目 次
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総説
日本人の食事摂取基準(2015年版)とスポーツ栄養 髙田 和子 2■
原著
自炊とレシピ集に対する栄養系と体育系の一人暮らしの学生の認識 奥村 友香、岡村 浩嗣、小清水 孝子、柳沢 香絵、松元 圭太郎 11■
短報
高校野球選手の栄養学的介入による夏季の体格・栄養状態の改善 海崎 彩、田中 紀子 19■
実践報告
実業団女子バレーボール選手のシーズン中における鉄欠乏症状の管理 ─非侵襲で測定できるヘモグロビン推定値を用いて─ 吉谷 佳代 30 中学生競泳選手に対する料理イラスト入りランチョンマットを用いた栄養教育の効果 吉野 昌恵 37■
資料
ソチ冬季オリンピック選手における食意識とサプリメント使用状況 松本 なぎさ、亀井 明子、上東 悦子、土肥 美智子、赤間 高雄、川原 貴 45■
抄録
50 日本スポーツ栄養学会 第2回大会 開催のお知らせ i 投稿規定 ii 編集後記 xiv日本スポーツ栄養研究誌
vol. 8 2015
日本スポーツ栄養研究誌 vol. 8 2015 総説 髙田和子
Ⅰ.はじめに
2014年3月28日に厚生労働省健康局より「日本人の 食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書1) が示された。食事摂取基準は、健康増進法第30条の2 に基づき、2015年度から使用する基準として、厚生労 働大臣より告示される。食事摂取基準は、新しいエビ デンスに基づき、5年ごとに改定を重ねている。改定 においては、科学的根拠に基づいて行うことを基本と しながらも、単なる論文レビューではなく、エビデン ス不足であっても、課題を明記しながら、何らかの方 向性を示すようにされている。 本稿では、食事摂取基準(2015年版)の主な改定点 を紹介するとともに、競技選手及び健康増進のための スポーツ栄養の場面における食事摂取基準の活用につ いて検討する。Ⅱ.日本人の食事摂取基準(2015年版)の
改定のポイント
1.対象者 改定のポイントの1つは、対象者の拡張である。 2010年版では、「健康な個人ならびに健康な人を中心 として構成されている集団」としながら、「高血圧、 脂質異常、高血糖など、何らかの疾患に関して軽度に リスクを有しても自由な日常生活を営み、当該疾患に 特有の食事指導、食事療法、食事制限が適用されたり、 推奨されていない人を含む」とされ、基本的には、健 康の保持・増進と生活習慣病の発症予防(一次予防) を目的としていた。しかし、健康な状態から疾病に至 る身体の変化は継続している。診断基準によって、そ れぞれの疾病の診断がされるポイントはあるとして も、どこかの時点から急に病気になるわけではない。 そのため、以前よりどの時点までが食事摂取基準で、 どこから治療ガイドライン等に従うのかが不明瞭であ り、「治療ガイドライン等の栄養管理指針を優先して 用いるとともに、食事摂取基準を補助的な資料として 参照することが勧められる。」という位置づけになっ ていた。 2015年版では、「健康な個人並びに健康な人を中心 として構成されている集団とし、高血圧、脂質異常、 高血糖、腎機能低下に関するリスクを有していても自 立した日常生活を営んでいる者を含む」として腎機能 低下が含まれた。また、「歩行や家事などの身体活動 を行っている者であり、体格(body mass index: BMI)が標準より著しく外れていない」という体格の総 説
日本人の食事摂取基準(2015年版)とスポーツ栄養
髙田 和子
独立行政法人 国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部 2014年3月28日に厚生労働省健康局より「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書が 示された。今回の改定では、①目的に生活習慣の重症化予防が加わった、②食事のアセスメントの重要性 や注意事項の記載が増えた、③エネルギー摂取量の過不足を体重で評価することが強調され、目標とする BMIの範囲が示された、④エネルギー産生栄養素バランスが示された、⑤目標量の変更や追加がされた、 ⑥参考資料として生活習慣病とエネルギー、栄養素の記述がされた。食事摂取基準は、各栄養素の過不足 を避けることと生活習慣病の予防・重症化予防をアウトカムとして策定されているので、競技力向上にお いては、参考にはなるが活用には注意が必要である。また、競技レベルに関わらず、目標とするBMIの評 価では、筋肉の比重が体脂肪に比べて大きいことを考慮して活用する必要がある。生活習慣病予防・重症 化予防におけるスポーツ栄養としては、各生活習慣病における肥満の位置づけが整理された意義は大きい。 しかし、身体活動によるエネルギー消費量とエネルギー必要量の関係は今の時点では明確でなく、食事摂 取基準と身体活動基準の両方からの整理が必要である。 キーワード:食事摂取基準 競技選手 身体活動 生活習慣病予防 連絡先:〒162-8636 東京都新宿区戸山1-23-1 E-mail : [email protected]日本人の食事摂取基準(2015年版)とスポーツ栄養 記述が増えた。ただ、これは今までも基準体位に基づ いて各栄養素の基準が決められていたので、体格が大 きく外れる人については、考慮が必要であったことが 明記されたといえる。さらに「高血圧、脂質異常、高 血糖、腎機能低下に関するリスクを有する者とは、保 健指導レベルにある者までを含むものとする」という 点が明記され、生活習慣病の発症予防だけでなく、重 症化予防が加わった点が大きく異なっている。 2.エネルギー必要量の考え方 今回の改定において、最も変更された部分がエネル ギーの必要量の考え方であろう。従来のエネルギー必 要量は、厚生労働省が栄養所要量として示すようにな った昭和44年(1969年)版より、エネルギー消費量分 のエネルギーを摂取することが必要という視点から、 基礎代謝量に活動量を乗じる形で策定されていた。当 初は、労働科学研究所が各種職種について測定したデ ータを基に、主となる活動(職業)別に区分した値を 使用していた。2005年版からは、日本人を対象に二重 標識水(doubly labeled water:DLW)法で測定され た日常生活時のエネルギー消費量から身体活動レベル (physical activity level:PAL)を求め、不足するデ
ータについては、文献値を使用していた。 これは、成長が終わった成人においては、体重に変 化がなければ、エネルギー消費量は摂取すべきエネル ギー量と等しいという考え方に基づいたものである。 この考え方は、多くの人が重労働に従事していた時代 に、エネルギーの摂取不足を起こさないという視点か らは正しい。しかし、現在のように、身体活動量が減 少傾向にある時に、現状の体重を維持するエネルギー 量が必要量とするので良いかは疑問である。体重が適 正でない場合に、その体重を維持するエネルギー量を とることが望ましいか、また、身体活動量が少ない場 合に、その身体活動量に見合ったエネルギーのバラン スをとっていることが望ましいかといった疑問が生じ る。 エネルギー必要量として目標とするBMIの範囲を示 したことは、エネルギーの必要量の考え方を、健康問 題、生活習慣の状況などの時代による変化に対応して 変更したという点からは進歩と言える。図1では、エ ネルギー必要量の推定において、摂取量、消費量、消 費量の推定方法の関係が整理されている。 また、今回の食事摂取基準のエネルギーの項目の中 では、摂取量のアセスメント方法、消費量のアセスメ ント方法のいずれにも推定誤差が大きくあること、計 算上のエネルギー摂取量と消費量の関係と体重制限の 関係について、丁寧な解説がされている。学会発表等 でも散見されるが、エネルギー摂取量の調査結果とエ ネルギー消費量の調査結果を比較して、過不足を議論 することの難しさが、この解説を読むと理解いただけ るだろう。 一方で、目標とするBMIに見合うエネルギー摂取量 はどういうものかということが整理できていないとい う点からは、まだ発展途上といえる。すなわち、図1 にある体重の変化から必要な摂取量をどのように推定 するかはわからない。そのため、食事摂取基準のエネ ルギーの章は二重構造になっており、参考資料として エネルギー必要量の考え方がほぼ従来の方法を踏襲し て示されている。また、消費量については、今後、身 体活動量基準との関連から、望ましい身体活動量を考 慮する必要性もでてくるだろう。 図1.エネルギー必要量を推定するための測定法と体重変化、体格(BMI)、 推定エネルギー必要量との関連 (厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書)
日本スポーツ栄養研究誌 vol. 8 2015 総説 髙田和子 3.生活習慣病と食事摂取基準 今回、新たに加えられたこととして、「重症化予防」 の視点がある。これまでの食事摂取基準では、目標量 として生活習慣病の予防を目的とした量が示されてき た。しかし、2015年版では、様々な指標を総合的に考 慮することの重要性が指摘されている。例えば、心筋 梗塞では図2に示すように食事だけでなく、喫煙や運 動不足も大きく関わる。また、そのリスクファクターと して肥満、高血圧、脂質代謝異常の予防が重要である。 そのため、今回は参考資料にとどまったが、高血圧、 脂質異常症、2型糖尿病、慢性腎臓病について、図3 に示すような形で共通したフォーマットで整理された 意義は大きい。これまでの治療ガイドラインは、各疾 病の学会が個別に策定し、摂取することが望ましいあ るいは制限すべき食品の提示や体重あたりのエネルギ ー摂取量、脂質の質など異なった標記がされていた。 そのため、複数の疾病を有する人に対しては、異なっ た表現の内容を組み合わせて示す必要があった。一方 で、各疾病別のエビデンスレベルは様々であり、今回、 同一のフォーマットで整理されたことで、残された課 題が明確になり、今後の研究につながることを期待し たい。 4.その他の変更箇所 今回の改定の中では、どのような場合に各種指標の 値が改定されるかが明記された点も大きい。例えば、 推定平均必要量では、①従来、推定平均必要量が設定 できなかった栄養素において、十分な科学的根拠が得 られた場合、②推定平均必要量の算定において、身体 的エンドポイントを変更した場合、③参照体位の変更 に伴うものの3点に整理されている。ここでは、数値 の変化を細かく指摘するのではなく、方針や標記の変 わった部分について主な改定箇所を以下にまとめる が、実際の内容については、食事摂取基準(2015年版) の本文を確認されたい。 1)目安量の記述の整理 目安量を定義する場合の記述について、「十分な科 学的根拠が得られず推定平均必要量が算定できない場 合」と明記された。 2)基準体位から参照体位の名称変更 基準体位という名称は、望ましい体位という誤解を 与えやすい。実際には、乳児・小児については、日本 小児内科分泌学会・日本成長学会合同標準値委員会に よる小児の体格評価に用いる身長、体重の標準値が使 用されている。成人については、利用可能な直近のデ ータを使用している。日本人の平均的な体位とし、参 照体位という表現に変更された。 3)たんぱく質 エネルギー産生栄養素バランスの提示に伴い、目標 量が設定された。 4)脂質 n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸は、すべての年齢に目 心筋梗塞に関連する生活習慣要因 □生活習慣病の予防に資することを目的に、目標量が設定されているが、生活習慣病の予防に関連する要 因は多数あり、食事はその一部である。このため、目標量を活用する場合は、関連する因子の存在とその程 度を明らかにし、これらを総合的に考慮する必要がある。例えば、心筋梗塞を例にとると、その危険因子とし ては肥満、高血圧、脂質異常症と共に、喫煙や運動不足が挙げられる。 飽和脂肪酸の過 剰摂取 n-3系脂肪酸 の摂取不足 コレステロールの過 剰摂取 食物繊維の 摂取不足 心筋梗塞 加齢 性別(男) 肥満 喫煙 遺伝素因 アルコールの摂取不足 高LDL コレステロール血症 高血圧 食塩の過 剰摂取 カリウムの 摂取不足 運動不足 エネルギーの 過剰摂取 低HDL コレステロール血症 アルコールの過剰摂取 図2.心筋梗塞に関連する生活習慣要因 (「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書) 図3.栄養素摂取と高血圧の関係(特に重要なもの) (厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定 検討会報告書)
日本人の食事摂取基準(2015年版)とスポーツ栄養 安量を示した。飽和脂肪酸は、18歳以上のみ目標量が 示されたが、2010年版にあった下限の表記はなくなっ た。n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸を十分に摂取し、適 正な飽和脂肪酸の摂取量を満たす量として脂肪エネル ギー比率は、1歳未満の乳児には、目安量、それ以上 の年齢には目標量として示された。2010年版に示され ていたコレステロールの基準値は、目標量算定のため の科学的根拠が十分でないため示されなかった。2010 年版に示されていたコレステロールの基準値は、目標 量算定のための科学的根拠が十分でないため示されな かった。 5)炭水化物 小児期の食習慣が成人後の循環器疾患の発症やその 危険因子に影響を与えている可能性があること、小児 期の食習慣がその後の食習慣に影響することから、6 ∼17歳についても食物繊維の目標量が設定された。 6)エネルギー産生栄養素バランス エネルギーを産生する栄養素並びにこれらの栄養素 の構成成分である各種栄養素の摂取不足の回避及び生 活習慣病の発症予防と重症化予防の観点から、たんぱ く質、脂質、炭水化物のエネルギーバランスの目標量 が設定された。なお、脂質については、飽和脂肪酸の 目標量を考慮して設定されているために、飽和脂肪酸 のエネルギー比があわせて示されている。また、炭水 化物については、食物繊維の目標量を十分に注意する ことが必要である。 7)脂溶性ビタミン ・ ビ タ ミ ンAの 単 位 の 名 称 が レ チ ノ ー ル 当 量 (μgRE)から、レチノール活性当量(μgRAE)に 変更されたが、換算式の変更はない。 ・ビタミンDの乳児の目安量は母乳中濃度について新 しい分析方法が開発されたが、従来法との差が大き く、母乳中濃度に基づいた策定が困難であった。そ のため、くる病防止の観点から設定することとし、 アメリカ小児科学会のガイドラインを参考に変更さ れた。妊婦、授乳婦の目安量については、付加量か ら1日量の標記に変更された。また成人の耐容上限 量について、2010年版で参照した250μg/日未満で 高カルシウム血症がみられる報告が1編のみであ り、さらに患者を含むことや例数が少ないといった 問題がみられた。そのため、この値をNOAEL(健 康障害非発現量:no observed adverse effect level) としてUF(不確実性因子:uncertain factor)をア メリカ・カナダの食事摂取基準に準じて2.5とした ために変更となった。また成人の耐容上限量変更に 伴い、小児の耐容上限量も変更された。 ・ビタミンEの妊婦・授乳婦の目安量は、策定方針の 変更により、国民健康・栄養調査結果を参照に設定 された。 ・ビタミンKは、成人の目安量を血液凝固因子の活性 化を考慮して検討していたが、参照していた論文に 問題点がみられた。ビタミンK摂取量の少ない集団 の摂取量を参照するために、納豆非摂取者でも明ら かな健康障害がみとめられていなことから、これを 根拠に目安量が設定され、成人の値の変更に伴い小 児の目安量も変更になった。 8)水溶性ビタミン 水溶性ビタミンでは、ビタミンB1、ビタミンB2、ナ イアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンCにつ いて、推定平均必要量を求めるにあたり、何を指標に したか明記されるようになった。 ・ビタミンB1では、妊婦の付加量が妊娠期間を細分化 して設定する根拠がないため、妊娠期間を通じた値 となった。 ・葉酸の耐容上限量が、サプリメントや強化食品に含 まれているプテロイルモノグルタミン酸の量から検 討された。 9)多量ミネラル ・ナトリウムの成人の目標量が、実施可能性を考慮し、 WHOガイドラインの5g/日と平成22、23年国民健 康・栄養調査における摂取量の中央値との中間値と された。 ・カリウムの成人の目標量が、WHOが2012年に提案 した3,510mg/日と日本人の摂取量の中央値(2,201g/ 日)の中間値を参照して算定された。 ・マグネシウムの耐容上限量がサプリメント等による 多量摂取の際の下痢を考慮して設定された。 10)微量ミネラル ・ヨウ素の耐容上限量の設定において、日本人の日常 的な摂取量から健康障害非発現量、最低健康障害発 現量を推定した値が使用された。 ・クロムは従来、推定平均必要量と推奨量が示されて いたが、根拠が不十分なため、目安量が設定された。 5.残された主要な課題 食事摂取基準(2015年版)では、いくつかの章の最 後に「今後の課題」が示されている。この内容は、現 在、記述されている内容の限界を示すとともに、今後 の研究課題でもある。ここでは、今後の課題が明記さ れている栄養素、対象について表1にまとめた。
Ⅲ.競技選手を対象としたスポーツ栄養と
食事摂取基準
1.競技選手における食事摂取基準の活用 競技選手が食事摂取基準の対象となるかどうかは、 おそらく対象者の競技レベル、練習量、栄養管理の目 的によって大きく異なるだろう。食事摂取基準の対象 は「健康な個人並びに健康な人を中心として構成され ている集団」であり、さらに「体格(BMI)が標準よ日本スポーツ栄養研究誌 vol. 8 2015 総説 髙田和子 り著しく外れない者」とされる。また、基準策定のア ウトカムは、欠乏症状と生活習慣病の予防である。そ のため、健康な競技選手で標準的なBMIから大きく外 れない選手で、競技レベルがそれほど高くない場合や 練習量があまり多くない場合、特別な競技力向上では なくコンディショニング程度であれば、食事摂取基準 の内容を参照することが可能と考える。 一方で、競技選手は身体組成の中身からみると一般 の人より筋肉量の割合が多いことが予測され、単に BMIを指標とすることは困難である。日々のトレーニ ングにより筋肉量が変化することを考えても、今回の 改定のエネルギーの目標となる「標準的なBMIの維持」 はそぐわない。さらに、筋肉量の増加、特別な競技力 向上や試合時の最大能力の発揮などのための必要量は アウトカムとして使用されていないので、参照するこ とはできない。それぞれの栄養素について、食事摂取 基準をどの程度、参照するかは、栄養管理の目的と各 栄養素の基準の設定方法によって、検討すべきである。 2.競技選手におけるアセスメントの重要性 食事摂取基準(2015年版)では、「活用に関する基 本的事項」が丁寧に解説されており、PDCAサイクル やアセスメントの方法、食事改善の計画と実施などに ついての記載がある。この部分については、競技選手 において特に重要である。アセスメントでは、図4に 示すように食事内容のアセスメントだけでなく、身体 状況調査による体重、BMIの他、生活習慣、生活環境、 臨床症状・臨床検査を活用し、総合的に食事摂取状況 のアセスメントと摂取量が適正かの評価を行うことと なっている。競技選手の場合には、ここに体重やBMI だけでなく身体組成の評価、体力や、目標とする体格、 競技種目や競技レベル、練習量、練習内容等を加えた、 より広い視点での評価が重要であろう。 3.エネルギー エネルギー必要量の設定については、2015年版で採 用されたBMIだけでなく、身体組成を考慮した評価が 必須である。標準的なBMIは総死亡率をエンドポイン トとして策定されているので、このまま競技選手に応 用することはナンセンスである。種目やポジションに よって望ましいBMIや望ましい筋肉量、体脂肪量を決 定する必要がある。体重を維持するというよりは、筋 肉量の増強や体脂肪量の減少など変化させることがト レーニングの目標である場合も多い。そのため、定期 的な体重と身体組成の評価により、エネルギー摂取量 を調整していく必要がある。 従来の方法に従って推定エネルギー必要量を推定す る場合には、食事摂取基準で使用されている基礎代謝 基準値は、標準的な身体組成の人のデータを基に検討 されている指標であるので、競技選手について基礎代 表1.各栄養素、対象者特性における食事摂取基準における今後の課題 栄養素、対象者 今後の課題 エネルギー ・目標とするBMIの設定方法 ・目標とするBMIに見合うエネルギー摂取量についての考え方 ・望ましいエネルギー消費量の考え方 炭水化物 ・単糖、二糖類、多糖類のそれぞれの糖の健康影響の違いを考慮した目標量 ・小児の食物繊維の健康影響 エネルギー産生栄養素バランス ・エネルギー産生栄養素バランスとその他の栄養素の摂取量の関係 ・脂質の目標量上限の設定根拠 ビタミンD ・日本人の日照暴露時間 ・ビタミンDの習慣的摂取量と血中25-ヒドロキシビタミンD濃度の相互関係 ビタミンC ・推定平均必要量、推奨量、目標量が適切かの検証 ・指標とする健康障害の検討 カルシウム ・骨粗鬆症、骨折を生活習慣病として扱うか ・骨粗鬆症や骨折に関するカルシウムの意義 リン ・生体指標を用いた日本人のリン摂取量に関するデータ 鉄 ・日本人妊婦・授乳婦における鉄必要量に関する基礎データ ヨウ素 ・日本人における習慣的な摂取量分布と健康影響に関するデータ 妊婦・授乳婦 ・エネルギー指標の考え方 ・推定平均必要量、推奨量の付加量が設定されている栄養素の必要量の考え方の再考 高齢者 ・サルコペニア、フレイルに対するたんぱく質、アミノ酸の必要量 ・同化抵抗性(anabolic resistance)に対する対策 ・サルコペニア、フレイルに対するビタミン、ミネラル等の関与 ・認知症発症と栄養素の関連
日本人の食事摂取基準(2015年版)とスポーツ栄養 謝を測定したデータを参照する必要がある2-5)。また、 身体活動レベルについても、現時点では簡易に推定す ることが困難なため、既存のデータ6)を参照にしな がら設定する必要があるだろう。 4.たんぱく質 たんぱく質は競技選手において関心の高い栄養素で ある。2015年版においては、たんぱく質の要求量を決 めるために考慮すべき事項として詳細な記述があるの で参照されたい。特に以下の点は、競技選手において 重要である。 1)エネルギーのたんぱく質節約作用 たんぱく質の利用効率はたんぱく質、アミノ酸、総 窒素の摂取量により変化するだけでなく、他の栄養素 の摂取量の影響をうける。特にエネルギーについては、 エネルギー不足の場合は、たんぱく質の利用効率が低 下することが指摘されており、練習量の多い選手で食 事の量が不足している場合には、この影響が推測され る。一方で、エネルギー摂取が増すと、インスリン分 泌の増加により、たんぱく質合成の促進、分解の抑制 が起こり、窒素出納は改善される。そのため競技選手 においては、たんぱく質にばかり注意がいくことなく、 全体のエネルギーの充足が先であることの留意が必要 である。 2)身体活動・運動の影響 競技選手が特別にたんぱく質の必要量が増加するか については、不明な点も多い。食事摂取基準では、生 活習慣の影響として、身体活動・運動について次のよ うな記述がある。「運動不足は体たんぱく質の異化状 態を招き、適度な運動が食事性たんぱく質の利用を高 める。一方で激しい運動がたんぱく質分解を亢進する ことから、運動強度に応じてたんぱく質の必要量がU 字型を示す。」と説明されている。また、運動時には 発汗により経皮窒素損失量が増大し、アミノ酸の異化 亢進、体たんぱく質の合成低下と分解上昇がみられる ことに関する記述もされている。この点についても、 運動終了時以降に、体たんぱく質の合成が分解を上回 ることで、損失を取り戻すことが多いので軽度・中等 度の運動(200∼400kcal/日)ではたんぱく質必要量 は増加しないと解説されている。しかし、この点に関 しても、練習量が非常に多くなった場合については不 明である。 3)上限量 今回、エネルギー産生栄養素バランスが設定される にあたり、たんぱく質についても目標量が示された。 目標量設定においては、耐容上限量を考慮して目標量 の上の値を設定している。そこでは、「成人、特に高 齢者においては2.0g/kg体重/日未満」に収めることが 適当とされている。エネルギー産生栄養素バランスに おけるたんぱく質のエネルギー比は13∼20%と設定さ れたが、食事の摂取量の多い運動選手では、例えば 4,000kcalの食事をとっていれば20%では200gのたん ぱく質となり、100㎏未満の選手では体重あたり2g以 上の摂取量となってしまう。13%としてもたんぱく質 量は130gとなり、体重が65㎏未満では体重あたりの たんぱく質量は2.0gを超える。身体活動量と筋肉量が 多い競技選手においては、食事摂取基準に示される上 限値を超える摂取量の選手も多くみられ、そのことに よる健康障害の報告もみられない。上限をどの程度に 考えるかについては、選手を対象としたデータの蓄積 が必要だろう。特に増量を目的とした場合に、どの程 度のたんぱく質摂取量が望ましいかについても、研究 室レベルの短期的な研究はされているが、さらに検討 が必要であろう。 5.炭水化物 炭水化物については、最低必要量はおよそ100g/日 と推測されるが、必要に応じて肝臓が乳酸、アミノ酸、 脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新 生を行うこと、通常それ以上の炭水化物をとっている 食事調査によって 得られる摂取量 食事摂取基準の各指標 で示されている値 〈比較〉 エネルギーや栄養素 の摂取量が適切かど うかを評価 食事摂取状況の アセスメント ・食事調査の特徴と限 界を理解(調査の測定 誤差を理解) ・食品成分表の特徴と 限界を理解 食事摂取基準 の指標の概念 や特徴を理解 生活習慣 生活環境 身体状況調査による 体重、BMI ※臨床症状・臨床検査の利用 対象とする栄養素の摂取 状況以外の影響も受けた 結果であることに留意 □食事摂取、すなわちエネルギー並びに各栄養素の摂取状況のアセスメントは、食事調査に よって得られる摂取量と食事摂取基準の各指標で示されている値を比較することによって 行うことができる。ただし、エネルギー摂取量の過不足の評価には、BMI又は体重変化量 を用いる。 □食事調査によって得られる摂取量には測定誤差が伴うことから、調査方法の標準化や精度 管理に十分配慮すると共に、食事調査の測定誤差の種類とその特徴、程度を知ることが重 要である。 図4.食事摂取基準の活用と食事摂取状況のアセスメント (厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会報告書)
日本スポーツ栄養研究誌 vol. 8 2015 総説 髙田和子 ことから、推定必要量は設定されていない。食事摂取 基準では、エネルギー産生栄養素バランスにおいて、 基本的には脂質とたんぱく質のエネルギーの目標量の 残りの部分として設定されている。ただし、炭水化物 の目標量の上の値(67%)は、炭水化物の多い食事が、 精製度の高い穀物や甘味料、甘味飲料、酒類に過度に 偏る食事になりやすいという点から、たんぱく質と脂 質の目標量の下の値(13%、20%)を足したものを 100%から除いた値(67%)よりもやや低く設定され ている。 選手では、脂質とたんぱく質の残りという視点より は、エネルギー源として炭水化物にも重点が置かれて いる7-9)。そのため、種目によっては、食事摂取基準 で示されている量以上の炭水化物が必要になることも ある。また、1日の総エネルギー摂取量が多い選手で は、エネルギー比で設定した場合と体重あたりで設定 する場合の乖離が大きくなる。この場合には、エネル ギー源としての必要量と食事として成り立つかなど複 数の視点からの考慮が重要である。 6.ビタミン、ミネラル ビタミンとミネラルについては、設定根拠が、推定 エネルギー必要量あたりで設定されたか、参照体位あ たりで設定されたかを判断し(表2)、体位や摂取エ ネルギー量に応じた調整が少なくとも必要である。競 技力向上のため、あるいは過度の身体活動量に応じた 摂取量の増加が必要な場合もあるが、その点について は、別稿や専門書を参照されたい。
Ⅳ.生活習慣病予防のためのスポーツ栄養と
食事摂取基準
1.生活習慣病予防 生活習慣病予防においては、食事摂取基準で示され た各栄養素の目標量と、身体活動量としては、身体活 動基準10)による23メッツ・時/週が目標となる。身体 活動量と各種リスクの関係は量反応関係にあるため、 現在の身体活動量を考慮して、10分ずつ身体活動量を 増加し、最終的に23メッツ・時/週に到達することが 望ましい。食事摂取基準で示された「目標とするBMI の範囲」は、総死亡率をアウトカムとしてはいるもの の、従来の肥満の基準等と乖離するものではないので、 このBMIを維持することは、重要である。しかし、こ のBMIを維持していれば、身体活動量もエネルギー摂 取量も少ない状態でよいということではない。食事摂 取基準の中では、望ましい身体活動レベルについては 記述がないが、ある程度の身体活動量とエネルギー摂 取量は重要である。十分な身体活動量は生活習慣病予 防の観点から重要であるし、エネルギー摂取量があま りに少ない場合には、各種栄養素の目標量を充足する ことは難しい。 2.重症化予防 重症化予防の視点から、図3に示すような整理がさ れ、高血圧、脂質異常症、高血糖、慢性腎臓病と各栄 養素の関係がわかりやすくなったが、身体活動との関 係は必ずしも明確ではない。高血圧、脂質異常症、慢 性腎臓病における肥満の位置づけ、高血糖と内臓脂肪 表2.ビタミン、ミネラルの推定平均必要量の策定根拠と競技選手での活用 ビタミン ミネラル 参照体位を考慮 ビタミンA マグネシウム 鉄(基本的損失、鉄蓄積量) セレン(参照データを体重補正) モリブデン(参照データを体重補正) エネルギー摂取量を 考慮 ビタミンBビタミンB12 ナイアシン 競技選手において 考慮すべき内容 ビタミンB6(たんぱく質の摂取量を考慮) ナトリウム(多量発汗)カリウム(多量発汗、不可避損失量では体重) カルシウム(体内蓄積量、尿中排泄量では体重) その他 ビタミンB12 葉酸 ビタミンC 亜鉛 ヨウ素 銅 推定平均必要量の 設定無 ビタミンDビタミンE ビタミンK パントテン酸 ビオチン リン マンガン クロム日本人の食事摂取基準(2015年版)とスポーツ栄養 型肥満の位置づけが明確になり、エネルギーバランス の調整の1つとしての身体活動との関係は明確になっ た。一方で、これらの図では肥満の予防や改善を介さ ない身体活動の効果は示されていない。例えば、血管 の柔軟性の増加や脂質・糖質代謝への影響などがあ る。その観点からはスポーツと栄養の両面から生活習 慣病を考える時に不完全である。 身体活動基準10)では、保健指導においては10メッ ツ 時の身体活動を増加することが示されている。こ れは、肥満者を対象にした論文における肥満改善と身 体活動量の関係から示されたものである11)。肥満の予 防のための身体活動レベルとしては、国際肥満学会は、 身体活動レベル(physical activity level:PAL)で 1.7以上または、「毎日45∼60分の中強度活動」として いる12)。しかし現時点では、目標とするBMIの維持の ためのエネルギー摂取量と身体活動量との関係は不明 瞭である。また、食事摂取基準で示すBMIやエネルギ ー摂取量(kcal)と身体活動量基準10)で示すMets 時 /週あるいは「1日に〇分」との関係は現時点ではわ かりにくい。一般人向けには、専門家によるわかりや すい説明が必要な部分である。基本的なことではある が、必要なエネルギー摂取量と身体活動量によるエネ ルギー消費量をどのようにわかりやすく示すかは今後 の課題である。 3.健康増進 さらに積極的に健康増進や体力向上を目指す場合 は、目標に応じた運動の選択が必要である。しかし、 趣味で運動、トレーニングをする範囲であれば、平均 した1日あたりのエネルギー消費量が非常に多くなる ことはまれであるし、競技選手ほど競技力向上のため の特別な食事を意識する必要性は少ない。そのため、 各栄養素の目標量を満たす内容で、適切なBMIの維持 を目標とすることになるだろう。ただし、先にも述べ たようにBMIは体重のみを評価しているので、筋肉の 比重が体脂肪に比べて重いことを考慮して目標のBMI や体重の変化を判断する必要がある。そのため、でき れば体重だけでなく、何らかの方法で身体組成を評価 することが望ましい。
Ⅴ.まとめ
改定を加えるたびに食事摂取基準の報告書は、その 厚さを増し、今回は巻末の資料を含めると440ページ にも及ぶ。今回の報告書では、食事摂取基準の活用に おけるPDCAサイクルや食事アセスメントの重要性と 使用時の注意点が丁寧に示されている。また、それぞ れの栄養素や妊婦・授乳婦、高齢者について、丁寧な レビューと説明がされている。そのため、この報告書 を読むだけで、基本的な事から、最新の情報まで知る ことができる便利な報告書である。この全文を読み理 解することは、専門家としての責任と考えるが、分量 の増加に伴い、本当に全文を読み理解している人がど のくらいいるかが危惧される。まずは、興味のある栄 養素、対象集団、疾病の章あるいは逆によく知らない 栄養素の章から読み始めてみることを勧める。 文 献 1)厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版)策定 検 討 会 報 告 書,http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/ 0000041824.html(2014年11月18日) 2)田口素子,樋口満,岡純,他:女性持久性競技者の基 礎代謝量,栄養学雑誌,59,127-134(2001) 3)Taguchi K, Ishikawa-Takata K, TatsutaW, et al.:Resting energy expenditure can be assessed by fat-free mass in female athletes regardless of body size,
, 57,22-29 (2011)
4) Hasegawa A, Usui C, Kawano H, et al.: Characteristics of body composition and resting energy expenditure in lean young women, , 57, 74-79 (2011) 5)田口素子,髙田和子,大内志織,他:除脂肪量を用い た女性競技者の基礎代謝量推定式の妥当性,体力科学, 60,423-432(2011) 6)髙田和子:トレーニングとエネルギー消費量,新版コ ンディショニングのスポーツ栄養学,(樋口満編), pp.11-21,市村出版,東京(2007)
7)Maughan Rj, et al. eds. Food, nutrition and sports performance II, Routledge, 2004
8)Burke L, Millet G, Tarnopolsky MA.: Nutrition for
distance events, , 25,
S29-S38 (2007)
9)American College of Sports Medicine, American Dietetic Association, Dietitians of Canada: Nutrition and athletic performance, , 41, 709-731 (2009)
10)厚生労働省,運動基準・運動指針の改定に関する検
討会 報告書,http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/ 2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf.html (2014年11月18日)
11)Ohkawara K, Tanaka S, Miyachi M, et al.: A dose-response relation between aerobic exercise and visceral fat reduction: systematic review of clinical trials, , 31, 1786-1797 (2007)
12) Saris WHM, Blair SN, van Baak MA, et al: How much physical activity is enough to prevent unhealthy weight gain? Outcome of the IASO 1st Stock Conference and consensus statement.
日本スポーツ栄養研究誌 vol. 8 2015 総説 髙田和子
Review
Dietary Reference Intakes 2015 and sport nutrition
Kazuko Ishikawa-Takata
National Institute of Health and Nutrition
ABSTRACT
The Ministry of Health, Labour and Welfare published a report of the Dietary Reference Intakes (DRI) 2015 in March 2014. In this report, the following points were revised: 1) preventing the aggravation of mild non-communicable diseases among those already affected was added as a purpose of the DRIs; 2) the importance of nutritional assessment was emphasized; 3) energy balance was estimated by changes in body weight and recommended body mass index was described; 4) the balance of energy-providing nutrients was established; 5) changes or addition of tentative dietary goals for prevention of lifestyle related diseases; and 6) the relationship of non-communicable disease and energy or nutrient intakes was described in the appendix. The DRIs basically offer information designed to prevent deficient nutritional intake and to prevent and avoid the worsening of non-communicable diseases. A need exists for some application of when to use the DRIs for athletes to improve physical performance. Importantly, the fact that the specific gravity of muscle is heavier than that of body fat must be kept in mind when assessing BMI in athletes. DRIs improved greatly for the purposes of sport nutrition as it relates to communicable diseases because the impact of obesity on non-communicable diseases was clarified. However, the relationship between energy expenditure and energy intake is still unclear. We have to refer both to the DRIs and physical activity references for health promotion.
日本スポーツ栄養研究誌 vol. 8 2015 原著 奥村友香、ほか
緒 言
一般大学生の自炊状況を調べた研究によると、自炊 を行っているのは男女ともに約50%、外食と自炊を組 み合わせているのは40%である1)。しかし、男子学生 は外食のみが10%程度いる1)。平成23年「国民健康栄 養調査」では、20歳代男性の外食の頻度は、昼食が30 %以上、夕食でも12%程度おり、居住形態別にみると、 一人世帯では昼食の約50%、夕食の約25%が外食であ る2)。また、自炊頻度を大学の学年で比較した調査で は、大学入学時の自炊率は約7割近くなのに対し、卒 業 時 で は 約 3 割 に ま で 減 少 し た と 報 告 さ れ て い る1,3)。このように、一人暮らしの学生の自炊率はあ まり高いとは言えない。 栄養士・管理栄養士養成課程施設は、学生が自ら率 先して調理に取り組み、調理に関する知識や技術を向 上させる調理学教育を検討、実施することが課せられ ている4)。また、調理に伴う実習が必修単位として定 められているため、学生は一通りの調理作業をこなす ことができる。さらに、調理経験料理数が多い者は少 ない者に比べて、調理法の定着率が高く食事作りを好 む者が多いことが報告されている5)。これに対して、 体育系の学生は栄養系の学生よりも調理技術が低いた め、レシピを見ても難しいと感じたり、自炊を面倒と 思ったりする者が多いことが推察される。 アスリート向けのレシピ集は数多く出版されてい原 著
自炊とレシピ集に対する栄養系と体育系の
一人暮らしの学生の認識
奥村 友香
*1、岡村 浩嗣
*1、小清水 孝子
*2、柳沢 香絵
*3、松元 圭太郎
*4 *1大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科、*2福岡大学スポーツ科学部、 *3相模女子大学栄養科学部、*4鹿児島純心女子大学看護栄養学部 【目的】 アスリート向けのレシピ集が数多く出版されているが、一人暮らしの体育系学生に役立っているかは不 明である。そこで栄養系と体育系の一人暮らしの学生の自炊状況と、レシピ集に対する認識を調査し、出 版されているアスリート向けレシピ集の内容と比較した。 【方法】 同意が得られた学生348名(栄養系女性128名,体育系男性114名,体育系女性106名,平均年齢20±1.2歳) を対象に、自炊とレシピ集に関する質問紙調査を行った。また、体育系大学の図書館が所蔵する9冊のレ シピ集を対象に収載された料理を主菜、副菜、主食+主菜の3種に分け、「食材数」「調味料数」「手順数」 の3項目を集計した。 【結果】 自炊を毎日行っていた者は、栄養系女性が体育系女性・男性より有意に多かった。自炊を「とても面倒」 「面倒」と思う学生は、体育系男性が栄養系・体育系女性より多かった。レシピ集が役に立つと「思わない」 「あまり思わない」割合も体育系男性が栄養系・体育系女性より多かった。レシピ集の9つ(3種×3項目) の集計の各中央値が、学生が面倒と思う「食材数」「調味料数」「手順数」の中央値と同じか多かったのは、 栄養女性で2つ、体育女性で4つ、体育男性で7つだった。 【結論】 一人暮らしの学生の自炊回数は、栄養系の学生が体育系の学生よりも、そして、体育系女性は体育系男 性よりも多かった。また、栄養士が面倒と思わないような料理でも体育系男性は面倒と思うため、レシピ 集を活用しにくいと感じていることが示唆された。 キーワード:自炊 レシピ集 アスリート 連絡先:〒590-0459 大阪府泉南郡熊取町朝代台1-1 電話 072(453)7018 E-mail : [email protected]日本スポーツ栄養研究誌 vol. 8 2015 原著 奥村友香、ほか る。アスリートに必要な食事の基本、各献立のエネル ギー、競技・種目に適した献立、そして一流のアスリ ートの食事内容などが紹介されており、家庭での献立 や調理に役立ち興味をそそる内容となっている6∼8)。 しかし、調理に関する知識が多くなく技術の高くない、 一人暮らしの体育系学生が自炊をする上で役立ってい るかどうかは不明である。一人暮らしの体育系学生の 自炊の現状やレシピ集に対する感想や要望を調査する ことは、レシピ集を役立つと考えている場合にはレシ ピ集をより良いものに出来ると考えられ、役立たない と考えている場合には改善に寄与すると考えられる。 レシピ集は管理栄養士や栄養士などの栄養の専門教育 を受けた者が作成していることが多い。 そこで、本研究では、体育系と栄養系の一人暮らし の学生を対象に、自炊の状況とレシピ集に対する認識 やレシピ集に望むことを調査し、出版されているアス リート向けレシピ集の内容と比較した。
方 法
対象者と調査方法 体育大学の体育学部と総合大学のスポーツ科学部に 所属する学生(体育系)および栄養士・管理栄養士養 成課程の学部の学生(栄養系)976名を対象に、本質 問紙調査を実施した。回答者から一人暮らしの学生 348名(平均年齢20.3±1.2歳)を抽出し解析対象とした。 解析対象者は、体育系男子大学生が114名(平均年齢 20.4±1.0歳、以下体育男性)、体育系女子大学生が106 名(平均年齢20.0±1.0歳、以下体育女性)、栄養系女 子大学生が128名(平均年齢20.5±1.4歳、以下栄養女性) であった。本調査は、体育系については近畿と九州の 2大学で、栄養系については関東・近畿と九州の3大 学で、2013年1月∼2月に実施した。調査項目ととも に、調査の目的や内容などを記載した調査票を授業中 などに配布し、調査の目的や内容等を説明した。同意 した者に、その場で記入してもらい調査員が直接、回 収した。本研究の計画は大阪体育大学研究倫理審査委 員会で承認された(承認番号:12-22)。 調査票の内容は、自炊に関する9項目(1週間あた りの自炊回数、自炊を面倒だと思う程度・理由、面倒 な調理方法、面倒だと思う食材数・調味料数・手順 数・料理数、費やしてもよいと考えている1ヶ月の食 費)とレシピ集に関する4項目(レシピ集を見たこと があるかどうか、レシピ集を活用したことがあるかど うか、レシピ集が役立つと思う程度、レシピ集に望む こと)の計13項目で、選択肢を選択させた方法で行っ た。一部の項目には自由記述も含めた。 出版されているレシピ集の調査では、体育系大学の 図書館が所蔵する9冊のアスリートを対象とするレシ ピ集を解析した。記載されている主菜、副菜、主食+ 主菜の食材数、調味料数、手順数の中央値と四分位範 囲を算出して、調査票で調査した「面倒だと思う食材 数・調味料数・手順数」の中央値及び四分位範囲と比 較した。 統計解析 976名の回答者のうち、一人暮らしの学生348名の回 答を解析対象とした。択一回答で複数の選択肢を選択 していた場合や空欄の回答があった場合には、該当す る質問項目の解析から除外した。各質問項目での解析 対象者数はそれぞれの図表に示した。レシピ集の各項 目数は中央値と四分位範囲で示した。要因間の関連は ピアソンのχ二乗検定を用い、両側検定で危険率5% 未満を統計学的に有意とした。有意差があったものは 残差分析を行った。期待度数が5未満のセルが20%以 上あった自炊回数についての質問では、「しない」「月 1回」を「月1回以下」、費やしてもよいと考えてい る1ヶ月の食費についての質問では、「4万∼5万円」 「5万円以上」を「4万円以上」に、レシピ集が役立 つと思うかの質問では、「思わない」「あまり思わない」 を「思わない・あまり思わない」に再カテゴリー化し て分析を行った。統計解析には、SPSS Statistics 21 (IBM)を用いた。結 果
自炊回数についてχ二乗検定を用いて検討した結 果、偏りが認められたため、残差分析を行った(χ2 (10) =80.719, <0.001)。体育男性は自炊を「月1回以下」 (9.6%)、「週1回」(19.3%)、「週2∼3回」(35.1%) と回答した者が有意に多く、自炊回数が週の半分未満 の者は合計74.5%であり、「週4∼6回」(20.2%)、「毎 日」(5.3%)と回答した者は有意に少なかった。栄養 女性は「毎日」(40.9%)と回答したものが有意に多 かった( <.05,表1-1)。 自炊を面倒だと思う程度についてχ二乗検定を用い た結果、偏りが認められたため、残差分析を行った (χ2(10)=27.766, <.001)。体育男性は「とても面倒」 (19.3%)、「面倒」(25.4%)と回答した者が有意に多 かった。一方、栄養女性は「とても面倒」(6.3%)と 回答した者が有意に少なかった( <.05,表1-1)。 自炊を面倒だと思う理由を図1に示した。体育男性 では「調理自体が面倒」が最も多かったのに対し、体 育女性と栄養女性では共に「時間がない」が最も多か った。 面倒な調理法では、3群ともに「揚げる」「蒸す」「煮 る」の順で回答した者が多かった(図2)。さらに体 育男性は「切る」「炒める」「焼く」「炊飯」「野菜洗い」 も「面倒」と回答した者が体育、栄養女性より多かっ た。自炊とレシピ集に対する栄養系と体育系の一人暮らしの学生の認識 1-1.自炊とレシピ集に関する項目 群 合計 体育男性 体育女性 栄養女性 自 炊 回 数 月1回以下 11(9.6)* 0(0.0)* 2(1.6) 13(3.7) 2,3回/月 12(10.5) 12(10.5) 8(6.3) 26(7.5) 1回/週 22(19.3)* 16(15.1) 6(4.7)* 44(12.7) 2,3回/週 40(35.1)* 27(25.5) 18(14.2)* 85(24.5) 4-6回/週 23(20.2)* 38(35.8) 41(32.3) 102(29.4) 毎日 6(5.3)* 19(17.9) 52(40.9)* 77(22.2) 合計 114(100) 106(100) 127(100) 347(100) 自 炊 を 面 倒 だ と 思 う 程 度 とても面倒 22(19.3)* 17(16.0) 8(6.3)* 47(13.5) 面倒 29(25.4)* 13(12.3) 20(15.6) 62(17.8) やや面倒 33(28.9)* 47(44.3) 61(47.7)* 141(40.5) あまり 面倒でない 21(18.4) 17(16.0) 20(15.6) 58(16.7) 面倒でない 9(7.9) 6(5.7) 13(10.2) 28(8.0) 全く 面倒でない 0(0.0)* 6(5.7) 6(4.7) 12(3.4) 合計 114(100) 106(100) 128(100) 348(100) 費 や し て も 良 い と 考 え て い る 一 ヶ 月 の 食 費 1万円未満 14(12.4) 9(8.7) 17(13.8) 40(11.8) 1-2万円 39(34.5)* 50(48.1) 70(56.9)* 159(46.8) 2-3万円 37(32.7) 32(30.8) 27(22.0) 96(28.2) 3-4万円 21(18.6)* 9(8.7) 7(5.7)* 37(10.9) 4万円以上 2(1.8) 4(3.8) 2(1.6) 8(2.4) 合計 113(100) 104(100) 123(100) 340(100) レ シ ピ 集 を 見 た こ と が あ る か ない 33(28.9) 3(2.9) 6(4.7) 42(12.1) ある 81(71.1) 102(97.1) 121(95.3) 304(87.9) 合計 114(100) 105(100) 127(100) 346(100) レ シ ピ 集 を 活 用 し た こ と が あ る か ない 51(44.7) 9(8.5) 8(6.3) 68(19.6) ある 63(55.3) 97(91.5) 119(93.7) 279(80.4) 合計 114(100) 106(100) 127(100) 347(100) レ シ ピ は 役 立 つ と 思 う か 思わない・ あまり思わない 21(18.4)* 1(1.0)* 3(2.4)* 25(7.2) やや思う 51(44.7) 39(37.1) 53(41.7) 143(41.3) 思う 42(36.8)* 65(61.9)* 71(55.9) 178(51.4) 合計 114(100) 105(100) 127(100) 346(100) 単位:人,()内の数値は% *残差分析結果 <.05 1-2.面倒だと思う食材数、調味料数、手順数 群 合計 体育男性 体育女性 栄養女性 面 倒 だ と 思 う 食 材 数 1-2 5(4.5) 2(2.0) 2(1.6) 9(2.7) 3 22(19.6) 22(21.8) 10(8.1)* 54(16.1) 4 43(38.4)* 26(25.7) 23(18.7)* 92(27.4) 5以上 29(25.9)* 33(32.7) 54(43.9)* 116(34.5) 面倒でない 13(11.6)* 18(17.8) 34(27.6)* 65(19.3) 合計 112(100) 101(100) 123(100) 336(100) 中央値 (四分位範囲) 4(4-5) 5(4-5) 5(4-6) 面 倒 だ と 思 う 調 味 料 数 1-2 6(5.4)* 3(3.0) 0(0.0)* 9(2.7) 3 32(28.6)* 21(20.8) 13(10.4)* 66(19.5) 4 29(25.9) 22(21.8) 25(20.0) 76(22.5) 5以上 21(18.8) 19(18.8) 27(21.6) 67(19.8) 面倒でない 24(21.4)* 36(35.6) 60(48.0)* 120(35.5) 合計 112(100) 101(100) 125(100) 338(100) 中央値 (四分位範囲) 4(3-5) 5(4-5) 5(4-6) 面 倒 だ と 思 う 手 順 数 1-2 10(8.9)* 5(4.9) 2(1.6)* 17(5.0) 3 29(25.9) 21(20.4) 22(17.9) 72(21.3) 4 25(22.3) 28(27.2) 25(20.3) 78(23.1) 5以上 32(28.6) 28(27.2) 35(28.5) 95(28.1) 面倒でない 16(14.3)* 21(20.4) 39(31.7)* 76(22.5) 合計 112(100) 103(100) 123(100) 338(100) 中央値 (四分位範囲) 4(3-5) 4(3-5) 5(4-6) 面 倒 だ と 思 う 料 理 数 1 0(0.0) 1(1.0) 0(0.0) 1(0.3) 2 15(13.4) 14(13.9) 11(8.9) 40(11.9) 3 50(44.6) 41(40.6) 42(33.9) 133(39.5) 4 26(23.2) 34(33.7) 39(31.5) 99(29.4) 5以上 11(9.8) 9(8.9) 22(17.7) 42(12.5) 面倒でない 10(8.9) 2(2.0) 10(8.1) 22(6.5) 合計 112(100) 101(100) 124(100) 337(100) 中央値 (四分位範囲) 3(3-4) 3(3-4) 4(3-5) 単位:人,()内の数値は% *残差分析結果 <.05 ※ 面倒だと思う各項目数の四分位範囲の「5」は「5以上」、 「6」は「面倒でない」を示す 1-3.レシピ集の食材数、調味料数、手順数 主菜 副菜 主食+主菜 食材数 4(3-6) 4(3-5) 6(4-7) 調味料数 5(3-6) 3(2-5) 4(3-5) 手順数 4(3-5) 3(3-4) 4(3-5) ※中央値(四分位範囲) 表1.自炊とレシピ集に関する認識 0 10 20 30 40 50 時間がない 調理自体が面倒 食材料を購入するのが面倒 料理を考えるのが面倒 片付けが面倒 自分で作ったものは美味しくない 家にいない 一人分を考えるのが大変 台所が狭い 料理が嫌い 疲れている 始めるまでが面倒 体育男性(n=114) 体育女性(n=106) 栄養女性(n=128) (%) 図1.自炊を面倒だと思う理由(複数回答可) 図2.面倒だと思う調理法(複数回答可) 0 20 40 60 80 揚げる 蒸す 煮る 切る 炒める 焼く 炊飯 野菜洗い 面倒でない 電子レンジ インスタント食品 片付け 野菜の皮むき 台所が狭い 魚焼きグリルを使う その他 体育男性(n=114) 体育女性(n=106) 栄養女性(n=128) (%)
日本スポーツ栄養研究誌 vol. 8 2015 原著 奥村友香、ほか 費やしても良いと考えている1ヶ月の食費について χ二乗検定を用いた結果、偏りが認められたため、残 差分析を行った(χ2(8)=21.583, <.001)。体育男性 は「3-4万円」(18.6%)と回答した者が有意に多か ったが、「1-2万円」(34.5%)と回答した者は有意 に少なかった。一方、栄養女性は「1-2万円」(56.9%) と回答した者が有意に多かったが、「3-4万円」(5.7 %)と回答した者は有意に少なかった( <.05,表 1-1)。 調理で面倒と思う食材数・調味料数・手順数を表 1-2に示した。各項目の各群の中央値は、体育男性は 全項目で4、体育女性は食材と調味料数が5、手順数 が4、そして栄養女性は全項目で5だった。各項目を χ二乗検定を用いて検討した結果、偏りが認められた ため、残差分析を行った(食材数:χ2 (8)=31.851, <.001、調味料数:χ2 (8)=29.534, <.001、手順数: χ2(8)=17.479, =.025)。食材数では、体育男性は「4」 (38.4%)と回答した者が有意に多かったのに対し、「5 以上」(25.9%)、「面倒でない」(11.6%)と回答した 者は有意に少なかった。栄養女性は「5以上」(43.9%)、 「面倒でない」(27.6%)と回答した者が有意に多かっ た( <.05)。調味料数では、体育男性は「1∼2」(5.4 %)、「3」(28.6%)と回答した者が有意に多かったが、 「面倒でない」(21.4%)と回答した者は有意に少なか った。一方、栄養女性は「面倒でない」(48.0%)と 回答した者は有意に多かった。手順数では、体育男性 は「1∼2」(8.9%)と回答した者が有意に多かったが、 「面倒でない」(14.3%)と回答した者は有意に少なか った。一方、栄養女性は「面倒ではない」(31.7%) と回答した者は有意に多かったが、「1∼2」(1.6%) と回答した者は有意に少なかった( <.05)。面倒だ と思う料理数のχ二乗検定結果に偏りは見られず (χ2(10)=16.930,n.s.,表1-2)、中央値は、体育男性・ 女性では3、栄養女性では4だった。 レシピ集を見たことがあるか、レシピ集を活用した ことがあるかについてχ二乗検定を行った結果、偏り が認められた(見たことがあるか:χ2 (2)=45.227, <.001,活用したことがあるか:χ2 (2)=68.279, < .001)。体育男性では、「レシピ集を見たことがない」 (28.9%)、また「活用したことがない」(44.7%)と回 答した者が有意に多かった。一方、栄養女性は「レシ ピ集を見たことがない」(4.7%)、「活用したことがな い」(6.3%)と回答した者が有意に少なく、体育女性 も同様であった(表1-1)。 レシピ集が役立つと思うかについてχ二乗検定を行 った結果、偏りが認められたため、残差分析を行った (χ2 (4)=37.872, <.001)。体育男性は「思わない・ あまり思わない」(18.4%)と回答した者が有意に多 かったが、「思う」(36.8%)と回答した者は有意に少 なかった。一方、体育女性は1.0%、栄養女性は2.4% が「思わない・あまり思わない」が有意に少ない回答 であった( <.05,表1-1)。また、レシピ集を見たこ とがある者だけでレシピ集が役立つと思うものはどの 程度いるかχ二乗検定で検定したところ、各選択項目 の割合は見たことがない者を含めた場合と同様に偏り が認められた(χ2(4)=28.360, <.001)。 レシピ集が役立たないと思う理由は「手順が多い」 に次いで「レシピが難しい」「手間がかかる」「材料数 が多い」であり、理由を挙げた者の大半が体育男性で あった(図3)。一方、役立つと思う理由は3群とも に「色々なレシピが載っている」が最も多く、次いで 「料理法を覚える」だった(図4)。 レシピ集に望むことは、体育男性は「簡単」「短時 間でできる」「手間がかからない」、体育女性では「短 時間でできる」「簡単」「手間がかからない」の順であ り、上位3位の全てが簡潔さに関する項目だった(図 5)。一方、栄養女性は「バリエーションが豊富」、続 いてほぼ同数で「自宅にある材料でできる」、そして「短 時間でできる」または「手間がかからない」だった(図 5)。レシピ集に望むことの「その他」には「節約レ シピ」「一人暮らし向けのもの」「保存ができるもの」「毎 月買っておくとよい材料が書かれたレシピ」「低カロ リーレシピ」「自分にはない発想のレシピ」「野菜嫌い でも作れる簡単レシピ」「あまり調味料を使わないも 図4.レシピ集が役に立つと思う理由(複数回答可) 0 20 40 60 80 色々なレシピが載っている 料理法を覚える 料理を考えなくてよい おいしい レシピが簡単 バランスがよい 栄養価がわかる レシピが必須 体づくりに役立つ 良いアイディアのもと メニューのマンネリ化を防げる 体育男性(n=114) 体育女性(n=106) 栄養女性(n=128) (%) 0 2 4 6 8 10 手順が多い レシピが難しい 手間がかかる 材料数が多い 家にない調味料が使われている 買い物に行くのが面倒 家にない器具が使用されている 調理に時間がかかる おいしくない レシピ数が少ない 体育男性(n=114) 体育女性(n=106) 栄養女性(n=128) (%) 図3.レシピ集が役に立たないと思う理由(複数回答可)
自炊とレシピ集に対する栄養系と体育系の一人暮らしの学生の認識 の」「減塩レシピ」などがあった。 集計した9冊のレシピ集に掲載されていた主菜485 種、副菜477種、主食と主菜の組合せ(主食+主菜) 221種の「食材数」「調味料数」「手順数」の中央値と 四分位範囲を表1-3に示した。レシピ集の食材数は、 3種類全ての中央値が、体育男性が面倒だと思う中央 値以上であった。一方、体育女性・栄養女性が面倒だ と思う中央値以上であったのは、主食+主菜のみであ った。調味料数は、主菜と主食+主菜の中央値が、体 育男性が面倒だと思う中央値以上であったが、体育女 性と栄養女性が面倒だと思う中央値以上だったのは主 菜のみであった。手順数は主菜と主食+主菜が体育男 性と体育女性が面倒だと思う中央値以上だったが、栄 養女性が面倒だと思う中央値以上だったものはなかっ た。レシピ集の中央値が対象者が面倒だと思う中央値 以上の項目は、9項目中で体育男性では7項目、体育 女性では4項目、栄養女性では2項目だった(表2)。