長野大学紀要 第14巻第2号 141-150頁 1992
新 しい自律的経営組織の運営 と業績評価 (
下)
― 事 業 部 制 組 織 か ら 小 規 模 事 業 単 位 へ ―
Management and Performance in Divisionalized Organization
4.
小 規模 事業 単位 の運用例 1) 外食産業の店舗別組織 外食産業は、地域別 に独 自な市場 を持 った店 を 中心に部門化が行われている組織である。店舗 を 中心に社会的要請にこたえるとともに業績 を上 げ、 企業のエネルギー と成長力を維持 しているのであ る。 この外食産業の組積構造は、顧客のニー ズに す速 く対応 し、店のイノベー ションを進め、店の 活力を高め ることをね らい として、店 をたばね る 営業本部 もしくは営業部 を中心に各機能部門、 ス タッフ部門がそれ を支 える形で編成 され る。 店舗は、店長 を中心に分権化の進んだ 自律的経 骨単位 であ り、小規模事業単位 として位置づ け ら れ る。店舗、設備、什器備 品、人月、原材料等 を 専有 し、生産、販売 とい う基本的執行活動に専念 している。店長には販売実行戦略の一部、生産実 行戦略の相当部分の決定権限が与 えられ る。 また 日常的には現場の問題解決、調整、業務的意思決 定 に関す る権限が与えられる。 これ らの権限 を用 い、市場に 日を向け、効率の向上 と品質の向上や サー ビスの向上 を中心 として顧客満足の向上 に向 けて努力 し、利益責任、製品管理責任、市場管理 図- 2唐
津
昌
敬
Masataka Karasawa
責任、人材管理責任、資産管理責任 を果 している のである。 この店舗はまさに分権 化組織の一形態 であ り、事業部制 を簡素 に し、小規模 に展開 し、 機動力 を高めた ものである。 小規模事業単位制の運営は、全体の規模によっ て若干異なる。外食産業においては店舗か らの現 場情報は極めて重要 なので、店舗 数が1
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前後の小 規模 な場合は図-2
のように社長 が直轄す ること が 多い。 この場合委譲す る権 限の範囲は店舗 の規 模 によって影響 されない。原則通 り、分権化の程 度は店長の能力に依存す る。店舗数が若干増えて も、管理部 門を充実 し、社長のス タッフを揃 える ことによ り効率 を維持す ることが できる。 このフラッ トな社長中心の組織 は、次に掲げる 諸条件 を清す場合大変効率 の良い組織になる。 ①社長の能力が高 くかつ体力があ る。特に現状 を す速 く理解す る能力 と計画や指示 を明瞭簡潔に 伝 えるコ ミュニケー ション能力 に優れている場 合 である。 (参部下の訓練が行 き届いてい る.部下の能力が高 く、訓練が行 き届いていれば問題の多 くが管理 者 レベルで解決 され、 ト/プに持 ち込 まれない。唐洋昌敬 新 しい 自律的経営組織の運営 と業績評価 (下) また部下の 自己調整力 も高いので調整の問題が 著 しく減少す る。 さらに、 タイム リーに要領の 良い報告、連絡が行 なわれ るので現状把握のた めの トノブの負担 も減少す る。外食産業におい ては、創業時か らのベテラン店長が多い場合 は、 この形態は極めて高い効率 を発揮す る。 ③職務権 限の明確化 と権限委譲 ④公式の コ ミュニケー ション経路の明確化、毎 日、 そ して毎月何が どの ような形で報告 され るべ き かが明確に定め られていること。そ してそれが 確実に トyプに伝 え られていること。売上、原 価率、解決すべ き課題、新 しい市場の変化 など が過不足な く、 タイム リーに ト/プに伝 わるこ とであ る。 G)仕事の主要 な部分が定型化、マニュアル化 して お り、 トノブが時間 をさ くべ き例外事項が少 な い。 (参内外の社長への助言機能 を充実 し、頭脳的部分 を強化す る。 ワンマ ン経営は、時々、全体 の方 向づけ を誤 った り、新 しい市場の変化 を見誤 る こ とが ある。 したが って内外の頭脳の力 を結集 し、 トyプの豆別送の力を高め る必要がある. ⑦ ラインの活動 を促進 し、援助す るスタッフ部 門 を充実す る。 以上の ような前提 を満すことによ り社長中心の 組織 では次の ようなメ リッ トが生 まれ る。 (む社長 を中心 に、機動力、行動力のある組織 とな り市場への対応 も速 くなる。 142 ②社長の方針が会社全体 に浸透す る。 ③社長 のや る気、人間性が従業員ひ とりひ とりに 伝 わ る。 ④人員増、それに伴 うコス ト増が避け られ る。 ⑤情報の流れが速 くなる。 ⑥指示が末端 まで行 き届 き、画一的な行動が期待 できる。 また同時に次のようなデ メ リッ トが発生す る可能 性があ る。 ①社長の頭脳の力 を高めない と、変化が大 きくな るにつれて対応力が落 ちて くる。 ②例外事項が多い と対応がで きな くなる。 ③衆知 を結集す ることができな くなる。社 内の様 々な能力 を結集 して問題 を解決す るこ とが困粍 となる。 ④ スタッフを充実 しない と戦略立案部分 が弱 くな る。 (9社長 のや る気 と倫理観が落 ちると、全体 の活力 は低下す る。 以上の前提条件 を満た し、デ メリッ トの発生 を最 少化す る配慮 をすれば社長中心の小規模事業単位 制は、集権 と分権のバランスの取れた、大変パワ フルな戦闘集団 となる。 しか しなが ら社長 を中心に した小規模事業単位 のフラッ トな運営は、店舗数が相 当数にのぼ る場 合明 らかに管理 限界が発生す る。店舗数が
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を超 えた中規模 な外食産業においては、一般的に は図-3
のように地域、業態、規模 (大型店、小型 店 ) な どの一 定 基 準 で複 数 店舗 を ま とめ た プ ロ ブ ロ ッ ク をた ば ね る本 部 長 に社 長 の権 限 のか な り ッ ク制 を とるこ とが 多い。 但 しこの場 合 で も新 業 の部 分 を包括 的 に委 譲 し、 本 部 制 を し くこ と もで 態 等 、戦 略 的 に重 要 な店 舗 につ い て は社 長 が 直 轄 きる。 この場 合 社 長 は ビ ジ ョン作 り、 戦 略 的 意 思 す るこ と もあ る。 決 定 、 ネ ッ トワー ク作 り等 高 度 な仕事 に専 念 で き 社 長 の他 に社 長 の能 力 に近 い人材 が い る場 合 は、 る。 表- 1 権限の体系 ト ッ プ の 権 限 経営会議 で 人事委員会 開発委員会 立 案 に営 業 本 経営企画室 審議決定 で審議決定 で審議決定 部長、参 考 に され るロックマネ- ジャー の 意 見 が部長、7■等 スタッフが 立 案 に 協力す る (戦略的意思決定) ・経営理 念、経営方針の変更、調整
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・新 しい事業概念の創造◎
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・長期 目標の決定◎
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・全社 的経営戦略の立案 と決定◎
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・会社形態に関す る事項 の決定社名、資本金、役員構成、商標 ・全社 資産の調達 と処分◎
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・財務計画の立案 と決定◎
・ブロ ックの (店舗 の)長期 目標の決定◎
・ブロックの (店舗 の)長期方針の決定 ・当該年度の 目標の決定 ・当該年度の方針の決定 ・商品開発計画の決定(管理 的意思決定) ・組織構造の立案 と決定責任 と権 限の体系の変更組織改善 ・要員計画 の立案 と決定◎
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唐津昌敬 新 しい自律的経営組織の運営と業績評価 (下) ・店舗の新設、縮小、強化、統合、再編 成、廃止 (業務的意思決定) ・全社的利益計画の立案 と決定 (予算編成方針の立案 と決定) ・販売品 目の決定 ・販売価格の決定 ・メニュー内容の決定 ・調理、サー ビス手順の決定 ・使用原材料の内容の決定 ・各部門間に発生 した問題の調整 ・人事考課 ・営業部 (ブロック)の利益計画の審議 と決定 ・全体予算の審議決定 ・公告宣伝の決定 144 営業本部長の権限 ・ブロックの (店舗の)長期 目標の立案 ・ブロックの (店舗の)長期方針の立案 ・ブ ロックの (店舗の) 目標の決定 ・ブ ロックの (店舗の)方針の決定 ・営業部の利益計画の立案 (利益目標と予算編成方針) ・ブ ロックの利益計画の立案、予算編成の支援 ・販売促進策の決定 ブ ロックマネ- ジヤ-の檀限 ブロックの 目標の立案 7○ロックの方針の立案 店舗の 目標の立案 と決定 店舗 の方針の立案 と決定 ブロックの利益計画の立案 (ブ ロックの予算編成方針の立案) 販売促進策の立案 類 1 商品組み合 わせ計画 (販売品 目)の立案 ※ 1 販売価格計画の立案 ' 1 メニュー内容の立案 簸2 調理 .サー ビス手順の立案 ※2 使用原材料 内容の立案 #1 店舗別業務改善の実行計画の決定 店舗別業務改善の実行計画の支援 * 1.店長、開発課長、購買課長 と共 同 して立案す る。店長の意向が強 く反映され る(承認は トノ70) 店長の権限 予算立案 業務改善の実行計画の立案 販売促進策の立案 商品組み合わせ計画 (販売計画)の立案 販売価格計画の立案 メニュー内容の立案 調理、サー ビス手順の立案 使用原材料の内容の立案 正社員の人事計画の立案 購入計画の立案 (購入品 E]) 店舗発注の決定 (品目、数量) 店舗 内の業務割 当ての決定 店舗 内の勤務時間の決定 店舗 内の配置の決定 店舗 内の休 日、休暇の決定 小店 の現金支出 パ- ト、アルバ イ トの採用 と賃金決定 店舗 内の教育訓練 この よ うな 中規模 な外 食産 業 にお いて は、次 の よ うな権 限 の体 系 の も とで市場 変 化 に弾 力的 に対 応す る とと もに資源 を効 率 的 に利用 す るマ ネ ジメ ン トコン トロー ルが行 なわれ る。 外 食産業 では この よ うな責 任 と権 限 の体 系 の も とに、 多様 化 、細分化 して い る市場 に弾 力 的 に対 応す る とと もに効率 と活動 の統一 性を維 持 しよ う として い るの であ る。
145 長野大学紀要 第14巻 第 2号 1992 この権 限の体系の うち特に重要 な権限は利益計 画の立案 に関す る権 限 とそれに伴 う各種実行戦略 の立案 の権 限である。 この一連の権 限 を中心 に 日 常 の活動 は体系化 され、一定の活動 の質が維持 さ れ る とともに業績が達 成 され るのである。全社 目 標、全社利益計画 を実 現すべ (、全社方針、予算 編成方針 に もとづ きブ ロックの 目標 ・方針、利益 計画 を立案す る。ブ ロ ックマネー ジャーは利益計 画の前提 となる販売 品 目、価格、 メニュー 内容、 販売促進、使用原材料 等につ いて店長 と密接に協 議す る とともに売上 と原価の予測 を行 ない、店舗 別 に利益 目標等の決定 を行 な う。 そ してその集約 としてブロックの利益 計画 を立案す るのである。 この過程 において各店舗におけ る問題点、経営課 題 につ いて話 し合 いが行 なわれ る。何故売上が伸 び悩 んでいるのか、何 故原材料 費率 が高いのか、 何故歩留 りが悪 いのか、何故人の効率が悪いのか 等の問題点につ いて原 因を明 らかにす るとともに 可能 な対応策の追求 が行 なわれ るのであ る。 これ らの課題 と対応策が明確にされていれば、後 日、 各店舗 で編成 され る予 算は確実 な裏付けのある実 行 計画 に支 え られた ものになるのでめ る。変化 に 弾力的 に対応す るため には、各種 目標 を達成す る ための実行計画は、収 益 と費用の発生原因に近 い ところで決定 され る必要があ るのでこのプ ロセス は重要 である。 また、経営企画室等 で全体の利益 計画 を立案す る場合 もブロックマネー ジャーや必 要 に応 じて店長 に対 す るヒア リングが行 なわれ る ので、ブ ロックマネー ジャー は常 にこの問題 につ いて店長 と協議 してい る必要が ある。 店長 には利益計画 の立案に関す る権 限はないが、 ブ ロックマネー ジャー が利益計画 を立案す るさい に、店長の意見が大 幅 に採用 され るので実質的に 利益計画の立案 に参加 してい る。 また、間接的で はあ るが、経営企画室 の ヒア リングを通 して全社 的利益計画の立案 に も参加 してい る。 したが って 行動計画が店長主導型 で決定 され るこ とと併せ て、 店長 の参加の程度は大 変高 く、 その個性 と自発性 を十分 に発揮す る前提 は整備 されているのである。 この よ うな手順 を経 ることに よ り活動 の合理性が 高 まる とともに参加 を通 して店長のや る気 も高 ま りどん どん変化 して い る多様化、細分化 された市 場 の要請 に弾力的に こたえ、適切 な価格 で、必要 とされ る品質 とサー ビスを過不 足 な く提供す る各 種実行戦略 を立案 し、 それ をどん どん実践 してい くようになるのである。 またそれ と併せ て、一定 の業績 を確保す るこ ともで きるのであ る。 この よ うな権 限の体系が原則 であるが、ブロッ クマネー ジャーの能力が十分 に成 熟 していない場 合、 このブロック利益計画の立案 に関す る権 限が 営業本部長 もし くは経営企画室 に留保 され る場合 があ る。営業本部長がブロ ックマ ネー ジャー と協 議 しなが ら作成す る場合、営業本部長 と経営企画 室が協力 して作成す る場合、経営企画室が専 門権 限 を持 って作成す る場合が考 え られ るが、 いずれ の場合 も、ブ ロックマネー ジャー は、利益計画の 立案 の重複か らはずれ るのであ る。 この場合、マ ネー ジャーは、上か らの方針 を店舗 に伝 えるとと もに、店舗 の現況 を上 に伝 えるコ ミュニケー シ ョ ンの キー ステー ションの役割 を果す こ と。 また、 日常的には店舗 の問題解決 を応援す るこ とが重要 な役割 となる。 規模が さらに拡大す ると地域別 もし くは業態別 に複数 の営業本部長 を置 き対応 してい く。営業本 部長が経営者 に近 い能力 を有 してい る場合、 よ り 多 くの権 限 を与 えるとともに管轄す る機能 を加 え、 図
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の よ うに事業部制組織 を採用す るこ とが あ る。東京、名古屋、大阪な ど地理 的に艶れかつ市 場 ニー ズ も全 く異なった分 野でそれぞれ集約的に 事業展開す る場合、和食、洋食、 中華 な ど業態の 全 く異 なった複数の事業 を大規模 に展開す る場合 に採用 され る。 この場合、 それ ぞれの営業本部 に は、従来の生産、販売機能 の他 に、市場 ごとに、 業態 ご とにその内容、質が全 く異 なる購買機能、 商品開発機能、加工機能な どが必要に応 じて加 え られ る。 またその独 自性、個別性 の高いその営業 本部 の利益計画の立案、価格政策 ・プ ロダク トミ ックス ・販売促進の立案 と決定 に関す る権 限は営 業本部長 に与 え られ る。 この他、 トップが行 な う 営業本部 の投 資、要員計画、長期 目標、長期方針 の立案 に も積極的に参加 してい く。 中堅企業の外 食産業において も、ブロックご と に業態が著 しく異な りかつ ブ ロ ックマネー ジャー に優秀 な人材が いる場合 は、ブ ロックの活動分 野 を広 げ る とともにブ ロックマネー ジャーに よ り多 くの権 限 を与 え、ブ ロックを事 業部 とした事業部昏揮 昌敬 新 しい自律的経営組織の運営 と業績評価 (下) 図- 5 小規模事業単位 と利益計画の関係 146 店 _良 ブロックマネージャー 経営企画室 社 長(経営会議 ) 竿 7リン7 ? Fアリング 三 三↓ ∴ 協
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J 年 度 目 標 l 年 度 方 針 利 益 計 画 (案 ) (芸益昆標呈予芸)r
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7.I" 9 1 ■ (寡147 長野大学紀要 第14巻 第2号 1992 別組織 を採用す ることがある。事業部制採用に伴 って発生す るデ メ リッ トを最少化す ることがで き れば、 この組織形態は独立会社の連合体に近 いコ ンパ ク トな戦闘集団 とな り、組織 を複数の 自立性 の高い自己完結的な組織に分割す るとい う理想に 近 くな り、市場への対応力、効率 と活動の統一 性 はより一層高 まるのである。 2) 外 食産業の業績管理会計 外食産業の店舗 も店長の権限が収益、費用の構 成要素 と発生原因に直接及ぶプ ロフィッ トセンタ ー なので利益 を中心に業績が把握 され管理 され る。 店長の責任 (目標)には品質の向上、サー ビスの 向上、部下の指導、教育 とい う重要 な もの もある が、 これ らの成果は、売上の増加 と収益性の改善 に集約 されるもの と考 えられ、個々の項 目は店長 の業績評価 として取 り上げ られ ることは少ない。 これ らの項 目は通常の人事考課 と併せ て行 なわれ るのが一般的である。 したが って外食産業の店舗 の業績評価において も利益が重要 な役割 を果すの である。 外食産業の店舗の利益は原則 として次のように して計算 され る。 売上 高 原材料 費 売上総利益 (変 動 費) 臨時人件費 水道光熱費 消耗 品費 (管理可能固定費) 人件費 環境衛生費 修繕 費 販売促進費 営業利益(1) 家賃 減価償却費 租税公課 保 険料 営業利益(2) 共通 費 本社 経費 社 内金利 純利益 臨時的人件費はパー トアルバ イ トの賃金 と残業 手当である。人件費は正規社員の給料 と福利厚生 費である。人員の採用 ・移動 は年 1回を原則 とし ている企業が多いので期 中の仕事 の量の増減はパ ー トアルバ イ トの採用、残業時間で調整 している。 特に外食産業においてはパー ト、アルバ イ トを中 心 に弾力的なフォー メー ションを組んでいるので、 この臨時的人件費の割合は高い。 G社の例 では労 働 時間で正社員1に対 してパー ト・アルバ イ ト2 の割合 になっている。 したがって管理可能変動費 としてこの臨時的人件費管理が、外食産業の収益
唐洋 昌敬 新 しい 自律的経営組織の運営 と業績評価 (下) 性管理の重要 なポイン トとなる。 これに対 して店 長 ・次長等の正規社員の給料は どうであろ うか。 店長以下の正規社員の給料 は、予算編成時にその 人数について店長の意見が反映 され るので管理可 能費である。 また、配属 された正規社員は一定期 間仕事の有無にかかわらずその店舗 に専属 し、仕 事の量に応 じて弾力的に他部 門補助 を行 なう体制 になっていない。地理的に匪れ、責任体制が明確 になっている外食産業においては正規社員の固定 性 は高いのである。 したが って正規社員の給料は 固定 費で もある。 共通費は、購買、物流、商品開発、販売促進等 の各店舗の事業活動に必要 な業務の支援活動 を行 なっている部 門の費用である。各店舗の市場の個 別事情に合わせ て購入す る特殊 な原材料、 日常的 に用 いる少量の物品で一定金基氏以下の ものはその 購入先、購入時期、購入量 を店舗 で決定 し使用 し てい くこ とが合理的であるが、各店舗が共通 して 使用す る原材料 については購買で一括 して購入 し 配送 した方が品揃 え、品質、価格の面で有利であ る。 したがって外食産業においては共通に利用す る原材料については本社で一括 して購入 して、必 要 に応 じて各店舗 に配送 し、 これ らの費用 を一定 の基準で各店舗 に負担 させ てい るこ とになる。セ ン トラルキッチンを採用 している企業においては、 これ らの購買、加工、物流の費用は原材料の内部 振替価格に含 まれ る。商品開発、販売促進につい て も、各店舗 で工夫す るよ りも、本部の専 門部門 の協力をあおいだ方が効果的であるので、 これ ら の機能につ いて も本社 に集 中し、その支援 を受け これ らの活動の質 を高めている。 この場合 も、 こ れ らの部門の費用 を一定の基準で各店舗 に負担 さ せ ることになる。 これ らの共通費をどのような基準で各店舗に負 担 させ るのであ ろうかO原則的にはサー ビス利用 高に応 じて配賦すべ きである。事業部制組織では
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の会社が購買部門費 をサー ビス利用高に応 じて配朕 してい る。 しか しなが ら外食産業におい ては売上高 を基準に して配駄 しているケースが多 い。 本社経費は ト/7〇・マネジメン トおよび経理、 財務 、人事、総務、法務、情報処理、広報、社長 室、企画室等の各機能部 門の経費である。 これ ら 148 は諸活動 を調整 し、会社 を維持す るために必要な 基本的活動 を行 な う部門である。 これ らの部門の 経費は会社運営のためには不可欠な費用なので各 店舗 の利益 でカバー され る必要がある。 したがっ て、 これ らの本社経費 も一定の基準で各店舗に負 担 させ ることになる。事業部制組織では、売上高、 人月、使用資本、限界利益、労務費、付加価値 な どの うちいずれか複数の要素 を組み合 わせ た複合 基準 を用いているが、外食産業においては、単一 基準が用い られている。 社 内金利 は各店舗におけ る使用資本に対 して賦 課 され る金利であるが、事業部制 と異な り社 内金 利 を個別の科 E]として各店舗 に負担 させているこ とは少 ないQ金利 を負担 させ る場合は、使用資本 とは関係な く本社経費に含めて計算す るこ とが多 い。 中規模の外食産業の多 くは、共通費、本社経費、 社 内金利 をまとめて売上高 を基準に配賦 している。 したが って売上高が増加す ると本社費等の負担が 増え、売上高が減少す ると本社経費の負担が減少 す る仕組 となっている。 これは本社経費等は負担 能力に応 じて負担す るとい う考 えの もとに、計算 手続 きの簡素化 とい う要請に もこたえ現在幅広 く 用い られている。 外食産業の店舗の業績評価 も店長の業績評価 目 的 と店舗の収益性判定の 目的 とい う2つの 目的か ら行 なわれ る。外食産業の店長の業績評価 は利益 金視 と利益率、尉 面率 によって行 なわれ るQ外食 産業においては各店舗の利益 の合計が全体 の利益 の源泉 となる。 したがって、店舗別に一定金額以 上の利益の計上が求め られ、それによって業績が 評価 され るのである。 この店長の業績評価 を行 な うにあた り、 どの利益 で業績評価が行 なわれるの であろ うか。外食産業において投資は経営企画室 で立案 され、開発委月会 もしくは経営会議 で審議、 決定 される。店長には投資に対す る決定権 限 も影 響力 もほ とん どないのが一般的である。 したがっ て、家賃、減価償却費、償却資産税、物件 の保険 料は過去の意思決定、上司の意思決定に よって発 生 した店長 に とって管理不能費であ り、店長の業 績は、 これ らの管理不能費 を控除す る前の利益、 営業利益(
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で評価 されることになる。 各店長の業績評価は営業利益(1)を基準 に行われ149 長野大学紀要 第14巻節2号 1992 るが、単純に金田の大小 によって業績評価が行 な われるわけではない。利益金額は立地、他の外食 産業 との競合状態、投資総額、投資時期 によって 著 しく異なるのである。 これ らの要素のほ とん ど が店長に とって管理不能であるのである。 したが って利益金額による業績評価は、金額の大小では な く原則 として営業利益(1)の 目標に対す る達成率 と前年度か らの伸び率 によって行 なわれ る。 店長は 目標 として設定 された利益金額の実現が 求め られ るが、それ と併せて各種問題 を解決 し、 一定のオペ レー シ ョンの質 を維持す るこ とが求め られ る。品質 を向上 させ るとともに、原材料費 を 一定の比率内に収めることである。購入価格は本 社の管理下にあることが多いので店ではその使用 の面での工夫が求め られ る。保管中の ロスの減少、 加工の歩留 りの改善、廃棄の減少等 を通 して原材 料費 を削減す ることが求め られ るのである。 また 顧客サー ビスの向上 と併せて、従業月の配置の工 夫、パー ト、アルバ イ トの勤務時間帯の調整、作 業手順の改善、パー ト・アルバ イ トの短期戦力化、 部下の動機づ けを行 ない人件費が一定の比率の中 に収 まるようにす ることも求め られ るのである。 店舗においてはこの原材料費 と人件費が最 も重要 な管理項 目である。 この原材料費 と人件費の売上 高に対す る好 ましい比率は60%以内 と考 えられて お り、原材料費 と人件費の比率 を600/o以内にす る こ とも各店舗の重要な 目標のひ とつ として取 り上 げ られている。特別販売、値下げ等の価格 を下げ て販売す る場合 を除き、売上が増 えて利益金額が 増 えて も、原材料費率、人件費率等の原価率が上 り、利益率が下ればそれは経営効率が低下 してい ることを意味 し、店長の評価は書帽lかれ るのであ る。 この他
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時間当 りの売上、労働生産性 など が店長活動の評価基準 として用 い られ る。 店長の業績は営業利益(1)、原材料費率、人件費 率、入時生産性等によって行 なわれ るがこれ をス トレー トに店長の昇給昇格、賞与の査定に結びつ けているところは少ない。賞与の一部 に業績 を反 映す るのが一般的である。業績 を賞与に結びつけ る企業は中堅企業以下に多 く、規模が大 き くなる につれて減少 している。 各企業 とも、諸 目標 を達成 した店長 に対 しては、 賞与や人事考課の仕組み とは別に表彰の制度 を設 け動機づけにつなげている。 店長の業績評価 と併せ て全社的見地か ら店舗の 収益性の判定が行 なわれ る。各店舗の収益の発生 状況、 シナ ジー効果 をみなが ら、各店舗の課題 を 明 らかに し、全体の利益 目標 を達 成 してい くので ある。企業全体の利益は店舗が上 げた利益か ら本 部のすべての経費 を控除 して生み 出され る。 した が って店舗の収益性の判定は家賃、減価償却費、 租税公課、保険料 といった管理不能費だけではな く、共通費、本社経費、金利 を控 除 した純利益に よって行 なわれ る。 この純利益の合計が企業全体 の利益 となるのである。 トノブマ ネジメン トは、 各店舗の収益の発生状況 と改善の可能性 を検討 し、 ブ ロックマネー ジャー と相談 しなが ら企業全体の 目標の純利益 をブロックごとに分 割す る。 この 目 標純利益がブロックの利益計画の 内示 とな り、ブ ロックマネー ジャー と店長が協議 し、個々の店舗 別 に 目標の純利益 と解決すべ き課題 を明 らかに し、 ブロックの利益計画立案- とつ なげてい くのであ る。5
.むすび 構造的変化 を中心 とした社会構 造の変化は始 ま ったばか りである。現在発生 して いる新 たな変化 を加 え、社会構造は今 まさに大 き く変わ りつつあ るのであ る。 ひ とりひとりの人間性が尊重 され る 社会へ。機能性 と美的感覚が両立す る社会へ。 グ ローバルな視点か ら自然 と人間性 がバ ランスす る 社会へ。産業 を中心 とした社会か ら、産業 と文化 と宗教 と人間性 と自然が相互作用 す る社会-大 き く移 り変わっているのである。 こういった状況の もとで現在大 きな 2つの流れ が起 こっている。社会 をよ り大 きな原理の もとに 統一 し、ひ とつの秩序 を作 ろ うとす る動 きである。 自然、地球 を切 り口に もの ごとを考 えていこう。 宗教 を中心に横断的協力関係 を築 いていこう。人 種 を中心 に協力関係 を築 き上 げていこうO政治的、 経済的利害 を中心にブロック化 していこうといっ た動 きである。 もうひ とつの流れ は全 く対極的な 動 きである。高 まる個性、民族意 識を中心 とした 多様化、分散化の流れである。 この多様化、分散 化の流れは、国家の レベ ルか ら、経済活動、個人 の生活、芸術に至 るまで社会全体 の様々な分野で唇揮 昌敬 新 しい 自律的経営組織の運営 と業績評価 (下) 見 られる一般的傾向である。本稿 は、 この大 きな 流れのひ とつ である多様化、分散化に対す る対応 策 を企業組織 を中心に具体的に考察 した ものであ る。 新 しい時代 には、それ を支 える思想 とそれにふ さわ しい制度 と仕組みが必要 である。ア メ リカの 産業社会が、拡大す る市場、新 しい技術、新 しい 資源か ら生みだされた様々な要請にこたえ発展す るこ とがで きたのは、それにふ さわ しい組織構造、 経営管理制度、会計統制の方法 を発明 したか らで ある。中央集権的機能部門別組織、分権的複数事 業単位組織、 ライン とスタッフの発明、そしてそ れに続 く事業部制組織の発明によって大規模 な組 織の効率 と活動の統一制は保 たれたのである。 ま たシステム化 、計画化、標準化 を支 える各種経営 管理 の手法の開発、動機づけの手法の開発、業績 評価 を可能にす る会計手法の発明 も、大量生産 ・ 大量販売 を進め る大規模 な組織の よ り良い運営に 大 き く貢献 したのである。社会主義経済が行 き詰 まったのは、 このような組織構造の発明、経営管 理手法の開発、業績評価 を可能にす る会計手法の 発明 とい う大規模 な組織 を運営す るための制度 と 仕組みの整備が著 しく遅れたことが大 きな原因の 150 ひ とつであると考 えられ る。 したが って、 このような多様化、分散化に対応 し、社会が よ り良い形で進歩 してい くには、それ にふ さわ しい制度 と仕組み を工夫す ることが必要 なのである。現在様々な制度 と仕組みの工夫が必 要であるが、本稿 では、 多様化、分散化に伴い事 業分野が細分化 してい (なかで、 どのように して 人々の個性 を豊かにす るとともに組織の効率 と活 動の統一制 を維持 してい くか を、仕事の分担、責 任 と権 限、業績評価、動機づ けに焦点 をあて考察 した。理論的な部分では、現在最 も代表的な分権 化組織 である事業部制組織 と対比 しなが ら、実践 的な部分では、必ず しも理論的に完全ではないが、 現在最 も代表的 な小規模事業単位 である外食産業 の店舗 の事例 を通 して、 その本質、可能性、限界、 実務上解決すべ き課題 を明 らかに した。業種によ り、その環境 と人間の資質は異な り業種別 には小 規模事業単位の道営方法 と展開は若干異なるので 業種別 に実践事例 を増や し理論 をよ り完全 なもの に してい くつ もりである。 (か らさわ まきたか 助教授) (1992. 6.25受理)