Mn-SODお
よびCu/Zn-SOD様
免 疫 組織
化 学反 応 陽 性 細 胞 の ラ ッ ト脳 内分 布
岡 山大 学 医 学 部 解 剖 学 第 三 講 座(指 導:徳 永 叡 教 授)
王 燕
(平成10年3月2日 受 理)
Key words: Mn-SOD, Cu/Zn-SOD,免 疫 組 織 化 学,ラ ッ ト脳 内分 布, FeCl3大 脳 皮 質 内 注 入
緒 言
Superoxide dismutases (SODs)は,酸 素 が 代 謝 さ れ る過 程 で 生 じ る活 性 酸 素 種 の 一 種 で あ る ス ー パ ー オ キ シ ド(O2)を 消 去 す る酵 素 の ひ とつ で あ る1).中枢 神 経 系 で 問 題 と な る活 性 酸 素 種 に はO2の 他,H2O2や ヒ ドロ キ シ ラ ジ カ ル (・OH)が あ げ られ るが,毒 性 の 強 い ・OHに 比 べ,O2やH2O2は そ れ 自体 で は細 胞 傷 害 性 は低 い.し か し,O2はFe3+やCu2+の 金 属 イ オ ン をFe2+やCu+の 遷 移 金 属 イ オ ン に変 換 し, こ の 遷 移 金 属 イ オ ンはH2O2を 還 元 して 細 胞 毒 性 の 強 い ・OHを 生 じ させ る2).そ の た め,生 体 内 に はO2消 去 酵 素 で あ るSODsが 広 く存 在 す る3)4).SODsの う ち,Mn-SODは 主 と し て ミ ト コ ン ド リア の マ ト リ ッ クス5)に,Cu/Zn-SODは 細 胞 質6)や 細 胞 核5)に 存 在 して い る.こ れ らSODs の 組 織 内 局 在 に 関 して は,す で に い くつ か の 報 告 が 出 され て い るが3)4)7),SODs含 有 細 胞 の 脳 内 分 布 に つ い て の 詳 細 な 研 究 は 少 な い8). 鉄 イ オ ン を脳 組 織 内 に 注 入 す る と,そ の局 所 で は 注 入 直 後 よ り活 性 酸 素 種 の 濃 度 が 急 激 に 上 昇 す る こ とが 知 られ て い る9)ので,増 加 した 活 性 酸 素 種 を 消 去 す る ため,局 所 でSODsが 新 た に 誘 導 さ れ る可 能 性 が 考 え られ る10). 今 回 はMn-SODお よ びCu/Zn-SODに 対 す る特 異 抗 体7)を 用 い て,正 常 成 体 ラ ッ トの 脳 に お け るSODs様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 を 呈 す る細 胞 の 分 布 様 式,さ ら に 大 脳 皮 質 感 覚 運 動 領 野 内 へFeCl3を 微 量 注 入 し た 後 のSODs様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 の 変 動 を検 索 した. 材 料 と 方 法 本 観 察 に は 体 重250-300gのWistar系 雄 性 成 体 ラ ッ ト22匹 を使 用 した.Mn-お よ びCu/Zn -SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 脳 内分 布 を 調 べ る に あ た り,概 日周 期 に よ る変 動 を 除 く た め 動 物 の 灌 流 固 定 は 全 て11時 よ り13時 の 間 に 行 っ た.4匹 の 正 常 無 処 置 ラ ッ トをネ ン ブ ター ル(sodium pentobarbital, 30mg/kg, i. p)麻 酔 下 で 開 胸 し,左 心 室 よ り灌 流 固定 し た.ヘ パ リ ン投 与 後,等 張 リン ゲ ル 液150mlで 駆 血 し,直 ち にZamboni固 定 液(4℃)1000mlを 約1時 間 か け て 灌 流 し た.取 り出 し た脳 はZamboni固 定 液 中(4℃)で さ らに5時 間 後 固定 して か ら, 10%シ ョ糖 添 加 リン酸 緩 衝 液(pH 7.4,4℃) に 浸 漬 し,2-4日 間 保 存 した.脳 は 凍 結 ミ ク ロ トー ム で40μm厚 の1枚 お き 前 額 断 切 片 とし, 0.15M NaCl添 加 リン酸 緩 衝 液(PBS, pH 7.4) 中 に2群 に 分 け て 集 め た.各 群 の 切 片 を0.3% Triton-X添 加PBS (PBS-Tx)で 洗 滌 し,10 %正 常 ヤ ギ 血 清 で30分 間 処 理 し た後,一 群 に 抗 Mn-SODポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体7)(PBS-Txで 24000倍 に 稀 釈.山 梨 医 科 大 学 小 児科 学 講 座,朝 山光 太 郎 博 士 の 好 意 に よ り供 与 さ れ た),他 群 に 抗Cu/Zn-SODポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体7)(1: 24000,同 上)を そ れ ぞ れ12時 間(4℃)作 用 さ せ た.切 片 はPBS-Txで 洗 っ た 後,ABC法 9
(avidin-biotin-peroxidase complex kit, Vector社)に よる免 疫 組織 化学 反 応 を施 し,0.05 % DAB (3.3'-diaminobenzidine)と0-1% H2 O2で 発 色 させ た.免 疫 染 色 さ れ た切 片 は 必 要 に 応 じて,0.5% cresyl violet水 溶 液 で後 染 色 を 施 し た.陽 性 細 胞 分 布 図 譜(図2)作 成 に 当 た
っ て,神 経 核 の分 類 ・名 称 はPaxinos & Watson の ラ ッ ト脳 図 譜11)に準 拠 した. ま た,18匹 の ラ ッ トを6匹 ず つ3群 に 分 け て, そ れ ぞ れ の 群 に 以 下 の よ う な 処 置 を 施 し た. 1)100mM FeCl3-生 食 水(W/V, pH 1.8), 2)HCIでpH 1.8に 調 整 した 酸 性 化 生 食 水, 3)生 食 水 を そ れ ぞ れ 大 脳 皮 質 感 覚 運 動 領 野 に 注 入 した.ラ ッ ト をネ ン ブ タ ー ル 麻 酔 下 で 脳 定 位 固 定 装 置 に 固 定 し,冠 状 縫 合 尾 方 の 左 側 頭 頂 骨 に1.5-2.0mm径 の 骨 窓 をあ け て 大 脳 皮 質 感 覚 運 動 領 野 の 一 部 を露 出 させ,ガ ラ ス 管 カ ニ ュ ー レ を 針 先 に 装 着 し た マ イ ク ロ シ リン ジ を用 い て, bregmaの 尾 方2.0mmで 左 外 方2.0mmの 位 置 の 皮 質 領 野 に1.0mmの 深 さ で 刺 入 し,各 液5.0μlを5 分 間 か け て 注 入 した.各 群 と も注 入2時 間(3 匹)お よ び6時 間(3匹)後 に正 常 成 体 ラ ッ ト 群 と同 様 にZamboni固 定 液 で 灌 流 固 定 し,両 SODポ リ ク ロー ナ ル抗 体 に よ る免 疫 染 色 を行 っ た. さ らに,両SODポ リ ク ロー ナ ル 抗 体 で 染 め た 一 部 の 切 片 に は,抗GFAPモ ノ ク ロー ナ ル 抗 体[Progen Biotech, U.S.A.]を 用 い て 二 重 標 識 を 行 っ た.抗Mn-SODお よ び 抗Cu/Zn-sOD抗 体 に よ る 免 疫 染 色 は5% NiCl2を 加 え たDAB-H2O2液 で 黒 く発 色 さ せ た.そ の 後, 10%正 常 ウ マ 血 清 で30分 間 処 理 し た 後,抗 GFAPモ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体(2.5μg/ml)を12 時 間(4℃)作 用 させ,ABC法 で 処 理 しDAB -H 2O2液 で 褐 色 に発 色 させ た.Mn-SOD様 お よ びCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 は,100μm間 隔 の 格 子 を刻 ん だ マ イ ク ロ メ ー タ ー を 接 眼 レ ン ズ に 装 着 して 検 鏡 し,各 群 各 例 よ り任 意 に選 ん だ10か 所 の単 位 面 積(100×100 μm2)当 た りの 陽 性 細 胞 数 を数 え る こ とに よ り求 め た.各 群 間 の 陽 性 細 胞 数 の 平 均 値 を一 元 配 置 分 散 分 析 法 に よ り1%の 危 険 率 で 有 意 差 検 定 を 行 っ た. 結 果 1. 正 常 成 体 ラ ッ ト脳 に お け るMn-お よ びCu/ Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の分 布: 1) Mn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞: Mn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 多 くは 胞体 の 大 きい,錐 体 形 お よ び 多 角 形 細 胞 で あ り,DAB反 応 産 物 は 顆 粒 状 で 核 周 囲部 や 太 い 樹 状 突 起 とそ の 基 部 に密 に 見 られ た.し か し, 細 胞 核 は 抗Mn-SOD抗 体 で 免 疫 染 色 さ れ な か っ た(図1A).Mn-SOD様 陽 性 細 胞 は 脳 の 広 い 領 域 に 認 め られ た が,そ の 主 な 存 在 部 位 を 単 位 面 積(1002μm2)当 た りの 陽 性 細 胞 数 の 多 い順 に 表1に ま と め,さ ら に 脳 内 分 布 を 図2に 模 式 図 で示 した. Mn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 が 特 に 高 密 度 に 分 布 す る部 位 は:視 索 上 核(19.3± 1.2個),視 床 下 部 前 側 野(17.5±1.0個),青 斑 核(16.5±0.4個),視 床 下 部 室 傍 核(16.2±0.7 個),橋 核(15.9±0.5個),視 床 網 様 核(15.1± 2.1個)で,そ の 大 半 が 視 床 下 部 の 細 胞 で あ っ た. 嗅 球 で は,僧 帽 細 胞 の 多 くがMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 を 示 し た(表1)が 吻 側 部 (9.7±0.5個)に あ る僧 帽 細 胞 の 方 が,背 側 部 (4.4±0.3個)や 腹 側 部(3.1±0.4個)に あ る 図1 正 常 成 体 ラ ッ ト脳 にお け るMn-SOD様 お よ びCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織化 学 反 応 陽 性 細 胞.ス ケー ル:10μm A. 大 脳 皮 質 第Ⅲ 層 に 見 られ たMn-SOD様 免疫 組 織 化 学反 応 陽性 細 胞. B. 大 脳 皮 質 の皮 質 下 白質 に おけ るCu/Zn-SOD様 免疫 組 織 化 学 反 応 陽性 細 胞.
もの よ り陽 性細 胞数 は 多か っ た.顆 粒 層 で は極
く少数 の顆粒 細 胞 のみがMn-SOD様
免疫 組織
化 学反 応陽性 を を示 した.梨 状葉 の錐体 細胞 層
の 中等大 錐体 細 胞 の多 くが(14.2±0.8個)Mn
-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 で あ っ た. 海 馬 に お け るMn-SOD様 免 疫 反 応 陽 性 細 胞 は,CA-3(13.5±0.6個),CA-2(13.1±0.6 個)お よ びCA-4(10.9±1.0個)の 錐 体 細 胞 表1 正 常 ラ ッ ト脳 各 部 に お け るMn-SOD免 疫 組 織化 学 反 応 陽性 細 胞 数 Mn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数/1002μm2:++:10個 以 上,+:9∼3個,±:2個 以 下(N=40)図2 正 常 成体 ラ ッ ト脳 にお け るMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応陽 性 細 胞 の分 布 を示 す模 式 図.
Mn-SOD様 免 疫 組 織 化 学反 応 陽 性 細 胞 の存 在 部位 とそ の分 布 密 度 を,各 横 断 面の 右 半 分 に 「●」で模 式 的 に示 した.7n:顔 面 神 経 根,CBC:小 脳 皮 質,G:小 脳 皮 質顆 粒 層,icp:下 小脳 脚,M:小 脳 皮 質 分 子 層,ml:内 側 毛 帯,mcp:中 小 脳 脚,ox:視 交 叉,Ol:下 オ リー ブ核,OPT:上 丘 オ リー ブ 核,PFL: 傍 片 葉,scp:上 小 脳 脚,V:小 脳 虫部.(そ の他 の略 語 は 表1を 参 照 の こ と)
層 で 多 く認 め ら れ た が,CA-1 (1.1±1.0個) の錐 体 細 胞 層 に は 非 常 に 少 な か っ た. 間 脳 で は,視 床 下 部 の 多 くの 領 域 に は 上 記 の よ う にMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 が 多 く見 ら れ た が,視 交 叉 上 核 に はMn-SOD様 陽 性 細 胞 が 殆 ど み られ な か っ た.大 部 分 の視 床 核 に はMn-SOD様 陽 性 細 胞 を 認 め な か っ たが, 視 床 の 外 側 表 面 を被 う視 床 網 様 核 と視 床 前 背 側 核 に はMn-SOD様 免 疫 反 応 陽性 を示 す 中 等 大 紡 錘 形 の 細 胞 が 多 く分 布 して い た(表1,図1). 中脳 以 下 の 脳 幹 で は,脳 神 経 諸 核 の 細 胞 はMn -SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 を 呈 し て い た. 上 丘 で は 視 索 層 内 に あ る 中 等 大 多角 形 細 胞 の 多 く(10.1±1.3個)がMn-SOD様 免 疫 反 応 陽 性 を示 し,中 間 灰 白層(4.9±1.4個)お よ び深 灰 白層(4.3±1.3個)で はMn-SOD陽 性 を示 す 大 型 多角 形 細 胞 は 少 な か っ た.中 脳 中 心 灰 白質 に はMn-SOD様 陽 性 細 胞 が 多 く(12.8±1.5個) 存 在 し,特 に そ の 背 側 部 で 目立 っ て い た.赤 核 (10.1±1.9個)や 黒 質 網 様 部(7.2±0.8個)と 緻 密 部(6.7±0.5個)に も 中 等 大 のMn-SOD様 陽 性 細 胞 が 比 較 的 多 く見 ら れ た.背 側 縫 線 核 (7.3±0.5個)で は大 型 のMn-SOD様 陽 性 細 胞 が 強 く免 疫 染 色 さ れ た.網 様 体 で は 大 型 多 角 形 で樹 状 突 起 を 長 く伸 ば す 細 胞 にMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 陽性 反 応 が み られ た. 大 脳 皮 質(新 皮 質)のMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 分 布 パ タ ー ン は ど の 部 位 で もほ ぼ 同 様 で,第 Ⅱ か ら 第 Ⅳ 層 に か け て 広 く分 布 し て い た が,第 Ⅱ 層(3.2±0.4個)と 第Ⅳ 層 (3.9±0.4個)の 顆 粒 細 胞 に は 少 な く,第 Ⅲ 層 (6.9±0.4個)お よ び 第 Ⅴ 層(6.3±0.5個)の 大 型 錐 体 細 胞,第 Ⅵ 層 の 中 等 大 多 角 形 細 胞 (4.6±0.6個)で 陽 性 を示 す もの が 多 か っ た. な お,第 Ⅵ 層 の 基 底 部 で 多 角 形 のMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞(7.7±0.4個)が 皮 質 下 白質 の 背 側 に2∼3列 の 層 状 配 列 を と っ て い る の が 特 徴 的 で あ っ た(図4A,矢 印).単 位 面 積 当 た り のMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 を 第 Ⅲ 層 か ら第 Ⅴ 層 にか け て 比 べ たが, 前 頭 葉(5.3±0.8個),頭 頂 葉(5.7±0.9個)お よ び後 頭 葉(5.6±0.6個)間 で 有 意 差 は 認 め ら れ なか っ た.小 脳 皮 質 で は,プ ル キ ン エ 細 胞 は 全 てMn-SOD様 免 疫 反 応 陽 性 を示 し た が,分 子 層 の 小 型 な い し 中等 大 細 胞 お よ び 顆 粒 層 の 顆 粒 細 胞 の 少 数 の もの が 抗Mn-SOD抗 体 に 弱 陽 性 を示 した.小 脳 核 に は,中 等 大 な い し大 型 円 形 お よ び 多角 形 のMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞(4.6±0.5個)が 少 数 見 られ た. 2) Cu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 正 常 成 体 ラ ッ ト脳 に お け るCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 は小 型 円 形 で,細 胞 質, 細 胞核 お よ び 樹 状 突 起 と もに 抗Cu/Zn-SOD抗 体 で 一 様 に 染 ま っ て い た(図1B). Cu/Zn-SOD 様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の う ち,細 胞 質 に 富 み 突 起 の 短 く太 い もの は 主 と し て 灰 白 質 に, 細 長 く分 岐 の 少 な い 突 起 を 持 つ も の は 主 に 白 質 に 分 布 して い た.正 常 ラ ッ ト脳 に お け るCu/Zn -SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 分 布 密 度 は,嗅 球(3.6±0.4個),大 脳 皮 質(3.6±0.6個), 小 脳 皮 質(3.8±0.2個),脳 幹(中 脳 被 蓋3.9± 0.8個,橋 底 部3.7±0.5個,延 髄3.6±0.4個)を 通 して,ほ ぼ 同 じで あ っ た.海 馬 に お い て,小 型 円 形 のCu/Zn-SOD様 陽 性 細 胞 は 歯 状 回顆 粒 細 胞 層 の 基 底 部 と 多形 細 胞 層 の 間 に ほ ぼ 一 列 に 並 ん で い た.小 脳 皮 質 神 経 細 胞 層 に は,Cu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陰 性 の プ ル キ ン エ細 胞 に 隣 接 してCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 が 認 め ら れ たが,突 起 を分 子 層 に 長 く垂 直 に伸 ば し て お り,バ ー グ マ ン グ リア と考 え ら れ た. 3) 二 重 標 識 に よ る 解 析 大 脳 や 小 脳 皮 質 お よ び 脳 神 経 諸 核 で 見 ら れ た 大 型 錐 体 形 お よ び 多角 形 のMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 は,抗GFAP抗 体 で は 免 疫 染 色 さ れ な か っ た(図3A).し か し,脳 内 に ほ ぼ 均 等 に 分 布 し て い る小 型 円 形 のCu/Zn-SOD 様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 殆 どす べ て が, 抗GFAPに 対 し陽 性 反 応 を示 した(図3B). 2.大 脳 皮 質 内FeCl3注 入 後 のSODs様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽性 細 胞 の 変 化: 大 脳 皮 質 感 覚 運 動 領 野 にFeCl3 (pH 1.8), 酸 性 化 生 食 水(pH 1.8)お よ び 生 食 水 を そ れ ぞ れ 微 量 注 入 後,2お よ び6時 間 の 注 入 隣 接 部 皮 質(後 述)に お け る 単 位 面 積(1002μm2)当 た り
図3 抗Mn-SODポ リク ロー ナ ル抗体 と抗GFAPモ ノ クロー ナ ル 抗体(A),抗Cu/Zn-SODポ リクロー ナ ル 抗 体 と抗GFAPモ ノ クロー ナ ル抗 体 に よ る二重 標 識(B).ス ケー ル:30μm
A. 感 覚 運 動領 野 第Ⅲ 層 に おけ るMn-SOD様 免 疫 組 織化 学 反 応 陽性 の錐 体 細 胞(矢 頭)で,GFAP様 免 疫 反 応 陽性 を示 す もの(矢 印)は 見 られ な か っ た.
B. 感 覚 運 動領 野 第 Ⅲ 層 に お け るCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織化 学 反 応 陽 性 細胞(小 型 円形 の 細 胞体 に注 目, 矢 頭)の 殆 ど全 てはGFAP免 疫 反 応 陽性(突 起 に 注 目,矢 印)で あ っ た.
図4 FeCl3注 入後 の注 入 部位 とそ の隣 接 皮質 部 に見 られ たMn-SOD様(A,注 入2時 間 後)お よびCu/Zn-SOD様(B,注 入6時 間後)免 疫組 織 化 学 反 応 陽性 細 胞.
*:注 入 隣 接 部皮 質,IS:注 入部 位,m:皮 質 下 白質,矢 印:層 状 配 列 したMn-SOD様 免 疫組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞,ス ケー ル:200μm.
のMn-SOD様 お よ びCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞数 を計 測 し た.FeCl3注 入例 で は,局 所 性 出 血 や 壊 死 を起 こ し た 注 入 部 位(図 4Aお よ びB;IS)の 外 縁 か ら300-500μm幅 の 狭 い 範 囲(図4,*;注 入 隣 接 部 皮 質)内 で, Mn-SOD様 お よ びCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 に 変 化 が 見 ら れ た(図4Aお よびB). 1) Mn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 注 入 後2時 間 で,FeCl3注 入 例 の 注 入 隣 接 部 皮 質 に お け るMn-SOD様 免 疫 反 応 陽 性 細 胞 数 は,酸 性 化 生 食 水 注 入 例 や 生 食 水 注 入 例 の そ れ ら よ り も著 し く多 か っ た(p<0.01)が,他 方, FeCl3注 入6時 間 後 のMn-SOD様 免 疫 反 応 陽 性 細 胞 数 は,酸 性 化 生 食 水 注 入 例 や 生 食 水 注 入 例 と比 較 し て も有 意 差 は 認 め られ な か っ た(図 5A). 2) Cu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 注 入 隣 接 部 皮 質 に 観 察 さ れ たCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 は,FeCl3注 入 後 2時 間 で は,酸 性 化 生 食 水 注 入 例 や 生 食 水 注 入 例 の そ れ ら と く らべ て 有 意 差 が な か っ た が,注 入 後6時 間 で は,FeCl3注 入 例 のCu/Zn-SOD 様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 は 他2溶 液 注 入 例 に くらべ て有 意 に 多 か った(p<0.01;図5B). な お,注 入 後2お よ び6時 間例 に お け るMn-お よ びCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 の う ち,酸 性 化 生 食 水 注 入 例 と生 食 水 注 入 例 との 間 で は 有 意 差 は な か っ た.ま た,大 脳 皮 質 感 覚 運 動 領 野 へ のFeCl3注 入 後,注 入 側 の 前 頭 葉 や 後 頭 葉 皮 質 に お け るMn-お よ びCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 を 注 入2 時 間 後 と6時 間 後 とで 計 測 した が,い ず れ も無 処 置 例 の 陽 性 細 胞 数 と比 較 して 有 意 の 差 が な か っ た(表2). 考 察 1. SODs様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の ラ ッ ト脳 内分 布 に つ い て: 今 回,特 異 抗 体7)に よ る免 疫 組 織 化 学 的 手 法 で Mn-お よ びCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 成 体 ラ ッ ト脳 内 分 布 を調 べ た と こ ろ, 図5 FeCl3 (pH 1.8),酸 性化 生 食水(pH 1.8) お よび生 食 水 注入 例 に お け る,注 入隣 接 部 皮 質 のMn-SOD様 お よびCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽性 細 胞数 の変 化. _??_:FeCl3注 入例,_??_:酸 性 化 生 食 水 注 入例,_??_:生 食 水 注 入例 *: p<0.01で 有意 差 の あ った組 合 わせ(N= 18) A. Mn-SOD様 免疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 の 注 入2時 間 お よび6時 間 後 の変 化. B. Cu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽性 細 胞 数 の 注入2時 間 お よ び6時 間後 の 変化 .
生 理 状 態 下 でMn-SODは 脳 内 の す べ て の 細 胞 に 一 様 に 存 在 す る の で は な く,陽 性 細 胞 の 分 布 領 域 と密 度 に 偏 りが 見 られ た の に 対 し,Cu/Zn-SODは 脳 内 に 比 較 的 均 等 に分 布 して い る こ とが 判 か っ た. 表2 FeCl3注 入部 よ り遠 隔 の大 脳 皮質 にお け るMn-お よびCu/Zn-SOD 様 免 疫 組 織化 学 反 応 陽 性細 胞 数 *: 注入 側 平 均値 ±標 準 偏 差,N=10 1) Mn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の分 布 抗Mn-SOD抗 体 で 免 疫 染 色 さ れ る主 な 細 胞 は,皮 質 お よ び 神 経 核 内 の 中 等 大 な い し大 型 錐 体 形 お よ び 多角 形 細 胞 で あ る こ と,抗GFAP抗 体 とは 反 応 しな い こ とか ら,ニ ュ ー ロ ン で あ る こ とが 示 唆 さ れ た.そ の 分 布 領 域 は表1と 図2 に 示 し た様 に,視 床 下 部 や 辺 縁 系 に属 す る諸 構 造 で特 に 高 密 度 に 見 ら れ た.Mn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 脳 内 分 布 が 不 均 等 で あ る こ と は 、Zhangら8)が63歳 か ら92歳 の21例 の 人 脳 の 剖 検 で も報 告 し て い る.人 脳 で はMn-SOD様 免 疫 反 応 陽 性 ニ ュ ー ロ ン は 新 線 条 体 黒 質,諸 脳 神 経 核,小 脳 皮 質,海 馬 お よ び網 様 体 に 多 く, 視 床 下 部 に は 少 な い と して い る.し か し,彼 ら8) は 分 布 密 度 の 半 定 量 的 解 析 を行 っ て お ら ず,今 回 の ラ ッ トの 所 見 と量 的 な 比 較 は で き な い が, 人 脳 で のMn-SOD陽 性 細 胞 の 出 現 領 域 を 比 べ る と,ラ ッ トの そ れ とか な り一 致 して い た. ラ ッ ト脳 を 短 時 間 虚 血 後,血 流 を再 開 させ る と,海 馬CA-1領 域 の 錐 体 細 胞 の ほ と ん ど全 て が 変 性 ・壊 死 に 陥 るが,CA-3領 域 の 錐 体 細 胞 に は 変 化 が み られ な い こ と12),お よ びMn-SOD の 活 性 もCA-1で 早 期 に 減 弱 ・消 失 す る こ と13) が 指 摘 さ れ て い る.今 回 の 観 察 で もCA-1の 錐 体 細 胞 はCA-3の そ れ に 比 べ てMn-SOD陽 性 細 胞 が 著 し く少 な い こ とが 判 明 し,CA-1の 錐 体 細 胞 は 虚 血 後 の 血 液 再 潅 流 に よ る酸 素 毒 性 に 対 す る 耐 性 が 他 の 海 馬 皮 質 領 域 に 比 べ て 弱 い こ とが 示 唆 さ れ た. 今 回 の観 察 で,生 理 的 条 件 下 でMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 分 布 密 度 が 高 い 領 域 に は,ド パ ミン ニ ュー ロ ン の 細 胞 体 が 多 く認 め ら れ る領 域(視 床 下 部 弓状 核,同 脳 室 周 囲 層, 同 後 側 野,中 脳 中 心 灰 白質14))が 含 ま れ て い た. ドパ ミン ニ ュ ー ロ ン の 神 経 終 末 で は,ド パ ミン の 代 謝 産 物 で あ る6-ヒ ドロ シ キ ドパ ミンが 自動 酸 化 を受 け る 過 程 でH2O2が 生 成 さ れ る こ とが 知 ら れ て い る15).こ こ に ス ー パ ー オ キ シ ド(O2) が 存 在 し,し か も触 媒 量 程 度 で もFe3+な ど の 金 属 イ オ ンが 共 存 す れば,O2が 金 属 イオ ン をFe2+ な ど の 遷 移 金 属 イ オ ン に 変 換 し,こ の 遷 移 金 属 イ オ ン がH2O2を 還 元 し て 細 胞 毒 性 の 強 い ヒ ド ロ キ シ ラ ジ カ ル を発 生 させ る こ とに な る15).こ れ を防 御 す る た め,ド パ ミン ニ ュ ー ロ ン の神 経 終 末 で はMn-SODの 濃 度 が 高 い 可 能 性 が 考 え ら れ,こ のMn-SODを 供 給 す る た め に ドパ ミ ン ニ ュー ロ ン の 細 胞 体 で の 産 生 量 が 多 い の で は な い か と推 論 さ れ る. グ ル タ ミナ ー ゼ に 対 す る免 疫 染 色 で,グ ル タ メ ー トを化 学 伝 達 物 質 と し て い るニ ュ ー ロ ン を 染 め る と,海 馬CA-3錐 体 細 胞 と新 皮 質 第 Ⅴ 層 お よび 第 Ⅵ 層 深 部 の ニ ュ ー ロ ン が 強 く染 ま っ て く る16)が,こ れ ら の 部 位 もMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 分 布 域 と重 な っ て い た.
ま た,GABA含 有 ニ ュー ロ ンの 見 られ る領 域(内 側 中 隔 核17),対 角 帯17),新 皮 質 の 非 錐 体 細 胞18), 小 脳 皮 質18),視 床 網 様 核18)19))の 細 胞 体 に も抗 Mn-SOD抗 体 に 対 す る免 疫 染 色 性 が 認 め られ た が,そ の 生 理 的 意 義 に つ い て は 現 在 の と こ ろ 明 らか で は な い. 脳 は鉄 を比 較 的 多 く含 む 組 織 で あ り20),鉄を染 め 出すPerl-DAB法 とい っ た組 織 化 学 染 色21), あ るい は フ ェ リチ ン に対 す る免 疫 組 織 化 学 法22)23) で 嗅 結 節,外 側 中 隔 核,扁 桃 体 中 心 核,視 床 下 部 室 傍 核,視 索 上 核 お よ び視 交 叉 上 核,視 床 内 側 手 綱 核,蝸 牛 神 経 核,小 脳 プ ル キ ンエ 細 胞 な どで 鉄 含 有 ニ ュー ロ ン が 多 い こ とが 判 明 し た. こ れ らの領 域 の 多 くが 今 回 見 られ たMn-SOD様 免 疫 反 応 陽 性 細 胞 の 分 布 域 と対 応 して お り,同 一 ニ ュ ー ロ ン 内 にMn-SODと 鉄 が 共 存 す る 可 能 性 が 強 い.細 胞 内 に 存 在 す る遊 離 鉄 は,脂 質 過 酸 化 反 応 に 関 与 した り,す で に 述 べ た よ うに H2O2が ・OHに 変 換 さ れ る 際 の 重 要 な 触 媒2)と して 働 い て お り,さ らに 鉄 は 生 理 活 性 物 質 の代 謝 や 酸 化 反 応 に 関 係 が あ る 多種 の 酵 素 に も含 ま れ てお り20),活性 酸 素 と鉄 との 関 連 は密 接 で あ る. 2) Cu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 分 布: 今 回 の 観 察 で は,脳 内 のCu/Zn-SOD様 免 疫 反 応 陽 性 細 胞 は小 型 円 形 で,灰 白質 と 白質 と も ほ ぼ 均 等 に 分 布 し て い た.し か もCu/Zn-SOD 様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 殆 どす べ て が 抗 GFAP抗 体 で 二 重 標 識 され た こ とか ら,か な り の も の が ア ス トロ グ リア で あ る24)と考 え られ た. B.大 脳 皮 質 内FeCl3注 入 後 のSODs免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 の 変 動: FeCl3を 大 脳 皮 質 感 覚 運 動 領 野 に 注 入 す る と, 注 入 部 位 に 鉄 イ オ ン を介 して 酸 化 に よ る傷 害 が 惹 起 され る10)が,今 回の 実 験 で 注 入 部 外 縁 よ り300 -500μm幅 の 狭 い 範 囲 の 皮 質(注 入 隣 接 部 皮 質) 内 で 早 期(注 入 後2時 間)にMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 数 の 有 意 な増 加 が 観 察 さ れ た.注 入 隣 接 部 皮 質 のMn-SOD様 免 疫 反 応 陽 性 細 胞 数 の 増 加 は 一 過 性 では な く,注 入2∼3 日後 に 再 度 観 察 さ れ る25).Mn-SOD陽 性 細 胞 数 が 注 入 後 増 加 す る 機 序 は 今 回 の 実 験 か ら は 明 瞭 な 事 は 言 え な いが,少 な く と もFeCl3注 入 直 後 のMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 の 増 加 は 組 織 内 に 入 っ て 来 た鉄 イ オ ン に よ り発 生 し た 活 性 酸 素 と密 接 に 関 連 す る もの と考 え られ る. な お,in vitroで 鉄 イ オ ン刺 激 に よ る 活 性 酸 素 種 の 増 加 は,グ リア 画 分 よ り もニ ュ ー ロ ン 画 分 で 著 しい26)と報 告 され て お り,今 回 増 加 したMn -SOD陽 性 細 胞 の 多 くが 神 経 細 胞 で あ る可 能 性 が 高 い.ま た,Singh & Pathak10)はFeCl3注 入 に よ るSODs活 性 の 変 動 は,注 入 側 皮 質 に の み 見 られ る と して い るが,今 回 のFeCl3注 入 後 の 免 疫 染 色 所 見 か ら,前 に 述 べ た 様 に,SODsの 誘 導 は 注 入 部 外 縁 か ら500μmま で の 非 常 に 狭 い 範 囲 の 皮 質(注 入 隣 接 部 皮 質)に 限 局 し て い る こ とが わ か っ た. FeCl3の 注 入 に よ りCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 も増 加 し た が,Mn-SOD様 陽 性 細 胞 数 の 増 加 時 期(2時 間 後)に 比 し,か な り遅 れ(6時 間 後)て い た.Tsutsuiら25)は,こ の 増 加 が 鉄 イ オ ン 注 入 後2日 目 ま で 続 くこ と を 報 告 して い る.虚 血 後 の 血 流 再 開 に よ り起 こ る 脳 障 害 とそ れ に と もな う炎 症 で は イ ン ター ロ イ キ ン-1や 腫 瘍 壊 死 因 子(TNF)な ど の サ イ トカ イ ン が 重 要 な役 割 を演 じて い る27)とされ て お り, FeCl3注 入 後 しば ら くして 認 め られ たGFAP陽 性 のCu/Zn-SOD含 有 細 胞 数 の 増 加 は,炎 症 過 程 で産 生 され た サ イ トカ イ ン に よ り生 じ る活 性 酸 素 の 消 去 と何 ら か の 関 連 が あ る もの と思 わ れ る. 結 論 1. 正 常 成 体 ラ ッ ト脳 に お け るMn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 は 主 と して 細 胞 体 の 大 き い 錐 体 形 お よ び 多角 形 細 胞 で あ り,こ れ らの 多 くは 抗GFAP抗 体 で免 疫 染 色 され な い こ と,お よ び細 胞 の 形 態 か らニ ュ ー ロ ン で あ る可 能 性 が 示 唆 さ れ た.Mn-SOD様 免 疫 反 応 陽 性 細 胞 の 脳 内 の 分 布 は 不 均 等 で,神 経 核 に よ り分 布 密 度 に 明 らか な 違 い が 見 られ た.特 に 高 密 度 に 見 られ た 部 位 は視 床 下 部,辺 縁 系 諸 核,視 床 網 様 核,青 斑 核 お よ び 橋 核 で あ っ た. 2. Cu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 の 細 胞 は 小 型 円 形 の 細 胞 体 を も ち,灰 白質 内 お よ
び 白質 内 と も に ほ ぼ 均 等 に 分 布 して お り,し か も これ ら の殆 どす べ て が 抗GFAP抗 体 で 二 重 標 識 さ れ た の で,そ の 大 半 は ア ス トロ グ リ ア と考 え られ た. 3. FeCl3を 大 脳 皮 質 感 覚 運 動 領 野 に 微 量 注 入 す る と,注 入 部 外 縁 か ら300-500μmの 範 囲 内 で 注 入 後2時 間 お よ び6時 間 後 に,Mn-お よ びCu/Zn-SOD様 免 疫 組 織 化 学 反 応 陽 性 細 胞 が そ れ ぞ れ 増 加 し た. 稿 を終 え るに あ た り,終 始御 懇篤 な ご指 導 を賜 わ りま した徳 永 叡教 授(岡 山 大学 医学 部 解剖 学 第三 講 座)に 深謝 い た し ます.ま た 懇切 な ご指 導 と有 益 な ご助 言 を いた だ い た筒 井 公 子講 師(同 上)に 心 か ら感謝 い た し ます.標 本 作 製 な ど多 くの 面 で御 援 助 下 さい ま した竹 内玲 子 氏(同 上)に 厚 くお礼 申 し上 げ ます. な お,本 研 究 は 第19回 日本 神 経 科 学 大会(1996) に お い て発 表 され た. 文 献