付録1 原子炉等利用に関する共同研究報告書
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(2) 付録 l. 原子炉物理・原子炉応用に関する研究 研究総括責任者大阪大学大学院工学研究科 教授堀池寛. 平 成 24年度の近畿大学炉での共同研究のまとめの案内ですロ本年度は全体で 23件の共同研究 が採択され、物理系課題はその内の 1 6件と多数を占める。各研究課題は、以下のとおり。. ( 1 )近畿大学原子炉の炉特性の測定と利用 ( 2 )高感度中性子ラジオグラフィの実用化に関する研究(わ1) ( 3 )インターネットによる原子炉遠隔実験実習システムの整備と実践. ( 4 )未臨界体系での中性子束分布測定実験 ( 5 )原子炉中性子の精密計測システムの開発. ( 6 )U T R K I N K I炉内 γ線の線質の評価 ( 7 )傾斜線式位置読み取り法による中性子位置検出器の開発 ( 8 )低線量放射線場の特性評価 ( 9 )中性子線量測定器の応答特性試験. ( 1 0 )医療用加速器における漏えい中性子線の簡易イメージング法の開発を目的とした各種金属箔に. よる箔放射化法の高確度化及び関連放射線検出器の校正 ( 1 1 )近畿大学原子炉の出力過渡特性の測定と評価 ( 1 2 )N a I ( Tl)検出器を用いた γ 線・中性子線混合場における γ線スペクトルと熱中性子束の同時評価. 方法の検討 ( 1 3 )熱蛍光体を利用した中性子イメージングデノ〈イスの開発 ( 1 4 )原子炉内中性子・ガンマ線分布測定のための小型検出器の開発. ( 1 5 )近畿大学原子炉の炉特性実験・中性子利用実習による教育的効果に関する研究 ( 1 6 )宇宙線によるカルシウム化合物の熱蛍光特性の研究. これら 1 6件のうち 5件が、何等かの形で、大学の学生を伴った、学生実験あるいは学生実習の要素 を含むもので、各方面に学生に原子炉を触ってもらい、実感として原子炉の動作を学ばせる試みが普 及している。内容的にも各大学の特徴を生かした試みとなっており、近畿大学原子炉が原子力やエネ ノレギ一関係の工学者の人材を育成し輩出するうえで、非常に重要な役割を果たしていることが判る ま D. た中性子を利用したラジオグラフィやイメージング、中性子検出器の研究が地道に行われており、貴 重な実験場をこの共同研究が提供していることも読み取れる。詳しくは以下の本論をご参照していた だくとして、中性子場を利用した独創的な研究が多く実施されるこの分野の今後の新たな発展を期待 したい。 n6 06.
(3) 近畿大学原子力研究所年報. Vol .5 0( 20 1 3). (1 )近畿大学原子炉の炉特性の測定と利用 代表者:瓜谷章(名古屋大学大学院工学研究科) [要約]. 制御棒校正、空間線量率および、スペクトル測定、放射化量測定、中性子ラジオグラフィ実 5名とともに 6月 25 日 , 6月 26 日に行った。調整棒およびシム安全棒について 験を 4年 生 1. は炉周期法を、またシム安全棒および安全棒(#1、#2)については落下法を使用し制御棒 価値校正を行った。各制御棒の価値はここ数年安定していて、調整棒以外の 3本の安全棒 の価値はほぼ等しかった o 炉出力 1 W 時における炉室内の γ 線線量率を電離箱型サーベイメータで、中性子線量 率を中性子レムカウンターで測定した。中性子保管庫周辺等多少高い線量率を示す場所も あったが、安全上問題となる線量は認められなかった また、炉運転時と炉停止時のパックグ、ラ D. PGe検出器で測定し、運転時には炉の構造材の主成分である F eの ンド γ 線スベクトノレを H 即 発 γ 線ピークが観察されたが、炉停止時には、トリウム、ウラン系列および、. 40K等、天然に存. 在する放射性核種による γ線ピークを除くと特別なピークは認められなかった o. 1W運転時における中性子ラジオグラフィ撮影を中性子用イメージングプレートを用い行い、 同じサンプノレをX線で、も撮影し、中性子およびX線ラジオグラフィの感度の差に関する検討を 行った。. (2 )高感度中性子ラジオグラフィの実用化に関する研究 (XV). 代表者:谷口. 良一(大阪府立大学放射線研究センター). [要約]. 高感度中性子画像装置に用いられる冷却型 CCD撮像素子の白点ノイズの照射応答の解 析を行った o このノイズには、画像の同じ場所に現れる固定点ノイズ ( F P N )と、ランダムに現れ るランダ、ムノイズがあった o どちらも外見は同じである。 F PNは、検出部である光ダイオード部分 の放射線損傷であることが確実であるが、ランダムノイズの起源は不明で、あった o 本研究では、 このランダムノイズの解析を行うため、冷却型 CCDの原子炉照射を行ったー昨年の報告でも 示したように、ランダムノイズの出現率は、放射線線量率に比例しており、このノイズが放射線 誘起ノイズの一種であることは確実である。ただし本年度の結果を見ると、このノイズの出現率 および輝度は、素子温度にも関係することが明らかとなった o さらに、露光時間を変化した場合、 0 . 0 0 1秒という極端に短い照射時間でもランダムノイズは出現した。さらに、露光時間とランダム. ノイズの出現数、輝度は複雑な関係、を示しており、現時点で解釈することは難しい。ランダムノ イズの生成に関して、さらなる解析が必要である。. Qd. o o.
(4) 付録 1. (3 )インターネットによる原子炉遠隔実験実習システムの整備と実践. 代表者:山本淳治(摂南大学理工学部) [要約]. 近畿大学炉を用いて大学生を対象に実施している原子炉実験実習をインタ}ネットを用い て遠隔で実施するために必要なしくみと機器を開発してきた.また,これを使用した遠隔学習 の教材について検討することも行っている.原子炉施設を使用する実験実習では,施設へ出 向く時間と経費の関係、で,実験実習の機会を複数回設けることが難しい場合が多い.このた め,原子炉施設では限られた実習時間で学習する必要から学習内容が選択的にならざるを 得ない.そこで,実験実習の内容を復習したり,追加実験を行う遠隔実習を考案した. 今年度は原子炉の運転データを遠隔の教室に配信する方式を改良した.現在の方式では, 運転データをほぼリアルタイムで、送信するためには配信先を限定する必要があった.遠隔の教 室ではひとつのスクリーンに映していたため,学生からは数値など細かいデータが見え難かっ た.そこで,それぞれの学生の手元にパソコンがあれば,それぞれに鮮明な画像をリアルタイム で送ることができる方式に改良した.. (4 )未臨界体系での中性子束分布測定実験 代表者:北田孝典(大阪大学大学院工学研究科) [要約]. 臨界体系における反応度添加量をリアルタイムで、評価する方法をもとに、未臨界体系での 手法を開発し、開発した手法の妥当性検証を実施した。本年度では空間高次モード成分に 対する検討のため、検出器の位置依存性について検討し、反応度を正確に評価可能な検出 器位置について検討した。 反応度変化は中性子東分布の時間変動を引き起こすため、定常状態ではあらわれない高 次モードの中性子束分布が励起される。高次モードの中性子束は振幅が変化しても絶対値が 変化しないゼロ点を体系内に有するため、反応度変化を検出器応答により正確に評価するた めには、ゼ、ロ点近傍は避けるべきで、ある事が分かった o 本実験においては 0 . 3 5 %1 1k程度までの 大きさの反応度変化に対しては、ゼロ点近傍に設置した検出器でも正確に評価できていること が示されている。また本実験データの解析では、 2つの検出器位置で別々に反応度変化を評 価しているが、複数の検出器位置の結果から一つの反応度変化を評価する手法、つまり多点 炉での式群を用いた評価も可能であると考えられるため、今後さらに検討行う予定である。. - 9 0.
(5) Vo l .5 0( 2 0 1 3). 近畿大学原子力研究所年報. (5 )原子炉中性子の精密計測システムの開発 代表者:池田伸夫(九州大学大学院工学研究院) [要約] 九州大学、徳島大学の学部 3年生を主対象とする原子炉実習の一環として、放射化法に )を用い、 2 3 N a よる原子炉内中性子束分布の計測実験を行った o 試薬炭酸ナトリウム(Na2 C03 の放射化によって生成した 2 4 N aの崩壊に伴って放出されるガンマ線を G e半導体検出器を用 い測定した。サムピーク法によるガンマ線計測の絶対効率の導出に着目しデータ解析を行い、 0線源で簡便に導出した 24Na1 .3 6 9MeV γ 線の検出効率と比較した。サムピーク コバノレト 6. %で、あった この精度内で、サムピーク法及びコ 法により得られたフルピーク効率の精度は約 5 D. 0線源により得られた効率が一致することを示した。さらに詳細な知見を得るには、長 バルト 6 時間測定を行いサムピーク法による効率導出精度を向上する必要があり、今後の課題とした し 、 。. (6) U T R K I N K I炉内. γ線の線質の評価. 代表者:遠藤暁(広島大学大学院工学研究院) [要約] 我々は、これまで近畿大学原子力研究所教育研究用原子炉:U TR-KINKIの生物照射場の 線量測定・線質評価を実施し、中性子線のエネノレギースベクトノレ、線量率、中性子・ γ 線のマ イクロドシメトリスペクトルなど明らかにしてきた 1-4)。しかしながら、炉内 γ 線については、線量 率のみの測定で、実測の難しさからエネノレギースベクトノレは測定してこなかった。ここでは、残さ れた炉内 γ線のエネルギースペクトル推定を目的に、 G e検出器を用いた実測とモンテカルロ 計算の結果を組み合わせることで、評価できるかを明らかにすることである。 本研究年度においては、 UTR K I N K I炉内反射体上部に Ge検出器を設置して、その位置 での γ線スペクトルを測定した。その結果、核分裂で生成される即発 γ線、中性子による即発 γ 線、放射化生成物による γ 線が検出された。反射体上部と炉外照射口の γ 線計数率の比. は 、 lMeV近傍でブロ ード構造を示すが、 2MeV以上の連続分布においては、ほぼ一定値を 示した。. Qd.
(6) 付録 l. (7)傾斜線式位置読み取り法による中性子位置検出器の開発 代表者:前多信博(福井工業高等専門学校電気電子工学科) [要約] 平 成 15年度の「近畿大学原子炉等利用共同研究 J以来、陽極芯線に沿って傾斜した 2本. T S W P S P C )の、中性子位置検出器としての特性を調べ の位置読取線を張った比例計数管 ( てきた。この方式の位置検出器の特性の概略が明らかになり、安定に作動する位置検出器 (円筒形や矩形)を製作できるようになった o また、これまで、は、自己吸収による影響を避けるた め、中性子コンバータ層(ホウ素層など)の厚さに留意するのが一般的な実験方法で、あったが、 中性子入射方向に対面する検出器内部にスリットと中性子コンバータ(塗布層、結晶、焼結物 など任意の厚さ)をセットする簡便な実験方法も確立で、きた。 平 成 24年度は、矩形の検出器内部に、傾斜した位置読み取り線と共に電荷分活用のパッ クギャモンパターンや抵抗シートも設置し特性を測定した。電荷分割方法による、誘起電荷収 集量や中性子位置スペクトルの違いを比較し、構造が簡単で、丈夫な. TSW-PSPCの利点を明. らかにできた。. (8 )低線量放射線場の特性評価 代表者:小佐古敏荘(東京大学大学院工学系研究科) [要約] 原子炉施設の廃止措置では、原子炉から発生する中性子によって放射化した施設内の構 造材の放射化放射能量評価が課題となる。この放射化放射能量評価は、解体計画の策定、 放射性廃棄物の処理処分に係る計画立案等に重要な事項となる。しかし、現状の体系では 必ずしも十分な精度で放射化放射能量評価がなされているとはいえず、安全尤度を大きく見 積もる必要があり、放射性廃棄物の処理・処分について過度に保守的にならざるを得ないこと が課題となっている. D. そこで本研究では、異なる中性子スペクトル環境を考慮した金属材料の放射化放射能量評 価の精度改善を目的とし、本年度はカドミウムを用いた中性子スペクトルの変調を実験的に評 価した。近畿大学原子炉での中性子照射実験により、カドミワムによって変調した中性子スベ クトノレに対する金箔の放射化放射能量の依存性を明らかとし、以下の知見を得た。 250μm以 上のカドミウムにより、l.OeV 以下の熱中性子領域の中性子束を大幅に減少させることが可能 である。また、l.O-10eVから中性子束の減少を期待する場合、カドミウムの厚みをさらに増加さ せる必要がある。 今後、これらの特徴に基づいて変調した中性子スペクトルに対する金属材料の放射化放射 能量の依存性を明らかにしていく予定である。. ワ ム. Qd.
(7) 近畿大学原子力研究所年報. Vol .5 0( 2 0 1 3). (9 )中性子線量測定器の応答特性試験 代表者:西村清彦(自然科学研究機構核融合科学研究所). [要約]. LHDにおける重水素実験に向けて、中性子線量の測定器および中性子分布計測器を開 発中である。昨年度までは、減速材・吸収材の間に複数の中性子検出器を配置する線量計 を制作して、これらの応答特性を測定してきた。また、 LET感度依存性を制御した原子核乾板 )中性子分布計測に使用する液体シンチレ を制作して、その応答評価を試みた。今年度は、 1. ータ NE213(BC501A)を用いた中性子ガンマ弁別の高速デ、ジタル回路の応答特性を調べ、オ アライン解析で、データの高速成分、低速成分の比を用いた信号弁別をした結果、観測した 放射線が中性子で、あるかガンマ線であるかの弁別が可能である事が分かった o 2 )2.5MeV前 後のエネルギーを有する中性子を計測するために開発しているラジェータ検出器用光電子増. 倍 管 (16chPMT) の動作特性を調べた結果、 16chPMTを本格的に適用するにはライトガイド の光伝送効率に細心の注意を払う必要があることが明らかになった。 また、ラジェータからの散乱中性子の測定では、同時計数処理の有無に顕著な差が見られ なかったため、原因については、今後の検討を要する。. (10)医療用加速器における漏えい中性子線の簡易イメージング法の開発を目的とした各種. 金属箔による箔放射化法の高確度化及び関連放射線検出器の校正 代表者:阪間稔(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部). [要約] 当該年度での木研究目的は、小規模医療用加速器における漏洩中性子線の中性子放射 化イメージング法の基盤となる箔放射化法の定量性を正確に評価するために、金箔のみなら ず各種金属箔(インジウム箔、亜鉛箔、ニッケル箔)での箔放射化法によって、原子炉内の 各々の熱中性子束密度の値を相互比較する。この比較からクロスチェックを行うことで、炉心 内の照射孔における特定場での熱中性子束密度の値を正確に評価する。また、医療用加速 器設置施設内や医療で使用される体内に留置された金属(ボ、ノレト、スイッチカバー、インプラン トねじ)の中性子放射化を模擬し、それらの放射化のイメージング化も行う。 その結果、各種金属箔を用いて得られた熱中性子束密度の値は、これまでの金箔使用実 験で得られた値を含め、今回の同一条件下での金箔によって導出された熱中性子束密度、な らびにカドミウム比とほぼ同じ値が得られた。炉心からの上部の 28CIIl高さのところで、、 4.5X l06~9.0 X 1 06(cm-2 S l )の範囲で、各種金属箔での熱中性子束密度の値が全て収まることを 確認した。小規模医療用加速器施設内の照射室における金属備具や体内留置金属のイメー ジングプレート画像を捉えることができた. D. 円べ U. n同d.
(8) 付録 l. ( 11 )近畿大学原子炉の出力過渡特性の測定と評価. 代表者:尾崎禎彦(福井工業大学工学部) [要約] 原子炉各出力での臨界状態確認実験、制御棒反応度校正実験、遅発中性子先行核確 認実験、および、原子炉運転中の原子炉室内空間線量率測定実験を原子力専攻学生 2年 生 32名とともに 9月 11 日 、 9月 12 日 、 9月 13 日に各々実施したロ 炉 出 力 O.OlW、O.lW、1W各出力で臨界状態を達成するための各制御棒(安全棒 #1、問、 シム安全棒、調整棒)位置は出力に依存しないことを確認した。 調 整 棒 (RR)、シム調整棒 (SSR)を対象に王ベリオド法による制御棒反応度校正実験を実施 した。調整棒引き抜きによる出力倍加時聞から、 RR(O→ 50%)と RR(O→ 100%)、さらに SSR(89. → 99%)各々の反応度を逆時間方程式から求めた。結果、 0.000746、0.00136、0.000339とほ ぼ妥当な値を得ることが出来た。 原子炉スクラム後ある程度十分な時聞が経過した付近での出力変化から半減期を求めるこ. 7 B rの存在を実感すること とで、遅発中性子先行核の中で特に半減期が 55.6秒と最も長い 8 が出来た。 炉 出 力 1W時における原子炉室内での γ 線線量率を電離箱型サーベイメータで、中性子 線量率を中性子レムカウンターで測定した。炉心直上部付近などで高い線量率を示す場所も あったが、安全管理上特に問題となる点は見られなかった o. ( 12)NaI (Tl)検出器を用いた γ 線・中性子線混合場における γ線スペクトルと熱中性子東の. 同時評価方法の検討 代表者:納冨昭弘(九州大学大学院医学研究院) [要約] Na1シンチレータを放射化法のターゲ、ツトと同時に、放射線の検出器として用いることにより、. 高感度で熱中性子を測定する新しい方法について検討した。 Na1シンチレータに UTR-K1NKl からの漏洩放射線を照射した後の Na1検出器自身で、得られる放射化スペクトルで、は、 1-128 の 3線が支配的で、あることがわかった。つまり、照射終了から数時間のあいだに観測される 8 線 収 量 は il-128生成量のよい指標」となっており、この情報から熱中性子束を極めて高い精 度で評価できる。 Na-24からカスケー ドで放出される二本の γ 線の測定結果にサムピーク法を 適用すれば、独立した方法で熱中性子束を評価することも可能であり、新手法の精度検証に 有用である口 今回提案した測定法は原理的に極めて高感度であると考えており、熱中性子による放射化 が微量でも有意に 1-128を検出できていると判断される。今後、。線の収量と熱中性子束の 関係を詳細に調べることにより、 X 線治療室内の熱中性子束を高精度で評価する方法を開発 できる可能性がある。 1-128 の 3線検出を原理としているので、使用するシンチレータとしては、 Na1よ り CsIの方が適していると考えられる。. 94 -.
(9) Vol .5 0( 2 0 1 3). 近畿大学原子力研究所年報. (13)熱蛍光体を利用した中性子イメージングデバイスの開発. 代表者:員正浄光(首都大学東京健康福祉学部) [要約]. 画像上で確認できない微小ながん病巣も周囲の正常細胞を損傷せずに破壊できるホウ素 中性子補足療法 (BNCT)は、生活の質の高いがん治療法として大いに期待されている。次世 代治療法として発展していくにはガン細胞を選択的に効率よく標的化できるホウ素薬剤の開 発と、薬剤効果や BNCTの有効性に対する検証法の開発が不可欠である。現在、薬剤投与 後の 1 0 B分布や濃度の定量、腫蕩部内の線量計測は、 CR-39プラスチック飛跡検出器によっ て行われている。これは、中性子と、体内に投与された薬剤に含まれる lもとの反応によって 0 B分布や濃度の定量、腫蕩部内の線量計測が 生じる α線を検出しているため、生体中の 1. 行える。しかし、中性子線には感度を有していないため中性子線の分布や線量評価は難しい。 そこで、我々は、これまでに開発している TLによる X 線用のイメージングデバイスがホウ素を 多量に含んで、いるため、高濃度の 1 0 B含んだタイプに改良して、 TLによる新しい中性子イメー ジングデノミイスを開発することを検討している。本年度は、初年度として TL素子の最適化に 必要なグロー曲線測定器や TLの 2次元測定器のシステムの構築を目的とした基礎データの 取得を行った。. (14)原子炉内中性子・ガンマ線分布測定のための小型検出器の開発. 代表者:古場裕介(放射線医学総合研究所) [要約]. 中性子・ガンマ線混合場における各放射線の弁別分布測定に利用できる検出器開発とし て小型ホスウィッチ検出器と TLDを用いた試験的研究を行った o 小型ホスウィッチ検出器を用 いた実験では、検出器構造から中性子成分を測定することがで、きなかったため、検出器構造 の最適化が必要なことが分かった。 TLDの実験では MatsushitaUD-llOS(CaS04:Tm), UD170A(BeO:Na),UD-136N( 6 L i F ),UD137N( 7 L i F )とHarshawTLD600( 6 L i F ),TLD700 ( 7 L i F )の 6種類の Glow曲線を測定した。 UD-136NとUD137Nの Glow曲線の違い、 TLD600の Glow曲線の高温領域の TL強度などから熱中性子量を見積もることができると恩. われる. D. 今後、線質による TLDの Glow曲線の変化を詳細に調べ、原子炉内の中性子・ガンマ線 混合場における各放射線の弁別分布測定に応用できるか検討を行う。. Fhu. Qd.
(10) 付録 l. ( 15)近畿大学原子炉の炉特性実験・中性子利用実習による教育的効果に関する研究 代表者:吉田茂生(東海大学工学部) [要約]. 当学科の新カリキュラム編成に伴って 3年次の秋学期には「原子炉実験・演習」を開講、さら には「ベトナム原子力プロジェクト人材育成計画」にも対応することとなり、教育的効率の高い 「原子炉実習」プログラムに対応した実習プログラムを編成し、充実した実習科目とする必要が ある。これまで、の 2年次より「原子炉」での体感授業を通じ、原子炉への関心、原理・メカニズム への探求性を高め、 3年次に大学授業時の座学にて、しっかりと知識を身につけてきた「原子 力人材育成プログラム事業」の成果を生かし、ここに「臨界近接」実習を加味し、さらに、制御 棒校正を増強したフ。ログラムを準備し、実際に実習を実施した状況を評価することを考え、そ のための実施計画を検討した。 そして、今年度検討したフ。ログラムについて、次年度に予定された東海大学の原子炉実習 ( 3年次生履修生に対する「原子炉実験・演習」及びベトナム研修生に対する「原子炉実習 J ). へ向けて実施し、その成果を報告するものである口. (16)宇宙線によるカルシウム化合物の熱蛍光特性の研究. 代表者:田中武雄(大阪産業大学工学部) [要約]. 原子炉内放射線と 60Coの γ 線照射に対する熱蛍光特性を CaF2 :Tb, Gd単結晶、 CaF2:Pr, Mn単結晶および Ca5(P04)3F:Tb, Gd焼結体、 CaF2:Tb, Sm焼結体等を用いて測定 Gd 焼結体については、 350~3600C にかけて した。前回に引き続き測定した Ca5(P04)3F:Tb,. 単一の TLグローピークが観測され、感度も良いことが確認された。 :Tb, Sm焼結体については、紫外線量測定素子としても有効であることを報告し また、 CaF2 ているが、原子炉内放射線と 60Coの γ 線照射に対しても感度が良く、原子炉内放射線に対 0. 0. しては、 129~1540C 、 273"-'283 C 、 295"-'331 C の温度領域に 3 つの TL グローピークが観測. 0. 0. 0 され、 60Coの γ 線照射に対しては、 1 5 2 " '160C、2 7 6 " ' 2 8 8C、3 2 9 " ' 3 5 1Cの温度領域に TL. グローピークが観測される。 このように同じような温度領域にそれぞれ 3つの TLグローピークが観測され、主たる TLグ 0. ローピークは、それぞれ 295"-'331 C 、 276~2880C の温度領域にあり、線量計素子としても有. 効であることが明らかとなった。 CaFz:Pr, Mn単結晶においては前回と同様に原子炉内放射線 0. 0. 8 0 " '200Cと 307C付近に TLグローピークが観測されること、また、 60Coの γ線照 に対して 1 0. 0. 射に対しては 200C付近と 319Cに TLピークが観測され TLグロー曲線の形状が一致した。 CaFz:Tb, Gd単結晶においても前固と同様に原子炉内放射線に対して、原子炉内放射線に 0 対して 119C付近の TLグローピークが TLDとして利用できること確かめられた。. ハ hu. QJ.
(11) Vol .5 0( 2 0 1 3 ). 近畿大学原子力研究所年報. 原子炉化学・放射化学に関する研究 研究総括責任者. 大阪大学大学院工学研究科 教授山中仲介. 原子炉化学・放射化学に関する研究では、平成 24年 度 は 下 記 の 1件の研究が採択、 実施された。 (1) 古 代 エ ジ プ ト 遺 物 中 微 量 元 素 の 中 性 子 放 射 化 法 に よ る 分 析. 本研究では、近大炉のような低中性子フラックスの条件において、古代エジプトガ ラス質遺物(ファイアンス等)の主元素・微量元素等の構成元素を特定できる可能性 について検討を行い、含有構成元素の分布状態からそれらの時代性・地域性の考古学 的特徴を示唆できる指標を見出すことを目的としている。昨年度までの主原料となる 砂 の 主 構 成 元 素 (Mn, Na, Al)含有率の相関を、今年度分布から得られたファイアンス のものと比較し、相違点を検討した。これより、素材の砂の含有量率に対して、製品 の フ ァ イ ア ン ス で は Na含 有 量 が ほ ぼ 1桁 (10倍 ) 高 い 増 加 量 と な っ て い る こ と が 示され、アノレカリ塩として酸化ナトリウム (Na20) を融材として混合され、ファイア ンスが製造されたものと推定できる o さらには. 38CI、66CU等の検出ピークからそれら. Na, AI)の相関性について分析を継続させ、地域的・時代 の 含 有 率 と 主 構 成 元 素 (Mn, 的な特徴を示す指標を特定してし 1 くc. 以上のように、原子炉化学・放射化学に関する研究は、中性子放射化法による非破 壊分析の考古学分野への応用という点から、重要な研究であり、今後のさらなる発展 を期待する o. - 9 7.
(12) 付録 l. (1) 古 代 エ ジ プ ト 遺 物 中 微 量 元 素 の 中 性 子 放 射 化 法 に よ る 分 析 代表者:吉田. 茂生(東海大学工学部). [要約] 本研究では、近大炉のような低中性子フラックスの条件において、古代エジプ トガラス質遺物(ファイアンス等)の主元素・微量元素等の構成元素を特定でき る可能性について検討を行い、含有構成元素の分布状態からそれらの時代性・地 域性の考古学的特徴を示唆できる指標を見出すことを目的としている. o. 昨年度ま. で の 主 原 料 と な る 砂 の 主 構 成 元 素 (Mn,Na,Al) 含 有 率 の 相 関 を 、 今 年 度 分 析 か ら 得られたファイアンスのものと比較し、相違点を検討した。これより 、素材の砂 の 含 有 量 率 に 対 し て 、 製 品 の フ ァ イ ア ン ス で は Na含 有 量 が ほ ぼ 1桁 (10倍 ) 高 い 増 加 量 と な っ て い る こ と が 示 さ れ 、 ア ル カ リ 塩 と し て 酸 化 ナ ト リ ウ ム (Na20 ) を融. 8 C l、 材として混合され、ファイアンスが製造されたものと推定できる。さらには 3 66CU 等 の 検 出 ピ ー ク か ら そ れ ら の 含 有 率 と 主 構 成 元 素. (Mn,Na, Al) の 相 関 性 に つ い. て分析を継続させ、地域的・時代的な特徴を示す指標を特定しいく. 98 -. o.
(13) Vol .5 0( 20 1 3). 近畿大学原子力研究所年報. 生物の放射線影響に関する研究 研究総括責任者広島大学大学院理学研究科 准教授谷口研至. 平成 24年度の生物の放射線に関する研究は、 6件の課題で実施された。生物系の課題は次のとお りである。. 3 1 谷口研至ほか 3名. 速中性子による植物細胞の突然変異研究 1 1キクタニギクの突然変異誘導. 3 -2 高井明徳ほか 2名. 中性子線による魚類細胞における小核誘発に関する研究. 3 3 根岸友恵ほか 2名. ショウジョウバエ体細胞および培養動物細胞の搬す線誘発傷害における 酸化傷害を修飾する因子に関する研究. 3 4 河 井一明ほか 2名 搬す線被i 暴による生体過酸化物生成とその防御 3 5 野初て成ほか 4名. 核分裂搬す能によるマウスおよびヒトの隣号・組織障害の発生機構. 3 6 松本義久ほか 1名. 中性子線による D N A損傷とその修復の分子機構. これらの生物系の研究課題は、(1)放射線の生物作用の解明、および ( 2 )放射線の生物モニター系 の開発に大別されるが、以下に平成 24年度の研究成果の概要を示す。. (1)放射線の生物作用の解明 -1)は、キク属植物は同質四倍数体の分配機構を解明するために、突然変異 谷口ら(研究計画 3 系統を作成し、人為的に倍数体を作成し、それぞれの突然変異の分離を調べようとしている。今回、 前年度に引き続き、実生苗に X線を照射し、放射線量と発生ステージの違いについて突然変異誘導 の最適条件の検討を行った。突然変異の指標として「斑入り J と「非対称性本葉Jの発現頻度を調 8 時間後の照射区で最初の変異率の増大があり、 2 7時間後の照射区でさらに高い変異 べ、播種後 1. 率の増加ピークが見られた。その結果、播種後 27時間自に 25.8Gyの X線照射線照射を最適条件と した。. 3 ) は、 X線の生物影響とその防御について解析している。ショウジョウパ 根岸ら ( 研究計画 3 N A二本鎖切断の指標となるヒストンリン酸化の検出を試み、 エを用いて、X線照射後に誘導される D 尿酸欠損株において照射後 1時間程度で リン酸化のわずかな発現が観察されたが、野生株では観察 されなかったo 次に、尿酸が X線傷害の防御の役割を果たしている可能性を指摘してきており、 X 線照射前後に天然物のサノレナシ果汁をマウスに経口摂取し、網赤血球中に誘導される小核の出現頻. 8時間後に 58% 低下、照射後投与では 38% 度から防御効果を調べた。その結果、照射前投与では 4 低下しており、いずれの投与方法でも照射時間経過とともに出現する小核の出現が押さえられてい ることを明らかにしている。特に、照射後の摂取で効果を示すことから、放射線被爆時の処置に利 用できる可能性に言及している。. d. n﹃υ. 吋 ハ.
(14) 付録 l. 河井ら(研究計画 3 4 ) は、放射線による生体への影響は、放射線によって生じるフリーラジカ ルや活性酸素が大きな原因とされ、生体の抗酸化能が生体への影響の軽減に働くと考えられている ことから、抗酸化餌の摂取と放射線照射によって生成する 8 ーヒドロキシデオキシグアノシン ( 8 O H d G ) 値の関係について解析している。通常餌とオートクレーブして抗酸化能を低下させた餌を 1. 週間投与後、 X線の全身照射し、照射直後の肝臓と骨髄細胞 DNA中の 8-0HdG値と 24時間後の尿中. D HdG値の測定を行った の 8-. D. その結果、骨髄 DNAと尿中の 8 ー OHdG値のレベノレが抗酸化能の低下し. たオートクレーブ餌の摂取により増加していたことから、抗酸化機能は食事による摂取においても 影響を及ぼすと考察している。. 6 ) は、中性子線の DNA損傷の特徴とその DNA修復機構を明らかにすること 松本ら(研究計画 3 を目的に、原子炉放射線照射によって生じた DNA損傷の修復について調べている。 DNA損傷におけ る XRCC4の調節に DNA-PKと ATMの両方が相補的に関わっていること、原子炉でできた DNA損傷は X 線でできたものに比べて DNA-PK、ATM 、XRCC4の連携による修復が難しい、あるいは修復しても間違 C4遺伝子と いが大きいことを示唆する結果を得てきている。本年は XRCC4遺伝子欠損マウスに XRC M 1 0 X R C C 4と M 1 0 C M V ) を用いて、放射線(原子炉放 コントロールベクターを導入したマウス細胞 (. 射線と 6 0 C o γ 線)照射による H P R T遺伝子の突然変異を検出した口以上の結果より、突然変異の上 昇は XRCC4遺伝子が関与する DNA二重鎖切断修復の誤りによって生じること、線質によって DNA修 復におけるリン酸化の役割が異なることが示唆されている。. (2)放射線の生物モニター系の開発. 2 ) は、メダカの腎臓細胞の小核出現に対する特性を明らかにするために、 高井ら(研究計画 3 中性子線と X線の全身照射を行った個体について、線量及び時間依存特性を小核誘発細胞数 s ) の測定により分析した。中性子線および X線照射ともに小核出現頻度は 1 2時間でわずかに ( 附C. 6時間でピークを示し、 48時間で大きく減少した 増加し、 3. D. また、ピーク時の刷C sは照射線量に. . 8 と推定した。この結果は 対応して出現していたが、中性子線の X線に対する生物学的効果比は 4. すでに報告している偲細胞とほぼ同じ値であることを明らかにしている。以上の結果をもとに小核 は DNA二本鎖切断によるものであると推定している. D. 野村ら(研究計画 3 5 ) は、核分裂放射能の人体に及ぼす影響を調べるために、核分裂放射能に 被爆した雄マウスと正常雄マウスの交配による次世代への影響(突然変異、ガン)を調査した口近 畿大学原子炉放射線照射雄マウスと正常雌マウスの. F 2 ヶ月間 1マウスに、フェノバノレビ、ターノレを 1. 経口投与した結果、肝がん発生頻度が高騰した。非照射 F1マウスも高頻度に見られ有意な差は得ら C I D マウス れなかった。次に、ヒト臓器・組織の形態・機能を生きたまま継代維持するためには、 S ( s c i d遺伝子欠損)が不可欠で、より改良された SCIDマウスが求められている口そこで¥このマ. ウスを作成するために、欠失変異が起きやすい中性子線を雄マウス生殖細胞に照射した。雄マウス の放射線感受性が高く、数匹の仔マウスしか得られず、変異体を得ることができず、低線量で再検 討中である。. - 1 0 0.
(15) 近畿大学原子力研究所年報. Vol .5 0( 2 0 1 3 ). (1)中性子による植物細胞の突然変異研究 Eキクタニギクの突然変異誘導 代表者:谷口. 研至(広島大学大学院理学研究科). [要約] キク属は二倍体から十倍体まで、の同質倍数体による種分化をしてきたグ、ループで、世界中で最も 多く利用されている栽培ギクを含む育種上も重要なグループで、ある。しかし、細胞遺伝学的には多く の研究がなされているが、自家不和合性をもつこと、および栽培ギクが六倍体であることから、遺伝学 的研究はほとんどなされておらず、連鎖群も作成されていない。 最近、我々は二倍体キクタニギクの自殖系統を発見したことから、キクタニギクを用いたモデ、ノレ実験 植物化が可能となってきた 現在、幼苗の時期に識別できる外部形質の収集に力を入れている。す O. で、に交配によっていくつかの変異株を分離しているが、さらに効率的に集めるためには突然変異処理 による突然変異株の分離が効果的である。我々は培養細胞に突然変異処理を行い、キメラ細胞集塊 が、均質な細胞集塊になる過程の詳細な追跡を行い、効率的にクローン化する技術を確立している。 この技術を応用して、キクタニギクの突然変異株を作成し、遺伝学的研究に利用できる系統を選抜す る。今回は昨年度までの突然変異作成実験の再現性ム昨年問題として残されていた播種後の最も 効率のよい時期の決定を試みた。 放射線感受性解析は、すでに確立している、第 l葉と第 2葉が対称型的な正常葉、斑入り、および 第 l葉と第 2葉の大きさの異なる非対称葉、全く本葉を生じない無本葉を区別することによって行ったo 以上の区分に基づ、いて放射線量と播種から照射まで、の時間について頻度変化を調べた 以上の結 D. 果から、キクタニギクの突然変異誘導のための条件として、播種後 1 8 時間、または 2 7時間後に、. 2 5 . 8 G yの X線照射が最適であることを確かめた。 (2 )中性子線による魚類細胞における小核誘発に関する研究. 代表者:高井明徳(大阪信愛女学院短期大学). [要約] ヒメダカに中性子線および X線の全身照射を行い、腎臓における小核誘発細胞数 ( M N C s )を、照射 後 1 2時聞から 96時間まで 1 2時間または 2 4時間間隔で調べた。【方法】ヒメダカを出力 1Wの近畿 大原子炉の炉心において原子炉放射線(速中性子とガンマ線の 1 : 1混合放射線)に 1 、2 、4h暴露し た。線量率は速中性子、ガンマ線共に 4 0 c G y / hで、あったoX線は線量率 0 . 5G y / r n i nで 1 、2 、4Gy 照射した。照射後、 1 2時間間隔で、各時点 5個体を用い、腎臓を採取した。腎臓は牛胎児血清中で 破砕して塗抹標本にし、 99% メタノーノレで、固定し、アクリジンオレンジで蛍光染色し、小核を検出した。 【結果}腎臓細胞において誘発された M N C s ( = 小核数)は中性子線、. X線共に、照射後 1 2時間でわず. かに増加し、 36時間でピークを示し、ピーク後 4 8時間で大きく減少し、以後徐々に減少した。 36時間 のピーク時の頻度から、. MNCsは線量に対応して出現していることが示された。速中性子の X線に対. する生物学的効果比 ( RBE)は 4 . 8 と推定され、鯨細胞とほぼ同じであり、腎臓細胞における小核は. DNA2本差切断により生じることが示唆された。腎臓細胞は鯨細胞に比べて、小核のピークを示す時 間は長く(偲細胞は 2 4時間)、その原因として分裂遅延や細胞周期の違いが考えられた。 ハU.
(16) 付録 1. (3 )ショウジョウバエ体細胞および培養動物細胞の放射線誘発傷害を修飾する因子に関する研究. 代表者:根岸友悪(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科). [要約] X線の生物影響とその防御について研究を継続した。 X線照射後に誘導される DNA二本鎖切断の. 指標となるヒストンリン酸化の検出を試みた結果、尿酸欠損株において照射後 1時間程度でリン酸化 の僅かな発現が観察されたが、野生株で、は観察されなかったo 昨年度までの結果で、尿酸が X 線 傷 害の防御の役割を果たしている可能性を示したが、今年度は天然物を経口摂取することによる防御 効果についてマウスを用いて検討した。. x線照射前後にサルナシ果汁を飲料として自由摂取させ、 X. 線照射によって網赤血球中に誘導される小核の頻度を調べた。その結果、いずれの投与方法でも、. X 線照射後時間経過とともに誘導される小核の発現が抑えられた。照射前に投与した方が強い効果. ( 4 8時間後で 42%に減少)が見られたが、照射後の投与においても十分な効果 ( 4 8時間後で 62%に 減少)が見られた。照射後の摂取で効果が見られたことは、放射線被爆時の処置に使用できる可能 性が有り、今後効果の確認と作用機構の研究を進める予定である。. (4 )放射線被曝による生体過酸化物生成とその防御 代表者:河井一明(産業医科大学産業生態科学研究所). [要約] 放射線発がんを始めとする放射線の生体影響は、生体内で放射線によって生成するフリーラジカ ルや活性酸素が大きな原因とされている。これに対し、生体の抗酸化能は生体影響の軽減に働くと考 えられる。本研究では、放射線被曝によるがんの発症に食事が影響することを示す疫学調査がある ことから、放射線によって生成する 8-0HdG値に与える食事の影響について検討した。実験は、オ ートクレープ処理によって抗酸化成分が低下した餌を摂取したマウスに X線照射を行い、代表的な酸 化的 DNA損傷である8ーヒドロキシデオキシグアノシン(8-0HdG) の組織 DNAおよび尿中レベルを HPLC-ECD 法により測定した。マウスに X 線を全身照射した場合、骨髄 DNA ならびに尿中の 8-0HdGレベノレは、オートクレープ餌の摂取によって増加した。生体は様々な防御機構によって酸化. 的 DNA損傷を防いで、いるが、その抗酸化機能には食事による栄養摂取状態が影響すると考えられ る 。. -1 0 2-.
(17) 近畿大学原子力研究所年報. Vo l .5 0( 20 1 3). (5)核分裂放射能によるマウス、ヒト臓器・組織障害の発生機構 代表者:野村大成(大阪大学大学院医学系研究科、医薬基盤研究所). [要約] 本研究は主として、近畿大学原子力研究所原子炉 (UTR-KINK I)を用い、人体影響がまだよく知 られていない核分裂放射能に被曝した雄マウスと正常雌マウスとの交配による次世代への影響(突 然変異、がん)を継続して調査した。 本年度は次世代影響のうちマウス肝がん発生を調べた。原子炉放射線照射雄マウスからの仔マ ウスにフェノパーピタール ( P B )を 1 2カ月間投与したところ、月干がん発生頻度が高騰した。しかし、非 照射 F l仔マウス♂で、も、肝がん発生が高頻度にみられ、結果が明確でない。 PBの長期間投与が長 すぎたのが原因である 投与期間を短縮し再検討するため、あらためて、雄マウスに原子炉中性子 D. 線を照射し、 F l生仔を得ることからスタートした。 ヒト臓器・組織の形態・機能を生きたまま継代維持するためには、 SCIDマウス ( s c i d遺伝子欠損) が不可欠である。 SCID欠失変異をもっ、より改良した SCIDマウスを得るため、欠失変異が最も起き やすい中性子線(原子炉放射線)を雄マウス生殖細胞に照射した。 SCID遺伝子座の欠失変異をも っイ子マウスは、毛色より選択できる。しかし、用いた雄マウスの放射線感受性が高く、仔マウスが数 匹しか得られなかった。中性子線線量を下げて再検中である。. (6)中性子線による DNA損傷とその修復の分子機構 代表者:松本義久(東京工業大学原子炉工学研究所). [要約] 本研究の目的は、中性子線の DNA損傷の特徴とその DNA修復機構を明らかにすることである。こ れまでの結果から、近大原子炉照射場で生じた DNA 損傷の修復における XRCC4 の調節に. DNA-PKとATMの両方が相補的に関わっていること、さらに、原子炉でできた DNA損傷は X線でで きたものに比べて DNA-PK、ATM、XRCC4の連携による修復が難しい、あるいは修復しても間違いを 起こしゃすいことが示唆された。本年は、突然変異検出系を用いて、この可能性について検討した。 方法として、内在性の XRCC4を欠損するマウス白血病由来 M10細胞に、 XRCC4遺伝子あるいはコ ントロールベクターを導入した細胞 (MI0 XRCC4および M10 一CMV) 細胞を用い、 6 t h i og u a n i n e耐性 を指標として HPRT遺伝子における突然変異を検出した。また、原子炉照射と 6 0 C o γ 線照射の比較 検討を行った。その結果から、(1)放射線照射による突然変異頻度の上昇は、 XRCC4 が関与する. DNA二重鎖切断修復によって生じること、 ( 2 )線質によって DNA修復におけるリン酸化の役割が異な ることが示唆された。. -1 0 3-.
(18) 近畿大学原子力研究所年報. Vol .5 0( 2 0 1 3 ). (1)中性子による植物細胞の突然変異研究 Eキクタニギクの突然変異誘導 代表者:谷口. 研至(広島大学大学院理学研究科). [要約] キク属は二倍体から十倍体まで、の同質倍数体による種分化をしてきたグ、ループで、世界中で最も 多く利用されている栽培ギクを含む育種上も重要なグループで、ある。しかし、細胞遺伝学的には多く の研究がなされているが、自家不和合性をもつこと、および栽培ギクが六倍体であることから、遺伝学 的研究はほとんどなされておらず、連鎖群も作成されていない。 最近、我々は二倍体キクタニギクの自殖系統を発見したことから、キクタニギクを用いたモデ、ノレ実験 植物化が可能となってきた 現在、幼苗の時期に識別できる外部形質の収集に力を入れている。す O. で、に交配によっていくつかの変異株を分離しているが、さらに効率的に集めるためには突然変異処理 による突然変異株の分離が効果的である。我々は培養細胞に突然変異処理を行い、キメラ細胞集塊 が、均質な細胞集塊になる過程の詳細な追跡を行い、効率的にクローン化する技術を確立している。 この技術を応用して、キクタニギクの突然変異株を作成し、遺伝学的研究に利用できる系統を選抜す る。今回は昨年度までの突然変異作成実験の再現性ム昨年問題として残されていた播種後の最も 効率のよい時期の決定を試みた。 放射線感受性解析は、すでに確立している、第 l葉と第 2葉が対称型的な正常葉、斑入り、および 第 l葉と第 2葉の大きさの異なる非対称葉、全く本葉を生じない無本葉を区別することによって行ったo 以上の区分に基づ、いて放射線量と播種から照射まで、の時間について頻度変化を調べた 以上の結 D. 果から、キクタニギクの突然変異誘導のための条件として、播種後 1 8 時間、または 2 7時間後に、. 2 5 . 8 G yの X線照射が最適であることを確かめた。 (2 )中性子線による魚類細胞における小核誘発に関する研究. 代表者:高井明徳(大阪信愛女学院短期大学). [要約] ヒメダカに中性子線および X線の全身照射を行い、腎臓における小核誘発細胞数 ( M N C s )を、照射 後 1 2時聞から 96時間まで 1 2時間または 2 4時間間隔で調べた。【方法】ヒメダカを出力 1Wの近畿 大原子炉の炉心において原子炉放射線(速中性子とガンマ線の 1 : 1混合放射線)に 1 、2 、4h暴露し た。線量率は速中性子、ガンマ線共に 4 0 c G y / hで、あったoX線は線量率 0 . 5G y / r n i nで 1 、2 、4Gy 照射した。照射後、 1 2時間間隔で、各時点 5個体を用い、腎臓を採取した。腎臓は牛胎児血清中で 破砕して塗抹標本にし、 99% メタノーノレで、固定し、アクリジンオレンジで蛍光染色し、小核を検出した。 【結果}腎臓細胞において誘発された M N C s ( = 小核数)は中性子線、. X線共に、照射後 1 2時間でわず. かに増加し、 36時間でピークを示し、ピーク後 4 8時間で大きく減少し、以後徐々に減少した。 36時間 のピーク時の頻度から、. MNCsは線量に対応して出現していることが示された。速中性子の X線に対. する生物学的効果比 ( RBE)は 4 . 8 と推定され、鯨細胞とほぼ同じであり、腎臓細胞における小核は. DNA2本差切断により生じることが示唆された。腎臓細胞は鯨細胞に比べて、小核のピークを示す時 間は長く(偲細胞は 2 4時間)、その原因として分裂遅延や細胞周期の違いが考えられた。 ハU.
(19) 付録 1. (3 )ショウジョウバエ体細胞および培養動物細胞の放射線誘発傷害を修飾する因子に関する研究. 代表者:根岸友悪(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科). [要約] X線の生物影響とその防御について研究を継続した。 X線照射後に誘導される DNA二本鎖切断の. 指標となるヒストンリン酸化の検出を試みた結果、尿酸欠損株において照射後 1時間程度でリン酸化 の僅かな発現が観察されたが、野生株で、は観察されなかったo 昨年度までの結果で、尿酸が X 線 傷 害の防御の役割を果たしている可能性を示したが、今年度は天然物を経口摂取することによる防御 効果についてマウスを用いて検討した。. x線照射前後にサルナシ果汁を飲料として自由摂取させ、 X. 線照射によって網赤血球中に誘導される小核の頻度を調べた。その結果、いずれの投与方法でも、. X 線照射後時間経過とともに誘導される小核の発現が抑えられた。照射前に投与した方が強い効果. ( 4 8時間後で 42%に減少)が見られたが、照射後の投与においても十分な効果 ( 4 8時間後で 62%に 減少)が見られた。照射後の摂取で効果が見られたことは、放射線被爆時の処置に使用できる可能 性が有り、今後効果の確認と作用機構の研究を進める予定である。. (4 )放射線被曝による生体過酸化物生成とその防御 代表者:河井一明(産業医科大学産業生態科学研究所). [要約] 放射線発がんを始めとする放射線の生体影響は、生体内で放射線によって生成するフリーラジカ ルや活性酸素が大きな原因とされている。これに対し、生体の抗酸化能は生体影響の軽減に働くと考 えられる。本研究では、放射線被曝によるがんの発症に食事が影響することを示す疫学調査がある ことから、放射線によって生成する 8-0HdG値に与える食事の影響について検討した。実験は、オ ートクレープ処理によって抗酸化成分が低下した餌を摂取したマウスに X線照射を行い、代表的な酸 化的 DNA損傷である8ーヒドロキシデオキシグアノシン(8-0HdG) の組織 DNAおよび尿中レベルを HPLC-ECD 法により測定した。マウスに X 線を全身照射した場合、骨髄 DNA ならびに尿中の 8-0HdGレベノレは、オートクレープ餌の摂取によって増加した。生体は様々な防御機構によって酸化. 的 DNA損傷を防いで、いるが、その抗酸化機能には食事による栄養摂取状態が影響すると考えられ る 。. -1 0 2-.
(20) 近畿大学原子力研究所年報. Vo l .5 0( 20 1 3). (5)核分裂放射能によるマウス、ヒト臓器・組織障害の発生機構 代表者:野村大成(大阪大学大学院医学系研究科、医薬基盤研究所). [要約] 本研究は主として、近畿大学原子力研究所原子炉 (UTR-KINK I)を用い、人体影響がまだよく知 られていない核分裂放射能に被曝した雄マウスと正常雌マウスとの交配による次世代への影響(突 然変異、がん)を継続して調査した。 本年度は次世代影響のうちマウス肝がん発生を調べた。原子炉放射線照射雄マウスからの仔マ ウスにフェノパーピタール ( P B )を 1 2カ月間投与したところ、月干がん発生頻度が高騰した。しかし、非 照射 F l仔マウス♂で、も、肝がん発生が高頻度にみられ、結果が明確でない。 PBの長期間投与が長 すぎたのが原因である 投与期間を短縮し再検討するため、あらためて、雄マウスに原子炉中性子 D. 線を照射し、 F l生仔を得ることからスタートした。 ヒト臓器・組織の形態・機能を生きたまま継代維持するためには、 SCIDマウス ( s c i d遺伝子欠損) が不可欠である。 SCID欠失変異をもっ、より改良した SCIDマウスを得るため、欠失変異が最も起き やすい中性子線(原子炉放射線)を雄マウス生殖細胞に照射した。 SCID遺伝子座の欠失変異をも っイ子マウスは、毛色より選択できる。しかし、用いた雄マウスの放射線感受性が高く、仔マウスが数 匹しか得られなかった。中性子線線量を下げて再検中である。. (6)中性子線による DNA損傷とその修復の分子機構 代表者:松本義久(東京工業大学原子炉工学研究所). [要約] 本研究の目的は、中性子線の DNA損傷の特徴とその DNA修復機構を明らかにすることである。こ れまでの結果から、近大原子炉照射場で生じた DNA 損傷の修復における XRCC4 の調節に. DNA-PKとATMの両方が相補的に関わっていること、さらに、原子炉でできた DNA損傷は X線でで きたものに比べて DNA-PK、ATM、XRCC4の連携による修復が難しい、あるいは修復しても間違いを 起こしゃすいことが示唆された。本年は、突然変異検出系を用いて、この可能性について検討した。 方法として、内在性の XRCC4を欠損するマウス白血病由来 M10細胞に、 XRCC4遺伝子あるいはコ ントロールベクターを導入した細胞 (MI0 XRCC4および M10 一CMV) 細胞を用い、 6 t h i og u a n i n e耐性 を指標として HPRT遺伝子における突然変異を検出した。また、原子炉照射と 6 0 C o γ 線照射の比較 検討を行った。その結果から、(1)放射線照射による突然変異頻度の上昇は、 XRCC4 が関与する. DNA二重鎖切断修復によって生じること、 ( 2 )線質によって DNA修復におけるリン酸化の役割が異な ることが示唆された。. -1 0 3-.
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