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意外に知らない“放射線とその応用”

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Academic year: 2021

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そうだったのか!“放射線とその応用”

平成 22 年 10 月 26 日 白瀧 康次 有史以来地球上の生物は、放射線の行き交う環境で誕生し、優勝劣敗の厳しい世界 を生き残って今日に至っています。その中で放射線は重要な役割を果たしています。 放射線で引き起こされた突然異変が生物の多様性を生みだしたと推測されています。 人間も、この『放射線の海』の中で生まれ育ってきました。現に人間の身体は毎秒 1万本の放射線にさらされています。身の回りのあらゆるところに放射線が存在する ことを知るところからスタートして、放射線を「正しく理解し、正しく恐れる」(寺田 寅彦の言葉)ことが大切です。 1.放射線とは 放射線(ほうしゃせん)とは、一般的には電離性を有する高いエネルギーを持った 電磁波や粒子線(ビーム)のことを指します。正確には、英語では“Ionizing Radiation” と表現され、日本語では「電離性放射線」と表現されます。強い電離作用(原子の軌 道電子をはじき飛ばすことによって、原子を陽イオンと電子に分離する作用)や蛍光 作用を有します。ただし、紫外線も電離作用を有しますが、放射線には含めません。 一般的には高エネルギーであることが条件とされますが、中性子線に限っては低エネ ルギーであっても放射線扱いとなります。

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2.自然放射線 地球は放射線で満ちあふれています。太陽や宇宙からの放射線、地面からの放射線、 空気中の放射線、食物に含まれる放射線、人の体内に存在する放射線、ありとあらゆ るものから放射線は出ています。 自然放射線は、地球誕生時から存在するもの(地球起源核種)と宇宙線により常時 生成されているもの(宇宙線起源核種)に大別されます。 地球起源核種は半減期(原子が崩壊して量が半分になるまでの期間)が長いため、地 球誕生以来まだ消えずに残っている核種です。主なものは次の通り。 宇宙起源核種は地球に降り注ぐ宇宙線によって常に生成されています。これらは固有 の半減期で他の元素に変わっていきますので、生成量とバランスしたほぼ一定量が存 在します。主なものは次の通り。

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3.人が受ける放射線の量 地球上の人が受ける放射線の量は、住む地域や食生活などによって変わります。 日本人が受ける放射線の特徴 ・食物から受ける線量が多い・・・・日本人は魚をよく食べるが、魚はポロニウム 10 の放射能を多く持つため ・医療用放射線被曝が多い・・・・・レントゲン検査、CT検査等よく受ける ・空気から受ける放射線が少ない・・日本人は気密性の低い住居に多く住むため、 ラドンの内部被ばくが少ない (注)ポロニウムやラドンはいずれもウランやトリウムが放射性崩壊をする課程で生 成される元素で、地中や海水に含まれる。

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4.あなたも1秒間に6500本の放射線を出している! 自然放射線のうち、身近なのはカリウム 40 と炭素 14 です。いずれも人間に不可欠 な栄養素として食物から取り込まれ、人体の組織に蓄えられます。 カリウムは人体に不可欠な電解質として、約 200gが主に細胞内に存在します。体内 では常に一定濃度になるように調節されており、過剰になると心臓不整脈を引き起こ したりします。約 0.01%放射性のカリウム 40 で、半減期が13億年と長いため地球生 成以来存在し続けています。 炭素 14 は窒素元素に宇宙線が当たることにより生成されます。半減期は 5730 年で 消滅しますが、地球上で生成と消滅がバランスする濃度でほぼ一定に保たれています。 体重60kg の人の身体の中では、毎秒カリウム 40 が 4000 本、炭素 14 が 2500 本、 合計 6500 本の放射線が出ていることになります。 日本人の体内の放射性物質の経年変化

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5.人工放射線とその影響 人間は核分裂によって大量のエネル ギーを取り出す技術を開発しました が、不幸にして最初は軍事利用され、 1960 年代には原爆実験により深刻な 地球環境汚染を引き起こしました。 右の図は、雨水中のストロンチウム 90 の経年変化です。原爆実験が盛んに 行われていた 1960 年代はかなりの放 射性物質が含まれていましたが、現在 は 1/20 程度に減っています。1986 年 にはロシアのチェルノブイリ原発の爆発事故により一時的に放射線が増加しています。 原爆実験の影響 チェルノブイリ原発事故 によるピーク 医療や工業用に加速器等を用いていろいろな人工放射線が生み出されています。こ れら人工放射線の影響を、自然放射線と比較して示したのが下図です。医療用の放射 線量はかなり大きく、原子力施設からの放射線は非常に厳しく管理されています。

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〔コラム〕放射線は身体によい!? 「放射線の海」の中で生まれ育った生物は、放射線に対してそれほどか弱いもので はないことは容易に想像できます。現に今でも人間の身体は毎秒1万本もの放射線に さらされているのです。 国際放射線防護委員会(ICRP)では「放射線は有害だから少なければ少ないほ どよい」という発想のもとに、非常に厳しい防護基準を設けています。しかし近年、 低レベルの放射線はむしろ生物によい影響を及ぼすのではないかという事例が数多く 見いだされています。これは、古くから知られている三朝温泉や玉川温泉などのラド ン温泉の効用とも合致するものです。 この効果は「放射線ホルミシス」と 呼ばれ、盛んに研究がなされています。 これは生体の防御反応によるものだろ うと考えられています。すなわち、放 射線により刺激を受けて細胞の防御機 能が活性化され、健康にプラスの効果 を発揮するのだろうと推測されていま す。 原爆被爆者の白血病リスク 0.2 シーベルト以下 の 線 量 の 被 爆 者 の 発 病 リ ス ク は 一 般 人より低い。

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6.放射線の利用 原子力の利用という場合、大きく分けて、エネルギーの利用(原子力発電等)と放 射線の利用に分けられます。一般に、エネルギー利用が非常に大きいように感じます が、経済規模は放射線利用の方が大きいといわれています。 (注)平成9年度科学技術庁調査によると、全体の経済規模 16 兆円、うちエネルギ ー利用 7.4 兆円(46%)、放射線利用 8.6 兆円(54%)。 7.放射線でなぜ年代が計れる? 歴史遺物の年代測定には炭素 14(14C)を使います。14Cは空気中の窒素元素に宇宙 線が当たることによって常時生成されていますが、半減期 5730 年で放射線を出しなが らアルゴン元素に変化(崩壊といいます)しています。地球上の14Cは、この生成量と 崩壊量がバランスする一定の濃度に保たれています。

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8.重粒子線治療 (1) 重粒子線とはどんな放射線か エックス線やガンマ線は、電 磁波の一種で光の仲間です。電 子は非常に軽い粒子です。それ よりはるかに重く、大きい粒子 を順にならべると、図のように なります。自然界の放射線のひ とつとしてよく知られている アルファ線は、へリウム粒子が 高速度に加速されたものです。 もっと重く大きい炭素、ネオン、 シリコン、アルゴンなどの粒子を高速度に加速すると重粒子線といわれる放射線にな ります。 (2) 重粒子線による治療の特徴 ガンマ線や速中性子線をつかった治療では、身体表面ちかくでもっとも線量が強く、 深くすすむにつれて減弱します。このことは、深部のがんを治療する場合、放射線が 患部にとどくまでに正常組織が障害をうけやすく、また、がんを通りこしてもっと深 部にまで影響を与える危険性があります。 これにくらべて、陽子線や重 粒子線の場合は、照射するとき のエネルギーによってある深 さに大量の線量を与え、その前 後に与える線量は少ないので、 線量がピークになる部分をが んの患部にあわせることによ り、正常組織の障害を少なくす ることができます。 このように、重粒子線には、 がんに対する治療効果がより 大きく、かつがんに集中的に照 射することができるという優れた特徴があります。 (3) 重粒子線はどんながんに有効か 重粒子線でがん治療をおこなうと、いままでの X 線、ガンマ線や陽子線では治療が

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9.高レベル放射性廃棄物の処分 高レベル放射性廃棄物というのは、原子力発電所で一度使った燃料から、リサイク ルできる燃え残りのウランやプルトニウムを取り出した後に残る放射能レベルの高い 廃液のことです。 この廃液に、ガラス素材を混ぜてステンレス製の容器に密封し、30 年~50 年ほど冷 やします。その後、私たちの生活環境に影響がないように、地下 300mより深いところ にある地層に処分される予定です。この最終処分場の場所はまだ決まっていません。 安全性を技術的には十分説明できても、住民の納得を得るにはまだ時間が掛かりそ うです。 10.原子燃料サイクルとは

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〔参考までに〕原子の大きさ、原子核の大きさ

〔最後に〕

参照

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