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〈講演〉発達障害のある青年の特性--大学における支援について考える

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(1)〇 一〇 Zρ ③. 1,は. じめ に. 本 論 で は 、 ま ず 、 発 達 障 害 の 特 性 に つ い て 整 理 し 、 次 い で 、 発 達 障 害 の 特 性 と大 学 生 活 に お け る 困 難 に つ い て 整 理 す る。 ま た 、 そ れ ら を 踏 ま え て 、 大 学 にお け る支 援 の あ り方 に つい て考 えてみ たい。 な お 、 医 学 に お け る 発 達 障 害 とは 、① 知 的 障 害 、 ② 広 汎 性 発 達 障 害 、 ③ 学 習 障 害 、 ④ 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 、 ⑤ コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン 障 害 、⑥ 発 達 性 協 調 運 動 障 害 な どの 複 数 の 下 位 カ テ ゴ リか ら構 成 さ れ る もの で あ り、 そ の 障 害 の 特 性 も各 々 に異 な る 。 しか しな が ら 、 こ こで は 、文 部 科 学 省 が 、主 な 発 達 障 害 と し て近 年 、取 り組 み を 進 め て い る広 汎 性 発 達 障 害 、 学 習 障 害 、 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 の3障 害 は発 達 障 害 者 支 援 法(2004)に. 害 に つ い て み て い く こ と に した い 。 また 、 この3障. お け る 発 達 障 害 の 定 義 に お い て も明 記 さ れ て い る 障 害 で. あ る・1。. 2.発. 達 障 害(広. 汎 性 発 達 障 害 ・学 習 障 害 ・注 意 欠 陥 多 動 性 障 害)の. (1)広. 汎 性 発 達 障 害(PDD:PervasiveDevelopmentalDisorders). 特性 につ いて. 広 汎 性 発 達 障 害 と は 、 ① 対 人 関 係 の 障 害 、 ② コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 障 害 、 ③ こ だ わ り ・ 常 同 行 動 の3つ. に よ っ て 特 徴 づ け ら れ る 障 害 で あ り、DSM-IVに. お い て は 、 「自 閉性 障 害 」. 「レ ッ ト障 害 」、 「小 児 期 崩 壊 性 障 害 」、 「ア ス ペ ル ガ ー 障 害 」、 「特 定 不 能 の 広 汎 性 発 達 障 害 」 の 総 称 で あ る 。 ま た 、知 的 障 害 を と も な う場 合 もあ れ ば 、知 的 障 害 を と もな わ な い 場 合(高 機 能 広 汎 性 発 達 障 害)も. あ る。. なお、広 汎性 発達 障害 の うち、 アスペ ル ガー障害 は 自閉性障 害 と同様 に対 人関係 の障害 と こ だ わ りや 常 同 行 動 が あ るが 、 言 語 発 達 に 明確 な 遅 れ は な く、 認 知 発 達(身 己 管 理 能 力 な ど)に. 辺処理 や 自. も明 確 な遅 れ は 認 め られ な い 。 しか し、 対 人 的 な 相 互 関 係 を適 切 に保. つ こ と、 また は情 緒 的 な 面 で の 交 流 に 困難 が あ る 。 また 、 広 汎 性 発 達 障 害 で は 、① ∼ ③ の 中 核 症 状 に 加 え て 、 知 覚 過 敏(あ. る い は 鈍 麻)や. 発達障害のある青年の特性. 穂5.

(2) 語学 教欝 灘ジ ャーナ ル. 認 知 の 偏 りな どが 認 め られ る 。 例 え ば 、 通 常 で は気 に な ら な い 程 度 の 音 や 光 で あ っ て も非 常 に不 快 に 感 じた り、 人 に触 ら れ た だ け で も痛 い と感 じる 反 面 、 怪 我 な ど を して もあ ま り 痛 が らな い な どの 場 合 も あ る 。 また 、計 算 や 記 憶 力 な ど に 突 出 した 能 力 を示 す こ と もあ る。 な お 、 こ う した 特 性 は個 人 に よ っ て 異 な り、 す べ て の 広 汎 性 発 達 障 害 者 に み られ る特 性 で は ない。 (2)学. 習 障 害(LD:LearningDisabilities). 学 習 障 害 に 関 して は 、 医 学 が 学 習 障 害 と診 断 す る 範 囲 と教 育 の 場 に お い て 「学 習 障 害 」 と判 断 す る場 合 の 基 準 に差 が 認 め られ る 。 医 学 領 域 で の 学 習 障 害 は 、読 字 障 害 、書 字 障 害 、 算 数 障 害 、 つ ま り 「読 み 」 「 書 き」 「計 算 」 の 困 難 に 限 定 され る 。 しか し、 文 部 科 学 省 に よ る 特 別 支 援 教 育 の 対 象 と して の 「学 習 障 害 」 は 、 「基 本 的 に は 全 般 的 な 知 的 発 達 に遅 れ は な い が 、 聞 く、 話 す 、 読 む 、 書 く、 計 算 す る 又 は 推 論 す る 能 力 の う ち 特 定 の もの の 習 得 と 使 用 に 著 しい 困 難 を示 す 様 々 な 状 態 を指 す もの で あ る 」 と な っ て お り、 医 学 領 域 で の 定 義 よ り も広 い 範 囲 を含 む 。 (3>注. 意 欠 陥 多 動 性 障 害(ADHD:Attentiondencithyperactivitydisorder). 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 とは 、 不 注 意(注 な ど)・ 多 動 性(落. 意 の 集 中 が 難 しい 、 あ る い は 刺 激 に反 応 しや す い. ち 着 き が な く じっ と して い ら れ な い 、 あ る い は し ゃべ りす ぎ る な ど)・. 衝 動 性(思. い つ い た こ とや 刺 激 に 反 応 して 、 衝 動 的 に 言 葉 を 発 した り、 行 動 した りす る な. ど)の3つ. に よ っ て 特 徴 づ け られ る 障 害 で あ る 。 な お 、 症 状 の 現 れ 方 や 程 度 に は 大 きな 個. 人 差 が あ る。 な お 、(1)∼(3)の3障 害 に つ い て の 診 断 は 、 い ず れ も而 接 や 検 査 、 生 育 歴 の 聴 き取 り、 行 動 観 察 を 含 め 、 医 師 に よ っ て 総 合 的 に 評 価 さ れ る 。 また 、 こ れ らの 障 害 は 「脳 の 中 枢 神 経 系 の 障 害 で あ る(親. の 養 育 態 度 や 生 育 環 境 、 本 人 の 怠 慢 に よ っ て 生 じる もの で は な い)」. とい う点 は 共 通 して い る が 、 どの よ う な原 因 に よ る もの か に つ い て は 今 の と こ ろ 明 確 な 答 え は な い 。 加 え て 、 身 体 的 な 側 面 か らの ア プ ロ ー チ(脳. 波 やMRIな. ど)に. よ って明確 な. 診 断 が 得 られ る こ と は な く、 診 断 は 行 動 観 察 等 に よ る と こ ろ が 大 きい 。 い ず れ に せ よ 、 社 会 生 活 並 び に 学 校 生 活 で の 困 難 に つ い て 障 害 を疑 う場 合 、 自 己 判 断 に よ らず 、専 門 医 の 診 断 を受 け る こ とが 必 要 で あ る 。 ま た 、 教 員 を は じめ 、 周 囲 が 安 易 に 障 害 名 を告 げ る こ と は 適 切 で は な い 。 な お 、 学 習 障 害 に つ い て は 、 医 学 的 な 診 断 に加 え て 、 よ り広 義 な 教 育 的 判 断 が あ る た め 、 学 習 障 害 に つ い て 十 分 な 知 識 を有 す る 専 門 家 の 支 援 が 必 要 とな る。. {96.

(3) 幽 繍の. 達障害 の特性 と大学 生活 にお ける困難. (1)大. 学 に お け る 「発 達 障 害 」 者 と は. 灘癬鋤. 3.発. 大 学 に 在 籍 す る 「発 達 障 害 鉾 の あ る 青 年 に つ い て 考 え る と き、 そ の 対 象 者 に つ い て は 、 必 ず し も医 学 的 な 診 断 を 有 す る 者 ば か りで は な い 点 に 注 意 が 必 要 で あ る 。 例 え ば 、 平 成15 年 に 国 立 特 殊 教 育 総 合 研 究 所(当. 時:現. 、 国 立 特 別 支 援 教 育 総 合 研 究 所)が. 行 った調査 に. よ れ ば 、 相 談 に 訪 れ た 「発 達 障 害 」 の あ る 大 学 生 の う ち 、 医 学 的 に 明 確 な 診 断 を有 して い る者 は 全 体 の20%程. 度 で あ っ た こ と が 報 告 され て い る。 な お 、 こ の 結 果 は 、 残 りの80%. に あ た る学 生 に"発 達 障 害 が な い"こ. とを意味 してい ない。. こ れ は大 学 生 に 限 っ た こ と で は な い が 、 学 校 生 活 並 び に 日常 生 活 にお い て 困 難 を 有 す る 者 が 、 必 ず し も 「発 達 障 害 」 を 診 断 さ れ て い な い と い う点 が 、 「発 達 障 害 」 を め ぐる 対 応 の 困 難 の 一 因 と な っ て い る。 で は 、 大 学 に お け る 「発 達 障 害 」 者 に は 、 どの よ う な対 象 者 が 含 ま れ る の だ ろ うか 。 こ こ で は 、4群. に 分 け て 整 理 した 。 そ の4群. と は 、 ① 医 学 的 な診 断 を 有 す る者 、 ② 教 育 的 判. 断 を 有 す る 者 、③ 発 達 障 害 を主 訴 と す る者(医. 学 的 な 診 断 も教 育 的 な判 断 もな さ れ て い な. い が 、 書 籍 や イ ン タ ー ネ ッ トな どで 調 べ た 結 果 、 発 達 障 害 の 特 性 が 自分 の 特 性 と 合 致 す る と 考 え 、 自 ら を発 達 障 害 で あ る とす る 者)、 ④ 発 達 障 害 が 疑 わ れ る 者(学 活 に お い て 困 難 が あ っ た と して も 、 そ の 困 難 の 原 因 を"本 な い 者)で る(有. 人"は. 校 生 活 や 日常 生. 発 達 障 害 と結 び つ け て い. あ る 。 こ れ ら の 対 象 者 は 、 い ず れ も程 度 の 差 は あ っ て も 、 「困 難 」 を有 し て い. して い る と考 え て い る)点. で は 共 通 す る 。 しか し なが ら 、③ 、 ④ に お い て は 、 現 時. 点 で は 、厳 密 に は 発 達 障 害 と は い え な い 。 と は い え 、 今 後 、② の 対 象 者 も含 め て 、 発 達 障 害 が 診 断 され る 可 能 性 は あ る 。 (2)「 発 達 障 害 」 の あ る 大 学 生 の 困 難 平 成17年. 度 に 国 立 特 別 支 援 教 育 総 合 研 究 所 が 日本 学 生 支 援 機 構 と共 同 で 行 っ た 「発 達. 障 害 の あ る 学 生 の 支 援 に 関 す る全 国 調 査 」寧3にお い て 、 「発 達 障 害 」 の あ る 学 生 が 大 学 生 活 を 送 る上 で の 困 難 と して 挙 げ た 結 果 に つ い て 表1に. 示 した 。. 諸 外国 の言 語教 育政 策 と 日本 の 外国 語教 育へ の示 唆. 紺7.

(4) 語学 教 欝部ジ ャー ナル. 表1「 困難 の領域. 対 人関係 や 大 学生 活上 の トラブル. 発達 障害」 の ある学生 が示 す困難. 困難 の例. LD. AD HD. (校). 高機能 自閉症等. 可 能性. 「友 人 と う ま くつ きあ え な い 」 「約 束 を 守 る こ と が で き な い 」 「借 り た 物 を 無 く して し ま う」 「サ ー ク ル や 級 友 と トラ ブ ル を起 こす こ と が 多 い 」 「孤 立 して い る」 「余 暇 時 間 が 適 切 に使 え ず 、 学 内 各 部 署 に. 35. 47. 169. 222. 19. 27. 67. 106. 11. 28. 77. 28. 決 ま り切 っ た 質 問 を して 回 っ て い る 」 「集 団 が 苦 手 な た め 単 独 で 休 息 で きる 空 間 を 見 つ け る と常 に 使 用 す る」 な ど 「講 義 に つ い て い け な い 」 「ノ ー ト が と れ な い 」 「テ ス トが で き な い 」 「課 題 、 単 位 取 得 が 予 定 通 り に進 ま な い こ と か ら くる 自己 否 定 感 」 「 提 出 期 限 が ま もれ な い 」 「科 目履 修 の 管 理 が 困 難 」 「本 人 は 一 生 懸 命 学 業 に 取 り組 ん で い る様 子 で あ る が 成 果 が あ が ら な い 」 「授 業 中. 学 業上 の 問題. に 突 然 、的 外 れ な 質 問 をす る た め 、 授 業 が 中断 され困 る こ とが あ る」 など トーl 「物 事 が う ま くい か な い こ と で 感 情 の コ ン トロ ー ル が 困 難 に な り、 パ ニ ッ ク に な る 」 「自 己 主 張 が 強. l. く、 自 省 を欠 く」 「気 持 ち が 落 ち 込 み や す い 」 「自尊 心 が 低 く、 自 分 は ダ メ な 人 間 で あ る と訴 え る」 「感 情 の 起 伏 が 多 い 」 「不 適 応 場 面 で カ ッ と な っ て 手 が 出 た りす る」. 行 動 ・情 緒 面 の問題. など 一. 表1に. 見 ら れ る よ う に 困 難 は 多 岐 に わ た る が 、 こ こ で は 、 「発 達 障 害 」 を背 景 と し た 困. 難 へ の 支 援 と して 、 学 業 上 の 問 題 と大 学 生 活 の 問 題 に 焦 点 を あ て 、 次 の3点 て み た い 。 す な わ ち、1)時 支 援 、3)対. につ いて考 え. 間 や ス ケ ジ ュ ー ル の 管 理 に 関 す る 支 援 、2)課 題 遂 行 に 関 す る. 人関係 に関す る支援 、で ある。 なお、 以下 では、大 学側 が行 う支援 につい て ま. とめ る が 、 当 然 の こ と な が ら、 当事 者 で あ る 本 人 に も 困 難 を解 消 す る た め の工 夫 が 求 め ら れる。 ま た 、 支 援 に つ い て 考 え る 際 に重 要 な 点 と して 、 学 生 本 人 が 障 害 を 開 示 して い る か ど う か とい う問 題 が あ る 。 大 学 側 が 行 う支 援 の 中 に は 、 個 別 対 応 を必 要 とす る もの 、 教 員 の 理 解 と協 力 を必 要 とす る もの な どが 含 ま れ る が 、 こ れ ら は 、 学 生 が 自 ら の 障 害 を 開 示 して い. 達98.

(5) ◎ 一〇 薫ρ ③. る とい う状 況 で な い 限 り難 しい 場 合 も少 な くな い 。 一 方 で 、 す で に 述 べ た よ う に 、 「発 達 障 害 」 が 必 ず し も診 断 も し くは 判 断 され て い な い 学 生 に対 し て 、 ど の よ うに 対 応 す る か は 判 断 が 分 か れ る と こ ろ で あ ろ う 。 こ う した 点 に つ い て は 、 学 生 相 談 室 や 保 健 管 理 セ ン ター な ど との 連 携 を含 め 、 今 後 の 検 討 課 題 と い え る。 1)時. 間 や ス ケ ジ ュ ー ル の 管 理 に関 す る支 援. 時 間や スケ ジュー ルの管 理が で きない場 合、大 学生 活 におい て生 じる困難 には、⑦履 修 届 け を含 め 、 事 務 的 な 書 類 の 提 出 期 限 が 守 れ な い 、 ② 課 題 の 提 出 期 限 が 守 れ な い 、 ③ 講 義 等 に頻 回 に 遅 刻 す る 、 な どの 例 が 挙 げ ら れ る 。 この う ち 、① と② に 関 し て は 、 個 別 に事 前 予 告 をす る、 あ る い は 、 可 能 で あ れ ば 提 出期 限 の 延 長 を 認 め る な ど の 対 応 が 考 え ら れ る 。 ③ に つ い て は 、 学 生 相 談 室 な ど を 利 用 し、 遅 刻 の 理 由(家. を 出 る ま で の 手 順 や 利 用 して い. る交 通 機 関 の 整 理 な ど)を 明 ら か に した う え で 、 遅 刻 を しな い た め 手 立 て を 話 し合 う こ と な ど の 対 応 が 考 え ら れ る。 な お 、 大 学 で は 、 グ ル ー プ で 行 わ れ る 活 動 も少 な くな い こ とか ら、② や ③ の 点 で 困 難 が あ る場 合 、 グ ル ー プ作 業 の 計 画 が 立 て られ ず 、仲 間 の 信 頼 を 失 う、 あ る い は 、グ ル ー プ に お い て 責 任 の あ る 役 割 を担 え な い な ど の 問 題 が 生 じる 可 能 性 も あ る 。 2)課. 題 遂 行 に 関 す る支 援. 課 題 遂 行 が 困 難 で あ る と ひ と くち に い っ て もそ の 背 景 は さ ま ざ ま で あ る。 し た が っ て 、 そ れ ぞ れ の 困 難 に 合 わ せ た 支 援 が 必 要 に な る(表2)。. なお 、支援 を求 め る際 には、教 員. だ け で な く学 生 の 理 解 が 重 要 と な る こ と もあ る 。 なぜ な ら、 注 意 集 中 の 困難 な どか ら、 講 義 中 の 指 示 や 注 意 事 項 等 を 聞 き逃 し て し ま っ た こ と に よ る ミス に つ い て 、 教 員 が 特 別 な 配 慮 を し よ う と した 場 合 、 他 の 学 生 へ の 対 応 と異 な る こ と に つ い て 、 どの よ う に理 解 を得 る か な どの 問 題 が 生 じ る可 能 性 が あ る か ら だ 。 ま た 、 表2に. 加 え て 、 環 境(騒. 音 ・照 明 な ど)に 過 敏 で あ る な ど の ケ ー ス で は 、 環 境 の. 調 整 が で き る場 合 も あ れ ば 、 講 義 の 人 数 や 教 室 な ど に よ っ て は 、 対 応 が 困難 な場 合 もあ る だ ろ う。 い ず れ に せ よ 、 支 援 を ど こ ま で 実 施 す る か に 関 して は 、 教 員 個 々 人 の 判 断 だ け で な く、 大 学 と して の 対 応 を検 討 す る こ と も必 要 で あ ろ う。. 発 達障 害の ある 青年 の特性. 穂9.

(6) 語掌 教灘 灘ジ ャー ナル. 困難 の例 書 くこ と(書 字). 計算 読 む こ と(読 字). 聞 くこ と 話すこと 一 一一 一 一 一 一 一. 過度 の忘れ物 注意 の集 中. 3)対. 人関係 に関す る支援. 対 人 関 係 の 困 難 は さ ま ざ ま な 要 因 に よ っ て 生 じ る こ と か ら 、 す べ て の 要 因 を網 羅 す る こ と は 難 しい 。 また 、 要 因 が 明 らか と な っ た 場 合 で も適 切 に 支 援 を して い く こ と が 難 しい 場 合 も少 な くな い 。 こ こ で は 、 さ ま ざ ま な要 因 の う ち 、 円 滑 な 対 人 関 係 を結 ぶ 上 で 重 要 な 要 因 の1つ. で あ る コ ミュ ニ ケ ー シ ョン をめ ぐ る 困 難 を と りあ げ 、 そ の 支 援 に つ い て 考 え て み. たい。 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン に は 、 言 語 的 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン と表 情 や 音 声 の 変 化 、 身 振 り な ど に よ っ て 言 外 の 意 味 を伝 え る 言 葉 に よ らな い コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン 、 す な わ ち 、 非 言 語 的 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョン が あ る 。 言 語 的 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン につ い て は、先 行 研 究(Leudar,1.,Fraser,WJ.,Jeeves,MA., (1987);Grice,H.P.(1975)に. よれ ば 、例 え ば 、「誤 り と思 って い る こ と を話 して は い け な い 」. 「言 う こ と に は信 頼 が お け な け れ ば な ら な い 」 「必 要 以 上 に話 して は い け な い 」 「会 話 が 横 道 に 逸 れ て は い け な い 」 「中 途 半 端 な 質 問 は して は い け な い 」 「トピ ッ ク と 関 連 しな い 会 話 を して は い け な い 」 「明 白 す ぎ る こ と を 言 っ て は い け な い 」 「短 い 時 間 に 同 じ こ と を繰 り返 し て は い け な い 」 「あ か ら さ ま(率 直)に. もの を言 お う と して は い け な い 」 「自 ら の 言 い た. い こ と を過 度 の ほ の め か しな ど で 伝 え て は い け な い 」 な ど の さ ま ざ ま な コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン上 の し きた りが あ る こ とが 指 摘 さ れ て い る 。 こ れ ら の し き た り は 、通 常 、「暗 黙 の ル ー ル 」 と して 学 習 さ れ る こ とが 多 い が 、 例 え ば 、 広 汎 性 発 達 障 害 な どの 場 合 は 、 こ う した 「暗 黙. 200.

(7) ㊧繍O. れ らの 「暗 黙 の ル ー ル 」 が 破 られ て い る 場 合 に は 、 明 確 に言 語 化 し た形 で ル ー ル を指 摘 す る こ とが 求 め られ る 。 ま た 、 広 汎 性 発 達 障 害 で は そ の 診 断 基 準 に もみ られ る よ う に 、 表 情 や 音 声 の 変 化 か ら他 者 の 感 情 を正 確 に把 握 す る こ と(非 言 語 的 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン)に 困 難 が 認 め られ る 者 もい る 。 し た が っ て 、 こ う した 特 性 の あ る 者 と の 会 話 に お い て は 、 表 情 や 音 声 で 本 当 の 気 持 ち(例. え ば 「嫌 だ 」 「で き れ ば 手 伝 っ て ほ しい 」)を 伝 え な が ら、 言 葉 で は 本 当 の 気 持 ち. とは 違 っ た こ と(例. え ば 「良 い よ」 「大 丈 夫 だ よ」)を 伝 え る な どの 矛 盾 した メ ッセ ー ジ を. 送 ら な い よ うに 気 を つ け る必 要 が あ る。 な お 、 言 語 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン、 非 言 語 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 問 わ ず 、 あ る 場 而 に お け る 指 摘 が 他 の 場 面 に 汎 用 さ れ る とは 限 ら な い点 には注意が 必要 であ る。 い ず れ にせ よ、 こ う した コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 関 す る 支 援 は 、 広 汎 性 発 達 障 害 を は じめ と し て 、 そ れ ぞ れ の 発 達 障 害 の 特 性(例. え ば 、 注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 で は 、話 しす ぎ る 、 私. 語 が 多 い な ど、 学 習 障 害 で は 、 聞 く、 話 す な ど に お い て 困 難 が あ る 、 な ど)を 理 解 した 上 で 個 々 の 教 員 が 適 切 に 対 応 す る こ とが 求 め られ る 。 な お 、 教 員 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン に お い て 困 難 が 認 め られ る 学 生 に 関 して は 、 学 生 間 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン に お い て も困 難 を 抱 え て い る可 能 性 が 高 く、 大 学 の 中 で 孤 立 して い た り、 ゼ ミや サ ー ク ル活 動 等 に お い て トラ ブ ル が あ る な ど 、 大 学 生 活 全 般 に 支 援 が 必 要 で あ る場 合 も 少 な くな い 。 こ う し た大 学 生 活 全 般 に 関 わ る 困 難 に 関 して は 、 学 生 相 談 室 や 保 健 管 理 セ ン タ ー な ど との 連 携 が 董 要 で あ ろ う。. 4.お. わ りに. 本 論 で は 、 発 達 障 害 の 特 性 に つ い て 整 理 す る と共 に 、 大 学 生 活 に お け る 困 難 に つ い て 具 体 的 な 例 を挙 げ 、 支 援 の 方 法 に つ い て 考 え て き た が 、 例 に挙 げ た よ うな 困 難 を抱 え て い る 学 生 が い た と して も 、 そ の 学 生 に 対 して 、 教 員 が 発 達 障 害 の 可 能 性 を 指 摘 す る こ と に つ い て は慎 重 で な け れ ば な ら な い 。 なぜ な ら、 発 達 障 害 が あ る場 合 は 、 学 校 生 活 並 び に学 業 の 達 成 に 関 して 、 な ん ら か の 困 難 が 認 め られ る 可 能 性 が 高 い が 、 一 方 で 、 困 難 が 認 め られ た と して も、 そ の 困 難 は 、 必 ず し も発 達 障 害 に よ る もの とは 限 ら な い か ら で あ る 。 した が っ て 、 教 員 は 発 達 障 害 の 特 性 を理 解 しつ つ 、 一 方 で 発 達 障 害 と い う言 葉 に と ら わ れ る こ と な く、 個 々 の 学 生 の 特 性 を踏 ま え た 対 応 をす る こ とが 求 め られ て い る 。. 発 達障 害の ある 青年 の特 性2◎1. 鑑璽 ⑳. の ル ー ル 」 を 日常 生 活 の 中 か ら学 習 す る こ とが 難 しい 場 合 も少 な くな い 。 した が っ て 、 こ.

(8) 語学教 蕎部 ジ ャーナ ル. 注 *1発. 達障 害者 支援 法 にお け る発 達障 害 の定義:「 自閉症. 、 ア スペ ル ガー症 候群 そ の他 の広汎 性. 発 達 障害 、学 習 障害 、 注意 欠 陥多 動性 障 害 そ の他 これ に類す る脳 機 能 の 障害 で あ って その 症状 が 通常 低年 齢 にお い て発現 す る もの として政 令で 定 め る もの 」。 なお、 この定義 におい て も発達 障害 が 広 汎性 発達 障 害 、学 習 障害 、注 意 欠陥 多 動性 障 害 のみ に 限定 されて い る訳 で は ない点 に は注意 が必 要 であ る。 *2「 」付 きの 「発達 障害」 は. 、医 学 的な診 断 を得 てい ない者 を含 む こと を示 す。. *3調. 査対 象 は. 、 全国 の大 学 ・短期 大 学 ・高等 専 門学校1272校. 、 回答 は、学 生 相談 室担 当部 門. も し くは保 健管 理担 当部 門 の担 当者 に よる。 回収 率 は62.7%(797校)。. 引 用. ・参 考 文 献. Grice,H.P.1975LogicandconversationinSyntaxandSemantics3二SpeechActs(edsP.Cole andJ.LMogan),AccademicPress,NewYork,PP.41-58.(※) Leudar,1.,Fraser,W.1.,Jeeves,M.A.1987Theoreticalproblemsandpravticalsolutionto behaviourdisordersinretardedpeople,HealthBull.,45,347-355(※) (※ に つ い て は 、 今 野 和 夫. ・清 水 貞 夫(監. 訳)(1994)「. 知 的 障 害 者 の 言 語 と コ ミ ュ ニ ケ ー. シ ョ ン 下 巻 」 学 苑 社 よ り 引 用) 小 塩 允 護(監. 修)(2005)「. 発 達 障 害 の あ る 学 生 支 援 ガ イ ド ブ ッ ク 」 独 立 行 政 法 人 国 立 特 殊 教 育. 総 合 研 究 所 佐 藤 克 敏. ・小 塩 允 護(監. 修)(2007)「. 立 特 別 支 援 教 育 総 合 研 究 所. 建02. 発 達 障 害 の あ る 学 生 支 援 ケ ー ス ブ ッ ク」 独 立 行 政 法 人 国.

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