抱卵岐阜地鶏の卵巣機能に及ぼす
絶食処理の影響
勝又瑞穂*
ῌ桑山岳人**ῌ門司恭典**ῌ百目鬼郁男**ῌ田中克英**
῏平成 +. 年 ++ 月 ,* 日受付ῌ平成 +/ 年 . 月 ,+ 日受理ῐ 要約 : 就巣性を有している岐阜地鶏に絶食処理を施し῍ 体重及び血中エストラジオ῎ル濃度を測定し῍ それ らの変化と次期産卵日数との関係について検討したῌ 供試鶏は抱卵開始 - 日目より 1 日間絶食処理を実施したῌ 処理開始から毎日 +, : ** に採血及び体重測定 を +/ 日間行ったῌ その結果῍ . 例中 + 例が処理後も抱卵行動を継続したῌ 抱卵行動を継続した個体の体重は処理開始から減 少し続け῍ エストラジオ῎ル濃度は低い値で推移したῌ また῍ 抱卵行動を中止した個体の体重は処理期間中 は減少したが῍ 処理終了後急激な増加を示したῌ エストラジオ῎ル濃度は処理中は低い値で推移していたが῍ 抱卵行動を中止した個体は処理終了後急激に上昇したῌ それらの鶏は絶食処理開始から ,+.*ῒ*.1 日で次期 産卵を開始したῌ キ῍ワ῍ド : 絶食῍ 抱卵῍ 岐阜地鶏 ῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎῎緒
言
就巣性を有する鶏種は῍ 抱卵ῌ育雛に至る一連の行動を 同一の巣で行うῌ 抱卵行動中の母鶏は産卵期と比較し῍ 採 ῌ量が著しく減少し῍ 卵巣ῌ卵管が萎縮し῍ 体重が減少す る+ῐ ῌ 抱卵行動に必要なホルモンであるプロラクチン ῏PRLῐ は視床下部の視索上核や室傍核に発し῍ 下垂体門 脈に達している神経線維の末端より分泌される PRH ῏放 出ホルモンῐ と PIH ῏抑制ホルモンῐ が脳下垂体前葉に働 くことで調節されているῌ 抱卵中には脳下垂体前葉から分 泌される PRL の合成῍ 濃度が高まる,ῐ ῌ また῍ 就巣時の高 PRLは卵巣を退縮させ῍ エストラジオ῎ル産生を抑制す ることが知られている-ῐ ῌ また῍ 野鳥においては῍ 繁殖期に巣が壊されたり῍ ῌが 不足したりして抱卵ῌ育雛行動の継続が困難になることが あるῌ その場合῍ 野鳥は予備能力を発揮し῍ 再び産卵を開 始し῍ 子孫を残そうとする.ῐ ῌ しかし῍ 家禽においては飼育 環境が整っており῍ ῌも常に供給されているため῍ そのよ うな状況に陥ることがないῌ そのため῍ ῌが全くない状況 下における母鶏の卵巣機能については検討されていないῌ そこで本実験では῍ 抱卵中の母鶏に絶食処理を施し῍ 卵巣 機能と次期産卵開始日数について検討したῌ 血中エストラ ジオ῎ル濃度の測定は時間分解蛍光免疫測定法/ῐ により実 施したῌ材 料 及 び 方 法
供試鶏には岐阜地鶏雌を用い῍ +.L : +*D ῏/ 時点灯開 始ῐ の照明条件下において木製巣箱 ῏,+ cmΐ.+ cmΐ.+ cmῐ を設置した平飼いケ῎ジ ῏/1 cmΐ/1 cmΐ/1 cmῐ で +羽ずつ飼育したῌ 抱卵行動の発現の有無は῍ 2 : -* と +0: **の給ῌῌ給水時に確認するとともに῍ その行動をビ デオカメラと接続したハイブリットセキュリティレコ῎ ダ῎ HSR-, にて記録したῌ 抱卵開始 - 日目より供試鶏に 1 日間絶食処理を施したῌ また῍ 処理初日より採血と体重測定を毎日 +, : ** に実施 したῌ 採血期間は , 週間としたῌ 採取した血液は遠心分離 し῍ 血漿を得てῑ-* で保存し῍ Wallac 社のエストラジ オ῎ル測定キット ῏R*/0-+*+ῐ を用い῍ 時間分解蛍光免疫 測定法により血漿エストラジオ῎ル濃度を測定したῌ 尚῍ 測定内変動係数は /.0῍ あったῌ結 果 及 び 考 察
+ῌ 行 動 絶食処理を施した結果῍ . 例中 + 例が抱卵行動を継続し たῌ 絶食処理により抱卵行動を中断した個体はそれぞれ処 理初日῍ - 日後῍ / 日後に抱卵行動を中止したῌ 中止した個 体においては給ῌ再開後も抱卵行動は再発現しなかったῌ ,ῌ 体重 ῎図 +῏ 通常῍ 抱卵行動中の母鶏は産卵期よりも採ῌ量が減少 し῍ 卵巣ῌ卵管が萎縮し῍ 体重が減少する+ῐ ῌ 最終産卵日の 体重を +**῍ とすると῍ 抱卵 ,+ 日目には 2*῍ 程度にまで 減少する+ῐ ῌ この体重の減少は採ῌ量の減少のみによるも のではなく῍ 卵巣ῌ卵管の萎縮によるものでもあると考え 資 料 Research Data * ** 東京農業大学大学院農学研究科畜産学専攻 東京農業大学農学部畜産学科Jour. Agri. Sci., Tokyo Univ. of Agric., .2 (+) ,+ῌ,- (,**-)
られるῌ このことから῍ 体重の割合の推移について検討す ることにより῍ 母鶏の卵巣の状態について推察することが 可能であると考えられるῌ 抱卵行動を継続した個体の処理開始時の体重は 23/ g で あり῍ 処理開始時の体重を +**῍ として体重の推移を表す と῍ 処理期間中は減少し῍ 処理 1 日目には 21῍ の 12* g ま で減少したῌ その後も体重は減少し῍ 処理 +. 日目には 20῍ の 11* g まで減少し続けたῌ これは抱卵行動を継続し ているため῍ 処理中ῌ処理後を通じ採῍量が少ないままで あった結果῍ 体重が減少し続けたものと考えられるῌ 抱卵行動を中断した個体の処理開始時の体重は 32+.-ῑ ,2./ gであり῍ 処理開始時の体重を +**῍ として体重の推 移を表すと῍ 処理期間中は減少し῍ 処理 1 日目には 2/.1῍ の 2.+.-ῑ//., g まで減少したῌ これは無処理の状態での抱 卵 ,+ 日目の体重の割合とほぼ等しくなっているῌ このこ とより῍ 絶食処理により῍ 抱卵行動を中止した個体の卵巣 の状態は処理 1 日目に無処理の個体の抱卵 ,+ 日目の状態 と同じくなっていると考えられるῌ 処理が終了し῍ 給῍が 再 開 さ れ て か ら 体 重 は 増 加 に 転 じ῍ 処理 +. 日目には 30.,῍ の 3.-.2ῑ+0.0 g まで回復したῌ その後῍ 処理開始か ら ,+.*ῑ*.1 日で次期産卵を開始したῌ -ῌ 血漿エストラジオ῍ル濃度 ῎図 ,῏ 抱卵行動を継続した個体のエストラジオ῎ル濃度は῍ 処 理開始時に +2.- pgῌml を示したῌ 処理期間中は低い値で 推移し῍ 処理終了後わずかな上昇を示すものの῍ その後減 少し῍ 処理終了後も低い値で推移したῌ 抱卵中は LH が減 少し῍ PRL が上昇するため0ῐ ῍ エストラジオ῎ル濃度の上 昇が妨げられたと考えられるῌ 抱卵行動を中断した個体のエストラジオ῎ル濃度は῍ 処 理開始時に /,.+ pgῌml を示し῍ 処理期間中は低い値で推 移したῌ 処理終了後急激な上昇を示し῍ 処理 2 日目に +++.+ ῑ+0.+ pgῌml と前日の / 倍以上の値を示したῌ その後は上 昇傾向を示し῍ 処理 +. 日目には ,**.1ῑ-,.2 pgῌml に達し たῌ このエストラジオ῎ル濃度の急激な上昇は育雛期の母 鶏から雛をῌ奪した場合と類似したものであった1ῐ ῌ これ は十分な῍を摂取していないために῍ 脳下垂体前葉からの LH分泌が抑制され῍ そのことにより卵巣からのエストラ ジオ῎ル分泌が抑えられていたものが῍ 絶食処理終了後に 大量の῍を摂取することで脳下垂体前葉から LH が急激に 分泌され῍ そのことにより卵巣からのエストラジオ῎ル分 泌が促進されたものと思われるῌ 育雛期の母鶏に対し῍ 雛隔離後に絶食処理を行うとエス トラジオ῎ルの上昇が抑制される ῏未発表ῐῌ 今回の実験は 抱卵期の母鶏においてであるが῍ 育雛期と同様絶食処理に より῍ 脳下垂体前葉からの LH 分泌が抑制され῍ 卵巣から のエストラジオ῎ルの分泌が促進されなかったと考えられ るῌ しかし῍ 鶏の育雛行動が雛の存在などが刺激となって 行われている2ῐ のに対して῍ 抱卵行動は脳下垂体前葉から 分泌されるプロラクチンによって支配されているῌ 絶食処 理のストレスにより῍ プロラクチンが急激に低下し採῍量 が増加したことにより脳下垂体前葉からの LH の分泌が促 進されたと考えられるが῍ 今後 LH 及びプロラクチン分泌 との関係を明らかにする必要があるῌ 謝辞 : 本研究を実施するにあたり῍ 飼育管理῍ 実験補助に ご協力頂いた῍ 本学家畜繁殖学研究室員の皆様に感謝いた しますῌ 引用文献
+ῐ KONO, T., KUWAYAMA, T., ITO, H. and ICHINOE, K., +32/.
Nesting Behavior and Changes in Plasma Concentra-tions of Progesterone, Testosterone and Estradiol in the Native Japanese Breed of Chicken, Gifujidori (Gallus domesticus). Jpn. Poult. Sci., ,,, 0.ῌ1,.
,ῐ HOSHINO, S. and WAKITA, M., +323. Increased synthesis of prolactin and growth hormone during incubation in the pituitary of broody Nagoya hens. Horm Metab Res, ,+ (3), .2*ῌ.2,. 図 , 絶食処理を施した岐阜地鶏の血漿エストラジオ῎ル濃 度の推移 *抱卵行動を中止した個体の値は平均値ῑ標準誤差を示 すῌ 抱卵行動を継続した個体は + 個体の値を示すῌ 図 + 絶食処理を施した岐阜地鶏の体重の推移 *抱卵行動を中止した個体の値は平均値ῑ標準誤差を示 すῌ 抱卵行動を継続した個体は + 個体の値を示すῌ 絶食処理開始直前の体重を +**῍ としたῌ 勝又ῌ桑山ῌ門司ῌ百目鬼ῌ田中 22
-ῑ ZADWORNY, D., KUHNILEIN, U., K, SHIMADA. and K, SATO., +322. The influence of prolactin of LH-stimulated es-tradiol production by the small follicules in laying and out-of-lay gifujidori hens. World Poult Congr, +2, 1+/ῌ1+1. .ῑ 正田陽一ῌ +330῍ かちくのはなし῍ さえら書房῍
/ῑ 山田英明ῌ岩田宗彦ῌ +33/῍ 輝くホルモンを測る新技術῏
時間分解蛍光免疫測定法 ῐTR-FIAῑ の応用῏῍ 養殖研 ニュ῎ス No. -*.
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Influence of fast processing exerted on the ovary
function of incubating Gifujidori hens
By
Mizuho K
ATSUMATA*, Takehito K
UWAYAMA**, Yasunori M
ONJI**,
Ikuo D
OMEKI** and Katsuhide T
ANAKA**
(Received November ,*, ,**,/Accepted April ,+, ,**-)
Summary : Fasting was performed on incubating Gifujidori hens. The body weight and plasma concentration of estradiol were measured during the experimental period. The changes and relation-ships with the onset of the next egg laying were examined. Experimental hens underwent fasting for seven days from the -rd day of the onset of incubation. Blood collection and weight measurement were carried out daily at +, : **, for +/ days from the -rd day of the onset of incubation. Measurement of the estradiol concentration in the blood was performed using the time decomposition fluorescence immunity measuring method. Only one in five hens continued incubation behavior after that result. The body weight of the individual which continued incubation behavior continued to decrease from fasting, and the estradiol concentration in the plasma decreased to a low value. Moreover, although the weight of the individual which stopped incubation behavior decreased during fasting, it rapidly increased after the fasting ended. Although estradiol concentration decreased to a low value during fasting, it rose rapidly after the end of fasting. The hens started laying from the onset of fasting in ,+.* ῒ*.1 days.
Key Words : fasting, incubating, Gifujidori
* **
Department of Animal Science, Graduate School of Agriculture, Tokyo University of Agriculture Department of Zootechnical Science, Faculty of Agriculture, Tokyo University of Agriculture