Title 沖縄における産学連携の現状と将来 Author(s) 屋良, 秀夫 Citation 南方資源利用技術研究会 ニュースレター(35): 19-22 Issue Date 2002-04-15 URL http://hdl.handle.net/20.500.12001/17062 Rights 南方資源利用技術研究会
沖縄における産学連携の現状と将来
1 .はじめに 琉球大学工学部 屋 良 秀 夫 沖縄県は我が国の南西端に位置し、豊かな亜熱帯海洋性の気候風土や自然景観に恵ま れ、東南アジアとの架け橋として地理的文化的特性を持つなど、限りない可能性を持つ 地域となっている。 沖縄の経済は 3 K 経済と言われていて、すなわち、公共事業、観光、基地関連事業の 三つの Kに依存して成長してきたことを象徴的に表した言葉である。ところが、アジア における軍事的緊張の変化や観光需要の増加も決して楽観はできず、かつて沖縄経済を 支えてきた 3 K が今後とも成長の原動力となることを期待することは難しく、新たな経 済基盤を構築することが喫緊の課題となっている。 さらに、社会的経済的には、狭隆な市場等を背景に、第 3次産業編重の産業構造、高 い財政依存率度や失業率など、経済の自立化はなお道半ばであり、新たな沖縄振興策の もと、地域経済発展のため、県を上げて誠心誠意努力している状態である。 2.沖縄の産業構造 経済成長による沖縄経済の産業構造の変化と将来の予測を表1に示す。 1980年に製造 業の割合が 16.4%に対し、 1998年においては経済全体の9 %で全国平均約 26%よりか 表1 沖縄経済の産業構造(%) 沖 縄 国 1980 1990 1998 2000 2005 2010 1980 1998 3.9 3.1 2.4 2.:~ 2.1 2.0 :{.2 1.8 鉱業 0.4 0.4 0.4 0.3 O.:~ O.:~ 0..5 0.2 製造業計 16.4 9.0 9.0 8.7 8.6 8.7 25.1 2.5.9 食料晶 2.5 2.5 2.0 2.0 1.9 1.9 :{.9 2.5 パルプ・紙・紙加工品 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.7 0.6 石油・石炭 10.2 2.8 3.6 3.5 3.4 :{.6 1.5 0.8 窯業・土石 1.0 0.9 0.8 0.8 0.8 0.8 1.0 0.8 一次金属 0.3 0.2 0.2 0.2 O.:~ O.:{ :u 1.8 金属製品 0.7 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 1.:{ 1.4 機 械 ゆ0.1 0.2 0.2 0.2 0.1 0.1 7.0 12.2 その他製造業 1.4 1.4 1.2 1.2 1.2 1.2 6.0 5.8 建設 13.:~ 13.1 11.8 12.3 12.5 12.5 10.:~ 7.8 電気・ガス・水道 2.9 3.1 3.3 3.3 3.4 :l.4 :~.O :~ .:~ 卸売・小売 8.2 9.6 9.8 9.8 10.0 10.1 12.5 12.2 金融・保険 2.7 4.0 4.5 4.5 4.8 5.0 :{.7 5.0 不動産 11.6 10.1 9.5 9.5 9.6 9.6 10.7 11.9 運輸・通信 11.6 11.1 10.1 10.3 10.5 10.8 6.2 6.:{ サービス業 20.5 28.9 32.1 32.1 32.1 31.7 19.7 21..'i 教育・研究 6.2 7.7 7.7 7.:{ 6.8 6.4 その他公共サービス 4.0 7.1 9.2 9.4 9.5 9.0 対事業所サービス 4.0 5.1 5.2 5.2 .5.:{ .5.5 対個人サーピス 6.3 9.0 10.0 10.1 10.5 10.8 公務 7.6 7.1 6.8 6.6 6.1 5.7 5.1 :U.} 分類不明 1.0 0.5 0.3 0.2 0.2 0.1 国の値は l国民経済計算(平成12年版)」(経済企画庁)を用いた-19-なり低い率となって、沖縄の付加価値がいかに非製造業に集中しているかが分かる。特 徴的な産業として、建設業、運輸・通信、個人サービスなと'の分野が高いシェアーとな っている。 次に、沖縄県における産業別就業者数の推移を表2に示す。第3次産業に占める就業 者数は第 1次産業や第 2次産業よりかなり多くなっている。産業を支える製造業につい ては復帰の年とほとんど変わっていない。今後、経済の自立化をはかるためには製造業 のさらなる増加が望まれる。 表 2 産業別就業者数の推移(千人) 区 分 全 産 業 部 1次 産 業 Mτ15 ワ 次 l車 業 第 3 ; 欠 政 業 股林業 住設業 製造業 卸-小売業サービス来 n~l 利47.l'f- 364 66 63 76 43 33 222 91 89 48 360 61 57 76 45 31 224 90 83 49 360 56 52 79 51 28 226 93 80 50 376 61 58 78 50 28 幻5 98 84 51 388 60 57 81 52 29 247 107 90、 52 394 63 58 81 54 27 251 107 91 就 53 407 64 59 88 58 30 254 109 88 54 419 60 55 94 63 31 264 112 90 55 431 60 55 96 66 30 275 116 95 56 439 60 55 88 59 29 290 123 103 業 57 446 59 55 90 59 30 296 128 103 58 454 55 50 92 62 30 306 132 110 59 471 60 55 95 65 30 315 138 # 60 477 57 53 97 68 29 322 139 120 61 481 59 56 H9 66 33 322 137 120 62 494 61 57 101 68 32 331 139 124 63 503 60 55 100 70 30 342 144 133 数 平成元年 524 57 54 105 75 30 360 152 143 2 539 58 54 107 74 32 372 158 147 3 549 57 52 111 74 37 382 156 156 4 539 52 49 109 73 36 376 152 155 5 542 52 48 109 74 35 381 153 155 6 541 45 45 108 73 35 386 153 157 7 538 41 38 105 71 34 390 153 161 8 547 40 37 109 74 35 396 157 167 9 566 43 39 117 79 37 406 135 179 10 561 39
一
111 78 33 412 137 181 11 565 40 109n
32 416 135 185 3. 産学連携と T L O 長引く不況の中、企業においてはリストラや自前主義からアウトソーシングに動き出 した。大学を利用すれば開発費用や時間が削減できる。大学に研究委託費を支払っても 人件費を考えれば相当に安くなる。という考え方が濃くなっている。国にとっても大学 の技術を基にベンチャー企業を生み出せば、産業の活性化と雇用機会の創出が図られる。 このことから、産学連携の新しい取り組みがスタートした。 1970年代の大学紛争の当 時においては、産学協同はやり玉に挙がり、一時はタブー視されたことから考えると大 きな改革となろう。これまで社会との接点をある程度限定することによって、いわゆる 象牙の塔を維持してきた大学に対しでも変革を迫る社会的情勢になってきた。そこで、 大学における特定の研究成果の民間事業者への効率的移転促進を目的として、 1998年8 月文部省及び通商産業省により大学等技術移転促進法が施行された。さらに、 2000年4強化に関する施策の基本となる事項を定め、併せて産業技術力の強化を支援するための 措置を講ずることにより、我が国産業の持続的な発展を図り、もって国民生活の安定向 上及び国民経済の健全な発展に資することを目的としている。 近年、我が国の大学等に多くの研究資源、が集中しているにもかかわらず、その成果が 産業界において十分活用されてこなかったことが指摘されている。大学等から生じた研 究成果の産業界への技術移転を促進するシステムを法制化し、産業技術の向上と新規産 業の創出を図ることが必要との認識から、米国において成功を収めている大学と産業界 を結ひ令つける役割を果たす「技術移転事業Jを我が国においても早期に立ち上げること が必要とされた。さらに、技術移転機関 (TL 0 : Technology Licensinng Organization) の設立と技術移転機関から移転を受けた研究成果を活用して積極的な事業展開を行うベ ンチャー・中小企業への支援も行われるようになった。現在、我が国におけるT L O数 は承認TLOが
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機関、認定TLOが 1機関となっている(
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1.7.4)。 さて、沖縄県においては、前述したように第3次産業であるサービス業が全体の約 8 割を占め、製造業が少なく大企業がないためか技術者も少なく、そのポテンシャルも低 くなっていることより、産学連携は乏しいものとなっている。沖縄は産が弱いため、学 官主導で強い核を形成し、産を引き付け育てる手だてが必要と思われる。また、地域の 研究機関では若年研究者や技術者が不足しており、産官の連携を強めることからも、学 の存在は欠かせない。そのことからも先端大学や大学院大学の設置が望まれる。そして、 多様な発想ができる人材育成と自然を対象とした研究分野、すなわち沖縄の地の利を活 かした新素材やバイオ、環境、海洋及びこれらに関した情報分野が必要となろう。現在、 沖縄にはT L Oはないが、昨年琉球大学開学 50周年記念行事の一環として「産官学連 携・協力推進サミット会議Jが行われたのを契機に産官学連携と T L Oの機運が高まっ てきている。そこで、琉球大学では「技術移転機関設置検討委員会j ができ、資料収集 と勉強会が行われている。 ところで、地域振興は日本経済の競争力強化につながるため、地域でも技術の高度化 に対応する必要がある。しかし、小企業では多様な技術者の確保や高性能化する高価な 分析機器や測定機器などを導入することは困難なため、産官学の連携がますます必要に なってくる。 4. 琉球大学地域共同研究センター 当センターは、地域社会の技術開発及び技術教育の振興に寄与すると共に、大学の教 育研究の進展を図ることを目的として、平成 7年 4月に設立された。産業振興のための 科学技術等に関する教育研究の充実を行い、さらに科学技術相談、受託研究、共同研究 等への対応を推進している。主なる業務は、以下のようになっている。 (1)民間機関等との共同研究及び受託研究に関すること (2)民間機関等の技術者に対する技術教育の実施及び援助に関すること (3)民間機関等に対する学術情報の提供に関すること (4)民間機関等からの科学技術相談に関すること (5)学内及び他大学との共同研究に関すること (6)外国人研究者との共同研究に関すること (7)本学の学生に対する実践的教育及び研究指導に関すること-21-(8)その他、共同研究の推進に関すること さらに、設置されている主なる設備は (1)電子線表面形態解析装置 X線光電子分光装置、走査プローブ顕微鏡、 X線回折装置 (2)腐食強度材料試験装置 (3)自動制御二元載荷装置 付)その他測定装置 のようになっている。 次に、理念・目的を達成するために共同研究を中心に、以下のような研究活動も行っ ている。 (1)県工業技術センター、県工業連合会、 トロピカルテクノセンタ一等との連携 (2)各分野における先端技術に関する情報の伝達及び研究、センター主催の先端技術 講演会、センターの施設設備を利用しての高度技術研修 (3)客員教授を受け入れ、教育研究活動の活性化並びに講演会の開催 (4)企業からの技術的な問題点や疑問点等の問い合わせに対する適切な教員の紹介 。)共同研究員や受託研究員の受け入れ、最新情報や最先端技術の収集 5.今後の課題 沖縄が経済の自立化を目指すに当たり、インフラの整備が最重点的な課題となろう。 同時に雇用対策に必要な高生産性部門の拡充が望まれる。これまで述べてきたように、 沖縄には製造業が少なく技術者も少ない。だからこそ大学や公設研究機関を活用し、ベ ンチャービジネスを立ち上げる必要があろう。そのために、産学連携を推進すべきでは ないか。大学はいつでも受け入れる体制をもっている。大学においても、一層の人材育 成や施設設備の充実を図らなければならないものと考える。 6. おわりに 「沖縄における産学連携の現状と将来jということで、産業構造や産学連携と T L O、 琉球大学地域共同研究センター紹介と役割などについて述べた。 最後に、県民一人一人が知恵を出しあい、互いに協力して沖縄の経済の発展につなが ることを切に望む一人である。