香川大学農学部学術報告
麦多株穴播栽培における雑草防除に関する研究
Ⅱ 除草剤播種前処理の実用的作業期間について
井 口 厚 信
1る口 麦作への除草剤利用についてほ,播種前処理,播種後あるいほ生育期処理などの方法があり,それぞれに適期が あるり この適期ほ,麦匿対する薬害の回避と雑草防除効果の二層から追求されるのが望ましく,この時期に処理作巣 を進めることが必要である しかしながら農作業ほその性格上,作業の進行が種々の条件によって制約を受け,そのうちでもとくに天候によっ て左右される場合が多く,除草剤の利周についても処理の適期を失しやすい そこでこれを打開する方向として,処理適期の巾をひろげることが考えられる小 このための・一手段として播種前処 理が行なわれ,その成績についても多数の報告(1・5プ9)がある さきに.聾者は植木とともに(き)PCP,CATを用いた播種前処理の効果に・ついて報告したが,処理後播種までの日数 (以後播種前日数という)の相違が,麦の生育および収量におよぼす影響紅ついてほ,なお換討すべき問題が残され ていた..よって聾者ほこれについて19占0−19占1年に実験を行ない,播種前処理期間の巾に関して若干の成績を得たの で,ここにその大略を報告する 実験材料および方法 播種前処理紅関する試験区の構成(19る0) (1)実験材料 供試麦ほ,香川大学農学部附 属農場産の「/ト麦農林2占号」 (香川県奨励品種)である〝 除草剤にほ,PCP(成分量8る %)水溶剤およびCAT(成分鼠 50%)水和剤を用いた小 なお石 灰窒素(N成分量21%)も比較の ため一部供試した.. (2)実験方法 香川大学農学部附属農場水田 において,水稲東山58弓跡地を 試験圃場とした.土壌は沖積層 砂壌土,地味ほやや肥沃で排水 もよく,冬期雑草の発生が比較 的少ない、麦の栽培様式は多株 穴播栽培である” 試験区の構成ならびに栽培方 法の大略は左記のとおりであ る.. 実験結果および考察 (1)播種前白数の相違が麦 の生育におよぽす影響 処理月 日 播種前日数 供試畠 (製品a当) (g) 備 考計画(日)j実施(。)
計 画l実 施]喜妄三7!1ヲ
水9L/aで稀 釈散布 〝 11 〝 4 〝 0当い当吉事:!呈…
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7 1 4 日1 1 当
5 0 5 日1 1 当
CAT17 〝 11 ′′ ・l 〝 0 石灰窒素(CN) 無 処 理l 注:1)試験区1区てOm2,5区制 2)播穂期 計画11月25日,実施11月25日 5)播種密度 25。7cmX16い7cm,m2当たり25,.1株 上記密度になるよう穴突点描機で播種,穴の探さ2一ちCm,1穴 に12−15粒,覆土は生籾殻で代替被覆した巾 4)除草剤および石灰窒素の散布は上表計画により,処理を進めたが, 処理予定日前の天候や供試圃場の状態によって,やむなく変更した” 5)肥料(a当たり) 元肥(11月50日)炭素化成5.90kg,塩安215kg,尿素る50g,熔燐 52Dkg,塩加95口gを施用 追肥(1月19日)塩安1.10kg,(5月22日)尿某る50g,塩加d8Dg施 用,石灰窒素区は塩実の施用を除いた巾OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
第17巻第2号(19占占) 1dl 各試験区の麦の生育状況ほ第1図のとおりである 1) 草丈 分けつ期(2月4日)も幼楷形成期(5月25日)の成績も,ともに石灰窒素区が劣るはか,各区間の 差はわずかである. 2) 茎数 草丈の場合と多少異なった傾向を示し,PCPo,CATllの両区が無処理区よりも劣っているい これ ほ明らか紅除草剤による影響と思われ,播種前2日および7日に処理(CAT25g/a成分盟)したシラサギコムギの 成績(9)とよく似た結果を示している. 5) 群島 PCPの各区でほ,播種前日数の少ないはど短い傾向が認められるが,CATについては,CAT17と CAT4の両区が,またCATllとCAToの両区がそれぞれ相似た数億を示し,一億の傾向が認められない. 4) 穂数 石灰窒素区が最も多く,ついでPCPll>・PCP17>CAToこ>PCP4区の順位で,CAT17,CATll, CAT4,PCPoの各区ほ額処理区と殆んど差がない 以上のように,本試験程度の使用蔓であれは,麦の生育に対する播種前日数の相違が,草丈,押長および穂長など におよぼす影響濾極めてわずかである しかしながら枚数に対しては,PCPの各区間とCATの各区間にそれぞれ異なった傾向がみられ,PCPの各区につ ︵草丈1 m︶ ︵茎数・稚数・本︶ 節1図 除草剤播種前処理におる処理後日数の相違が麦の生育におよぼす影響(19占1) いてほ,播種前日数の少ない区はと■穂数が低下した またCATの各区間にほ,著しい差が認められず,む しろ播種当日処理区がまさった なお,石灰窒素区の穂数が多かったことは,CAT各 区の如く抑制作用が永続しなかったものと思われる (2)播種前日数の相違が麦の収量におよぽす影響 各試験区における麦の収量ほ第2区lに示したハ これ によると,石灰窒素区およぴPCP4区は無処理区と同 じ収崖を示し,他のPCP区とCATの各区ほともに無 処理区に劣った なおCArの各区はPCPの各区に比し,雑草の発生 が著しく抑制されたが,収鼻に.おいては劣った つぎにPCP各区とCAT各区の播種前日数の相違と 収還との関係についてほ,PCP4_,CAT4の両区がそ 30 雑 草 20風 乾 並 10 ク 0 第2図 除草剤播種前処理における処理後日数の相連 が麦の収這および雑草の発生におよばす影響 (19る1) 注:収量調査(5ロ株当たり粘重)/ト麦農林2る弓 雑草発生量(50e椚×50c皿).5月24日調査
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1る2 香川大学農学部学術報告 れぞれ収患が最も多く,これより播樺前日数が多く,あるいほ少なくなるに従って低下している.しかしながらPCPヰ とPCP17の両区間およびCAT4とCA′r17の両区間における差はわずかで,前者では1。7g/株,後者で5g/株程度で ある” これらの点からみれば,播種前日数の少ないはどPCPの各区では枚数が低下したが,それが却っで一・穏当たりの穂 蛋を増加させる結果となり,さらに供試圃場の雑草発生が少ないことも影響して,最終的に登熱がよかったものと考 えられる小 なおまたCATの各区について:はこれと多少趣を異にし,岡ら(7)のいうように日数の少ないはど処理層内紅不溶性 のままの状態であるため,麦紅対する影響が少なく,それが登熟の末期まで関係したのではなかろうか. 播層前日数の長短匿よる薬害発現の差異については,すでに指摘されて−いる如く(124・5878)除草剤の種類,使用 蒐,土性,土壌水分,処理後の降雨恩,光線,気温などによって影響される..また除草剤の土壌中における移動,活 性化,不活性化の難易,これに.影響する土壌中の有機物および徽塗物の作用(8・10〉や時間的推移の差異と,麦の生育時 期の違いにもとづく板群分布ならびに生理活動の相違檻もー周があるものと思われる.. (3)播種前日数の相違が雑草の発生におよぼす影響 本試験においてほ,冬期雑草の発生が比較的少ない圃場を選んで供試したので,播種前日数の相違と雑草発生との 関係についてほ明らかな傾向が認められなかった.ただPCPの各区はすでに鵬・般に認められているように,CATの 各区に比し雑草抑制効果が劣った.. しかしながらPCP17,PCPoの両区とも雑草風乾垂は無処理区のそれと差がないが,発生二啓種と本数は無処理区の 罷以下であったい 以上の結果から,PCPおよびCArを使用して:播種前処理を行なう際には,PCPでほ播種当日から17日前,CAT では播種当日から11日前までの範囲ならば,除草剤散布の適期を失したための雑草害に比べると,麦の生育および収 鼻に対する危険性ほ低いので,作業計画に融通性をもたせることが可能となり,実情に即した雑草防除が実施できる であろう.. 終りに臨み,本論文起草に当たり懇篤な指導と校閲をいただいた香川大学農学部申潤三郎教授に対し深甚な謝意を 表するとともに,実験に際し助言を与えられた前香川大学農学部植木邦和助教授(現京都大学農学部助教授)に厚く お礼を申し上げる.. 摘 要 本研究は水田裏作麦栽培における除草剤播種前処理の実用的作業期間を知るために,19肛19占1年に行なったもの であるい 材料としてほPCP,CATおよび石灰窒素を用い,麦は小麦農林2占号を供試した. 試験ほPCP処理区,CAT処理区,石灰窒素区および無処理区で構成し,このうちPCPとCATの両処理について ほ播種前17,11,4日および当日処理区を,石灰窒素について−は当日処理区のみ設けた‖なお使用還はa当たり製品 見でPCPlOOgまたほCAT6g,石灰窒素7,500gを散布した.供試田の土性ほ砂壌土であり,麦の栽培様式は多株穴 播栽培によった.. 試験結果の大略はつぎのとおりである. (1J処理後播種までの日数の相違が麦の草丈,群島,穂長におよぼす影響は極めてわずかである.また茎数および 枚数に対してはPCP処理の場合には,処理後播種までのEl数の少ないほど影響が大きく,CAT処理の場合にほ著し い差が認められない. (2J処理後播種までの日数の相違が麦の収盟におよばす影響を述べると,PCP処理とCAT処理においては,播種 前41≡Ⅰ処理の場合が収鼠がよく,これより処理後播種までの日数が多く,あるいは少なくなるに従って,低下するが その差は少ない. (3)処理後播種までの日数の相違が雑草の発生におよばす影響砿ついてほ,明らかな差が認められなかった. L4I以上の結果,PCPおよびCATを使用して播種前処理をする場合には,PCPでは播種当日から17日前,CA■r でほ播種当日から11日前までに処理を行なっても,麦に対する危険性は低いので,この時囲が実用的な処理作業期間 と考えられる‖
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1d5 第17巻欝2号(19占占) 引 用 文 献 (1)荒井正雄,川島良一・:農及園,る2,925(1957). (2)井田昭典,中島嗣郎,滝島英策:農及園,59,985 (19る4) (3)井口厚侶,植木邦和:香川大曲学報,12,278 (19る1). (4)伊藤窓作,大和茂八:雑草研究,12),71(19る5) (5)片岡孝義:農業技術,19,11占(19占4). (6)野田健児:稚草研究,(3),10(19る4).. (7)岡寿太郎,西尾隆雄,山崎和夫:農業技術,15, 495(19dO). (8)竹松哲夫,近内誠登:農業技術,1る,208(19占1)小 (9)徳島県農業試験場:昭和55年度冬作栽培法に.関する 試験成絞苫,15(19る1),謄写刷. (10)谷田沢道彦,立川汗也:土肥誌,る5,424(19占2)..
Studies on the weed controlin“Takabu−Anamaki”culture of wheat TI On the practicalworkingtime for・the application of herbicides before
the seeding of wheat
AtunobuINOktJTI
S11mmary The expeziment wasperformedin1960−1961toclarify the practical working time fo工 the application of heIbicides befoIe the seeding of wheat at the drained paddy field,In the present experi−
ment Pentachlorophnol(PCP),2−Chloro−4,6−bis(ethylamino),S−triazine(CAT),Calcium cyanamide
(CaCN2)were used as heIbicides and the wheat of variety〟N8rin No.26”was used as mateIial”The
experimentalblocks were consisted of4blocks;the PCP,CAT,CaCN2aPplicationandthe cont工Ol.The
PCP and CAT application blocks had next4plots respectively;eaCh of the plots was the17,11,4 days
and the same day application before the seeding day.On the contrary,the CaCN2block had the same
dayapplicationaloneThe quantities of herbicides used wereas fo1lows;PCP,1DOg/a;CAT,6g/a; CaCN2,7,500g/aThe soilof expeIimentalfield was sandyloam and the cultureofwheatwas“Takabu− Anamaki”method
TheIeSults obtained may be summarized as follows:
(1)There was a feweffectof the differencein the number ofdaysbefore theseedingupon theplant
height,Culmand earlengths of wheatIn the case of PCP blocks,While the numberof days befoIethe Seeding wasfew,there were many effectson thenumber of ti11ersandears)butthere was no g工eat
difference between each of the4plotsin the CAT blocks
(2)The effectof differencein the numberofdays beforethe seeding upon yieldswas s11periorto those
Ofthe4daysbeforeseedingplotsinthePCPandCAT blocksAsthedaysbeforeseedingwere many
Or few,there wereless yields,but the differences between yields were few
(3)The differencein the number of days before seeding did notIeSulted to have an evident effect upon the growth o董weeds
(4)Asmentionedabove,theapplicationbeforetheseedingfromthe sane day to17dayswith PCP, andfromthesamedaytolldayswith CAThadalmost noinjuIy tO Wheat plants。Therefore,these
periods seem to be conceivable within thelimits of practicalworking time
(Received October50,19る5)