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保証成長の不安定性のためのケインズの条件について-香川大学学術情報リポジトリ

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保証成長の不安定性のための

ケインズの条件について

篠 崎 敏 雄 Ⅰ..序。ⅠⅠ.ケインズとハロッドの往復書簡と不安定性のた めのケインズの条件。ⅠⅠⅠ./、ロッドの「動学理論における− 論」(1939)での不安定性原理とケインズの条件。ⅠⅤ.時の遅 れと不安定性のためのケインズの条件。Ⅴ.むすび。 Ⅰ 近代的な経済成長理論の出発点となった,R.Fノ、ロッドの「動学理論におけ る−・論」“AnEssayinDynamicTheory”(1939)1)は,その原稿の段階で,そ れを掲載しようとしたエコノミック・ジャーナルの編集者であった‥JいMいケイ ンズによって詳細に検討された。そして,ケインズとで、ロッドと.の間で,この 原稿の内容をめくヾって合計13通の手紙2)による激しい論争が行われ,改善が行 われた末に公表された。その中で,ケインズがもっとも問題としたのは,/、ロッ ドの新しい経済動学の一つの中心部分である不安定性原理が,成立するための 必要条件についてであった。この条件は,最初からケインズによって主張され, 往復書簡における激しい議論の後,結局ハロッドによって受け入れられ,公表 された論文において取り扱われた。また,JR.ヒックスは後に,その著『資本 と成長』(1965)3〉において,このケインズが問題とした不安定性のための条件 を,時の遅れを考慮した形で取り扱っている。 1)RFHar’rOd,“AnEssayinDynamicTheory,”Etonomi(hurnaL Mar℃h,1939 2)JMKeynes,771e Collected T侮tin9S d.hhn MaynaYd Keynes,edited by D

Moggridge,VOlXIV,1973,pp321−350 3=RHicks,C4t)ih2land GYOWih,1965

(2)

香川大学経済学部 研究年報 23 一2− ノクβJ この小論では,ノ\ロッドの「動学理論における−・論」での不安定性原理その ものの再検討をも含め,これらの議論を詳細に検討し,保証成長の不安定性の ためのケインズの条件とも言うべきこの条件に関する,意義と問題点等を明ら かにしたいと思う。 ⅠⅠ ケインズとハロッドとの間では,多くの経済学に関する手紙が取り交わされ

ており,それらは『ケインズ全集』の中に収められている。それらの中でも,

とくに注目すべきものは,近代的な経済動学(経済成長理論)の出発点となっ

た,ハロッドの「動学理論におけるd・論」“AnEssayinDynamicTheory”(1939)

に関するものである。この論文ほ周知のように,エコノミック・ジャーナルの

1939年の3月号に掲載されたが,その前に,この雑誌の編集者であるケインズ

と寄稿者であるハロッドとの間で,上述のようにその原稿の内容を巡って,6

往復で合計13通の手紙が遣り取りされ,改善が図られている。そして,その中

でもっとも問題となったのが,ハロッドの「不安定性原理」の成立のための条

件であり,これはケインズによってとくに強く主張された。ここでは,このケ

インズとハロッドとの往復書簡でとくに議論された,/\ロッドの「不安定性原

理」の成立のための必要条件に焦点を合わせて,考察してみよう。

ハロッドのこの原稿の学説は,彼の経済動学の基本的な考え方を始めて体系

化したものであり,もとより非常に独創的なものであった。したがって,ケイ

ンズもこれを大いに高く評価している。しかし,それだけにケインズにとっ

ては,ノ、ロッドの新しい考え方がなかなか十分にほ,理解し難かったようである。

そこで,往復書簡のとくに始めのうちほ,/\ロッドの原偶に対する理解度が比

較的低く,そのためケインズ自身の手紙の内容も分かりにくいところが多い。

これに対するハロッドの手紙も,最初のうちは,ケインズの述べている意図が

よく理解出来ない点があるように思われる。しかし,往復書簡が回を重ねて行

くうちに,両者の議論は,次第にうまく噛み合うようになって釆ている。

1)1回目の往復書簡一不安定性のための条件

(3)

ケインズの第1回目の手紙ほ,/、ロッドの原稿に対する全般的で詳細なコメ ントを述べている。しかし,その中でもとくに重要なのは,やほ.り保証成長率 の均衡の不安定性に.関する部分である。/、ロッドの「動学理論における−・論」 (1939)の中心内容は,ある意味では不安定性原理であり,ケインズほ始めか ら最後1まで,とくにこの不安定性原理が成立するための必要条件を執拗に問題 とした。 ケインズのこの手紙ほ,ハロッドの原稿についての最初の論評であるので, ハロッドの新しい学説の内容についての理解が十分でほなく,ある程度手探り のような形で論じ,また若〒の誤解に基づいたものとなっている。 第」・に,ケインズほ保証成長の不安定性のための必要条件について,消費(財) 産業と投資(財)産業との二眉粁ヨを考慮したモデルで論じている。しかし,ハ ロッド自身は消費財と投資財との区別をせず,−・部門で論じているのであり, そのことを返事の手紙で述べている。また,不安定性原理に関連する「過剰な 産出高」‘excessiveoutput’の概念について,ケインズはハロッドの考えている ものとは違った解釈を↓て\、る。また,記号法にも首尾一骨しないところがあ る。このようなため,このケインズの第1回目の手紙の中で,とくに保証成長 の不安定性について論じている部分ほ,非常に分かりにくい。 保証成長の不安定性の条件に関する中心的な問題に.関連して,ケインズはま ず,「過剰な産出高」とは何かということから問題とする。それは,この概念に ついて,ハロッドの考えていることとケインズ自身が考えていることとの問に, 違いのあることを感じたからである。ケインズは前述したように,消費(財) 産業と投資(財)産業とを区別して論じている。また,それぞれの産業の現実 の産出高と保証された産出高とを区.別している。この「保証された」‘warTanted’

というのは,/\ロッドの保証成長率the war.ranted rate of gT.OWthの表現に 倣ったもので,ケインズはこれを,二つの産業のそれぞれの産出高についての, 均衡概念を表すものとして使っている。これに対してハロッドは,後にこの用 語法に異議を唱えている。/、ロッドほ,保証成長率以外に,「保証」という言葉 を使っていない。しかし,いずれにせよケインズは,消費産業と投資産業の現 実の産出高の合計が,二つの産業の保証された産出高(均衡産出高)の合計を超

(4)

香川大学経済学部 研究年報 23 ーイー ノ(小\J えている時,産出高は過剰であると考えたのである。これは後のハロッドの手 紙に書いていることと考え合わせると,ケインズはさらに進んで,現実成長率 Gが保証成長率G紗を超えている状態を産出高の過剰と考えていたと解され る。後述するように,/、ロッドはちょうどこの逆の状態を,すなわちC<G抄 で,したがって現実資本係数が必要資本係数を超過している状態を,過剰な産 出高と考えていたのである。ここに,ケインズには,ハロッドの説明に対する 一つの誤解があった。 次にケインズほ,消費産業の保証された産出高の増分に対する,投資産業の保証さ れた産出高の比率をtという記号で表し,これは技術technologyによって与え られるとしている。一・種の加速度係数である。また,両産業の保証された産出 高の増分の合計に対する,投資産業の保証された産出高の増分の比率をsとい う記号で表し,これほ限界貯蓄性向によって与えられるとしている。このよう にして,′も一Sも均衡概念である。 ケインズは,これら二つの概念を使って,保証成長の不安定性のための必要 条件について次のように述べる。「そこで貴方は晴々裡に,Sはfよりも小さい という仮定を持ちこんでいる。この場合には,保証されるものを超える投資の 増加は,乗数の理由のために,新投資が与えることの出来るよりも大きな消費 の増加を生じる。このようにして貴方は,その状態が不安定であるという論点 と,保証されるものを超える投資の増加は,投資財と消費財との双方の同時的 不足に導くという貴方の逆説とを得る。」4)ここにほ,ハロッドの不安定性原理 が成立するための条件についての重要な見解を含んでいる。すなわち,ハロッ ドの保証成長の不安定性が成立するための条件についての,基本的な考えが始 めから現われているのである。そして,この見解の基本的な部分が,洗練と拡 充を加えながら,以後のハロッードとの往復書簡の中で,繰り返し執拗に述べら れるのである。しかし,この第1回の手紙の段階でほ,その基本的な考え方は 理解出来ても,その精密な解釈をしようとすると,いろいろ問題点を含んでい る。 その基本的な考え方というのほ,以後の往復書簡の内容や,その後公表され 4)JMKeynes,Collectedl竹itings,VOlXIV,p324

(5)

た/、ロッドの論文を参考にすると,次のようであると解せられる。まず,所得

(またほ産出高)の現実成長率Gがその保証成長率G∽に一優している状態か

ら出発して考える。その時にほ,現実の投資は保証された投資(均衡投資)に

一卜致している。そして,たまたまある期間において現実成長率が保証成長率を

僅かに超え,そのために現実の投資が均衡投資を僅かに超えた場合を考える。

その余分の投資の増大分を(△ハmとする。今,f>Sという条件のもとに,巨お

よびSの逆数を,この(△J)耶に乗ずると次の関係が得られる。 (△ハ椚与<(△ハ椚

この不等式の左辺ほ,均衡径路からの上方燕離による余分の投資の増加(△ハ椚

が,技術的に与えることの出来る消費の増加を示す。また右辺は,この余分の

新投資の結果,投資乗数の作用によって生じる所得の増大分である。ところが

この式の内容は,前掲のケインズの言葉「この場合には,保証されるものを超

える投資の増加ほ,乗数の理由のためむこ;新投資が与えることの出来るよりも,

大きな消費の増加を生じる」に一・致しない。この言葉の通りであるためには,

右辺は消費の増加でなければならない。ここに,ケインズの説明に疑問な点が

ある。

この矛盾を解決する方法が二つある。一つは,あくまでも二部門モデルで考

え,ケインズの言葉に忠実に考える方法である。そのためには,右辺の(△ハ椚

に掛けられるのは,限界貯蓄性向の逆数ではなく,均衡消費の増分に対する均

衡投資の増分(=均衡貯蓄の増分)の逝数である。そして,この均衡消費の増

分に対する均衡投資の増分の比率を〝で表し,これが≠より小さいと考える。

このようにして次式の関係が得られる。 (△ハ椚‡<(△ハm

この時には,ケインズの言葉通り,保証されるものを超える投資の増加(△ハm

は,新投資が技術的に与えることの出来るもの(左辺)よりも大きな消費の増

加(右辺)を生じることになる。このことは,消費財生産の増加に対し投資の

不足を意味し,その結果投資が刺戟され,保証成長径路からの一層の上方兼離

を引き起こすことになる。

(6)

香川大学経済学部 研究年報 23 −6一 ノ1丹、?

もう一山つの解決の仕方は,fを,消費産業の保証された産出高(均衡産出高)で

なく全産業の保証された産出高の増分に対する,投資産業の保証された産出高の比

率と考えることである。(.これは,ケインズ自身が第2回目の手紙以後採用した

方法である。)そうすると次式ほ次のことを意味する。

(△7)の‡<(△ハm‡

すなわち,「保証されるものを超える投資の増加は,乗数の理由のために,新投

資が与えることの出来るよりも大きな所得の増加を生じる」のである。この時

も,投資不足が発生し,保証成長径路からの上方飛離ほ,さらに一層の帝離を

生じさせる。 このようにして,上記の二つの解決方法は,いずれも保証成長径路の不安定

性を証明出来る。ケインズの説明には,これら二つの方法が混在していると考

えられる。いずれにせよ,この第1回のケインズの手紙には,保証成長の不安

定性のための必要条件についての基本的な考え方が現われており,以後の/\

ロッドとの論争の過程で洗練され拡充されながら,最後まで主張される。

/、ロッドの原稿に対するケインズの第1回目のコメントに対し,ハロッドは

4日後に返事を送っている。その殆んどの内容は,ケインズの主要な批判であ

るところの,不安定性原理についての批判に対する弁明でめる。

そしてその弁明ほ,とくに,資本財と消費財との区別をしていないという側

面についてのことが中心となっているム5)ハロッドに.よれば,それほ紙面の都合

のためであり,それによってとくに誤謬に巻き込まれることはないとして,次

のように言う。「しかしもちろん,重要な区側のこの−・時的な無視は,私を誤謬

に巻き込みほしないということを,示さなければなりません。そして,ここで

私は・貴方の批判は全く妥当であるというのではないと思い草す。消費財の生

産過剰は拡張を促進しないという貴方の意見ほもっともらしいが,本文の諸定

義と議論との関連で,私は正しいとは思いません。」6)ここでハロッドは,現実の

資本係数の分子をなす投資は,単に生産マイナス消費であり,資本財のみなら

5)厳密に言えは,ケインズは投資財と消費財との区別をしたのであるが,ハロッドは資 本財と消費財の区別として取り扱っている。 6)(砂(れp328

(7)

ず消費財の在庫増も含まれていることを強調し,ケインズの批判が当たらない ことを説明している。そのためハロッドは,固定資本が無く,凡ての生産ほ消 費財の生産のみから成り,そのうちの若干が流動資本として在庫に回されるよ うな極端な想定を行い,消費財の生産過剰が拡張を刺戟することを説明する。

また,資本財と消費財との間のバランスの欠如の効果も,基本的な議論におい

てほ省略することが正当化されるとしている。 /\ロッドほ.,不安定性原理についての,ケインズのもう−ルつの主要なコメン トについても論じている。それは,ケインズが「「過剰な産出高」とは何か?」 という問題について論じたことである。ハロッドは,生産過剰0VerprOduction に閲し,ケインズに誤解があることを注意している。「もし現実率>保証率であ るなら,貴方は通常の意味での生産過剰を得ない。それは保証率>現実率の時 に生じるのです。それほ動学的均衡の基本的な逆説です。」7〉これほ前に.述べた ように,ケイソズが,現実率>保証率を普通の意味の生産過剰と解しているよ うであるのに対し,注意したものである。もし現実成長率Gが保証成長率G紗 より大きい時には,それらをそれぞれ含む/、ロッドの方程式の関係から,現実 の資本係数が,(技術的忙必要な資本増加を示す)必要資本係数より小さくな る。8)そこで,現実の投資が必要な投資に対して不足し(投資財の不足),通常の 意味では生産不足となるのである。そこで,現実率>保証率の時には,以上の ように,通常の意味の生産不足を生じ,これがさらに現実率を保証率から上方 に希離させ,それが再び生産不足を激しくする。このノようにしてハロッドは, 保証成長径路が不安定であることを強調する。 ところがハロッドは,ケインズの第1回目のコメントの中ではある意味で最 も重要な,保証成長径路の不安定性のための必要条件(f>s)については何も 述べていない。これは,この問題を無視したのでほなく,返答するためには更 に熟考を必要とすると考えたためと思われる。

2) 2回目の往復書簡−′>sの新しい意味

7)㊥cgf,p329 8)「動学理論における一儲」(1939)の記号では,G=S/C♪,C捗=S/Cから,C>G抄 ならC♪くCとなる。

(8)

ノl畑? 香川大学経済学部 研究年報 23 一β一

ハロッドが返事を書いた二月後に,ケインズから2回目のコメントの手紙が

善かれている。ケインズほ.,消費財と資本財の区側の無視,とくに消費財と資

本財の生産過剰の違いの無視ということへ一・応の了解を与え,また/、ロッドの

返事でほ触れていなかった,′>5という条件について再び述べ,さらに・「保証

された」‘warranted’という概念についても見解を示している。

ケインズは,消費財と資本財との生産過剰の区例を無視出来るということ′に

っいて,一応了解している。しかし次のように述べる。「私は,貴方の単純化を

する最善の方法ほ・……貴方はここでは,資本財と消費財との間のバランスの欠

如の結果を考察しているのでほなくて,バランスを維持する産出量の変化を取

り扱っているのだということを,述べることであると思う。」9)

次にケインズは,第二膚目のコメントとして,ハロッドの返事でほ触れてい

なかった,fとsとの関係の問題を再び取り上げ,次のように言う。「しかしな

がらこのことは,貴方の議論が,′が所得に対する資本の比率であり,′Sが所得

に対する貯蓄の比率である場合,fはSよりも造かに大きいという述べられて

いない仮定を必要とするという,私の論点を取り扱ってはいない。」10)gと.ぶと

の関係はケインズが第一周の手紙でも取り上げていた問題であるが,その時と

は,fの概念が変わっていることに注意すべきである。前にほ,′ほ消費産業の

保証された経常産出高の増分に対する投資産業の保証された経常産出高の比で

あった。言い替えれば,消費財の均衡産出高の増分に対する投資財の均衡産出

高の比である。これに対し今回の′は,所得(=産出高)に対する資本の

比(重要なのは平均的関係でなく限界的関係であるとしている)である。ここ

で,消費財産出高が全産出高(=所得)に変わった点ほ大きな違いである。こ

れはケインズが,ハロッドの消費財と資本財の産出高の区別の無視に,一応の

了解を与えたことの結果であると思われる。 ところでケインズは,このように」の概念に変更を加えた上で,/、ロッドの不

安定性の命掛ことって,gがSより大きいことが必要条件であることを再び強

調している。この′の概念の変更は,前にも触れたように,f>Sという条件を

9)(砂c鉦,p330 10)(わ(さJ,p330

(9)

より筋の通ったものとしている。しかし今回ほ,単にf>sでなく,fがsより 遥かに大きくなければならぬとしていることに注意すべきである。 また,ケインズほ,「保証された」という言葉のハロッドによる定義を正確に 理解していなかったことを認めている。 これに対してハロッドからほ,まず,才>sの条件の問題に関連して,ケイン ズが限界貯蓄性向を重視しているのに対して,経済動学では平均貯蓄性向が重 要で,限界貯蓄性向は補助的なものであると主張している。 ハロッドほまた,ケインズの≠(/\ロッドの必要資本係数に当たる)の億ほ, 考慮される時間の長さによって異なることについて述べている。すなわち,「さ らに,私にとって=・も考慮に入れられる時間の長さに依存しており,全く不確 定である。」11)このようにしてfの値ほ,選ばれる時間の間隔が大きくなると小 さくなる。他方sの借ほ,時間の長さに関係のない絶対的な量であるとしてい る。12) ノ\ロッド自身はここで,このこととケインズが問題とする才>sの条件との

関係についてとくに述べていない。しかし,そこには重要な関係がある。すな

わち,考慮する時間の長さが変われば,∼とSとの数量関係は変わって来るから である。/\ロッドも当然,このことを考えて上記のことを述べたのほ間違いな い。そしてこのことは,後のケインズとハロッドとの往復書簡で問題とされる ことになる。

3) 3回目の往復書簡−f>sの条件についての一層の議論

ケインズの第3回目の手紙の主要な内容は,ケインズが始めから問題として いた,J>Sという不安定性が生じるための必要条件についてである。これに対 するハロッドの手紙の内容は,保証率の性質などについてである。 ケインズはまず,ある仮定された時間の単位についての保証成長率を,次式 で示している。 11)(砂乙≠′,p332 12)∫の分母は,時間の単位の長さによって2回影響を受けるが,分子は1回しか影響を受 けない。Sは時間の単位の長さによって,分母も分子も1回しか影響を受けない。

(10)

香川大学経済学部 研究年報 23 ノダβJ −ノ()−▲ △i㌔/y=5/≠ これほ,ハロッドの「動学理論における一・論」(1939)での表現でほ Gぴ=5ノC である。この場合J(またほC)ほ,採用され仮定された時間の単位の減少関数 であり,Sは時間の単位に無関係である。したがって,仮定される時間の単位が 大きくなるにつれて,=′ま5に対して相対的に小さくなり,保証成長率は大きく なる。 ケインズほ,このことと,ハロッドが不安定性の説明のために暗黙裡になし

ている仮定との関係について,次のように.述べる。「しかしながら,産出高の事

前的成長がガの畳だけ,仮定された時間の単位の間に保証成長を超過すると想

定せよ。その時にほ,gと5が前と同じ値を持つ場合に, 打△‡㌦+刃>,S「y+孝ノ を仮定している,すなわち(その時間の単位について)仁>Sを仮定している(と 私は言う)。時間の単位が長ければ長いはど,このことはそれだけ少なく真実で ありそうだ。」13)ここでケインズほ,まず現実成長が保証成長に一・致している状 態から出発して考える。そして,仮定されたある単位時間の間に,事前的な14)成 長径路が保証成長径路よりも産出高の畳でズだけ超過したと想定する。した がって,現実の(事後的)成長も保証成長径路からそれだけ超過すると想定す るのである。産出高の増大に対して技術的に必要な投資ほ,保証成長径路から の耗離が無い時には′(△‡㌔)であるが,上記の上方へのズだけの轟離がある時 にほ,“△㍑+ズ)となる。また貯蓄は,保証成長径路からの禾離が無い時には Syであるが,ズだけの禿離がある時には5(y+ガ)となる。ところが△yひ/ y=ざ/Jから,′(△yぴ)=Syである。そこで,才とSの値は不変として,g(△ yぴ+ズ)>5(y+ズ)を仮定すれば,それは′ズ>ぶ片すなわちg>ぶを仮定 することになる。ところで,′(△i㌦+ズ)>ざ(y+ズ)という仮定の経済学的意 味ほ,保証成長率から事前的(および現実の)成長率が,仮定されたある単位 13)(妙(さg,p333 14)この「事前的」とは普通の意味のもので,ハロγドが使っているような特殊な意味の ものではない。

(11)

時間において上方に燕離(ガ>0)した場合,技術的に必要な投資が現実の投資 (=現実の貯曹)を超えて投資不足を生じ,拡張的な影響を持つということで ある。この事から,保証成長から現実成長が上方に耗離した場合,その飛離は ますます拡大し,その保証成長径路ほ不安定であるということになる。もちろ ん,この場合,下方への乗離(ズ<0)も,ますます大きくなる。そして,′(△ ‡㌦+ズ)>5(y+ガ)という仮定ほ,g>sを仮定することに等しい。しかし, 前にも述べたように,頼ま時間の単位の長さの減少関数であるとすれば,時間の 単位が長くなるほど≠は小さくなり,∼>sの条件ほ満たし難くなるというこ とである。 それでほ,現実的な時間の単位はどれくらいかということが次に問題となる が,その観点から′>sの仮定の妥当性を判断しなければならない。そこでケ インズは,次のように言う。「適切な時間の単位はおそらく,以前の諸決意が現 在の諸事実に照らして有効に修正され得る前に経過しなければならない間隔で ある。しかしながら,いかなるありそうな現実の情況においても,適当な時間 単位について,実際にイ>ざであることを保証する多くの余地があるだろう。こ のようにして,f>√Sという基礎的な仮定でもって,私ほ不安定性に関する貴方 の結論に同意する。」15〉′>sという不安定性成立のための必要条件ほ,その内 容ほ最初とほ少し変わったけれども,ケインズが最初から強調していたことで ある。f>,Sという条件が現実に満たされることは大いにありそうだけれども, しかしこの条件ほ必ず満たされなければならないということを繰り返し強調し ているのである。 以上の議論では,保証成長からの現実成長の燕離があっても,.Sとどの値は不 変であるとしていた。ここでケインズは,Sとfの可変性と,それと関連して, 限界貯蓄性向の重要性について述べる。まず次のように言う。「g(△‡㌦+・ズ)は 現実に支配しているごと√Sの備において,5(y+ガ)に等しくなければならな い。このようにして,もし成長が保証されなければ,gとざはそれらの以前の『’正 常』値から押しやられる。」16)最初,現実成長率が保証成長率に−・致している状 15)(砂c豆,p333 16)(砂(れP334

(12)

香川大学経済学部 研究年報 23 ノ夕βJ ーJ2− 態から出発して考える。その状態でほ,必要資本係数(gの正常値)と現実資本 係数とが一・致し,また均衡貯蓄率(√Sの正常値)と現実貯蓄率とが−・致している。 そして,ある仮定された単位時間において,現実成長が保証成長から上方にズ の産出高だけ轟離した時にも,事後的投資は常に二番後的貯蓄に等しくなければ ならない。そこで,仮にfとSがそれぞれ現実資本係数と現実貯蓄率を表すとす れば,次のようになる。 パ△i㌦+ズ)=5(y+ガ) ところが最初の′とsの正常値のままである場合,前述のように パ△yぴ+ガ)>5(y+ガ) でなければならない。したがって,保証成長径路からの乗離があった場合,gの 現実値は相対的に小さくなり,Sの現実値は相対的に大きくならねばならない。 ケインズの言葉ほこのようなことを言っているのである。 しかし,ケインズが,最初ほ トや′Sで以て資本係数や貯蓄率の均衡値(正常 値)を表し,ここでは現実値(事後的値)を表しているが,均衡値と現実僧は 違った記号を用いて表した方がはっきりして良いと思う。あるいは,ここでケ インズは,′やぶを同じく均衡値と考えて:ほいるが,最初の保証成長におけるそ れらの正常値と,保証成長から現実成長が帝離した時のそれらの値17)とを区別 して考えているのかも知れない。しかしその時にほ,才(△i㌦+方)=5(y+ズ) でなければならないとするのほ理解しがたい。このところに,ほっきりしない 点がある。 このように.してケインズほ,Sと≠の可変性と限界貯蓄性向の重要性を次の ように主張する。「私の現在の論点ほ単に,貴方はSと′の絶対的硬直性ならび

に保証成長からの逸脱を仮定することは出来ないということである。貴方は保

証されていない諸条件でのぶとgの変化について,ある仮定をしなければなら ない。さらにこの文脈においては,重要なのは限界的な.sとfである。」18)ここ でケインズがとくに言おうとしていることは,保証成長率からの現実成長率の 17)この時のS/Jは,一時的保証率(または特殊保証成長率)である。Cf−(砂c去′pp326 −7;R Harrod,Economic Dynamics,19L73,p36,p101 18う Keynes,Collected T4btings,VOIXIV,p334

(13)

希離がある時には,Sとょは不変であり得ないということと,このような場合す なわち景気循環が生ずるような時には,重要なのほ平均概念としてのSやfで ほ.なく,限界概念としてのSやfであるということである。 次にケインズは,保証成長から現実成長の轟離があった場合の,・Sやfの現実 値の変化に関連する問題を論じている。前述のように,fとSの現実値につい て,常に.次のことが成立するJ パ△1㌦+ガ)=S(y+ズ) ケインズによれば,「……それは,事後的には産出高の増分ズに対応す−る′の限 界値は,対応するsの限界値に等しくなければならないということを意味す る。」19)保証成長からの燕離が無かったならば,J△i㌦=5yである。この時に も,投資の現実値はこの式の左辺に等しく,貯蓄の現実値ほ右辺に等しい。そ して,才とsの現実値はそれらの正常値(均衡値)に等しい。そういう,もとの 保証成長径路上の現実の投資と貯蓄の均等の状態と,禾離があった時の現実の 投資と貯蓄の均等を比較すると,その差額は′ガ=5ガとなる。このことは,′ とSの限界における現実値が,J=5の関係にあることを意味する。そこで,最 初保証成長径路にある時にf>5の状態で,それがしばらく続き,≠の平均概念 と限界概念の値が一L致していたとする。しかもハロッドの数値例のように,fが sの50倍も大きい20)とする。ところが,保証成長から現実成長が薙離した時, 上で述べたように限界的な才とSの現実借が−・致するとすれば,現実の′や√S の平均値と限界値とが激しく食い違うことになる。ケインズは,保証成長から 現実成長の轟離が生じる時,このような特殊なことが生じることについて注意 を喚起している。また,投資財の価格が上昇する時才が正常値以下に下落し,消 費財の価格が上昇するか,所得が利潤に有利に再分配されるならば,Sがその正 常値より上昇するだろうという,ハロッドの指摘を承認している。 またケインズほ,ハロッドが不安定性の説明では,最初に余剰の能力が無い ことを暗黙裡に仮定しているということについて述べる。すなわち,「もし包括 的な余剰能力(工場設備と在庫品の双方)が存在するならば,その状態は,産 19.)q♪(査′リp334 20)Cぴ=S/′=002

(14)

香川大学経済学部 研究年報 23 ノダβJ −J・才一 出高の保証されない増大が後戻り柁ム砂Sβによって従われるであろうという意 味において,安定であるだろう。」21)というのは,それほ投資に対する何らかの 増大した需要を伴うことなしに,△s22)を増大させるからである。要するに,最 初に余剰能力があれは,保証成長から現実硬長の上方への燕離があって投資不 足が生じても,それは始めからあった余剰能力によって相殺されるからである。 これに対する答として,/\ロッドは反駁の手紙を書いている。ハロッドはま ず,′>5の条件について次のように言う。「いかなる保証された状態において も,fr>5です。というのは,f(△y)=ざ(y+△y)であるからです。ここで fは,資本の必要な増分を表します。」23)たしかに/\ロッドの式では,必ず∼>5 である。しかしこの場合,成長率は△y/(y+△y)の形となる。成長率を普 通のように△y/yとすれば,′(△y)=5yとなる。この場合には,単なる可 能性としてほJ≦5ということもあり得る。しかし,△)ツy<1という現実的 な成長率の範囲については,′>sである。 次にハロッドほ安定性の問題に移る。そして,ケインズの論点は,たとえば 保証された状態からの上方飛離があった場合,それは後戻りを引き起こすよう なざの上昇を引き起こすかも知れないということと解して,それに反論を加え ている。保証成長率は,G抄=5ノgということを意味する。ここで′は必要資本 係数(ケインズの言う≠の正常値)である。これに対して/、1フッドは,現実資本 係数(′の現実値)をg7と表している。そして,貯蓄率についてその均衡値と 現実億の差異を無視すると,現実成長率Gについてほ,G=ざ/′γである。そこ で,G=G紗したがって∼=才γの状態から出発して,Gが上方に帝離し同時に Sも上昇した場合,Gの上昇率がSの上昇率より大きい時,′>gγ・となる。そ してこのことほ,保証成長の不安定性を示すものである。逝にSの上昇率の方 が高いときにほ,g<gγとなり,保証成長は安定的となる。ところが,ハロッ ドは数値例を使って,後者が生ずる場合は非現実的であることを説明してい る。24) 21)(砂(れp335 22)この△sは,貯蓄額を窟味していると解される。 23)(妙(れp335 24)(妙dJリpp335−6

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しかし,上で説明したように,ケインズが保証成長からの上方燕離がある時 に,後戻りが生じると述べたのは,余剰の能力がある場合についてであり,そ の点両者の間には少し論点の食い違いが見られる。他方,ケインズは資卒係数 の正常値(均衡値)と現実値を記号の上で区別せず,またその相互関係をとく に考慮していない。これに対して/、ロッドほ,両者を記号の上で区別し,また その相互関係で以て保証成長の不安定性いかんの問題を論じている点は,注意 すべきである。ケインズは少なくともこの時点までは,ハロッドのこの考え方 を,十分にほ理解してはいなかったのではないだろうか。 また/、ロッドは,景気循環の過程で,Sと′が不変であると仮定するのでほな いとして,この問題についてりケインズの批判に答えている。「私はもちろん, 循環のいろいろな段階において,5とfの不変性を仮定する必要はないし,ある いはそうしたいとも思いません。私が必要とする凡てのことは,不安定性を論 証するために,それがいかなる与えられた時点においても,確定的なものであ ると仮定することです。」25)ここに含まれている二つの場合を区別することほ, 重要である。現実の景気循環の過程を考察する時には,5とfの値は可変的なも のと考える。そして,動学の基礎的な原理としての不安定性原理を論証する時 には,一博点について考え,したカミってSとfの借を定まったものとして取り扱 うのである。26) /、ロッドはこの他,保証成長から現実成長が轟離する時,現実のfの平均値と 限界値とが激しく食い違うというケインズの言葉に対し,疑問を述べている。 また,未利用の能力についてもっと述べるべきことがあることや,景気循環過 程のどの瞬間にも,≠がその正常値を持たないことについては,ケインズの意見 に賛意を示している。 ハロッドは翌日にも,続けてケインズに手紙を送っている。今回はまず,静 学的均衡と比較して,動学的均衡概念としての保証率の性格について説明して いる。そして,「貴方の批判の主要な部分は,保証率の誤解に基礎を置いていた 25)(砂(鉦,p336 26)クリーゲルは,この両者の取り扱い方法の区別を重視している。CfJAIKr・egel,“Ec− onomic Dynamicsand the Theory ofSteady Gr・OWth:an Histor・icalEssay on Harrod,s‘Knife−edge=,,mstoryqflEbliticalEconon%y・12‥1,1980,p114

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香川大学経済学部 研究年報 23 JクβJ −J6■… と思います」27)と言っている。また,ケインズは最初の手紙で,ハロッドの行っ ている「事前的」投資の特殊な用語法2$)について批判をしているが,/、ロッド ほこれに対して弁明をしている。さらに他方でほ,ケインズが/\ロッドの「事 前的投資」の代わりに,「保証された投資」という表現を使っていることに異議 を述べている。 4)4回目の往復書簡一不安定性成立のいかんに関係する時間の単位の問題 ケインズと/、ロッドとの間の4度目の往復書簡ほ,双方とも比較的簡単な内 容である。ケインズからは,/、ロッドの覚書の中の式に現われている次元に関 する疑問について述べている。そして/、ロッドに,今までの二人の間の議論に 基づいて修正を施した,新しい原稿を送るよう指示している。これに対し/\ロッ ドからほ,修正した原稿とともに,若干のコメントを述べた手紙を送っている。 そのコメントの内容は,不安定性成立のいかんに関係を持つ適切な時間の単位 の問題と,動学における限界貯蓄性向の重要性いかんの問題等について述べて いる。 保証成長の不安定性の成立のいかんに関係する,適切な時間の単位について のハロッドの主張は,次の通りである。前々回の手紙で/、ロッドは,保証成長 が実現している状態から出発して,現実成長の上方衆離が生じるとともに,同 時にSの上昇も生じる時,その結果が一層の燕離をもたらすための条件につい て述べていた。すなわち,現実成長率Gの上昇率がSの上昇率より大きければ, 資本係数の現実値′γが正常値(均衡値)gより小さくなり,それほGの一層の 上方飛離をもたらし,不安定性が生じるのである。その場合逆に,Cの上昇率 よりSの上昇率の方が大きければJ<J,となり,安定性が生じる。ところが, ハロッドの示す数値例からは,この安定性を生じるためには,時間の単位を非 常に長くしなければならないということであった。29)今回は,この十分に長い

27)Keynes,Collecied Tmitings,VOlXIV,p337

28)/\ロッドほ,産出高の増分に対し技術的に必要な投資を「事前的投資」と呼んでいる○ そして,これはケインズによって批判されたのにもかかわらず,「動学理論における一蘭」 (1939)でも用いている。しかし,その後,この用語法はやめている。Cf」Har■rOd,&0一 助叩融(点ssq叩,1952,pp278−9

29)Keynes,Collected肋tings,VOIXIV,pp335−6

(17)

期間が,時間の単位として適切であるかどうかに疑念を示しているのである。 すなわち次のように言う。「私の唯一・の疑いは,これが読者を悩ますに足るほど

十分に適切一適切な期間は,貴方が言うように注文が再調整される期間であ

る−であるかどうかということです。しかし,もし貴方が,その論点を実際 にまたは理論上十分に重要であるとぉ考えなら,私は脚注を挿入するでしょ う。」30)ハロッドほ,彼の不安定性原層が妥当しなくなるはど長い期間が適切な 時間の単位であるという可能性ほ,あま一り大きくないと考えているのである。 と.ころで前に述べたように,ケインズの主張する不安定性成立のための必要 条件∠■>.sも,時間の単位を十分大きくするとょが小さくなって,満たされな くなる。そこで適切な時間の単位がどれだけかということが問題となった。結 局,このことほ,今述べた事柄と同じことになる。31〉

5)5回目の往復書簡−g≒5と不安定均衡,中立的均衡および安定均衡

この回は,ケインズの指示により提出されたハロッドの新しい原稿について, ケインズから詳細なコメントがなされ,それに対してハロッドからも詳しい返 答がなされている。ケインズの主要な批判点ほ,彼が前から問題にしている, 不安定性が生じるための条件についでである。 ケインズによれば,「叙述とは区別されるものとしての内容的な事柄につい て,私は往復書簡で,一つの基本的な批判をして釆たのみである」32)と述べてい る。そしてその批判の対象となる問題は,不安定性が生じるための必要条件の ことである。ケインズほそれを全体の物語の基本的な前提であるとして重要視 し,/\ロッドがそれを軽視しようとしていることに不満を示している。 ケインズは次のように言う。「困難は貴方の原稿の15ペ・−ジにおいて始まる。 そこでほ,貴方ほ「結果ほ資本財の現実の増加が望まれるもの以下に下落する ということであろう」と言う。これは,それから残りのことが結果として伴う ところの全理論の中での最重要点である。しかし貴方は,それを証明するため 30)(砂cれp338 31)∠(ハロッドの記号ではC)が不変であるとすれば,Gの上昇率がSの上昇率より大き いということは,J>sと同じ結果をもたらす。 32)(砂c行,p339

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J!ノブJ 香川大学経済学部 研究年報 23 ーJβ−

のもっとも僅かな試みさえもしなかった。貴方は単にそれを明白な事実として

述べている。今やそれほ明白でほないのだ。貴方の記号法で証明をすることは

非常に難しく,そしてその証明は,貴方がしてほいなかった重要な仮定を必要

とする。」33)ここでケインズが最後に,不安定性の証明は,ハロッドがしていな

い重要な仮定を必要とすると言っているが,それは前からケインズが問題とし

ている,′>5ということである。

ケインズは,不安定性の証明のため㌢こはf>Sという条件が必要であるとい

うことについて,数値例を使って丁寧に.説明している。ケインズは先ず,消費

財のみが生産され,資本は所得に対し適当な比率の流動的なストックからなる

と仮定する。また,生産の期間は1年とす−る。そこで,企業家ほ保証産出高を

超えて年々の産出高を10消費単位だけ増加させるとする。そして,貯蓄は所得

の10分の1という−・定の比率である(ざ=1/10)と仮定する。

そこで先ず,正常なストックが前年の所得の10分の1の場合を想定する。こ

の比率を∼で表すと,′=1/10である。「この場合においては1単位だけのス

トックの増加は,丁度その正常状態を維持するのに十分である。と言うのは,

所得は10単位だけ増加したのだからである。我々ほそれゆえに,中立的均衡の

状態を得るのである。もし正常ストックが,貯蓄と,その年の所得について同

じ比率であるならば,いかなる率の産出高も保証される。」34)これは,前から用

いている記号を使えば,′=5ということである。保証成長からの乗離があった

場合,.必要な投資の余分の増加と,貯蓄(したがって現実の投資)の余分の増

加が等しく,新しい状態で均衡が維持される。なおこの場合,所得に対する正

常なストックの比率Jは,その限界概念も平均概念も同じ値と考えている。

次に,正常なストックが1年間の所得の1/11の場合を想定する。すなわち

′<Sの場合である。「この場合には,ストックほその年の終わりにおいて過剰

になっているであろうし,保証されたものを超える産出高の超過は,訂正され

る傾向があるだろうという意味において,均衡ほ安定なのです。」35)

最後に,正常なストックが1年の所得の1/9の場合を想定する。すなわち

O l 1 4 4 4 3 3 3 p p P Jム .ナん − ′し ′レ ′︶ 亘け∴・・ \ \ .、 3 4 5 3 3 3

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′二>sの場合である。「その場合にほ,その年の終わりにおいてストックは不足 するであろうし,保証産出高を超える拡張ほ産出高の一層の増大への刺戟を与 えるという意味で不安定であるでしょう。」36〉 このようにして,正常ストックの比率才が生産の期間に等しいある期間の所 得に対する貯蓄の比率sに,等しいか,小さいかまたは大きいかに従って,中 立的,安定的または不安定的となるというのである。このことは,ケインズが 最初から主張していたことを,より明瞭に述べたものに過ぎない。なおケイン ズは,以上のことは,貯蓄と保証された増大(保証成長)とが正常な状態でゼ ロであるような特殊な場合である,静学的な仮定のもとでも等しく真実である としている。 ケインズが第2番目に問題としたのほ,前から議論されている,重要なのは 限界貯蓄性向であるのか,それとも平均貯蓄性向であるのかということである。 そしてケインズは,産出高の保証率を計算している時には,重要なのは平均貯 蓄(性向)であって限界貯蓄(性向)ではないということに同意を与えた上で, −・方では次のような主張をしている。「また,我々が保証された産出高を離れ, 保証されたものを超える超過というものを考察するや否や,重要なのは限界貯 蓄である。それは平均貯蓄の問題でなくて,保証された所得を超える所得の増 加に対応する,限界貯蓄の問題である。」さ7)このように,限界貯蓄性向と平均貯 蓄性向との相対的重要性ほ,保証成長率の計算の場合と,現実成長が保証成長 から轟離した時の問題の分析とでは,異なると考えるのが妥当であろう。なお, 上で説明した,保証成長均衡の安定性いかんの条件であるf≒5の5は・,この ケインズの説明から分かるように,当然限界貯蓄性向であるが,数値例でほり それが平均貯蓄性向とも等しい場合を扱ったと考えることが出来る。 このケインズの手紙に対して,3日後に,ハロッドは詳しいコメントの手紙 を書いている。これは論文を完成するまでの,ハロッドからの実質的な最後の 手紙となる。その主要な内容は,不安定性の証明のためにはSの固定性を仮定 する必要がないということや,ケインズの言う中立的均衡や安定均衡はありそ 36)qわci′,p341 37)(砂c∠g,p342

(20)

香川大学経済学部 研究年報 23 ノ夕♂J −ご()一 うにないということ,さらにはそのことは長期的資本支出を考慮しても同じで あるというような主張等である。 /、ロッドは冒頭で,「貴方ほ,私の議論に対して,私には全く理解出来ないあ る実質的な異議を持っているように思われます」38)と述べている。ハロッドが この段階でこのようなことを書いているのほ,まだ二人の間に,基本的で根強 い意見の相違が残っていることを示している。 ところでハロッドは,最初に不安定性の証明のためには,(平均貯蓄性向)5 の固定性を仮定する必要の無いことについて述べている。「貴方は,私の不安定 性命題の証明が欠けていることについて苦情を述べておられる。証明ほ貯蓄性 向が変化しないという但し書きを条件として与えられます。凡ての経済学の議 論では,我々はある諸変数を−・時的に不変と仮定しなければなりません。」39)ま たこのことと関連して次のようにも言う。「 ̄sは成長率の変化に反応して変化す ると想定されるべきではなく,ただ所得の水準の変化に反応して変化すると想 定さるべきだと,正式に主張することが出来ましょう。」40)成長率の変化が生じ ても,しばらく時間が経過しないと,結果としての目立つほどの所得水準の変 化はなく,したがってSの変化もないということである。 しかし,ハロッドの不安定性の証明のためには,ざが必ずしも固定している必 要はない。ノ、ロッドはこのことと,なお若干残る問題点について次のように述 べる。「私が今言っていることは,不変の5について厳密に証明されるところの 不安定性に関する私の命題ほまた,ありそうもない情況にある場合を除いて, 可変のSについても当てはまるということです。それは私には脚注的な事柄で す。」41)ここで脚注的な事柄というのは,ありそうもない情況にある場合のこと で,前に述べたように,現実成長率Gの上昇率より貯蓄率sの上昇率の方が大 きい場合である。そしてそれほ,限界概念としての才とS(ただしこの場合は′ を不変として)について,g<sの場合と同じ結果になる。それは論理的には認 められても,実際的な見地からは大したことでほないというのである。そして 38)(砂(よ′一,p342 39)伽(れp342 40)(砂c∠fリp342 41)(砂(れpp342−3

(21)

/、ロッドは,数値例などを使って,ケインズの述べた中立的均衡の条件(f=S) は実現しそうに.なく,また安定均衡の条件(J<∫)はなおさら実現が困難であ ることについて述べている。しかしケインズほ後に,不安定性原理が当てはま らない場合を軽視することに不満を示している。 さらに/\ロッドは,加速度原理による誘発投資のみならず,長期的資本支出 long−rangeCapitaloutユayをも考慮に入れた数値例を示し,不安定性命題の妥 当性について述べている。 なおこれらのことと関連し,ハロッドは,前に述べたケインズの数値例に異 議を唱えている。すなわち,ケインズは中立的均衡が生じる場合の数値例とし て,f=1/10を示しているが,これについて次のように批判する。「見たところ では,今日のイギリスにおいて,以前から存在する所得の水準と結びついて必 要とされる資本が年々の産出高の4倍または5倍である時,年々の産出高の僅 かに1/10が必要とされる余分の資本を想定することほ馬鹿げています。」42)ま た,その場合貯蓄率5を1/10享仮定しており,中立的均衡が生ずるためには, 保証成長率5/′ほ100%もの大きさでなければならないことを指摘している。 このように.,数値例が非現実的であれば,それを使った中立的均衡の可能性の 説明も非現実的であるということである。また,ハロッドは直接には述べてい ないが,安定均衡が生ずる時の数値例,J=1/11についても,なおさら同じこ とが言えるであろう。 このようにして,この手紙でハロッドは,ケインズの批判を排して,不安定 性原理の妥当性を極力主張しようとしている。 6) 6回目の往復書簡一保証成長率存在の条件と不安定性成立の条件 ケインズの最終的な長いコメントは五つの部分に区切られている。第一・の部 分では,不安定性が存在するために先ず必要な,保証率そのものの存在につい て疑問を示している。第二の部分でほ,保証率が存在するための条件について 論じている。第三の部分は,不安定性の成立のため必要な,正常ストックの比 率′が貯蓄の比率5より遥かに大きいという条件について述べている。第四の 42)(砂〔∠′リp344

(22)

香川大学経済学部 研究年報 23 ー22− ノウ∫、T 部分では,不安定性よりも保証率が高すぎることの方が問題だということや, 後者の場合の,二つの救済法等について述べている。第五の部分では,全体に ついての感想や,論文′を最終的に修正する時の注意事項等について述べている。 これに対してハロッドからほ,約2箇月後に,短い手紙が書かれている。そこ では,ケインズのコメントに従って,最終的な療稿に.大幅な修正を施したこと を手短に報告している。 ケインズほ先ず,保証率の存在について疑問を述べている。ケインズは直覚 によって,/、ロッドの結論ほ−・般的にほ真実であり得ず,ただ特殊な諸条件の もとにおいてのみ真実であり得ると考えた。そして/\ロッドの結論のために必 要な仮定を見出そうと努めて釆たが,ハロッゝドからの直前の手紙で,何が問題 であるのかということが分かったと言ってこいる。それ杜不安定性の成立のた めには,先ず保証率そのものが存在することが必要たということである。そし て,保証率の存在可儲性については次のように述べる。「一・般にほ保証率は存在 しない。そして,保証率が可能であるためにほ,特殊な諸条件が必要とされる。 貴方の要求を満たすために,保証された率を超える率のため必要であるとして 私が確立しようと努めて釆た諸条件は,実のところ,いやしくも保証率が存在 するためには必要であるところの,その諸条件である。」43)このように,不安定 性が成立するためには先ず保証率が存在しなければならないが,そのための諸 条件というのほ,不安定性が成立するための諸条件とも一・致するということで ある。 ここでケインズは,彼がこの前の手紙で示した数億例について,この間題を 考える。そこでは,貯蓄は所得の1/10という−・定の比率であり,一年の所得に 対する正常ストックの比率は1/10とか1/11または,1/9という数値を示して いた。/、ロッドは,この正常ストックの比率は非現実的であると批判したが, ケインズは,耐久財の無い社.会においては,この数量的な仮定は全くもっとも らしいものであるとしている。たしかにこの点についてほ,ケインズの言う通 りである。しかし,他方,この耐久財の無い社会の想定そのものが非現実的で あることを,忘れてはならないと思う。ところでケインズは,この数値例と関 43)(妙df,p.346

(23)

達して次のように貰う。「私が指摘すべきであったことはノ,問題の諸仮定で以て, どんな成長率も保証されないということである。あらゆる成長率で以て,貯蓄 は過度である。」44)上述の貯蓄わ比率をSとし,正常ストックの比率をgとする と,保証(成長)率Gぴほ5/′となる。上で述べたケインズの数値例でほ,保証

率ほそれぞれ,1,11および09である。すなわち,100%,110%および90%

である。このような高い年当たりの成長率は,到底実現出来ない。そこで,あ らゆる現実的な成長率ほ保証率に達しないが,それは貯蓄の比率が高過ぎるか らだということである。 しかし,私見によれば,現実の社会でほ耐久財が存在し;それを考慮に入れ れば,正常なストックの比率ほ,、ハロッドが当時のイギリスについて示したよ うに,4とか5という備になるであろう。そこで,5=1/10,′=4または5と すれば,5/≠=0.025またほ002となる。すなわち保証率は,2‖5パ1−セントま たは2/く・−セントとなり,現実に大いに達成し維持することが可能な値となる。 ところでケインズほ,第二番目の問題として,保証率が存在するための条件 について論じているのであるが,まずここで関係する三つの変数について述べ ている。すなわち,「(i)日々dailyの所得の所与の増分をもたらすために,正 常の状態下で必要とされる追加資本の畳,(ii)貯蓄される日々の所得の比率, GiD 幾何的成長率が形成される間隔の長さ。_j45〉ここで特徴的なことは,所得の 大きさが1日単位で考えられていることと,6iカで,成長率を計算する基礎とな る時間間隔の長さを重視していることである。 ケインズは先ず,第十・の変数から詳しく説明する。Cで資本の畳を表し(こ こではCほ資本係数ではないことに注意),またyで日々の所得の額を表す。

そして△C=g△yとするが,この場合△Cほ日々の所得の増大畳に適切な

資本の増大(投資)畳である。ケインズは,この場合関連のある比率は△C/△ yであってC/yではないことを強調する。 第二の変数についてほ,ぶ・yを所得yに対応する日々の貯蓄の額とする。 また平均貯蓄性向と限界貯蓄性向との関係については,今回ほ次のように述べ 44)伽(∠′,p346 45)(妙cれp346

(24)

香川大学経済学部 研究年報 23 ノ17♪、J −24− る。「私ほ,限界性向でなく平均性向が適切であるということで貴方に同意する。

yからy+△yへの変化に対応する.sの可能な変化について思い悩む価値ほ

ない。」46〉ここでは一・応,ケインズがハロッドの考え方に歩み寄っていることが 分かる。 第三の変数については,先ず次のように.述べている。「企業家達の諸決意の新 しい一風と次の一・絶との間に経過する間隔を別日としよう。すなわち,我々 は,計画委員会またほ重役会が∽日ごとに会い,またそれらの椚日の間に所 得と産出高ほ不変の水準にあると想定する。」47)なおケインズは,この例の適 切な値は,生産の期間に依存するように思うと言っている。 ケインズはこのような前置きをした上で,保証率の存在の条件についてこ述べ ている。 「今,もしs・∽>Jであれば,保証率は存在しない。 (i) もし′S・研<才であれば,−ヤつの確定した保証率;すなわち△y/y=∽・ s/fが存在する。 (ii)」48) ケインズほこれら二つの場合を,それぞれケース(i),ケ1−・ス(ii)と呼んでいる。 ところでこの場合,記号法が今■までと変わっていることに.注意すべきである。 今までは,所得yのようなフローの概念を測る期間を確定していなかった。と ころがここでは,yは日々の所得,すなわち1日あたりの所得というように, 基礎的な期間が1日である。そして,前のように期間を確定していない時の s>才という条件は,ここでほS・∽>≠と表されている。このことについてケ インズは特別な説明をしていないが,前後の関係から次のような事であると考 えられる。 s・∽.>′を変形すると,椚>0であるのでS>g/研となる。この場合,√Sも ′も1日という確定した期間について測られており,一応確定した値である。・S や′を確定した期間で測ってない時には,その期間すなわち時間の単位が大き くなる時,Sは不変だが′は小さくなる。ここでは,そのような同じ効果を,S 6 6 4 7− 4 3 4 3 P P p p ・▲・ム ・◆ム ・TL /し ′レ ′し 亘〓∴. 6 7 8 4 4 4

(25)

やfの億を不変にしておいて,∽の値の変化で表そうとしていると考えられ る。そこで,5や≠の値は1日という期間について測り,時間の単位を表す∽ が大きくなると,前のgに当たる(ここでの)≠/研が小さくなるということで ある。 このように.理解すると,5・桝:>才ということほ,ケインズの前の方の手紙の 記号でほS>∠ということであり,保証率の均衡が安定な場合の条件と同じで ある。また,S・研<fほ,保証率の均衡が不安定な場合の条件と同じである。 そして,ケインズが,5・研>gの時には保証率が存在しないと言っているのほ,

次のような意味であると考えられる。すなわちこの場合には,保証率の僧は

S・桝/才となり,それは100パーセントを超えることになる。ところが,これは, 達成し維持することが可能な率ではないという意味で,このような保証率は存 在しないというのである。これに対して5・∽<fの場合にほ,S・研/≠は100 パー・セント以下となり,さらにはS・研がfより造かに小さい時には,,S・∽/≠ の率の成長が実現され維持されることが大いに ̄可能となる。そこで,その意味 で,保証率が存在すると言うのである。 そして,これらの事から分かるように,またケインズも言っているように, 保証率の存在の条件とその不安定性の条件は一・致するのである。そこでケイン ズほ,次のように結論する。「貴方はもっばらケース(ii)を取り扱っている。そし て前に言ったように,√S・∽<=・ま,貴方の結論を正当化するために必要な仮定 である。……貴方が,これが貴方の基礎的な仮定であると説明するや否や,凡

てほすらすらと運ぶ。以下に与えられる諸理由によって,貴方が実際に才ほ

S・研よりも遊かに大きいということを必要とするということを除いて。」49) 第三の部分は,保証率が存在するための条件,それは同時に不安定性が生ず るための条件でもあるのだが,それが満たされる可能性いかんについて論じて いる。 ケインズの考えは最初,現実には,保証率が存在し不安定性が生ずるという ケース(ii)の場合が妥当すると考えたが,保証率が存在せず不安定性も存在しな いケース(i)の場合も考察する価値があり,現実にケ・−ス(i)に近い場合が生ずる 49)(砂∠れp347

(26)

香川大学経済学部 研究年報 23 Jウメ.フ −26− 可能性もあるというものである。すなわち次のように言う。「現実の経験がケ・− ス(ii)に−㌧致すると安全に仮定し得るかどうか,またほケ・−・ス(i)もまた研究に催 するかどうかという問題が残っている。最初に私は,現実の経験は貴方のケー ス(ii)に−・致するということを喜んで認め,また私は実際にはケ・−ス(i)を喜んで 無視した。しかしよく考えると,もし意見∽哀邦dが明噺であるべきなら,双方 の場合を考察しなければならず,またケ、−ス(i)に対する近似は不可能ではない と感じる。」50〉 そこでケインズほ,先ず∽の値の問題から取り上げる。そして,桝を365日 すなわち1年として取り扱おうとする。その理由ほ,「1年は産業に対し,産出 高のその現存規模の結果を評価し,もし必要ならば,それらを修正するのに十 分な長さを与えるだろう」51)ということである。そこで刑は1年であると仮定 すると,オも日々の所得でなくて年々の所得によって定義し,ケース(i)やケース (ii)の式から別を消すことが出来る。しかし,このような特別な手続きを踏んだ のは,始めから∽を考慮しなければ時間の次元を見失い,次元に混乱を生ずる と考えたのである。このようにしてケース(i)ほ1S>才となり,ケース(ii)はS<:g となる。 次にfを平均概念として考えるか,限界概念として考えるかの違いによって, ケース(i)が妥当するかそれともケー・ス(ii)が妥当するかというような問題につい て論じている。先ず,時間の単位を一年とした上で,、g=C/y(平均概念)と 考えた時にほ,ケ・−ス(i)に近似するようなことほ,現代の世界では極度にあり そうにないだろうとしている。というのほ,C/yは4く、、らし?の程度だし,・Sは 1/5から1/10く・√らいのようだからというのである。ところがJ=△C/△y (限界概念)とすると,結論ほそれはどはっきりしないと言う。′が5よりも小 さくなるか,それに近い状態までょが小さいという可能性があるからである。こ の時には,不安定性が生ずるための条件は満たされなくなる。52) 続いて,この問題と人口成長の状態との関係について,次のように述べる。 「もし成長が人口成長を表し生活水準を表さないとすれば,実にC/yと△ 50)(妙d′,p347 51)(砂(れp347 52)不安定性の条件でほ,とくに」の限界概念が関係する。

参照

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