2050年脱炭素社会実現の姿に関する一試算
2020年12月14日
AIMプロジェクトチーム
本年
10月26日、菅義偉内閣総理大臣は就任後初の所信表明演説で、「菅政権では成長戦略の柱に『経済
と環境の好循環』を掲げ、グリーン社会の実現に最大限注力していく」と述べ、「我が国は
2050年までに温室
効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち
2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指
すことをここに宣言する」と表明された。いよいよ、日本国全体を挙げて、ネットゼロ社会に向かって号砲が放
たれた。
既に、2016年に閣議決定された地球温暖化対策計画において、「2050年までに80%の温室効果ガスの排
出削減を目指す」ことが盛り込まれている。
AIMプロジェクトでもこれまで、大幅削減の検討を数々実施してき
たが、正直、
80%削減の実現ですら大変なことである。あらゆる部門において対策を総動員させて取り組む
必要があるが、その一方でまだ
20%の排出は許されている。しかし、ネットゼロとなると、20%許された排出
に蓋をするべく、
80%削減で前提とした対策について、その強度を高めるとともに、前倒しで導入を進めてい
くことが必要となる。さらに、まだ見ぬ技術の開発、普及も実現していかなければならず、80%削減の単なる
延長とは済まされない取組が求められる。
将来における様々な不確実な状況のもと、現段階で詳細な対策の組み合わせについて、一意に決定するこ
とは不可能であるが、何を考慮し、どのような方向性で進めていくべきかについては早急に検討すべきであ
る。そこで、本検討では対策の方向性について複数のシナリオを想定し、それぞれにおけるエネルギー需給
や温室効果ガス排出構造の違いから、検討すべき論点について抽出を行った。
目次
3. 脱炭素社会の実現に向けて(本分析を踏まえて) 4. 脱炭素社会の実現に向けた対策の方向性 5. 本分析において前提とするエネルギーシステム 6. 本分析において想定したシナリオ 7. 【運輸部門】 脱炭素化に向けた主な対策 8. 【運輸部門】 エネルギー消費量・CO2排出量 9. 【運輸部門】 電動自動車導入シェア 10. 【家庭・業務他部門】 脱炭素化に向けた主な対策 11. 【家庭部門】 エネルギー消費量・CO2排出量 12. 【家庭部門】 電気ヒートポンプ給湯機導入シェア 13. 【業務他部門】 エネルギー消費量・CO2排出量 14. 【産業部門】 脱炭素化に向けた主な対策① 15. 【産業部門】 脱炭素化に向けた主な対策② 16. 【産業部門】 エネルギー消費量・CO2排出量 17. 【最終消費部門】最終エネルギー消費量(産業+業務他+家庭+運輸) 18. 【新燃料等】合成燃料・アンモニア・水素・バイオ燃料等の需要量 19. 【電力】電力需要量 20. 【電力】発電電力量 21. 【GHG】エネルギー起源CO2以外の温室効果ガス排出量 22. 【GHG】温室効果ガス排出量 23. 【GHG】 CO2回収量と処分量 24. 【投資】累積投資額 25. 分析結果より 26. 脱炭素社会に向けた論点 ① 27. 脱炭素社会に向けた論点 ② 28. 脱炭素社会に向けた論点 ③ 29. 脱炭素社会に向けた論点 ④ 30. 脱炭素社会に向けた論点 ⑤ 31. 脱炭素社会に向けた論点 ⑥ 32. おわりに 34. (参考) 将来の活動量に関する想定 35. (参考) 将来のエネルギー効率に関する想定 36. (参考) 将来の技術普及に関する想定 ① 37. (参考) 将来の技術普及に関する想定 ② 38. (参考) 将来の技術普及に関する想定 ③ 39. (参考) 将来の技術普及に関する想定 ④<本編>
<参考資料>
はじめに
〇 本資料は、
2050年脱炭素社会を実現した絵姿を定量的に具体化し、その実現に向けた課題・道
筋について示唆を得るための技術的な資料である。シナリオ分析の手法に基づき、起こりうる可能
性が高い未来を予想するものではなく、複数のシナリオにより将来の可能性を示したものである。
〇脱炭素社会の検討については、
EU、英国、米国などはシナリオ分析を取り入れており、それらの
国・地域が国連に提出した長期戦略にはその分析が引用されている。本分析ではそれらの事例を
参考に
2050年4つのシナリオを設定した。
〇コロナ禍を契機に大幅に進展したリモートワーク、情報通信技術の進展による脱物質化・省資源化
と通信量の増加、脱プラスチック、食ロス低減など、最近の動向についても、ラフな想定ではある
が、適宜シナリオに反映させている。
〇本分析では、現時点で見込まれる技術を想定しているが、今後の社会経済の変化・国際関係・技
術開発・普及過程・制度設計により、一層の脱炭素化が進展することもありうる。今後は、こうした
2050年の社会の姿をどのような経路で実現するか、そのためには技術だけなく消費行動なども含
めてどのような社会変容が必要となるかを分析する予定である。
○
AIMによる分析結果は、IPCCや国内の長期戦略の議論の際にも活用されている。
参考文献脱炭素社会の実現に向けた対策の方向性
〇 脱炭素社会の実現のためには、①エネルギー消費量の削減、②使用するエネルギーの低炭素化、③利用
エネルギーの転換を総合的に進めていくことが重要である。
〇 カーボンニュートラルを実現するためには、①~③の強化とともに、ネガティブエミッション技術
※の導入が
不可欠になる。
(出典)環境省(2015)温室効果ガス削減中長期ビジョン検討会 とりまとめ(破線までの図) <脱炭素社会実現に向けた方向性について(イメージ図)> ①、②、③の更なる強化 排出量をオフセットする ネガティブエミッション技術 <ネットゼロのための ネガティブエミッション技術> ※ ネガティブエミッション技術 :大気中のCO2を人為的に回収または吸収させ、それを再放出しない形で、長期的に貯留する技術・実践・行為。植 林・再植林、バイオ炭、土壌炭素貯留、湿地・沿岸再生(ブルーカーボン)、バイオマスエネルギー炭素回収貯留(BECCS)、風化促進、直接炭素 貯留(DAC)、海洋アルカリ化、鉱物炭化など。(参考文献:Minxら(2018) Negative Emissions—Part 1: Research Landscape and Synthesis,産業部門 運輸部門 家庭部門 業務他部門 石炭 製品 石油 製品 都市 ガス バイオ 燃料等 合成 燃料 水素 燃料製造 (化石) 合成燃料 製造 水素 製造 発電 CO2 地中貯留・ 鉱物化等 CO2回収 CO2回収 燃料製造 (バイオ) 電力 電力 水素 再エネ (熱) 大気からの CO2回収 (最終消費部門) <本分析において前提としてエネルギーシステム> 電化が困難な領域での バイオ・新燃料の利用 電化促進 脱炭素社会への社会変容 及び省エネ エネルギーの低炭素化
本分析において前提とするエネルギーシステム
(輸入) CO2利用 CO2固定化 〇 本分析では、まず、①最終消費部門における化石燃料、新燃料等(水素、合成燃料、バイオ燃料等,一部輸入を想定)、電力 の消費量を推計、続いて、②水素や合成燃料の製造のために電力消費量を推計、③電力需要を満たすための発電構成及 び発電のためのエネルギー消費量を推計し、④全てのエネルギー消費量からCO2排出量を推計する。 〇 なお、今回の試算では、対策技術の組み合わせやその導入量については、次頁のシナリオに即して外生的に想定したもので あって、経済性を考慮したモデルで推計したものではないことに留意。〇 2050年脱炭素社会に向けた社会変容シナリオ(LED): 生活や就業スタイル、マテリアルの消費・循環構造などの変化によって、少ないエネルギー・マテリアルでも高い便益・効用 が得られる社会への変容。一方、電化推進や新燃料利用については、次の2つのシナリオの想定よりも低位である。 〇 2050年電化シナリオ(ELE) 再エネ発電の大量導入と徹底した電化によって、脱炭素社会の実現を目指すシナリオ。技術的や期間的に電化が難しい 領域(産業高温域、貨物輸送、暖房・給湯など)についても、徹底した電化を推進。社会変容による活動量の変化はあまり 考慮しない。 〇 2050年新燃料シナリオ(H2) 再エネ発電の大量導入による水素生産、そして、水素とCO2から生産される合成燃料、これらの新燃料によって、脱炭素 社会の実現を目指すシナリオ。技術的や期間的に電化が難しい領域(産業高温域、貨物輸送、都市ガス供給)に新燃料を 活用。社会変容による活動量の変化はあまり考慮しない。 〇 2050年ネットゼロ排出シナリオ(Zero) 社会変容、電化・新燃料の導入促進など全ての対策を組み合わせて、 CO2回収対象の拡大、ネガティブエミッション技術 の導入・拡大により脱炭素社会を実現。 〇 2030年 NDC準拠シナリオ(NDC): 2030年目標(NDC)を策定した際の前提をもとに、本分析における2030年の対策技術の導入について想定。活動量につ いては概ね現状水準(▲10%~+20%程度の範囲)を想定しており、2030年目標策定時の前提とは合致していない。 〇 本分析では、対策の方向性や導入水準に応じて、以下の5つのシナリオを想定して、排出量の推計を実施した。 ○ 各国も脱炭素社会の検討にシナリオ分析を取り入れており、例えば、EUでは対策技術の方向性の違い(電化、水素、循環 経済など)や、削減目標の違い(▲80%~▲100%)を与えた複数のシナリオに基づく分析を実施し、長期戦略にて引用さ れている。また、英国や米国の長期戦略もシナリオ分析が長期戦略本文に掲載されている。
本分析において設定したシナリオ
LED ELE H2 Zero
① 移動・輸送サービス需要の低減 高 低 低 高
② 輸送機器の省エネ 高 高 高 高
③ 輸送機器の電動化 乗用車 BEV 90% BEV 100% BEV 70% FCV20% BEV 90% FCV10% 貨物車 BEV 50% FCV 40% BEV 75% FCV 15% BEV 50% FCV 40% BEV 50% FCV 40%
④ 燃料の脱石油 自動車 石油/バイオ/合成 石油/バイオ/合成 合成燃料 バイオ/合成 エネルギー エネルギー技術 サービス需要 移動・輸送需要 石油自動車 BEV・FCV 船舶・鉄道・航空 ② 輸送機器の省エネ ③輸送機器の電動化 ④燃料の脱化石化 ②輸送機器の省エネ 電力・水素 バイオ・合成燃料 石油 バイオ・合成燃料等 石油 (DXによる主に通勤・業務移動の低減、貨物輸 送の効率化(モーダルシフト、3Dプリンタ活用 など含む)など) (燃費、電費の改善) <本分析における主な想定> 〇 運輸部門の脱炭素化に向けて、①移動・輸送サービス需要の低減、②輸送機器の省エネ、③輸送機器の電動化、④燃料 の脱化石化、4種の対策を考慮。 (エネルギー消費効率の改善) 電力・水素
【運輸部門】 脱炭素化に向けた主な対策
① 移動・輸送サービス需要の低減<エネルギー種別 エネルギー消費量> <手段別エネルギー種別 CO2排出> (直接排出のみ(電熱配分前) 、電力・水素由来は含まず)※ 〇 運輸部門の2050年のエネルギー消費量は、電力、水素、合成燃料が大きな割合を占める。 〇 2050年において、電化が難しいと言われる貨物自動車、船舶、航空だけでなく、乗用自動車においてもシナリオによっては、 CO2が排出。乗用自動車は台数が多く、総量としてエネルギー消費量が大きいため、小さな割合でも電化が未達の場合に は、相当量のCO2が排出される。 電力 水素 合成 燃料
【運輸部門】 エネルギー消費量・CO2排出量
石油 社会変容 の効果 電化の 効果 社会変容 と電化の 効果 乗用車起源のCO2排出ゼロ<電動自動車導入シェア >
〇 下図は、電動自動車(BEV・FCV)について新車ベースでの導入シェアの将来値を想定した場合に、保有ベースでのシェアが どのようになるかを推計したものである。 〇 2050年までに保有ベースの100%を電動自動車(BEV・FCV)とするためには、2035年よりも前の時点で新車ベースでの電 動自動車のシェアを100%とすることが必要である。新車ベース
保有ベース
【運輸部門】 電動自動車導入シェア
暖房・給湯 冷房・照明・その他電気機器 石油・ガス バイオ・合成燃料 電力 水素 電力 炊事 エネルギー エネルギー技術 サービス需要 ① サービス需要の低減 ② 民生機器の省エネ ③燃焼機器の電化 ④燃料の脱化石化 石油・ガス バイオ・合成燃料 電力 冷房・照明・情報機器等 燃焼機器 電気ヒートポンプ 燃料電池コジェネ(FC) 燃焼機器 電気調理機器
LED ELE H2 Zero
① サービス需要の低減 高 低 低 高 ② 民生機器の省エネ 高 高 高 高 ③ 燃焼機器の電化 (電力機器の占める割合) 暖房 80% 100% 電力70% 水素FC 10% 電力90% 給湯(家庭) 60% 100% 電力40% 水素FC 20% 電力70%水素FC 10% 給湯(業務) 80% 100% 電力60% 水素FC 20% 電力80% 水素FC 10% 炊事 70% 100% 70% 90% ④ 燃料の脱化石化 燃焼 石油・ガス/バイオ/合成 - 合成燃料 バイオ/合成 <本分析における主な想定> 〇 家庭・業務他部門の脱炭素化に向けて、①サービス需要の低減、②民生機器の省エネ、③燃焼機器の電化、④燃料の脱 化石化、4種の対策を考慮。 (断熱強化、エネルギー管理システムなど) (電気機器、燃焼機器の効率改善)
【家庭・業務他部門】 脱炭素化に向けた主な対策
<家庭部門 エネルギー種別 エネルギー消費量> <家庭部門 用途別エネルギー種別 CO2排出量> (直接排出のみ(電熱配分前) 、電力・水素由来は含まず) 〇 家庭部門の2050年のエネルギー消費量は、電力、合成燃料が大きな割合を占める。 〇 ELEシナリオのように、暖房・給湯・炊事について100%電化が達成できれば、CO2の直接排出はゼロになる。しかし、特に給 湯については、電気ヒートポンプ給湯の既設集合住宅への普及に設置面積や経済性など障壁があり、100%普及は容易で はない。 電力 水素 合成 燃料 石油 ガス バイオ 燃料 電化の 効果 社会変容 の効果 電化の 効果 社会変容 と電化の 効果
【家庭部門】 エネルギー消費量・
CO2排出量
<電気HP給湯機導入シェア >
〇 下図は、給湯機器の交換のタイミング、また、住宅の建替・新築のタイミングのみで、電気ヒートポンプ給湯機を導入すること を想定した場合における、新しい給湯機器の導入時における電気HP給湯機シェアと、住宅ストックにおける電気HP給湯機 シェアの関係を示したものである。 〇 住宅の建替・新築のタイミングのみで、電気HP給湯機の導入を進めた場合、2050年の住宅ストックに対する電気HP給湯機 のシェアは半分程度までしか到達しない。導入時における電気HP給湯機シェア
【家庭部門】 電気ヒートポンプ給湯機導入シェア
住宅ストックにおける電気HP給湯機シェア
<業務他部門 エネルギー種別 エネルギー消費量> <業務他部門 用途別エネルギー種別 CO2排出量> (直接排出のみ(電熱配分前) 、電力・水素由来は含まず) 電力 水素 合成 燃料 石油 ガス バイオ 燃料 (傾向は家庭部門と同様) 〇 業務他部門の2050年のエネルギー消費量は、電力、合成燃料が大きな割合を占める。 〇 ELEシナリオのように、暖房・給湯・炊事について100%電化が達成できれば、CO2の直接排出はゼロになる。 社会変容 の効果 電化の 効果 電化の 効果 電化とバイオマス 利用の効果 社会変容 と電化の 効果
【業務他部門】 エネルギー消費量・
CO2排出量
水素還元製鉄 高炉(水素部分利用) +CCS 電気炉 鉄鋼製品 高炉 ③ 革新的技術へのシフト ②電炉鋼の利用拡大 ① マテリアルの効率的な利用 (シェアリング、建物・インフラの長寿命化、木材利用の拡大など) 【鉄鋼】 【セメント】
LED ELE H2 Zero
① 高 - - 高 ② 高 高 - 高 ③ BF+CCS BF+CCS H2 組合せ スクラップ鉄 <本分析における主な想定> (廃棄←‖←蓄積) セメントキルン+CCS クリンカ セメント 混合材 骨材 コンクリート 廃コンクリート ①マテリアルの効率的な利用 (シェアリング、建物・インフラの長寿命化、木材利用の拡大など) ②混合材の利用拡大 ③革新的技術へのシフト ④廃コンクリートへのCO2吸収と再利用
(廃棄←‖←蓄積) LED ELE H2 Zero
① 高 - - 高 ②※1 高 高 高 高 ③ 高 高 高 高 ④※2 高 高 高 高 <本分析における主な想定> 〇 鉄鋼業では鉄鉱石に対して、セメント業では石灰石に対して、超高温状態のもとで還元反応を行っており、産業部門の中で も、電化が難しい部門と言われている。 〇 鉄鋼・セメント部門の脱炭素化に向けて、 BAT(現状で利用可能な最良な技術)の100%普及に加えて、①マテリアルの効 率的な利用、②電炉鋼(鉄鋼)/混合材(セメント)の利用拡大、③革新的技術へのシフト、④廃コンクリートへのCO2吸収 と再利用(セメント)、以上4種の対策を考慮。 CO2 (石灰石、粘土など) ※1 クリンカのセメント比70%を想定(現状84%) ※2 炭素貯留の内数。この対策だけによる固定量の想定は行っていない。
【産業部門】 脱炭素化に向けた主な対策①
【石油化学】 石油 バイオマス 水素 再エネ発電 CO2 合成燃料 プラスチック 廃プラスチック ③プラスチックの脱石油化 ① マテリアルの効率的な利用 (シェアリング、建物・インフラの長寿命 化、木材利用の拡大など) ②廃プラスチックのマテリアルリサイクル利用拡大 【産業全般】 動力 熱 製造品 /食品 ②省エネ (ボイラ、工業炉、モーターの高効率化等) ①製造品・食品の効率的な利用・消費による需要の低減 (シェアリング、製品の長寿命化、売れ残り廃棄の低減など) (廃棄←‖←蓄積) <本分析における主な想定>
LED ELE H2 Zero
① 高 - - 高 ② 高 - - 高 ③ 石油 50% 25% 25% 25% バイオマス※ 50% 50% 25% 50% 合成燃料 25% 50% 25% <本分析における主な想定>
LED ELE H2 Zero
① 高 高 ② 高 高 高 高 ③ 直接加熱※ ガス 電力 合成燃料 組合せ 蒸気 低温 電気HP 電気HP 電気HP 電気HP 〇 プラスチックは製品寿命を終えた後、最終的には焼却処分されるため、ゼロ排出の実現のためには、脱石油化を目指す必 要がある。石油化学部門では、BAT(現状で利用可能な最良な技術)の100%普及に加えて、①マテリアルの効率的な利 用、②廃プラスチックのマテリアルリサイクルの拡大、③プラスチックの脱石油化、以上3種の対策を考慮。 〇 産業全般としては、①製造品・食品の効率的な利用・消費による需要の低減、②省エネ(BATの100%普及)、③熱の電化・ 脱化石化、以上3種の対策を考慮。 ※ ③におけるプラスチックのバイオマス利用は廃棄物部門の廃 棄物焼却起源のCO2排出の削減につながる。
【産業部門】 脱炭素化に向けた主な対策②
〇 産業部門は高温熱需要や還元材利用など、電化シフトが難しい領域が存在するため、2050年においても燃料燃焼が一定量 残存する。 〇 鉄鋼業の高炉とセメント業のキルンについてはCO2回収を前提としているため、高炉・キルンにおける石炭起源のCO2排出 量は8割程度回収されている。 社会変容 の効果 社会変容の効果
【産業部門】 エネルギー消費量
※ 上記、CO2回収量は産業部門のエネルギー起源CO2排出量のみを計上。鉄鋼業、セメント、石油 <産業部門 エネルギー種別 エネルギー消費量> <産業部門エネルギー種別 CO2排出量> (直接排出のみ(電熱配分前) 、電力・水素由来は含まず)〇 2050年の最終エネルギー消費量は2018年比 22~41%削減。部門別では運輸部門が大きく削減。 〇 エネルギー種別では、化石燃料の消費量、特に石油製品の消費量が大幅に減少。電力や合成燃料が大きな割合を占めて いる。ELEでは電力の割合が55%、H2では合成燃料・水素等のシェアが35%となっている。 <エネルギー種別 最終エネルギー消費量> <部門別 最終エネルギー消費量> -38% -29% -22% -41% 55% 35%
【最終消費部門】 最終エネルギー消費量(産業+業務他+家庭+運輸)
〇 H2シナリオの合成燃料については電化が難しい領域やプラスチック原料向けに、合成燃料の利用を前提としているため、全 ての部門において合成燃料の需要が存在している。特に、産業部門での需要が大きい。 〇 水素については鉄鋼業における水素還元、水素燃料電池を用いた自動車やコジェネレーション利用の他、合成燃料の原料 となる水素の製造のための需要が大きい。 〇 なお、合成燃料と水素については、30%を海外から輸入(カーボンフリーの水素とバイオマス起源の炭素の組み合わせ)する ことを想定している。 〇 バイオ燃料等は電化が難しい領域やプラスチック原料、バイオマス発電の需要が大きい。 〇 アンモニアについて、海外で生産された水素がアンモニアとして輸入され、アンモニアのまま、もしくは水素に戻して、主に発 電所にて利用されることを想定。船舶用燃料として消費されることも想定。 <合成燃料等の部門別消費量>
【新燃料等】 合成燃料・アンモニア・水素・バイオ燃料等の需要量
※各シナリオにおいて発電に占めるアンモニア発電のシェアを想定していない。そのため、アンモニア発電のシェアが5%の場合(凡例の~5%)、10%の ※〇 脱炭素社会の実現のためには電化が必要となるため、どのシナリオにおいても電力消費量が増加している。ELEシナリオで は、産業、業務他、家庭、運輸の全ての最終消費部門において電力需要量が他のシナリオよりも大きくなっている。また、H2 シナリオは水素や合成燃料の製造のために電力需要量が大きく、4つの最終部門における需要量に匹敵する程度となって いる。 <部門別電力需要量> ・ 1Nm3の水素を生産するために必要な電力量 4.5kWh/Nm3-H 2※ = 1.26 MJ/MJ (HHV) or 1.5 MJ/MJ (LHV) ・ 1Nm3のメタンを生産するために必要な電力量 18.32kWh/Nm3-CH 4※ = 1.66 MJ/MJ (HHV) or 1.83 MJ/MJ (LHV) 1.66 1.0 電力 メタン ※ 出典:日本エネルギー経済研究所 柴田善朗(2019) カーボ <水素や合成燃料の生産のために必要な電力量> 水の電気分解+ メタネーション 2H2O→2H2+O2 CO2+4H2→CH4+2H2O 図化すると…
【電力】 電力需要量
【電力】 発電電力量
<発電種別 発電電力量> <再生可能エネルギー 発電種別 発電電力量> ※)CCS付ガス火力、原子力発電、アンモニア火力発電 (参考) <再生可能エネルギー 導入可能量> (環境省「我が国の再生可能エネルギー導入ポテン シャル」(2020年)) ※ 25,812億kWh 25,812億kWh (出典)環境省「我が国の再生可能エネルギー導入ポテン シャル」(2020年) http://www.renewable-energy-25,812 億kWh 〇 2050年において全てのシナリオにおいて、ほぼ全量が脱炭素電源。 〇環境省によると、再生可能エネルギー発電の経済性を考慮した導入可能量は最大2兆5,812億kWhであり、Zeroシナリオに おける総発電電力量を上回っている。 〇 再生可能エネルギー発電の内訳については、導入ポテンシャルの大きさから太陽光発電と風力発電が主力となる。<エネルギー起源CO2以外の温室効果ガス排出量> 〇 エネルギー起源CO2以外の温室項ガス排出量の削減は難しく、Zeroシナリオにおいても、60百万tCO2程度の排出量が残 存する。 対策 工業 プロセス 〇 マテリアルの効率的な利用 (LED/Zero) 〇 全てのセメントキルンにCO2回収装置を設置 (全シナリオ) 農業 〇 食ロス低減、食選好の変化(LED/Zero) 〇 低メタン排出農法・牧畜、廃棄物処理方法の改善(全シナリオ) 廃棄物 〇 3R対策の推進による廃棄物処理量の削減(LED/Zero) 〇 プラスチック等のバイオマス利用(全シナリオ) 〇 廃棄物焼却施設にCO2回収装置を設定(Zero) 代替フロン 4ガス 〇 低GWPガスへの転換、回収・再利用の徹底(全シナリオ) 森林吸収源 〇 森林管理・植林を実施するものの、樹齢高齢化によるCO2吸 収量の低下を考慮(全シナリオ) <エネルギー起源CO2以外の温室効果ガス削減のための対策>
【
GHG】 エネルギー起源CO2以外の温室効果ガス排出量
〇 社会変容、電化推進、水素利用を組み合わせ、エネルギー起源CO2以外の温室効果ガスの排出削減を強化しても、現状比で 1割程度の温室効果ガスの排出量が残存。そのために、それを相殺するためのネガティブエミッション技術(森林吸収、バイオ マスエネルギー炭素回収貯留、その他)の導入が必要となる。 <部門排出別 温室効果ガス排出量> <2050年 部門排出別 温室効果ガス排出量> (拡大)
【
GHG】 温室効果ガス排出量
(電熱配分前) (電熱配分前) 注)Zeroシナリオにおいて、「エネ起CO2発電」「非エネCO2」がプラス・マイナスの両方に 表れているのは、このシナリオでは発電と廃棄物焼却においてバイオマス起源CO2の〇 CO2大量排出源(産業、発電、廃棄物)から、LEDは7千万t、ELEは8千万t、H2は1億3千万t、Zeroは1億5千万tのCO2を回 収している。 〇 LEDとELEは合成燃料の需要が小さいため、その大半を地中等に貯留。一方、H2では、合成燃料の需要が大きいため、 CO2回収のかなりの部分が合成燃料の原料として利用され、地中等の処分量はLEDやELEよりも小さくなっている。 〇 Zeroシナリオでは、CO2大量排出源からのCO2回収だけではカーボンニュートラルを達成できないため、前頁でも示したよう に、ネガティブエミッション技術(森林吸収、バイオマスエネルギー炭素回収貯留、その他)に現状の排出量の1割程度を依存。 このシナリオにおける合成燃料と森林固定を除くCO2貯留先は、1億6千万t相当。この量について、森林吸収の強化も含め、 地中、鉱物、コンクリート、農地、海洋などに固定化することが必要。 <CO2回収量とCO2処分量> 発電 産業 廃棄物 LED ガス 一部 高炉 全て キルン全て - ELE ガス 一部 高炉 全て キルン 全て - H2 ガス 過半 キルン 全て - Zero バイオ全てガス 全て 高炉 全て キルン 全て 石化 全て 全て <CO2回収量の想定>
【
GHG】 CO2回収量と処分量
※1 本分析で想定した導入量に応じたBECCSと森林吸収を除く、ネガ ティブエミッション技術。バイオ炭、土壌炭素貯留、ブルーカーボン、 風化促進、DACなどが候補。BECCSの拡大、森林吸収の強化も含 む。DACなどCO2回収のための追加的な電力需要が必要な対策を 選択した場合には、その影響を分析する必要がある。 ※2 低炭素電源の構成については推計を行っていないが、CO2回収・ 処理量の推計を行うために、発電電力総量に対して、5%(LED、 ELE)、14%(H2)、9%(Zero)、CCS付きのガス火力を設置するこ ※2 ※1 処分量(百万 tCO2 )← | → CO2 回収量(百万 tC O2 ) ※3〇 主たる脱炭素技術を対象として、 2050年までの導入のために必要な投資額を推計すると、H2シナリオは他のシナリオよりも、 1.6~2.4倍の費用が必要となる。
〇 Zeroシナリオでは社会変容を想定しているため、ELEよりも削減目標が高いにも関わらず同程度の投資額となっている。 <2050年までの累積投資額>
分析結果より
① 脱炭素社会に向けた社会変容 大幅な電力需要の増加を回避し、エネルギーシステムに対する過度な投資を抑えつつ、脱炭素社会を実現するためには、社会変容のた めの取組が必須。(下式の赤囲みの要素を低減する。我慢などで満足度を低下させるのではなく、エネルギーを必要とするサービスに頼 ることなく、同様の満足を得るようにする。具体的には、ビジネスコミュニケーションのデジタル化進展による通勤・業務のための移動低減、 建物などの断熱性による暖房や給湯の熱需要の低減、シェアリングや長寿命化によるマテリアルの効率的な利用、食品ロス低減など。) ② 電化と再生可能エネルギー発電ポテンシャルの最大活用 脱炭素社会の実現のためには、電化と再生可能エネルギーの組み合わせの最大活用が必須の取組となる。但し、再生可能エネルギー 発電、特に太陽光と風力は潜在的に大量の導入ポテンシャルを有するものの、それらは地域的偏在が大きく、その上、出力変動が大きく、 ポテンシャルの顕在化・効率的な利用は簡単ではない。そのため、需給量に応じた需要量の自律的な制御、蓄電装置の効率的な稼動、 地域間連系線の増強、長期の需給調整のための水素利用など、多岐にわたる高度な需給調整がエネルギーシステムに新たに求められ ることは言うまでもないであろう。これにとどまらず、ビジネスにおいても、製品製造プロセス、物流システム、就業環境の見直し、さらには、 事業領域、収益構造の再構築までもが必要になってくるであろう。 ③ 脱炭素技術の早期最大限導入 脱炭素技術を2050年において保有ベースで100%普及させるためには、早期に購入ベースでの100%の普及達成を実現することが必要。 例えば、電動乗用車を2050年に保有ベースで100%とするためには、乗用車の平均使用年数が13年程度であることを勘案すると、2035 年よりも前の時点で購入ベースで100%を達成することが必要となる。 ④ 新技術の開発・導入加速化 CO2の発生を完全にゼロとすることは難しい。そのため、発生不可避なCO2を上手にコントロールし、大気中への放出を抑える取組も 必要。また、排出した温室効果ガスをオフセットするために、大気中のCO2を回収・貯留する技術も必要になる。これらを実現するために 中央環境審議会 地球環境部会2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会 技術WG (2012)より 【CO2排出の分解式】 満足度 × × × = CO2排出量 (エネルギー)サービス エネルギー消費量 CO2排出量 満足度 (エネルギー)サービス エネルギー消費量本分析を踏まえて、ネットゼロ社会の実現のために対策の方向性について、早急に検討すべきと思われる論点を以下に示す。 1) 脱炭素社会に向けた社会変容 これまでの社会や経済を前提とした電化や水素社会への移行は、膨大な電力需要を創出し、そのための経済的支出も極め て大きなものになってしまう。そのため、少ないエネルギー・マテリアルでも高い便益・効用が得られる社会への変容が不可 欠。脱炭素に資する社会変容の事例を以下に示す。 ① 運輸部門に関わる対策:「移動・輸送削減」 ビジネスコミュニケーションのデジタル化の推進により、通勤や業務のための移動を低減。コロナ禍によって進展した働き 方の多様化をさらに高次に展開。また、物流についても、AI、IoTの活用によって効率化を進め、貨物輸送量を低減。 ② 家庭・業務他部門に関わる対策:「断熱向上」 建物全体、浴槽・浴室の断熱性を向上させ、暖房や給湯の熱需要を低減。断熱性の向上は、室温の安定化につながり、 健康増進・疾病予防の面からも有効。また、冬季の暖房用電力消費量の抑制は、PVによる発電の少ない時期・時間帯に おける電力需要の抑制に貢献し、充電装置の低減など系統対策の費用の低減にもつながる。 ③ 産業部門に関わる対策:「マテリアルの効率的な利用」 自動車・機械類のシェアリング利用や、建物・インフラの長寿命化に向けた取組は、素材需要の抑制を通じて、素材生産 に伴うエネルギー消費やCO2排出の低減につながる。特に、鉄やセメントの生産工程は脱炭素化が難しい領域であるた め、これらの対策は非常に効果的である。 ④ 農業・食料品部門に関わる対策:「食品ロス低減」 食品のサプライチェーンの上流から下流において食品の損失を低減することは、飲食店や食料品製造業のエネルギー消 費量の低減につながるだけでなく、貨物輸送の低減、水田・家畜起源のメタン排出、肥料起源のN2O排出など温室効果 ガス排出の削減が難しい領域における排出削減に貢献する。
脱炭素社会に向けた論点 ①
2) 再生可能エネルギー発電の大量導入 脱炭素社会の実現のためには電力需要のかなりの部分を再生可能エネルギーで賄う必要がある。環境省の調べでは、 経済性を考慮した導入可能量が2兆5,812億kWhあり、現状の総電力需要の2倍程度のポテンシャルがあることが示され ている。しかし、ポテンシャルは地域的に偏在していて、その顕在化は容易ではない。さらに、太陽光発電や風力発電は出 力変動が大きい。そのため、需給量に応じた需要量の自律的な制御、蓄電装置の効率的な稼動、地域間連系線の増強、 長期の需給調整のための水素利用など、多岐にわたる高度な需給調整が必要。また、景観、環境面への配慮も必要。 3) 電化促進(自動車、民生・産業熱) ① 運輸部門に関わる対策:「自動車の電化」 乗用車の平均使用年数は13年で、他部門と較べると比較的短期間に全ての機器を置き換えることは容易であるが、それ でも、2050年に全ての保有乗用車を電動自動車(EV・FCV)に置き換えるためには早期に販売台数の全てを電動自動車 とすることが必要となる。 ② 家庭・業務他部門に関わる対策:「給湯の電化」 給湯の電化は燃焼機器から電気ヒートポンプ給湯機への転換を意味する。電気ヒートポンプ給湯機は、瞬間的な湯沸が 難しく、貯湯槽が併設されるため、燃焼機器よりも大きな設置スペースが必要となる。そのため、特に既築の集合住宅では、 電気ヒートポンプ給湯機への転換が容易ではない。住宅の寿命は40年以上のため、更新のタイミングでの電気ヒートポン プ給湯機の普及だけでは、2050年までに全ての住宅の給湯の電化は困難である。 ③ 産業部門に関わる対策:「熱の電化」 産業部門では高温熱需要があり、電化が容易ではない。但し、100℃程度もしくはそれ以下の低温の熱領域では産業用
脱炭素社会に向けた論点 ②
4) 水素社会・カーボンリサイクル ① 電化困難領域におけるカーボンフリー燃料(バイオ、水素、合成燃料)の供給拡大(輸入含む) 産業部門の高温熱領域、運輸部門の大型自動車、船舶、航空など、電化が困難と言われる領域以外にも、2050年まで の残期間の短さから電化が間に合わず、燃焼機器が残存して可能性がある。その対応のためにも、カーボンフリー燃料 を供給する必要がある。一方で、バイオ燃料、水素、合成燃料などのカーボンフリー燃料には、供給量制約や経済性など の問題が存在する。どの分野に対してどの程度供給するか、日本全体の需給構造をデザインすることが必要。加えて、 好条件でカーボンフリー燃料の生産が可能な国外の地域からの輸入についても検討を行うことが必要。 ② 合成燃料(プラスチック原料としての利用含む)の炭素源 合成燃料の炭素源として、化石燃料の燃焼によって生じたCO2を用いた場合、合成燃料の消費段階でCO2を回収しな い限り、結局、CO2を排出することになる(炭素を2回に利用するので半減にはなるが)。炭素源として、バイオマス起源 の炭素を利用することが望ましいが、森林資源の持続性や食料生産との競合を勘案すると、供給量は限定的になる。炭 素源の循環については、燃料・原料全体のマテリアルスロー・ストックの中で循環構造を検討することが必要である。 ③ 鉄鋼、セメントの革新的技術の開発 産業部門の中でも、既存の技術ではCO2の大幅な削減が難しい鉄鋼、セメントについては、水素利用やCO2回収・固定 化など、革新的技術の開発・普及が重要となる。この部門におけるCO2削減の困難性は世界共通な課題であり、世界規 模での脱炭素社会の構築に向けても、期待される取組である。 ④ 地中貯留先とその規模(海外含む) CO2排出が不可避な部門において発生したCO2を回収し、そのCO2を地下貯留することは、貯留量の制約から利用年 数に限りがあるものの、“つなぎ”の技術として選択肢から外せないものである。現時点では、適地確保、費用、関係者連 携などの面に関して課題があるため、これらを克服するための取組を進めていくことが必要である。また、地中貯留につ いて我が国よりも好条件な国・地域が存在するため、海外貯留地の活用も視野に入れた検討が必要。
脱炭素社会に向けた論点 ③
5)ネガティブエミッション技術(森林吸収源含む) 本分析が示すように、人為起源の排出量を完全にゼロにすることは極めて困難である。そのため、ネットゼロを実現するた めには、ネガティブエミッション技術に依存せざるをえない。しかし、その多くは現在、研究開発段階であり、実用化の段階に は至っていない。2050年において相当量の削減を伴う技術を普及させるためには、実用化に向けた取組を加速させること が必要である。森林資源の活用については、ネガティブエミッションとしての活用、カーボンフリー燃料・原料としての炭素源 利用、鉄・セメント代替活用など、様々な観点から脱炭素社会のためのニーズがあるため、総合的な検討が必要である。 6)国際貿易・海外インフラ展開の活用 ゼロカーボン燃料は、日本よりも経済的な生産が可能な地域からの輸入について、エネルギーセキュリティに配慮した上で はあるが、それらを積極的に活用すべきであろう。一方で、日本において生み出された脱炭素技術・インフラなどは、世界脱 炭素社会の構築に向けて、世界展開すべきである。日本・世界脱炭素社会の構築に向けて、国際貿易・海外インフラ展開を 活用した取組が重要になる。 7) 「地域」の役割 地域的に分散性・偏在性が高い再生可能エネルギー、このポテンシャルを顕在化させ、さらに効率的に利用していくために は、各地域での需要・供給面での特性を考慮した利用を行っていくことが有効である。既に、総人口にして8千万人を超える 人口に相当する自治体が2050年までにCO2排出実質ゼロを表明している。これらの自治体が、互いの特徴を生かしつつ、 地域を超えた横断的な取組を進め、それが日本の津々浦々広がっていくことができれば、日本ネットゼロ社会の実現に大き く貢献することになろう。 8)レジリエンスの強靭化 日本は元来地震や風水害など震災により甚大な被害を受けてきたが、さらに気温上昇を食い止めることができないのであ れば、さらにその被害の規模や頻度は拡大する。脱炭素社会の構築においても、再エネ発電の需要近接配置や、充電設備
脱炭素社会に向けた論点 ④
9)社会・経済のトランジション 脱炭素社会の実現に向けて、特に化石燃料を多く利用する企業は、提供する財・サービスやその生産方法について、大き な転換が強いられることになる。企業においては、転換に向けた知識・スキルの取得を早急に取り組む必要がある。このよ うな取組の必要性は、情報技術の進展の文脈でも言われている。いずれにせよ、産業構造、経済システム、ひいては働き 方に関する大転換が迫られている。このトランジションに柔軟に対応できるように支援方策が必要となる。 10) AI・IoTの貢献 IoT、AI、ビッグデータなど、第4次産業革命ともいうべき著しい情報通信技術の進展が見られ、これらを活用した新たな サービスが急速に成長している。これらのサービスは、人の移動の代替、効率的な交通・物流システム、変動性の高い自 然エネルギーの需給制御などを通じて、脱炭素化に大きく貢献することが期待される。一方で、情報通信技術の爆発的な 普及が電力消費の増加につながることも懸念されている。情報通信技術の進展に伴う電力需要を制御しつつ、脱炭素社会 の構築に貢献する情報通信技術の社会実装していくことが必要である。 11) After/With コロナ 感染症への対応として、移動の制限、密の回避に対応できるような社会を構築していくことが必要である。就業場所の多様 化、休暇の分散など、働き方改革ともに、行われていくべき取組であろう。脱炭素社会での文脈においても、コロナ禍によっ て急速に促進されたビジネスにおけるオンラインコミュニケーションは今後も継続・進化し、ビジネス移動の低減に貢献して いくことが期待される。また、混雑集中の低減及び分散利用されることで、資本稼働率の平準化され、マテリアル効率の改 善される可能性がある。コロナ禍に伴う社会変容を考慮して、脱炭素社会の検討を実施すべきである。 12)カーボンプライシング・炭素市場の創出 この先、人為的に大気中に放出できる温室効果ガスの量は限られている。経済活動において、限られた資産を利用する場 合には、価格付けによって需給調整が行われること、また、予め割当量を設定されるのが当然である。温室効果ガスの排 出についても同様であり、カーボンプライシング制度や炭素市場の設計・創出を早急に実施する必要がある。
脱炭素社会に向けた論点 ⑤
13) 金融のグリーン化 脱炭素社会の構築には膨大な資金が必要となるため、官民の資金の流れをネットゼロ社会構築の方向に向けることが必 要。気候関連のリスク・機会に関する情報開示のフレームワークのもと、企業の気候変動対策に資する取組やイノベーショ ンが適切に「見える化」されていかなければならない。また、グリーンボンドなどESG要素を考慮した金融商品、不動産等が 市場において「普通に」流通し、企業と投資家間の対話のもと、気候変動に対応しながら、同時に企業価値を高めていかな ければならない。 14) 脱炭素社会構築に向けた意識の共有と制度変革 昨今におけるゼロカーボンに向けた世界的な動きは、欧州を中心とした政府、企業、国民の脱炭素社会構築に向けた意識 の高まりが牽引した。今後は国内においても、全てのステークホルダーがネットゼロを目指すことを共有し、見える化された 個々の取組をもとに相互牽引して目標に邁進していくことが必要になる。そのための制度や仕組みづくりを早急に検討する 必要がある。
脱炭素社会に向けた論点 ⑥
電化やカーボンリサイクルの社会実装はネットゼロ社会の実現には不可欠な要素である。一方で、従前の大
量生産・大量消費社会を支えるエネルギー依存社会のまま、電化やカーボンリサイクルを社会実装していく
ことは、経済的負担をむやみに大きくしてしまうことになる。
そのためには、これまでエネルギーを消費することで賄われてきたサービスに対して、少ないエネルギー・マ
テリアルでも高い便益・効用が得られる社会へと変容していくことが必要となる。そのことは我慢を強いること
ではなく、エネルギーを使わないで同等もしくはこれまで以上のサービスを求めるようにすればよい。例えば、
毎日のマイカー通勤、2時間の打ち合わせのための飛行機出張、これらをオンラインでのコミュニケーション
にシフトさせること、また、住宅の断熱性を強化し、暖房機器の使用を減らすこと、といったことである。これら
は我慢ではない。それどころか、新たな活動時間や快適な住空間を創出し、我々の生活をより豊かなものに
してくれる。このようなアイデアはまだまだ多数あるはずであるし、情報通信技術の進展もこの変容を後押し
するであろう。
脱炭素社会の実現は、技術イノベーションと社会変容が相俟って実現するものであり、今後の検討にあたり、
この両輪の推進がバランスよく検討なされていくことに期待する。
おわりに
(参考) 将来の活動量に関する想定
サービス需要 2018=1.0 代替・効率向上の効果 2018=1.0 2030 2050 2030 2050 ELE・H2 2050 LED・Zero 運輸部門 乗用車 1.0 0.9 ▲0.0 ▲0.1 ▲0.3 ※1 バス 1.0 0.9 ▲0.0 ▲0.1 ▲0.3 貨物車 1.1 1.2 ▲0.0 ▲0.1 ▲0.3 二輪車 1.0 0.9 ▲0.0 ▲0.1 ▲0.3 鉄道 1.0 0.9 ▲0.0 ▲0.1 ▲0.3 船舶 1.0 1.0 ▲0.0 ▲0.1 ▲0.3 航空 1.0 1.0 ▲0.0 ▲0.1 ▲0.3 家庭部門 業務他部門 暖房 1.0 1.0 ▲0.1 ▲0.1 ▲0.3 冷房 1.0 1.0 0.0 0.0 ▲0.1 給湯 1.0 1.0 0.0 0.0 ▲0.1 炊事 1.0 1.0 0.0 0.0 ▲0.1 動力他(家庭) 1.2 1.3 0.0 0.0 ▲0.2 動力他(業務) 1.2 1.5 0.0 0.0 ▲0.2 産業部門 農林水産業、食料品、繊維、他製造業 1.0 1.0 0.0 0.0 ▲0.1 鉱業、建設業、金属 1.0 1.0 0.0 0.0 ▲0.2 紙パルプ、石油化学、窯業土石、鉄鋼 0.9 0.9 0.0 0.0 ▲0.2 電炉鋼シェア (25%) 50%/25% 40%/50% その他化学 1.1 1.3 0.0 0.0 0.0 機械 1.1 1.3 0.0 0.0 ▲0.22018 2030 2050 運輸部門 自動車 石油(乗用) ’18 石油比 1.0 1.3 1.5 石油(バス・貨物) 1.0 1.1 1.2 水素 2.0 2.0 2.0 電力(乗用) 4.0 4.0 5.0 電力(貨物) 2.0 2.0 3.0 鉄道 電力 ’18 電力比 1.0 1.1 1.2 石油 0.4 0.4 0.4 水素 0.5 0.6 0.6 船舶 石油 ’18 石油比 1.0 1.1 1.2 水素 1.5 1.5 1.5 電力 3.0 3.0 3.0 航空 石油・水素 ’18 石油比 1.0 1.0 1.2 家庭・業務他部門 暖房 燃焼機器 out/in 0.95 0.95 0.95 水素 1.6 1.6 1.6 電気ヒートポンプ 2.5 3.0 3.5 冷房 電気ヒートポンプ out/in 4.0 4.5 5.0 給湯 燃焼機器 out/in 0.85 0.90 0.95 水素 1.6 1.6 1.6 電気ヒートポンプ 3.0 4.0 5.0 炊事 燃焼機器 out/in 0.50 0.55 0.55 電気調理機器 0.80 0.80 0.80 動力他 電力機器 ’18 比 1.00 1.25 1.50 燃焼 工業炉の高効率化 out/in 1.00 1.10 1.20
(参考) 将来のエネルギー効率に関する想定
2018 2030 2050LED 2050ELE 2050H2 2050Zero 乗用車
ICV 100% Oil 83% Oil 10% (O/B/S) 0% 10% (S) - BEV 0% 16% 90% 100% 70% 90%
FCV-H2 0% 1% - - 20% 10%
貨物車・バス
ICV 100% Oil 83% Oil 10% (O/B/S) 10% (O/B/S) 10% (S) 10% (B/S) BEV 0% 16% 50% 75% 50% 50% FCV-H2 0% 1% 40% 15% 40% 40% 二輪車 ICV 100% Oil 100% Oil 10% (O/B/S) 0% 10% (S) 10% (B/S)
BEV 0% 0% 90% 100% 90% 90% 鉄道
電力 96% 96% 96% 100% 96% 98% 内燃機関 4% Oil 4% Oil 4% (O/B/S) - 2% (S) -
FC - - - - 2% 2%
船舶
内燃機関 100% Oil 100% Oil 80% (O/B/S/N) 67% (B/N) 67% (S/N) 60%(B/S/N)
電動(蓄電) - - - 33% - 20%
電動(FC) - - 20% - 33% 20%
航空 内燃機関 100% Oil 100% Oil 100% (O/B/S) 100% (O/B/S) 100% (O/B/H/S) 100% (B/S)
電動 - - - - - -
【運輸部門】
BEV:電気自動車、FCV:燃料電池自動車、ICV:内燃機関自動車、 O:石油、G:ガス、B:バイオ燃料、S:合成燃料、H:水素、N:アンモニア
2018 2030 2050LED 2050ELE 2050H2 2050Zero 暖房 電力/水素 54%/- 70%/- 80%/- 100%/- 70%/10% 90%/- 燃料 46% (O/G) 30% (O/G) 20% (O/G/B/S) - 20% (S) 10%(B/S)
冷房 電力 100% 100% 100% 100% 100% 100%
給湯 電力/水素 35%/- 40%/- 60%/- 100%/- 40%/20% 70%/10% 燃料 65% (O/G) 60% (O/G) 40% (O/G/B/S) - 40% (S) 20%(B/S)
炊事 電力 39% 50% 70% 100% 70% 90%
燃料 61% (O/G) 50% (O/G) 30% (O/G/B/S) - 30%(S) 10%(B/S)
2018 2030 2050LED 2050ELE 2050H2 2050Zero 暖房 電力/水素 28%/- 48%/- 77%/- 97%/- 67%/10% 87%
燃料 69% (O/G) 50% (O/G) 20% (O/G/B/S) - 20% (S) 10% (B/S)
冷房 電力 80% 84% 85% 95% 85% 95%
吸収式 16% (G) 10% (G) 10% (G) - 10% (S) -給湯 電力/水素 14%/- 44%/- 74%/- 94%/- 54%/20% 74%/10%
燃料 79% (O/G) 50% (G) 20% (O/G/B/S) - 20% (S) 10% (B/S)
炊事 電力 21% 40% 70% 100% 70% 90%
燃料 76% (O/G) 60% (O/G) 30% (O/G/B/S) - 30%(S) 10%(B/S)
【家庭部門】
【業務部門】
O:石油、G:ガス、B:バイオ燃料、S:合成燃料、H:水素
2018 2030 2050LED 2050ELE 2050H2 2050Zero 農林水産 業 電力5% 燃料 95% (O) 電力5% 燃料95% (O) 電力50% 燃料50% (O/B) 電力 100% 電力50% 燃料 50% (S/B) 電力80% 燃料 25% (S/B) 建設業 電力24% 燃料 76% (O) 電力 24% 燃料76% (O) 電力40% 燃料60% (O/B) 電力 100% 電力40% 燃料60% (S/B) 電力60% 燃料 40% (S/B) 製造業 (除く高炉、 セメント) - - 石炭・石油→ガス 石炭・石油→電力 →合成燃料・ガス石炭・石油 →電力・バイオ・合成石炭・石油・ガス 高炉 石炭9割 石炭9割 石炭8割 水素1割 CCS 100% 石炭8割 水素1割 CCS 100% 水素9割 CCS 100% 石炭4割 水素5割 CCS 100% セメント - - CCS100% CCS100% CCS100% CCS100% 石油化学 - - - - - CCS100% プラスチッ ク原料 化石燃料100% 化石燃料100% 化石燃料50% バイオマス50% 化石燃料 25% バイオマス50% 合成燃料 25% 化石燃料25% バイオマス25% 合成燃料50% 化石燃料25% バイオマス50% 合成燃料25%
【産業部門】
(参考) 将来の技術普及に関する想定 ③
2018 2030 2050LED 2050ELE 2050H2 2050Zero 水力 7% 90 TWh 102 TWh 102 TWh 102 TWh 102 TWh 太陽光 6% 75 TWh 302 TWh 403 TWh 454 TWh 403 TWh 陸上風力 1% 16 TWh 190 TWh 290 TWh 335 TWh 290 TWh 洋上風力 2 TWh 292 TWh 521 TWh 839 TWh 521 TWh 地熱 0% 11 TWh 42 TWh 42 TWh 42 TWh 42 TWh バイオマス 4% 49 TWh 74 TWh 74 TWh 74 TWh 74 TWh