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境界を超えた「感性」の講義に対するアンケート調査第一報 : 全体像のカテゴリー分析から

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Academic year: 2021

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(1)Title. 境界を超えた「感性」の講義に対するアンケート調査第一報 : 全体像の カテゴリー分析から. Author(s). 大西, 洋; 舩岳, 紘行; 寅嶋, 静香. Citation. 北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編, 71(2): 141-147. Issue Date. 2021-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11728. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(人文科学・社会科学編)第71巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Humanities and Social Sciences)Vol. 71, No.2. 令 和 3 年 2 月 February, 2021. 境界を超えた「感性」の講義に対するアンケート調査第一報 ― 全体像のカテゴリー分析から ―. 大西 洋・舩岳 紘行・寅嶋 静香 北海道教育大学岩見沢校美術文化専攻. Self-Administered Questionnaire Survey For Lectures On  “Sensitivity” That Transcends Boundaries -First report ― Exploring From The Category Analysis ―. ONISHI Yo, FUNAOKA Hiroyuki and TORASHIMA Shizuka Department of Arts and Sports Culture, Iwamizawa Campus, Hokkaido University of Education. ABSTRACT The purpose of this research is to give what kind of impression the students received and of message they finally gave to the “Lecture of Sensitivity” conducted jointly by faculty members of the Department of Arts and Sports. It was to analyze, present the whole picture, and consider whether or not some thought or imagination was expressed about “Sensitivity”. The subjects were 196 students. In lectures, the final question item in the worksheet was “Write an impression based on learning from two fields that transcend boundaries.” Then, we tried a category analysis on this content and organized the message of students. As a result, three category classifications were clarified, and subcategories were further expressed from them. What all three subcategories have in common is that “after acquiring the opinions of people in other majors”. The impression was that he had learned from various angles, such as “the spread of thinking in response to the message of.” It is presumed that the lectures on the fusion of different fields of “Sensitivity” worked to contribute to the learning process by giving various benefits to the students. It was suggested that it may play a part in human development education with diverse values.. 141.

(3) Onishi, et al.. 1.はじめに 北海道教育大学岩見沢校では,1年生の学科共. といった本人の主観的感覚内の「知覚」を大事に した,いわゆる「主観と客観の相違・共通」を見 出す授業展開を行っている。. 通必須科目として「感性」という授業がカリキュ. 音楽文化専攻に至っては,音楽の歴史と共に育. ラム上組み込まれている。岩見沢校は,美術文化・. まれた「音楽の中の感性」に焦点をあて,時代背. 音楽文化・スポーツ文化・芸術・スポーツ文化ビ. 景と共に移り変わる「感性の変遷」や「熟練の音. ジネスという4専攻に分割され,この4専攻1年. 楽家にしか(おそらく)みいだされないであろう. 次に必修でこの授業を履修する。カリキュラムの. 感性」など,つまりは「知覚を通じた」雰囲気,. 中にこれが組み込まれた経緯は,岩見沢校の学科. 環境,印象表出を適宜解説している。. 再編に伴う流れからきており,芸術とスポーツの. 美術文化専攻では,「著名な画家の作品に対す. 文化を地域へ根差すという大学の主目的に合致し. る感性」 「同じイラストや見た際,個々で感じ方. た,4専攻が学ぶべき科目=「感じる心は芸術も. が異なるのは?」「広告媒体メッセージの伝え方. スポーツも共通の視点で」 ,として設置された背. と,それを見た側の受け取り側の感性」など, 「知. 景がある(このほかに, 「身体」「表現」も設置)。. 覚を介した印象」の表出を主体として講義を展開. そして,4専攻が共通に履修することで,幅広い. している。. 視野をリアルタイムで養うことができ,かつ多角. このように,芸術とスポーツという一見すると. 的なアプローチを見出す可能性を導くことができ. 共通点が不在のような印象をもたれやすいが,上. るという視点から, 「感性」の講義が設定された。. 述のように「知覚を通じた作業」であることは共. この「感性」であるが,そもそも感性とは,広. 通の視点である。さらには,その動作・運動遂行. 辞苑によると「外界の刺激に応じて感覚や知覚を. は,ほぼ同等のメカニズムなのである。. 生ずる感覚器官の感受性」 「物事を心に深く感じ. 例えば,音楽の楽器演奏とスポーツのパフォー. 取る働き」と記されている。つまりは,この感性. マンス遂行,さらには芸術領域の制作や絵画作業. は論理的能力という視点とは一線を介す,感覚的. 等は,すべて巧みな運動遂行が基盤となっている。. に物事をとらえる力,感覚を駆使した認識力,と. よって,随意運動下における神経制御メカニズム. いう形でとらえることができよう。. は,どちらも確実に成立する1)。さらには,その. 本講義は,2019年度より5名の教員によるオム. 身体活動が基盤となることから,様々な脳の領域. ニバス授業開講として成立している(スポーツ文. が使用され,かつ動作遂行に至るまでの経緯も,. 化専攻2名・音楽文化専攻1名・美術文化専攻2. ほぼ同等である(前運動野・大脳基底核・小脳で. 名) 。芸術系・スポーツ系の教員らが,其々の専. 企画→前頭前野にて微調整と実行への準備→運動. 門分野からこの「感性」というキーワードをベー. 野にて最終実行)。そしてそのことが,脳神経科. スに多様なテーマを取り上げ,専門性の高い授業. 学の分野によって年々明らかになっている2)。こ. 展開を行っていることが特徴の一つである。. の「運動・動作遂行による,作品・パフォーマン. 例えばスポーツ文化専攻では,あるボールゲー. スの仕上がり」という視点は,一生涯を健康に生. ムにおける巧みな動作のメカニズムや多彩な動き. きる,という観点からも「脳の様々なエリアの十. の中で生じる感覚野のメカニズムとその背景要因. 分な活用」に直結することから,有意義な情報提. などを伝えている。そして神経生理の分野や運動. 供であるといえる。. 学,バイオメカニクスの分野に至るまで,スポー. さらに,「感じる心」を司る脳領域も,芸術・. ツ科学の視点から幅広く「感性」を見出す講義を. スポーツ問わず同領域(大脳辺縁系や記憶野等の. 行っている。ここでは科学的な感覚野における解. 認知機能に関わる重要領域)である。「卓越した. 説的側面と,例えばボールを握ったときの感触,. 技術パフォーマンスを見た際に,どのように感じ. 142.

(4) Self-Administered Questionnaire Survey for Lectures on “Sensitivity”. 攻の分野(スポーツ・美術・音楽)の各教員が全 15回の授業を3回ずつ担当する。各3分野の専門 性を生かした「感性」というキーワードから,専 門領域内容を幅広く,多角的に「感性」をとらえ, そこへアプローチするという能力を身に着けるこ とが着地点(学習の目的)である。講義がおよそ 70分前後,ワークシートへ10~15分の記入時間を 設け,90分授業として成立させている。本研究対 象領域である「スポーツと美術分野の境界を超え た『感性』」は,3講義分設定し,感性の中のさ らなる細分化したテーマを定めた。以下,3講義 分の主たる内容を示す。. 表1.感性講義 授業計画(一部). ①「表情」を考える;表情をつかさどる表情筋と たか」 「素敵だ, すばらしい!」と感じる絵画には,. は何か?をはじめとし,表情が変化する筋肉の. どこにその『素敵さ』 『すばらしさ』が存在する. 運動の仕組み,そのメカニズムの解説などを行. のか」という視点を持つような体験は,専攻を超. う。そして,ある著名な画家が描いた有名な絵. えた,ある種の境界を超えた学びへと発展する可. 画の表情や,一般の方が記載した顔のイラスト. 能性が高い。. を見た印象について,抱いた印象や「何をこの. この「感性」の講義では,授業毎に各専攻の教. 人は考えているか(想像力の想起)」を記載する。. 員から提示されたテーマをもとに,受講学生が課. そして,その印象メッセージがなぜ表出したの. 題レポート(ワークシート)へ記入,最終的に各. か?についての理由を,考察し,まとめる。. 分野専攻の視点から, 「感性」の各講義によって. ②「共感」とは何かを考える;共感を司る脳領域. 見出された概念を,形成していくことが大目的と. 解説を最初に行い,この「共感」という感情が. なっている(表1.参照)。. 人間特有のものではないことが近年明らかに. 本研究では,感性の講義における,美術専攻と. なっていることを紹介しながら解説する。そし. スポーツ専攻の教員が協同で実施した, 「境界を. て,ある画家の描いた「メッセージ性の強いイ. 超えた感性の講義」に対し,受講学生がどのよう. ラスト」を見た際,そのイラストに対し,「共. な印象を受けたのか。さらに学生らが如何なる. 感できる・共感があまりできない・共感に値し. メッセージを最終的に残し, 「感性」についての. ない」に対する表出表現について,考察をまと. 思考や想像力等を表出したのかについてカテゴ. める。. リー分析を行い,全体像を提示及び考察すること. ③「ズレ」を感じる時とは?;スポーツ分野にお. を第一の目的とする。そして,それらの表出から. けるズレ=微妙にかわす・巧みさの中のフェイ. 3). 「異分野融合・境界」という,学際的研究 とし. ント,等を解説し,実際のスポーツ場面におけ. て捉えられているこの近年のエリア研究の,知見. るズレを動画にて紹介する。そして熟練者の巧. 集約貢献することを第二の目的とする。. みなズレ表現に対する印象を記載する。さらに, 美術分野における「ズレ」の感性に対する解説. 2.研究方法 1)授業形態概要 表1に授業計画の一部を示した。本講義は3専. とその感じた心の表出表現をまとめる。(各3 講義内容における詳細分析については,第二報 にて今後論じる予定である。) 各講義の流れはほぼ共通であり,以下のような. 143.

(5) Onishi, et al.. 構成にて実施された(2019年度)。. わる内容から,極端な乖離があるか否かを,客観. ・授業のめあて;目的と流れ。. 的立場から検討した上で,整理を行った。. ・スポーツ専攻から;スポーツ・運動科学分野に おける各テーマ(表情・共感・ズレ)の脳科学 領域における感情表出の仕組み,近年の研究動 向,動物と人間の異なり,スポーツならではの 事例報告,等を解説。 ・美術専攻から;専門分野におけるテーマに対す る解説と,その表出表現の解説。 ・各専攻所属学生に対し(数名ずつ),考察の発. 3.結 果 1)基本情報・回収率 本研究対象者の年齢は大学1~2年生であり, 18~19歳の学生がほぼ全体像を占めていた。また, 「境界を超えた2分野(スポーツ・美術)からの 学びを踏まえた,印象」についての記載がなかっ たもの,つまり「学びを踏まえていないもの」に. 表を依頼。 ・ワークシート記載。. 関しては除外をするものとした。よって,196名 中,27名を除いた169名が対象となった(完全回. 2)対象者. 収率;86.2%)。. 本研究の対象者は, 「感性」の講義を受講した1, 2年の各専攻学生196名であり,全てのワークシー. 2) 記載内容からのキーワード抽出(上位3項. ト記載がなされている学生のみを対象とした。こ. 目);カテゴリー分類への布石. こでのアンケートそのものの回収率は97%であっ. 本研究の対象者から得られたアンケート調査か. た。 学生へは,倫理的な配慮,すなわちアンケー. ら「最も多く表出されたワード」を抽出し,それ. ト結果が研究報告という形で明文化される可能性. らを列挙した。そのワードの数が多かった順に,. があること,個々人が特定できないような形で掲. その記載内容一例について,意味内容を汲んだ形. 載をすること, 実際の記載文字は掲載しないこと,. 式にし(最大限文書は残すが,個人情報保護の観. などの個人情報保護の観点を示した。. 点から,すべての記載はしない)箇条書きで記す (重複回答有)。. 3)分析方法. *1位;興味関心・楽しさ(119名:71%). 3講義全てにおいて,ワークシート内の最終質. 例). 問項目に, 「境界を超えた2分野(スポーツ・美術). 「楽しかった。他専攻の人の意見を聞き,共通項. からの学び踏まえた,印象を記載せよ」を設けた。. や異なりを探すことがとても面白い。」. そして, この内容におけるカテゴリー分析を試み,. 「大変興味深く,全く関係ない分野同士と思って. 対象者の語り内容を整理した分類4)及び意味内容. たが,予想は,いい意味で裏切られた。」. 5). の類似点からの分類 を行った。得られたデータ. 「おもしろかった。この絵に共感!という感情表. は,筆者ら及び言語分析の専門家である他1名が. 出に関して,実は複雑な脳メカニズムが存在して. 作成した。そして,各受講生のメッセージを,本. いるとは,なんとも興味深い学びだ。」. 研究テーマの「境界を超えた学び」について意味. 「純粋に,たった1つのテーマであっても,その. 内容を表す文章毎に区切り,その意味内容の類似. 内容が2つの分野から解説をされると,とても面. 性からカテゴリー分類した。さらにそこから,サ. 白いし,興味がわいてくる」. ブカテゴリーへと分類し,そのメッセージを質的. 「感性は奥が深い,と改めてスポーツ・美術分野. 帰納的に分析した。. から聞いて感じ,楽しい時間帯であった。」. 分析過程では,その信頼性及び妥当性確保のた め,筆者ら以外の専門家2名と共に,感性にまつ. 144. 「毎回3人の先生の感性講義が面白い。次は何が 出てくるか,と楽しみであった。」.

(6) Self-Administered Questionnaire Survey for Lectures on “Sensitivity”. *2位;発見・驚き(114名:68%). →サブカテゴリー;. 例). ・他専攻の意見表出に対する興味関心. 「まさか動物が共感しているとは!…写真の見方. ・異分野の融合と境界に対する興味関心. が今後もっと変わりそう!びっくりした!」. ・脳メカニズムなどの背景要因に対す興味関心. 「2つの専攻の先生から,新たな発見と,驚きに. *第二カテゴリー〈発見・驚き〉. 巡り合うことができました。」. →サブカテゴリー;. 「こんなに背景要因が複雑とは…。そして,何よ. ・(自身の)予測や予想との距離感. り境界線がほぼないことに,驚いた。」. ・異分野融合および境界との遭遇. 「他専攻の声をきけて,自分とは全く異なってお. ・他専攻と自身との表出表現比較. り,驚きの連続だった。違う分野を同時に学ぶこ. *第三カテゴリー〈新たな学び〉. とは, こんなに発見が重なるものかと感心した。」. →サブカテゴリー;. 「感性を色々な角度からみると,こんなにもいろ. ・異分野融合や境界における学びの獲得. んな学びがあるのか…と驚いた。」. ・喜びや具現化等の利益獲得. 「感性の学びは自分にとってターニングポイント. ・思考の広がりや創造力の獲得. になるかもしれない。新たな発見だった。なにし ろ,自分の美術分野がこんなに脳トレや運動に繋 がっているとは驚きだ。」 *3位;新たな学び(64名:38%). 4.考 察 本研究の対象者は,本学岩見沢校の学生1~2. 「知らなかったことを,異分野が混ざり合って学. 年生であり,「感性」の講義における,美術文化. べるのがいい。新たな学びになった。」. 専攻とスポーツ文化専攻の教員による協同開催. 「2つの分野からの新たな学びから,ちょっと得. の,「境界を超えた感性の講義」に対し,どのよ. をした気分でもあり,うれしい。」. うな印象を受けたのかについて,カテゴリー分析. 「他の専攻の人のメッセージは参考にもなるし,. を行いった。そして受講者にとって如何なる学び. 自分自身の思考の幅が広がった気がした。」. へと結びついたのか,を調査することであった。. 「なるほど,とぼんやり感じていたことが,すご. その結果,3つのカテゴリー分類が明示され,さ. く具体的になった。新しい学びを得た。」. らにそこからサブカテゴリーが3つずつ表出され. 「新たな2分野の専攻から,感性を通じた共感の. る形となった。. 学びは,自身のもつ教養を一層深め,かつ,創造. 各々の3カテゴリー(興味関心・楽しさ/発. 力の幅を広げてくれたのではないかと感じる」. 見・驚き/新たな学び)のすべてのサブカテゴ. 「もっといろいろな研究に触れたいと思った時間. リーの共通点として,「他専攻の人の意見表出を. だった。新たな学びは,充実の時間だ。」. 聞いた,獲得した上での」「他専攻への興味関心」 「他専攻との比較検討」「他専攻のメッセージを. 3)カテゴリー・サブカテゴリー抽出 本研究にてアンケートの記載メッセージにおけ る,いわゆる「語り」表出に際し,2)の結果に て確認された 「キーワード」を主たる3カテゴリー. 受けての思考の広がり」といった,いわゆる多角 的視点から自身の専攻の学びを振り返るきっかけ となった印象が,強いものと推察された。 深井6)は,「境界」をキーワードにした授業分. を抽出対象とした。そして其々のカテゴリー内に,. 析の中で, 「専門性の高い異分野の学生が同一の. 3つの主たるサブカテゴリーを以下へ記す。(こ. 授業を受講することで,幅広い視野を持つことの. の分類に至った語りの一例は,結果の2)を参照). 重要性を認識することができる」と述べている。. *第一カテゴリー〈興味関心・楽しさ〉. 本研究の対象学生においても,これが該当するこ. 145.

(7) Onishi, et al.. とが推察され,さらに上述のような「他専攻」を. 新たな意見の獲得による思考の幅の広がり」と. 認識・意識した形での比較検討や興味関心へとつ. いった内容を,背景として持ち合わせていると推. ながり,その内容が思考や想像力の幅を広げる. 察された。つまり,感性の学びの背景には,必ず. きっかけとなったものと示唆された。. しも共感や尊重だけではなく,様々な要因が存在. 次に,第一カテゴリーである「興味関心・楽し. することが明らかになったと示唆された。. さ」は,7割の学生が掲げていた。この様々な物. 最後に,第三カテゴリーの〈新たな学び〉にお. 事に対する「興味・関心・楽しい」という「感じ. いては,異分野融合という新しい学びの獲得に対. る心=感性」は, 「学ぶ」という視点においては. する,喜びなどの利益を獲得したメッセージや,. 非常に重要なキーワードであり,学生の成長を促. 「ぼんやりとして」とらえていた感性領域の内容. 7). 進する上では,この要素は欠かせないと野崎ら. が「具現化」されたことにより,さらに鮮明に自. は報告している。つまり,本研究における講義の. 身の学びとして受け取ることができた嬉しさ,思. 提示は,学生全体へこれらのキーワードが表出す. 考が広がったことによる学びの獲得への喜びに対. るような内容を含蓄しており,学生の学びの成長. するメッセージ等が見受けられた。. を後押しした可能性が考えられよう。. 人は新たな学びを獲得する際に,様々な脳機能. 続いて,第二カテゴリーである〈発見・驚き〉. エリアを使用しながら学習を重ね,トライアンド. においては,これまで学生自身が学んでいた内容. エラーを繰り返し,再学習などのプロセスを得な. の幅が広がるような, 「自身がたてていた予測や. がら,新たな学習領域が脳へ定着する9)といわれ. 予想を,良い意味で裏切られた」,「抱いていた予. ている。本研究の対象者である学生の,「新たな. 測と, 今回の学びによる解説との距離感を感じた」. 学びの獲得」は,まさに新領域分野の学習の初期. 背景が隠されているようなメッセージが見受けら. ステージに立ち,その学びを重ねていく準備を開. れた。また,異分野融合と境界との出会いに対す. 始したとも表現できよう。そして,ぼんやりとイ. る素直な驚きや,そこから得られた恩恵に対する. メージしていた「感じる心」「感じていたこれま. 認知も記されており,第一カテゴリーの「興味関. での様々な経験」「これまでの様々な環境の中で. 心・楽しさ」同様,「思考や想像力の幅へのポジ. 感じていた記憶」について,脳メカニズムやその. ティブ効果」が背景にあるものと推察された。ま. 背景要因分析などの研究報告を提示することで,. た,他専攻と自身との表出表現比較を行う中での. より「具現化」された学びを吸収する形となった. 発見や驚きも確認され,普段は聞く機会を得るこ. かもしれない。そして学びの学習ステージを進め. とがないメッセージや学びに対し,考察を深める. ていくプロセスを促進したとも表現できるのでは. きっかけになったものと考えられた。. ないか。. 何らかの物事に対し,感嘆の念を抱く背景要因. 何かしらの事象について「ぼんやり」としてい. の中には, 「共感や尊重」といった感情が存在し,. たことが具現化されて脳内へとインプットされた. これらの背景を抱いて「感嘆(驚き)や新たな発. とき,人間は一種の興奮状態になり,ポジティブ. 見」が日常的に存在することは,高い倫理的価値. な感情を得て報酬を得たような状況と似た形式の. へ普遍化するためのプロセスとして位置づけられ. 脳メカニズムへと移行することがすでに1990年代. ている8)。そして,多様な価値観へと人間形成が. にて明らかになっている10)。そこから,さらに. 行われていく上で重要な道筋である8)。本研究の. その興奮状態でポジティブな状況を維持したいと. この第二カテゴリーの新たな発見や驚きに対する. 人間は感じることから,その情報処理を続行しよ. メッセージは, 「共感」のみならず,「他専攻への. うと機能的な状態へ自身を導き,新たな学びに関. 尊重」 「他専攻が思いもよらぬ意見をのべてきた. 連する表出物(例えば街中の広告媒体など)をす. ことによる, 予測の裏切り=共感まで届かないが,. ぐに見つけるような事態が生じることもある11)。. 146.

(8) Self-Administered Questionnaire Survey for Lectures on “Sensitivity”. 本研究の対象者学生のおよそ4割がこの「新たな 学び」 を主たるメッセージとして表出していたが, 上述のような脳内メカニズムのプロセスをたどっ た可能性は否定できないだろう。. 4) 藤由美子,ほか(2020) .訪問看護師が捉えた精神障 害をもちながら子育てをする母親の成長.日本精神保 健看護学会誌.29⑴:51-59. 5) 荒木奈緒,ほか(2016) .出産病院で実施される産後 1~3か月の母親を対象とした子育て支援活動の効果. 母性衛生.:183-190. 6) 深井尚子(2017) .学際的研究の発展性から見た境界. 5.総 括. の授業の意義について.芸術スポーツ文化学研究⑶. 本研究における「感性」に対する異分野融合の 講義3回分の総合的な学生の表出(語り)は,3 カテゴリー分類という形態が見出され, 「興味関 心・楽しさ/発見・驚き/新たな学び」が抽出さ れた。そして,それらに付随する様々なサブカテ ゴリーが得られた。そこには,他専攻同士の,専 門性の高い領域から考察した自身の専門性への見 直し態度,恩恵認知,さらには多角的な回答に対 する利益獲得,合理的な捉え方等の背景要因が メッセージの中から確認された。 これらから, 「感性」の異分野融合による講義は, 学生へ様々な恩恵を付与し,かつ学びの動機づけ を高めるような,学習プロセスへの貢献へと働き かけがなされたものと推察された。さらに,多様 な価値観をもつ人間形成教育の一端を担っている 可能性が示唆された。 第二報以降は,これらの講義一つ一つに対する. pp.156-171.大学教育出版,岡山. 7) 野崎耕一,ほか(2006) .大学生の成長の考察.静岡 産業大学情報学部研究紀要.⑻:231-395. 8) 谷口文章(2010) .環境教育と環境倫理の共通の源を さぐる.甲南大学紀要文学編.(161):165-171. 9) 淺賀裕介,ほか(2016) .身体知獲得過程における動 作の再現性と脳賦活反応との関係.日本機械学会論文 集.82(842):1-11. 10) Wegener, D.T.,Petty, R.E., et al. (1995). Positive mood can increase or decrease message scrutiny: The hedonic contingency view of mood and message processing. J, ourna1of Personatity and Social Psychology. 69⑴: 5-15. 11) 田中和恵(2004) .関連感情がメッセージの精緻化に 及ぼす影響:印刷媒体広告を用いた情報処理方略の検 討.社会心理学研究.20⑴:1-16.. . (大西 洋 岩見沢校准教授). . (舩岳 紘行 岩見沢校准教授). . (寅嶋 静香 岩見沢校准教授). 学びの内容を詳細に提示しながら, 「感性」を多 角的にみる目をどのようなプロセスで養っている のか, 等の分析報告を行う予定である。そのため, 講義の形成は試行錯誤を繰り返していくであろ う。そして,学生の様々な部分の成長を促すよう な教育活動に,より邁進したいと考える。さらに は協同作業を通じて,探求をより深めたい。. 引用文献 1) 大築立志(1994).巧みの科学.pp.4-18.大修館書店, 東京. 2) 加藤明(2011).運動学習プロセスの柔軟性.日本神 経回路学会誌.18⑴:43-49. 3) 三菱総合研究所調査機構.学際研究とその評価. https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3487168_ po_20110220.pdf?contentNo=1. (2020年8月30日閲覧. ). 147.

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