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台湾と日本 -- 鴻海のシャープ買収の示唆する変化 (特集2 アジアのニューノーマルを探る)

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台湾と日本 -- 鴻海のシャープ買収の示唆する変化

(特集2 アジアのニューノーマルを探る)

著者

佐藤 幸人

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

260

ページ

18-18

発行年

2017-05

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00048958

(2)

特集2

アジアのニューノーマルを探る

昨年4月、シャープが台湾の鴻海精密工業グループ (以下、鴻海)の傘下に入ることが決定し、8月には鴻 海のシャープへの出資が完了した。2012年、シャープ と鴻海の資本提携のニュースが日本社会を驚かせてか ら4年、シャープはついに全面的に経営権を鴻海に引 き渡すことになったのである。 ●シャープの経営は好転 鴻海によるシャープの経営は既に効果をあげ始めて いる。8月以降の経営改善の効果は600億円に達すると いう。2016年第4四半期は2年3カ月ぶりの黒字を達成 し、2017年3月期の連結決算も黒字が見込まれている。 また、積極的な戦略も次々と打ち出されている。鴻 海とシャープが出資する堺ディスプレイプロダクトは、 2016年12月、広州に大型の液晶パネル工場を建設する ことを発表した。両社はアメリカでの液晶パネル生産 の検討も始めた。シャープは今年1月には深圳にアジ ア向け家電製品の研究開発センターを設置したことを 明らかにし、2月にはヨーロッパのテレビ事業を買い 戻した。また、シャープは昨秋以降、物流、知的財産 管理、医療・健康関連の3事業を分社化し、鴻海との 共同経営によって上場を目指している。 一方で人材の流出なども報道され、シャープの経営 が安定した軌道に乗ったと判断するのは尚早である。 しかし、明日をも知れぬ状態だった1年前と比べれば 様変わりしている。 ●鴻海のシャープ買収の啓示 鴻海によるシャープの買収には様々なインプリケー ションがある。そこからは世界のエレクトロニクス産 業が変容するなかで、日本のエレクトロニクス産業の ビジネスモデルが有効性を失っていったことが浮かび 上 が る。 同 時 に、 世 界 最 大 のEMS(electronic manufacturing service)である鴻海が、シャープを取 り込むことで自らを変革しようとしていることは、 EMSというモデルが早くも限界を迎え、新しいモデル への脱皮を模索していることを示唆している。 もう一つ注目したいのは、日本経済の構造変化ある いは日本とアジアとの経済的な関係の変化である。こ れまでの日本への対内直接投資は著しく少なかった。 言い換えれば、日本経済は日本企業が担い、外資系企 業の役割は極めて限られていた。それゆえ、1999年の 日産自動車とルノーの提携は衝撃的だったのだ。そし て、今回は鴻海というアジアの企業に、シャープとい う日本を代表する企業の一つが買われたことで、日本 経済は日本企業のものというイメージはさらに打ち破 られることになったといえよう。 その背景には、日本とアジア諸国の経済的な関係が 対等なものに変わりつつあることがある。戦後しばら くの間、アジアのなかで日本の経済的な地位は圧倒的 なものがあった。それゆえ、日本企業がアジア諸国に 直接投資をすることはあっても、アジアの企業が日本 に工場を建てたり、企業を買収したりすることは稀で あった。2000年代に入って、アジア企業の日本への直 接投資は徐々に増えていた。鴻海のシャープ買収は、 多くの日本人に潮目の変化を知らしめたのである。 さらにいえば、特に経営という面で日本企業とアジ アの企業の力が接近しているのかもしれない。日本企 業は技術面で優位性を持ち、それは今でも失われてい ない。しかし、経営はしばしば弱点になっている。だ から、カルロス・ゴーンという優れた経営者を迎え入 れることで、日産自動車は立ち直ることができた。鴻 海のシャープ買収もまた、戴正呉という鴻海の最高幹 部が社長となり、鴻海流の経営がシャープに注入され たことが重要である。 恐らくこれからはますます多くの日本人がアジアか ら来た経営者のもとで働くことになるのだろう。まず は戴社長がシャープのカルロス・ゴーンになれるのか、 注目していきたい。 (さとう ゆきひと/アジア経済研究所 新領域研究 センター)

佐 藤 幸 人

台湾と日本

―鴻海のシャープ買収の示唆する変化―

18

アジ研ワールド・トレンド No.260(2017. 6)

参照

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