第 10 章 労働市場と完全雇用国民所得
10.1 完全雇用国民所得の決定
完全雇用国民所得: 完全雇用水準のときの国民所得。
• 完全雇用水準: 働く意思のある人が全員雇用されている状態。
• 労働市場より考える。
10.2 労働需要
労働需要の決定メカニズム: 労働が企業の生産にどれだけ寄与するかによって、企業が決定。
• 企業の生産関数(生産プロセス)の中で労働を見る必要がある。
• 生産関数より労働需要が決定。 生産関数 : Y = F (A, L, K)
• Y : 企業の生産額(付加価値)の合計= 国民所得
• F : カッコ内の変数の関数であるということを示す。
• A: 技術水準, L: 労働投入量(労働者数), K: 資本量
• Y をそれぞれA, L, Kで微分すると値はプラスになる。
– A, L, Kのいずれかが増加すれば、Y も増加する。
• 例: コブダグラス型生産関数: Y = AKαLβ
労働の限界生産性(MPL): 労働需要の導出。
• A, Kが一定として生産関数のグラフを書く。
Y
L 図10.1: 生産関数
• 上記生産関数の傾きの値(Y をLで1回微分した値)をグラフに表す。
Y
L MPL
L
図10.2: 生産関数と限界生産性
– Lが追加的に増加したときの生産増加分
– 労働の限界生産性(Marginal Productivity of Labor)
• 限界生産性が逓減する理由。
– Lが増加すればY も増加する(Y をLで1回微分するとその値がプラス)。 – Lが増加するほど、労働者数と比べて資本が少なくなってしまうため、LがY を増
加させる効果が弱まる(Y をLで2回微分するとその値はマイナス)。
労働需要曲線: 労働の限界生産性より導出。
• Lをむやみに増やしても、それに見合う生産量増加が得られないこともある。
• Lを増やした時の生産性増加(労働の限界生産性)に賃金が見合う場合にLを増やす。
• 「賃金=労働の限界生産性」となるまで企業は労働者を雇う(M C = M Rと同じ)。 – 「賃金>労働の限界生産性」なら雇用量を減らす。
– 「賃金<労働の限界生産性」なら雇用量を増やす。
• 賃金↓→割に合う雇用量↑→労働需要↑
L W/P
( 実質賃金 )
MPL ( = 労働需要)
図10.3: 労働需要曲線
例題: Y = 2K0.5L0.5のとき、労働の限界生産性を求めよ。
• Y = K0.5L−0.5=!KL"0.5
• それぞれの形状をグラフに表すと上記のような形になる。
10.3 労働供給
代替効果 (substitution effect): 賃金が高くなるほど余暇 (leisure) を減らして働くことを選ぶ (所得vs余暇)。
L W/P
( 実質賃金 )
労働供給
図10.4: 労働供給の代替効果
所得効果(income effect): 賃金が高くなるほどそんなに働かなくても十分な所得が得られる。
L W/P
( 実質賃金 )
労働供給
図10.5: 労働供給の所得効果
合計: 代替効果の方が強い
L W/P
( 実質賃金 ) 労働供給
図10.6: 労働供給曲線
10.4 労働市場の均衡と完全雇用国民所得
労働市場: 労働需要と労働供給を同時に考える。
L W/P
( 実質賃金 )
MPL ( = 労働需要) 労働供給
LF
図10.7: 労働市場
完全雇用国民所得の決定: 労働市場より得られる労働投入量を利用し、生産関数から国民所得を 計算。
L W/P
( 実質賃金 )
MPL ( = 労働需要) 労働供給
LF
L
Y 生産関数
LF YF
図10.8: 完全雇用国民所得の決定
例題1: 生産関数と労働供給関数(Ls)が下記のように与えられたとする。このとき市場が均衡す る(完全雇用が達成される)労働量と実質賃金(w = W/P )を求めよ。
Y = 2L0.5, L1s.5= 16w
• 労働の限界生産性を求めると、M P L = dYdL = L−0.5。
• これが賃金と等しくなるように、労働需要が決まる(L−d0.5= w)。
• 労働需要関数と労働供給関数を連立させて解くとL = 4, w = 1/2。
10.5 完全雇用国民所得が達成されない場合
実質賃金の高止まり: 賃金が市場均衡賃金より高いケース。
L W/P
LD LS
LD1 LS1 (W/P)1
図10.9: 完全雇用国民所得の決定
例題2: 生産関数と労働供給関数 (Ls) が下記のように与えられたとする。このとき実質賃金が
w = 1の場合、実際に雇用される労働量を求めよ。
Y = 2L0.5, L1s.5= 16w (161/1.5= 6.3496)
• Ld= 1, Ls= 6.3496
例題3: 生産関数と労働供給関数 (Ls) が下記のように与えられたとする。このとき名目賃金が W=1の場合、物価水準がいくらになれば、完全雇用が達成されるか。
Y = 2L0.5, L1s.5= 16w
• P=2
10.6 課題
1. 生産関数がY = 4L0.5と与えられたとする。 (a) 労働投入量が4のとき、生産量はいくらか。 (b) 労働投入量が16のとき、生産量はいくらか。 (c) 労働の限界生産性を求めよ。
(d) 労働投入量が4のとき、労働の限界生産性はいくらか。 (e) 労働投入量が16のとき、労働の限界生産性はいくらか。
(f) 上記から、労働投入量とともに労働の限界生産性がどのように変化していることがわか るか。
(g) 実質賃金が1/2だとする。このときの最適な雇用量はいくらか。
2. マクロ経済体系および労働供給量の関数がY = 9L2/3, Ls= 18wと与えられている。今、実 質賃金がw = 2で硬直している場合、失業率はいくらになるか (ヒント: w = 2の時の労働 需要量と労働供給量を計算すれば、どれだけの人が働きたいのに働けないのか、その比率を 計算できる)。