談所、里親支援機関等がチームとして児童のケアを進めていくには、児童と里親の相性を十 分にアセスメントし、情報を共有するとともに、その強みと弱み、脆弱性への気づきを高めるトレーニングを積 むことも重要だと思われる。一部の機関が実績とノウハウを積み重ねつつあるが、児童相談所がこのような役 割を担うことは、現状では今回の調査の結果を見ても難しいと言わざるを得ない。里親支援機関等が、この ような里親ソーシャルワークを担うには、専門性の高い人材の確保ができるよう、制度整備の必要があると 思われる。

参照

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