第 10 章 完全競争市場
10.1 完全競争市場の特徴
製品差別化がしずらい: 同質財の市場が成立
市場への参入退出が容易 (固定費用が小さい): 多数の供給者が存在
結果、供給者は価格受容者 (プライステイカー) となる: 各企業は価格をコントロールできない
市場の需要曲線
Q P
1企業にとっての 需要曲線 市場価格
図 10.1: 一企業にとっての需要曲線と市場の需要曲線
10.2 完全競争下の企業行動 : 最適な生産量の決定
総利潤=総収入ー総費用 (TR − TC): 利潤を最大にする生産量は収入と費用に依存
• 総収入: 一定の価格 (P ) に生産量 (Q) をかけた値
– 自社の生産量によって価格が変化することはない (価格受容者) – 限界収入 (MR) は一定
• 総費用: 一般的には総費用が加速度的に増加する状況を仮定 – 限界費用 (MC) は生産量とともに上昇
利潤最大化: TR − TC が最大になっているときの必要条件
• M C= M Rと MR = P より MC = P – M C: T Cの傾き
– M R: T Rの傾き。完全競争市場では P と等しい (企業は価格受容者)
– 追加的に 1 単位生産した時の費用がその収入 (価格) に上昇するまで生産を増やす
TC TR = P Q
Q
π Q
図 10.2: 総収入曲線、総費用曲線、総利潤曲線
Q MC P1
Qc
MR
Q Mπ
図 10.3: 限界収入曲線、限界費用曲線、限界利潤曲線
例題 1: 総費用が TC = q2+ 1,財の価格が p = 10 のとき、企業の最適な生産量を求めよ。
図 10.4: 例題 1
例題 2: 総費用が TC = q3−6q2+ 24q,財の価格が p = 60 のとき、企業の最適な生産量を求めよ (ヒント: q2−4q − 12 = (q − 6)(q + 2))。
図 10.5: 例題 2
10.3 価格と利潤
利潤: 総利潤 = (P ー c) × Qc→面積 P abc
• P 円のうち c 円は 1 つ生産するための平均費用なので、1 つあたりの利潤は P − c 円
• それに生産量である Qcをかければ総利潤が計算できる
Q MC
Qc
P a MR
b AC 0
c
図 10.6: 利潤
価格変化と利潤: 価格が変化した際の最適な生産量と利潤の変化
Q AC AVC
MC P1
P2 P3
・
MR1
・
MR2 MR3 a
b
Q1 Q2 Q3
図 10.7: 価格と利潤
• 価格 = P1: このとき生産量 = Q1,利潤はプラス (AC < P )
• 価格 = P2: このとき生産量 = Q2,利潤はゼロ (AC = P ) – a: 損益分岐点
• 価格 = P3: このとき生産量 = Q3,利潤はマイナス (AC > P )
– しかし平均可変費用はカバーできる (AV C ≤ P ) からただちに退出しない – b: 操業停止点
• 価格 < P : ただちに退出
例題 3: 企業の総費用関数が C = 0.5q3−3q2+ 30q + 50の時、この産業の操業停止価格を求めよ。
• 操業停止点の特徴は MC = AV C なので、MC と AV C を求め、それらが等しいとい う条件式を利用
• M C= 1.5q2−6q + 30, AV C = 0.5q2−3q + 30, M C = AV Cより q = 3
• この q を MC もしくは AV C に代入して、操業停止価格を計算すると、その値は 25.5 長期で実現可能な利潤: 利潤がゼロ
• 利潤がプラスの場合、他企業が新規参入 → 市場価格低下
• 利潤がマイナスの場合、他企業が退出 → 市場価格上昇
• 価格が P2になると新規参入退出がなくなり市場が落ち着く。結果、利潤はゼロとなる
10.4 供給曲線の導入
各企業の供給曲線: 各企業の供給曲線は操業停止点より右側の MC 曲線
• 各企業の生産量は MC 曲線に沿って変化
• ただし価格が操業停止点の価格を下回るときは生産しないので供給はゼロ
Q AVC AC
MC → 供給曲線
P3
・
bQ3
図 10.8: 企業の供給曲線
市場全体の供給曲線: 各企業の供給曲線を集計
Q P
Q P
+ + ・・・
Q
P S
図 10.9: 市場の供給曲線
10.5 課題
1. 完全競争市場では、一企業が価格を自由にコントロールすることができないが、その理由を 述べよ (ヒント:市場価格以外の価格を設定したらどうなる?)。
2. 完全競争市場では限界収入が価格に等しい。その理由を述べよ。
3. 下記の総費用関数と価格が与えられたときの完全競争下の企業の生産量を求めよ。 (a) T C = q2+ 2, p = 12
(b) 2q3−12q2+ 30q + 8, p = 60 (ヒント: q2−4q − 5 = (q − 5)(q + 1))
4. 生産量が最適になっているとき、限界収入と限界費用がどういう関係になっているか、グラ フに示せ。
5. 完全競争市場において、ある企業の総費用が T C = 2x3−12x2+ 30x + 8 (T C: 総費用、x: 生産量) で示されている。この企業の操業中止点に対応する生産量を求めよ。
6. x財を生産するある企業の費用関数が c = x3−6x2+ 15x + 30 (c: 総費用、x: x 財の生産量) で示されるとする。企業の操業停止価格を求めよ。
7. 完全競争市場下の企業の長期的な利潤は 0 となるが、その理由を説明せよ。またそのときに 達成される価格と生産量を表す点は何と呼ばれるか。
8. 操業停止点と損益分岐点の間では、なぜとりあえずは操業を続けた方が良いのか、説明せよ。