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(1)

ケーススタディ/No.1125●

マナーの悪い先輩社員

…… 4 ケースガイダンス/本ケースのねらい…… 6 ケース分析…… 7 ケース解説……12 リーダーシップ◎藤原徳子/人間心理◎吉野美智/法的視点◎芳賀竜一 データファイル……亀田伸彦……18 ケーススタディ/No.1126●

共有化されないノウハウ

……20 ケースガイダンス/本ケースのねらい……22 ケース分析……23 ケース解説……28 リーダーシップ◎松永譲治/人間心理◎原 裕輝/法的視点◎香川孝三 データファイル……森下真一……34 次号ケース/No.1127●

軽視された部下の成長

……36 No.1128●

仕事が集中する中堅社員

……38

特別企画

――LD ノート編集室…41

INDEX

2012

月号

Leadership Development Note

(2)

◆2つのケースで、どのような状況にも対応できるリーダーに 管理者・リーダーが、リーダーシップを発揮することで解決できる問題、トラブルを描い たケースを毎月2つずつ掲載します。 管理者・リーダーが、メンバー(部下)に対してどのようなマネジメントをしていけばよ いかを考えさせるケース、上司にアプローチしないと解決ができないケース、プロジェクト チームなど職場横断的な問題を取り上げたケースを通して、さまざまな状況の中で、どのよ うなリーダーシップを発揮していくかを学びます。 ケーススタディは、以下のような手順で学習すると効果的です。 ◆専門家の解説によって考えを深める LD ノートでは、1つのケースの解決について、3つの視点(「リーダーシップ」「人間心 理」「法的視点」)からアプローチします。それぞれ実務経験者や専門家による解決策ですが、 ケーススタディは、みずから問題を発見し、解決の糸口を探ることに“学び”があります。 ケース解説は、あくまでも自身の考えを広げ、深めるためのサポート役として役立ててくだ さい。 ◆多種多様な「場」と「立場」をシミュレーション ケースによっては、あなたと異なる職種や職場が舞台となることもあるでしょう。しかし、 どんなケーススタディからでも学ぶことはできます。人と人、組織と人の関係は、状況の違 いにかかわらず共通する部分が多く、ある職場や組織で起こる問題は、別の職場や組織でも 起こる可能性は高いのです。 リーダーシップは、さまざまな「場」を踏み、「立場」に立つことで育まれるといわれてい ます。とくに先行き不透明な現代においては、多様に変化するビジネスシーンに機敏に対応 できるリーダーが求められています。LD ノートは、多種多様な状況をシミュレーションす ることで、どこでも、どんな場面でも通用するリーダーシップを身につけることができる学

L

eadership

D

evelopment

NOTE

Leadership Development Note(LD ノート)

は、

管理者・リーダーが職場のさまざまな問題を解決する能力を身につけ、 リーダーシップのあり方を学ぶことを目的としています。

どこが問題か

どうすれば

よかったか

自分なら

どうする

解説との

違いは

ケースの事実関係を正 確に把握し、問題点を摘 出して、中心課題を整 理・検討する。 どうすれば問題を未然 に防げたか、状況を悪 化させずにすんだのか 考える。 当面の対応策と抜本的 な解決策を考えてみる。 解決策への道筋を明確 にし、実現の可能性を検 討する。 解説と自分の結論とを比較し、 視点の違いを検討する。解説が 指摘したことを確認し、自分の 職場に照らして考えてみる。

(3)

ケース

NO.1126●

共有化されないノウハウ

p.20∼

❒ケースガイダンス 「解説」をより確実に、より深く理解していただくために、「ケ ース」と「ケース解説」の橋渡しをします。 ❒ケース分析 「問題を発見できれば8割は問題解決し たようなもの」といわれています。ケース の流れに沿って、さまざまな視点から分析 することで問題を発見し、解決の糸口を探 っていきます。グループでケース討議をお こなう際のファシリテートにも役立ちます。 ❒ケース分析 ケースの問題解決のために必要な方策を 3つの視点(リーダーシップ、人間心理、 法的視点)から解説しています。ケースの 場面でどういう行動をとることが、リーダ ーシップの発揮になるのかが、具体的に理 解できます。 ❒データファイル 学習するケースに関連して、管理者が知っておくべき基礎 知識や最新情報、トピックをコンパクトに解説します。

(4)

創業 45 周年の記念イベントを終えた 菓子製造・販売会社 M 社の社内では、創 業者をはじめ社員一同が、次の 50 周年に 向けて一致団結・協働する雰囲気がみな ぎっていた。 また、M 社はここ数年、伝統の味を守 りつつ、お客様や社員の声を採り入れた 斬新なアイディア商品で、順調に売上を 伸ばしてきた。 “老舗デパート”を担当する1課 今般、社内で大幅な人事異動がおこな われた。組織力を強化するのが目的であ る。各部署が抱える問題に対して、他部 署から人が異動することによって、その 解決策を見出したり、アドバイスをした りと、客観的な視点で業績アップにつな がるスベを探るというものだ。 営業部内でも人事異動がおこなわれ、 営業 1 課 1 係には、古谷(男 27)と森下 (女 25)の 2 名が配属となった。 それまで営業 2 課に所属していた古谷 は、担当エリア内の商店街を回るルート セールスをしていた。また、営業 3 課に 所属していた森下は、学校の購買部を担 当していた。 二人とも、売上実績もお客様からの評 判も良いと聞いていた米田課長(男 42) は、当人たちに言った。 「大型小売店を顧客にもつ 1 課の中で、 ここ 1 係は老舗デパートが顧客となる。1 課は、当社の売上の 6 割を占めている部 署だから、きみたちの営業力をフルに活 かしてほしい。頼んだぞ」 “ノーネクタイじゃないか!” 夕方、古谷と森下が営業から戻った。 「米田課長も出たことありますかぁ∼。 今日の外商部主催のパーティーは、お中 元商戦に向けたものらしいですけどぉ∼、 ほんと疲れましたよ。なぁ、森下?」 と、古谷が言った。 森下は無反応だった。 「初めてのことで、いい経験をしたん じゃないのかな。それより古谷くん、そ の格好で出席したのか」 「そうですよ。今朝と同じですけど、 マズかったですか」 「ノーネクタイじゃないか! クールビ ズには早すぎるぞ」 「課長、気にしないでください。これ が俺流ですから」 自分なりのポリシーをもっている古谷 は、会話を断ち切り、部屋を出て行った。 米田課長は、「勉強と思って若い2人を 参加させたが、何か問題はなかっただろ うか。永岡係長(女 36)を同行させるん だった」と内心思い、反省した。 どんどんエスカレートする 「どうもどうも、はいはい、よろしく」 古谷の口調に永岡係長がカチンときた。 「古谷さん、今の電話だけど、お客様 からじゃないわよね」 「K デパートさんですけど、何か?」 「お客様に対する言葉づかいがタメ口 でなっていないわ! ちゃんと敬語を使 えないの!」 「あのぉ∼、気にしないでください。

No.1125

マナーの悪い先輩社員

ケーススタディ

(5)

これでもちゃんと営業してるんで…」 呆れ果てた永岡係長は、閉口した。 二人のやりとりを聞いていた米田課長 は、以前は電話に出る社員の口調も丁寧 で、穏やかな空気が部署内に漂っていた。 ここ数カ月は、若手社員の語気が強まっ てきているように感じ、悩んでいた。 そんな中、森下が古谷に対して、質問 していた。 「古谷先輩は、いつからラフなカッコ ウをするようになったんですか」 「あっ、これ? 2 年前のクールビズ以 降かな。期間中は、ラフは OK.で、それ 以外は NO って、おかしくない? それに、 商店主やお店の人たちからは、親しみや すくていいって言われてたしね」 「そうなんだ。実は、私も学校回りし ていたから、あえて地味で清楚なスーツ を着ていたけど、これからは華やかなデ パートの世界だから、ちょっと派手にし ちゃおうかな。外商部のお客様もきらび やかだったしね」 二人の会話は、どんどんエスカレート していった。 米田課長は、「このままでは、職場の空 気が悪くなる。古谷のマナーの悪さを早 く何とかしなくては…。女性の目線で、 永岡係長に指導してもらおうか、それと も直接注意したほうがいいのか、その場 合は、どうやって…」と、心の中で葛藤 していた。 “どのような教育をしているのか” 出張から戻った米田課長のもとに、永 岡係長がやってきた。 「課長、お帰りなさいませ。お疲れの ところ申し訳ございません。課長の留守 中、A デパートと K デパートからお電話 がありまして、“M 社では、どのような社 員教育をしているのか”という内容でし た。課長もお気づきとは思いますが、古 谷さんの件です。内容は、・・・・・・」 と、服装や言葉づかいについて、いろい ろと指摘を受けたことを話した。 「それに…」 「なんだ! 係長。率直に言いなさい」 「はい。担当者が、“わが社の商品を販 売できるということは、デパートさんに とってラッキーですよね”という上から 目線でものを言われているような気がし たと、おっしゃっていました。ただ、た だ失礼をお詫びするだけでした。このま までは、わが社の信用をなくします。古 谷さんに対して、早急な対応をお願いい たします」 永岡係長が自席に戻り、米田課長は頭 を抱えてしまった。 ■ケース分析の手引き■ ◆米田課長のメンバーへの指導にはどん な問題点があるでしょうか。 ◆米田課長は今後、メンバーへの指導を どのように改めるべきでしょうか。

(6)

本来の自由は制約の中にある かつてビートたけしは「本来の自由は 制約の中にこそ存在する」と言ったこと がある。考えてみれば、世の中には不良 やヤンキーと呼ばれる人もいるが、大多 数は学校や職場に所属しており、曲がり なりにも社会生活を送っている。 彼ら彼女らの多くは、集団から排除さ れない境界のところで自由を主張する。 それはまず奇抜な服装やぞんざいな言葉 づかいによって表現され、しきりにルー ルを逸脱しようとする。本当に自分勝手 に振る舞いたいなら、その所属する集団 からさっさと降りてしまうはずだが、学 校や職場を離脱しようとはしない。 それをやらないのは、集団や社会から 完全に自由になることが逆に不自由であ ることを知っているからだ。完全な自由 が実現する世界は、いわば原始の状態で あり、秩序のないカオスの場である。生 きていくには苦労が多い。ルールの多い 社会の中にいるからこそ、それを多少逸 脱する自由も得られる。 こう考えると、自由とは社会的な概念 であり、集団や社会から切り離して存在 しえないことが理解できる。 問題なのは顧客からのクレーム 本ケースでも、老舗デパートの営業担 当である古谷は、ノーネクタイのラフな 服装で客先のパーティーに参加し、電話 で顧客にタメ口をつかうなど、そのマナ ーの悪さが問題になっている。 米田課長や永岡係長も注意をおこなっ ているが、古谷は「俺流」を理由に聞き 流している。後輩の森下にも悪い影響を 及ぼしつつある。 古谷も、制約の中で自由を主張してい るわけである。職場の環境が許容できれ ば、古谷くらいのマナーの悪さは黙認さ れてよいのかもしれない。その場合は後 輩への影響も悪いものにはならない。 だが、ここで問題なのは、顧客のデパ ートから古谷のマナーの悪さについて具 体的なクレームが出ていることだ。そし て、古谷の顧客への上から目線の失礼な もの言いも指摘されている。 職場の管理者としては、業績に影響を 与えかねない古谷のマナーを改善する必 要に迫られている。 周囲が認めることが“俺流” 米田課長は、職場をめぐるルールや常 識を尊重しないと、仕事をスムーズに進 められないこと、そして逸脱を続ければ やがて集団から排除されてしまうことを 古谷によく教えなければならない。 また、「俺流」というのは自分勝手に振 る舞うことではない。周囲からリスペク トされることだ。そういう意味では、失 礼な態度で顧客の怒りを買っている古谷 の俺流は論外である。古谷のパーソナリ ティが顧客に認められなければ、ただの 世間知らずで終わってしまう。 人間は社会的な存在である以上、集団 的な規範を無視しては生きられない。そ の規範自体が問題であるなら、集団の内 部から、周囲のリスペクトを集めながら 変えていくべきものである。それが本来 の意味での自由ではないだろうか。

ケースガイダンス

本ケースのねらい

(7)

創業 45 周年の記念イベントを終えた 菓子製造・販売会社 M 社の社内では、創 業者をはじめ社員一同が、次の 50 周年に 向けて一致団結・協働する雰囲気がみな ぎっていた。 また、M 社はここ数年、伝統の味を守 りつつ、お客様や社員の声を採り入れた 斬新なアイディア商品で、順調に売上を 伸ばしてきた。 “老舗デパート”を担当する1課 今般、社内で大幅な人事異動がおこな われた。組織力を強化するのが目的であ る。各部署が抱える問題に対して、他部 署から人が異動することによって、その 解決策を見出したり、アドバイスをした りと、客観的な視点で業績アップにつな がるスベを探るというものだ。 営業部内でも人事異動がおこなわれ、 営業 1 課 1 係には、古谷(男 27)と森下 (女 25)の 2 名が配属となった。 それまで営業 2 課に所属していた古谷 は、担当エリア内の商店街を回るルート セールスをしていた。また、営業 3 課に 所属していた森下は、学校の購買部を担 当していた。 二人とも、売上実績もお客様からの評 判も良いと聞いていた米田課長(男 42) このコーナーでは、問題解決の手かがり となる描写や登場人物の言動を一つひとつ ピックアップしていきます。これにより、 事実を的確に把握することができ、よりよ い解決策を導くことができます。 グループ討議などでの問題点の整理や課 題発見のヒントとしてお役立てください。 ←←←なぜ M 社では、大幅な人事異動がおこなわれ ることになったのか。 ←←←古谷は、異動前は営業 2 課でどんな顧客を担 当していたか。 ←←←米田課長は、配属となった古谷と森下にどん な訓示をおこなったか。

(8)

は、当人たちに言った。 「大型小売店を顧客にもつ 1 課の中で、 ここ 1 係は老舗デパートが顧客となる。 1 課は、当社の売上の 6 割を占めている 部署だから、きみたちの営業力をフルに 活かしてほしい。頼んだぞ」 “ノーネクタイじゃないか!” 夕方、古谷と森下が営業から戻った。 「米田課長も出たことありますかぁ∼。 今日の外商部主催のパーティーは、お中 元商戦に向けたものらしいですけどぉ∼、 ほんと疲れましたよ。なぁ、森下?」 と、古谷が言った。 森下は無反応だった。 「初めてのことで、いい経験をしたん じゃないのかな。それより古谷くん、そ の格好で出席したのか」 「そうですよ。今朝と同じですけど、 マズかったですか」 「ノーネクタイじゃないか! クールビ ズには早すぎるぞ」 「課長、気にしないでください。これ が俺流ですから」 自分なりのポリシーをもっている古谷 は、会話を断ち切り、部屋を出て行った。 米田課長は、「勉強と思って若い2人を 参加させたが、何か問題はなかっただろ うか。永岡係長(女 36)を同行させるん だった」と内心思い、反省した。 どんどんエスカレートする 「どうもどうも、はいはい、よろしく」 古谷の口調に永岡係長がカチンときた。 「古谷さん、今の電話だけど、お客様 からじゃないわよね」 「K デパートさんですけど、何か?」 「お客様に対する言葉づかいがタメ口 ←←←米田課長は、客先のパーティーに出た古谷の 服装を見てなんと言ったか。 ←←←古谷は、米田課長の指摘になんと答えたか。 ←←←米田課長は、古谷と森下だけで行かせたこと について、どんな反省をしたか。 ←←←永岡係長は、古谷の電話応対についてどん な注意をおこなったか。

ケース分析

(9)

←←←古谷は、永岡係長の注意に対してなんと答え たか。 ←←←米田課長は、永岡係長と古谷のやりとりを聞 いていて、どんなことを思ったか。 ←←←森下は、先輩の古谷にどんな質問をしたか。 ←←←森下は、なぜ自分も服装を派手にしたいと思 ったのか。 ←←←永岡係長は、出張から帰った米田課長にどん な相談をもってきたか。 でなっていないわ! ちゃんと敬語を使 えないの!」 「あのぉ∼、気にしないでください。 これでもちゃんと営業してるんで…」 呆れ果てた永岡係長は、閉口した。 二人のやりとりを聞いていた米田課長 は、以前は電話に出る社員の口調も丁寧 で、穏やかな空気が部署内に漂っていた。 ここ数カ月は、若手社員の語気が強まっ てきているように感じ、悩んでいた。 そんな中、森下が古谷に対して、質問 していた。 「古谷先輩は、いつからラフなカッコ ウをするようになったんですか」 「あっ、これ? 2 年前のクールビズ以 降かな。期間中は、ラフは OK.で、それ 以外は NO って、おかしくない? それに、 商店主やお店の人たちからは、親しみや すくていいって言われてたしね」 「そうなんだ。実は、私も学校回りし ていたから、あえて地味で清楚なスーツ を着ていたけど、これからは華やかなデ パートの世界だから、ちょっと派手にし ちゃおうかな。外商部のお客様もきらび やかだったしね」 二人の会話は、どんどんエスカレート していった。 米田課長は、「このままでは、職場の空 気が悪くなる。古谷のマナーの悪さを早 く何とかしなくては…。女性の目線で、 永岡係長に指導してもらおうか、それと も直接注意したほうがいいのか、その場 合は、どうやって…」と、心の中で葛藤 していた。 “どのような教育をしているのか” 出張から戻った米田課長のもとに、永 岡係長がやってきた。

(10)

「課長、お帰りなさいませ。お疲れの ところ申し訳ございません。課長の留守 中、A デパートと K デパートからお電話 がありまして、“M 社では、どのような社 員教育をしているのか”という内容でし た。課長もお気づきとは思いますが、古 谷さんの件です。内容は、・・・・・・」 と、服装や言葉づかいについて、いろい ろと指摘を受けたことを話した。 「それに…」 「なんだ! 係長。率直に言いなさい」 「はい。担当者が、“わが社の商品を販 売できるということは、デパートさんに とってラッキーですよね”という上から 目線でものを言われているような気がし たと、おっしゃっていました。ただ、た だ失礼をお詫びするだけでした。このま までは、わが社の信用をなくします。古 谷さんに対して、早急な対応をお願いい たします」 永岡係長が自席に戻り、米田課長は頭 を抱えてしまった。

ケース分析

←←←永岡係長は、なぜ“わが社の信用をなくす”と 米田課長に伝えたのか。

(11)

(12)

1.問題のクローズアップ (1)“気がかりな点”をそのままに 会社の信用を落とす出来事が起こり、 米田課長の脳裏には「やはり」という思 いはあったはずだ。部下をパーティーに 参加させた際には、永岡係長を同行させ るんだったと反省している。つまり、米 田課長の胸の内には、多少、気がかりな 点があったということだ。 また、部署内の雰囲気の変化にも気づ き、古谷のマナーの悪さを何とかしなく てはと思いつつ、なんら手立てを打たな かった。そして、米田課長は、早い段階 から永岡係長の力を借りたいと思ってい るにも関わらず、相談する機会をつくろ うとしていない。 永岡係長から、報告を受けた際も、た だ1人で悩むばかりである。米田課長は、 機微を感じとったり、状況変化を察知し たりする能力はあると思うが、それらの 思いを内に秘めてしまう。誠にコミュニ ケーションの量が少ない。 (2)品格保持に関する指導不足 顧客ターゲットが異なる部署から異動 になった部下に対する指導が不十分であ る。老舗デパートを顧客にもち、売上に 大きく貢献している部署の社員として、 心がけることをまず話す必要がある。 以前の部署で、売上実績とお客様から の評判が良かったとはいえ、老舗デパー ト、とくに外商部となれば、お客様の価 値観に伴い要望は異なる。商品の良さは もちろんであるが、製造販売元の社員の 振る舞いにも、老舗デパートとしての品 格を期待される。当然、お客様の満足度 にも影響してくる。 米田課長が、普段からこのような点を 意識していたならば、具体的な指示や指 導をおこなうべきである。しかし、過去 の成績から営業力があると判断し期待し た点は、指導ミスといえるだろう。仮に 「言わなくてもわかるだろう」という意 識が働いたとすれば、今後もさまざまな 問題が起こる可能性がある。 (3)的外れなコメント また、ノーネクタイでパーティーに出 席した際、「クールビズには早すぎるぞ」 と言っているが、コメントとしては的外 れである。あくまでも状況しだいだが、 問題点を発見したら、その場で解決する ことが望ましい。他の課員に対する影響 を考え、マナーはとくに「後で指導する」 というのは効果がない。マナーの悪さを 直接注意しても、それは古谷自身(人格) を攻撃しているわけではない。 2.問題解決の考え方、解決策の提示 (1)部下を連れて謝罪に行く まず始めに米田課長がすべきことは、 ご意見を頂戴したデパートの担当者に古 谷を連れて謝罪に行くことである。部下 の無礼を詫び、社員に対する教育指導を 徹底していく旨を約束することである。 古谷には、マナーの悪さが会社の信用問 題につながることを認識させることだ。 これまでの振る舞いに対する古谷の意識 改革と行動変容を促す絶好のチャンスを 逃さないことである。 (2)顧客の特殊性を理解させる 営業という職務は、市場や顧客ターゲ ットが変わると、営業スタイルも変わっ てくる。まず、古谷と森下がやってきた 営業の仕方を聞き、次に、米田課長が老 舗デパートへの営業で気をつけることを

リーダーシップ

ケース解説

(13)

伝え、最後に、相違点を補完する教育指 導をおこなうことである。米田課長が心 がまえを話し、永岡係長がマナーを含む 具体的な指導をおこなってもよい。 いずれにせよ、老舗デパートを顧客に もち、当社の売上に大きく貢献している 部署の一員であることを自覚させること だ。そして、言動に注意し、信用を失墜 することのないよう、始めに苦言を呈す ることが肝要だ。 (3)問題はすぐに改めさせる 米田課長は、部下が営業活動で勘違い している点をすぐ改めることである。 たとえば、古谷がノーネクタイのとき、 「クールビズには早すぎるぞ」といった 言葉がけでは、古谷のマナーの悪さは正 されない。「社交マナーとして、今後はネ クタイを着用すること。会社を代表して 出席しているのだから、礼儀を尊重して ほしい。何より、招いてくださったお客 様に対して、大変失礼な行為になります よ。わかりましたね」と、米田課長も丁 寧な口調で、注意することである。間接 的に、課員を指導することにもなる。 また、古谷と森下が話をエスカレート させようとしていたとき、米田課長はす ぐ介入し「ビジネスマナーは、商取引を 円滑におこなうための一つのルールで、 相手を尊重する気持ちを言葉や行動で示 すことだよね。社会風潮として“クール ビズ”はあるが、お客様と商談するとき は、ネクタイを締めてください。こちら が礼儀正しい振る舞いをすると、お客様 は自分たちを大切な存在として尊重して くださっていると思うからね。そして、 お客様が華やかな雰囲気をもち、派手な 装いだからといって、我々も真似ていい というわけではないよ。お客様の自尊心 を尊重し、出過ぎない身だしなみをする ことだ。清楚で凛とした振る舞いは、誠 実な仕事をするなと思われ信頼される よ」と、2人を前に「立場とマナー」に ついて諭すことである。 (4)対話の機会を増やす 古谷は、「俺流」や敬語を使えないこと を指摘された際、「気にしないでください。 これでもちゃんと営業してるんで」と言 っている。自分なりのポリシーをもって いるようだが、会社の信用を落とすよう では本末転倒である。一時的に成績が上 がっても、お客様からの信頼を継続的に 勝ち取り、結果を残せるとは限らない。 礼儀を欠いた殿様商売的な意識で仕事を していると、お客様離れが始まることを、 米田課長は古谷をはじめ課員一同に対し て、話をすることだ。今後、米田課長は 悩みを1人で抱えず、部下である永岡係 長にも積極的に相談していくことである。 (ビジネスファーム 代表取締役 藤原徳子) ◆◇リーダーシップのポイント◇◆ 1.会社の信用問題を考える上 で、マナーを軽視してはいけ ない。 2.問題の発生や増幅を防止す るため早い段階で不安要素を 解決する。 3.営業活動において、市場と 顧客ターゲットに合った指導 をする。 4.部下(永岡係長)にも相談 する(積極的なコミュニケー ション)。

(14)

環境省は昨夏、原発事故に伴う節電の 必要性を受けて、従来のクールビズの取 組みを強化徹底した“スーパー・クール ビズ”を企業などに呼びかけた。 このような流れを受け、クールビズが 本格化した。結果、服装がラフに傾きす ぎ、M社のようにマナーに問題をもつ企 業が増えていることも否めない。ある企 業では、「クールビズ対策」として、服装 ルールの話合いがおこなわれたが、何か を規制すると、“これは?あれは?”と折 り合いがつかなくなり、本来の意味合い から「常識の範囲での暑さ対応の服装」 ということに落ち着いた。 その結果、職場の雰囲気がガラっと変 わったという。社内で仕事をする人の服 装がどんどんくだけたものになり、それ に比例するように電話応対や顧客対応の 面でも問題が噴出してきて、まず服装ル ールを再考したという。 服装で立ち居振る舞いが変化する 私たちは、規制をかけずに「自由にし ていい」と言われれば、服装や言葉づか い、顧客対応にいたるまで、驚くほどの 早さでラフになっていく。服装で考える と、気の置けないいつもの仲間なら「暑 いね…」の言葉を交し、それを互いの了 解として暑さ対応はいとも簡単にラフな 格好に移行する。言葉づかいも同じで、 人間関係の距離が縮まれば敬語は省かれ る。新人研修で習った「親しさとけじめ は、ワンセット」は忘れ去られる。 人の服装と言葉づかいの因果関係はは っきりしないが、スーツ着用ならば、ワ イシャツ、ネクタイ、革靴だ。それが、 ポロシャツとコットンパンツになったら 履物はスニーカーになる。靴が違うと持 ち物(バックパックが増える)、姿勢、歩 き方まで違ってくる。つまり、服装で立 ち居振る舞いは俄然変化する。 当然、言葉づかいも、平易な表現方法 に変化していくと考えられる。古谷の言 葉づかいがA デパートや K デパートから 「上から目線」と捉えられ苦情を受ける のも、顧客志向を欠いた「けじめのなさ」 が伺える。顧客から苦情がくるマナーを 放任しておくことはできない。 “機能性”と“客観性”が必要 社会人のマナーは以下の機能性と客観 性を兼ね備えていなければならない。 ①機能性 言葉は:簡潔、具体的、正確なこと 服装は:動きやすい、身体にフィット しているまたは、楽なことなど ②客観性 言葉は:相手がこちらの話し方をどう 理解し、受け取るかに配慮する。 服装は:相手がこちらの服装をどう見 て、どう感じるかに配慮する。 だから、社会人である私たちは身内で 考える機能性からだけで「よし」として はならないのだ。 そもそも、クールビズは、「温室効果ガ ス削減のため冷房温度を 28℃にしまし ょう。そのために薄着になりましょう」 という運動であって「ラフな格好を認め た」ということではない。 「俺流」のコミュニケーションも「俺」 のまわりの限られた領域でしか承認され ない。わが国の言葉は相手を敬い(尊敬 語)、みずからを低めて(謙譲語)、丁寧 語で話すことが決まりごとである。マナ ーは広く世間を見回して受け入れてもら えるものでなければならない。

人間心理

ケース解説

(15)

幼児期の親子の“綱引き”が分岐点 教育現場において、いわゆる素行不良 の子どもたち以外にも学校や社会のルー ルやマナーを逸脱するような行動をとる 子どもがいる。反対に、ルールに縛られ すぎて、仲間はずれにされてしまう子ど ももいる。その特徴から、前者を「欲求 優位型」、後者を「規範優位型」というが、 子どもがこれらの2 つのどちらのタイプ に育っていくのか、その分岐点は幼児期 の親子の「綱引き」にあるという。 自分の欲求やイメージどおりに行動す る2 歳∼3 歳児(第一次反抗期)に対し て、私たちはその可愛さや、逆にわがま まや頑固さに手を焼き、大目にみること がしばしばあるが、「本当にやってはいけ ない」ことは泣こうがわめこうが「させ ない」という関係性が「綱引き」である。 幼児全般におこなわれるべき「綱引き」 で、親が一貫して子どもを甘やかしてし まうと「欲求優位型」な子どもが、反対 に親が完璧なしつけをしすぎると「規範 優位型」の子どもが育っていく。 だから、子どもの欲求やイメージを許 容しながらも肝心な点はキチンとしつけ る「綱引き」が大切で、それを通じて子 どもは「欲求とルールのバランス感覚」 を培っていける。「綱引き」は、子どもの 成長の中で親や教師が意識的に実践して いくことが望ましい。 管理者が“綱引き”の機会をつくる 本ケースでは、古谷と森下は「欲求優 位型」と見られ、その証拠に「俺流で…」 「私ももう少し派手に…」と流れてしま っている。一方、永岡係長は「規範優位 型」と見られ、この2 人の行動は目に余 る。とても許せないという感覚だ。そこ には、係長としての親身な育成指導はな く、「ちゃんと敬語を使えないの…」と嫌 味のような注意をし、古谷や森下と直接 の関わりさえもとうとしていない。 だが、職場では「親のしつけが悪いか ら」「学校の教育不足だから」とあきらめ るわけにはいかない。M 社の社員として のニーズがあるのだから、管理者が全面 的に育成指導を担っていく必要がある。 前述のとおり、2 歳∼3 歳で子どもの タイプが決まるとしても、子どもたちは ルールや規範を遊びやスポーツを通して 身体を使い、コミュニケーションを重ね、 楽しみながらローカル・ルールを自然に 決めていくこともある。そんな自然発生 的でみんなが承認したルールは、そのル ール自体が子どもたちの気持ちを安定さ せ、それを自然に守るようになる。私た ちが大人になって、さまざまな人と一緒 にスポーツや遊びをするとき、決まりご とがそれぞれの出身地によってずいぶん と異なっていると感じたことがあるだろ う。子どもの頃なら躍起になって自分た ちのルールを押し通そうとするかもしれ ないが、大人である今は、より合理的で 好奇心に駆られるようなルールを上手に 選び、それを受け入れられる。 欲求優位型の古谷と森下、規範重視型 の永岡係長との間を取りもって、コミュ ニケーションを重ね、あるべきルールや マナーについて、積極的な「綱引き」の できる場や機会をぜひつくっていきたい。 (キャリアクリエイツ 主席講師 吉野美智) セオリー

◆欲求優位型と規範優位型

(16)

本ケースでは、若手の営業担当の古谷 がラフな服装で客先に出かけ、米田課長 から注意を受けている。しかし、古谷は 「俺流」を理由に従わないどころか、後 輩の森下まで古谷の悪い影響を受けつつ ある。老舗デパートが顧客であることか ら、米田課長は頭を抱えてしまう。 ところで、そもそも管理者は部下の身 だしなみをどこまで指導できるのだろう か。仮に指導できるとして、それに従わ ない部下に対して、なんらかの処分をく だすことは可能なのだろうか。 就業規則等の根拠が必要となる 一般に会社は、職場内の秩序を維持・ 確保するために、従業員に対して必要な 指導や命令をおこなうことができる。そ の法的根拠は、従業員がその労働力の処 分を会社に委ねることを約する労働契約 にあると考えられる。 したがって、従業員の自由もある程度 の制約を受けることになり、服装や髪型 などの身だしなみについても職場のルー ルに従うことが求められる。 ただし、労働契約に法的根拠があるの で、そのルールは就業規則等に明記され ていなければならない。服務規律の項目 として服装や髪形について具体的に示さ れていることが必要だ。たとえば「服装 などの身だしなみについては、常に清潔 に保つことを基本とし、他人に不快感や 違和感を与えるものとしないこと」「服装 は顧客、取引先及び他の従業員のひんし ゅくをかうようなものであってはならな いこと」などの規定である。 このような規定があれば、それが労働 契約の内容化し、従業員も予見可能性を もつことができる。会社による具体的な 指導や命令も可能になる。 無制限な制約は認められない しかし、身だしなみという従業員の人 格や自由に関わる事項に制約を加えるこ とになるので、それは無制限に認められ るわけではない。制約の内容は、会社の 円滑な運営上必要かつ合理的な範囲に止 まるものでなければならない。 たとえば、従業員の身だしなみに対す る業務命令をめぐる判例には「イースタ ン・エアポートモータース事件」(東京地 裁昭55.12.15 判決)がある。ハイヤー運 転手に対する口ヒゲを剃るべき旨の業務 命令に関し、乗務員勤務要領中の身だし なみ規定の合理性は肯定したが、問題と なった口ひげは「無精ヒゲ」「異様・奇異 なヒゲ」ではないため、その業務命令に 従う必要がないと判断された。 また、「東谷山家事件」(福岡地裁平 9.12.25 判決)においても、トラック運 転手に対する金髪を改めるようにとの業 務命令について、業務命令権の範囲外と してその効力が否定されている。 本判決では「労働者の髪の色、形、容 姿、服装などといった人の人格や自由に 関する事柄については、企業の制限行為 は無制限に許されるものではなく、企業 の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内 にとどまるべきであり、具体的制限行為 の内容は、制限の必要性、合理性、手段 方法としての相当性を欠くことのないよ う特段の配慮が要請されるものである」 と述べている。

身だしなみ指導の権利と限界

法的視点

ケース解説

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客観的な悪影響の事実が必要 身だしなみをめぐる業務命令は、会社 の円滑な運営を妨げるような具体的な事 実が必要である。たとえば顧客からのク レームが出るとか取引先から注意があっ たとか身だしなみをめぐる客観的な事実 が必要であり、そのような事実が認めら れた場合に、その従業員の金髪を改めさ せたり、ヒゲを剃ってくるように命令す ることができる。 本ケースの場合は、永岡係長の話によ ると「M社では、どのような社員教育を しているのか」古谷の服装や言葉づかい について顧客であるデパートの担当者か らいろいろ指摘されたという。古谷の身 だしなみによって具体的な業務の支障が 発生していることになる。 したがって、米田課長は古谷の身だし なみや言葉づかいについて改善を指導す ることは可能だと考えられる。 上司による教育指導が不可欠 本ケースでは、米田課長は古谷に注意 はしているが、実効的な指導をおこなっ た形跡は認められない。これでは、古谷 が注意を聞かないからといって、すぐに 処分することはできない。 まず、米田課長は顧客からの苦情を具 体的に本人に伝えることが必要である。 ラフな服装について、古谷は「商店主や お店の人たちからは、親しみやすくてい いと言われてた」と言っているが、それ は以前の職場の話であり、現在の職場と は顧客の性格が大きく異なることをよく 認識してもらう必要がある。 この点について、私立女子中学校の試 用期間中の教諭がノーネクタイであるこ となどを理由に解雇された「麹町学園事 件」(東京地裁昭46.7.19 判決)では、「同 人が新規採用で試用期間であることから すれば、少しでも非難すべき行為があれ ば、校長や先輩教師が指導すべきが当然 であるのに、一度もそのような注意・指 導を与えたことがなく、突如として本件 解雇の挙に出たことは教諭としての地位 を剥奪し同人を困惑させる以外の何もの でもなく、本件解雇は権利の濫用として 無効である」と述べている。処分の前提 に適正な教育指導を求めている。 口頭で何度か身だしなみや言葉づかい について教育指導し、それでも改善しな い場合には、始末書の提出、出勤停止な どの処分をおこない、それでも改まらな い場合に、最終的な判断として解雇とい う選択肢を考えることになる。 (人事労務コンサルタント 芳賀竜一) ◆◇リーガルポイント◇◆ 1.従業員の身だしなみにつ いて指導するには、就業規 則等に服務規律の具体的な 規定が必要である。 2.服務規律による制約は、 会社の円滑な運営上必要か つ合理的な範囲に止まるも のでなければならない。 3.服務規律違反で従業員を 処分するには、上司による 教育指導が十分になされて いることが前提である。

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1.ビジネスマナー、ビジネスルールは 企業のマンパワー 企業活動は、働く人びとの協力によっ て成り立つ。ルールを守らず、勝手に行 動するメンバーがいると、不良品をつく って社会の信用を失ったり、重大な労災 事故が起きることがあり、目標とする売 上げや収益を得ることが困難となる。 一般にマナーとは礼儀作法を、ルール とは規範をいう。ビジネスルールへの違 反は、就業規則上の懲戒の対象となるが、 ビジネスマナー違反は制裁の対象とはな らない場合が多い。だからといって、ビ ジネスマナーを軽視してはならない。 挨拶・言葉遣い・服装・髪型・身だし なみといったビジネスマナーは、職業人 としてのキャリアを築いていくための基 礎となる。ワークキャリアの展開には、 専門的な知識ばかりではなく、社内や取 引先との間での良好な人間関係を築く能 力が必要であり、ビジネスマナーを備え ることが欠かせない。 2.グローバル化の時代とビジネスマナ ー、ビジネスルール かつて、江戸の街には全国から武士や 商人たちが集まってきた。出身地が異な るために風習が違い、争いごとも起きや すい。しかし、些細な争いごとが大事に なると、所属する藩に責任が及ぶことも あった。 そこで生まれたのが、「知らない同士で も、会釈をする」「雨の日には、すれ違う ときに相手に水滴がかからないように傘 をかしげる」「“よいお天気ですね”など と、声を掛け合う」といった『江戸しぐ さ』だ。 雇用の多様化とグローバル化が進むな か、企業社会には、『現代版・江戸しぐさ』 が求められる。 若手社員は、自分たちの流儀を他の世 代に押しつけてはならない。外国籍社員 が溶け込めるに、互いに文化を理解しあ うことが大切だ。顧客や取引先に対して も、今まで以上にビジネスルールやビジ ネスマナーを守って、仕事に当たらなけ ればならない。 3.ビジネスルールの順守と、ビジネス マナーの向上を進める 多くの企業がビジネスルールの順守と ビジネスマナーの向上に取り組んでいる (1)就業規則に就業上の順守事項を明記する A社(出版・広告業)は、自由な社風 が伝統だが、「守るべきルールやマナーは 必ず守るべき」と考えている。このほど、 社内規程を整備するととともに、「従業員 心得」を定め、社員として守るべきマナ ーの明確化を図った。就業規則には、「就 業にあたって、“従業員心得”を順守しな ければならない」と明記した。 (2)マニュアルとガイドブックを充実する 海外輸出が多くを占めるB社(機械製 造業)では、職務上のルールやマナーを

ビジネスマナーとビジネススキル

人事労務コンサルタント

亀田伸彦

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定めるマニュアルや、マナーを解説した ガイドブックの整備に努めている。グロ ーバル化が進んで外国籍社員が例外的な 存在ではなくなり、中途採用者、有期雇 用者などが増加していくもとでは、内部 的な習慣に基づく「暗黙知」に依存する ことは好ましくない。 また、同社は、マニュアルやガイドブ ックを、企業機密に関する部分を除き、 原則として「社外秘」とせず、透明性の 確保を図っている。 (3)店舗ごとにマナーの手本となる中核者を育 成する C社(チェーン・レストラン)は、業 績の立て直しのために、社外からX氏を 招いた。レストランでは、従業員のマナ ーが極めて重要となる。 C社もマニュアル、ビデオ、研修施設 での研修などによる従業員研修に注力し ている。しかし、十分な成果が上がって いるとはいえない。 X氏は、身近に手本となる中核的従業 員が存在することが不可欠と考えている。 店舗ごとに、そうした中核者を育てるこ とを最重要課題の一つと位置づけ、店長 をはじめとする管理者のマナーの向上に 取り組み、成果を上げている。 (4)自社に適したビジネスルール、ビジネスマ ナーに取り組む D社(システム設計業)は、設立母体 の電機メーカーの人事管理を受け継いだ が、業種の違いから実情にそぐわない側 面が表れ、定められたルールやマナーが 守られなくなっている。 たとえば設計技術者にとっては、ラフ な服装のほうが仕事はしやすいが、厳密 には服装規定違反となる。 そこで、社内全体でビジネスルールや ビジネスマナーを再点検し、「必ず守るル ール、マナー」を再構築することとした。 (5)管理職の「修養」によってハラスメントを防 止する 企業環境の厳しさを反映してか、多く の企業で従業員のメンタルヘルス対策が 課題となっている。E社(建設業)の場 合も例外ではなく、そこで、管理者のビ ジネスマナーの修得に力を入れ、このこ とを「修養」と呼んでいる。 部下や外注先の指導にあたる管理者は、 つい忙しさや慣習から、相手の人格を損 なうような言葉遣いをすることがあり、 このことがメンタルヘルス対策の障害と なる。 同社では、管理者がビジネスマナーを 身につける(修養を積む)ことによって、 ハラスメントの防止を図っている。 4.コンプライアンスとしてのビジネス ルール、ビジネスマナー 今、企業にはコンプライアンスが厳し く求められている。コンプライアンスは 通常、「法令順守」と訳されているが、本 来、その範囲はもっと広い。コンプライ アンスには、社内規程やマニュアルの順 守のほか、企業倫理や、社会貢献に合致 した企業行動が包含される。 ビジネスルールやビジネスマナーは、 そうした企業行動を確保するためにも重 要である。消費者、取引相手、就業者は、 ビジネスルールが確立していなければ、 絶えず取引上や雇用上の不安にさらされ ることになる。また、ビジネスマナーが 守られていないと、気持ちよく取引や仕 事ができない。 企業には、経済のグローバル化、雇用・ 就業の多様化のなかで、ビジネスルール、 ビジネスルールの強化が求められている のである。

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自動車販売会社のS社は地方の地場企 業である。老舗だが、近年の若者の自動 車離れもあり、決して安泰ではない。メ ーカーとの販売店契約も従来の3年更新 から1年更新へと改められており、目標 達成は“絶対”の状況に置かれている。 小田島(男 41)はA営業所の所長であ る。A営業所は、営業 6 名(全員男性)、 事務 2 名(女性)、サービス(車検・修理 担当)のメカニック 6 名、の合計 15 名で 構成されている。 A営業所を支えているのは、成績トッ プを争う 2 人の営業マン。尾藤(男 33) は入社後、10 年間メカニックとして活躍 したのち、営業への職種変更を要請され た。口数は少なく仕事も堅実そのもの。 当初は慣れない顧客応対に苦労したが、 徐々にお客様の信頼を得て販売成績をア ップさせた。後輩が、教えを請えば必ず 丁寧に指導してくれるが、少し気難しい ところがあり、顧客やメンバーからは、 事務の女性を通しての依頼が多い。 清水(男 29)は大学を卒業後他の自動 車販売会社で成績を上げた後、より売れ 筋の自動車を取り扱っているS社へ転職。 前の会社のお客様を移すことに成功し、 成績を上げている。明るく乗りがいいの がお客さまからは評判だ。それに営業ト ークは際立ったものがある。「それを後輩 に伝えてほしい」と思い依頼すると「当 然、伝えています。でも、この会社は融 通かきかないですよね、なんでも『それ はできない』とか言っていつもノーから 始まりますから…」などと流されてしま う。小田島からみて、前の会社で実践し ていたとして「お客様優先」を掲げ、社 内の決まりごとを拡大解釈してしまう。 それがメンバーに対し、無理を言ってい るように感じられるが、稼ぎ頭なので遠 慮してしまう。 ノウハウを伝えるならともかく… 今年度から、販売台数について本社か らの締めつけがいっそう強くなった。以 前は営業所の目標達成だけが重視されて いたが、個人目標の達成についても厳し くチェックされるようになった。 ある日曜日、清水は午後に新車の契約 が見込めるお客様の来店を控えていた。 そこに、清水の顧客のⅩから「車の運転 操作でわからないことがあるので、今日 の午後、自宅へ来てもらえないか」との 電話が入った。清水は、細かな情報をほ しがるⅩを苦手としており、買い換えの 可能性も低い。清水は、他の日程を打診 したが、できないとのことで、他の営業 社員を行かせることで了解をもらった。 清水は、新人の江川(男 23)を呼び、 Ⅹのもとへ行くように指示するとともに 小田島にもその旨報告した。小田島は契 約優先という思いから、承諾の返事をし ようとした。 ところが、やりとりを見ていた尾藤が 苦々しい口調で話を始めた。 「契約は大事だが、江川は清水の下請 けではない。これまで何度も同じような ことがあった。同行してノウハウを伝え てやるならともかく、そんなことばかり

ケーススタディ

No.1126

共有化されないノウハウ

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させられては江川が来店客をつかまえる チャンスを逃してしまう。来店客と話を することでお客様対応の技術も磨かれる ものだ。江川の成績も上がらない」 もっともなことだった。一瞬、小田島 が黙ると、清水がいきなり「わかりまし た。私が行きます。契約のほうは流れま すよ。それでもいいですね…」と言い放 つように出て行ってしまった。 残った小田島、尾藤、江川、そしてや りとりを聞いていた他の社員にも気まず い空気が流れた。事務の柳原(女 24)が 「あーあ、またやっちゃいましたね」と、 もう1人の事務の山田(女 21)に小さな 声で話しかけた。 それぞれのノウハウをどう活かすか 尾藤と清水は仕事の考え方もやり方も 違う。尾藤は、清水にはことのほか厳し いし、清水も尾藤をなにかと避ける。会 議でも直接の会話はほとんどない。 事務の 2 人は尾藤と清水の両方に気を 使いながら、コミュニケーションの仲立 ちのようなことをしている。「きちんとし た情報の共有ができない」とは思いなが ら、直接指摘できないでいる。 小田島はこれまで何度か尾藤と清水に 協力しなければできない仕事を指示し、 コミュニケーションの修復を図ろうとし たこともあった。しかし、2 人は、別々 な提案や報告書を出してきた。 ある日、メカニックの柴崎(男 28)が 尾藤に強く注意されていた。話を聞くと、 清水の緊急の依頼で優先させた修理のせ いで、尾藤のお客様の修理が1日遅れた という。柴崎は、清水が「尾藤さんには 話をつけておく」ということだったが、 尾藤は聞いていないという。 小田島が柴崎から話を聞いている間に、 尾藤は「お客様には、とりあえず謝って 事なきを得ました。でも、こういうこと が続くと本当に困ります」と言って、他 の顧客からの電話にでた。 柴崎がため息をつく。「困りましたね、 清水さんの頼み方はいつも切羽詰ってい て、ぼくたちメカニックは引き受けざる を得ません。伝票をチェックするとたし かに、ここ 1 年、尾藤さんのお客様が後 回しになっています。尾藤さんに事前に 連絡しなかった私も悪いですが、そもそ もこういう場合は担当者同士で調整する のもいいですが、私たちも含めて仕事の 進め方の話が必要ですよね…」 こんな状態がもう2年も続いている。 2人とも優良顧客を多数抱える、A営業 所には欠かせない存在なだけに、この2 人のノウハウをどう活かし、チームのメ ンバーに伝えていけばよいものかと小田 島は頭を抱えてしまっている。 ■ケース分析の手引き■ ◆小田島所長の尾藤と清水への指導方法 にはどんな問題点がありますか。 ◆小田島所長は今後、メンバーへの指導 方法をどう改めるべきでしょうか。

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本ケースのねらい

古代人が宇宙船を作れない理由 突然、宇宙人が古代の地球に飛来して その高度な技術を伝授すれば、古代人で も宇宙船を作れたのではないか−。そん な議論をよく耳にする。 だが、よく考えると、これはファンタ ジーにすぎない。最大の理由は、古代に は大規模で複雑な近代的な産業組織が成 立し得ないことである。 こうした組織がなければ、宇宙船開発 のような大事業を遂行することは不可能 である。メンバーにそれぞれの役割を割 り当て、互いに情報とノウハウを共有し、 目的に向かって多くの人々を協働させる 高度に機能化された組織が欠かせない。 そこでは、高度なマネジメントスキルも 要求される。また、各種の専門家を供給 する高等教育機関などのインフラが整備 されていることが前提となる。 だから、宇宙人が高度な技術を古代人 に知識として与えても、それはすぐには 実用化できるわけではない。あらゆる前 提が整わないと、宇宙船は作れない。こ のことは今日の NASA(アメリカ)の宇宙 開発を見てもよくわかる。 ノウハウの“共有”は組織の根本 本ケースではノウハウの「共有」が問 題になっているが、これはビジネス組織 の根本にかかわる問題といえる。 個々のメンバーのすぐれたノウハウを 共有できなければ、組織として学習でき ないし、進歩もない。そうなると、目的 が達成できないばかりか、組織には自壊 する運命が待っている。 こうならないために、ビジネス組織は 長く多様な試行錯誤を経て、リーダーシ ップやマネジメントに関する知見やスキ ルを積み重ねてきた。 小田島所長には、尾藤と清水のぞれぞ れのすぐれたノウハウを他のメンバーに も共有化させ、目標達成に寄与させる責 任がある。だが、現状ではそのようなチ ームづくりはできていない。稼ぎ頭であ る2人に遠慮してしまって、現場の混乱 に拍車をかけている始末だ。 このままでは、せっかくの2人のすぐ れたノウハウが、逆に組織の足を引っ張 る結果になりかねない。 一人ひとりの役割を自覚させる 尾藤と清水のノウハウを共有化するた めには、組織人としての彼らに期待する ところを表明する必要がある。つまり、 1プレイヤーとしてではなく、組織人と しての自覚を促すことである。 これは、後輩を育成するべきポジショ ンにいるということだけではない。お互 いの違いを認め合い、チームで協力した ほうがさらに大きな成果を生み出してい けるという視点をもってもらうことだ。 その視点があれば、現場を混乱させるこ とは彼らにとって得にはならない。 このことは、尾藤と清水にかぎらずほ かのメンバーについても多かれ少なかれ 同じことがいえるだろう。 大事なのは、一部に有能な部下がいて も、組織にとっては大きなプレゼンスに ならない事実である。天才1人がいても 宇宙船は作れないのだから。

ケースガイダンス

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自動車販売会社のS社は地方の地場企 業である。老舗だが、近年の若者の自動 車離れもあり、決して安泰ではない。メ ーカーとの販売店契約も従来の3年更新 から1年更新へと改められており、目標 達成は“絶対”の状況に置かれている。 小田島(男 41)はA営業所の所長であ る。A営業所は、営業 6 名(全員男性)、 事務 2 名(女性)、サービス(車検・修理 担当)のメカニック 6 名、の合計 15 名で 構成されている。 A営業所を支えているのは、成績トッ プを争う 2 人の営業マン。尾藤(男 33) は入社後、10 年間メカニックとして活躍 したのち、営業への職種変更を要請され た。口数は少なく仕事も堅実そのもの。 当初は慣れない顧客応対に苦労したが、 徐々にお客様の信頼を得て販売成績をア ップさせた。後輩が、教えを請えば必ず 丁寧に指導してくれるが、少し気難しい ところがあり、顧客やメンバーからは、 事務の女性を通しての依頼が多い。 清水(男 29)は大学を卒業後他の自動 車販売会社で成績を上げた後、より売れ 筋の自動車を取り扱っているS社へ転職。 前の会社のお客様を移すことに成功し、 成績を上げている。明るく乗りがいいの がお客さまからは評判だ。それに営業ト このコーナーでは、問題解決の手かがり となる描写や登場人物の言動を一つひとつ ピックアップしていきます。これにより、 事実を的確に把握することができ、よりよ い解決策を導くことができます。 グループ討議などでの問題点の整理や課 題発見のヒントとしてお役立てください。 ←←←尾藤は、どんな経歴をもったどんな人物か。 ←←←清水は、どんな経歴をもったどんな人物か。

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ークは際立ったものがある。「それを後輩 に伝えてほしい」と思い依頼すると「当 然、伝えています。でも、この会社は融 通かきかないですよね、なんでも『それ はできない』とか言っていつもノーから 始まりますから…」などと流されてしま う。小田島からみて、前の会社で実践し ていたとして「お客様優先」を掲げ、社 内の決まりごとを拡大解釈してしまう。 それがメンバーに対し、無理を言ってい るように感じられるが、稼ぎ頭なので遠 慮してしまう。 ノウハウを伝えるならともかく… 今年度から、販売台数について本社か らの締めつけがいっそう強くなった。以 前は営業所の目標達成だけが重視されて いたが、個人目標の達成についても厳し くチェックされるようになった。 ある日曜日、清水は午後に新車の契約 が見込めるお客様の来店を控えていた。 そこに、清水の顧客のⅩから「車の運転 操作でわからないことがあるので、今日 の午後、自宅へ来てもらえないか」との 電話が入った。清水は、細かな情報をほ しがるⅩを苦手としており、買い換えの 可能性も低い。清水は、他の日程を打診 したが、できないとのことで、他の営業 社員を行かせることで了解をもらった。 清水は、新人の江川(男 23)を呼び、 Ⅹのもとへ行くように指示するとともに 小田島にもその旨報告した。小田島は契 約優先という思いから、承諾の返事をし ようとした。 ところが、やりとりを見ていた尾藤が 苦々しい口調で話を始めた。 「契約は大事だが、江川は清水の下請 けではない。これまで何度も同じような ←←←小田島所長は、清水のどんな点が問題だと 感じているか。 ←←←小田島所長は、どうして清水に遠慮してしま うのか。 ←←←清水は、なぜ自分の顧客 X への対応を新人 の江川に任せようと考えたのか。 ←←←尾藤は、なぜ清水の顧客の対応に江川が行 くことに反対したのか。

ケース分析

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ことがあった。同行してノウハウを伝え てやるならともかく、そんなことばかり させられては江川が来店客をつかまえる チャンスを逃してしまう。来店客と話を することでお客様対応の技術も磨かれる ものだ。江川の成績も上がらない」 もっともなことだった。一瞬、小田島 が黙ると、清水がいきなり「わかりまし た。私が行きます。契約のほうは流れま すよ。それでもいいですね…」と言い放 つように出て行ってしまった。 残った小田島、尾藤、江川、そしてや りとりを聞いていた他の社員にも気まず い空気が流れた。事務の柳原(女 24)が 「あーあ、またやっちゃいましたね」と、 もう1人の事務の山田(女 21)に小さな 声で話しかけた。 それぞれのノウハウをどう活かすか 尾藤と清水は仕事の考え方もやり方も 違う。尾藤は、清水にはことのほか厳し いし、清水も尾藤をなにかと避ける。会 議でも直接の会話はほとんどない。 事務の 2 人は尾藤と清水の両方に気を 使いながら、コミュニケーションの仲立 ちのようなことをしている。「きちんとし た情報の共有ができない」とは思いなが ら、直接指摘できないでいる。 小田島はこれまで何度か尾藤と清水に 協力しなければできない仕事を指示し、 コミュニケーションの修復を図ろうとし たこともあった。しかし、2 人は、別々 な提案や報告書を出してきた。 ある日、メカニックの柴崎(男 28)が 尾藤に強く注意されていた。話を聞くと、 清水の緊急の依頼で優先させた修理のせ いで、尾藤のお客様の修理が1日遅れた という。柴崎は、清水が「尾藤さんには ←←←尾藤の反対に遭って、清水はどんな行動をと ったか。 ←←←事務の柳原は、もう1人の事務の山田に小声 でなんと話しかけたか。 ←←←柳原と山田は、尾藤と清水の間でどんな役割 を担っているか。 ←←←小田島所長は、尾藤と清水の関係修復を図 るために、どんな仕事を指示したか。 ←←←メカニックの柴崎は、なぜ尾藤に注意されて いたのか。

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話をつけておく」ということだったが、 尾藤は聞いていないという。 小田島が柴崎から話を聞いている間に、 尾藤は「お客様には、とりあえず謝って 事なきを得ました。でも、こういうこと が続くと本当に困ります」と言って、他 の顧客からの電話にでた。 柴崎がため息をつく。「困りましたね、 清水さんの頼み方はいつも切羽詰ってい て、ぼくたちメカニックは引き受けざる を得ません。伝票をチェックするとたし かに、ここ 1 年、尾藤さんのお客様が後 回しになっています。尾藤さんに事前に 連絡しなかった私も悪いですが、そもそ もこういう場合は担当者同士で調整する のもいいですが、私たちも含めて仕事の 進め方の話が必要ですよね…」 こんな状態がもう2年も続いている。 2人とも優良顧客を多数抱える、A営業 所には欠かせない存在なだけに、この2 人のノウハウをどう活かし、チームのメ ンバーに伝えていけばよいものかと小田 島は頭を抱えてしまっている。 ←←←尾藤は、清水の仕事の進め方について、小田 島所長にどんな不満をもらしたか。 ←←←柴崎は、清水の頼み方について、どんな問題 点を指摘しているか。 ←←←小田島所長は、尾藤と清水にどんな役割をも ってほしいと期待しているか。

ケース分析

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参照

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