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government has had difficulties in meeting various donor procedures, and sustained capacity development has not yet been realized. Since its participa

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〔事例研究〕

Case Study

カンボジアにおける援助協調と援助効果向上に係る

取り組みと課題

Efforts and Issues to Improve Aid Coordination

and Effectiveness in Cambodia

小西 洋子 *

Yoko KONISHI

要  約 カンボジアは 1970 年代のクメール・ルージュ政権による虐殺やその後の内戦の影響を 受け、いまだに復興開発途上の最貧国であり、援助が国家の発展および人間開発と貧困 削減に果たす役割は大きい。しかし、これまで多くのドナーや NGO は支援を独自に展 開し、受入側の政府は支援に対するオーナーシップが低く、各ドナーの異なる手続きに より事務負担に追われ、また支援が必ずしも長期的な能力開発に結び付かないといった 問題を抱えてきた。カンボジアはいち早く OECD/DAC の援助協調の取り組みに参加し、 援助協調のためのローマ宣言や援助効果向上のためのパリ宣言といったグローバルなコ ミットメントに合わせ、援助の動向も受入政府のオーナーシップを重視した援助対話や 能力・システム開発を重視する方向に徐々に転換してきている。また、2006 年には、 新たな 5 カ年開発計画の策定、開発協力マネジメントの戦略的枠組みと新たな援助協調 メカニズムを通じてミレニアム開発目標達成に向けた貧困削減を目指す体制づくりを整 えてきている。本稿では、近年のカンボジアにおける援助協調がどのように進展したか、 また、今後のさらなる援助協調、ひいては援助効果向上のために重要な課題と援助アプ ローチを検討する。特に重要な点として、開発計画と財政のリンク、政策からシステム へのアラインメントへの支援努力、援助窓口の明確化と省庁間の連携、能力開発と公務 員制度改革の遂行、成果主義と共同責任体制の深化、本部から現地への権限委譲と援助 協調に係るインセンティブの見直しが考えられる。 ABSTRACT

Cambodia still remains one of the Least Developing Countries (LDCs) due to its legacy of genocide during the Pol Pot regime and the following civil war that lasted until the 1990s. In this context, external assistance from the interna-tional community and NGOs has been playing a significant role in improving human development and reducing poverty in Cambodia. However, those sup-ports have been subject for donor trends with low government ownership, the

* UNDPアフガニスタン事務所プログラム・オフィサー Programme Officer, UNDP Afghanistan

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はじめに

カンボジアは人間開発指数では 177 カ国中 130 位(UNDP[2005])、年間 1 人当たりの GDP が 441 ド ル( I M F[ 2 0 0 6 a ])の 、 最 貧 国 ( L e a s t Developing Countries: LDC)である。1994 年から 2002年の平均成長率は 6.7%、2005 年においては 良天候による農作物生産増、観光業や縫製産業 の伸びもあり、実質成長率 13.4% という最貧国 と し て は 驚 異 的 な 成 長 を 遂 げ て い る ( I M F [2006b])ものの、いまだ貧困ラインを下回る貧 困層の割合は全国民の 35% を占めている注 1) カンボジアは 1992 年から 2005 年までの間に 6 2 6 7億 円 の 支 援 を 受 け て お り ( C D C / C R D B [2006])、ODA 支援額としても 2004 年 12 月の支 援国会合では 504 億円、2006 年 3 月の支援国会合 では 601 億円が供与表明されている。カンボジア の近年の国内歳入は 2004 年に 551 億円、2005 年 は約 629 億円であり(CDC/CRDB [2006])、国家 予算とほぼ同規模の支援が表明されていることに なる注 2 )。1 人当たりの年間 ODA 受け取り額が 37.9ドル、GDP に占める ODA の割合は 12% と ODA依存率が高い国である(UNDP [2005])。 また、カンボジアの特殊性として、1975 ∼ 79 年のポルポト政権(クメール・ルージュ)時代 に知識層を中心とした虐殺が繰り広げられ、国 民の 1 割に当たる 100 万人以上の人命が失われ、 生命の危険のある知識層の多くが海外に逃亡し たため、国内に十分な教育を受けた者が少ない ことが挙げられる。クメール・ルージュ時代に は銀行や学校などが閉鎖され、多くの国家機関 および制度が破壊された。内戦はその後 1990 年 代末まで続いたが、戦争の後遺症は、人々の精 神の中にも、教育・知識の発展にも大きな傷跡 を残し、行政運営と行政制度の確立においても 十分な行政能力やスキルを持った人材が育つま で、まだ時間を要するといわれている注 3) 1980年代のベトナムの支援による社会主義政 権時代は、難民支援を中心に NGO による国境地 帯での支援は行われていたものの、カンボジア が国際社会に開かれたのは 1991 年のパリ和平協 government has had difficulties in meeting various donor procedures, and

sus-tained capacity development has not yet been realized. Since its participation of OECD/DAC exercise for harmonization, the Royal Government of Cambodia (RGC) and its development partners have been making efforts for harmoniza-tion and alignment of development cooperaharmoniza-tion. With the formulaharmoniza-tion of the National Strategic Development Strategy 2006-2010, the Strategic Framework for Development Cooperation Management, and the newly restructured aid coordination dialogue mechanism, the RGC aims to achieve its own poverty reduction and Cambodian Millennium Development Goals more effectively.

This paper examines the background of that effort, and discusses issues impacting improved aid coordination and aid effectiveness in Cambodia. There are several challenges to meeting such objectives in Cambodia; these include linking planning to budgeting processes, shifting the support from policy align-ment to system alignalign-ment (including supporting credible public financial man-agement system), streamlining the aid coordination window and installing an effective institutional arrangement with key ministries, supporting enhanced and coordinated capacity development and civil service reform, promoting man-aging for results and mutual accountability, delegating authority from the donor HQ to the field offices and reviewing internal incentive frameworks for aid coordination, and finally, creating behavior and an approach that considers the host country’s culture and effective aid dialogue.

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定後である。このときに多くの国際機関および 二国間援助ドナーがカンボジアに対して支援を 本格的に始動することとなった。

I

援助協調は必要か

カンボジア政府とドナーの援助対話のメカニ ズムとして緊急復興支援会合が 1992 年に東京で 開 か れ た の を 皮 切 り に 、 そ の 後 、 支 援 国 (Consultative Group: CG)会合がほぼ毎年開催さ れるようになる。会合が進むにつれて CG 会合 そのものが、支援国が政府に対する支援を表明 するのみならず、開発の効果的な達成のための 各種改革の実施促進を強く要求する場としての 性格を帯びてくる。他方、年次 CG 会合ですべ ての問題を検討・モニタリングすることは難し いとの認識が強まり、よりセクターレベルでの 密接なモニタリングや協議が必要であるとして、 1999年第 3 回 CG 会合において特定セクターの 政策と実施をモニターする 5 つのワーキング・ グループが発足した注 4 )。しかし、これらのグ ループの多くはドナー主導であり、カンボジア 政府側のオーナーシップ、コミットメントの遂 行や改革定着のために必要な能力開発・制度強 化という側面は十分ではなかった注 5) 同時に、カンボジアでの開発が緊急復興支援 から徐々に中長期的な国づくり・人づくりと いった開発側面に向かうにつれて、多くのド ナーによる支援のあり方が問題視されるように なってきた。ドナー側の援助の潮流において貧 困削減が最重点課題となるにつれ、貧困国とし てのカンボジアは、多くの国および国際機関に よる支援重点国となり、また、ASEAN の中でも 後発国として ASEAN 加盟国を含むアジア諸国 からの支援が展開されるようになった。現在、 カンボジアで活動するドナーは、二国間ドナー 23機関、国際機関 17 機関、NGO の数も 1600 以 上存在するといわれている。こうした多くのド ナーと NGO による支援の展開にともない、援助 の重複、政府側の受入負担、ドナー主導の体制 が長期的にカンボジア政府の国づくりと開発を サポートするにあたり支援を有効に作用させる ものではないという認識が出てきた。 一方、カンボジア政府も、経済協力開発機構 開発援助委員会(OECD/DAC)において援助の あり方の見直しへの協議への参加などを通じて、 援助調整の問題認識を持つようになる。同認識 を最初に明確に提示したのは、2000 年にパリで 開かれた第 4 回 CG 会合のカンボジア政府ペー パー「新しいパートナーシップ・パラダイム (A New Development Cooperation Partnership Paradigm for Cambodia)」である。同ペーパーで は、これまでの援助がドナー主導で、開発マネジ メントにおける受入国のオーナーシップが低い 形で行われ、各ドナーの異なる手続きによる政府 の事務負担が重く、ドナー側の支援金額の情報が 政府に適切に届かないために政府側の予算編成 などに必要な情報が欠如し、計画が効果的に実行 できないといった問題を鋭く指摘している。 当時は世界的にも 1990 年代からの援助疲れや アフリカでの貧困停滞を背景に援助のあり方の 見直しや議論が進んでおり、OECD/DAC におい て援助効果を高めるためにドナー側の援助手続 き の 問 題 な ど 援 助 調 和 化 の た め の 討 議 が 急速に注目を集めるようになった時期である。 OECD/DACでは、パートナー国(被援助国)を メンバーに含めた作業部会を発足し、援助協調 のグッド・プラクティス・ペーパーの作成が進 められた。カンボジアは調和化作業のパイロット 国としてドナー・プラクティスのタスクフォース・ メンバーに参加している注 6 )。OECD/DAC は同 ペーパーの準備作業として国別調査(Hubbard, M.[2002])を 2002 年に数カ国で行ったが、カ ンボジアにおいては政府・ドナー双方は表− 1 のような援助協調における課題を指摘した。 同調査は、初めてカンボジアにおいて包括的 に 援 助 協 調 に つ い て 調 査 し た も の で あ る が 、 表− 1 に挙げられた課題は多かれ少なかれ問題 認識として現在まで続いている一方、関係者の 意識の高まりや改革努力も見られる。こうした

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調和化への動きが実際にカンボジアで効果的に 展開されてきたのか、またどのような動きの変 化とさらなる課題があるのか概観してみたい。

II

国家開発計画の整合性

カンボジアではこれまで国家開発計画として 「第 1 次社会経済開発計画 1996-2000 年」(Socio-economic Development Plan: SEDP)を作成してお り、その後、アジア開発銀行(Asian Develop-ment Bank: ADB)の支援を受けて計画省主導で 「第 2 次社会経済開発計画 2001-2005 年」(Second Socio-economic Development Plan: SEDP II)を作 成中であった。しかし、同時期に世界銀行(以 下、世銀)側は各国における開発支援政策とし て 包 括 的 開 発 枠 組 み ( C o m p r e h e n s i v e Development Framework: CDF)のアプローチを 採択し、各支援対象国において貧困削減戦略 ペーパー(Poverty Reduction Strategy Paper: PRSP) を要請し、貧困削減に焦点を当てた「カンボジ ア国家貧困削減戦略(National Poverty Reduction Strategy: NPRS)2003-2005 年」の作成が経済財 務省を中心に進められた。さらに、国連側でも ミレニアム宣言の採択に合わせてミレニアム開 発目標の現地化(ローカライゼーション)を進 めており、カンボジアはミレニアム・プロジェ クトのパイロット国としてカンボジア版ミレニ アム開発目標(Cambodian Millennium

Develop-ment Goals: CMDGs)の策定が 2003 年に進めら れた。しかし、これらの取り組みはそれぞれの ドナー機関において貧困削減がトップアジェン ダとなり、支援供与のためのコンディショナリ ティとして開発計画の作成そのものが目的とな り、開発計画や目標自体の相互の関連性や省 庁・ドナー間の連携に十分な注意が払われな かった。そのため、ドナーは数多くのミッショ ンや各自のペーパー作成を行い、受入国政府側 はそれらの対応や調整に追われることになった (JICA 国際協力総合研修所[2001])。カンボジ アの例はドナー間の貧困削減アジェンダや開発 計画作成支援における主導力争いを典型的に表 したものとして今や有名であるが、現地におい ても担当援助機関間の関係はしばらく緊張状態 にあった。 一方で、2003 年の総選挙後、第一与党となっ た人民党(Cambodia People's Party: CPP)は過半 数の議席を確保したものの、当初の政権発足に 必要な 3 分の 2 の議席に足らず、連立政権を発足 するための各種の駆け引きにあけくれ、フンシ ンペック党との連立新政権が発足するまで 1 年 間の空白期間ができた。また、この空白期間中、 現地レベルでは多くの改革や事業が政情により 大きく進まないこともあり、援助機関は支援の 見直しやドナー間での援助協議を進め出した。 特に世銀、ADB、DFID(英国国際開発省)は上 記の複数の開発計画や緊張した支援関係を修復 表− 1 カンボジアにおける援助協調の課題(2002 年) (出典)Hubbard, M. [2002]より筆者作成. 問題点 給与補填に関する混乱,ドナーによる援助データや調査の共有の低さ,ドナー側の制 度・手続きの複雑さ,政府の外につくられるプロジェクト実施ユニットによる政府への 影響(人材を奪い政府組織を弱める),高価な外国人専門家への多くの出費と本来の活 動費に対する支出の低さ,ドナー主導 ドナーによる影響力やリーダーシップの競争,情報や計画共有の欠如,ドナー手続き・ 競争の改革への影響(政府のシステムをバイパス,本来の改革や効率性を妨げる) 公務員給与の低さ,政府職員の自信と能力の低さ,政府による財政管理の弱さ 政府―ドナー間の問題 ドナー間の問題 問題の背景

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する意味でも、次の支援政策策定がほぼ同時期 になることもあり、対カンボジア支援分析を共 同して行うこととした。その後、国連も UNDAF (国連開発支援枠組み)の策定にあたり、同イニ シ ア テ ィ ブ に 参 加 し 、 こ れ は 四 者 協 議 体 制 (Quadripartite Initiative)として定着していく。 約 1 年の空白期間を経て樹立したフンセン政 権(人民党−フンシンペック党連立政権)は 2004年 7 月 に 四 辺 形 戦 略 ( The Rectangular Strategy)と呼ばれる経済戦略を発表した(RGC [2004])。同戦略は連立政権発足のための政治公 約注 7)を実現するための戦略と位置づけられ、戦 略目標として経済成長、雇用創出、社会公正の 確保、公的部門の効率化、天然資源と文化遺産 の保護のために、公的機関の能力構築、グッド ガバナンスの強化、経済インフラの近代化を掲 げている。同戦略はカンボジアの開発課題を広 くとらえたものとしてドナーも支持しているが、 総花的なビジョンにとどまっており、どのよう にこうした開発課題に取り組むのか具体的な方 策は提示していない。 この戦略を具体化したものが「国家戦略開発 計画(National Strategic Development Plan: NSDP) 2006-2010年」である。しかし、NSDP は政権発 足後、スムーズに策定されたのではなく、上記 の援助の重複や政府のオーナーシップの低さを 反省して、多くの協議を重ねて時間をかけてつ くられた点が、これまでとの大きな違いである。 NSDP策定準備作業にあたっては、ローマ宣言 にならった形で政府を主体として包括的な“1 つの”開発計画を“ドナーが協同して”支援す る旨をうたったカンボジア・パートナーシップ 宣言が署名された。当初、署名に慎重なドナー もいたが、説得や協議が重ねられ、結果的に 12 のドナーがサインしている注 8)。政府・ドナーと も、策定にあたって上記のカンボジアミレニア ム開発目標、SEDP II、NPRS などに準拠して整 合性を持たせ、包括的な戦略計画となるよう協 議を重ねてきた。NSDP に関しては、まだ総花 的で具体的方策や詳細に欠けるとの批判もある が、これまでドナーから押し付けられがちで乱 立していた開発計画や目標が 1 つの国家開発計 画・目標となったこと、またフンセン政権が自 身の政治大綱との整合性を強く図り、各セク ターにおける省庁が計画策定に参加し(十分と いえないまでも)協議が重ねられたことから、 政権の同開発計画に対するオーナーシップと責 任感が高まった。NSDP では各セクターや地方 レベルの計画の詳細を順次作成し、あるいは以 前に策定されているものについては整合性を図 り、それらを次回 2007 年 3 月の NSDP レビュー にフィードバックするものとしている。さらに、 N S D Pは 3 カ 年 公 的 投 資 プ ロ グ ラ ム ( P u b l i c Investment Program: PIP)や中期支出枠組み (Medium Term Expenditure Framework: MTEF)の 策定を通じて具体化されることとなっている。 2006年の CG 会合においては、PIP 2006-2008 年 が提示されたが、2006 年半ばより NSDP の年次 見直しにより、NSDP、MTEF、PIP と年次予算 の整合性を図るとしている(RGC[2006])。 四辺形戦略および NSDP では、政府は異なる 開発パートナー(ドナー、民間部門、市民社会) とのパートナーシップ強化についても触れてい る注 9)。民間部門では、すでに立ち上げられた民 間セクターフォーラムの強化、NGO や組合活動 の奨励、NGO 法の策定と実施を関連機関を通じ て協議するとしている。また、カンボジア政府 は貧困削減とカンボジアのミレニアム開発目標 を達成するため、援助効果向上に有効なアプ ローチをとることが政府と開発パートナーに とっての課題であるとしている。さらに、カン ボジア政府はカンボジアが掲げる開発目標に 沿 っ た 支 援 を ド ナ ー は 行 う べ き で あ り 、 OECD/DACなどで合意された原則やガイドライ ンに基づいて援助協調を進めてほしいと要求し ている。また、援助プログラムの策定にあたっ て、援助吸収能力の限られた政府の事務的負担 を減らす意味でも、ODA をより効果的に集中さ せるためにもプログラム型援助あるいはセク ター型援助を考慮して行ってほしいとしている。

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こうした異なるパートナーとの対話や政府の開 発計画に対する支援のアラインメント、プログ ラム型援助などはパリ宣言の原則とも重なるも のである。

III

援助協調を進める枠組み・政策づ

くり

カンボジアにおける援助協調を進める枠組み づくりでは、前記の表− 1 にある問題認識から、 政府と複数のドナーは、2002 年 6 月の CG 会合に お い て 「 パ ー ト ナ ー シ ッ プ ・ ワ ー キ ン グ ・ グ ル ー プ 」注 1 0 )を 発 足 さ せ た 。同 グ ル ー プ は OECD/DACの作業を補佐するとともに、カンボ ジアにおける援助協調の動向を分析し改善につ なげるため、①カンボジアの開発パートナーの 能力構築の実情注 11)、②開発協力マネジメントの 実情と教訓注 1 2 )、③開発協力のためのオペレー ション・ガイドライン策定注 13)、という 3 つの調 査・作業を行った。 援助協調の協議は時として 話し合いや印象論に走ってしまうが、こうした 調査は実際にどのような援助の取り組みや努力 が行われているかを提示し、次のステップを検 討していくための文書として重要な役割を果た した。 また、援助協調のためのローマ宣言採択後、 ドナー間での援助協調に対する意識や取り組み が高まり、現地レベルでも関係者を集めた援助 協調ワークショップが 2004 年 1 月から開かれる ようになった。第 1 回目のワークショップでは、 援助協調に関するドナーの関心や意識は低く、 なぜ援助協調ワークショップが必要なのかとい う議論も強かった。しかし以後のワークショッ プでは、ローマ宣言に対する現地パートナーの 理解を深めるとともに同宣言に基づく援助協調 行動計画の作成が進められた。この調和化ワー クショップの準備も当初は世銀などドナーが主 導していたが、近年では政府(CDC〈Council for Development of Cambodia〉/CRDB〈Cambodian Rehabilitation and Development Board〉= カンボジ

ア開発評議会/カンボジア復興開発理事会)側が 主導して進められている。 さらに、政府はこれまでのワーキング・グ ループ体制の見直しを図り、2004 年 9 月の CG 会合事前会合において、フンセン首相は同ワー キング・グループの体制をより政府のオーナー シップとリーダーシップを高めた形に再編成す ることを通知し、17 のテクニカル・ワーキング・ グループ(Technical Working Group: TWG)が誕 生した注 1 4 )。さらに、政府とドナーはこれらの

TWGの調整と TWG 内で解決できない問題など に 対 処 す る た め 、 政 府 ・ ド ナ ー 調 整 委 員 会 (Government-Donor Coordination Committee: GDCC)を設置し、この調整委員会の事務局を CDCにおける CRDB が務めることとなった。 各 TWG はそれぞれの TOR(実施要領)、行動 計画(アクション・プラン)に基づいて各種の 改革実行とモニタリング、支援に係る情報共有 や調整、重要なセクターにおける政策の策定・ 実施の支援や協議を行っている。また、全体と しての改革実施コミットメントを共同モニタリ ング指標(Joint Monitoring Indicators: JMIs)とし て CG 会合で毎年確定し、四半期ごと注 15)に開か れる GDCC において、その進捗をモニターする こととなっている。 2 0 0 6年 3 月 の C G 会 合 に お い て は 「 N S D P 2006-2010年」が提出されたことにより、同 NSDPモニタリング指標が 2010 年の目標値とな り、今後、同 NSDP モニタリング指標と共同モ ニタリング指標に関連を持たせ、より結果重視 の指標モニタリングを行うこととしている。同 時に、政府側はドナーに対して、こうした目標 が達成できるように NSDP の優先開発課題に 沿った支援を行うよう求めている。 同 CG 会合においては「開発協力マネジメン トのための戦略的枠組み(Strategic Framework for Development Cooperation)」も提示され、効果 的な NSDP の実施とカンボジア版ミレニアム開 発目標の達成のため、援助効果を向上させるこ とをうたっている。具体的には、援助窓口の明

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確化、NSDP への支援の整合性確保、政府の オーナーシップの尊重、ばらついたプロジェク ト型支援からプログラム型援助へのシフト、必 要な政策・プログラム形成支援、プログラムお よびプロジェクトにおいて能力開発を重視する こと、カンボジア政府の制度・システムおよび 人材を有効活用すること、カンボジア政府の予 算編成のために援助の予測性を高めること、手 続きの調和化・簡素化、カンボジア政府の制 度・システム利用のために各種の改革プログラ ムを実施すること、援助調整における政府側の リーダーシップの強化等である。 これらを具体化するためにつくられたのが援 助協調行動計画である。2005 年 3 月のパリ宣言 採択後には、政府は援助協調行動計画の見直し を 図 り 、 政 府 と ド ナ ー 間 で の 調 和 化 ワ ー ク ショップ、さらに政府内の意識向上とリーダー シップ強化のためのワークショップを開催し、 パリ宣言の 5 つの原則を反映した「援助効果向 上のための行動計画 2006-2010 年」注 16)を採択し た。2006 年現在、同計画に基づいて政府および ドナーは各種の調和化努力を行い、その進捗を GDCC事務局である CDC/CRDB に四半期ごと注 17) に報告している。 パリ宣言はこうした現地での行動計画づくり およびコンセンサスづくりに対して重要な指針 となっている。しかし、すべての現地レベルの 複雑な開発およびガバナンスに係る課題(特に 財政改革、公務員制度改革、司法改革、地方分権 改革、能力開発)などを網羅しているわけでは ないため、カンボジアでは共同モニタリング指 標と行動計画の中に、現地の実情に合わせた必 要な長期的課題を取り込むことで、各種の改革 プログラムが整合性を持ったものとして機能し、 援助協調が意味のあるものとなるといえよう。 TWGと GDCC の枠組みは、全体として政府の オーナーシップ醸成と政府・ドナー間の問題認識 の共有と取り組みを可能にし、モニタリング指 標を設定することで方向性と目的が明確になり、 政府とドナーが協調して支援の効果を高めるた めの協議と実行モニタリングの場として機能す るようになった点で高く評価できる。一方、協 議体制の効率性や効果的な議論ができているか という点では、その TWG の成り立ちやメンバー 構成、個々人の取り組み方、政府や事務局の能 力しだいで、大きく成否が分かれる。いくつか の TWG では協議自体が目的化して指標達成のた めの支援が得られず、取り組みが遅れたり、あ る TWG では政府とドナー間の理解に大きな壁が あり協議が平行線をたどったり、他の TWG では 省庁からのコミットメントの低さから議論が進 まなかったりして協議疲れの側面も見られる (CRDB[2006])。また、ある TWG はその必要 性を問題視されるケースがあったが、担当省庁 やドナーのマンデートから、むやみに解体する ことは難しい。全体および個々人が建設的な議 論と支援ができる体制をつくる心構えと環境を 整えていくことが重要である。

IV

援助協調と援助効果向上のための

課題

以上の近年の活発な動きが援助効果の向上お よび開発効果につながると思われるが、実際は 大きな課題がいくつもある。それらを以下に概 括してみる。 1. 開発計画と財政のリンク 現在、カンボジアでは 3 カ年の PIP の作成およ び年次見直しを計画省が中心となって実施して いる。しかし、これまでの投資計画は各省庁の 希望案件リストにすぎず、NSDP の目標達成に 向けた案件形成や案件に係るコストが十分に吟 味 さ れ て い な い と い う 批 判 が あ る 。 ま た 、 MTEFも保健や教育セクターで策定の試みが (ドナー主導で)なされたものの、実際の予算配 分は異なり、また政府全体の MTEF がないまま である。そのため、NSDP の効果的実施、ODA と NSDP の整合性リンクを図るためには実質性 のある PIP と予算へのリンク、また中長期的に

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は実効性の伴った MTEF の策定が必要であり、 そのために政府・ドナーとも関連政府機関(経 済財務省、計画省、CDC/CRDB、国家最高経済 審議会)への協調した支援を検討中である。 一方、現在まとめられている NSDP の年次報 告書(2006 年)では、財政・資源ニーズをマク ロにとらえ、2006 ∼ 2010 年の 5 年間に 3500 億円 (年間 700 億円)の資金が必要とされており、う ち 2500 億円をドナーからの ODA 支援として試 算している。政府側はドナーの資金が政府予算 の中で包括的にとらえられないことを懸念して おり、また、政府への直接財政支援を増やした いという意味からも、今後、政府予算配分など の情報を開示するとともに、政府予算の NSDP へのアラインメントを明確にするとしている。 こうした動きが加速することで、計画、財政と ODAのリンクがより明確になり、援助協調が意 味あるものとなろう。 2. 政策からシステムのアラインメントへ カンボジアは紛争の影響で貧困度は高く、政 府のキャパシティやリーダーシップおよびシス テムがまだ十全とはいえない。そのため援助 国・機関のこれまでの支援は、ドナー主導で支 援の重複や競争が散見された。受入側のカンボ ジア政府は、各種のドナー手続きに対応するの に精一杯であり、またどのような援助がされて いるのか把握できなかった。しかしながら、援 助協調に対する政府側の強い要望とそれを支え る世界レベルでの援助協調の動きにより、そう した状況が改善する兆し(少なくとも関係者の 意識向上と行動の変化)はあるといえよう。上 述の国家開発計画策定の過程に見られるように、 ドナーの都合による政府側への負担と整合性の 問題を反省し、NSDP 策定においては、ドナー 側は協力調整への努力をし、政府側もオーナー シップを発揮する努力を行った。また、ドナー 側においては対カンボジア援助戦略の共同作成 作業(四者共同イニシアティブ: Quadripartite Initiative)などの取り組み努力がなされてきた。 NSDPに対する援助戦略および支援案件選定に ついては、今後も効果的な戦略の実施の観点か ら援助協調が進む見込みである。 他方、政府のシステムや手続きへのアラインメ ントについてはまだ時間がかかると思われる注18) そもそもドナーが採択できる、あるいは合わせ られる政府本来のシステムや手続きが確立して いないという現状がある。そのため、まずは、 ドナー間で協調した手続きを形成する試み注 1 9 ) が少しずつであるが行われている。こうしたド ナー協調によるシステムや手続きは政府のシス テム強化にもフィードバックすることが意図さ れているのは援助効果向上の点から重要な取り 組みといえよう。 さらに、世銀および ADB による援助調和手続 き(Standard Operation Procedures)の試み、パー トナーシップと調和化ワーキング・グループに よるオペレーション・ガイドラインづくりなど、 徐々にではあるが、政府間およびドナー間にお ける援助手続きの調和化の努力が進んでいる。 ただし、実際には、現在実施中の公共財政管理 計画が機能するまでは、政府側のシステムを利 用することは難しいため、公共財政管理強化の ための支援が重要となる。 3. 援助窓口の明確化と省庁間の連携 援助の効率化・手続きの統一化においては、 援助手続き窓口を一本化することが効果的であ ると考えられている注 20)が、カンボジアにおい ては、核となる省庁が多く存在(計画省、経済 財務省、CDC/CRDB、外務国際協力省)し、ド ナーごとに支援枠組みの取り決めや援助支援協 議をしている機関が異なっている。この状況に 鑑みて、カンボジア政府は援助の手続き窓口を CDC/CRDBとし、関連省庁の役割と連携体制を 明 記 し た 政 策 文 書 ( Strategic Framework for Development Cooperation Management)を策定し、 2006年 1 月に同文書が閣僚評議会(Council of Ministers)を通過した。しかし、同政策文書は、 必ずしも省庁の役割と連携枠組み・体制が明確

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でないという指摘がドナーよりされており、さ らに、こうした援助調整を十分に行うには政府 側の能力およびリーダーシップが低いという問 題意識を政府・ドナーとも持っている。そのた め、窓口となる CDC/CRDB および関連省庁が援 助マネジメントを効果的に運営できるよう能力 開発を行うための国家プログラム注 21)が策定さ れ 、 現 在 、 U N D P ( 国 連 開 発 計 画 )、 N Z A I D ( ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 国 際 開 発 機 構 )、 D F I D 、 CIDA(カナダ国際開発庁)、AusAID(オースト ラリア国際開発庁)、JICA(国際協力機構)が 協調した支援を行っている。2007 年 1 月には CDC/CRDBが同政策に対応できるよう能力開発 計画が策定されており(CDC/CRDB[2007])、 今後も注視していく必要がある。 4. 能力開発と公務員制度改革の遂行 カンボジアでは、約 800 人の外国人アドバイ ザーが働いているといわれ注 22)、最近では、フン セン首相も公の場で、高級取りの外国人専門家 の存在を非難している。これまでこうした外国 人専門家やアドバイザーが持続的な開発につな がるような能力開発ではなく、ギャップを埋め るための支援を行ってきたとの批判がある注 23) 近 年 、 技 術 協 力 や 能 力 開 発 ( Capacity Deve-lopment)に関する議論が盛んとなっているが、 いわゆる技術協力(Technical Cooperation)に関 する共通理解は十分に形成されていない注 24) 援助効果のための行動計画においては、すべ てのプログラムおよびプロジェクトにおいて キャパシティ・ニーズ・アセスメントを行い、 能力開発戦略を盛り込むことがアクションとし て挙げられている。実施の際には、ドナー側は キャパシティの醸成を念頭に置いた支援を行い、 かつ、なるべくプログラムあるいはセクターレ ベルで、他ドナーと協調してカウンターパート 省庁を支援することが今後は重要になる。その ための協議メカニズムとオーナーシップを尊重 した協議のあり方も組み込んで支援することが 同様に重要である。さらにキャパシティやオー ナーシップが低い状況においては、相手国の政 治経済状況を深く分析し、改革者や変革のカギ となるものを探して支援することを考えるべき である注 25)。プロジェクト・マネジメントにおい ても、パラレルなプロジェクト管理ユニット ( Project Management/Implementation Unit: PMU/PIU)の仕組みを政府のプロジェクト管理 能力を高める形に変えることが望まれる。カン ボジアでは、2006 年のパリ宣言モニタリング調 査時に PMU/PIU に関する議論が本格的に始ま り、10 月の援助向上効果のためのカンボジア宣 言でもパラレルなプロジェクト管理ユニットを つくらないこととしている。現在、援助協調 ワーキング・グループが PIU 戦略(PIU Strategy) の検討を行っており、この動きは世界的にも共 通な課題として注目すべきであろう。 他方、カンボジアの行政パフォーマンスの低 さと汚職の蔓延の背景の 1 つともなっているの が、公務員の給与の低さ注 26)である。現在、ド ナーや NGO によるプロジェクトに関わる公務員 に対する給与補填が日常化しているほか、多く の優秀な人材がドナー機関、NGO、民間セク ターに流出している。高級公務員の給与待遇の 低さ、透明性の低い公務員採用や昇進などもス タッフのモチベーションを下げている。多くの 国では非効率な行政サービスや政策立案・計画 能力の低さが問題となっているが、その背景に はこうした不十分なインセンティブの問題があ るといわれている(Andersen, O.W., T. Lindqvist, and J.Nielsen[2002])。そのため、政府の実施す る公務員給与計画を超える包括的な公務員給 与・採用改革プログラムが重点課題である。ま た、実際にはすでに、給与補填問題はより複雑 になっているため、政府およびドナーが協調し たアプローチが必要となっている注 27)。同時に政 府が歳入向上に向けて努力の仕方を改善しなけ れば、給与上昇のペースは遅くなる注 28)。この点、 カンボジア経済は上向きであるため、政府がコ ミットメントを実行すれば、こうした問題が改 善すると思われる注 29)

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ドナーによる乱れた給与補填が続く現状は、 カンボジア政府に対する長期的な制度強化やイ ンセンティブの点から問題であるため、援助協 調が重要となる。実際、同問題が 2004 年の CG 会合において取り上げられ、2005 年 6 月までに 給与補填のフェーズアウトに向けた戦略を策定 することが共同モニタリング指標となった。同 戦略策定は行政改革テクニカル・ワーキング・グ ループ(Public Administrative Reform TWG)の 議 長 で あ る 行 政 改 革 評 議 会 ( Council for Administrative Reform: CAR) お よ び 世 銀 、 AusAID、DANIDA(デンマーク国際開発庁)、 UNDPなどが中心となって策定のステップを協 議し、給与補填の実情把握とフェーズアウトま での 2 アプローチ(セクターレベルにおける給 与補填のレートの統一化と政府の中で任務評価 制度と重点課題手当てを組み合わせた給与上昇 とフェーズアウト)の提示・合意に至った。実 態の把握や給与問題の協議やフェーズアウトの 必 要 性 に 関 し て は 、 同 T W G が 他 の セ ク タ ー TWGにアプローチし、協議が進むようにサポー トしており、TWG の枠組みを利用して対話を進 めてきている。 また、プログラムの中でこうした問題に取り 組んでいる 1 つの試みが、公共財政管理プログ ラムで実施されている任務評価制度イニシア ティブ(Merit-based Pay Initiative: MBPI)である。 これは、現在、カンボジアで大きな問題となっ ている公務員給与の低さとそれに関連して発生 する汚職問題やドナーや NGO による給与補填の 継続化といった問題の解決の糸口につながるも のとして期待されており、上記の給与補填に代 わる制度としてパイロット支援がなされており、 他のセクターでも応用が検討されている。ただ し、任務評価制度の取り入れや、職務や財政状 況に見合った公務員給与体系の見直しにおいて は政府とドナー間の意見の相違が大きく、同取 り組みとカンボジアの政策および組織文化に 合った仕組みを慎重に検討する必要がある。 5. 成果主義と共同責任の深化 これまでの援助に関する協議はドナー主導の プロセスと政府からドナーへの義務遂行説明責 任の側面が強かった。CG 会合において合意され る共同モニタリング指標も政府のガバナンス改 善を求める従来の IMF や世銀の貧困削減支援供 与のコンディショナリティ的な側面が見られる。 本来、開発計画の作成・遂行に関しては、政 府−ドナー間だけでなく、本来の援助裨益主体 である国民が、市民団体および国会などを通じ、 政府から説明・報告を受け、開発事業に対して 提言あるいは国会承認を求める立場にある。現 在、カンボジアでは、CG 会合および GDCC に NGO代表注 30)がオブザーバーとして参加してい るが、これまでのところ、いわゆる政府の国会 に対する開発計画達成報告義務はない。 NSDPという国家開発計画ができ、達成目標 が明確になった現在、本来あるべき政府の国民 と国会に対する説明責任を果たせるような形に CG会合などの枠組みやモニタリング指標も変 わっていくことが想定される。実際、2005 年 3 月の CG 会合において、フンセン首相はこれま で政府とドナー共同で開催していた CG 会合を 政府主催による年次 GDCC 会合(あるいは新た に開発協力フォーラムとして)に形を変えてい く方向性を打ち出し、2007 年より CG 会合に代 わってカンボジア政府が単独議長としてカンボ ジア開発協力フォーラム(Cambodia Develop-ment Cooperation Forum)を開催することとなっ ている。また、現在の TWG を中心とした協議・ 協調メカニズムにおいて、政府・ドナーともに 設定した行動計画の達成目標を実現するために、 ドナー側は理想を追いかけた改革の要請を責付 くばかりでなく、改革達成のために必要な資金 提供や知識・技術協力、情報の提供を効果的に 協調して行うことがますます求められる。さら に、協議にあたっては、汚職や人権問題など、 政府が好まない議論が議題から外されたり、先 延ばしされたりするケースも見られる。議論が レトリックにとどまらないよう、開発計画にリ

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ンクした行動の変化を促す指標の設定と進捗努 力をモニタリングできる体制を組み込んでいく ことが重要である。 6. 本部から現場への権限委譲、援助協調に係 るインセンティブの見直し 支援の形が個々のプロジェクトの実施からプ ログラムレベルでの成果の重視とそのパフォー マンス指標のモニタリングや政策協議あるいは ドナー間の調和化という方向に向かうにつれ、 ドナーの現地事務所スタッフの積極的な協議へ の参加、政策知識や協議能力の向上が求められ る。パリ宣言以降、多くの国および国際機関で パリ宣言の行動計画と進捗報告がなされており (OECD/DAC[2006])、また現地レベルでの援 助協調が奨励されているものの、本部レベルで の政策協議が現地レベルまで下りていない、十 分な資金がないために能力を持った人物が配置 されていない、あるいは、全体として現地への 権限委譲が進んでいないために参加へのインセ ンティブが低いといった課題がある。さらに、 協調した援助手続きの協議も進んできているが、 個別プロジェクトを形成したスタッフのほうが、 オーナーシップや調和を重視した制度の見直し を提言したり協調を進めたりするスタッフより も実績づくりの点から評価される傾向も根強い。 現在、多くのドナーは援助協調を必要で避け られないものと考えている(Asia Foundation [2005])が、協調するための事務的負担(ド ナー間の調整や政府との政策会議)の多さを効 率化したいとしている。そのためには本部レベ ルでの協調促進、現地事務所への効果的な権限 委譲(現地レベルでの協調がある程度決断でき るフレキシブルな体制)、そして協調努力を積極 的に評価するような体制を考える必要がある。 7. 対話アプローチ 援助協議の参加者は相手国政府の文化や協議 スタイルに注意を払い、コミュニケーションの 仕方を重視すべきである。多くのアジア諸国で は、西洋的な公の場で問題点を広く協議する仕 方はまだなじまないものであり、また政府職員 の言葉や協議方法・調整の自信のなさが、効果 的に議論を進めるのにしばしば大きな妨げと なっている。組織内のヒエラルキー文化などを よく理解したうえで最も効果的にコミュニケー ションができる方法を探し、お互いにとって受 け入れられる公平な協議方法とマネジメントを 遂行していくことに、注意がより払われるべき である。

V

まとめ

2006年、カンボジアをはじめとした 32 カ国に おいて OECD/DAC のパリ宣言のモニタリング調 査が行われた。同調査は、これまでになく準備 が入念に進められ、数値や事実に基づいた援助 効果の状況把握ができると見られている。また、 同モニタリング調査は同時に関係者の理解とコ ンセンサスを深め、援助効果に対する行動変革 を促す役割を果たすことが期待されている注 31) 現地政府がオーナーシップとリーダーシップ を発揮できるような援助協議体制および各種改 革推進のための能力開発に中長期的な観点で包 括的に取り組むこと、そのためにドナーが協調 して支援を行うことが、遠回りのようであるが 実際の援助効果向上ひいては開発目標の達成に とり必要なことと思われる。 謝 辞 筆者は UNDP カンボジア事務所に勤務していたが、本 稿は必ずしも UNDP の意見を代表するものではない。ま た、本稿執筆にあたっては、JICA 専門家西岡佐知子女史、 UNDPアドバイザー Philip Courtnadge 氏、DFID アドバイ ザー Helen Appleton 女史、国連調整スペシャリスト Ann Lund女史からアドバイスおよび情報補足を得た。この場 を借りてお礼を申し上げたい。

注 釈

1) Ministry of Planning[2004],World Bank[2006], IMF[2006b].1 日当たり 2100 カロリーの食事と

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必 要 生 活 経 費 を ベ ー ス と し た 収 入 ( 1 日 当 た り 1753〈地方〉∼ 2351〈プノンペン〉リエル,ある いは年間 1 人当たり 160 ∼ 250 ドル)を貧困ライン としている.貧困層の 91%が地方に住んでいる. 2) 国家予算における ODA の割合は,ODA の実際の供 与と国家予算において編入および記録化が体系化 されていないために数値は現時点で未定である. パリ宣言のモニタリングに合わせてそのための努 力がなされており,次回の会合でこれらの指標は より明確になると見られている. 3) たとえば,1975 年までに 400 ∼ 600 人の法曹者がカ ンボジア国内にいたが,1980 年にはその数は 10 人 となり,現在でもまだ 117 人の裁判官(うち法学 部卒は 6 人に 1 人)しか育っていない(World Bank [2004]).また,民法・刑法といった基本法を各国 からの支援を受けて制定中である. 4) 森林,除隊兵士支援,行政改革,財政改革と,の ちに社会セクター(保健・教育・食糧安全保障・ HIV/エイズ). 5) 他方,あとから結成された保健,教育セクターの ワーキング・グループは,政府,ドナー,NGO を 含んだグループで,早くからセクターワイド・ア プローチの応用を検討しており,比較的うまく機 能してきた. 6) 2003 年には,ローマで第 1 回目の上級会合が開か れ,このグッド・プラクティス・ペーパーを後押 しするとともに,調和化に関するローマ宣言が採 択されている.

7) Economic Policy Agenda of the Political Platform of the Royal Government in its Third Legislature of the National Assembly,2004-2008.

8) Declaration on Harmonization and Alignment,2 December 2004. カ ン ボ ジ ア 政 府 と 12 ド ナ ー (ADB,オーストラリア,カナダ,デンマーク, EC,フランス,ドイツ,日本,スウェーデン,英 国,国連,世銀)が GDCC(政府・ドナー調整委 員会)会合後に署名した. 9) 同上 pp.50-52.Partnership in Development. 10)議長がカンボジア開発協議会(CDC/CRDB),共同

議長が UNDP および日本(のちに Partnership and Harmonization Technical Working Groupに名称が変 更,UNDP と DFID が現在のリード・ドナー・ファ シリテーター).

11)Siddiqui,F.,C. Sticker and P. Vinde [2004].同調査 後,公務員の能力を高めるための政策策定および 給与上昇が行政改革審議会(Council for Administra-tive Reform: CAR)を中心に進められている. 12)Government-Donor Partnership Working

Group,Sub-Working Group No.3.[2004].

13)National Operational Guidelines for Development Coop-eration Grant Assistance.March 2006.Phnom Penh. 開発協力のためのオペーレション・ガイドライン は,多くのドナーが支援するプロジェクトにおい て実施省庁が主体でプロジェクトの実施マネジメ ントを行うとしているものの,統一化された実施 手続きがないことから,これをつくる試みである. 14)保健,教育,農業と水,森林と環境,援助協調, ジェンダー,地雷除去,民間開発,インフラスト ラクチャー,HIV/エイズ,公共財政管理,行政改 革,地方分権,司法改革,食糧安全保障と栄養, 土地,漁業.のちに貧困削減とモニタリング・グ ループが加わり,現在 18 の TWG がある. 15)のちに年 3 回.

16)RGC’s Action Plan for Harmonization,Alignment and Results 2006-2010.同計画は調和化グループ拡大版 会議で合意されたのち,閣僚評議会を経て,首相 が 2006 年 2 月に署名している.CDC ウェブサイト [http://www.cdc-crdb.gov.kh/cdc/h_a_r_action_ plan2006-2010.htm]を参照のこと. 17)のちに年 3 回. 18)ODI[2005]のレポートなどでは,いわゆる脆弱な 国家に共通して見られる現象・課題であると分析 している. 19)SEILA プログラム.もともとは UNDP による難民 再定住の村落開発支援(CARERE)がコミューン 開発協議会による地方開発プロセス支援となった. 同プログラムは地方分権を進めるにあたっての政 府職員能力開発や制度強化および統一化した支援 の手続きなどを制定した.

20)Regional Workshop on Aid Coordination and Manage-ment,June 6-8,2006(UNDP アジア太平洋局セン

ター開催).参加各国はブータン政府が援助窓口の

一本化を効率的に図ったとして同ワークショップ でベストプラクティスとして評価した.

21)Multi-Donor Support Program to Implement the RGC’s Strategic Framework for Development Cooperation Management.

22)World Bank[2004].また,Capacity Building Study (Siddiqui,F.,C. Sticker and P. Vinde[2004])によ ると,アンケート調査に答えたドナーだけでも 740 人のインターナショナル・スタッフがいるとの回 答.

23)上記および Action Aid International[2005].カンボ ジアはケーススタディとして挙げられており,こ れまでの技術協力の実際が,ほとんど人件費とト レーニング代になっていることが問題視されてい る. 24)政府側は長期アドバイザーを高給取りで能力開発 に役立っていないと非難する一方で,長期アドバ イザーの要請をするケースがしばしば見られる. また,OECD の定義においては,技術協力は能力 開発に資するものとなっているが,2006 年に行わ れた DAC のパリ宣言モニタリング調査において, ドナーの間において必ずしも能力開発と結び付け ていないケースが見られた.

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[1998]でも推奨されている.

26)1 カ月当たりの一般公務員の平均給与は 33 ドルで, 地域内最低レベルである(World Bank and Asian Development Bank[2003]).政府は近年毎年 15% の基本給与上昇を決定・実行しているが,民間セ クターの給与レベルと比べるとその差はまだ非常 に大きい. 27)行政改革テクニカル・ワーキング・グループ(Public Administrative Reform TWG)が中心となって給与 補填フェーズアウト戦略が 2006 年 1 月に採択され, 現在,給与補填実態調査に基づいて各ワーキング・ グループはフェーズアウトのための行動計画づく りをすることとなっている. 28)他方,現在の政治環境や民間セクター開発が進ん でいない状況から,人員削減,民営化,外部委託 なども難しい状況である. 29)近年,シアヌークビル海上において石油田がある とわかり,その歳入予測は採掘テストの行われた ブロック A だけでも年間 5 ∼ 10 億ドルに上るとい われている.他方,不透明な契約取引の動きも出 始めており,ドナーはこれらがきちんと政府歳入 に入るよう働きかけと支援の提供を申し出ている. 30)NGO フォーラム,カンボジア協力委員会(CCC), MediCam(カンボジア保健分野 NGO ネットワーク) の三協議体が参加しており,毎回 GDCC において NGO声明を提出している. 31)カンボジアは同モニタリング調査のワーキング・ パーティのメンバー国である.また,OECD/DAC によるモニタリング調査ミッション(2006 年 5 月) 後に CDC およびドナーによる DAC 調査のための コア・グループが形成され,現地レベルの定義づけ や コ ン セ ン サ ス づ く り が 行 わ れ た ( 詳 細 は http://www.oecd.org/document/50/0,2340,en_2649_155 77209_37106034_1_1_1_1,00.html).筆者は DFID と ともに同作業の現地ドナー調整役を務めた.

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小西 洋子(こにし ようこ) ウェールズ大学スウォンジー校開発学センターにて 社会開発計画と運営コース修士課程修了後,財団法人 日本国際協力センター調査員,フィリピン日本国大使 館経済班専門調査員,UNDP カンボジア事務所ガバナ ンス・スペシャリスト等を経て, 現在,UNDP アフガニスタン事務所プログラム・オ フィサー.

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