イソシアン酸n-ブチル／n-Butyl isocyanate (111-36-4)

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1 急性曝露ガイドライン濃度 (AEGL)

Selected Monoisocyanates - n-Butyl isocyanate (111-36-4)

主要なモノイソシアネート - イソシアン酸 n-ブチル

Table AEGL 設定値

n-Butyl isocyanate 111-36-4 (Final)

ppm

10 min

30 min

60 min

4 hr

8 hr

AEGL 1

NR NR NR NR NR

AEGL 2

0.10 0.10 0.083 0.053 0.026

AEGL 3

0.31 0.31 0.25 0.16 0.078

NR: データ不十分により推奨濃度設定不可

設定根拠（要約）：

ここでは、4 種類のモノイソシアナネート、すなわち、イソシアン酸エチル、イソシアン酸 n-ブ

チル、イソシアン酸シクロヘキシル、イソシアン酸フェニルについて、考察を行う。これら 4 種

類のモノイソシアネートは、イソシアン酸メチルが引き起こすものと同様の、遅延性致死などの

毒性影響を引き起こすと思われる。イソシアン酸メチルについては、警告特性が弱く、また、

AEGL-1 に相当する影響が生じる濃度より低い濃度で全身毒性が生じ得ることから、AEGL-1 値

は導出されていない（NRC 2003）。ここでとりあげたモノイソシアネートについても、イソシア

ン酸メチルとの類似性に基づいて、AEGL-1 値を導出しなかった。

イソシアン酸エチルおよびイソシアン酸シクロヘキシルに関するデータは、ラットを用いた致死

性試験のものに限られており、それらの試験では、被験動物数が少なく、実濃度が分析されてお

らず、ほぼすべての試験濃度で致死率が 100%であった。データが乏しいため、AEGL-2 値と

AEGL-3 値は、イソシアン酸メチルの AEGL 値に基づいた。これら 3 種類の化学物質について得

られた致死データの比較から、イソシアン酸メチルの値を代用し、イソシアン酸エチルおよびイ

ソシアン酸シクロヘキシルの方が毒性が強い可能性があることを考慮して修正係数 2 を適用する

ことで、十分に保護的な AEGL 値が得られることが示唆される。例えば、各群 3 匹ずつのラット

をイソシアン酸エチルに 6 時間曝露した試験では、27 ppm 群では全ラットが生存し、82 ppm 群

では生存ラットはいなかった。ラット 3 匹を 18 ppm のイソシアン酸シクロヘキシルに 6 時間曝

露した試験では、曝露後 7 日目に 1 匹が死亡し、残りはおそらく瀕死状態に陥ったため、8 日目

に屠殺された。そして、イソシアン酸メチルについては、ラットにおける 6 時間 LC

50

（半数致死

濃度）は、6.1 ppm である（NRC 2003）。

イソシアン酸 n-ブチルおよびイソシアン酸フェニルの AEGL-3 値の導出には、適切なラットの致

(2)

2 死データが得られている。AEGL-2 値は、対応する AEGL-3 値の 3 分の 1 の値とした。イソシア

ン酸メチルで認められた種差が小さいことから、両化合物の AEGL-3 値の導出に際し、種間不確

実係数 3 を適用した。種内変動については、イソシアン酸メチルの場合（NRC 2003）にならい、

係数 10 を適用した。イソシアン酸メチルは発生毒性を示すことが知られているが、イソシアン

酸 n-ブチルおよびイソシアン酸フェニルについては、発生毒性を示す可能性について、データが

不足しているため、修正係数 3 も適用した。

ここで取り上げた主要なモノイソシアネートの AEGL 値を Table 7-1 に示す。比較のため、イソ

シアン酸メチルおよびジイソシアン酸トルエンの AEGL 値を Table 7-2 に示す。

TABLE 7-1 AEGL Values for Selected Monoisocyanates

a

Classification 10 min 30 min 1 h 4 h 8 h End Point (Reference)

Ethyl isocyanate

AEGL-1 (non-disabling)

NR NR NR NR NR Insufficient warning properties;

possible systemic effects at concentrations lower than those that produce irritation. AEGL-2 (disabling) 0.20 ppm (0.58 mg/m3) 0.065 ppm (0.19 mg/m3) 0.034 ppm (0.099 mg/m3) 0.0085 ppm (0.025 mg/m3) 0.0040 ppm (0.012 mg/m3)

Based on AEGL-2 values for methyl isocyanate AEGL-3 (lethal) 0.60 ppm (1.7 mg/m3) 0.20 ppm (0.58 mg/m3) 0.10 ppm (0.29 mg/m3) 0.025 ppm (0.073 mg/m3) 0.013 ppm (0.038 mg/m3)

Based on AEGL-3 values for methyl isocyanate

Cyclohexyl isocyanate

possible systemic effects at concentrations lower than those that produce irritation. AEGL-2 (disabling) 0.20 ppm (1.0 mg/m3₎ 0.065 ppm (0.33 mg/m3₎ 0.034 ppm (0.17 mg/m3₎ 0.0085 ppm (0.043 mg/m3₎ 0.0040 ppm (0.020 mg/m3₎

Based on AEGL-2 values for methyl isocyanate AEGL-3 (lethal) 0.60 ppm (3.1 mg/m3) 0.20 ppm (1.0 mg/m3) 0.10 ppm (0.51 mg/m3) 0.025 ppm (0.13 mg/m3) 0.013 ppm (0.066 mg/m3)

Based on AEGL-3 values for methyl isocyanate AEGL-3 n-Butyl isocyanate

One third of AEGL-3 values.

AEGL-3 (lethal) 0.31 ppm (1.3 mg/m3₎ 0.31 ppm (1.3 mg/m3₎ 0.25 ppm (1.0 mg/m3₎ 0.16 ppm (0.65 mg/m3₎ 0.078 ppm (0.32 mg/m3₎

No morality in rats exposed at 14 ppm for 4 h (Pauluhn et al. 1990).

(Continued)

TABLE 7-1 Continued

Classification 10 min 30 min 1 h 4 h 8 h End Point (Reference)

Phenyl isocyanateb AEGL-1 (non-disabling)

One-third of AEGL-3 values.

AEGL-3 (lethal) 0.036 ppm (0.18 mg/m3₎ 0.036 ppm (0.18 mg/m3₎ 0.029 ppm (0.14 mg/m3₎ 0.018 ppm (0.088 mg/m3₎ 0.0091 ppm (0.044 mg/m3₎ 4-h BMCL05 of 1.64 ppm in rats (Bayer AG 1991a)

a_{When more than one of the monoisocyanates is detected at a scene, the lowest AEGL should be applied to the sum total concentration of all} de-tected monoisocyanates because of a presumed common mode of action. On the basis of toxicity data on methyl isocyanate, it is plausible that ex-posure to these monoisocyanates might be associated with systemic toxicity at concentrations below those associated with irritation. Absence of AEGL-1 values does not imply that concentrations below AEGL-2 values are without effect.

b_{Phenyl isocyanate has shown dermal sensitizing effects. Its respiratory sensitizing potential is unknown. Individuals who have a strong} reac-tion might not be protected within the definireac-tion of effects for each AEGL level.

Abbreviations: BMCL05, benchmark concentration, 95% confidence limit with a 5% response; MF, modifying factor; NR, not recommended; and UF, uncertainty factor.

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3 TABLE 7-2 AEGL Values for Methyl Isocyanate and Toluene Diisocyanate

Classification 10 min 30 min 1 h 4 h 8 h

Methyl isocyanate AEGL-1a (nondisabling) NR NR NR NR NR AEGL-2 (disabling) 0.40 ppm (0.94 mg/m3₎ 0.13 ppm (0.32 mg/m3₎ 0.067 ppm (0.16 mg/m3₎ 0.017 ppm (0.034 mg/m3₎ 0.0080 ppm (0.020 mg/m3₎ AEGL-3 (lethal) 1.2 ppm (2.8 mg/m3) 0.40 ppm (0.95 mg/m3) 0.20 ppm (0.47 mg/m3) 0.050 ppm (0.12 mg/m3) 0.025 ppm (0.060 mg/m3)

Toluene 2,4- and 2,6-diisocyanate

AEGL-1 (nondisabling) 0.02 ppm (0.14 mg/m3₎ 0.02 ppm (0.14 mg/m3₎ 0.02 ppm (0.14 mg/m3₎ 0.01 ppm (0.07 mg/m3₎ 0.01 ppm (0.07 mg/m3₎ AEGL-2 (disabling) 0.24 ppm (1.71 mg/m3₎ 0.17 ppm _{(1.21 mg/m}3₎ 0.083 ppm _{(0.59 mg/m}3₎ 0.021 ppm _{(0.15 mg/m}3₎ 0.021 ppm _{(0.15 mg/m}3₎ AEGL-3 (lethal) 0.65 ppm (4.63 mg/m3₎ 0.65 ppm (4.63 mg/m3₎ 0.51 ppm (3.63 mg/m3₎ 0.32 ppm (2.28 mg/m3₎ 0.16 ppm (1.14 mg/m3₎ a

Insufficient warning properties; possible systemic effects at concentrations lower than

those that produce irritation. Absence of AEGL-1 values does not imply that

concentra-tions below the AEGL-2 are without effect.

---

注：本物質の特性理解のため、本文書の最後に、参考として国際化学物質安全性カード（ICSC）

を添付する。

(4)

国際化学物質安全性カード

イソシアン酸ブチル

ICSC番号:1642

イソシアン酸ブチル

n-BUTYL ISOCYANATE

1-Isocyanatobutane

C

₅

H

₉

NO / CH

₃

(CH

₂

)

₃

NCO

分子量:99.1

CAS登録番号:111-36-4

RTECS番号:NQ8250000

ICSC番号:1642

国連番号:2485

災害／

暴露のタイプ

一次災害／

急性症状

予防

応急処置/

消火薬剤

火災

引火性が高い。加熱すると、破

裂の危険を伴う圧力上昇が起こ

る。

裸火禁止、火花禁止、禁煙。

粉末消火薬剤、泡消火薬剤、

二酸化炭素。

水は不可。

爆発

蒸気/空気の混合気体は爆発

性である。

密閉系、換気、防爆型電気およ

び照明設備。

火災時：水を噴霧して容器類を

冷却するが、この物質に水が直

接かからないようにする。

安全な場所から消火作業を行

う。

身体への暴露

あらゆる接触を避ける！

いずれの場合も医師に相談！

吸入

咳、咽頭痛、息苦しさ、灼熱感。換気、局所排気、または呼吸用

保護具。

新鮮な空気、安静。半座位。人

工呼吸が必要なことがある。医療

機関に直ちに連絡する。

皮膚

発赤、皮膚熱傷、痛み。

保護手袋、保護衣。

汚染された衣服を脱がせる。多

量の水かシャワーで皮膚を洗い流

す。医療機関に連絡する。

眼

発赤、痛み、熱傷。

安全ゴーグル、または呼吸用保

護具と眼用保護具の併用。

多量の水で洗い流す(できればコ

ンタクトレンズをはずして)。医療

機関に直ちに連絡する。

経口摂取

腹痛、灼熱感、ショック/虚脱。

作業中は飲食、喫煙をしない。

口をすすぐ。吐かせない。コップ1、

2杯の水を飲ませる。医療機関

に直ちに連絡する。

漏洩物処理

貯蔵

包装・表示

・危険区域から立ち退く!

・換気。

・すべての発火源を取り除く。

・個人用保護具：自給式呼吸器付気

密化学保護衣。

・漏れた液を密閉式の容器に集める。

残留液を砂または不活性吸収剤に吸

収させて安全な場所に移す。

・下水に流してはならない。

・この物質を環境中に放出してはなら

ない。

・耐火設備(条件)。

・強酸化剤、食品や飼料から離してお

く。

・涼しい場所。

・｢化学的危険性｣参照。

・排水管や下水管へのアクセスのない場

で貯蔵する。

・食品や飼料と一緒に輸送してはならな

い。

・国連危険物分類(UN Hazard

Class)：6.1

・国連の副次的危険性による分類(UN

Subsidiary Risks)：3

・国連包装等級(UN Packing Group)：I

・GHS 分類

注意喚起語：危険

シンボル：炎-腐食性-どくろ-健康

有害性

引火性の高い液体および蒸気

蒸気を吸入すると生命に危険

飲み込むと有害

重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷

アレルギー性皮膚反応を起こすおそ

れ

吸入すると肺の障害

重要データは次ページ参照

ICSC番号:1642

Prepared in the context of cooperation between the International Programme on Chemical Safety & the Commission of the European Communities © IPCS CEC 1993

(5)

国立医薬品食品衛生研究所

国際化学物質安全性カード

イソシアン酸ブチル

ICSC番号:1642

重

要

デ

｜

タ

物理的状態; 外観:

無色の液体。

物理的危険性:

この蒸気は空気とよく混合し、爆発性混合物を生

成しやすい。

化学的危険性:

加熱により重合することがある。燃焼すると分解

し、有毒な気体(窒素酸化物、シアン化水素な

ど)を生じる。強酸化剤、水と激しく反応する。

許容濃度:

TLV は設定されていない。

MAK は設定されていない。

暴露の経路:

全ての暴露経路で局所への重度の影響。

吸入の危険性:

20℃で気化したとき、空気は汚染されて急速に有

害濃度に達する。

短期暴露の影響:

眼、皮膚および気道に対して腐食性を示す。吸

入すると、肺水腫を引き起こすことがある(｢注｣参

照)。

長期または反復暴露の影響:

反復または長期の接触により、皮膚感作を引き

起こすことがある(｢注｣参照)。

物理的性質

・沸点：115℃

・融点：＜－70℃

・密度：0.9 g/cm

3

・水への溶解度：反応する

・蒸気圧：2.1 kPa(20℃)

・相対蒸気密度(空気＝１)：3.4

・20℃での蒸気/空気混合気体の相対密度(空

気＝１)：1.05

・引火点：11℃ (c.c.)

・発火温度：425℃

・爆発限界：1.3～10 vol％(空気中)

環境に関する

データ

・環境に有害な場合がある。水生生物への影響にとくに注意すること。

注

・イソシアン酸エステルのいくつかは呼吸器感作性を起こすことが知られているが、イソシアン酸ブチルや他のモノイソシアン酸

エステルが呼吸器感作性を起こすという報告はない。

・肺水腫の症状は 2～3 時間経過するまで現われない場合が多く、安静を保たないと悪化する。したがって、安静と経過

観察が不可欠である。

Transport Emergency Card(輸送時応急処理カード)：TEC(R)－61S2485、61GTF1-I

NFPA(米国防火協会)コード：H(健康危険性)3；F(燃焼危険性)3；R(反応危険性)2；W

付加情報

ICSC番号:1642

作成日：2007.04

イソシアン酸ブチル