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神水セ研報第 7 号 (2014) 65 相模湾沿岸域定置網漁業における漁獲魚種の変遷と主要魚種の資源動向 髙村正造 片山俊之 木下淳司 Transition of catch fish and resource trends of important fishes in fixed net of

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2014.8.5 受理 神水セ業績No.14-008 脚注 *相模湾試験場,**環境農政局水・緑部水産課,***企画資源部

相模湾沿岸域定置網漁業における漁獲魚種の変遷と

主要魚種の資源動向

髙村正造・片山俊之・木下淳司

Transition of catch fish and resource trends of important fishes

in fixed net of Sagami Bay

Shozo TAKAMURA

,Toshiyuki KATAYAMA

**

,

and Junji KINOSHITA

***

緒 言

相模湾は1,000m以上の深さの相模トラフが房総沖 合から大島東水道を経て相模湾西部の小田原地先に 達しているため、西湘から伊豆半島にかけては急峻 な海底地形を呈している。一方、相模湾沿岸中央か ら東部にかけては陸棚が発達し、水深100m前後の傾 斜が緩やかな地形が拡がっている。相模湾沿岸域で は古くから定置網漁業が営まれており、現在でも数 多くの定置網が敷設されている。神奈川県において 平成23年の定置網漁業の生産量は沿岸漁業生産量の 約6割を占める1)。また、漁業者の高齢化が進む中 で、定置網漁業では近年若年者の参入が多く見られ、 県内の漁業従事者の平均年齢の若返りを促進してい る。これらのことから定置網漁業は本県にとって重 要な産業である。 本報告では相模湾沿岸を西湘地区、湘南地区およ び三浦地区に分けて、各地区の定置網漁業での長期 間の漁獲量の推移、および漁獲される魚種構成の特 徴と漁獲魚種の変遷をとりまとめた。相模湾沿岸で は同じ場所に長期間敷設されている定置網が多くあ り、網型の改良や水揚げ日数の変化等はあるものの、 漁獲努力量が年によりほとんど一定である。また、 定置網漁業による漁獲は沿岸域の資源状態を反映し ていると考えられることから2、3)、定置網による漁 獲データを指標として相模湾沿岸域の資源状況と漁 獲魚種の変遷の把握を行うことを目的とした。相模 湾沿岸の各地域で漁獲される魚種、生息する魚種に ついて地域差があることは報告されているが4,5,6,7, 8)、漁獲魚種の構成比は長期的に見ると大きく変動する ことから、近年の漁獲状況について把握を行うことが 必要である。また、相模湾沿岸の定置網漁業の漁獲量 は、1980年代は概ね1万7千トン~2万トン以上で推 移していたが、近年の漁獲量は1万5千トンを下回る 水準で推移しており9)、主要漁獲魚種の資源動向につ いて検討が必要と考えられる。このことから、定置網 での主要漁獲魚種であるマアジ、イワシ類、ブリの漁 獲変動に対し、各魚種の広域的な系群と比較すること で、各地区における定置網漁業での漁獲量と資源量と の関係の検討を行った。

方 法

相模湾沿岸域の定置網漁獲データとして、神奈川県 水産技術センター相模湾試験場発行の神奈川県定置網 漁海況調査表9)および相模湾試験場所有の漁獲データ から漁獲量の集計を行った。漁獲データの集計は暦年 で行い、西湘地区(福浦~大磯)、湘南地区(平塚~ 逗子)、三浦地区(葉山~諸磯)の3地区の定置網漁 獲量については、各地区に長期的に敷設されている大 型定置網漁場のデータを分析した。西湘地区は米神漁 場および真鶴沖網漁場、湘南地区は平塚漁場および江 ノ島漁場、三浦地区は諸磯漁場および大楠漁場の漁獲 データを使用した(図1)。各地区の大型定置網2ヶ 統の年間漁獲量を平均して、各地区の大型定置網1ヶ 統あたり平均漁獲量とした(以下「平均漁獲量」)。

(2)

漁獲魚種は漁獲量の多いカタクチイワシ、マイワシ、 マアジ、サバ類、ブリ、マルソウダ、ウマヅラハギ の7魚種とその他の魚種について、年間の漁獲割合 および魚種別平均漁獲量の集計を行った。西湘地区 および湘南地区は1982年から2012年までの31年間を 集計した。また、三浦地区については神奈川県定置 網漁海況調査表に記載された1986年から2012年まで の27年間を集計した。 次に定置網での主要漁獲魚種であるマアジ、マイ ワシ、カタクチイワシおよびブリについて、より広 域的な資源との比較を行うため、各々の魚種の推定 資源量との関係について分析を行った。魚種ごとの 資源量としては、平成25年度長期漁海況予報会議漁 海況関係資料10)および平成25年度スルメイカ・ブリ 資源評価会議資料11)の推計値を使用した。ブリにつ いてはコホート解析による資源量の算出が1994年以 降であるため、1994年から2012年までを分析期間と した。算出した魚種別平均漁獲量を説明変数に、マ アジ太平洋系群、マイワシ太平洋系群、カタクチイ ワシ太平洋系群およびブリの推定資源量をそれぞれ 目的変数に回帰分析を行った。

結 果

定置網1ヶ統あたりの漁獲量の推移 地区別の平均漁獲量の推移を図2に示す。各地区 の推移を見ると、西湘地区は1980年代後半まで1,000 トン以上の漁獲がある年が見られたが、1990年代前 半以降は500~900トンで推移し、2005年以降は再び 1,000トン以上漁獲されるようになった。湘南地区は 1980年代後半から2000年代前半までは100~200トン 前後の漁獲量で推移したが、2006年以降急増し、 2006年は1,280トンの漁獲があり、以降も500トン以 上で推移した。三浦地区は、1986年から1995年までは 500トン以上の漁獲量が続いたが、1996年から2002年ま では300トン前後で推移した。その後2003年以降は再び 500トン以上で推移した。 地区ごとの魚種別漁獲割合の推移 魚種別平均漁獲量から西湘、湘南および三浦地区の 年別の漁獲魚種割合を算出し、図3に示した。西湘地 区(A)では、1980年代前半はマイワシ、サバ類、ウ マヅラハギが漁獲の主体で全体の80~90%を占めてい たが、1980年代後半にはサバ類の割合が減少し、マア ジの割合が増加した。1990年代に入るとマアジの割合 が更に増加し全体の30~50%を占め、マイワシとウマ ヅラハギの割合が減少した。2000年以降になると漁獲 の主体はカタクチイワシ、マアジ、サバ類となり、合 計すると全体の40~70%を占めていたが、2010年以降 はマアジの漁獲割合が減少し、カタクチイワシ、サバ 類、マルソウダが漁獲の主体となった。 湘南地区(B)では、1980年代から1990年代前半まで はマイワシが漁獲主体で全体の50~90%を占めていた。 1993年以降はマイワシの漁獲割合が減少し、マアジ、 サバ類の漁獲割合が増加した。2005年以降はカタクチ イワシの漁獲割合が急増し、全体の35~70%を占め、 近年はカタクチイワシとサバ類が漁獲の主体となった。 三浦地区(C)では、1980年代後半から2000年代前半 まではマイワシが漁獲の主体で1998年を除き全体の50 ~90%を占めていた。2002年以降マイワシの漁獲割合 が急減し、サバ類の割合が急増して40~60%を占めた。 2007年以降はマイワシの漁獲割合が10~20%を占め、 近年ではマイワシ、サバ類が漁獲の主体となった。 主要漁獲魚種の系群との比較 マアジ、マイワシ、カタクチイワシおよびブリ類の 各地区での漁獲量と系群の資源量の推移を図4に示す。 ① ② ③ ⑤ ⑥ 図1:相模湾沿岸地域図 (①真鶴沖網漁場,②米神漁場,③平塚漁場,④江ノ島漁場, ⑤大楠漁場,⑥諸磯漁場) 0 400 800 1,200 1,600 2,000 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 平 均 漁 獲 量 ( t) 西湘 湘南 三浦 図2:大型定置網1ヶ統あたり平均漁獲量の推移 66 66

(3)

図4-Aから相模湾沿岸でのマアジの漁獲は西湘地区 が大半を占めており、マアジ太平洋系群の資源が多 い年には湘南地区でも100トン前後の漁獲が見られた が、三浦地区では常に50トン以下の漁獲であった。 マアジ太平洋系群資源量と各地区のマアジ平均漁獲 量を回帰分析した結果(図5)、西湘地区では有意 な正の相関(

r

=0.63,

p

<0.01)が見られ、湘南地区 でも有意な正の相関(

r

=0.54,

p

<0.01)が見られた が、三浦地区では有意な相関は見られなかった (

r

=0.26,

p

>0.05)。 図4-Bからマイワシの相模湾内での漁獲は1990年代 前半までは三浦地区が大半を占めており、湘南地区、 西湘地区でも200トンを越える漁獲があったが、1990年 代後半以降は全域で減少した。また、三浦地区ではマ イワシ太平洋系群資源量の減少に3~4年遅れて漁獲量 が減少する傾向が見られた。マイワシ太平洋系群資源 量と各地区のマイワシ平均漁獲量を回帰分析した結果 (図6)、西湘地区では有意な正の相関(

r

=0.79,

p

<0.01)が見られ、湘南地区でも有意な正の相関 (

r

=0.69,

p

<0.01)が見られた。また、三浦地区でも 有意な正の相関(

r

=0.64,

p

<0.01)が見られ、全ての地 区で有意な正の相関が見られた。 図4-Cからカタクチイワシの相模湾内での漁獲は1980 年代~2000年代前半までは200トン以下で推移したが、 2005年以降漁獲量が増加し、特に湘南地区では 2006年 に急激に増加した。また、カタクチイワシ太平洋系群 資源量との関係は、資源が増加傾向にあった1980年代 後半~2000年代前半まで各地区ともに目立った漁獲量 の増加は見られなかった。また、資源が減少傾向にあ った2000年代後半には湘南地区で資源動向とは逆に漁 獲量が増加していた。カタクチイワシ太平洋系群資源 量と各地区のカタクチイワシ平均漁獲量を回帰分析し た結果(図7)、西湘地区で有意な正の相関(

r

=0.53,

p

<0.01)が見られたが、湘南地区では有意な相関 (

r

=0.16,

p

>0.05)は見られず、三浦地区でも有意な 相関(

r

=0.27,

p

>0.05)は見られなかった。 図4-Dから、相模湾内でのブリの漁獲量について西湘 地区と三浦地区は同程度の漁獲があった。またブリ資 源量との関係は、ブリ資源が増加傾向になった2000年 代後半にかけて各地区ともブリの漁獲量が増加してお り、特に三浦地区は急激に増加していた。ブリ資源量 と各地区のブリ平均漁獲量を回帰分析した結果(図 8)、西湘地区では有意な正の相関(

r

=0.66,

p

<0.01) が見られ、湘南地区でも有意な正の相関(

r

=0.66,

p

<0.01)が見られた。また、三浦地区でも有意な正の 相関(

r

=0.72,

p

<0.01)が見られ、全ての地区で有意 な正の相関が見られた。

考 察

相模湾沿岸における大型定置網漁業での約30年間の 平均漁獲量推移を見ると、西湘地区は集計期間を通し て500トン以上の漁獲があり、湘南地区および三浦地区 が不漁の時期でも安定した漁獲であった。漁獲魚種構 成を見ると、西湘地区では1980年代後半はウマヅラハ ギ、マイワシ、サバ類の漁獲が主であったが、1990代 以降はマアジの漁獲割合が増加し、マイワシとサバ類 の減少をマアジが補い、2000年代後半以降のマアジの (A) (B) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 (C) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 カタクチイワシ マイワシ マアジ サバ類 ブリ マルソウダ ウマヅラハギ その他 図3:地区別漁獲魚種割合の推移 (A)西湘地区,(B)湘南地区,(C)三浦地区

(4)

減少の際にはサバ類とマルソウダの漁獲割合が増加 していた。西湘地区の特徴として、1種類の魚種が 大きな割合を占めておらず、主要な漁獲魚種が多く、 マアジ、サバ類、イワシ類のいずれかが常に漁獲さ れている為、安定した漁獲があるのではないかと考 えられた。 一方、湘南地区は1980年代後半から2000年代前半 までは低調な漁獲で推移したが、2000年代後半から 漁獲が急増していた。魚種構成を見ると、1980年代 はマイワシ、1990年代はマイワシとマアジ、2000年 代はサバ類とカタクチイワシで漁獲が占められてお り、西湘地区と比較すると構成魚種の偏りが大きか った。三浦地区は、更に偏りが大きく、1980年代後 半から1990年代後半まではマイワシ、2000年代以降 はサバ類が漁獲の主体となっていた。このことから、 特定魚種に大きく依存する地区は漁獲が増減しやす く、その魚種の漁獲動向次第で全体の漁獲量が大き く増減する特長があるものと考えられた。このため、 湘南および三浦地区の主要漁獲魚種であるイワシ類 は、1990年代後半から2000年代前半にかけてマイワ シとカタクチイワシの魚種交替が起こったとされて おり12)、このことが湘南地区と三浦地区の漁獲量の 増減に与えた影響は大きいと考えられる。今回比較 した期間における3地区の特徴として、西湘地区は 年ごとの主要漁獲魚種が3魚種以上、湘南地区は1~ 3魚種、三浦地区はほぼ1魚種であった。相模湾沿岸 域の漁獲魚種による海域区分については、木幡が1975 年から1980年までの漁獲データを用いて、西湘地区は 伊豆北区(大磯・二宮は三浦北区)、湘南および三浦地 区は三浦南区(湘南地区の一部は三浦北区)に分類し たが4)、三浦南区に分類された湘南および三浦地区に おいても、漁獲魚種の構成は湘南地区よりも三浦地区 の方が偏りは大きく、湘南地区と三浦地区の間で違い が見られた。 相模湾沿岸域の大型定置網漁業で漁獲される主要魚 種について、各々の資源量との関係を回帰分析した結 果、西湘および湘南地区ではマアジ太平洋系群の資源 量と正の相関が見られたが、三浦地区では相関は見ら れなかった。1968年から1969年に西湘地区の大磯~真 鶴間で実施されたマアジ標識放流調査では、放流個体 は放流地点から西へ移動している個体が多かったこと、 最も西方での再捕は伊豆の川奈で、最も東方での再捕 は鎌倉までであったことからマアジの移動・分散は西 方向に偏るという結果が得られている13)。また、マア ジの生態的特長として稚魚~幼魚期は表層~中層域を 生活域としているが、成魚期には中層~底層に生活域 がシフトする傾向があり、水深100~200mで荒瀬の多 い水域の底層域が好漁場になるとされている14)。この 0 30 60 90 120 150 180 0 50 100 150 200 250 300 350 400 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 マ ア ジ 太 平洋 系 群資 源 量 (千 t) マ ア ジ 地 区 別漁 獲量 ( t)

(A)

資源量西湘 湘南 三浦 0 5,000 10,000 15,000 20,000 0 500 1,000 1,500 2,000 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 マ イ ワ シ 太 平 洋系群 資源量 (千t ) マ イ ワ シ 地 区 別漁獲 量( t)

(B)

資源量 西湘 湘南 三浦 0 400 800 1,200 1,600 0 200 400 600 800 1,000 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 カ タ ク チ イ ワ シ 太平洋系群資源量(千t) カ タ ク チ イ ワ シ 地 区 別漁 獲 量( t)

(C)

資源量西湘 湘南 三浦 0 40,000 80,000 120,000 160,000 200,000 240,000 280,000 320,000 0 20 40 60 80 100 120 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 ブ リ 資 源 量 ( t) ブ リ 地 区 別 漁獲 量( t)

(D)

資源量 西湘 湘南 三浦 図4:系群資源量と魚種別平均漁獲量の推移 (A)マアジ太平洋系群資源量と地区別マアジ平均漁獲量 (B)マイワシ太平洋系群資源量と地区別マイワシ平均漁獲量 (C)カタクチイワシ太平洋系群資源量と地区別カタクチイワシ平均漁獲量 (D)ブリ資源量と地区別ブリ平均漁獲量

(5)

y = 0.2331x + 58.329 R=0.63 p<0.01 0 50 100 150 200 0 100 200 300 400 500 西湘 y = 0.7537x + 81.395 R=0.54 p<0.01 0 50 100 150 200 0 50 100 150 湘南 y = -0.8001x + 122.84 R=0.26 p>0.05 0 50 100 150 200 0 10 20 30 40 50 マアジ平均漁獲量(t) 三浦 マアジ太平洋系群資源量(千t) y = 64.781x - 777.73 R=0.79 p<0.01 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 0 100 200 300 400 西湘 y = 41.72x + 1643.3 R=0.69 p<0.01 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 0 200 400 600 湘南 y = 11.865x + 234.11 R=0.64 p<0.01 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 0 500 1,000 1,500 2,000 マイワシ平均漁獲量(t) 三浦 マイワシ太平洋系群資源量(千t) y = 2.9492x + 520.46 R=0.53 p<0.01 0 400 800 1,200 1,600 0 50 100 150 200 250 西湘 y = 0.308x + 667.7 R=0.17 p>0.05 0 400 800 1,200 1,600 0 200 400 600 800 1,000 湘南 y = 2.1128x + 683.63 R=0.27 p>0.05 0 400 800 1,200 1,600 0 50 100 150 カタクチイワシ平均漁獲量(t) 三浦 カタクチ イワシ 太平洋 系群資 源量( 千t) y = 1900.5x + 130407 R=0.66 p<0.01 0 50 100 150 200 250 300 0 20 40 60 西湘 y = 2165.4x + 149825 R=0.66 p<0.01 0 50 100 150 200 250 300 0 20 40 60 湘南 y = 1254.4x + 142882 R=0.72 p<0.01 0 50 100 150 200 250 300 0 50 100 150 ブリ平均漁獲量(t) 三浦 ブリ資源量(千t) 図5:マアジ太平洋系群資源量との相関関係 図6:マイワシ太平洋系群資源量との相関関係 図7:カタクチイワシ太平洋系群資源量との相関関係 図8:ブリ資源量との相関関係

(6)

ことから、相模湾東部の海底地形は水深100m以浅 の陸棚が広く広がっているのに対して、西部の海底 地形は急勾配で水深も深いことから、湾内に来遊し たマアジの沿岸域での回遊経路は湾西部に偏ってい るため、三浦地区では資源量との相関が低いのでは ないかと考えられる。 イワシ類について、マイワシは3地区全てでマイ ワシ太平洋系群資源量と正の相関が見られた。しか し、カタクチイワシは西湘地区で正の相関が見られ たが、湘南地区および三浦地区では相関は見られな かった。資源量と漁獲量の推移を見ると、マイワシ は資源の減少期に入っても湘南地区では高水準の漁 獲が見られ、資源の減少と相模湾での漁獲の減少の 時期にズレが見られた。その後、資源が100万トン以 下の低水準期に入ってからは湾内全域で漁獲量が低 迷した。カタクチイワシについては、資源が増加し ていた時期でも湾内の漁獲量が大きく増加すること はなく、資源が減少期に入った時期以降に湘南地区 や西湘地区で漁獲量が増加傾向で推移していた。こ のことについては、マイワシ、カタクチイワシの湾 内への来遊に関して、湾内に形成される水塊構造や 黒潮流路の変化などの影響で変動することから15,16, 17)、海況の変化が漁獲に与える影響が大きいと思わ れる。また、マイワシとカタクチイワシの資源と漁 獲量との関係から、カタクチイワシは資源量の影響 以外の要因が大きいと考えられた。 ブリについては、西湘、湘南および三浦の3地区 全てで高い正の相関が見られたことから、ブリの漁 獲は資源量に大きな影響を受けると考えられた。ま た、ブリの相模湾内での分布・移動については1958 年から1966年および1968年から1981年にブリの放流 試験が行われており、ブリの東西方向への移動は季 節性が存在する13)という報告がある。しかし、相模 湾内でのブリの沿岸域での回遊は特に地区ごとの偏 りはないと考えられ、相模湾沿岸でのブリの漁獲量 に関しては資源量が主な要因であると考えられた。 なお、サバ類については定置網での漁獲が多い主 要魚種であるが、神奈川県定置網漁海況調査表では 集計上マサバとゴマサバをサバ類として一括集計し ているため、地区別のマサバおよびゴマサバの詳細 な漁獲量を算出することが困難であり、マサバおよ びゴマサバ太平洋系群との比較は行わなかった。 本報告では約30年間の相模湾沿岸域の定置網漁業 による漁獲魚種の変遷と、主要魚種の漁獲量変動や 資源量との関係について評価を行った。持続的な資 源利用を行うためには、資源の状態を常に把握するこ とが必要であり、今後も漁獲量等の情報収集や各種モ ニタリングを継続することが重要である。また、本報 告では長期的な漁獲データが現存する定置網漁場に絞 って取りまとめを行った為、定置網の網型や網の規模 は統一出来なかったことから、今後さらに漁獲データ の収集・蓄積を続け、網型・規模別の長期的な評価を 行うことが必要と考えられる。

謝 辞

本研究の実施にあたり神奈川県沿岸各地の漁業協同 組合の皆様には漁獲資料等の収集に協力頂いた。神奈 川県水産技術センター相模湾試験場の石戸谷博範場長、 山本章太郎専門研究員および相澤康主任研究員には有 益なご助言を頂き、浅倉美保職員には漁獲資料のとり まとめ等の協力を頂いた。また、長期にわたり漁獲デ ータを蓄積されてきた諸先輩の方々に敬意を表する。

参考文献

1) 神奈川農林水産統計年報(平成24~25年):関東 農政局神奈川農政事務所. 2) 木幡 孜(1979):定置網漁況からみた相模湾の生 産性に関する考察Ⅰ-1生物生産の特徴と相模湾の 位置付けについて,神水試,相模湾資源環境調査 報告書,261-267. 3) 木幡 孜(1979):定置網漁況からみた相模湾の生 産性に関する考察Ⅰ-3漁業生物資源の年変動傾向 について,神水試,相模湾資源環境調査報告書, 281-289. 4) 木幡 孜(1990):回遊性浮魚魚類相による相模湾 沿岸域の海域区分に関する研究,神奈川水試論文 集,第4集. 5) 前川千尋(1991):神奈川県定置網漁場の特性につ いて,かながわていち,64,10-18. 6) 根本雅生・清水 誠(1998):相模湾西湘地区定置 網漁場における漁獲物組成からみた漁場区分の年 変化,日水誌,64,384-392. 7) 石崎博美(2001):相模湾西部地域を中心とする定 置網漁場の特性,かながわていち,74,17-29. 8) 竹内直子・他(2012):伊豆半島大浦湾の魚類相お よび相模湾沿岸域におけるその生物地理学的特性, 日本地理学会会報,第67巻,41-50. 9) 神奈川県相模湾試験場(1982-2012):昭和57-平成 24年神奈川県定置網漁海況調査表.

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10) 水産総合研究センター中央水産研究所:平成25 年度長期漁海況予報会議資料. 11) 水産総合研究センター日本海区水産研究所:平 成25年度スルメイカ・ブリ資源評価会議資料. 12) 高須賀明典(2009):小型浮魚類の初期生態と魚 種交替過程に関する研究,日水誌,75,640-643. 13) 木幡 孜(1982):相模湾産重要魚種の生態Ⅷ-1 浮魚類数種の移動と回遊,神水試研報,第4号, 23-36. 14) 山田鉄男(1969):日本海におけるマアジの分布 と漁場に関する考察,長崎大水研報,第28号, 111-130. 15) 舩木 修(2003):海況変動がマイワシの本県沿岸 への来遊に及ぼす影響,神水研研報,第8号,33-37. 16) 三谷 勇(1981):神奈川県沿岸に来遊するイワシ 類の生態に関する研究-Ⅰ神奈川県鎌倉沖における マイワシとカタクチイワシの来遊特性,神水試研 報,第3号,39-49. 17) 三谷 勇(1982):神奈川県沿岸に来遊するイワシ 類の生態に関する研究-Ⅱ金田湾におけるマイワシ とカタクチイワシの来遊特性,神水試研報,第4号, 9-16.

参照

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