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2018, JAPT石油技術協会誌 第 83 巻 第 6 号 (平成 30 年 11 月)442 ∼ 449 頁 Journal of the Japanese Association for Petroleum Technology
Vol. 83, No. 6(Nov., 2018)pp. 442∼449
講 演
Lecture
1. は じ め に
石油開発において,原油生産量の極大化や開発コストの
削減は長年の課題である。Enhanced oil recovery(EOR)/
improved oil recovery(IOR)と呼ばれるさまざまな原油増 進回収手法が多数の実油田に適用されているが,近年はそ の適用が厳しい環境が続いている。1 つは原油価格の低迷 である。原油価格は2000 年代に入ると上昇トレンドとな り,2011 年から 2014 年にかけては 1 バレル 100 ドルの高 水準となった。しかし,シェールオイルなど非在来型油田 の開発が活発化し供給過剰となった2015 年以降は急激に 低下し,一時期30 ドルを割りこむ水準にまで低迷した。 現在は70 ドル付近まで再上昇しているものの容易に EOR が適用できる水準とは言いがたい。もう1 つは開発コスト の上昇である。開発対象は在来型油田から非在来型油田へ 移行しつつあるが,在来型油田とは異なり,重質油やオイ
ルサンドは原油流動性改善のためにsteam assisted gravity
drainage(SAGD)などの熱攻法,また,シェールガス, オイルは低浸透性の貯留層であり,浸透性改善のためにフ ラクチャリングなどの坑井刺激法を適用するなど追加の作 業が必要となる。 したがって,厳しい油田開発環境にも対応できる,より 効率的かつ経済的な石油開発手法が求められるが,新規 EOR 手法として,近年さまざまな産業分野で実用化が進 んでいるマイクロバブル技術に注目した。
2. マイクロバブルとは
2.1 マイクロバブル技術と実用例 マイクロバブルは,その名称のとおりマイクロサイズの 気泡であり,さらに微小なナノサイズの気泡(ウルトラファ インバブル)と合わせてファインバブルとも呼ばれている。 マイクロバブルを利用した技術は1980 年代から我が国をマイクロバブル技術の
EOR 適用可能性
*,‡上田 良
**,†・海藤 佑太郎
**・中川 和則
**・中野 正則
**・薛 自求
*** (Received July 31, 2018;accepted September 25, 2018)The potential of application of micro bubble technology to EOR
Ryo Ueda, Yutaro Kaito, Kazunori Nakagawa, Masanori Nakano and Xue Ziqiu
Abstract: Enhanced oil recovery(EOR)and improved oil recovery(IOR)technologies have been applied to
various oil and gas fields for many years. However, the environment for EOR/IOR has been severe in low oil price and increase of development cost and more effective and economical EOR technology is expected. We focused the application of micro bubble as cutting-edge EOR technology.
Micro bubble technology has been applied to various industries as medical, agriculture and environment fields. And micro bubble has some characteristics in relative to the effect of EOR such as improvement of sweep efficiency and oil density and viscosity.
We have studied about the efficiency of micro bubble technology and its mechanism from laboratory test and flow simulation. We evaluated the improvement of the sweep efficiency, solubility to oil and oil recovery by micro bubble injection from core flooding test which was one of the laboratory tests and it was indicated that the capillary pressure affected the injection area from flow simulation.
We expect micro bubble technology will become useful as new EOR technology from our study.
Keywords: micro bubble, EOR, carbon dioxide
* 平成 30 年 6 月 14 日,平成 30 年度石油技術協会春季講演会開発生 産部門シンポジウム「貯留層の可能性を探る挑戦∼更なる油ガスの 回収を目指して」で講演 This paper was presented at the 2018 JAPT Development and Production Technology Symposium entitled Challenges to the reservoir potential / Seeking more oil and gas held in Niigata, Japan, June 14, 2018.
** 石油資源開発㈱ Japan Petroleum Exploration Co., Ltd.
*** 公益財団法人 地球環境産業技術研究機構 Research Institute of Inno-vative Technology for the Earth
† Corresponding author:E-Mail: [email protected]
‡ 講演時タイトル「EOR におけるマイクロバブル技術の適用可能性」 から改題
長促進などマイクロバブル技術の実用的な効果事例が周知 されるにつれ,医療・農業・環境などさまざまな産業分野 での適用が急速に拡大した(大成ら,2002)。実用化の拡 大に合わせ,マイクロバブルの特性やメカニズム研究など 技術的研究も進められているが,解明できていない課題も 数多くあり,実用化が先行している技術と言える。 マイクロバブルの実用例は,医療分野ではウィルス,バ クテリアの殺菌や除菌,環境分野では汚泥・ヘドロの浄化, 農業・水産業分野では野菜や魚介類の成長促進,工業分野 では燃料特性改善や汚染物質除去など,分野や用途も多岐 にわたる。また,最近は風呂や洗濯機など身近な家電にも マイクロバブル技術が使われるようになってきている。こ れらのマイクロバブル技術の実用例を見ると,EOR/IOR 技術とも共通点が見られる。例えば,洗浄や殺菌など何か を除去する目的でマイクロバブルは使用されているが, EOR/IOR は油層の多孔質媒体から原油を除去する技術で ある。また,燃料特性改善はEOR/IOR での原油特性改善 にも通じるものであり,EOR/IOR あるいは CO2 capture,
utilization and storage(CCUS)といった石油開発技術へも 適用の可能性が期待される。 2.2 マイクロバブルの特徴 マイクロバブルは,水の中で発生させると白濁するなど 通常の気泡とは見た目にも異なり(図1),マイクロバブ ル特有の性質を持っている。その中からEOR/IOR 効果と の関連が期待される特徴を中心に紹介する。 2.2.1 気泡径 EOR/IOR でガス攻法を適用する際,貯留層岩石は多孔 質媒体であるため,通常の方法でCO2など原油とは異な る流体を圧入すると,孔隙が狭い領域でCO2などの圧入 流体と原油などの孔隙流体が接触した時に,毛細管圧力が 圧入の抵抗となり圧入領域が制限される。一方,マイクロ (図2)。標準的な砂岩であるベレア砂岩は孔径分布(図 3) から見ると,直径10 μm 程度が主要な孔隙径であり,マ イクロバブルの気泡径と重複している。このことは,図4 に示すイメージ図のようにマイクロバブルでは主要孔隙へ より圧入流体が浸入しやすくなる可能性を示唆しており, 主要孔隙を中心とした原油掃攻領域の拡大につながること が期待される。 図1 マイクロバブル発生の様子 図2 気泡の種類 図3 ベレア砂岩孔径分布 図4 通常圧入とマイクロバブル(MB)圧入時の孔隙 内流動イメージ
2.2.2 上昇速度 気泡径と上昇速度には次式のとおりストークスの法則 が成り立ち,上昇速度は気泡径の2 乗に比例する(高橋, 2006) (図5)。 例えば,半径(r )が 1 mm の気泡では上昇速度が 560 mm/s と浮力による移動が無視できない速度であるが,10 μm のマイクロバブルの上昇速度は 1/10,000 の 0.056 mm/ s と非常にゆっくりとなる。このことは,ガス圧入の弱点 である浮力の影響をマイクロバブルでは大幅に軽減できる ことを示しており,垂直方向の原油掃攻効率の改善につな がることが期待される(図6)。 2.2.3 溶解性 気体の溶解度は次式に示すヘンリーの式より気体の分圧 に比例する。 気泡に当てはめると,気体の分圧はその内部圧力にあた るが,気泡の内部圧力は次式に示すYoung-Laplace の式か ら求められる。 したがって,気泡の溶解度は気泡径に反比例することが 分かる。ガス攻法ではEOR/IOR 効果の 1 つとして原油へ のガス溶解による原油特性(密度,粘度)改善を目的とし ているが,マイクロバブルでは通常のミリメートル単位の 気泡径より1/10 ∼ 1/1,000 オーダーで小さくなることか ら,マイクロバブルではCO2などの圧入ガスの原油への 溶解が促進されることにより,原油特性の改善,特に粘性 低下が起こりやすくなり原油の易動度改善が期待される。 2.2.4 界面への影響 界面への影響に関する研究もいくつか報告されている。 1 つは,蒸留水と比べマイクロバブルを水中にバブリング させた水では,界面張力が73 dyn/cm から 53 dyn/cm ま で低下する研究結果である(図7)(氷室,2015)。この結 果を見ると,水攻法の水にマイクロバブルを含ませること により,原油と圧入水との界面張力を低下させ,原油回収 率を向上させる可能性が期待される。もう1 つはマイクロ バブルが界面活性剤を吸着する性質を持つ研究結果であ る。この現象は上記で示したマイクロバブルの掃攻効率改 善との相乗効果で界面活性剤がマイクロバブルとともに広 (ρp−ρf) vs 2rs g = (1) 9η 図5 気泡径と気泡上昇速度の関係 図6 マイクロバブル(MB)圧入での原油掃攻イメージ kpA [A]= (2) pA P 2σ = + (3) r 図7 マイクロバブルによる蒸留水の表面張力低下 図8 蒸留水中でのマイクロバブルのゼータ電位
る。また,界面活性剤が有機物である観点で現象を見ると, マイクロバブルが油層中の原油を引き付ける効果を有して いるともいえる。 2.2.5 表面電荷 これまでのようにEOR/IOR への効果に直接関係する訳 ではないが,マイクロバブルの特徴として表面電荷を有し ている点が挙げられる。マイクロバブルのゼータ電位を測 定すると,中性の溶媒中では−30 ∼−40 mV の負の電圧 を示す(図8)(高橋,2006)。このように気泡周りに電荷 を有しているため,通常の気泡と比べマイクロバブルでは 気泡同士の結合が起こりにくいと言われており,マイクロ バブルとしての維持性が向上し,効果を発揮しやすいと考 えられる。
3. EOR 適用可能性検討
前章で示したとおりマイクロバブルの特性には増油効果 につながるものもあり,EOR/IOR 技術としての適用可能 性が期待される。本技術を新規EOR/IOR 技術として確立 するためには,有効性と実用化の検討を進めることが重要 であり,有効性検討ではマイクロバブル効果の検証および メカニズム検討,実用化検討では圧入手法や装置,フィー ルド試験の策定を課題としている。本講演では,有効性検 討の研究成果の一部を紹介する。 3.1 マイクロバブルの効果検証 マイクロバブルの効果検証は①掃攻領域,②溶解性, ③増油効果に注目して実施した。検証手法はEOR/IOR やCCS(CO2 capture and storage)を模擬したコアフラッド実
験であり,概念図を図9 に示す。マイクロバブルはマイク ロサイズの孔隙が多数存在する特殊フィルターを圧入流体 が通過する時に発生する。特殊フィルターをコアの上流側 にコアと密着するようにセットし,コアおよびフィルター 内を初期貯留層流体(原油,ブライン)で飽和した。貯留 層を想定した温度(40℃),圧力(10 MPa)で安定させた 後,圧入流体(CO2)をフィルター側から圧入した。実験 時のCO2は超臨界状態である。コア下流からは圧入CO2 およびCO2で掃攻された貯留層流体が排出され,圧入量, 排出量の物質収支から飽和率,原油回収率を評価した。ま た,一部の実験ではX 線 CT 装置を使用してコア内の飽和 率分布の計測も実施した。 3.1.1 掃攻領域 実験はCO2−水系で通常の圧入法とマイクロバブルでの
圧入で比較を行った(Xue et al., 2014, Xue, 2015, Xue et al., 2014, Koide, 2014, Xue et al., 2009)。図 10 に CO2圧入時の
CO2飽和率分布の変化を示す。0.045 PV 圧入時では,通常 圧入ではコア出口(右側)までCO2が圧入されているが, マイクロバブル圧入ではコアの半分までである。その後, 0.68 Pore Volume(PV),8.18 PV と圧入量が増えるにつれ て圧入領域が拡大するが,マイクロバブル圧入ではCO2 圧入領域がより拡大する様子が確認できる。また,平均 CO2飽和率も通常圧入で30%がマイクロバブル圧入では 40%と増加している。また,マイクロバブル圧入の CO2 飽和率拡大領域は,低浸透率領域と推定され,マイクロバ ブル圧入では特に低浸透率領域の掃攻効率が向上すること が確認された。 3.1.2 圧入距離 長さが7 cm と 30 cm のベレア砂岩コアを使用し,CO2− 水系で通常の圧入法とマイクロバブルでの圧入で比較を 行った。コア性状を表1 に,実験結果を表 2 にそれぞれ示 す。7cm コアでは,CO2飽和率が通常圧入で17.1%,マイ クロバブル圧入で21.0%とマイクロバブル圧入で+3.9% の増加,通常圧入に対する増加度で22.8%であり,本実験 でもマイクロバブル圧入での圧入領域の増加が確認され た。さらに違いが見られたのはCO2の水への溶解量も含 んだCO2貯留量であり,増加度で44.4%と CO2飽和率の 増加度を上回るものであった。この結果は,マイクロバブ ルでの溶解促進効果を示唆している。30 cm のコアでも, 図9 コアフラッド実験 概念図 図10 コアフラッド実験での CO2飽和率分布
CO2飽和率が通常圧入で16.3%,マイクロバブル圧入で 18.3%とマイクロバブル圧入で+2.0%の増加,通常圧入に 対する増加度で12.3%,CO2貯留量も増加度で24.3%と 7 cm コアと同様にマイクロバブル圧入の効果が確認された。 3.1.3 増油効果 本実験は先の2 つとは異なり,CO2−油系で通常の圧入 法とマイクロバブルでの圧入で比較を行った。実油田から 採取したコアを直径3.5 cm,長さ 8.0 cm の円柱状に成形し, プラグコアとして使用した。砂岩ではあるが,ベレア砂岩 とは異なり層状になっており垂直方向の不均質性が高い。 表3 にコア性状を,図 11 に X 線 CT 装置で測定したコア 断面図を示す。なお,同じ油田のコア分析結果から,孔隙 率が高い領域は浸透率が高い領域であることが示されてい る。油はノルマルデカンを使用した。初期油層状態のコア にCO2を圧入し,飽和率分布や油回収率を評価した。実 験終了時(3.07PV)の油飽和率分布を図 12 に,実験時の 油回収率変化を図13 にそれぞれ示す。孔隙率の高い領域 に優先的にCO2が圧入され油飽和率が低くなっているの は,通常圧入,マイクロバブル圧入いずれにも共通してい る。しかしながら,マイクロバブル圧入では孔隙率の低い 領域にも油飽和率の低い領域が拡大しており,油回収率も 通常圧入で77.6%,マイクロバブル圧入で 93.6%と+16% の大幅な増油効果が確認された。 3.2 メカニズム検討 コアフラッド実験から掃攻領域の拡大や油回収率の向上 など原油増進回収に対するマイクロバブル圧入効果が確認 されたが,これらのメカニズムを検討するため,コアフ ラッド実験を基にしたシミュレーションモデルを構築し, シミュレーションからマイクロバブル圧入効果を示す因子 の特定を試みた。 3.2.1 因子の感度分析 最初に,シミュレーションモデルを使用して,因子の感 度分析を実施した(上田,2018)。モデルは 3.1.3 で示した 増油効果検証でのコアフラッド実験を基に構築している。 X 線 CT 装置の測定結果を基に評価したコア内の孔隙率分 布を図14 にそれぞれ示す。浸透率は同じ実油田のコア分 表2 コアフラッド実験結果 試料No. CO通常2 飽和率 @ 実験終了時 CO2 貯留量 @ 実験終了時 % MB% MB/ 通常% 通常 L MBL MB/ 通常% B-1 17.1 21.0 122.8 2.14 3.09 144.4 B-2 16.3 18.3 112.3 4.78 5.94 124.3 表1 コア性状(ベレア砂岩) 試料 No. 長さcm 直径cm 孔隙率% 空気浸透率md B-1 7.0 3.48 20.4 304 B-2 28.8 3.5 19.7 245 図11 実油田コアの孔隙率分布 (X 線 CT 画像) 表3 コア性状(実油田コア) 試料 No. 長さcm 直径cm 孔隙率% 空気浸透率md S-1 7.985 3.48 30.94 1.62 図12 CO2飽和率分布 (CO2−油系コアフラッド)
した。 マイクロバブルの特徴や圧入効果を考慮し,毛細管圧力, 油粘性変化(溶解性),相対浸透率,密度を対象因子とした。 このうち感度分析で大きな変化が見られた毛細管圧力と油 粘性変化(溶解性)について述べる。 図15 感度分析(毛細管圧力)での油飽和率分布(左:ベースケース,中央:0.1 倍,右:毛細管圧力なし) 図16 コアフラッド実験 CO2飽和率分布(30 cm コア,CO2−水系) 図13 油回収率変化 表4 感度分析結果(油回収率) 因子 ケース 油回収率 % ベース(Pc=base, μo=0.87, ρCO2 =0.63 g/cm3) 75.1 毛細管圧力:Pc ベース×0.10 78.679.6 油粘度:μ(o mPa・s) 0.1450.3 83.991.1 図14 シミュレーションでの孔隙率分布
毛 細 管 圧 力 は ベ ー ス の 毛 細 管 圧 力 曲 線 と ベ ー ス の 1/10,および毛細管圧力がゼロの 3 ケースで感度分析を 行った。それぞれのケースの油飽和率分布を図15 に示す。 ベースケースではコアフラッド実験結果と同様に浸透率が 高い領域は油回収率が高く,低い領域は油回収率が低いと 明確に表れたのに対し,毛細管圧力がゼロのケースでは ベースケースで油の掃攻が低い領域にもCO2が圧入,油 が掃攻する結果であった。しかしながら油回収率には顕著 な差異は見られなかった(表4)。 油粘性変化は,ノルマルデカンの粘度(0.87 mPa・s) をベースとして,1/3 のケース(0.3 mPa・s),1/6 のケー ス(0.145 mPa・s)と 3 ケースで感度分析を行った。圧入 領域は3 つのケースでコアフラッド実験結果と同様の傾向 を示したが,油回収率には顕著な違いが見られ,ベースケー スで75.1%であった油回収率は 1/3 のケースで 83.9%, 1/6 のケースでは 91.1%とそれぞれ+ 8.8%,+16%増加 した(表4)。 これらの感度分析から,マイクロバブルでの圧入領域拡 大には毛細管圧力が,油回収率増加には油粘性の変化,す なわち油へのCO2溶解性が関係している可能性が示唆さ れた。 3.2.2 因子の検討 感度分析の結果から,まずマイクロバブルでの圧入領域 拡大と毛細管圧力との関係に注目し,検討を行った。検討 方法は,フローシミュレーションでCO2−水系コアフラッ ド実験結果を基にシミュレーションモデルを構築し,毛細 管圧力を因子としてシミュレーションでの圧入領域再現を 試みた。ベースとしたコアフラッド実験は長さ30 cm のベ レア砂岩を使用し,層状となっている。実験終了時のCO2 飽和率分布を図16 に示す。層状の不均質性の影響が大き く,浸透性の良い領域に優先的に圧入され浮力の影響は軽 微なものとなっている。通常圧入とマイクロバブル圧入と で圧入領域が異なったのはコア上部であり,マイクロバブ ルではより圧入領域が広がっている。この違いに注目し, メカニズム検討を進めた。モデルは三次元でX 線 CT 装置 での測定結果から算出した孔隙率分布を反映させている。 毛細管圧力曲線の算出は,まず,通常圧入とマイクロバ ブル圧入とで圧入領域に顕著な差異が見られたコア上部と あまり見られなかったコア下部との2 つに岩相領域を分け た。次にX 線 CT 装置での測定結果から算出した CO2飽 和率分布をグリッド単位に変換し,各グリッドでの毛細管 圧力を算出した。最後に2 つの岩相領域それぞれの毛細管 圧力データから近似曲線を求め,毛細管圧力曲線とした(図 17)。得られた毛細管圧力曲線を比較すると,圧入領域に 差異があったコア上部で通常圧入に比べマイクロバブル圧 入時の毛細管圧力は低く,最大27%低下していた。この 毛細管圧力曲線を入力値としてシミュレーションを実施し た結果が図18 である。実験結果と同様にコア上部での圧 入領域の違いが表現され,毛細管圧力がマイクロバブル圧 入での圧入領域拡大を示す因子の1 つである可能性を示し ている。また,メカニズムであるが,1 つには 2.2.1 で述 べた気泡径の大きさに起因し,ある程度の大きさの孔隙で はマイクロバブル化することで抵抗が軽減されるため,も う1 つには 2.2.4 で述べた界面への影響に起因し,マイク ロバブルを含んだ水相ではCO2相との界面張力が低下す るためと推測されるが,いずれも毛細管圧力と相関があり, シミュレーション結果とも整合性がある。
4. ま と め
新規EOR/IOR 技術としてのマイクロバブルの適用可能 性について述べてきたが,まとめると以下のとおりである。 ① マイクロバブルは大きさや上昇速度,溶解性など,掃 攻効率向上や原油特性改善などのEOR/IOR 効果と結 図17 毛細管圧力曲線 図18 シミュレーション結果② CO2-EOR や CCS を模擬したコアフラッド実験から, 圧入領域の拡大や溶解促進効果,増油効果などのマイ クロバブル圧入効果を確認した。 ③ コアフラッド実験を基にしたシミュレーションから, マイクロバブル圧入効果を示す可能性がある因子とし て圧入領域には毛細管圧力,油回収率にはCO2溶解 による油粘性低下を推定し,実験結果とのマッチング による検証から,マイクロバブル圧入時には毛細管圧 力が低下することで掃攻効率が上昇することが示唆さ れた。 本研究の検討結果から,マイクロバブル技術のEOR へ の適用は十分に期待できると考える。今後,マイクロバブ ル技術を期待から現実のものとするために,下記の課題を 含めさらに研究を進めていく所存である。 ・ ラボからフィールドへのアップスケーリング ・ マイクロバブル効果のメカニズム解明 ・ 実用化手法の確立 謝 辞 本研究の一部は国立研究開発法人新エネルギー・産業技 術総合開発機構(NEDO)および経済産業省から二酸化炭 素技術研究組合が委託された「安全なCCS 実施のための CO2貯留技術の研究開発事業」の成果である。また,本研 究の基礎となるマイクロバブル技術は東京ガス株式会社と 公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)との共 同研究成果である。深く感謝いたします。
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