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S I. dy fx x fx y fx + C 3 C vt dy fx 4 x, y dy yt gt + Ct + C dt v e kt xt v e kt + C k x v k + C C xt v k 3 r r + dr e kt S Sr πr dt d v } dt k e kt

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(1)

参考書

E. クライツィグ著、北原和夫訳:技術者のための高 等数学3『常微分方程式』(培風舘) E. クライツィグ著、阿部寛治訳:技術者のための高 等数学5『フーリエ解析と偏微分方程式』(培風舘) http://ayapin.film.s.dendai.ac.jp/~matuda /TeX/lecture.html: 全講義テキスト (PDF・PS)

目 次

1 1 階常微分方程式 2 1.1 直接積分形 . . . . 2 1.2 変数分離形 . . . . 3 1.3 同次形 . . . . 9 1.4 線形微分方程式 . . . . 11 1.5 曲線族,直交曲線 . . . . 13 2 高階常微分方程式 15 2.1 Laplace 変換. . . . 15 2.1.1 有用性:代数方程式への置換え . . 15 2.1.2 基本的な初等関数の変換公式の導出 15 2.2 Laplace 変換公式 . . . . 16 2.2.1 公式 (22) の具体例 . . . . 16 2.2.2 ガンマ関数 . . . . 17 2.3 その他の基本的な性質 . . . . 17 2.3.1 線形性 . . . . 17 2.3.2 微分と積分の変換公式 . . . . 18 2.3.3 s 軸上の移動 . . . . 18 2.3.4 t 軸上の移動 . . . . 18 2.4 周期関数への応用 . . . . 19 3 フーリエ解析 24 3.1 周期関数,三角級数 . . . . 24 3.2 フーリエ級数,オイラーの公式 . . . . 25 3.3 フーリエの定理 . . . . 26 3.4 単一正弦波に対する定常解 . . . . 27 3.5 一般の周期関数に対する定常解 . . . . 28 3.6 フーリエ変換 . . . . 31 3.6.1 フーリエ積分表示. . . . 31 3.6.2 フーリエ積分定理. . . . 31 3.6.3 複素形式のフーリエ積分 . . . . 32

常微分方程式

独立変数 x とその関数 y(x) および y の導関数 y0, y00, · · · , y(n) を含む方程式 F (x, y, y0, y00, · · · , y(n)) = 0 (1) を常微分方程式と呼び,n を階数 といいます.ある関数 y(x) が微分方程式 (1) を満たすとき,これを解といいま す.n 階の常微分方程式の解には,最大 n 個の任意定数が 含まれますが,これら全ての任意定数を含む解を一般解, 任意定数に特定の値を与えて得られる解を特解,一般解で 表せない解を特異解と呼びます. 常微分方程式の解を,既知関数とそれらの積分で求める 方法を求積法あるいは初等解法といいます.この方法で解 が求められるのはごくに限られた特殊な形式のものです が,物理学では非常に実用的なものも含まれます. 学習の進め方 さて以降は,常微分方程式の解法を主とし て次に示すような4段階にわけて説明していきます。 物理現象を数理的にモデル化して常微分方程式の形に 整理する. その一般解を求める.数学的な手法や知識はここに現 れます. 初期条件や境界条件から問題に適した特殊解を決定す る.物理学では一般解も大事ですが,条件を満たす特 殊解が要求される場合も多いです. 検算および物理的な解釈を行う.とても重要な事柄 です. 単に与えられた微分方程式を解く数学上のテクニックを身 につけるのではなく,何よりも物理現象を数理的に整理し ていくという姿勢と方法を習得して欲しいと願っています。

(2)

1

1

階常微分方程式

1.1

直接積分形

¶ ³ 微分方程式 dy dx = f (x) (2) の一般解は,言うまでもなく両辺を x に関して積分 して,f (x) の不定積分 y = Z f (x)dx + C (3) の形で与えられます.ここに C は積分定数と呼ばれ る任意定数です.式 (2) は dy = f (x)dx (4) の辺々をそれぞれ積分したと考えることもできます. 実際,ある物理量 x, y の微小変化,すなわち dy と dx の間の関係をこのように書き下すことは非常に頻 繁に行われます. µ ´ ¤ £ ¡ ¢ 例題 1 質点の一次元運動 x(t) を考えましょう.その速 度が v0e−kt (k > 0) で与えられ,初め原点にいたとする とき,x(t) を求めなさい. [解] モデル化 速度は v = dx dt ですから, dx dt = v0e −kt が求める微分方程式. 一般解 これを積分して,一般解 x(t) = −v0e −kt k + C を得ます. 特殊解 初期条件 x(0) = −v0 k + C = 0 より C が求まり, x(t) = v0 k(1 − e −kt) 検算・物理的解釈 解を微分して検算してみましょう. dx dt = d dt n v0 k(1 − e −kt)o= −k · −v0 ke −kt= v 0e−kt 指数関数を含む場合には,その漸近的な性質 x(±∞) ≡ lim t→±∞x(t) を調べることが重要です.この場合には −k < 0 なので 0 から定数 v0 k に漸近します. ¤ £ ¡ ¢ 例題 2 (自由落下) 地表近くでは,質点は一定重力加速 度 g で落下します.まず,初速度を 0 として落下速度 v(t) を求め,さらに落下距離 y(t) を求めなさい. [解] まさに教科書的な問題で高校で既に学習した事柄で す.しかし,単に代数解を思い起こすだけでは発展があり ません.微分方程式という目で見直しましょう. モデル化 加速度は速度の時間微分ですから求める微分 方程式は dv dt = g です.さらに速度は変位 (落下距離) の時間微分ですから dy dt = v(t) が落下距離に関する微分方程式となります. 一般解 まず v(t) に関する微分方程式を直接積分して一 般解 v(t) = gt + C を得ます.この結果を y(t) の微分方程式の右辺に代入し て眺めると,やはり簡単に積分可能で y(t) = 1 2gt 2+ Ct + C0 という一般解が得られます. 特殊解 初速度 v(0) = 0 より C = 0,また落下距離の定 義から自然な初期条件 y(0) = 0 が与えられ C0 = 0 を得 ます.よって y(t) = 1 2gt 2 がこの場合の解となります. 検算・物理的解釈 簡単に検算できます.この解は,単純な 形なので暗記している人も多いでしょう.ガリレイはこの 代数関係を導き出すのに随分と実験を繰り返したようでし たから,ガリレイの頃の力学のレベルに達していると言っ ていいかもしれません.しかし,それではその後ニュート ン等によって完成された古典力学を理解したとは言えませ ん.大学生となった皆さんが覚えるべき事柄はこの代数関 係自身ではなく,この代数関係の導出過程なのです. ¤ £ ¡ ¢ 例題 3 (円の面積) 円の半径を r から r + dr に変化さ せたときの面積の変化を考えて,円の面積 S と半径に関 する微分方程式を導き,S(r) を求めなさい.ただし,円 周の長さが 2πr で表されることは既知とします. [解] モデル化 円環の面積は (幅)×(円周) と近似できます. これが円の面積 S の微小変化量に等しいので dS = 2πrdr. 一般解 辺々を積分して S(r) = Z dS = Z 2πrdr = πr2+ C 特殊解 S(0) = 0 より明らかに C = 0 ですから,S = πr2 検算・物理的解釈 今まで常識だった事柄も,新しい視点 で捉え直すことができます.

(3)

問題 1 (球の体積) 球の半径を r から r + dr に変化 させたときの体積変化を考えて,球の体積 V と半径に関 する微分方程式を導き,V (r) を求めなさい.ただし,球 の表面積が 4πr2 であることは既知とします. 問題 2 (ばねのエネルギー) ばねの先端の変位 x はバ ネが自然長となっている位置を原点に測ります.いま変位 を x から x + dx に変化させたときに要する仕事がバネに 蓄積されたエネルギー U となると考えて,U (x) を求めな さい. 問題 3 (棒の端のまわりの慣性モーメント) 線密度 λ の棒の長さが x から x + dx に変化したときの,反対側の 端のまわりの慣性モーメントの変化を考えて,長さ l,質 量 m の一様な細い棒の端のまわりのモーメントを求めな さい. 問題 4 (円盤の慣性モーメント) 面密度 σ の円盤の半 径が r から r + dr に変化したときの慣性モーメントの変 化を考えて,半径 a,質量 M の一様な円盤の中心軸まわ りのモーメントが I = 1 2M a 2 となることを示しなさい.

1.2

変数分離形

¶ ³ 多くの 1 階微分方程式は,代数的な操作によって次の 形に変形させることができます. dy dx = f (x) g(y) (5) このように x だけの関数 f (x) と y だけの関数 g(y) に分けられたことを指して,変数分離形と呼びます. さらに g(y)dy = f(x)dx (6) と書き直せば,左辺は y のみ,右辺は x のみの式と なりこの命名がはっきりします.一般解は,両辺を直 接積分して (もし積分が存在すれば) Z g(y)dy = Z f (x)dx + C (7) と表されます. この形に帰着できる例が沢山あります.運良く公式に ある不定積分になっていれば,関数の形が具体的求ま りますから,大変見通しが良いといえます.以下は, その運の良い例です. µ ´ ¤ £ ¡ ¢ 例題 4 (半減期) 放射性元素が崩壊する速さはその瞬間 に存在する物質の量に比例します.また量の半分が崩壊す る時間は半減期と呼ばれます.半減期 T の放射性元素の 初期の存在量を N0として,任意の時間の存在量を求めな さい. [解] モデル化 存在量を N(t) とおくと,その崩壊による 消滅の速さは −dN dt ですから,微分方程式は −dN dt = kN と表されます. 一般解 変数分離して 1 NdN = −kdt と書き表し,両辺を積分すれば,一般解 log N = −kt + C ⇔ N = C0exp[−kt] を得ます. 特殊解 初期条件 N (0) = N0より C0= N0,また,半減 期の定義より 1 2N0= N0exp[−kT ] ですから,k = log 2 T . よって N (t) = N0exp · log 2 T t ¸ . 検算・物理的解釈 検算は簡単です.解が指数関数で表され る典型的な問題です.時間変化率が定数であるとみなして, このように量が指数的に減少・増加していく物理現象は数 多くみられます.その場合に半減期のような時定数 (現象 に応じて緩和時間,減衰率,立上り時間などと呼ばれる) が現象を特徴付ける訳です. 問題 5 (Lambert の光吸収の法則) 非常に薄い層を通 過する際の光の吸収は,層の厚さと光の強度に比例すると いう.この法則を微分方程式で表現し,任意の位置 x にお ける光の強度 I(x) を求めなさい. ¤ £ ¡ ¢ 例題 5 (雨粒の落下速度) 静かな大気中を落下する雨粒 (質量 m ) には重力と空気の抵抗が働きます.抵抗が速度 v に比例するという Stokes の法則を考慮して,雨粒の落 下速度を時間の関数として求めなさい. [解] モデル化 Newton の運動方程式 m ˙v = f に素直に 代入して mdv dt = mg − kv を得ます.もちろん k を比例定数としてます. 一般解 変数を左右に分離すれば dv mg k − v = k mdt と整理でき,辺々積分して − log³ mg k − v ´ = k mt + C ⇔ v = C0exp µ −k mt ¶ +mg k

(4)

特殊解 自然な初期条件 v(0) = 0,すなわち雨粒は静止 状態から落下したという条件を考慮すれば, v(t) =mg k ½ 1 − exp µ −k mt ¶¾ が求める解です. 検算・物理的解釈 十分時間が経ったとき速度は無限大と はならずに,有限値 v∞ = mg k に漸近します.また,こ の抵抗は空気の粘性によるもので,粘性係数を η,雨粒 の半径を a とすると係数は k = 6πηa で与えられます. 水の密度を ρ とすれば m = 4πρa3/3 より,最終速度は v∞= mg/k = 2ρga2/9η ∝ a2 と表され,小さい粒はゆっ くり落下するということになります.霧を思い浮かべると, 十分に納得できる結論です. 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 0 2 4 6 8 10    1-exp(-0.5*x) 1/e 問題 6 (落下:最終速度) 速度 v に比例した抵抗が働く 落下運動において,初速度 v0 が与えられた場合の v(t) を 求めなさい.最終速度 v∞と初速度の関係はどうなるか解 析しなさい. 問題 7 (落下:v に比例した抵抗力) 速度 v に比例した抵 抗が働く場合の質点の落下距離 y(t) を求めてみなさい. 問題 8 (落下:v2 に比例した抵抗力) 速度の自乗 v2 に 比例した抵抗力が作用する場合に,落下速度 v(t) および 最終落下速度 v∞を求めなさい.重力加速度は g です. さ らに,速度 v およびその自乗 v2,両方ともに抵抗力が働 く場合について解析してみなさい. 問題 9 (Newton の冷却の法則) 実験的な例証から『物 体の温度 T の変化率は周囲の温度との差に比例する』と いう法則が得られている.熱い金属球を温度が一定に保た れている水に入れて冷却するとき,金属球の温度 T (t) を 求めなさい.一定水温を Twとして,金属の初期温度を T0 としなさい. ¤ £ ¡ ¢ 例題 6 (落下:万有引力) 地表近くでは物体に働く力は 一定とみなせますが,遠く離れると万有引力の法則より距 離の自乗に反比例します.地表からロケットを打ち上げる ような場合には,当然このような力を考える必要がありま す.初速 v0 で鉛直上方に打ち上げられたロケットの速度 v(t) を求めなさい. [解] モデル化 万有引力定数を G, 地球の質量を M と すると,Newton の運動方程式は dv dt = − M G r2 = − gR2 r2 µ 地表において g = M G R2 であるから ¶ となる.ここで ¨ ¥ dv dt = dr dt dv dr = v dv dr § ¦ と変数変換をすれば,次の微分方程式を得ます. vdv dr = − gR2 r2 一般解 変数分離して辺々積分すれば v2 2 = gR2 r + C 特殊解 初期条件 r = R で v = v0 より v2 2 = gR2 r gR2 R + v2 0 2 v = ± s 2gR2 µ 1 r 1 R+ v2 0 0 2 4 6 8 10 12 14 1 10 100 1000               図 1 上昇距離 r と速度 v の関係 検算・物理的解釈 r が大きくなるにつれ v は小さくな り r = R µ 1 − v 2 0 2k ¶−1 で 0 となり,落下を始めます.し

(5)

かしそれは右辺が正の場合,すなわち p2gR > v0の条件 下での話です.v0> p 2gR では,常に v > 0 となり,ロ ケットは地球に戻ってきません.この速度は地球重力圏か らの脱出速度と呼ばれます. v が求まったので r(t) を求めましょう.ちょっとテク ニックが必要です.変数変換 r = u−1 = ρR を施すと du u2u − u0 = − p 2gR2dt u0= 1 R µ 1 − v02 2gR ¶ = ξ0 R という変数分離形の微分方程式を得ます.やや繁雑な計算 を経て以下の結果となります. ( i ) ξ0 > 0 ⇔ v0 < p 2gR:脱出速度未満では,頂点 (v = 0 のときの時間を T∗ とおく) までは p 2gRξ0t = −R · ρ r 1 ρξ0 − 1 + 1 ξ0tan −1 r 1 ρξ0− 1 µr 1 ξ0 − 1 + 1 ξ0tan −1 r 1 ξ0 − 1 ¶ ¸ = F (ρ) 頂点を過ぎると p 2gRξ0t = p 2gRξ0T∗− F (ρ) ( ii ) ξ0= 0:脱出速度では, p 2gR2t = 2 3R 3 2 µ ρ32− 1 ¶ 1e+02 1e+03 1e+04 1e+05 1e+06 1e+07 1e+08

1e+00 1e+01 1e+02 1e+03 1e+04

 t [sec]   r/R  = 0.9999  =0.99  =0.9  =0.8  =0.7 cX3/2   図 2 上昇距離 r と時間 t の関係 問題10 (落下:万有引力) 地表から鉛直上方に脱出速度 p 2gR より大きい初速度 v0で質点を打ち上げた.地球の 中心からの距離 r(t) を求めなさい. ¤ £ ¡ ¢ 例題 7 (紐の運動) 滑らかな細い釘に長さ 2l,線密度 λ の細い紐が掛けられています.左右の長さが l のときは平 衡ですが,先端を x0ずらして静かに離すと滑べり始めま す.任意の時刻の紐の先端の位置 x(t) を求めなさい.重 力加速度は g としなさい. x x l v    [解] 成長する雨粒やロケットに類して,質量が変化する 問題です.形から考えれば x(t) の 2 階常微分方程式なの ですが,落下運動と同じ様に,速度 v(x) の 1 階微分方程 式へと階数を下げることができます.さらに関数 v(x) 自 体を x(t) の 1 階常微分方程式と見直して解きます. モデル化 紐全体が同じ大きさの加速を受けます.作用す る力は,左右の紐への重力です.紐の抗力は,運動に対し て垂直なので加速度を与えません.従って運動方程式は 2λ ldv dt = λ(l + x)g − λ(l − x)g = 2λgx dv dt = v dv dx と変換して,まず v(x) の微分方程式は vdv dx = g l x. これは簡単な変数分離の形ですから,v, x 毎にまとめて積 分すると v2= g l x 2+ C 初期条件 t = 0 で x = x0, v = 0 より C を求めて dx dt = v = r g l (x2− x20) (∗) が求める微分方程式. 一般解 変数分離形なので,辺々積分を実行して一般解は s l g log µ x + q x2− x2 0 ¶ = t + C0 特殊解 初期条件 x(0) = 0 より C0 を求めて s l g log à x +px2− x2 0 x0 ! = t

(6)

変形して x に付いて解いて x = x0e g lt+ e− g lt 2 = x0cosh r g l t 検算・物理的解釈 双曲線 (hyperbolic) 関数に関する公式 ¨ ¥ cosh2t = sinh2t + 1 d dtcosh t = sinh t, d dtsinh t = cosh t § ¦ より r g l = ω とおいて dx dt = x0ω sinh ωt 一方 v = ω q (x2− x2 0) = ω q (x2 0cosh2ωt − x20) = x0ω p cosh2ωt − 1 = x0ω sinh ωt ですから,x(t) は確かに式 (∗) を満たします.また,同様 にして vdv dx = dv dt = ω 2x 0cosh ωt = g l x も確認できます. 問題11 紐の運動において,紐には内力として張力 T が 働いている.T を求めなさい. [略解] 紐のどちらか側に注目して運動方程式を立てます. 初期状態に依らず x のみの関数となります. T (x) = λ µ x2 l − lg 問題12 線密度 λ,長さ l の鎖が,滑らで水平な机の端 から鉛直に滑べり落ちた.初めに x0だけ垂れていたとし て,鎖の鉛直に滑べり落ちている部分の長さ x(t) を求め なさい.また,張力 T (x) を求めなさい. [略解] 微分方程式は例題と同じになりますから x(t) は同 じになります.しかし,張力 T (x) は違います. T (x) = λ ³ 1 − x l ´ xg 問題13 半径 r の滑らかな釘に掛けられた紐の運動を解 析しなさい. ¤ £ ¡ ¢ 例題 8 (化学反応:質量作用の法則) 不可逆な化学反応 A + B → C における生成分子 C の分子数 x の時間変化 を考えましょう.初期状態では,A,B の分子数はそれぞ れ a,b であり,C の分子数は 0 であったとします. [解] モデル化 C 分子の生成率は A 分子,B 分子の分子 数に比例すると考えられますから,その比例定数を k と おけば,反応を支配する微分方程式は dx dt = k(a − x)(b − x) となります. 一般解 変数分離して kdt = dx (a − x)(b − x) = µ 1 a − x− 1 b − xdx b − a 辺々積分すれば kt + C = 1 a − blog µ a − x b − x a − x b − x = C 0e2µt µ µ = a − b 2 k ¶ 特殊解 初期条件 x(0) = 0 より C0= a/b.x について解 いて x = ab eµt− e−µt aeµt− be−µt. 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 100 200 300 400 500       図 3 C 分子の生成量の時間変化. a = 1.0, b = 0.9 検算・物理的解釈 やや検算は繁雑ですが各自確認してく ださい.いま,仮に a > b とすれば µ > 0 ですから,十 分時間が経った後には x∞= b, ˙x = 0.すなわち,初期時 に数の少ない方の分子が枯渇して,反応が停止します.も ちろん,多い方の分子は未反応分が残ります.実は a = b の場合は関数形が変わってしまいますので,念のため確か めてください. 問題14 (可逆反応) 2A *) X なる可逆反応により,分子 A から分子 X が生成する. 任意の時刻での X の分子数

(7)

x(t) を求めなさい.ただし,初め A の分子数は 2a,X の 分子数は x(0) = 0 であったとする.また,2A → X およ びその逆反応の 2A ← X の反応定数をそれぞれ k1, k2と おきなさい. ¤ £ ¡ ¢ 例題 9 (ロジスティック方程式) 生物集団の個体数 x を 時刻 t に関するの連続量とみなし,その時間変化が個体数 x に比例するだけではなく,個体数と飽和値との差 s−kx( k:定数)にも比例すると考えて,微分方程式を解きなさい。 [解] モデル化 題意から,次の微分方程式を得ます. dx dt = (s − kx)x 一般解 変数分離して dt = dx (s − kx)x = µ 1 x+ k s − kxdx s 辺々積分して t + C = 1 s © log x − log(s − kx)ª= 1 s log x s − kx ⇔ C0est= x s − kx x = sest C0+ kest 特殊解 初期条件は 0 < x(0) = s C0+ k < s k を満たすは ず.その外に自然な条件はないでしょう.

0

0.5

1

-6

-4

-2

0

2

4

6

 /    

1.5

C= e

-2

C= e

-1

C= e

1

C= e

2

C=1

図 4 生物集団の個体数の変化. k = 1, s = 1 検算・物理的解釈 2種類の個体 A,B があって A が B を捕食する場合(連立となる)への応用などが思い浮かぶ でしょう。以外に難しく解析的な解が得られないので,数 値解析に頼ることになります。 ¤ £ ¡ ¢ 例題10 (貯水槽からの水の流出) 断面積 S 一定の貯水 槽の底に面積 a の孔があり,孔から水が流れ出ています. 底から水面までの距離 y(t) を求めなさい.ただし,初期 状態を y(0) = H とします. [解] モデル化 単位時間に孔から流出する水量は (流束 の断面積) × (流速) です.流束の断面積は孔を通過する瞬 間には孔の面積に等しいと考えていいでしょうから,dt の 間には dV = avdt の水が流出します.ところで,流速 v は Torricelliの法則より v =p2gy ですから,結局 dt 間 の流出量は dV = ap2gy dt と表せます.一方,貯水槽の水の減少量 dV0 は (断面積 ) × (高さ変化) ですから dV0 = −Sdy と表されます.と ころで水は途中で消えたりしませんから dV = dV0が成立 して ap2gydt = −Sdy が求める微分方程式です. 一般解 変数分離して各々積分すると −S a r 2 g y = t + C 特殊解 初期条件 y(0) = H より積分定数 C を求めて S a r 2 g y =S a s 2H g − t y(t) = ga 2 2S2 Ã S a s 2H g − t !2 検算・物理的解釈 t の二次関数,すなわち放物線を思い 浮かべると,状況が掴みにくいですが t の範囲を考えて図 を書けば納得できるでしょう.指数的ではありませんが単 調減少となっています.

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0

0.5

1

1.5

2

      

(1-t)

2 図 5 底孔からの水の流出による貯水槽水面の高さ変化

(8)

問題15 図のように半径 R の半円球の貯水槽の底に面積 a の孔があり,水が流出している.任意の時刻の水深 y(t) を求めなさい. ただし,初期には貯水槽は水で満たされ ていたとする. R y(t) 問題16 貯水槽の底から水が流出する問題を考える.貯 水槽の形状は鉛直軸のまわりの回転体であり,位置 y にお ける半径を r(y) とする.水深の変化の割合が一定である とき (つまり y(t) が t の一次関数),r(y) を求めなさい. 問題17 半径 R の円筒形の貯水槽に幅 w の亀裂が円筒 の軸方向に生じており水が流出している.初めの水深を H とおいて,水深の時間変化 h(t) はどのように表されるか. 重力加速度を g としなさい. [略解] h(t) = τ 2 (t + τ )2H µ τ = 3πR 2 w√2gHとなり,h = 0 となるには無限大の時間が必要となってし まう. ¤ £ ¡ ¢ 例題11 (気体の電離によるイオンの生成) 気体が電離し て,遊離した電子と正イオンが同じ数 n 個だけ生成され るとき, 電子とイオンが再結合して中性原子になる割合 は αn2 と考えることができる.ここに α は再結合定数と 呼ばれる.初め電離していない気体中において,ある時間 内では一定の割合 I でイオンが生成されたとすると,正味 のイオン数の変化率は dn dt = I − αn 2 で与えられる.任意の時刻におけるイオン数 n(t) を求め なさい. [解] モデル化 モデルは与えられています. 一般解 変数分離して k2= I/α とおくと, αdt = dn k2− n2 = 1 2k µ 1 k + n + 1 k − n ¶ となります.積分を実行して logk + n k − n = 2kαt + C ⇔ k + n k − n = C 0e2kαt が求める一般解です. 特殊解 初期条件 n(0) = 0 より C0= 1.よって k + n k − n = e 2kαt n = k(e 2kαt− 1) e2kαt+ 1 = r I αtanh( Iαt) 検算・物理的解釈 双曲線関数は実数に対しては周期関数 ではありません.正接 tanh(x) は全領域で単調増加な関 数で tanh(±∞) = ±1 x y y = 1 y = -1 y=tanh(x) 図 6 双曲正接 tanh(x) 曲線 問題18 (蒸発) ナフタリン球は蒸発によって小さくなっ ていくが,その速さはそのときの表面積に比例するという. 球の半径の経時変化 r(t) を求めなさい.また,3ヵ月の間 に半径が 1cm から 0.5cm になったとするとき,球が事実 上なくなってしまうまでに,あとどれくらい時間がかかる か見積りなさい. 問題19 (Stephan-Boltzmann の法則) 高温物体が熱 を失う割合は,その温度 T と周囲の温度 Te との 4 乗差 に比例する.すなわち,Boltzmann 定数を k として M cdT dt = −kS(T 4− T4 e) と表される.ここに,物体の質量を M ,比熱を c,表面積 を S とおいている.周囲の温度が一定値である場合に,任 意時刻 t と物体の温度 T (t) の関係を導きなさい.高温物 体の内部の温度分布は一様であると考えなさい. [略解] T (t) を陽に表すことはできないが,図に Teに漸近 する様子を示す. 問題20 (理想気体に関する Boyle–Mariotte の法則) 低圧かつ温度一定の気体について,体積 V (p) の変化率は −V /p に比例するという実験結果が報告された.この結果 を微分方程式で定式化して解きなさい.

(9)

0.2Te 0.4Te 0.6Te 0.8Te Te 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4    問題21 (導体中の電荷の消滅速度) 一様な導体中に電 荷があると,それはただちに表面に散逸してしまい,内部 にとどまることができない.オームの法則 ~i = σ ~E,電荷 保存の法則 ∇ ·~i + ∂ρ/∂t = 0,ガウスの法則 ∇ · ~E = ρ/ε0 に基づいて電荷の時間変化に関する微分方程式をたて,散 逸の時定数を求めなさい.また,金属( σ ∼ 107Ω−1m−1 )ではこの時定数がどの程度の値となるか計算しなさい.

積分公式

次の不定積分は頻繁に使います.基本公式ですから,導 き方も併せてしっかりと覚えましょう. ¶ ³ (i) Z dx x + a= log |x + a| (ii) Z dx x2+ a2 = 1 a arctan x a (a 6= 0) (iii) Z dx x2− a2 = 1 2alog ¯ ¯ ¯ ¯x − ax + a ¯ ¯ ¯ ¯ (a 6= 0) (iv) Z dx a2− x2 = arcsin x a = − arccos x a (a > 0) (v) Z dx x2+ a= log ¯ ¯ ¯x +px2+ a ¯ ¯ ¯ (vi) Z dx ax2+ bx + c =                                1 b2− 4aclog ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ 2ax + b −√b2− 4ac 2ax + b +√b2− 4ac ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (b2−4ac > 0) 2 4ac − b2arctan 2ax + b 4ac − b2 (b2−4ac < 0) −2 2ax + b (b 2−4ac = 0) µ ´

1.3

同次形

¶ ³ 右辺が変数の比だけの関数 dy dx = f ³ y x ´ (8) である微分方程式を同次形と呼びます.この場合には u = y x とおけば x, u の変数分離形になって,一般 解は log x = Z du f (u) − u+ C (9) と書けます.積分後 u = y x を代入して y と x の関 係式に戻します. µ ´ ¤ £ ¡ ¢ 例題12 (川を渡る船) 船が川岸の一点 P から l 離れた真 正面の対岸の一点 O に進むとき,船の進路を求めなさい. ただし,川は一定速度 vRで流れ,船の推進速度は vB で 船は常に O 点に向かっているものとします. [解] モデル化 点 O を原点にして OP の向きに x 軸, 川の流れの向きに y 軸をとります.船の進路上の任意の 一点 P(x, y) における速度ベクトルは,船の推進速度と川 の流れのベクトル和となります.OP が x 軸となす角度を θ とおくと,船の速度成分は dx dt = −vBcos θ, dy dt = vR− vBsin θ よって dy dx = vBsin θ − vR vBcos θ r =px2+ y2, x = r cos θ, y = r sin θ を代入して dy dx = y − βpx2+ y2 x µ β = vR vB ¶ が求める微分方程式. 一般解 同次形なので y = ux とおくと u + xdu dx = u − β p 1 + u2 と変形され, log x = − Z du β√1 + u2 = − 1 βlog ³ u +p1 + u+ C 特殊解 初期条件 x = l で y = 0 すなわち u = 0 より C = log l を代入して −β log x l = log ³ u +p1 + u2 ´ ³ x l ´−β = u +p1 + u2 ½³x l ´−β − u ¾2 = 1 + u2 u = 1 2 ½³x l ´−β −³ x l ´β¾ したがって

(10)

y = l 2 ½³x l ´1−β ³ x l ´1+β¾ 0 0.5 1 1.5 2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1               図 7 川を渡る船の進路 検算・物理的解釈 vB > vR ならば β < 1 ですから,目 標点 O に到達します.vR= vB の場合には放物線を描き, O より川下 2 l の位置に到達します.しかし,vB < vR場合には 1 − β > 0 で 1 x1−β の項がありますから,x → 0 で y → ∞,すなわち対岸に漸近しますが到達できません. 【別解】 極座標系で考えると, 法線方向: dr dt = −vB+ vRsin θ 接線方向: rdθ dt = vrcos θ となり, dr rdθ = dr dt rdθ dt に代入して,r(θ) に対する変数分離形の微分方程式 dr r = − µ vB vRcos θ− tan θ ¶ を得ます.辺々を積分して, log r = −vB vRlog tan µ θ 2+ π 4 ¶

− log cos θ + log c

θ = 0 で r = l より,c = l を代入して,極座標系の曲線 の方程式 l r = tan µ θ 2 + π 4 ¶1 β cos θ が求まりました.これを,デカルト座標系に変換します. x = r cos θ より µ l xβ = tan µ θ 2+ π 4 ¶ =1 + tan θ 2 1 − tanθ 2 µ l x−β = 1 − tan θ 2 1 + tanθ 2 であることに注意すれば, tan θ = 1 2 (µ l x−β µ l xβ) これを y = x tan θ に代入すれば答が得られます. 問題22 川を渡る船の問題において, t と x の関係を求 めなさい.それを利用して,一定速度 vR で動く飛行機を 標的にする推進速度 vB のミサイルの軌道を求めなさい. 初期には,飛行機はミサイルの発射台から距離 l 離れた位 置を,発射台と飛行機を結ぶ直線に対し垂直に動いていた としなさい. 0 0.5 1 1.5 2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 β=0.8 β=0.1 β=0.5 図 8 追跡線

(11)

[略解] t と x の関係は t = l 2vB ½ 1 1 − β ³ x l ´1−β + 2 1 − β2 1 1 + β ³ x l ´1+β¾ である(図参照).また,追いつく位置 y0y∗ 0 = β 1 − β2l 問題23 (放物面鏡) 点光源から放出された光がある形状 の鏡で反射され,平行光線となる.鏡の形状 y(x) を求め なさい. 問題24 (追跡線) 長さ L の正方形の各頂点に4隻のミサ イル巡洋艦が静止しており,ある瞬間に各艦が一斉にミサ イルを発射した.各ミサイルは常に右隣のミサイルに向 かって進み,水平に同じ速さで飛行するものとして,それ ぞれの軌跡を求めなさい. 問題25 次の1階常微分方程式を解きなさい. ( i ) y0 = −2xy ( ii ) 16yy0+ 9x = 0 (iii) y0 = 1 + y2 (iv) y0 = (1 + x)(1 + y2) ( v ) x + yy0= λy (vi) xy0= x + y (vii) xy0= (y − x)3+ y (viii) y0 = y + x y − x

1.4

線形微分方程式

¶ ³ x の関数 p(x), q(x) を係数とする 1 階微分方程式 L[ y ] ≡ dy dx + p(x)y = q(x) (10) を線形微分方程式といいます.まず斉次方程式と呼ば れる q(x) ≡ 0 の解を求めましょう.これは変数分離 形ですから,すぐに y0= ce− R p(x)dx = cw(x) という解が求められます.続いて,積分定数 c を x の関数とみなして u(x) とおき,式 (10) に代入整理す ると,u の微分方程式 du dxw(x) = q(x) ⇔ du dx = q(x) w(x) が得られます.辺々積分を実行して u = Z q(x) w(x)dx + c 0 この方法は Lagrangeの定数変化法と呼ばれ,高階 の場合に重要な手法になります.結局,q(x) ≡ 0 で はない非斉次方程式の一般解は y = e− R p(x)dx ½Z q(x) e R p(x)dx dx + C ¾ (11) と表されます.(斉次の一般解)+(非斉次の特殊解) と いう解の構成になっています. µ ´ ¤ £ ¡ ¢ 例題13 (元素崩壊列) 元素崩壊 A−→ BλA λB −→ C を考え ます.元素 A, B, C の初期量を NA, 0, 0 として,元素 B の量の時間変化 nB(t) を求めなさい. [解] モデル化 B の変化は, A から時定数 λ−1A で崩壊 して増える分と C へ時定数 λ−1B で崩壊して減る分の差と なります.すなわち dnB dt = λAnA(t) − λBnB(t) ⇔ dnB dt + λBnB(t) = λAnA(t) という線形微分方程式で表されます.nA(t) は時定数 λ−1A の崩壊で,初期値 nA(0) = NA ですから nA dt = −λanA を解いて nA(t) = NAe −λAt 一般解 公式を使うと R p(x)dx = e± R λBdt= e±λBt であるから

(12)

nB(t) = e−λBt ½Z λANAe−λAteλBtdt + C ¾ = e−λBt ½ λANA λB− λAe (λB−λA)t+ C ¾ 特殊解 初期条件 nB(0) = 0 より C を求めて nB(t) = e−λBt λANA λB− λA n e(λB−λA)t− 1 o = λANA λB− λA © e−λAt− e−λBtª 検算・物理的解釈 検算してください.斉次解 ∝ e−λBt が残っていることが確認できます. 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0 2 4 6 8 10      λ = 0.99 λ = 0.1 λ = 0.2 λ = 0.5 λ = 1 図 9 元素崩壊列:A → B → C における中間物質 B の 総量変化 問題26 (落下運動) 一様重力 g,速度 v に比例する抵抗 を受ける落下運動を線形微分方程式の公式を使って解いて みなさい.この場合,斉次形に対応する運動はどんな運動 でしょうか. ¤ £ ¡ ¢ 例題14 (LR 直列回路) 抵抗 R とインダクタンス L と起 電力 E(t) を直列に接続した回路の電流 I(t) を,E(t) = E0 (一定) と E(t) = E0sin ωt (周期的) の場合について,そ れぞれ求めなさい. [解] モデル化 キルヒホッフの法則より,線形微分方程式 LdI dt + RI = E(t) ⇔ dI dt + R LI = 1 LE(t) を得ます. 一般解 したがって E(t) に依らず,一般解は I(t) = e−t τ ½Z E(t) L e t τ dt + C ¾ , µ τ = L R具体的な E(t) に対しては ( i ) E(t) = E0 の場合 I(t) = e−t τ ½ E0 Lτe t τ + C ¾ = Ce−t τ +E0 R ( ii ) E(t) = E0sin ωt の場合 I(t) = e−t τ ½ E0 L Z eτt sin ωt dt + C ¾ = Ce−t τ + E0 L¡1 τ2 + ω2 ¢ µ 1 τsin ωt − ω cos ωt特殊解 自然な初期条件はなんでしょうか? 仮に I(0) = 0 を選ぶと ( i ) E(t) = E0の場合 I(t) =E0 R ³ 1 − e−t τ ´ ( ii ) E(t) = E0sin ωt の場合 I(t) = E0 L¡1 τ2 + ω2 ¢ ½ ωe−τt + µ 1 τsin ωt − ω cos ωt ¶¾ と特殊解は求められます.

-0.1

-0.05

0

0.05

0.1

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

    図 10 LR 直列回路に交流電源を接続した場合の解: L = 1 H, R = 100 Ω, ω = 1000 Hz, E0= 50 V 検算・物理的解釈 指数関数部分は時間とともに消えて しまい,残りの部分がいわゆる定常状態を表します.定常 状態に推移するまでは過渡状態と呼ばれ,一般に回路理論 では定常回路理論の後に学習します.実際の回路動作では 定常状態を測定する方が易しく,過渡状態を観測するのは 難しいからでしょう.すなわち初期値は実際上あまり意味 がなく,むしろ十分時間が経過した時の解が必要となるの です. ところで,回路で過渡特性を測定するためには,時間の 原点および初期状態を決定しなければなりません.実際 の回路ではスイッチがその役割を占めます.微分方程式で はこのスイッチに対応する関数をどう定義すべきでしょう

(13)

か?実は,連続で微分可能という,いままで扱ってきた性 質のおとなしい関数では表現できません.定義自身は簡単 で,時刻 0 でスイッチが ON になればいいのですから,階 段関数 ¨ ¥ Θ(t) = ( 0 (t < 0) 1 (t > 0) § ¦ で表現すればいいのです.ところが不連続関数ですから, 普通の意味の微分が定義できません.したがって,微分方 程式での扱いに何か工夫が必要となります.このような関 数を超関数と呼びます.Dirac のデルタ関数 ¨ ¥ 1. δ(x) = 0 (x 6= 0), Z −∞ δ(x) dx = 1 2. Z −∞ δ(x − a)f (x) dx = f (a) § ¦ も非常に重要な超関数です.これらの関数の導入でシステ ムの過渡応答の見通しがよくなりました.Laplace 変換で 詳しく学習しましょう. 問題27 (CR 直列回路) 抵抗 R とコンデンサー C と起電 力 E(t) を直列に接続した回路の電流 I(t) を,E(t) = E0 (一定) と E(t) = E0sin ωt (周期的) の場合について,そ れぞれ求めなさい. 問題28 (CR 直列回路:コンデンサーの放電) 抵抗 R と コンデンサー C とを直列に接続した回路の電流 I(t) を求 めなさい.ただし,初期にはコンデンサーに電荷 Q0 が蓄 積されていたとします. また,この放電過程を通じて R で発生するジュール熱を求めて,コンデンサーの失った静 電エネルギーと比較しなさい. 問題29 (ベルヌイ形) 次のような形の1階常微分方程式 を Bernoulli 形と呼びます. dy dx+ p(x)y = q(x)y n この方程式は,変数変換 v = y1−nにより, dv dx− (n − 1)p(x)v = −(n − 1)q(x) となり v(x) の1階線形常微分方程式に帰着されることを 示しなさい.

1.5

曲線族,直交曲線

任意の実数値 c に対して方程式 F (x, y, c) = 0 (12) が xy 平面上で曲線を表し,c の値に応じて無限に多くの 曲線が得られる場合,これらの曲線全体を1助変数の曲線 族と呼び,c を曲線族の助変数(パラメータ,parameter) といいます. 例えば,方程式 F (x, y, z) = x2+y2−c2= 0 (∗) は,原点を中心として半径 c の同心円の族を表します. 1階微分方程式の一般解は1つの助変数 c を含む曲線 族を表します.逆に言えば1助変数の曲線族の多くは1階 微分方程式により表されるのです. 例えば,上記の同心円の曲線族を微分して,c を消去す れば y0= −x y が,曲線族 (∗) を表す微分方程式です. 1つの曲線族が与えられていて,その各曲線族と直角に 交わる曲線族が存在するとき,2つの曲線族は直交すると いいます。また,1つの曲線族の曲線は他方の曲線族の直 交曲線であるといいます。例えば,静電気学における等電 位線と電気力線,熱伝導における等温泉と熱流線,など物 理学では直交曲線が随所に顔を出します. ¶ ³ 曲線族 F (x, y, c) = 0 が与えられ,それが微分方程式 y0 = f (x, y) (13) で表されるとき,この曲線族と直交する曲線の微分方 程式は y0= − 1 f (x, y) (14) であり,直交曲線はこの方程式を解いて求められます. µ ´ ¤ £ ¡ ¢ 例題15 xy 平面上で考える.真空中,原点に置かれた点 電荷 q による電場の等電位曲線を求め,直交曲線である 電気力線を求めなさい. [解] モデル化 点電荷によるポテンシャルは V (r) = q 4πε0r であるから,xy 平面では等電位線は c = q 4πε0 p x2+ y2 と表される.微分して c を消去すると 0 = − q 4πε0(x2+ y2) 3 2 (x + yy0) ⇒ y0= −x y = f (x, y)

(14)

が等電位線の微分方程式(同心円の族)です.よって,直 交曲線の微分方程式は y0= − 1 f (x, y) = y x 一般解 変数分離形として解くと y = cx を得ます.これは原点を通る直線群です. 検算・物理的解釈 図に描いて幾何学的に直交性を確かめ ましょう(図11参照).この場合は頭の中で想像しても, 明らかです.つまり円の中心を通る直線は円と直交するか らです. 図 11 点電荷による等電位線と電気力線の直交性 問題30 (直線電荷による電場) 一様線密度 λ の直線電荷 による電場の等電位曲線(直線電荷に垂直な面内)を求め, さらに直交曲線である電気力線を求めなさい. 問題31 (異符号平行直線電荷による電場) 大きさが同 じで符号が反対の2つの直線電荷 +λ, − λ がそれぞれ P(1, 0), Q(−1, 0) を垂直に貫いているとき,等電位曲線は (x + c)2+ y2= c2− 1 であることを示し,これに対して電気力線(直交曲線)を 求めなさい. 図 12 異符号平行直線電荷による電場 問題32 (同符号平行直線電荷による電場) 大きさも符号も 等しい2つの直線電荷(λ )がそれぞれ P(1, 0), Q(−1, 0) を垂直に貫いているとき,等電位曲線を表す多項式は, {y2+ (x2+ 1)}2− 4x2= c であることを示し,等電位曲線を描きなさい.これに対し て微分方程式を解いて,電気力線の方程式を求めるのは非 常に困難なので,等電位曲線図を元にして,電気力線を推 測で描いてみなさい. 図 13 同符号平行直線電荷による等電位曲線:電気力線 の作図方法

(15)

2

高階常微分方程式

2階常微分方程式は,物理学では最も重要なものです が,一般に求積法で解析解を求めることは困難です.そこ で研究が進んだ結果,級数解法が成果をあげました.また コンピュータの性能が急速に向上している現在では数値解 法も十分頼りになる方法です.いずれにしても公式があっ て直にという訳には行きません.一方,定数係数の常微分 方程式は一般解法が存在し,演算子法では代数方程式に置 き換えて解を求めることが可能です.普通の教科書とは順 序が逆ですが,まず演算子法の典型である Laplace変換 を紹介します.電気・機械振動を表す2階常微分方程式な ど多くの場合,この方法で十分です.最後に,Laplace 変 換では扱えないものを紹介します.級数解法により得られ る ルジャンドル,ベッセル,エルミート関数 などが登場 します.

2.1

Laplace 変換

定数係数の線形常微分方程式 y(n)+ a1y(n−1)+ · · · + an−1y(1)+ any = f (x) (15) は組織的に解く方法がいろいろ考えられています.その代 表が Laplace 変換であり,工学上の多くの線形常微分方程 式の解析解を得ることが可能となります. 2.1.1 有用性:代数方程式への置換え ® © 任意の有限区間で積分可能な関数 f (x) および s に対 して定義された無限積分 F (s) = Z 0 e−stf (t) dt (16) を f (t) の Laplace変換 といって L [ y ] で表します. ­ ª この変換により y0 は Z 0 e−sty0dt = h e−sty i 0 +s Z 0 e−sty dt (17) となりますが,右辺の第 1 項において lim t→∞e −sty(t) = 0 (s > 0) (18) が成立するような性質の関数 y(t) に対しては (17) は Z 0 e−sty0dt = −y(0) + s Z 0 e−sty dt (19) となり,これを記号で表せば L [ y0] = sL [ y ] − y(0) (20) と表されます.y00 に対しても y(t) の性質によっては L [ y00] = sL [ y0] − y0(0) = s2L [ y ] − sy(0) − y0(0) が成立します.以下同様にして L [ y(i)] = siL [ y ] − i X j=1 si−jy(j−1)(0) (21) が成立する場合には,(15) の両辺に Laplace 変換を作用 させて L " n X i=0 aiy(n−i) # = L [ f ] (21) より左辺は Ã n X i=0 aisi ! L [ y ] − n X i=0 ai i X j=1 si−jy(j−1)(0) ように展開されますから,形式的に L [ y ] = L [ f ] + n X i=0 ai i X j=1 si−jy(j−1)(0) n X i=0 aisi (22) と s の代数方程式の解として求められます.この右辺を見 て旨く元の関数形が想像できれば (逆ラプラス変換),それ は y = L−1[ L [ y ] ] となります. 2.1.2 基本的な初等関数の変換公式の導出 いくつかの変換公式を導きましょう. ¤ £ ¡ ¢ 例題16 f (t) = 1 のラプラス変換を求めなさい. [解] 定義より L [ 1 ] = Z 0 e−stdt = −1 s h e−st i 0 = 1 s ¤ £ ¡ ¢ 例題17 f (t) = eat のラプラス変換を求めなさい. [解] 定義より L [ eat] = Z 0 e−steatdt = − 1 s − a h e−(s−a)ti 0 = 1 s − a

(16)

2.2

Laplace 変換公式

前節では s に関する代数方程式の解から,元の微分方程 式の解 y を得る方法の概要が理解できたと思います.そ こで,いろいろな関数のラプラス変換表を示して,多様な 代数方程式に備えておくことにしましょう. 表 1 Laplace 変換公式 (I) f (t) F (s) 1 1 1 s (<s > 0) 2 tn (n : 正整数) n! sn+1 (<s > 0) 3 tx(x > −1) Γ (x + 1) sx+1 (<x > 0) 4 eat 1 s − a (<s > <a) 5 cos ωt s s2+ ω2 (<s > 0) 6 sin ωt ω s2+ ω2 (<s > 0) 7 cosh ωt s s2− ω2 (<s > <ω) 8 sinh ωt ω s2− ω2 (<s > <ω) 9 tneat n! (s − a)n+1 (<s > <a) 10 eatcos ωt s − a (s − a)2+ ω2 (<s > <a) 11 eatsin ωt ω (s − a)2+ ω2 (<s > <a) 12 t cos ωt s 2− ω2 (s2+ ω2)2 (<ω 6= 0) 13 t sin ωt 2ωs (s2+ ω2)2 (<ω 6= 0) ¤ £ ¡ ¢ 例題18 公式 4 が純虚数 a = iω に対しても成り立つと 考えて,L [ cos ωt ] 及び L [ cos ωt ] を求めなさい. [解] 公式 4 に純虚数 a = iω を代入して L [ eiωt] = 1 s − iω = s + iω s2+ ω2 = s s2+ ω2 + i ω s2+ ω2 を得ます.一方 Laplace変換の線形性 より

L [ eiωt] = L [ cos ωt + i sin ωt ] = L [ cos ωt ] + iL [ sin ωt ] 2つの式の実数部と虚数部が等しいことより,公式 5,6 が 示されました. 問題33 z = a + iω に対して,L [ ezt] = 1 s − z が成立 するとして,公式 10,11 を導きなさい. 問題34 L [ cosh ωt ] 及び L [ sinh ωt ] を求めなさい.す なわち,公式 7,8 を証明しなさい. 2.2.1 公式 (22) の具体例 前節では内容がはっきりしなかった公式 (22) の具体的 な例を解いてみましょう. ¤ £ ¡ ¢ 例題19 y0 = −ky を解きなさい. [解] ラプラス変換して sL [ y ] − y(0) + kL [ y ] = 0 ⇔ L [ y ] = y(0) s + k ラプラス変換表より 1 s + k の元の関数は e −kt であるから y = L−1 · 1 s + k ¸ y(0) = y(0)e−kt 問題35 y0= −ky + b を解きなさい. 問題36 y0+ ky = e−ωt を解きなさい. ¤ £ ¡ ¢ 例題20 y00+ ω2y = 0 を解きなさい. [解] ラプラス変換して s2L [ y ] − sy(0) − y0(0) + ω2L [ y ] = 0 これを整理して L [ y ] =sy(0) + y 0(0) s2+ ω2 を得る.ラプラス変換表より ω s2+ ω2 の元の関数は sin ωt, s s2+ ω2 の元の関数は cos ωt であるから

y(t) = y(0) cos ωt +y0(0) ω sin ωt

問題37 y00− ω2y = 0 を解きなさい.

(17)

¤ £ ¡ ¢ 例題21 (斉次定数係数 2 階線形微分方程式の一般解) 機械・電気振動系の微分方程式は次の形に整理されます. y00+ P y0+ Qy = f (t) (P ,Q は実数) (23) f (t) は外力あるいは電源です.外力がない場合,すなわち f (t) ≡ 0 の場合,自由減衰振動となり,系の固有振動が現 れます.すなわち,(23) の斉次式の一般解を Laplace 変換 により求めてみましょう. [解] Laplace 変換後,整理して L [ y ] = sy(0) + P y(0) + y 0(0) s2+ sP + Q (24) 分母 g(s) = s2+ sP + Q により場合分けする必要があり ます. ( i ) g(s) = 0 が 0 以外の 2 つの根をもつ場合 g(s) = (s − β1)(s − β2) と表わされ L [ y ] = sy(0) + P y(0) + y 0(0) g(s) = A1 s − β1 + A2 s − β2 A1= β1y(0) + P y(0) + y 0(0) β1− β2 A2= β2y(0) + P y(0) + y 0(0) β2− β1 逆変換より,一般解 y(t) = A11t+ A22t β が実数ならば単なる指数関数ですが,共役複素数な らば実数を変数とする三角関数(振動項)と指数関数 (減衰項)の積に書き換えられます. P = 0, Q 6= 0 の場合も含まれます. ( ii ) g(s) = s2+ P s,すなわち Q = 0 の場合には,g(s) = s(s + P ) ですから L [ y ] = sy(0) + P y(0) + y 0(0) g(s) = B1 s + P + B2 s B1= −y 0(0) P B2= y(0) + y0(0) P 逆変換より,一般解 y(t) = −y 0(0) P e −P t+ y(0) +y0(0) P この場合には,P が実数なので指数関数です. 2.2.2 ガンマ関数 公式 3 に現れた,Γ (p) は次のガンマ積分で定義された 関数です. Γ (p) = Z 0 up−1e−uu (p > 0) 例えば,Γ (1) = Z 0 e−udu = 1 です.また, Γ (p + 1) = Z 0 upe−udu = h −upe−ui 0 + p Z 0 up−1e−udu = pΓ (p) であり,p が自然数なら(n とおいて) Γ (n + 1) = nΓ (n) = n(n − 1)Γ (n − 1) = · · · = n(n − 1) · · · 1 · Γ (1) = n! ガンマ関数を用いて,f (t) = tx のラプラス変換は L [ tx] = Z 0 e−sttxdt st = u とおいて変数変換すれば = Z 0 ux sxe −u1 sdu = 1 sx+1 Z 0 uxe−udu =Γ (x + 1) sx+1 と表されます.

2.3

その他の基本的な性質

基本的な変換表の公式からラプラス変換の性質を利用し て多くの変換公式が導き出されます.ここでは,微分積分 以外の作用を考えてみましょう. 2.3.1 線形性 暗黙の内に使っていたのですが,ここでラプラス変換は 線形演算であることを示しましょう.すなわち,f1(t) と f2(t) のラプラス変換が存在すると,任意の定数 α, β に対 して L [ αf1(t) + βf2(t) ] = αL [ f1(t) ] + βL [ f2(t) ] (25) が成立し,演算 L [ ] は線形です. [解] 定義により L [ αf1(t) + βf2(t) ]

(18)

= Z 0 e−st©αf1(t) + βf2(t) ª dt = α Z 0 e−stf 1(t) dt + β Z 0 e−stf 2(t) dt = αL [ f1(t) ] + βL [ f2(t) ] となります.すなわち,積分(という演算)の線形性に帰 着されています. 2.3.2 微分と積分の変換公式 節の最初に述べた通り,関数 f (t) の微分のラプラス変 換は,おおよそ元の変換 F (s) = L [ f ] に s を掛けたもの となっています.それでは,逆に積分は s で割ったものな ると予想されます. ¤ £ ¡ ¢ 例題22 f (t) の積分のラプラス変換が L h Z t 0 f (τ ) dτ i = 1 sL [ f (t) ] で与えられることを示しなさい. [解] 厳密に示すには,まず f(t) の積分 g(t) = Z t 0 f (τ ) dτ のラプラス変換が存在することを示す必要がありますが, ここでは存在するものとしましょう.すると,微分の公式 から L [ f (t) ] = L [ g0(t) ] = sL [ g(t) ] − g(0) となります.明らかに g(0) µ = Z 0 0 ... ¶ = 0 ですから L [ f ] = sL [ g ] が成立します.すなわち,題意が示されま した. 2.3.3 s 軸上の移動 f (t) の変換が F (s) であるとき,eatf (t) の変換は, L [ eatf (t) ] = Z 0 e−steatf (t) dt = Z 0 e−(s−a)tf (t) dt = F (s − a) より, F (s − a) となります.そして,s を s − a で置き 換えることは,s 軸に沿って関数 F (s) を a 平行移動する ことに相当するので,移動定理と呼ばれます.すなわち, ® © s 軸上における像関数 F (s) の移動定理 L [ eatf (t) ] = F (s − a) (26) ­ ª が成立します. 問題39 公式 9,10,11 を s 軸上の移動定理を用いて示 しなさい. 2.3.4 t 軸上の移動 f(t) f(t-a) f(t-a) Θ(t-a) Θ(t-a) a a         a 図 14 t 軸上の移動の概念 s 軸上の移動定理では,像関数 F (s) における s → s − a の置換えが,原関数 f (t) に eatを掛けることに対応してい ました.では,原関数 f (t) における t → t − a の置換えは, 像関数 F (s) に eas を掛けることに対応するでしょうか? 大まかには正しいのです.しかし,少し工夫が必要です. 原関数を t − a に置き換える際,図のように,0 < t ≤ a の区間で f (t) ≡ 0 とします(これ例外に自然な与え方は ないでしょう)。このような定義を含ませるために,階段 関数 Θa(t) が必要になります. Θa(t) = Θ(t − a) = ( 0 (t < a) 1 (t > a) この超関数を使って f (t) の移動を定義し,次の定理を得 ます. ® © t 軸上における原関数 f(t) の移動定理 L [ Θ(t − a)f (t − a) ] = e−asF (s) (27) ­ ª ¤ £ ¡ ¢ 例題23 t 軸上の移動定理を証明しなさい. [解] 定義より L [ Θ(t − a)f (t − a) ] = Z 0 e−stΘ(t − a)f (t − a) dt = Z a e−s(t−a)−saf (t − a)dt τ = t − a とおいて = e−sa Z 0 e−sτf (τ ) dτ = e−saF (s) ¤ £ ¡ ¢ 例題24 Θa(t) のラプラス変換を求めなさい. [解] f(t) = 1 のラプラス変換は 1 s であるから,t 軸上の 移動定理より

L [ Θa(t) ] = L [ Θa(t)1 ] = e−saL [ 1 ] = e−sa

(19)

¤ £ ¡ ¢ 例題25 階段関数に対する RL 回路の応答 RL 直列回路 に対して時刻 t = a から一定電圧 E0 が印加されたとき, 電流 I(t) を求めなさい. [解] モデル化 外部電圧を E(t) = Θa(t)E0 と表して, 求める微分方程式は LdI dt + RI = Θa(t)E0 dI dt + R LI = Θa(t) E0 L 特殊解 ラプラス変換法により解を求めます.微分方程式 をラプラス変換すると sL [ I ] − I(0) +R LL [ I ] = E0 L e−as s I(0) = 0 であることに注意して整理すると L [ I ] =E0 L e−as (s + 1 τ)s µ τ = L R ¶ = E0e −as L ½ 1 s 1 s + 1 τ ¾ L R = E0 R ½ e−as s e−as s + 1 τ ¾ 1 s の逆変換は 1, 1 s +τ1 の逆変換は e −t τ ですから,t 軸 上の移動定理より I(t) =E0 R n 1 − e−(t−a)τ oΘa(t) 検算・物理的解釈 この解はもちろん I(t) =E0 R n 1 − e−t τ o を t 軸上で a 移動させたものとなっています. 問題40 RL 直列回路に図のような矩形波が印加された 場合の電流 I(t) を求めなさい.矩形波が印加される以前 の電流は 0 です.        ¤ £ ¡ ¢ 例題26 減衰振動系が y” + 4y0+ 3y = g(t), y(0) = 0, y0(0) = 0 で与えられている場合,単一矩形波の外力 g(t) = Θ0(t) − Θ1(t) に対する系の応答を求めなさい. [解] 特殊解 ラプラス変換を行い Y = L [ y ] と記すことにす ると s2Y + 4sY + 3Y = 1 s(1 − e −s) を得ます.これを Y について解いて Y = (1 − e−s) 1 s(s + 1)(s + 3) = (1 − e −s)F (s) とおいて,部分分数に展開すると F (s) = ½ 1/3 s 1/2 s + 1+ 1/6 s + 3 ¾ となります.この逆変換は f (t) = L−1[ F (s) ] = 1 3 1 2e −t+1 6e −3t となります.t 軸上の移動定理より L−1[ e−sF (s) ] = f (t − 1)Θ1(t) となりますから,解は y(t) = L−1[ Y ] = f (t) − f (t − 1)Θ 1(t) =      1 3 1 2e −t+ 1 6e −3t (0 ≤ t < 1) 1 2(e − 1)e −t 1 6(e 3− 1)e−3t (1 < t) 検算・物理的解釈 結果を図 15に示します. 0 0.1 0.2 0 1 2 3 図 15 減衰振動系の矩形波に対する応答

2.4

周期関数への応用

t > 0 で定義された周期 p の周期関数 f (t + p) = f (t) (すべての t について)

(20)

に対して,長さ p の区間に f (t) を分割して 0 から ∞ ま での積分を次のように級数で表します. L [ f ] = Z 0 e−stf (t) dt = Z p 0 e−stf dt + Z 2p p e−stf dt + Z 3p 2p e−stf dt + · · · 第 2 の積分では t = τ + p, 第 3 の積分では t = τ + 2p, · · ·,第 n の積分では t = τ + (n − 1)p と変数変換すると, 各積分の積分区間は 0 から p までとなります.また,周 期関数の性質 f (τ + p) = f (τ ), f (τ + 2p) = f (τ ), · · · より L [ f ] = Z p 0 e−stf (τ ) dτ + Z p 0 e−stf (τ ) dτ + Z p 0 e−stf (τ ) dτ + · · · = (1 + e−sp+ e−2sp+ · · ·) Z p 0 e−stf (τ ) dτ と整理されます.括弧の中は無限等比級数で,その和は 1 1 − e−ps ですから,次の定理が成立します. ® © f (t) が区分的に連続で,周期 p をもつとき,そのラプ ラス変換は L [ f ] = 1 1 − e−ps Z p 0 e−stf (t) dt (28) ­ ª ¤ £ ¡ ¢ 例題27 図のような周期的矩形波のラプラス変換を求め なさい.

k

-k

a

2a

3a

t

f(t)

図 16 周期的矩形波 [解] 周期 p = 2a であり,公式 (28) より L [ f ] = 1 1 − e−2as Z 2a 0 e−stf (t) dt = 1 1 − e−2as ½Z a 0 ke−stdt + Z 2a a (−k)e−stdt ¾ = 1 1 − e−2as ½ k s(1 − e −as) +k s(e −2as− e−as) ¾ = k s (1 − e−as)2 (1 − e−as)(1 + e−as) = k s µ 1 − e−as 1 + e−as ¶ = k stanh as 2 問題41 以下の図に示されるの周期関数のラプラス変換 を求めなさい. ( i ) 周期的三角波 k 2a 4a t f(t) 0 k as2tanh as 2 ( ii ) sin ωt の半波整流 k t f(t) 0 π/ω 2π/ω 3π/ω 4π/ω (s2+ ω2)(1 − e−sπ/ω) (iii) sin ωt の全波整流 k t f(t) 0 π/ω 2π/ω 3π/ω 4π/ω kω(1 + e−sπω) (s2+ ω2)(1 − e−sπ/ω) ¤ £ ¡ ¢ 例題28 図のような周期的矩形波の電源電圧を RL 回路 に印加したときの定常電流を求めなさい.

V

t

v(t)

0

-V

  

v(t)

L

R

[解] モデル化 微分方程式 v(t) = Ri(t) + Ldi dt のラプラ

ス変換 V (s) = RI(s) + L{sI(s) − i(0)} より

I(s) = i(0) s + τ−1 + V (s) (s + τ−1)L, τ = L R 特殊解 I(s) の第 1 項の逆変換は it(t) = i(0)e− t τ と簡単 に求まります,この項は t → ∞ で 0 となる過渡的な部分 です.定常状態を表す部分を含む第 2 項を求めましょう. V (s) = V0 s µ 1 − e−T s 1 + e−T s ¶ ですから, V (s) (s + τ−1)L

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