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原子力と代替エネルギー:独立行政法人科学技術振興機構/北津宏一

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Academic year: 2021

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水素エネルギーシステム Vo1.37,No.4 (2012)

特別寄稿

原子力と代替エネルギー

独立行政法人科学技術振興機構

顧 問 北 津 宏 一

特別寄稿 現在の発電用原子炉は核分裂反応が停止して後も、

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時間数トンといった大量の水を炉心に供給し続 けない限り、深刻な事故を引き起こす。フェイルセーフの設計思想ができていなし、。燃料棒が水から露 出し、過熱損傷を起こして放射能漏れを起こし、ついにはメルトダウンに至る。燃料棒自身が強い放射 能を帯び、崩壊熱を発するためである。冷却水がストップして燃料棒が過熱すると、圧力容器や格納容 器などの中の水蒸気圧が上昇し、水蒸気爆発の恐れが出て来るO 爆発を防ぐためには、ベントにより高 圧になった水蒸気を格納容器から抜いて、冷たい水を炉心注入する必要が生じる。 福島の事故で、は炉に備わっている停電時水循環装置を思ったようには働かせることができず、ベント の作業も滞り、特に 2号機では格納容器圧力が耐圧を超えて中のガスが爆発音を伴って噴出した。この ため、全体の9割の放射能漏れがこの 2号炉から起こったとされる。 1、3号機では過熱した燃料棒被 覆金属が水と反応して水素を発生、圧力容器や格納容器の封止部分から水蒸気とともに建屋内に洩れ、 水素爆発を起こし、これに伴って全体の 1割程度の放射能漏れを生じたとされる。 4号機は震災当日運 転されていなかったにも拘わらず、隣接炉の水素が建屋内に洩れてきて、やはり、爆発したと考えられ ている。 全てがうまくいかなかった場合の最終手段は、消防車などで、海水を引いてきて炉心に注ぐことである が、それも手遅れになり、メルトダウンが起こった後で、あった。要するにさまざまな、事故対応策がす べて後手にまわった。非常用設備が十分に備えられていなかった。運転訓練も不足で、迅速な行動がで きなかった。他の国々ではこのような事故への備えがなされていた。安全規制を行う立場の保安院や安 全委員会も責任感に欠け、実力も不足していた。さらに、使用済み燃料処理の技術的問題、高レベル廃 棄物の放射能が 10万年も子孫に負担を与えることに対する倫理的な問題などもこの聞に浮かび上がっ てきた。 いずれにせよ、

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.11Fukushima

は起こってしまった事故である。我々はこの事故を反省点として、 今後に向けた判断ベースにしなければならない。 1)汚染されている福島第一をどうやって廃炉にして いけるか、 2)テロや人的ミスを考えると、原子炉のリスクはゼロとは言えないが、安全性対策をどこ までで我慢するのか、 3)他の代替エネルギーを以て原子力を置き換えるためには、どれだけの困難が あるのか、という 3つの問題に対処してし1かねばならない。 第3の問題である代替エネルギーについては、既に西欧諸国が苦労しながらも再生可能エネルギーを 約3分の 1近くまで育て上げてきたことに注目したい。日本のこれまでの原子力のシェア程度、すなわ ち、電力の3割程度であれば、まだ開発途上の二次電池を導入しなくても、水力と火力の出力調節をこ まめに行うだけで、風力や太陽光からの不安定電力の調節ができることが既に実証されてきた。問題は そこから後のステージ、再生可能エネルギーが3割を超えるあたり、すなわち、 「ポスト・ベストミッ クス」の時代になると、系統安定化のための電力貯蔵が本格的な大問題になる。これは2030年代に来 る。 私は個人的には発電過剰時に水電解をして水素を製造し、それを気体、液体燃料として貯蔵、移動用 燃料や燃料電池発電などと組み合わせていくことが、電力系統の安定化としづ課題に究極の解決策を与 えるものと予想する。水素の検討が是非必要になる。 303 (2)

参照

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