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ネットショッピングに対するイメージが利用に及ぼす影響について

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Academic year: 2021

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(1)

Ⅰ.目的

近年、インターネットの普及は著しく、イ ンターネット広告も増えている。電通(2007) によれば、2006年のインターネット広告費は 3630億円であり、対前年比約130%の金額と なっている。このような状況の中、ネットを 通じて行われる電子商取引1(以下、ネット ショッピングと表記する)は、人々の生活に 着実に浸透すると考えられる。それに伴って、 ネットショッピング利用について実証的な研 究が行われつつある。 その中で、ネットショッピング利用に影響 を及ぼす要因については、Lim & Dubinsky

Masami Asakawa

ネットショッピングに対するイメージが利用に及ぼす影響について

浅川 雅美

Abstract

This study was carried out to examine the influence of consumers’ perception of net shopping on net shopping behavior. For this purpose, 119 female college students were surveyed. The questionnaire comprised questions per-taining to five categories of images of net shopping (dissatisfaction with security, labor-saving value, search skill value, the purchase process, and purchase systems), and questions pertaining to net shopping behavior (net shopping experience, frequency of net shopping throughout the year, and amount spent on net shopping throughout the year). Multiple regression analysis was performed three times with the five categories of perception as independent vari-ables and purchase behavior as dependent varivari-ables. It was found that “dissatisfaction with security” had a negative influence on net shopping behavior, while “labor-saving value” had a positive influence on it. However, all coeffi-cients of determination were low. A challenge for the future is to examine the influence of the attitude towards net shopping on the relationship between perception and purchase behavior.

Keywords : net shopping,perception,purchase behavior,multiple regression analysis

The influence of consumers’ perception of net shopping on

net shopping behavior

(2)

(2004)が、ネットショッピング利用の先行 要因として、ネットショッピングに対する態 度を考えている。そして、ネットショッピン グの構成要素2に対するイメージがネットシ ョッピングに対する態度3に及ぼす影響(イ メージ→態度)について検討している。具体 的には、予備的研究および先行研究を参考に ネットショッピングに対するイメージを測定 する13項目を設定し、252名の大学生を対象に、 質問紙調査を行い、得られたデータの項目間相 関行列を主成分分析してバリマックス回転を施 し、商品・取引(Merchandise)、双方向性 (Interactivity)、信頼性(Reliability)、検索 (Navigation)の4因子を抽出し、この4因子の 信頼性を確認している。さらに、ネットショッ ピングに対する態度を従属変数、ネットショッ ピングに対するイメージの4次元を独立変数と する重回帰分析を行い、商品・取引と信頼性が、 ネットショッピングに対する態度にプラスの影 響を及ぼしていたという結論を得ている。つま り、この研究では、ネットショッピングに対す るイメージがネットショッピングに対する態度 に影響を及ぼすこと(イメージ→態度)が確認 されている。ただし、ネットショッピングに対 するイメージ、態度および利用の関連について は、より包括的かつ体系的に明らかにすること が必要であると思われる。 本研究では、この三者間の関連を明らかに する前段として、ネットショッピングに対す るイメージが利用に直接的に及ぼす影響(イ メージ→利用)について検討することにした。

Ⅱ.調査の概略

2007年1月に、119名の女子学生を被調査 者にして、質問紙調査を行った。質問項目は、 表1に示したようになっている。 なお、ネットショッピングに対するイメー ジを測定する項目は、わが国の研究である中 谷(2002)を参考に選定した。具体的には、中谷 が抽出したネットショッピングに対するイメ ージ7因子の中で「漠然肯定」および「漠然 否定」の2因子を除いた5因子の高負荷2項 目4を採用した。

Ⅲ.結果

1.ネットショッピング利用状況 インターネットのアクセス頻度は、表2の ような結果になっていた。 被調査者の50%以上が、1日に1回以上、イ ンターネットにアクセスしており、反対に、週 に1回以下しかアクセスしていない者は9%未 満であった。つまり、比較的多くの者がインタ ーネットにアクセスしていることが認められた。 次に、ネットショッピング利用状況について の集計結果では、被調査者の約54%が利用経験 があり、約46%の者は利用経験がなかった。 さらに、ネットショッピング利用者が実際に 購入している商品について調べてみると、表3 に示したように、雑貨、衣服、本・雑誌、およ び音楽CD・テープが多かった。

Liao & Cheung(2001)では、商品の実際の内容

Q 1 インターネットのアクセス頻度 Q 2 ネットショッピング利用状況 Sub‐Q 2 ネットショッピングで購入した商品群 Q 3 最近1年間でのネットショッピング利用金額 Q 4 最近1年間でのネットショッピング利用回数 Q 5 ネットショッピングに対するイメージ 表1 調査に用いた項目 頻 度 度数 構成比(%) 1日に数回以上 42 35.29 1日に1回くらい 19 15.97 週に4∼6回くらい 15 12.61 週に2∼3回くらい 33 27.73 週に1回以下 8 6.72 全くアクセスしない 2 1.68 表2 インターネットのアクセス頻度 2 例えば、ウェブのデザインやサービスなど。 3 ネットショッピングが好き、嫌い、および、ネットショッピングは良い、悪いなど。 4 因子名と採用した2項目は、表4に示してある。

(3)

(the life content of products)を吟味できないこと が、ネットショッピング利用にマイナスの影響 を及ぼすという結果を得ている。そして、彼ら は、実際に触れて感じること(touch-and-feel)が 必要な商品である衣服は、ネットショッピング に向いていない、という推察をしている。しか し、本研究では、本・雑誌および音楽CD・テ ープのような、いわゆる触れて感じる必要性の 低い商品のみならず、衣服および雑貨のような 触れて感じる必要性の高い商品群も購入してい る傾向が認められた。 2.ネットショッピングに対するイメージが 利用に及ぼす影響 1)ネットショッピングに対するイメージ 中谷(2002)が抽出した5因子の高負荷2項 目に対する全被調査者の4段階評定の平均値 は、表4に示したような結果になっていた。 省力化評価のみ肯定的であるものの、情報 力評価、購買プロセス、購買システム、およ びセキュリティについては否定的であること が認められた。 2)ネットショッピングに対するイメージが利 用に及ぼす影響についての重回帰分析結果 (1)ネットショッピングに対するイメージが 利用状況に及ぼす影響 ネットショッピング利用状況を従属変数とし て、ネットショッピングに対するイメージ5因 子の得点を独立変数とする、強制投入法による 重回帰分析を行った。なお、ネットショッピン グに対するイメージ5因子の得点は、中谷 (2002)が抽出した各因子の高負荷2項目5に 因  子 項  目 平均値 標準偏差 わざわざ買物に出かける必要がなくてよい 3.24 0.77 省力化評価 24時間いつでも利用できてよい 3.66 0.54 平均値 3.45 商品の詳しい情報が分かる 2.40 0.85 情報力評価 思いがけず、珍しいものを買えることがある 2.87 0.79 平均値 2.64 商品の質感が伝わりにくい 3.54 0.62 購買プロセス不満 店員の詳しい説明が聞けない 3.39 0.72 平均値 3.46 送料が高い 3.38 0.73 購買システム不満 注文手続が面倒である 3.01 0.80 平均値 3.19 個人情報が漏洩する恐れがある 3.40 0.71 セキュリティ不満 支払いが面倒である 2.92 0.79 平均値 3.16 (注)省力化評価および情報力評価は、平均値が3以上の場合、肯定的。3未満の場合、否定的。購買プロセス不満、購買システム不満およ びセキュリティ不満は、平均値が3以上の場合、否定的。3未満の場合、肯定的。 表4 ネットショッピングに対するイメージ 商品群 度数 構成比(%) 1 雑貨 29 16.02 2 衣服 25 13.81 3 本・雑誌 23 12.71 4 音楽CD・テープ 22 12.15 5 アクセサリー 18 9.94 6 コンサート・演劇などのチケット 12 6.63 7 ホテルの予約 11 6.08 8 バック 10 5.52 9 食料品 7 3.87 10 航空券・鉄道乗車券 6 3.31 11 パソコン・周辺機器 3 1.66 12 パソコンのソフトウェア 3 1.66 13 その他 12 6.63 表3 ネットで購入している商品群 5 表4に示してある。

(4)

対する4段階評定の合計値を用いた。重回帰 分析の結果、表5に示したように、決定係数 (R2)は0.186であった。各特性の標準回帰係 数をみると、5%水準で省力化評価が正に有 意であり、セキュリティ不満が負に有意であ った。つまり、ネットショッピングは省力化 できると思っていることが利用状況にプラス の影響を及ぼすことが認められ、反対に、セ キュリティに不満を感じていることはマイナ スの影響を及ぼすことが認められた。 (2)ネットショッピングに対するイメージが 利用金額に及ぼす影響 最近1年間でのネットショッピング利用金 額を従属変数として、ネットショッピングに 対するイメージ5因子の得点6を独立変数とす る、強制投入法による重回帰分析を行った。 重回帰分析の結果、表6に示したように、決 定係数(R2)は0.219であった。各特性の標 準回帰係数をみると、5%水準で省力化評価 が正に有意であり、セキュリティ不満が負に 有意であった。つまり、ネットショッピング は省力化できると思っていることが利用金額 にプラスの影響を及ぼすことが認められ、反 対に、セキュリティに不満を感じていること はマイナスの影響を及ぼすことが認められた。 (3)ネットショッピング利用に対するイメージが ネットショッピング利用回数に及ぼす影響 次に、最近1年間でのネットショッピング利 用回数を従属変数として、ネットショッピング に対するイメージ5因子の得点7を独立変数と する、強制投入法による重回帰分析を行った。 重回帰分析の結果、表7に示したように、決定 係数(R2)は0.280であった。各特性の標準回 帰係数をみると、5%水準で省力化評価が正に 有意であり、購買プロセス不満およびセキュリ ティ不満が負に影響していた。つまり、ネット ショッピングは省力化できると思っていること が利用回数にプラスの影響を及ぼすことが認め られた。そして、購買プロセスやセキュリティ に不満を感じていることは、マイナスの影響を 及ぼすことが認められた。

Ⅳ.結語

本研究では、ネットショッピングに対する イメージがネットショッピング利用に直接的 に及ぼす影響について検討した。具体的には、 ネットショッピングに対するイメージ 標準回帰係数 省力化評価 0.257 情報力評価 − 0.063 購買プロセス不満 − 0.018 購買システム不満 0.122 セキュリティ不満 − 0.389 R 0.432 R2 0.186 (注) *は5%水準で有意な標準回帰係数。 * * 表5 ネットショッピングに対するイメージが利用 状況に及ぼす影響の重回帰分析結果 6 各因子の高負荷2項目に対する4段階評定の合計値を用いた。 7 各因子の高負荷2項目に対する4段階評定の合計値を用いた。 ネットショッピングに対するイメージ 標準回帰係数 省力化評価 0.330 情報力評価 -0.069 購買プロセス不満 -0.129 購買システム不満 0.008 セキュリティ不満 -0.295 R 0.468 R2 0.219 (注) *は5%水準で有意な標準回帰係数。 * * 表6 ネットショッピングに対するイメージがネットショッ ピング利用金額に及ぼす影響の重回帰分析結果 ネットショッピングに対するイメージ 標準回帰係数 省力化評価 0.247 情報力評価 0.096 購買プロセス不満 −0.242 購買システム不満 0.045 セキュリティ不満 −0.300 R 0.529 R2 0.280 (注) *は5%水準で有意な標準回帰係数。 * * * 表7 ネットショッピングに対するイメージがネットショッ ピング利用回数に及ぼす影響の重回帰分析結果

(5)

119名の女子学生を被調査者にして、ネット ショッピングに対するイメージと利用につい て質問紙調査を行った。そして、ネットショ ッピング利用状況、金額および回数のそれぞ れを従属変数として、ネットショッピングに 対するイメージを独立変数とする重回帰分析 を行った。その結果、ネットショッピング利 用状況、金額および回数には、共通して、省 力化評価が正に、そしてセキュリティ不満が 負に影響を及ぼしていた。つまり、省力化の 評価をより高くすること、およびセキュリテ ィについての不満を解消することが、ネット ショッピング利用率を高くするために必要で あることが示唆された。 ただし、表5∼7に示したように、決定係 数はいずれも低かった8。この理由として、① ネットショッピング利用は、ネットショッピ ングに対するイメージが直接的に影響を及ぼ すのではなく、態度に媒介されて間接的に影 響を及ぼすこと、②ネットショッピング利用 には、ネットショッピングに対するイメージ 以外の様々な要因が影響を及ぼしていること、 などが考えられる。したがって、①両者の関 連に及ぼす態度の媒介機能について検討する こと、および②ネットショッピング利用につ いて包括的なモデルを作成し、そのモデルの 妥当性を検証することが今後の課題である。

Ⅴ.引用文献

電通(2007)広告白書.電通

Liao, Z. & Cheung, M. T.(2001) Internet-based E-shopping and Consumer Attitudes:An Empirical Study. Information Management, 38. 299-306.

Lim, H. & Dubinsky, A. (2004) Consumers’ per-ceptions of E-shopping Characteristics: An Expectancy-value Approach. Journal of Services Marketing.18(7).500-513. 中谷秀介(2002)人はなぜネットでものを買わ ないか:タイプ別「潜在顧客」アプロー チ法 ソフトバンクパブリッシング.

抄 録

本研究では、ネットショッピングに対するイ メージがネットショッピング利用に及ぼす影響 について検討した。具体的には、119名の女子 学生を被調査者にして、ネットショッピングに 対する5種類のイメージ(セキュリティ不満、 省力化評価、情報力評価、購買プロセス、購買 システム)と利用状況について質問紙調査を行 った。そして、ネットショッピング利用経験、 年間利用回数、年間利用費を、それぞれ従属変 数として、ネットショッピングに対する5種類 のイメージを独立変数とする重回帰分析を行っ た。3回の重回帰分析の結果、ネットショッピ ング利用状況には、セキュリティ不満が負にそ して省力化評価が正に影響を及ぼしていること が推察された。ただし、決定係数はいずれも低 かった。今後、両者の関連に及ぼす態度の影響 について検討することが課題である。

Key words:net shopping(ネットショッピング)、 image( イ メ ー ジ )、 purchase behavior (購買行動)、multiple regression analysis (重回帰分析)

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参照

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