大学生は予想外の適性検査結果にどのように反応するのか
―批判的思考および自己効力感との関連―
How do Undergraduates React to Unexpected Results of a Vocational
Aptitude Test?:
Effect of the Critical Thinking Disposition and Self-Efficacy
浦 上 昌 則
Masanori U
RAKAMI 要 旨 本研究は,批判的思考,自己効力感といった心理変数を取り上げ,それらとアセスメントの結果に 対する反応,特に自己理解の進展につなげようとする行動的反応との関連を検討することを目的とし た。大学生を対象として,「自分に合わないと感じる職業」のリストを手にした場面を想定させた調 査を行った。その結果,アセスメント結果に対する行動的反応は,結果に対する肯定的な感情的反応 との関連が幅広い項目で認められた。批判的思考や自己効力感は,感情的反応とは独立しているであ ろうことが示唆され,またいくつかの行動的反応との関連が認められた。批判的思考,自己効力感と 有意な関連が認められた行動的反応は少なかったが,有意であったものはいずれも自己理解の進展に つながりやすいと判断される行動項目であった。これらの結果から,批判的思考や自己効力感の育成 によって,アセスメント結果が自己理解の進展につながりやすくなることが示唆された。 問題と目的 テスト,検査といったアセスメント結果の活用は,キャリア教育において重要であることは指摘 するまでもない。ところが,アセスメント受験者がその結果をどのように利用しているのかといっ た点に関する知見の蓄積はいまだ不十分といわざるを得ない。浦上(2017)はこの問題に着目し, アセスメントの結果の利用に関する基礎的知見を得ることを目的として検討を行っている。本研究 は,それをふまえて,批判的思考,自己効力感といった心理変数に注目し,それらとアセスメント の結果の利用との関連を検討することを目的とする。 キャリア選択において自己理解が重要であることの指摘,およびアセスメントの活用については Parsons(1909)以来の歴史があり,自己理解にアセスメントは有効活用できると考えられてきた。 ところが,自己理解のためにアセスメント結果の受け手がそれをどのように活用すればよいのかということは自明とはいえない。浦上(2017)は,理解の対象である自己は変化し得るものであり, またその変化自体がキャリア教育の目的でもあることから,「ある時点での検査結果をそのまま取 り入れるとか,既存の認識と置きかえるだけでは自己理解の促進とはいいがたい」と指摘する。そ して Piaget の考え方(その概略は,日下による一連の著作(日下,1992 ほか)などに詳しい)や, Glasersfeld(1995)によるラディカル構成主義的観点を用いて,自己理解の進展を,自己定義への 接近ではなく,より状況に適合的・適応的な方向へ向かう,自己に対する新しい認識構造の形成, 構築過程であり,Piaget のいう拡大均衡化の過程ととらえることを提示している。 自己理解の進展をこのように考えると,アセスメントの結果は,自己に対する新しい認識構造の 形成,構築に向かうきっかけとして作用するものと位置づけることができるだろう。浦上(2017)は, 適性検査の結果として「これまでに考えたこともなかった職業のリストを手にした場面」(無考慮 場面)と「自分に合わないと感じる職業のリストを手にした場面」(否定場面)の場合を設定した うえで,キャリア教育の専門家を対象に,自己理解の進展につながりやすい行動的反応について調 査を行っている。その結果,専門家は「自分(自分の考え)の新たな可能性を考える」,「自分の考 えとなぜ齟齬(そご)が生じたのかを考える」など,結果をもとにさらに自分で考えるような行動 が自己理解の進展につながると考えていることが明らかになった。このような結果から,浦上(2017) は,自己理解の進展を,状況により適合的・適応的な方向へ向かう,自己に対する新しい認識構造 の形成過程ととらえることは,専門家の考えるところとの類似性が高いと指摘している。すなわち, アセスメント結果が自己理解に有用であるためには,結果の受け手に,その結果をもとに自分につ いて考えるという姿勢が不可欠といえるだろう。 ところが,アセスメント結果の受け手は,必ずしも結果から自分自身について考えることを進め ているとはいいがたい。特に自分の意に沿わないような結果が得られた場合,それを自己理解の進 展につなげることは難しいことも指摘されている。吉中(2011)は大学 1 年生を対象とした調査結 果から,不適を示すような適性検査の結果が得られた際には,対象者の約 7 割が結果を無視するよ うな回答をしたと指摘する。また浦上(2017)の研究では,大学生を対象とし,前述の無考慮場面 と否定場面に対する感情面と行動面から反応を検討しており,その結果を,対象者は自己理解の進 展という観点から不適切な対応をしているとはいえないが,有用な反応をしているともいいがたい とまとめている。 以上のように,アセスメントは自己理解に有用なツールとして開発されてきた。そして利用者に は,その結果をもとに自己理解の進展をはかることが期待される。ところが,特に意に沿わないよ うな結果の場合,それを自己理解の進展につなげることは難しいようである。ここから,アセスメ ント結果の認識から対応に至るプロセスを解明し,自己理解の進展が期待される対応を促進し得る 要因の検討が必要と指摘できるだろう。 本研究では,アセスメント結果への対応に差異をもたらす要因として 2 つの心理的要素に着目す る。そのひとつは批判的思考(クリティカル・シンキング)である。批判的思考は,近年では学校 教育に関する言説の中でもしばしば言及されるようになっている。楠見(2011)は従来の定義にお ける共通点をふまえて,次の 3 つの観点から再定義を試みている。すなわち,(1)論理的・合理的 思考であり,規準(criteria)に従う思考であること,(2)自分の推論プロセスを意識的に吟味す る内省的(reflective)・熟慮的思考であること,(3)より良い思考をおこなうために,目標や文脈 に応じて実行される目標志向的思考であること,である。ここに示された内容からも示唆されるよ うに,批判的思考はひろく思考活動と関連する概念であり,数学や科学をはじめ,さまざまなリテ
ラシーを支えるものとして位置づけられている(たとえば楠見,2011)。自己理解にアセスメント 結果を活用するということは科学的な考え方であり,その過程では論理的,合理的であることが求 められ,極めて内省的な活動といえるだろう。またそれはキャリア選択のために行われるものであ り,目標志向的志向でもある。すなわち,アセスメントの結果を自己に対する新しい認識構造の形 成,構築に利用できるかどうかという点は,批判的思考と関連していると推測することは適当と考 えられる。また加藤・太田・松下・三井(2013)や天谷(2017)など,批判的思考を用いる対象と して,自分自身に対するとらえ方を取り上げている研究も少なくない。 この批判的思考という概念については多面性が指摘され,たとえばその測定においても,思考力 や態度,情緒面といった測定法が提起されている(平山・楠見,2011 参照)。本研究では,そのう ちの態度の側面に注目したい。平山・楠見(2004)は,「論理的思考への自覚」(「複雑な問題につ いて順序だてて考えることが得意だ」など),「探究心」(「いろいろな考え方の人と接して多くのこ とを学びたい」など),「客観性」(「いつも偏りのない判断をしようとする」など),「証拠の重視」(「結 論をくだす場合には,確たる証拠の有無にこだわる」など)の 4 つの因子から構成される,批判的 思考態度尺度を作成している。各因子の内容とアセスメント結果をもとにした自己理解の進展の対 応を推察すると,こういった態度をもっている者ほど,自己理解が進展しやすいと考えられる。また, このうちの「探究心」は,各種のバイアスを避け,信念と矛盾した情報の受け入れに関連している ことが見出されている(平山・楠見,2004)。浦上(2017)の結果では,同化あるいは結果の無視といっ た対処によって,アセスメント結果と従前からの自己認識の均衡化をはかる傾向が強い傾向が認め られているが,「探求心」の高さはそこに留まらない思考を促進すると考えられるだろう。 アセスメント結果への対応の差を生むと考えられるもうひとつの心理的要素としては,自己効力 感(Bandura, 1977)を取り上げる。自己効力感とは,ある課題を成功裏に遂行することができる という自信を代表するものであり,それの高い者はその行動をより積極的,持続的に行うと考えら れている。この概念はキャリア研究の流れの中でも頻繁に取り上げられるものであり,キャリア選 択に関する自己効力感に限ってもこれまでに多くの研究が積み重ねられてきている。このキャリア 選択に関する自己効力感研究の嚆矢ともいえる Taylor & Betz(1983)による研究では,キャリア を選択・決定していくプロセスにおいて必要な行動に対する自己効力感(Career Decision-Making Self-Efficacy)という概念が提起され,それがキャリア選択行動と関連していることが,後の研究 によっても確認されている(たとえば Solberg, Good, Fisher, Brown, & Nord, 1995 など)。
Taylor & Betz(1983)は Career Decision-Making Self-Efficacy の測定にあたり,Crites(1965) の示した「職業選択能力」に注目している。これは,(1)目標選択,(2)自己評価,(3)職業情報 の収集,(4)将来設計,(5)課題解決,の 5 つの領域から構成されるものであり,自己評価(self-appraisal)は本研究で着目するところの自己理解といえよう。これらのことから,アセスメント結 果を手にした場合に,自己評価・自己理解行動に対する自己効力感が高い者の方がそれをより活用 すると推察される。 以上のことから,本研究は浦上(2017)の知見をふまえ,批判的思考,自己効力感の 2 つの心理 変数に注目し,それらとアセスメントの結果の利用との関連を検討することを目的とする。なお, 浦上(2017)では適性検査の結果として「これまでに考えたこともなかった職業のリストを手にし た場面」(無考慮場面)と「自分に合わないと感じる職業のリストを手にした場面」(否定場面)の 2 場面が用いられており,無視のような反応は否定場面の方で生起しやすいことが明らかになって いる。本研究は,結果の無視といったことにより自己理解の進展につながりにくい場面と考えられ
る後者のみを用いることとする。 方 法 調査対象 2017 年 6 月に大学生を対象として調査を行った。授業時に配布,回収を行ったが,提出は任意 であることを口頭で補足している。以下の分析では,学年,性別以外の変数に欠損をもたない 164 名(2 年生 108 名,3 年生 30 名,4 年生 23 名,不明 3 名;男性 36 名,女性 126 名,不明 2 名)の 回答を対象とする。 調査内容 1.批判的思考:平山・楠見(2004)による批判的思考態度尺度を用いた。この尺度は「論理的思 考への自覚」,「探究心」,「客観性」,「証拠の重視」の 4 つの因子から構成される。本研究では, 平山・楠見(2004)の共分散構造分析結果によって項目選出がなされた,「論理的思考への自覚」 「探究心」「客観性」の各 5 項目,「証拠の重視」の 3 項目,計 18 項目を用いた。評定は「あては まらない」から「あてはまる」までの 5 段階で求めた。 2.キャリア選択自己効力感:花井(2008)が Crites(1965)の指摘した 5 つの領域に準拠して作 成したキャリア選択自己効力感尺度から,「自己評価」の因子 5 項目を用いた。なお今回は,内 容的に自己理解に近い側面をもつ「目標選択」の因子の 5 項目(たとえば「仕事に対する自分の 興味を理解すること」など)についても採用し,ダミー項目を 5 項目追加して全 15 項目につい て「自信がない」から「自信がある」までの 4 段階で回答を求めた。 3.状況設定と感情的,行動的反応:浦上(2017)に従って状況を設定し,感情的反応と行動的反 応についての回答を求めた。状況としては,「自分に合わないと感じる職業」場面のみを用いた。 教示文は,「あなたは信頼できると評判の,職業適性検査を受けました。結果には,あなたの適 性に最も合っていると判断されるいくつかの職業名がリストされていましたが,それはあなたが 『私には合わないだろうな』と感じる職業ばかりでした」であり,この状況を想定したうえで, 次の 2 つの内容について回答を求めた。 ・感情的反応:浦上(2017)の結果を参考に,「肯定的注目」(「興味深さ」など),「否定的注目」 (「イライラ」など),「当惑」(「困惑」など)の 3 つの因子を測定する 11 項目を用いた。回答は, そのような結果を得た時,どの程度そのような感じをもつかを,「まったく感じないだろう」「少 し感じるだろう」「かなり感じるだろう」「強く感じるだろう」の 4 段階で回答を求めた。 ・行動的反応:「見なかった(聞かなかった)ことにする」「そうなのだろうと事実(結果)を受 け入れる」「適性判定の仕方について調べようとする」など 16 項目を用い,結果を得た時,そ のような反応をするかしないかを,「思ったり,したりはしないだろう」「たぶん思ったり,し たりはしないだろう」「たぶん思ったり,したりするだろう」「思ったり,したりするだろう」 の 4 段階で回答を求めた。なおこの項目群については,浦上(2017)において因子分析が行わ れているが,明確な因子を抽出することが困難であったことが示されている。 なお分析には R(3.4.1)および psych 等の各種パッケージを用いた。
結 果 まず利用した測定尺度の検討から行う。批判的思考,自己効力感,および感情的反応については, いずれも先行研究と同様の方法で得点の算出を行った。また,いずれの尺度についても α 係数およ び ω 係数( ω t )を用いて内部一貫性の検討を行った。その結果ほとんどの尺度においては利用に 十分な値が得られた。しかし,批判的思考態度尺度の「証拠の重視」においては α = .55, ω = .74 と,特に α 係数において低い値となった。この因子については,その作成段階においても α 係数は 低く .57 であった(平山・楠見,2004)。そこで 3 項目の項目間相関係数を求めると,.17 から .45 までの値であり,いずれも有意なものであった(5%基準)。項目数が 3 と少なく,すべての項目間 相関が有意であること, ω 係数はある程度の一貫性を示していることなどを総合的に考慮し,今回 は分析に用いるものとした。これらの尺度の内部一貫性と基礎統計量を Table 1 に示す。 次に批判的思考,自己効力感と感情的反応の関連について検討する。それぞれの変数間の関連性 を相関係数により求めた。その結果は Table 1 の通りである。 まず批判的思考と感情的反応については,「探求心」と「肯定的注目」の間において弱いながら も有意な正の相関が認められた。自己効力感とは,「目標選択」と「否定的注目」の間に弱い正の 相関が認められた。それ以外については有意な相関は認められず,総体的にみると,批判的思考お よび自己効力感は感情的反応と独立しているといえるだろう。 続いて行動的反応と他変数との関連を検討する。行動的反応については,今回のデータを用いて 因子分析を行ったが,明確な因子構造を見出しがたかったため,項目ごとに検討することとした。 4 段階で回答を求めたこともあり,これを順序尺度とみなして,感情的反応と,批判的思考および 自己効力感の得点とのポリシリアル相関係数を求めた(Table 2)。なお,参考までに行動的反応の 項目の平均値,標準偏差もあわせて示しておく。 感情的反応との関連では,3 つの因子のうち「肯定的注目」との間で最も多くの有意な相関係数 が認められた。「自分(自分の考え)の新たな可能性を考える」「それまでの自分の認識を考え直し てみようとする」などとの間で正の値が,「気にしないことにする」「それ(その事実)を受け入れ ない」などとの間で負の値が認められた。これは結果を無視したりせず,思考を進めていこうとす る行動と関連しているといえるだろう。次に多くの有意な相関係数が認められたのは「否定的注目」 である。「それ(その事実)を受け入れない」「これまで自分が間違っていたのだろうと思う」「自 分の考えとなぜ齟齬(そご)が生じたのかを考える」などとの間に有意な相関係数が得られている。 結果を無視するような行動との関連が示唆されるが,他方でそこから思考を進めていこうとする行 動との関連も認められた。ただし,関連性の強さとしてはいずれもあまり高くないといえるだろう。 有意な係数の数が最も少なかったのは「当惑」であり,「自分の理解が不足していたと思う」「これ まで自分が間違っていたのだろうと思う」など,自らの不明を反省し,結果をそのまま受け入れる ような内容の項目との間に相対的に高い関連性が認められる。 批判的思考および自己効力感と行動的反応の関連については,いくつかの特徴的な傾向を指摘で きるだろう。まず,最も高い相関係数でも .33 であり,有意な係数も多くない。さらにその有意な 相関が認められている部分に偏りがある。批判的思考および自己効力感の因子からみると,自己効 力感の「自己評価」は,比較的多くの行動項目と関連しているが,批判的思考の「論理的思考への 自覚」,自己効力感の「目標選択」はほとんど関連していないようである。自己効力感の「自己評価」
T able 1 クリティカル・シンキング,自己効力感,感情的反応の基礎統計量と相関係数 α係数 ω係数 平均値 標準 偏差 論理 的 思 考 への 自 覚 探求心 客観性 証拠の 重視 自己評価 目標選択 肯定的 注目 否定的 注目 論理的思考への自覚 .74 .79 2.64 0.74 ― 探求心 .73 .78 3.79 0.67 .14 ― 客観性 .75 .79 3.56 0.64 .46 ** .43 ** ― 証拠の重視 .55 .74 3.33 0.77 .38 ** .23 ** .37 ** ― 自己評価 .76 .82 2.62 0.53 .31 ** .24 ** .31 ** .11 ― 目標選択 .88 .91 2.18 0.67 .32 ** .24 ** .25 ** .10 .57 ** ― 肯定的注目 .87 .90 2.48 1.09 .03 .19 * .14 .02 .12 .03 ― 否定的注目 .80 .84 2.04 0.97 .12 ― .05 .05 .08 .13 .18 * ― .20 ** ― 当惑 .77 .86 2.93 1.15 ― .11 ― .06 ― .05 .02 ― .01 .00 .03 .45 * p < .05 ,* * p < .01 T able 2 クリティカル・シンキング,自己効力感,感情的反応と行動的反応の相関係数 平均 値 標準 偏差 肯定 否定 当惑 論理的 思考への 自覚 探求心 客観性 証拠の 重視 自己 評価 目標 選択 専門家 の指摘 見なかった(聞かなかった)ことにする そうなのだろうと事実(結果)を受け入れる 適性判定の仕方について調べようとする それま で の 自 分 の 認 識 を考え直 してみ よ う と す る 自分の理解が不足していたと思う 自分(自分の考え)の新たな可能性を考える 参考情報としてとりあえず頭に残しておく 気にしないことにする 現実(事実)として納得する それに対する判断を保留する それ(その事実)を受け入れない あらためて自分の判断を大切にしようと思う 自分の考えを変えようと思う これまで自分が間違っていたのだろうと思う 自分 の 考 え と な ぜ 齟 齬 ( そ ご ) が 生 じたのかを考え る ひとつの事例に過ぎないとして軽視する 2.26 2.59 2.13 2.49 2.26 2.97 3.30 2.62 2.51 2.84 2.10 2.80 1.98 1.66 2.67 2.66 0.92 0.83 0.99 0.85 0.85 0.71 0.62 0.83 0.81 0.80 0.79 0.70 0.70 0.72 0.89 0.76 ― .29 .24 ―.02 .37 .21 .47 .23 ―.35 .24 ―.12 ―.33 ―.08 .20 .12 .10 ―.25 ** ** ** * ** ** ** ** ** * ** .25 ―.09 .21 .17 .22 ―.11 ―.04 .19 ―.15 .13 .35 .08 .06 .27 .26 .00 ** ** * ** * ** ** ** .05 .23 .09 .20 .30 .04 .11 ―.04 .13 .04 .08 .11 .08 .32 .16 ―.22 ** * ** ** ** .02 .00 .08 .06 ―.14 .17 .06 .03 .08 .16― ―.03 ―.15 ―.08 ―.04 .12 ―.02 * .02 ―.13 .16 .16 .00 .22 .09 ―.04 .16― ―.09 .05 .14 ―.10 ―.16 .31 ―.02 ** ** .01 ―.09 .15 .12 .02 .33 .11 .01 .03 ―.12 ―.03 .10 ―.04 ―.04 .27 .02 ** ** ― .09 ―.05 .26 .07 .09 .19 .16 ―.06 .05 ―.04 ―.07 .01 ―.06 .05 .21 ―.05 ** * ** .00 .08 ―.09 .33 .14 .28 .05 .07 .12 ―.22 ―.12 .25 .10 .05 .24 ―.09 ** ** ** ** ** .05 .02 ―.07 .17 .08 .10 ―.05 .04 ―.03 ―.18 .02 .11 .12 .11 .16 .06 * * ● ● ○ ● ○ ● ● ● ● ● ● ○ ● 専門家の指摘欄の●は有意に選択されなかった項目,○は選択された項目を示す(浦上, 2017 より) * p <. 05 ,* * p < .01
と「目標選択」では,「自己評価」の方が行動的反応との関連が強いようである。行動的反応項目 からみると,「自分(自分の考え)の新たな可能性を考える」および「自分の考えとなぜ齟齬(そご) が生じたのかを考える」は多くの因子との間に有意な関連性が認められる。ところが,半数を超え る 10 の項目はいずれの因子とも有意な相関係数が認められなかった。批判的思考および自己効力 感は,行動的反応全般にわたって関連しているのではなく,特定の側面が特定の行動と関連してい るといえるだろう。 考 察 本研究は,浦上(2017)による先行研究をふまえ,アセスメント結果の利用と批判的思考,自己 効力感の 2 つの心理変数との関連を検討することを目的とした。適性検査の結果として「自分に合 わないと感じる職業のリストを手にした場面」(否定場面)を提示し,これらの 2 変数と感情的反応, 行動的反応との関連を検討した。以下では,感情的,行動的の 2 つの変数,批判的思考および自己 効力感の計 4 つの変数の関係について概観し,それをふまえて批判的思考,自己効力感が自己理解 の進展に与える影響について検討する。 まず 2 つの反応変数と,批判的思考および自己効力感の関連についてである。本研究では,批判 的思考および自己効力感は,反応変数に影響を与えるものと仮定している。また感情的反応と行動 的反応については,行動的反応が感情的反応に影響するという因果関係の仮定は難しいであろう。 その逆,すなわち感情的反応が行動的反応に影響する,もしくは共変関係と考えることが適当とい えるだろう。 以上のような関係についての観点をもちつつ結果を検討する。まず批判的思考と自己効力感は異 なる概念ではあるものの,「証拠の重視」因子を除けば,相関係数で .20 から .30 程度の弱い相関関 係にあった。両概念ともに行動に影響する要因であるところから,両者の間に弱い正の相関が認め られたと考えられる。ただし「証拠の重視」と自己効力感との間には有意な関連が認められなかっ た。「証拠の重視」因子の特徴は,態度を測定する批判的志向態度尺度の中でも,批判的に考える 際の材料に焦点が当てられている点にあるといえるだろう。この特徴が,自己効力感との関連性の 相違を生み出しているのではないだろうか。 次に,感情的反応と行動的反応の関係について検討する。浦上(2017)は,肯定的注目感情は結 果を受け入れ考えることと,否定的注目感情は結果を拒絶することとの関連が強かったことを報告 し,認知的不協和の考え方などから当然の結果ともいえると指摘している。本研究でも同様な傾向 が認められたといえるが,否定的注目感情と行動的反応との関連性は先行研究とは若干異なってい るといえるだろう。浦上(2017)の結果では,先に紹介したように否定的注目感情は結果を拒絶す ることと関連しているところに特徴がある。しかし本研究では,「自分の考えとなぜ齟齬(そご) が生じたのかを考える」との間など,その結果から思考を進めていこうとする行動との有意な関連 も認められた。浦上(2017)と本研究では設定された場面数に違いがある。このような調査方法上 の差異が結果における差を生じさせた可能性も考えられるが,論理的説明は難しい。否定的注目感 情の機能についてはさらに検討する必要があろう。 最後に,反応と批判的思考,自己効力感との関連について検討する。感情的反応と批判的思考, 自己効力感との関連は,Table 1 に示されるようにほとんど独立的であるといえるだろう。行動的
反応との関連は,Table 2 のようにいくつかの有意な関連が認められた。先の検討もふまえると,4 つの変数間の構造は,行動的反応に,感情的反応と批判的思考,自己効力感がそれぞれ影響してい ると考えることが適当ではないだろうか。さらにその関連は,感情的反応,特に肯定的感情反応が 最も多くの行動的反応と関連している。批判的思考と自己効力感は,感情反応にはほとんど影響せ ず,直接的に行動的反応と関連している。ただし,その関連は全体的なものではなく,特定の因子 が特定の行動と関連しているようであった。 これらの関連についてさらに検討するために,浦上(2017)が見出している,キャリア教育の専 門家が考える自己理解の進展につながりやすい反応の結果を Table 2 に加える。肯定的注目は多く の行動的反応項目との間に有意な関連が認められているが,専門家の判断の別との間に一定した関 連を認めにくい。換言すれば,肯定的注目の程度が高いことは,自己理解の進展につながりやすい であろう反応とも関連するが,つながりやすいとはいえない行動反応とも関連している。このよう な関連は否定的注目,困惑でも同様といえよう。以上のような様相から,感情的反応は,自己理解 の進展につながりやすいか否かを問わず,さまざまな行動的反応と関連するといえるだろう。 他方,批判的思考や自己効力感との関連は特徴的である。専門家が自己理解の進展につながりや すいと有意に判断した行動的反応項目は 3 つあったが,この 3 つはすべて批判的思考や自己効力感 との有意な関連が認められた項目であった。また,専門家の中でも判断が分かれた項目が 3 つあっ たが,これらも批判的思考や自己効力感の中のひとつの因子とは有意な相関が認められている。そ れ以外の項目,すなわち専門家が自己理解の進展につながりやすいと判断しない項目では,批判的 思考や自己効力感との有意な相関は認められなかった。これらの有意な関連はいずれも正の係数で あり,批判的思考や自己効力感がそれらの行動を促進するであろうことが示された。 中でも,相対的に高い係数が認められているのは,批判的思考の「探求心」「客観性」と自己効 力感の「自己評価」である。平山・楠見(2004)は,「探究心」が各種のバイアスを避け,信念と 矛盾した情報の受け入れと関連していることを見出している。また「探求心」と「客観性」につい ては,楠見・松田(2007)によって「主体的情報収集」に影響する要因であることが明らかにされ ている。この楠見・松田(2007)は,批判的思考態度とメディア・リテラシーとの関連を検討した 研究であるが,「主体的情報収集」の項目は後藤(2005)を参照したものであり,後藤はそれを「情 報を漫然と受容するだけではなく,自ら進んで情報を求めたり,疑問点があったら複数のメディア にあたって情報を収集したりする主体性」としている。アセスメントの結果を無視したり,既有の 自己認識と置きかえるのではなく,そこから考えようとする姿勢に「探求心」「客観性」の影響が 認められたことは,このような先行研究と類似した結果といえるだろう。 また自己効力感については,「自己評価」が,キャリア教育の専門家が考える自己理解の進展につ ながりやすい行動との関連が明確であった。項目内容的に類似性が認められる「目標選択」にくらべ, その関連は強いといえる。これは自己効力感概念の課題固有性に合致した結果といえるだろう。 以上のように,批判的思考や自己効力感,中でも「探求心」「客観性」「証拠の重視」「自己評価」 の各因子は,自己理解の進展につながり得ると考えられる行動と関連しており,それらが高い場合 にアセスメント結果は自己理解の進展につながりやすいといえるであろう。特に自己理解行動に対 する自己効力感が高いことは,そのような行動を導くと考えられる。これらの概念は,いずれも大 学教育においてその伸長が期待され実践されているものであり(たとえば荒木,1016;川瀬・辻・竹野・ 田中,2006 など),その成果はキャリア教育における自己理解の進展にもつながり得ると期待される。 ところが,批判的思考や自己効力感と有意な関連をもたなかった行動的反応も多い。批判的思考
などが自己理解の進展を促す行動を促進するなら,たとえば「見なかった(聞かなかった)ことに する」などとの間に有意な負の相関が認められてもおかしくないだろう。しかしながら,本研究で はそのような結果は認められなかった。すなわち,批判的思考や自己効力感が高くても,アセスメ ント結果を無視するなどのプロセスを経て均衡化に至ることが少なくなるわけではないだろう。批 判的思考や自己効力感が自己理解の進展につながる条件といったものがあるのかもしれない。さら なる検討が求められるといえよう。 引用文献 天谷祐子(2017).自我体験経験後の自己成長感に対する批判的思考態度・観点取得の寄与―大学生を対象とした 質問紙調査より―,人間文化研究, 28 ,1 ― 15. 荒木史代(2016).大学生の批判的思考の育成を目的とした心理教育の導入 福井工業大学研究紀要. 46 ,264 ― 271. Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change, Psychological Review , 84 , 191 ― 215. Crites, J. O. (1965). Measurement of vocational maturity in adolescence: I. Attitude test of the Vocational Development
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