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〈論文〉消費者文化ポジショニングについての動態的考察

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消費者文化ポジショニングについての動態的考察

要約 Alden らは,ローカル,フォーリン,グローバルという3つの消費者文化ポジショニ ング概念を構築した。こうした概念に基づき,さまざまな研究が行われ,優れた成果が得ら れている。しかしながら,こうした概念を巡るこれまでの議論は,基本的には,類型的で, 静態的であった。本稿では,消費者文化ポジショニング概念を動態的,複合的に考察してい る。企業が辿る経路として,ローカル→グローバル→グローバルフォーリンという経路と, ローカル→フォーリン→フォーリングローバルという経路を示している。前者の経路は,機 能性ブランドに対応しており,後者の経路は,シンボリックブランドに対応している。 キーワード ローカル消費者文化ポジショニング,フォーリン消費者文化ポジショニング, グローバル消費者文化ポジショニング,ブランドの出身国 原稿受理日 2018年2月7日

Abstract  Alden and his colleagues developed three consumer culture positioning concepts: local consumer culture positioning, foreign consumer culture positioning, and global consumer culture positioning. Based on these concepts, various studies have been conducted, and magnificent results have been achieved. However, the pre-vious arguments over these concepts were basically typological and static. In this paper, the author considers these consumer culture positioning concepts in a dy- namic and compound way. As routes companies follow, he shows two routes: one is Local → Global → Global-Foreign, and the other is Local → Foreign → Foreign-Global. The former route corresponds to a functional brand, and the latter route corresponds to a symbolic brand.

Key words Local Consumer Culture Positioning, Foreign Consumer Culture Posi-tioning, Global Consumer Culture PosiPosi-tioning, Country of Brand Origin

目 次 1.はじめに 2.消費者文化研究の系譜 3.ブランドの出身国を巡る議論 4.消費者文化ポジショニング類型の複合化 5.消費者文化ポジショニングの展開の方向と経緯

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1.は じ め に

消費者文化ポジショニングとは,消費者文化の象徴としてブランドを位置づけることを いう。何か魅力的な消費者の生活様式があり,その象徴としてブランドを位置づけるわけ である。

Alden らは,この消費者文化ポジショニングに,グローバル消費者文化ポジショニング (Global Consumer Culture Positioning,以下 GCCP),フォーリン消費者文化ポジショ ニング(Foreign Consumer Culture Positioning,以下 FCCP),ローカル消費者文化 ポジショニング(Local Consumer Culture Positioning ,以下 LCCP)の3つを識別し ている。GCCP とは,ブランドをグローバルな消費者文化の象徴として位置づけることを いう。 FCCP とは, ブランドを特定の外国の消費者文化の象徴として位置づけることを いう。そして,LCCP とは,ブランドをローカルな消費者文化の象徴として位置づけるこ とをいう。 こうした消費者文化ポジショニングの議論は,グローバルブランドを持つことの意義や, ローカルブランドの存続の可能性,フォーリンブランドの特質などについて多くを語って きた。その貢献は,大きいものがあるように思われる。 ただ,従来の議論にはいくつかの問題点を指摘することができる。 第1点は,LCCP も,FCCP も,GCCP も,別々のものとして取り上げられていること である。しかしながら,ボーングローバルを除くと,元々は,すべての企業は,ローカル な消費者文化の中にいる。FCCP も,GCCP もやがてそこから辿り着くのである。 した がって,消費者文化ポジショニングについては,順次とっていくプロセスについての考察 が必要であるように思われる。 第2点は,とりわけグローバルな消費者文化に関するものである。すなわち,グローバ ルな消費者文化は,予め存在していることが前提となって議論されている。しかしながら, グローバルな消費者文化は企業が意図的に作り出していくものである。したがって,これ を作り出していくプロセスについての言及が必要であるように思われる。 第3点は,消費者文化ポジショニングの類型がいずれも純粋型で議論されていることで ある。しかしながら,複合した形態もあり得る。筆者が特に関心を持っているのは,GCCP  ここでは,文化という言葉を,生活の様式という意味で使っている。  グローバルな消費者文化とは,多数の国にまたがってグローバル細分市場が形成されており, そこにおいて特定の消費生活様式が共有されていることをいう(Alden et al. 1999:75)。

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と FCCP との複合型である。GCCP を展開してきた企業もそれだけではブランド形成に おいて頭打ちになる。同様に,FCCP を展開してきた企業も,それだけでは市場規模の拡 大という点で限界を感じるようになる。したがって,最終的には,それぞれが他方の良い 点を取り込もうとするはずなのである。 そこで,本稿では,消費者文化ポジショニングについて動態的な考察をすることにした い。 まず,消費者文化や消費者文化ポジショニングについての議論の系譜を整理したい。そ の中から,ローカルな消費者文化,外国の消費者文化,グローバルな消費者文化の本質を 明らかにしたい。ついで,ブランドの出身国の議論を整理したい。出身国の議論を取り上 げるのは,それが,FCCP や GCCP を行うための発射台になるからである。出身国の議 論とはそもそも何なのか,その全貌を明らかにする。また,GCCP を行ってきた企業が, FCCP を取り入れる経緯について,また,FCCP を行ってきた企業が GCCP を取り入れ る経緯について,事例をとおして触れたい。そして,そのうえで,企業がどのような順序 で,LCCP,FCCP,GCCP をとっていくのかについて概念枠組みを提示したい。

2.消費者文化研究の系譜

まず,消費者文化研究の系譜をみよう。

a)Alden, Steenkamp, and Batra(1999)

Alden et al.(1999)の功績は,GCCP,FCCP,LCCP という概念を構築したことであ る。この研究の段階では,GCCP ,FCCP ,LCCP の実存と実態の確認に研究の主眼が置 かれている。 Alden et al.(1999)は,ブランドをグローバルな消費者文化,外国の消費者文化,ロー カルな消費者文化のいずれかに結びつけるのに,言語,テーマ,美的スタイルというサイ ンが広告で用いられることに注目した。そして,各国の広告で使われている言語,テーマ, 美的スタイルを見れば,GCCP,FCCP,LCCP の存在を確認できるのではないかと考え た(:7778)。 とりわけ,① GCCP ,FCCP ,LCCP のポジショニング概念としての妥当性(H1), ② GCCP,FCCP に対する LCCP の比重(H2),③グローバルな消費者文化の波及のあ り方に伴う,GCCP の比重の米国と他の国との格差および LCCP の比重の米国と他の国

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との格差(H3,H4),④ GCCP で用いられる広告コンテントの特徴(H5),⑤ GCCP が見られる製品カテゴリーの特徴や LCCP が見られる製品カテゴリーの特徴(H6,H 7,H8),の確認に力が注がれた(:7879)。 以上を確認するのに,インド,タイ,韓国,ドイツ,オランダ,フランス,米国の7カ 国で,1995年にテレビ広告の調査が行われた。それぞれの国で,ネイティブのコーダーが, それぞれの広告の1.スポークスパーソンの外観,2 .テーマ,3 .ブランドネームの発 音, 4 . ブランドネームのビジュアルディスプレー,5 . ブランドロゴデザインに,グ ローバル,フォーリン,ローカルのいずれの特徴が見られるかをチェックしてデータが得 られた(:7980)。 得られたデータを MCA(多重コレスポンデンス分析)にかけた結果,左方の中性(コ スモポリタン)から右方の国の個性に至る横の次元と,上方のネイティブカルチャーから 遠いから下方のネイティブカルチャーに近いに至る縦の次元を交差させた空間図が得られ た(:8183)。 ローカルというコードが付された上記1.から5.は,右下の象限(国の個性があって, ネイティブカルチャーに近い)のほぼ1点に集中するようにプロットされた。 また, グ ローバルというコードが付された1.から5.は,左上の象限(コスモポリタンで,ネイ ティブカルチャーから遠い)のほぼ1点に集中するようにプロットされた。一方,フォー リンというコードが付された1.から5.は,すべて右上の象限(国の個性があるが,ネ イティブカルチャーから遠い)に入ったが,象限内の多様な位置に散らばった。このこと から,Alden et al.(1999)は,①のポジショニング概念としての妥当性(H1)は, GCCP と LCCP については認められたが,FCCP は該当する広告の数が少ないため,結 果が不安定になっており,さらなる調査が必要であるとしている(:83)。 また,1 .から5.までの3つ以上がグローバルとされた広告が GCCP 広告,フォーリ ンとされたものが FCCP 広告,ローカルとされたものが LCCP 広告とされた(:81)。 個人のアイデンティティーにとってローカル文化が重要であることや,グローバルな消 費者文化の普及がまだ初期の段階にあることから,②については, テレビ広告において LCCP は,GCCP や FCCP よりも頻繁に用いられるという仮説(H2)が立てられた。 この仮説は,カイ2乗検定により,タイを除くすべての国で検証された(:83)。 また,Alden et al.(1999)によっては,特定の文化的なシンボル(魅力的なライフス タイルを象徴するもの)は,米国から世界の他の部分に伝達され,グローバルなものに なっていくため,米国ではローカルと思われているシンボルが,他の国ではグローバルな

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シンボルと思われることが多々あるという考え方がとられている。このことから,③につ いては,GCCP は,他の国における広告に比べると,米国におけるテレビ広告に見られる ことが少なく,LCCP は,他の国における広告に比べると,米国におけるテレビ広告によ り多く見られるという仮説(H3,H4)が立てられた。これらの仮説もまた,米国と米 国以外でカイ2乗検定が行われた結果,検証された(:83)。 また, ④については,GCCP では,どの国にも対応できるよう(禁忌を冒さぬよう), あたりさわりのないソフトセルアプローチ(イメージ広告)が用いられることが多いとい う仮説(H5)が立てられた。この仮説もまた,GCCP と GCCP 以外でカイ2乗検定が 行われた結果,検証された(:83)。 また,⑤については,GCCP は,消費者が共通の行動を示す製品カテゴリーに関してと られやすく,したがって,伝統よりも近代性やコスモポリタニズムを象徴する製品カテゴ リーの方がとられやすいという考え方がとられている。Alden et al.(1999)によると, ハイテクの耐久消費財は,モダニズムやコスモポリタニズムを代表しており,逆に,食品 はローカルの伝統と意味を象徴している。また,サービスは財よりもローカルなものとし て位置づけられることが多いという。製品カテゴリー間でカイ2乗検定が行われた結果, GCCP は食品に対してとられることが最も少なく,ハイテクの耐久財について用いられる ことが最も多い(家庭用品やパーソナルケア,ローテクの耐久消費財はその中間にある) こと(H6),LCCP は, 食品と家庭用品に対してとられることが最も多く, ハイテクの 耐久消費財に対してとられることが最も少ない(パーソナルケア,ローテクの耐久消費財 はその中間にある)こと(H7),LCCP は,財よりもサービスに対して相対的に多くと られていること(H8),が検証された(:8384)。 以上の議論からわかるように,Alden et al.(1999)のいうグローバルな消費者文化と は,モダニティーに他ならないように思われる。最低限近代的な生活を送れていることが, グローバルな消費者文化なのである。この意味におけるグローバルな消費者文化は,たと えば,彼らが例に挙げるエアコンやスーツに端的に示されているように,消費者にとって の参入障壁が低い。そして,こうした消費者文化は,近代化や工業化が前提になっている 限り,グローバルに収斂されうるものである。その意味では,グローバルな消費者文化は, その存在を認めることができる。 一方,多かれ少なかれ, 人々の暮らしは,伝統やローカル文化を継承しているので, ローカルな消費者文化の存在もまた,意識しているにせよ,意識していないにせよ,よく わかる。

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ただ,Alden et al.(1999)の問題は,外国の消費者文化や FCCP に対する記述が少な いことである。FCCP と認められる広告が少なかったことが影響しているのか,H3から H8はすべて GCCP と LCCP に関する仮説である。この研究をとおして,FCCP に対す る関心は,どこかに行ったように思われる。 おそらくその原因の1つは,Alden et al.(1999)のサンプルがテレビ広告であること にあると思われる。テレビ広告には,FCCP が出てくることは少ないかもしれない。テレ ビ広告のメリットは,一般大衆に到達できることにある。しかし,FCCP を必要とする企 業は,必ずしも一般大衆に到達することを必要としないかもしれない。また,テレビは茶 の間で見られるものである。それゆえ,広告もオーディエンスの生活の中に入り込もうと する設計のものになりやすい。ブランドの世界観の中にオーディエンスを取り込もうとす るものは,少ないはずである。 また,登場する製品も,食品,家庭用品,パーソナルケア,ローテクの耐久消費財,ハ イテクの耐久消費財と,身近なものである。そこに,プレスティージブランドが入り込む 余地は少ないように思われる。 したがって,この研究の結果は,外国の消費者文化や FCCP の意義を損なうものではな いはずである。

b)Steenkamp, Batra, and Alden(2002)

Steenkamp et al.(2002)は,GCCP の結果ともいえる消費者に知覚されたブランドの グローバル性や,LCCP の結果ともいえる消費者にとってのブランドのローカル文化の偶 像としての価値(以下,ローカルアイコン)が,ブランドの購買見込みにどのような道筋 で影響を及ぼすのかを明らかにしようとした(:5354)。 彼らは,知覚されたブランドのグローバル性とローカルアイコンについて次のような仮 説を立てた。 グローバルブランドはローカルブランドに比較して希少性が高く,価格も高い。また, コスモポリタンで,洗練されていて,モダンなイメージがある。また,社会的に認知され ている世界規模のイベントへのスポンサードをとおして,イベントやそこに参加するセレ ブリティーが持つプレスティージが移植される。それゆえ, H1 知覚されたブランドのグローバル性は,プレスティージをポジティブに伴うはずで ある(:55)。 消費者は,グローバルに受け入れられているものなら,品質が高いと考える。それゆえ,

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H2 知覚されたブランドのグローバル性は,消費者の品質に対する知覚をポジティブに 伴うはずである(:55)。 グローバルブランドを持つことは,グローバルな消費者文化クラブに所属していること を証明する機会である。ブランドの所持それ自体によって,心理的満足感が高まる。それ ゆえ, H3 品質とプレスティージをコントロールした後でも,知覚されたブランドのグローバ ル性は,購買見込みをポジティブに伴うはずである(:55)。 プレスティージは,製品カテゴリー,セグメント,時間枠組みが限られるが,知覚品質 は,これらを問わない。また,グローバルな消費者文化はまだ揺籃期にあるので,所属の 道筋は,最も弱い。それゆえ, H4 購買見込みに関係する道筋の中でも, 品質の道筋が最も重要であるはずである (:5556)。 一方,消費者がローカル文化を願望することが多いことに基づき,ローカルの文化的資 本を用いることによって,また,ローカルな文化,嗜好,ニーズへのより深い理解に基づ くターゲティングやポジショニングによって,持続可能なユニークな価値を生み出し,本 物とプレスティージの象徴を生み出すことができる。それゆえ, H5a ローカルアイコンは,プレスティージをポジティブに伴うはずである(:56)。 また,高品質の解釈は,市場によって異なるので,ローカルブランドの方がローカルの 品質ニーズに合っているかもしれない。それゆえ, H5b ローカルアイコンは,知覚品質をポジティブに伴うはずである(:56)。 また,ローカルブランドを持つことは,ローカルのコミュニティーの一員であることを 証明する機会になりうる。それゆえ, H5c 品質とプレスティージを制御した後も,ローカルアイコンは購買見込みをポジティ ブに伴うはずである(:56)。 また,彼らは,知覚されたブランドのグローバル性とローカルアイコンそれぞれの購買 見込みとの結びつきを媒介する要因として消費者エスノセントリズムに言及している。 H6a 消費者エスノセントリズムが強い消費者は, 外国文化に対してオープンではない ので,消費者エスノセントリズムは,知覚されたブランドのグローバル性と購買見込みと の結びつきを弱めるはずである(:5657)。 H6b 消費者エスノセントリズムが強い消費者は,自分の国のブランド, シンボル, 文 化に誇りを持っているので,消費者エスノセントリズムは,ローカルアイコンと購買見込

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みとの結びつきを強めるはずである(:5657)。 以上の仮説を検証するために,彼らは,韓国と米国で消費者(女性の住民)に対するア ンケート調査を行った。そして,ここで得たデータをもとに,構造方程式モデリングが行 われた。非標準化構造係数から,分かったことは以下のとおりである(:5962)。 ●知覚されたブランドのグローバル性は, 米韓ともに, プレスティージに寄与する(H 1)。 ●ローカルアイコンも,米韓ともに,プレスティージに寄与する(H5a)。 ●しかし,米韓ともに,プレスティージは購買見込みに寄与しない。それどころか,韓国 では(敬遠を招くのか)プレスティージがかえって購買見込みを弱めている(H4)。 ●知覚されたブランドのグローバル性は,米韓ともに,品質に寄与する(H2)。 ●しかし,ローカルアイコンは,米韓ともに,品質には寄与しない(H5b)。 ●品質は,米韓ともに,購買見込みに強く寄与する(H4)。 ●知覚されたブランドのグローバル性は,米韓ともに,ダイレクトには購買見込みには寄 与していない(H3)。 グローバルな消費者文化クラブのメンバーであることは重要では ないようである ●知覚されたブランドのグローバル性は,米韓ともに,品質,プレスティージを通して購 買見込みに間接的に寄与している(H4)。 ●この間接的な寄与に関しては,米韓ともに,プレスティージよりも品質が果たす役割の 方が圧倒的に大きい(H4)。 ●ローカルアイコンは,米韓ともに,品質やプレスティージをとおして間接的にも購買見 込みに寄与していない。 ローカルアイコンが係わっているのは, 品質ではなく, プレス ティージで,プレスティージは,購買見込みに寄与していないからであろう。 ●その半面,米韓ともに,ローカルアイコンはダイレクトには購買見込みに寄与している (H5c)。ローカルコミュニティーの一員であることは重要であるようである。 ●消費者エスノセントリズムが弱いところで,米韓ともに,知覚されたブランドのグロー バル性は品質やプレスティージを通して間接的に購買見込みに結び付く(H6a)。ただし, 消費者エスノセントリズムが弱くても,米韓ともに,知覚されたブランドのグローバル性 と購買見込みとの直接的な結び付きが強くなるわけではない。 ●米国では,消費者エスノセントリズムの強いところで,ローカルアイコンと購買見込み との直接的な結びつきが強くなる傾向がある(H6b)。消費者エスノセントリズムの強い ところで,ローカルコミュニティークラブが意味を持つのかもしれない。

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●しかし,韓国では,なぜか消費者エスノセントリズムが弱いところで,ローカルアイコ ンと購買見込みとの直接的な結びつきが強くなる傾向にある(H6b)。 彼らの貢献は,知覚されたブランドのグローバル性とローカルアイコンが購買見込みに 及ぼす影響とメカニズムを明らかにしたことである。そして,社会の仕組みが違う米国と 韓国でほぼ同じような結果を得たことである。このことは,仮説の普遍的な妥当性を示唆 するものであり,いわゆるグローバルブランドの優位性に根拠を与えている。とりわけ, 知覚されたブランドのグローバル性は品質をとおして間接的に購買見込みに寄与している こと,グローバルな消費者文化クラブのメンバーであることは購買見込みに関係していな いこと,が興味深い。 一方,問題点の1つは,身近なブランドしか取り上げられていないことである。すなわ ち,食品,飲料,パーソナルケア,耐久消費財の,計8ブランドが取り上げられているが, いずれも身近なものである。プレスティージブランドは,取り上げられていない。 また,もう1つの問題は,フォーリンとグローバルの区別が必ずしも明確でないことで ある。知覚されたブランドのグローバル性の3つの指標のうち2つは,単に海外でも売ら れていると考えられているということである(:64)。また,もう1つの指標として(ロー カルブランドに対する)グローバルブランドという言葉が提示されているが,言葉の定義 がなされていない(:64)。2000年の時点では,一般消費者がグローバルブランドといわれ てもわからなかったであろう。 おそらく, 彼らによっては, ローカルグローバルという 連続線を作るために,フォーリンの問題は,意図的に忘れられているように思われる。

c)Cleveland and Laroche(2006)

Cleveland and Laroche(2006)は,グローバル消費者文化への文化的適応に関する理 論的考察を試みた。文化に対する彼らの根本的な考え方は,人は意図的に文化を学習する ことができるということにある(:250)。そのうえで,彼らは,文化的適応を,個々人が, 自分が育った文化とは違う文化の規範や価値を学習し,採用するプロセスと規定する。そ して,彼らは,移民の分析で使われた Berry(1997)の枠組みに依拠している。 Berry(1997:9)は,自分のアイデンティティーや特徴(つまり,元々属していた文化) を維持することに価値があると思うか否か,より大きな社会(つまり,移民先の文化)と の関係を維持することに価値があると思うか否か,に基づき,有名な4つの文化対応モデ ルを提起している。すなわち,①同化(assimilation 代替的な文化規範がネイティブの文 化的規範にとって替わること),②統合(integration ネイティブの文化と代替的な文化の

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両方から習慣がとられること),③分離・隔離(separation/segregation 代替的な文化的 規範を拒絶すること),④自己排斥( marginalization いかなる文化的規範も拒否するこ と)である。

Cleveland and Laroche(2006)の場合は,ネイティブの文化的規範がローカルな消費 者文化に,代替的な文化的規範がグローバルな消費者文化に置き換えられた。そして,彼 らは,①グローバルな消費者文化のダイレクトな(修正なしの)採用,②グローバルな要 素とローカルな要素とのミキシング,③ローカルな消費者文化への過剰な一体化,④消費 行動のあからさまな拒絶,という4つの対応を提示している(:251252)。 こうした類の枠組みには,後のグローバル消費志向の議論への橋渡しをするものとして 興味深いものがある。 ただ,彼らの問題は,グローバルな消費者文化を与件としていることである。つまり, すでに確固として存在しているグローバルな消費者文化に対してどのような対応をとるの かが議論されている。しかし,グローバルな消費者文化は,モダニティーや工業化という 共通項を除くと,実際には,実体のないあやふやな存在である。また,グローバルな消費 者文化は,企業自身の色付けによってどのようにも変わりうる。メディアスケイプによっ て形成される部分が大きいからである。 また,彼らのもう1つの問題点は,フォーリンとグローバルの区別ができていないこと である。彼らが依拠した Berry(1997)の枠組みは,むしろフォーリン(確固として存在 している移民先の文化)への適応に近い。

d)Alden, Steenkamp, and Batra(2006)

Alden et al.(2006)の研究は,基本的には,Berry et al.(1989)ほかの枠組みに基づ くものである。すなわち,同化,分離,ハイブリッド化,関心の欠如,という4重モデル である。事実彼らも,当初は,この4重モデルをグローバル消費志向と呼んでいた(:227 228)。 ただ,彼らの特徴は, 連続線の概念でこれらを捉えなおそうとした点にある(:229)。 連続線の概念で捉えなおすことができたからこそ,グローバル消費志向とその先行条件と の関係,グローバル消費志向とそれがもたらす結果との関係を統計的に吟味することがで きるようになった。ここに彼らの貢献がある。 韓国の中規模な都市地域で,ライフスタイル,エンターテインメント,家具,衣服とい う4つの消費関連領域で,買い物途中の人々に回答を依頼した。回答者は,それぞれの消

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費領域に関して,グローバルな代案,ローカライズされた代案,ハイブリッドな代 案,いずれにも関心を持っていない,に相当する言葉を選ぶ(:228229)。 結果は,MCA(多重コレスポンデンス分析)にかけられた(:229)。 消費領域ごとの代案は,横軸に沿うように,左から右へ,ローカル,ハイブリッド,グ ローバルと並んだ。この次元を彼らは,グローバル消費志向と呼び直している。つまり, グローバル消費志向が強いほど,消費者の志向性は,グローバル寄りになり,弱いほど, ローカル寄りになる(その中間がハイブリッドである)。 一方,消費関連領域ごとの関心がないという代案は,縦の次元を形成する形で,下方の 真ん中に固まった。彼らは,この次元を消費者の反応の強度(グローバル消費志向の強度) と呼んでいる。つまり,強度が強いと,ローカル,ハイブリッド,グローバルのいずれも 強くなり,強度が弱いと,いずれも弱くなるのである。 米国でグローバル消費志向次元の再試が行われた(:229)。MCA の結果は,韓国での結 果と同じようになった。 さらに,中国でも追試が行われた(:230)。ここでは,食品が消費関連領域に加えられ, 計5つの消費関連領域で調査が行われた。ここでも,MCA の結果は,韓国での結果と同じ ようになった。グローバル消費志向概念に通文化的な普遍性が認められたといってもよい。 また,こうした普遍性を前提として,グローバル消費志向に対する先行条件と,グロー バル消費志向がもたらす結果についても,分析が行われた。 米国では,グローバル消費志向を促す先行条件として,コスモポリタニズムと,外国の ライフスタイルへの賞賛が取り上げられた。これら2つの要因とグローバル消費志向との 間には,有意な正の相関があることが確認されている(:229)。 中国では,構造方程式モデリングを使って,グローバル消費志向に対する先行条件とグ ローバル消費志向がもたらす結果についてのさらに詳細な分析が行われた(:227235)。 グローバル消費志向を促す先行条件として,外国のマスメディアへの露出,旅行関連の 人の移動をとおした外国文化への露出,物質主義,が措定された。そして,そのうちの物 質主義を促す要因として,外国のマスメディアへの露出と社会的規範の影響の受けやすさ が措定された。外国のマスメディアは物質主義をうたっているし,社会的規範の影響の受 けやすさは見栄を誘うからである。 グローバル消費志向を抑制する先行条件として,社会的規範の影響の受けやすさが措定 された。社会的規範の影響を受けやすいと,ローカル文化のシンボルの消費をとおして, 社会の一員である「証」を立てようとするからである。

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また,グローバル消費志向の強度を促す先行条件として,物質主義と社会的規範の影響 の受けやすさが措定された。物質主義は,消費意欲の前提になるからである。また,社会 的規範の影響の受けやすさが強いと,グローバルであろうと,ローカルであろうと,ハイ ブリッドであろうと,関心集団の好みに合わせようとするからである。 一方,グローバル消費志向がもたらす結果としてグローバルブランドに対するポジティ ブな態度が措定された。 また,グローバル消費志向が抑制するもの(結果)として消費者エスノセントリズムが 措定された。消費者エスノセントリズムは,グローバルブランドに対する態度にネガティ ブな影響を与える要因としてとらえられている。それゆえ,消費者エスノセントリズムの 抑制は,グローバルブランドに対するポジティブな影響を促すと考えられる。 標準化パス係数が計算され,以上に措定された関係は,社会的規範の影響の受けやすさ とグローバル消費志向の強さとの間に有意な関係がなかった点を除き,すべて検証された。 いずれにせよ,彼らの貢献は,グローバルブランドが好まれるに至る道筋を示したこと である。そして,そうした結果に至るグローバル消費志向をいわば量的な概念として示し たことである。また,この場合は,グローバル,ハイブリッド,ローカル,そのいずれで もないという代案を示したうえで,回答を求めているので,グローバルの内容についての 誤解は生じえない。すなわち, グローバルとは,「どこの個別の国あるいは地域に対して も何ら強い結びつきを持たないが,世界中の多くの国々で広く受容されているもの(:228)」 なのである。この点では,Steenkamp et al.(2004)に見られたグローバルとフォーリン が混同されるという問題点がクリアされている。また,彼らの枠組みでは,グローバル消 費志向が連続線として捉えられているので,Cleveland and Laroche(2006)に見られた グローバルな消費者文化がすでに確固として存在することを前提とした議論という問題も 回避されている。 一方,問題点の1つは,グローバル消費志向の強さが,うまく使いこなされていないこ とである。グローバル消費志向の強さと,グローバル消費志向がもたらす結果(グローバ ルブランドに対するポジティブな態度や消費者エスノセントリズム)との関係が明らかに されていない。 もう1つの問題点は,グローバルという極が,文化的裏付けを持たないまったく無色な ものになっていることである。 そして,もう1つの問題点は,彼らの枠組みでは,フォーリンが完全に消えていること である。

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e)Akaka and Alden(2010)

Akaka and Alden(2010)は,基本的にレビュー論文である。ただ,Akaka and Alden (2010)は,GCCP と知覚されたブランドのグローバル性を統合した枠組みを打ち出した 点で独自な貢献をしている。すなわち,Akaka and Alden(2010)は,企業側の GCCP が消費者側の知覚されたブランドのグローバル性をもたらすという考え方を明示している。 そして,GCCP を知覚されたブランドのグローバル性に結びつけるものとして,メディア スケイプ,とりわけ国際広告が果たす役割を重視している(:3738)。 国際広告においては,広告を各国のオーディエンスにとって意味のあるものにすること が重要になる。そこで,彼女らがとりわけ重視したのは,ハイブリッド化である。実際, 彼女らの議論は,終始ここに収斂するように展開されている。 彼女らは,国際広告の次のようなバリエーションに言及している。 ① ブランドが,そのオリジナルな意味の通りに,オリジナルな表現(言語,テーマ,美 的スタイル)を使って,伝達される場合(:45,51)。 ② ブランドが,そのオリジナルな意味(すなわち,グローバルに共通する意味)を各国 の人々により深く訴求できるようにするために,ローカルな表現(言語,テーマ,美 的スタイル)を使って,伝達される場合(:4748,49)。 ③ ブランドが,まったく異なる意味を持つ場合。つまり,ブランドが,まったく異なる 生活様式の中に,オリジナルとはまったく異なる意味を持って取り込まれており,ブ ランドが意味も表現も変えて伝達される場合(:48,52)。 このうち,②と③が広告におけるハイブリッドとされている。 こうした広告におけるバリエーションは,GCCP そのものについても,バリエーション があることを示唆している。 1つは,同じ生活様式の中に, 同じ意味を持って取り込まれるブランドに対して, グ ローバルな表現を使って,ブランドはグローバルに使われており,世界のどこでもグロー バルなものとして認知されているとアピールするケースである。この場合,ブランドは, まさしくグローバル消費者文化の象徴といえる。 また1つは,同じ生活様式の中に,同じ意味を持って取り込まれるブランドに対して, ローカルな表現を使って,ブランドがグローバルに使われており,世界のどこでもグロー バルなものとして認知されているとアピールするケースである。この場合もまた,ブラン ドは,グローバル消費者文化の象徴といえる。 そして最後の1つは,まったく異なる生活様式の中に,まったく異なる意味をもって取

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り込まれるブランドに対して,ローカルな表現を使って,ブランドはグローバルに使われ ており,世界のどこでもグローバルなものとして認知されているとアピールするケースで ある。この場合,ブランドがグローバルな消費者文化のシンボルだとアピールすれば,そ れはその国のなかだけで虚構の世界を作っていることになる。

この第3のケースを含めて GCCP と言い切っているために,Akaka and Alden(2010) によっては,グローバルな消費者文化は単に,ブランドの共有にすぎなくなってしまって いる。そのため,彼女らの枠組みでは,グローバルな消費者文化に,文化が意味する生活 様式の共有を伴っていないケースが含まれるのである。

いずれせよ,Akaka and Alden(2010)においては,ローカルとグローバルの間にある, ハイブリッドだけが強調され,フォーリンの問題は,視野の外に置かれてしまっている。

f)Nijssen and Douglas(2011)

Nijssen and Douglas(2011)は,消費者の世界への関心やエスノセントリズムが,ど う3種の広告(LCCP,FCCP,GCCP)に対する態度に結び付くのかを明らかにしようと した。 次の仮説が立てられた。 H1a 世界への関心のある消費者は,世界の他の部分から来た製品やブランドに関心 を持っているので,GCCP 広告や FCCP 広告にポジティブに反応する(:115116)。 H1b GCCP 広告と FCCP 広告との間では,世界に関心のある消費者は,すべての文 化に対してオープンであるので,国を中心とする FCCP 広告よりも,国という枠にとらわ れない GCCP 広告に対してよりポジティブに反応する(:116)。 H1c 世界に関心のある消費者は, 世界やグローバルな文化に対するポジティブな態 度こそが高尚だと考えているので, 彼らが世界に対する偏狭な見方を反映するものだと 思っている LCCP 広告に対してネガティブに反応する(:116)。 H2a エスノセントリックな態度を持つ消費者は, 外国の製品を購買することは適切 でないと思っているので,FCCP 広告や GCCP 広告にネガティブに反応する(:116117)。 H2b エスノセントリックな態度を持つ消費者は, 自分の価値観に整合するものとし て,LCCP 広告にポジティブに反応する(:117)。 H2c 世界への関心とエスノセントリズムを同時に持っていると, お互いがお互いを 弱め合うので,エスノセントリズムは,世界への関心と GCCP 広告や FCCP 広告とのポ ジティブな結び付きや,世界への関心と LCCP 広告とのネガティブな結びつきを弱める働

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きをする(:117)。 以上の仮説を検証するために,オランダの中規模都市 Nijmegen のショッピングモール で街頭調査が行われた。消費者に,LCCP 広告,FCCP 広告,GCCP 広告をそれぞれ3つ ずつ見せ,その評価が聞かれた(:117118)。 データが PLS(偏最小2乗)を用いた構造方程式モデリングにかけられた結果,H1a とH1cは支持された。これに対して,H1bは支持されなかった。つまり,世界に対する 関心が強いからといって,必ずしも FCCP 広告よりも GCCP 広告が好まれるわけではな かったのである(:119)。 また,H2aとH2bも支持された。 一方,H2cは,LCCP 広告に関する部分に関して のみ支持された。つまり,世界に関心を持っている人でも,エスノセントリックな態度を 同時に持っていると,LCCP 広告に対するネガティブな態度が弱まるのである(:119)。 この研究では,再試が行われた。同じ都市 Nijmegen の大規模スーパーマーケットで街 頭調査が行われた。今度は,消費者に LCCP 広告,FCCP 広告,GCCP 広告をそれぞれ 1つずつ見せ,その評価が聞かれた。このデータを使った分析でも,上とほぼ同じ結果が, 確認された(:121122)。 さらに,この調査では,さらに2つの緩和要因が識別された。海外旅行経験と,本物志 向である。次の追加的な仮説が立てられた。 海外旅行経験があると,外国には独自な,個性ある文化が存在することが身を以て分か るので,世界への関心がある人で,海外旅行経験のある人は,こうした各国の個性に注目 しようとする。それゆえに,海外旅行経験は,世界への関心と FCCP 広告に対する態度と のポジティブな関係を強める(H3)。それに対して, グローバルな消費者文化は国の特 異な文化に根差した個性を持たない(つまり,グローバルな消費者文化には旅情がない)。 それゆえ,海外旅行経験があっても,世界への関心と GCCP 広告に対する態度とのポジ ティブな結びつきが強まるわけではない(:123)。 また,本物は,実存の中にしか存在せず,ナショナルな価値システムの中にしか存在し ない。だから,世界への関心がある人で,本物志向の人は,世界から,外国の消費者文化 やローカルな消費者文化の中にある本物を探してこようとする。それゆえに,本物志向は, 世界への関心と FCCP 広告や LCCP 広告との関係をポジティブに媒介する(H4)。これ に対して,グローバルな消費者文化はいわば虚構であり,そこには実存(ナショナルな価 値システム)がない。そのため,本物志向が世界への関心と GCCP 広告に対する態度との ポジティブな結びつきを強めることはない(:123124)。

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分析の結果,以上の追加的な仮説はすべて検証された(:124)。

Nijssen and Douglas(2011)の独自性は,FCCP にフォーカスを置いていることにあ る。彼らは,先行の研究では忘れられかけていた FCCP を見事に復権させた。FCCP を 捉え,深い分析ができたのは,GCCP 広告,FCCP 広告,LCCP 広告を被験者に見せ,評 価を聞くという調査スタイルのためだと思われる。つまり,FCCP 広告は,必ず被験者の 目に入るのである。また,街頭調査であるので,被験者の背景も捉えやすかったように思 われる。そして,そのことが深い分析に繋がったのだと思われる。 一方,研究面での彼らの貢献は,実存架空(虚構)という軸を暗示していることと, 本物という概念を提示していることにあると思われる。つまり,ローカルな消費者文化や 外国の消費者文化は実存で,グローバルな消費者文化は架空なのである。身を以て体験す ることができるのは,実存の中にしかない。そして,本物もまた実存の中にしか存在して いない。したがって,究極を求めるなら,ローカルな消費者文化や外国の消費者文化を極 める必要がある。これは,GCCP では到底到達しえないものである。これらは,極めて重 要な指摘であるように思われる。

一方,Nijssen and Douglas(2011)の問題点は,調査が,2回とも同じオランダの中 規模都市 Nijmegen で行われていることである。このため,彼らの発見結果には,調査地 のバイアスが入っているかもしれない。 以上の議論から次のように言えるかもしれない。 ●グローバルな消費者文化は,いわば架空の世界で,表しているものは,モダニティーで ある。そして,モダニティーは,機能性の世界である。これに対して,外国の消費者文化 とローカルな消費者文化は,実存の世界であり,本物が存在する世界である。そして,本 物という点に限定すると,自己の存在を証明するシンボリックな世界である。 したがっ て,いずれかというと,感性や情緒の世界である。 ●極論すると,GCCP は,所得によってある程度購買層が限定されるとはいえ,機能性と いう普遍的属性でマスに訴求するものである。それに対して,FCCP も LCCP も本物に 限定して考える限り,情緒や感性で限定的な市場に訴求するものである。ただ,ローカル な消費者文化は本物でないものも含んでおり,この部分は人々の日常の生活様式そのもの といってよい。同様に,外国の消費者文化も,本物でないものを含んでいる。特定の外国  ここでは,シンボリックという言葉を機能性という言葉に対峙させて用いているが,その意味 は,Merz et al.(2008)に依拠している。

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の日常の生活様式そのものであるが,受入れる国の側から見れば,これが魅力的に映るか 否かということになる。そして,その場合に敷居の高いメンバーシップ(exclusiveness) を伴うかというと,必ずしもそうではない。 ● GCCP の結果としての知覚されたブランドのグローバル性と LCCP の結果としてのロー カルアイコンは,購買見込みに寄与する。ただし,知覚されたブランドのグローバル性が 購買見込みに寄与するのは,最低限の品質が保証されるからという間接的な効果をとおし てである。それに対し,ローカルアイコンは,所属のパスをとおして,直接的に購買見込 みに寄与する。一方,知覚されたブランドの外国性(Perceived Brand Foreignness)と 購買見込みとの関係についての分析はこれまで行われていない。だが,本物という点に限 定して考えると,こうした外国性がもたらすものは,最低限近代的な生活を送れていると いう意味でのプレスティージではない。また,買って間違いないという意味での品質では ない。おそらく,それは,自分の存在(他との違い)を演出するシンボリックなものとし ての究極のプレスティージであろう。また,極点を極めた究極の品質であろう。そして, 最終的な成果は,限定された人々の間での購買見込みと,ブランドエクイティーであろう。 ただし,本物以外の外国性についてはこの限りではない。おそらくそれは,単に好感が持 てるからというものであろう。 ●グローバルな消費者文化は,モダニティーゆえに,先進国から流れ出る。したがって, 当然,グローバルな消費者文化を普及させる役割を果たすのは,先進国企業であることが 暗に想定されている。ただ,GCCP の担い手を先進国企業だけに限定して考えるのは狭き にすぎるかもしれない。先進国の企業が拓いた市場で新興国の企業が後追いし,グローバ ル化するケースがあるからである。Alden らの議論は,企業の問題を直接的には取り上げ ていなかった。彼らの関心は,広告や消費者の意識にあったからである。しかし,企業の 問題を考える際にはこうした点に留意する必要があるように思われる。

3.ブランドの出身国を巡る議論

GCCP にも FCCP にも関係の深い概念にブランドの出身国がある。 GCCP をしようと するブランドにも,FCCP をしようとするブランドにも,出身国があり, 出身国如何に  Country of Origin(COO)は,主にブランドの出身国の問題とその製造国の問題として研究 されてきた(Allman et al. 2016:41)。ここでは,前者の議論をしており,単に出身国という場 合には,ブランドの出身国を指している。ただ,ブランドの製造国がブランドの出身国と切り離 せない場合があり,ブランドの出身国に製造国という意味を含み持たせる場合には,「ブランド の出自」という言葉を使うことにしたい。

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よって,GCCP,FCCP ともに成否を左右され得る面をもっている。いわば GCCP,FCCP の出発点に係わる問題である。これまで消費者文化ポジショニングの議論では,出身国の 問題は,暗黙裏には想定されていたものの,明確に言及されることがなかった。出身国の 議論には消費者文化ポジショニングの議論以上に蓄積がある。出身国の議論を整理するこ とによって,糸口を見いだすことにしたい。  成果との関係 Roth and Romeo(1992)

出身国研究のメインストリームと思われるのが,出身国イメージと成果との関係を明ら かにしようとした研究である。Roth and Romeo(1992)は,その古典的論文である。

Roth and Romeo(1992)の関心は,ただ単に出身国のイメージが購買にどう影響する のかを明らかにすることではなく,出身国のイメージが重要な製品カテゴリーか,重要で ない製品カテゴリーかによって,影響が変わってくることを明らかにすることにあった。 まず,Roth and Romeo(1992)は,先行研究から,出身国のイメージに4つの次元を 抽出した。 革新性(新技術の使用やエンジニアリングの進歩),デザイン(外観, スタイ ル,色,バラエティー),プレスティージ(排他性,ステータス,ブランドネームの評判), 匠(信頼性, 耐久性, 職人技,製造品質)である(:480481)。これら4つの次元は,相 互に高い内相関を示したことから,「出身国のイメージ」というより大きな1つの次元に 集約された(:487488)。

そして,Roth and Romeo(1992)は,アイルランド,メキシコ,米国の回答者の,ド イツ,日本,米国,フランス,英国,韓国,アイルランド,スペイン,メキシコ,ハンガ リーに対する「出身国のイメージ」を測定した(:484)。国に対する評価の順位は若干前 後するが,米国,アイルランド,メキシコの消費者は,いずれもドイツ,日本を高く評価 し,ハンガリー,メキシコを低く評価した(:489)。

また,Roth and Romeo(1992)は,製品にとっての「出身国のイメージ」の重要度の 評価を測定した。ここでも,順位は若干前後するが,米国,アイルランド,メキシコとも に,重要度は自動車と時計で高く,ビールで低かった(:489)。

Roth and Romeo(1992)は,自動車,時計,自転車,革靴,クリスタルグラス,ビー ル,という製品カテゴリーごとに,米国,メキシコ,アイルランドの消費者の,製品に対 する購買意欲を測定した。どの国でも,日本とドイツの自動車と時計に対する購買意欲が 高かった(:491)。また, どの国でも, 自動車と時計で, 出身国のイメージと購買意欲と

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の間に強い正の相関が見られた。こうした結果から,Roth and Romeo(1992)は,想定 どおりの結果が見られたとする(:492)。

そして,ここから Roth and Romeo(1992)は,横軸に出身国のイメージがポジティブ かネガティブかをとり,縦軸に出身国のイメージが重要な製品か,重要でない製品かをと ることによって作られる,有名な出身国のイメージ製品の特徴マトリクスを提起する (:483,495)。 左上のセルは, 好ましい適合(国に対して好ましいイメージが持たれており,そのイ メージが製品にとり重要となる)である。ここでは,出身国を強調することが推奨されて いる(:495)。右上のセルは,好ましくない適合(国に対し好ましくないイメージが持た れているが,そのイメージが製品にとり重要となる)である。ここでは,出身国に触れな いことが推奨されている(:495)。左下は,好ましい不適合(国に対して好ましいイメー ジが持たれているにも係わらず,そのイメージが製品に関係すると思われていない)であ る。ここでは,出身国が実は製品にとって重要であることを啓蒙することが推奨されてい る(:496)。右下は,好ましくない不適合(国に対して好ましくないイメージが持たれて いるが,そのイメージは製品にとって関係がないと思われている)である。ここでは,出 身国イメージを無視することが奨励されている(:496)。

Roth and Romeo(1992)の貢献は,製品カテゴリーによって出身国のイメージの影響 が違うことを明らかにしたことである。また,出身国のイメージがポジティブかネガティ ブかと,製品にとり重要か重要でないかによって,企業の対応のあり方も異なるとしたこ とである。

Roth and Romeo(1992)の議論の特色は,次の3つである。

1つは,「出身国のイメージ」を「質」ではなく,「程度」で捉えようとした点である。 「出身国のイメージ」は,国の先進性とほとんど変わらない。 だから国をランクづけるの には向いている。 また1つは,評価する側の国に,米国,アイルランド,メキシコと,経済発展段階に違 いはあっても,(順序に若干前後するところはあるものの,)おおむね,「出身国のイメー ジ」の順位に大きな違いがなかったことを明らかにしている点である。 そして1つは,「出身国のイメージ」が製品の購買に及ぼす影響も, 米国, アイルラン ド,メキシコの間で,(重要な例外はあるものの)ほとんど変わらないことを明らかにし ている点である。

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と捉えてよいのかという点である。ドイツと日本は違うし,ドイツとフランスも違う。そ れは,程度ではなく,個性の違いの問題である。実際,取り上げられている高い購買意欲 が持たれる製品には,米国,アイルランドにおけるフランスの革靴(おそらく J.M. ウエ ストンなど),米国におけるフランスのクリスタルグラス(おそらくバカラ),米国,アイ ルランド,メキシコにおけるドイツのビール,メキシコにおけるメキシコのビール(おそ らくコロナ),アイルランドにおけるアイルランドのビール(おそらくギネス)のように, Roth and Romeo(1992)の枠組みに当てはまらない製品が登場する(:491)。これらは, 国の名産品(いわば国の個性)に対応しているように思われる。

Yasin, Noor, and Mohamad(2007)

Yasin et al.(2007)は,マレーシアという新興国を舞台に,出身国イメージが,どう ブランドエクイティーの諸次元や,ブランドエクイティーと結びつくのかを分析した。 ブランドエクイティーとは,「焦点ブランドに対する,選好や, 購買意図,選択という 形での,消費者のえこひいき」を意味する(:39)。消費者がブランドを認知してくれてい れば,消費者の心の中におけるそのブランドのドミナンスは高くなり,購買状況において 考慮に入れられる確率が増す(:39)。また,消費者があるブランドに忠誠を示しているの ならば,当然そのブランドが選ばれる確率は増す。また,消費者が,競争者のブランドに 比べての,そのブランドの違いや優れている点を認識しているならば,そのブランドが選 ばれる確率は増す(:40)。また,消費者がブランドのシンボルやロゴに好ましいイメージ や信念を重ねてくれているのならば,そのブランドが選択される確率が増す(:40)。した がって,ブランドエクイティーは,消費者のブランドネームに対する認知,ブランドロイ ヤルティー,知覚されたブランド品質,好意的なブランドのシンボル化と連想といったブ ランドエクイティーの諸次元から生まれると考えられる。 一方,消費者は,ある製品についての信念や評価を形成するのに,製品手がかりを用い る。そして,一般に,出身国は,外生的な製品手がかりと考えられている(:40)。したがっ て,出身国イメージは,ブランドエクイティーの諸次元の形成に寄与すると考えられる。 ただ,出身国情報は,消費者の購買意思決定にも直接役立つ。消費者の製品評価におけ る目立つ属性であり,製品に対する消費者の関心を刺激し,社会的な規範をとおして行動 意図に影響し, 情緒的なプロセスをとおして買い手の行動に影響するからである。した がって,出身国イメージは,直接的にも,ブランドエクイティーに結びつくと考えられる (:40)。

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しかしながら,消費者の特定の出身国に対する知覚が消費者の特定のブランドに対する 選好,購買意図,選択に影響するにしても,それは,その国から来た製品に対する消費者 の認知に左右されると考えられる。このことから,出身国イメージは,ブランドエクイ ティーの諸次元の媒介効果をとおして, ブランドエクイティーに結びつくと考えられる (:39,42)。 こうした関係を検証するために,マレーシアで,テレビ,冷蔵庫,エアコンという製品 カテゴリーを対象として調査が行われた。サンプルは,セラゴール州の 公共部門,民間部 門の組織体の従業員で,対象製品のいずれかに対して消費経験があると答えた実際の消費 者である(:40)。 分析で使う変数を得るために因子分析が3つの構成概念の各々について別々に行われた (:4041)。その結果,出身国イメージとブランドエクイティーについてはそれぞれ1因子 が抽出された。一方,ブランドエクイティーの諸次元については,抽出されたのはブラン ド特殊性,ブランドロイヤルティー,ブランド認知 / 連想の3因子だった。ブランド認知 とブランド連想は,1 つの因子に集約されている(:43)。また,ブランド特殊性という因 子名は,知覚品質とするにはあまりにも内容が大きいものになっているためと思われる。 なお,ここにいうブランドの出身国イメージとは,製造が革新的な国,技術が高度に進ん だ国,デザインが良い国,仕上がりが創造的な国,仕上がりが高品質な国,威信がある国, 先進国のイメージがある国の7つの項目から集成される次元であり,国の先進性とほとん ど概念的に変わらない(:43)。 そして,次の作業仮説が立てられた(:42)。 H1 ブランド特殊性,ブランドロイヤルティー,ブランド認知 / 連想は,ブラン ドエクイティーに対し正の関係にある。 H2 ブランドの出身国イメージは,ブランド特殊性,ブランドロイヤルティー, ブランド認知/連想に対し正の関係にある。 H3 ブランドの出身国イメージは,ブランド特殊性,ブランドロイヤルティー, ブランド認知/連想の媒介効果をとおして,ブランドエクイティーと正の関係にある。 回帰分析の結果,H1は検証された。同様にH2も検証された。 とりわけ, 出身国イ メージは,ブランド特殊性に強い影響を持った。一方,H3については,出身国イメージ は,直接的には,ブランドエクイティーと有意な正の関係を持った。ただ,媒介効果とい  ここにいうブランド特殊性とは,①ダイナミズム,②ハイテク,③革新性,④洗練,⑤他に無 い特徴,⑥卓越,⑦威信,の7項目から集成される次元である(Yasin et al. 2007:43)。

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う点については,ブランドロイヤルティーとブランド認知/連想については,出身国イメー ジとブランドエクイティーとの結びつきを有意に強める働きが認められたが,ブランド特 殊性については,こうした働きは認められなかった。あるいは,出身国イメージとブラン ド特殊性との結びつきが強すぎるためかもしれない(:4245)。消費者がブランドをよく 知ってくれている場合や,ブランドをひいきにしていてくれる場合に,出身国イメージが ブランドエクイティーにより強く結びつくことは,非常に興味深い。 いずれにせよ,彼らの研究の貢献は,新興国というコンテクストにおいてではあるが, 出身国イメージがブランドエクイティーの諸次元や,ブランドエクイティーの形成に寄与 していることを明らかにしたことである。 ただ,問題は,取り上げている製品が,テレビ,冷蔵庫,エアコンといった最低限近代 的な生活を送るのに必要とされる製品であり,プレスティージ製品や,自分の個性を表現 するための製品ではないということである。また,彼らのいう出身国イメージは,国の先 進性とほとんど変わっていない。国の先進性がブランドエクイティーの諸次元や,ブラン ドエクイティーに結びつきやすいのは,モダニティーが関係する製品なのかもしれない。

Wang and Yang(2008)

Wang and Yang(2008)は,新興国というセッティングにおけるブランドパーソナリ ティー(誠実,興奮,能力,洗練)と購買意図との関係,出身国イメージ(革新性,デザ イン,威信,匠)と購買意図との関係,出身国イメージの,ブランドパーソナリティーと 購買意図との関係に対する媒介効果を明らかにしようとした。 ブランドパーソナリティーは,ブランドに結びつけて考えられる人間的な特徴を指して いる。典型的には,それは標的オーディエンスに訴求するブランドの全体的なイメージを 作り上げるのに重要な販売促進ツールと見なされている。ブランドパーソナリティーは, 「結果」をもたらすと考えられている。 1 つには, 知覚品質に係わる。また,1 つには, ブランド連想を伴う。また,1 つには,消費者の自己認識にシンクロする(つまり,自己 を表現する手段になる)。 また, 1 つには,製品情報しか提供されない場合に比べ,ブラ ンドエクイティーをもたらす。シンボリックな価値を伴うからである。そこで,ブランド パーソナリティーは, 購買意図に有意にポジティブなインパクトを及ぼす, という仮説 (H1)が立てられた(:460461)。 また,特定の製品カテゴリーにおける出身国に対するポジティブなイメージは,製品に 対するポジティブな態度に結びつき,購買意図に帰着する。そこで,出身国イメージは,

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購買意図に対して,有意にポジティブな影響を及ぼす,という仮説(H2)が立てられた (:461462)。 また,ブランドパーソナリティーは,ブランドの出身国イメージに基づいている。そこ で,出身国イメージは,ブランドパーソナリティーと購買意図との関係を,強める(つま り,出身国イメージが良いと, ブランドパーソナリティーと購買意図との結びつきが増 す),という仮説(H3)が立てられた(:462)。 以上3つの仮説は,中国(北京,上海,広東,成都)の中流(月次所得が5,000元以上) の自動車消費者(潜在的消費者とすでに自動車を所有している消費者を含む)をサンプル として,先進国モデルである,ドイツ車ボーラブランド,日本車アコードブランドとい う2つのセッティングにおいて,検証された(:466)。 階層的重回帰分析,つまり,標準化回帰係数と, モデルに変数を加えるごとに R2 が有 意に変化したかで,独立変数が従属変数に有意に寄与したかが吟味された(:466)。 その結果,3 つの仮説が,2 つのセッティングともに,検証された(:166469)。 とりわけ,H3が検証されたことには, 意味がある。つまり, ポジティブな出身国イ メージがある企業は,ポジティブなブランドパーソナリティーがあれば,より高い購買意 図を達成できるが,ネガティブな出身国イメージを持つ企業は, ポジティブなブランド パーソナリティーを持っていても,より低い購買意図しか達成できないのである。 一方,問題点は,出身国イメージが国の先進性とあまり変わっていないことである。ま た,取り上げられているブランドがいずれも機能性ブランドであって,プレスティージブ ランドでも,シンボリックブランドでもないということである。  出身国効果の剥げ落ち Ueltscy(1998) 出身国効果の剥げ落ちに関する研究もある。 素の状態で,途上国(コロンビア)の消費者がローカルブランドを選択するのか,米国 で製造されたグローバルブランドを選択するのか,その背景にあるものは何かを明らかに することが Ueltscy(1998)の問題意識であった(:1213,16)。消費者エスノセントリズ ムと出身国効果がその要因として挙げられた(:1315)。そして,とくに出身国効果につ いては,実際の客観的な製品知識が提供された後で,出身国効果が剥げ落ちるのかどうか の実験が行われた(:17)。 消費者エスノセントリズム,出身国効果に影響する要因として,年齢階層,教育水準,

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所得水準が考えられたので,こうしたすべての社会階層が実際に使用しており,その近隣 で買え,ローカルブランドとグローバルブランドを同じ店で購入できるという条件で対象 製品が選ばれた。選ばれたのはクッキーである(:1617)。 何も情報を与えられない素の状態では,消費者の教育水準,所得水準が高ければ,消費 者エスノセントリズムが低くなるという関係が見つかった(:17)。また,教育水準が高け れば,出身国効果は低くなるという関係が見つかった(:18)。 一方,実験については,製品と製品情報を見せ,実際に試食してもらったあとでは,中 所得層で出身国効果が低くなること,中年齢層と中所得層でグローバルブランドの購買意 図が低くなること,高年齢層と低所得層ではローカルブランドの購買意図が高くなること がわかった(:1819)。Ueltscy(1998)は,これを以て,実際に製品情報が与えられた後 では,出身国効果が剥げ落ちるということが部分的に立証されたとしている。 ただ,年齢層,所得層で剥げ落ち効果は一定していない。また,クッキーは,本来,カ ルチャーバウンド型製品である。この製品について本来,国の先進性という意味での出身 国効果を想定すること自体が妥当なのかという疑問も残る。また,工業化が関係する製品 ではない。工業化が関係する製品ならば,むしろ逆の結果が出ることすら考え得る。

Kim, Choi, Kim and Liu(2015)

また,同じ外国製品に対しても,出身国を有り難がるかどうかは,国の成熟度によって 異なることを示唆する研究もある。

Kim et al.(2015)は,米国ライオット社の League of Legends というオンラインゲー ム(先進国ブランド)に対する反応というセッティングにおいて,韓国のユーザーと中国 のユーザーの間の,出身国とブランドイメージとの関係,出身国とブランドへの信頼との 関係,ブランドイメージとブランドへの信頼との関係,ブランドイメージと知覚品質(製 品品質,サービス品質,満足品質)との関係,ブランドへの信頼と知覚品質との関係,出 身国と知覚品質との関係の異同を明らかにしようとした(:389392)。彼らは,知覚品質 を最終的な成果変数としており,そこに至るための道筋として,ブランドイメージと,ブ ランドへの信頼を想定している。 韓国側179人,中国側176人のオンラインゲームの若いユーザーをサンプルとする調査に おいて,マルチグループアナリシス(構造方程式モデリング)が行われた結果,つぎの関 係が明らかになった(:392395)。 ●中国,韓国ともに,出身国は,ブランドイメージに対して有意な正の影響を及ぼす(H

参照

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