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ト ポロジ ー I [講義録] 2012 年版

位相空間の基礎概念

酒 井   克 郎

筑波大学・数学系

(2)

ト ポロジ ー I — 2012 年度版 酒井克郎, 位相空間の基礎概念

Katsuro Sakai, Basic Concepts of Topology

c

2012 K. Sakai

(3)

位相空間の基礎概念

はじ めに

トポロジ ー(位相) の概念は, 現代数学における重要な基本的概念の一つである. この概念によって, 点列の収束や写像の連続性といった概念を厳密に定義できるか らである. 数学で扱う様々な集合の上に位相構造を導入することにより位相空間を 定義し て, 点列の収束や連続写像の性質などに関連する議論を展開するのである.

「トポロジ ー I 」の講義では, 位相空間と連続写像に関する基礎的な概念や性質な ど を学ぶ. 本書はこの講義で扱う事柄をまとめたものである.

簡単に 言えば, 位相空間とは開集合や点の近傍が何であるかが分かっている集 合のことである. この開集合や近傍を用いて, 点列の収束や写像の連続性をはじめ 様々な概念を導入し, それに関する性質を証明していくというのが, 普通の講義の スタイルである. 抽象的なために, 次々に導入される新しい概念がなかなか把握で きなかったり, 論理的な議論に慣れていないために, 講義で行う証明について行く のが 難し く感じ たりする学生も多い. しかも, 各々の学生によって難しく感じる箇 所も一様ではない. ある学生には当たり前のことでも, 他の学生にとっては非常に 難し く感じ る場合もある. 限られた時間の講義において, 抽象的で新しい概念を学 生が 把握できるように説明し, それに関する事柄の証明を学生が理解できるように 解説するのは, 教師にとって挑戦となる難問である.

そのために, 本書は教科書というより, 講義と演習の両方で用いる学習帳として 用意された. 普通の教科書とは違い, 補題, 命題, 定理にはきちんとした証明が与 えられていない. 講義での解説・説明を基に, 学生各自で証明を与え, 自分独自の 講義録を完成させることにより, 講義で扱われる事柄を確実に自分のものにするこ とを意図し ている. 自分で考え, 自分の頭脳を働かせることによってのみ, 理解力, 洞察力, 推理力, 直観力, 思考力, といった数学的能力を訓練することができる. —

「 本書の用い方 」を参照.

本書は, 数年に渡り講義と演習で実際に用いながら, 改訂を重ねて作られたもの である. 演習を担当された先生方をはじめ多くの方々から, 様々なご意見やご提案 を頂いた. 特に, 川村一宏氏には詳細に本書を読んで頂き, 多くの修正点を指摘し て頂いた. ご協力頂いたすべての皆様に心より感謝申し上げます.

2011 年 6 月

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本書の用い 方

「 はじ めに 」で述べたように, 本書は普通の教科書とは違い, 補題, 命題, 定理に はきちんとし た証明が 与えられていない. 学生各自で証明を与え, 自分自身の講義 録を完成させることを意図し た学習帳である. 講義では, 定義の意味や例を丁寧に 解説し, 補題, 命題, 定理に関しては, その主張の意味するところや証明のポイント など を説明する. 補足事項や発展事項などは, 関心のある学生のためのものであり, 講義では一般に 扱わない. 自習書としても用いることもできるように, 証明が容易 でないものには 証明の概略を書き, 章末には板書形式で証明を書いた. まず概略を 読んで, 自分なりに証明を書き下し, 良く分からなったり確認したい場合に, 章末 の証明を参照するとよい. また, 教師が講義で扱う内容を取捨選択して用いること もできる. 場合によっては, 講義で定理や補題など の証明を概略に留め, 詳細な証 明は 演習にまわし てもよいし, 逆に, 演習の詳細な証明を講義で与えてもよい.

講義の前に 講義で 行う範囲を予め目を通し, 新しい概念は何を意味するのか, 証 明し ようとし ている命題は何を主張し ているのか, 関係する概念はどのように定義 され たか, どんな方針で証明を行うのか, など 予め考えて講義に臨むなら, 講義で 行う証明が 複雑であっても, それについて行くことが容易になるであろう. 講義で の説明を聞いても納得のいかない場合もあるであろう. そのようなときは, 先輩や 教師など に 相談し たり, 参考書などを調べたりして, 自分にとって納得のいく証明 を付け ることを勧めたい.

比較的容易なものは学生自身の演習とし たが, あるものにはヒントを付けた. 定 理や命題の証明やその概略および 演習につけたヒントは, 証明の一例であり別証明 もあり得ることを思いに留めるべきである. また, 前にある定理や命題は後にある もののヒント にな る場合が 多い. 証明の概略やヒントに頼らずにまず自分独自の 証明を試みることを勧める. 自分にとって, より明解な別証明が見つかるかもしれ ない. 演習の時間に他の学生 (あるいは教師) が行った証明に関しても, それは証明 の一例にすぎ ないと受け 止めてもらいたい. 書き方や細かいところに説明を加え るか 省略するか, 人によって異なっていることを銘記すべきである.

自分自身で 考えた証明は, たとえスマートでなくても, 自分で考えたことに大き な価値がある. 証明の方針や論理の展開など , すべて自分で把握しているからであ る. ただし, 自分の与えた証明の中に論理の飛躍があるかもしれないので, 他の人 に 見てもら うことを勧めたい. それにより, 自分の議論の間違いに気付くこともあ るし, 証明をより洗練することが出来る. さらに, 論理を整理し物事を説明する能 力も訓練できる. また, 証明が分からなくて相談する場合も, 定義や条件を明確に し てから, 証明すべきことや自分が行き詰まっている箇所を説明すべきである. 自 分でこ うし た点を説明し ているうちに, 自分の考えが整理でき, 気付かなかった点 に 気付き, 質問している事柄の答えが自分で分かってしまう場合が多い.

参考書を用いる場合, 定理の証明を初めからたど るのではなく, ヒントを得るた めに 読むことを勧めたい. ある命題を証明するために, 何を言えば良いのか, どん

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な定理が 使えるか, 背理法を用いるのか帰納法を用いるのかなど , そうした情報を 得ることを 目的とし て, 拾い読みや斜め読みをするのである. ヒントを得たなら, 本を離れて, 自分で証明を完成させるよう努めるべきである. これを繰り返すこと で, 次第に自力で証明を考えられるようになるはずである.

本書の内容は, 松坂和夫 著「集合・位相入門」の後半部分に対応しているので, この本を参照すれば, 証明の詳細が分かる. その他にも, 同じ範囲を扱った多くの 教科書が 出版され ているので, ど の本を参照してもよい. 演習を行う場合や予習, 復習を行う場合に, そうした本を活用できる. 上記の「集合・位相入門」より程度 が 高い教科書とし て, 森田紀一 著「位相空間論」がある. また, 証明を自分のノー ト に まとめる際には, 一楽重雄 監修「集合と位相 そのまま使える答えの書き方」 は 参考になる. よく理解できないところや証明の書き方などは, 一人で悩まず躊躇 せずに 先輩や教師など に 相談すべきである.

複雑で込み入った証明になると, 前から読んでも, 後ろから読んでも, 斜め読みし ても, 証明全体が見えてこないものもある. そこで使われている概念や論法に自分 が 十分に 精通し ていない場合には, 特にそういう経験をする場合が多い. まず, 書 かれている概念や論法になれ る必要があるのかもしれない. また, 紙面では限られ たア イデアしか 伝達できないということも忘れてはならない. それで, 先輩や教師 など に 質問することを躊躇すべきではないのである. 初等幾何の証明が, たった一 本の補助線を 引くことによって, すべてが明らかになることがあるように, チョッ トし た気付きで, すべてが明確になることもある. 逆に, チョットした勘違いによ り, 全然理解出来なくなる場合もある.

参考書

一楽重雄(監修) : 集合と 位相 そのまま使え る答えの書き方,講談社 サイエン テ ィフ ィク, 2001.

松坂和夫: 集合・位相入門,岩波書店, 1968.

森田紀一: 位相空間論(岩波全書331), 岩波書店, 1981.

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記号

— Notations

以下は, 使用する記号のリストである.

• ∀x, P (x) — すべてのxに 対し て, P (x) (が 成立する) [for all x, P (x)];

• ∃x (such that) P (x) — P (x)を満たすxが存在する[there exists x such that P (x)] ( ∃x, P (x) — ∃x, P (x) の否定);

• p ⇒ q — pならば q [p implies q (または) if p then q] (p⇒ q — p ⇒ q の否定);

• p ⇔ q — p q と 同値である[p is equivalent to q (または) p if and only if q] (p⇔ q — p ⇔ q の否定);

• p =

def q (p def q) — p (

であること)q (であること)と 定義する;

• ∅ — 空集合 [the empty set];

• x ∈ A — x A の元,要素 [element] (x∈ A — x ∈ Aの否定);

• A ⊂ B — A B の部分集合 [subset] (A⊂ B — A ⊂ B の否定);

• A ∪ B, λ∈ΛAλ — A B,および (Aλ)λ∈Λ の和集合[union];

• A ∩ B, λ∈ΛAλ — A B,および (Aλ)λ∈Λ の共通部分[intersection];

• A \ B — A から B を除いた 差集合 [difference set];

• A × B, λ∈ΛAλ — AB,および (Aλ)λ∈Λ()積集合 [(direct) product];

• Xn= X × · · · × X 

n times

— n個の X の累乗積[the n-th power];

• X 可算無限個の X の累乗積[the countable power];

• P(X) — X の巾集合[the power set];

• idX — X の恒等写像 [the identity (map)];

• N = 1, 2, . . .自然数全体(の集合) [the natural numbers];

• Z = 0,±1, ±2, . . . 整数全体(の集合) [the integers];

• Q — 有理数全体(の集合) [the rationals];

• R = (−∞, ∞) — 実数全体(の集合) [the reals], 数直線[the real line];

• I = [0, 1] — 単位閉区間[the closed unit interval].

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目 次

1 ノルム空間と距離空間 — 復習

— Normed Linear Spaces and Metric Spaces . . . 1 2 位相空間, 開集合, 閉集合

— Topological Spaces, Open Sets and Closed Sets . . . 7 3 近傍, 内部, 閉包

— Neighborhoods, Interiors and Closures . . . 14 4 点列の収束

— Convergence of Sequences of Points . . . 20 5 連続写像と同相写像

— Continuous Maps and Homeomorphisms . . . 26 6 近傍基および 開基

— Neighborhood Bases and Open Bases . . . 37 7 部分空間

— Subspaces . . . 44 8 積空間

— Product Spaces . . . 50 9 商空間

— Quotient Spaces . . . 61 10 連結性と弧状連結性

— Connectedness and Path-Connectedness . . . 71 11 分離公理

— Separation Axioms . . . 80 12 コンパクト 性

— Compactness . . . 90 13 コンパクト 距離空間と全有界性

— Compact Metric Spaces and Total Boundedness . . . 103 14 完備距離空間

— Complete Metric Spaces . . . 108 15 完備距離付け 可能性とベール 空間

— Complete Metrizability and Baire Spaces . . . 114

(8)

講義・演習のスケジ ュール

講義と演習で何処を扱うかを担当者間でよく相談し て,無駄な重複を避けて分 担を 決め,講義と演習のスケジュールを立てるならば,有効に 時間を用いるこ とができます. 例えば,初めの 4章の講義では,概念の理解のために 時間を割 いて,証明は 演習でやるように 計画すると 時間が 有効に 用いれ ると 思います. 1 学期中に 8 章ないし 9 章まで 終え るならば, 2学期に 連結やコン パ クト な ど に 時間を十分に 用いることができるでし ょう.

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1 ノルム空間と距離空間

— 復習

— Normed Linear Spaces and Metric Spaces

1.1 定義 線形空間 [linear space] X 上で定義された関数 · : X → [0, ∞) で, 次 の条件を満たすものを X 上のノルム [norm] と呼ぶ:

(N-1) x = 0 ⇔ x = 0;

(N-2) tx = |t| · x (t ∈ R, x ∈ X);1

(N-3) x + y ≤ x + y (x, y ∈ X) — 三角不等式 [triangle inequality]. ノルムが 与えられている線形空間を ノルム空間 [normed linear space] と呼ぶ. ノ ルム空間とは線形空間とその上のノルムの組(X, · ) であるが, ノルム · が明 確な場合には, 省略して X だけて表す場合が多い.

1.2 例 (1) 絶対値 | · | は, R 上のノルムである.

(2) ユークリッド 空間 [Euclidean space] Rn= (Rn, · ): x =

x21+· · · + x2n — ユークリッド ・ノルム [Euclidean norm], ここで, x = (x1, . . . , xn)∈ Rn.

(3) Rnには, 次のようなノルムも定義できる:

x 1 =|x1| + · · · + |xn| ; x = max |x1|, . . . , |xn|, ここで, x = (x1, . . . , xn)∈ Rn.

演習 1.1 1.2に おいて定義され た各 々のノル ムが,定義1.1 3条件 (N-1), (N-2), (N-3)を 満たすことを示せ.

1.3 例 可算累乗積 R に各項ご とに和とスカラー倍を定義することにより,R



を 線形空間とみなす. 以下の線形部分空間は,2それぞれの · でノルム空間となる:

2 =

x = (xi)i∈ ∈ R

 i=1

x2i <



, x =





 i=1

x2i ;

1 =

x = (xi)i∈ ∈ R

 i=1

|xi| < ∞



, x =

 i=1

|xi| ;

=



x = (xi)i∈ ∈ R supi∈



|xi| < ∞



, x = sup

i∈ |xi|.

上の 2 は, ヒルベルト 空間 [Hilbert space] と呼ばれる.3

1ここでは, 線形空間は実係数であるが, 複素係数の場合には, t∈ C とする.

2RN

の元は 実数列と見なされ るので,R

N

やその部分空間のことを総称し て数列空間 [sequence space] と呼ぶ.

(10)

演習 1.2 1.3において, ℓ1  ℓ2  ℓ  R を示せ. (包含関係だけでなく等号が 成 立し ないことも示せ.)

演習 1.3 1.3 で 定義し た1, ℓ2, ℓ に おけ る各 々の ノル ムが, 定義 1.1 3 条件 (N-1), (N-2), (N-3)を 満たすことを 示せ.

1.4 定義 集合 X 上の 2 変数関数 d : X2 = X× X → [0, ∞) で,次の条件を満た すものを X の (上の) 距離 (関数) [metric] と呼ぶ:

(M-1) d(x, y) = 0⇔ x = y;

(M-2) ∀x, y ∈ X, d(x, y) = d(y, x);

(M-3) ∀x, y, z ∈ X, d(x, z) ≤ d(x, y)+d(y, z) — 三角不等式 [triangle inequality].

距離 d が与えられている集合 X を距離空間 [metric space] と呼び, X と d の組 (X, d) で表す. 距離 d が明確な場合には, 省略して X だけて表すことが多い. 距 離関数 d の値 d(x, y) を 2 点 x, y 間の距離 [distance] と呼ぶ.

注 上の 3 条件 (M-1), (M-2), (M-3) は, 我々が日常使っている距離が持つ基本的 な 性質である. 定義 1.4 の意味するところは, これら 3 条件を持つ d は何であれ 距離(関数) と呼ぶということである.

1.5 例 (1) ノルム空間 X = (X, · ) は, 常に, そのノルム · によって導入され た距離d(x, y) = x − y を持つ距離空間と見なす. ユークリッド 空間 Rn 上の ユークリッド・ノルムによって導入された距離をユークリッド 距離 [Euclidean metric] と呼ぶ.

(2) どんな集合 X に対しても, 次のように距離 d0が 定義できる:

d0(x, y) =

0 if x = y, 1 if x= y.

この距離 d0 を X の離散距離 [discrete metric] と呼び, この距離を持つ距離空 間を離散距離空間 [discrete metric space] と呼ぶ.

(3) 集合 X 上の距離 d から定義される次の d, ˜d も X 上の距離である: d(x, y) =

def min{1, d(x, y)} ; d(x, y) =˜

def

d(x, y) 1 + d(x, y).

演習 1.4 1.5において 定義され たの各々の距離が,定義1.43 条件(M-1), (M-2), (M-3) を 満たすことを 示せ.

1.6 定義 距離空間 X = (X, d) において, A, B ⊂ X, x ∈ X, ε > 0 に対して, 次の 定義を与える:

(11)

• diam A =

def sup

d(x, y) x, y ∈ A — A の直径 [diameter];

• d(A, B) =

def inf

d(x, y) x ∈ A, y ∈ B — A, B 間の距離 [distance];

• d(x, A) =

def inf

d(x, y) y ∈ A — x から A までの距離 [distance];

• B(x, ε) =

def

y∈ X d(x, y) < ε — x の ε 近傍 [ε-neighborhood (ε-ball)];

• B(x, ε) =

def

y∈ X d(x, y) ≤ ε — x の ε 閉近傍 [closed ε-ball].

ここで, 距離 d に関する あるいは X における ε 近傍, ε 閉近傍であることを明確 にする場合には, Bd(x, ε), Bd(x, ε) あるいは BX(x, ε), BX(x, ε) と表す.

1.7 定義 Y を距離空間 X = (X, d) の部分集合とする. 距離 d の定義域を制限す ることに より, Y 上の距離 dY = d|Y2 が 得られ る. この距離を与えた Y を X の 部分距離空間 [metric subspace] と呼ぶ.

注 部分距離空間 Y = (Y, dY) における A ⊂ Y の直径や A, B ⊂ Y の間の距 離は, もとの距離空間 X = (X, d) において定義したものに等しい. すなわち, dY(A, B) = d(A, B), diamdY A = diamdA となる. ε 近傍に関しては, 以下が成り 立つ:

BY(x, ε) = BX(x, ε)∩ Y, BY(x, ε) = BX(x, ε)∩ Y.

し たが って, ε 近傍を考える際には, どこで定義されているのか注意が必要である. 1.8 定義 距離空間 X = (X, d) において, 部分集合 A ⊂ X の直径が有限となる とき, A は有界 [bounded] であるといい, X 自身が有界である時, 距離 d は有界 [bounded] であるという. すなわち,

A : bounded

def diam A <∞ ; d : bounded

def X : bounded (i.e., diam X <∞)

1.9 定義 集合 X 上の 2 つの距離 d, d が 次の 2 つの条件を満すとき, 互いに同値 [equivalent] であるという:

∀ε > 0, ∃δ > 0 such that d(x, y) < δ⇒ d(x, y) < ε;

∀ε > 0, ∃δ > 0 such that d(x, y) < δ ⇒ d(x, y) < ε.

演習 1.5 1.5(3)において定義し た距離 d d˜,初めに 与えられた距離 dと 同値 になることを示せ.

(12)

演習 1.6 線形空間X 上の2つのノルム · , · によって導入された距離dd 互いに 同値になるためには,次の条件が 成り立つことが 必要十分であることを 示せ:

∃δ > 0 such that x < δ⇒ x < 1;

∃δ > 0 such that x < δ ⇒ x < 1.

演習 1.7 (1)1.2(3)におけ るRn 2つの ノル ムにより導入され る距離は,ユーク リッド 距離と 同値であることを 示せ.

(2)1.3 に おいて, ℓ1 ⊂ ℓ2 ⊂ ℓ であるので, ℓ2 および の ノルムを1 上に 制限す ることにより, ℓ1 上に 3つの ノルムを考えることができる. これら3 つの ノルムの導 入する 1 上の距離は 互いに 同値では ない ことを示せ.

1.10 定義 距離空間 X = (X, d) における点列 (xn)n∈ , 次の条件を満たすとき, 点 x∈ X に収束する [converge] という. このとき, x は (xn)n∈ の極限 [limit] で あるといい, xn → x (n → ∞) または limn→∞xn= x と表す:

∀ε > 0, ∃n0 ∈ N such that n ≥ n0 ⇒ d(xn, x) < ε.

この条件は, limn→∞d(xn, x) = 0 と言い換えられる.

注 X における点列 (xn)n∈ X の可算累乗積 X の元, つまりN から X への 写像と見なされ るもので, X の部分集合{xn | n ∈ N} とは区別すべきものである.

演習 1.8 ユークリッド 空間 Rm に おいて, 点列 (xn)n∈ が 点 x ∈ X に 収束するため には,i = 1, . . . , mに 対し て, (xn)n∈

の第i座標からな る数列 (xn(i))n∈



xの第i 座標x(i)に 収束することが 必要十分条件となることを示せ. すなわち,以下を 示せ:

xn→ x (n → ∞) ⇔ ∀i = 1, . . . , m, xn(i)→ x(i) (n → ∞)

1.11 定義 点列 (xn)n∈ の部分列[subsequence] とは,N の狭義単調増加列 n(1) < n(2) <· · · に対して得られる点列 (xn(i))i∈ のことである.

注 上の定義において, 数列 (n(i))i∈ N から N への写像 i → n(i), 点列 (xn)n∈

を N から X への写像 n → xn と見なせば, 部分列 (xn(i))i∈ はこれらの合成写像

と見なせる.

1.12 命題 距離空間 X = (X, d) において, 点 x ∈ X に収束する点列 (xn)n∈

部分列 (xn(i))i∈



もまた点 x∈ X に収束する.

演習 1.9 命題1.12 を証明せよ.

1.13 命題 ユークリッド 空間 Rn に おいて, 点列 (xn)n∈ が 有界, すなわち集合 {xn | n ∈ N} が有界であれば, (xn)n∈ は 収束する部分列を持つことを示せ.

演習 1.10 命題 1.13を 証明せよ.

(13)

ヒント 微積分で 学んだボルツァーノ・ワ イエルシュト ラスの定理[Bolzano-Weier- strass’ Theorem] を参照せよ.

1.14 定義 距離空間 X = (X, dX) から距離空間 Y = (Y, dY) への写像 f : X → Y が, 次の条件を満たすとき, f は点 x∈ X において連続 [continuous] であるという:

∀ε > 0, ∃δ > 0 such that dX(x, x) < δ ⇒ dY(f (x), f (x)) < ε.

さらに, f は X のすべての点において連続であるとき, 連続 [continuous] である とい う.

1.15 命題 距離空間 X = (X, dX) から距離空間 Y = (Y, dY) への写像 f : X → Y が 点 x∈ X で連続であるためには, 次の条件が必要十分である:

xn∈ X (n ∈ N), lim

n→∞xn = x⇒ limn→∞f (xn) = f (x).

演習 1.11 命題 1.15を 証明せよ.

ヒント 必要性は 定義より直接示せる. 十分性を示すには, f が x∈ X において不 連続と 仮定し て, xn→ x だが f(xn)→ f(x) となる点列 (xn)n∈Nを 見付け る.

演習 1.12 距離空間の 間の 連続写像の合 成が 連続とな ることを 示せ. すなわ ち, X = (X, dX), Y = (Y, dY), Z = (Z, dZ) を 距離空間とし, f : X → Y , g : Y → Z を 連続写像 とするとき, gf : X → Z が 連続とな ることを 示せ.

1.16 定義 距離空間 X = (X, dX), Y = (Y, dY) に対して, 次の条件を満たすとき, 写像 f : X → Y は一様連続 [uniformly continuous] であるという:

∀ε > 0, ∃δ > 0 such that dX(x, x) < δ ⇒ dY(f (x), f (x)) < ε.

注 f の連続性の定義 1.14 において, δ > 0 は x ∈ X と ε > 0 の両方に依存す る. つまり, 同じ ε > 0 に対しても, x と x が 異なれば, 対応する δ と δ が 等し いとは 限らない. 一方, 一様連続の定義においては, δ > 0 は ε > 0 だけに依存し て, x∈ X の取り方には依存しない. つまり x ∈ X が変わっても δ > 0 の値は一 定である.

1.17 定義 距離空間 X, Y に対して, 全単射 f : X → Y が連続で, その逆写像 f−1 : Y → X も連続になるとき, f を同相写像 [homeomorphism] と呼ぶ. ま た, 同相写像 f : X → Y が存在するとき, X は Y に同相 (X と Y は同相) [homeomorphic] であるといい, X ≈ Y と表す.4

1.18 定義 距離空間 X, Y に対して, 全単射 f : X → Y が一様連続で, その逆写 像 f−1 も一様連続になるとき, f を一様同相写像 [uniform homeomorphism] と呼 ぶ. さらに, 一様同相写像 f : X → Y が存在するとき, X は Y に一様同相 (X と Y は一様同相) [uniformly homeomorphic] であるといい, X ∼= Y と表す.

(14)

注 集合X 上の 2 つの距離 d, dが互いに同値であるということは, idX : (X, d) (X, d) が一様同相写像であることに他ならない.

(15)

2 位相空間 , 開集合 , 閉集合

— Topological Spaces, Open Sets and Closed Sets

2.1 定義 集合 X の部分集合の族 T で, 次の条件を満たすものを X 上の位相 [topology] と呼ぶ:

(O-1) ∅, X ∈ T;

(O-2) U, V ∈ T ⇒ U ∩ V ∈ T;

(O-3) ∀λ ∈ Λ, Uλ ∈ T ⇒λ∈ΛUλ ∈ T.

位相が 与えられている集合を位相空間 [topological space] と呼び, 集合 X とその 上の位相 T の組(X, T) で表す.5 与えられている位相T が明確な場合には, T を 省略し て X だけで表す.

位相空間 X = (X, T) において, T に属する X の部分集合 U を X の開集合 [open set] と呼ぶ. この用語を用いれば, T は X の開集合全体の族である.

U : open in X

def U ∈ T.

注 位相空間とは, “どのような部分集合が開集合になるかが定義されている集合” であるといえる. “開集合” という言葉を用いて, 条件 (O-1), (O-2), (O-3) を言い 換えれば, 次のようになる:

(O-1) 空集合 ∅ と全体集合 X は開集合; (O-2) 2 つの開集合の共通部分は開集合; (O-3) どんな開集合の族の和集合も開集合.

これら 3 つの条件 (O-1), (O-2), (O-3) を位相あるいは開集合の公理 [axiom] と 呼ぶ.

2.2 定義 位相空間 X における開集合の補集合を閉集合 [closed set] と呼ぶ. すな わち, A⊂ X は補集合 X \ A が開集合となるとき X の閉集合と呼ばれる:

A : closed in X

def X\ A : open in X

G : open in X ⇔ X \ G : closed in X

定義とド・モルガンの法則[De Morgan’s law] により, 上の 3 つの条件 (O-1), (O-2), (O-3) は, 閉集合に関する次の 3 つの条件とそれぞれ同値である:

(C-1) 全体集合 X と空集合∅ は閉集合;

5 X であり, その構造が T によって与えられているのである. 集

(16)

(C-2) 2 つの閉集合の和集合は閉集合;

(C-3) どんな閉集合の族の共通部分も閉集合.

注 “開” および “閉” という言葉の使い方に注意せよ.

closed ≡ not open (open ≡ not closed)

位相空間とは, “ど のような部分集合が閉集合になるかが定義されている集合” であるともいえ る. 実際, 補集合が閉集合となる部分集合が開集合であると定義す れば, 3 つの条件 (O-1), (O-2), (O-3) が成り立つ. 上の 3 つの条件 (C-1), (C-2), (C-3) を閉集合の公理と呼ぶ.

2.3 例 集合 X 上の位相の極端な例として, 密着位相 (自明な位相) [trivial topology] と呼ばれ る位相 {∅, X} と離散位相 [discrete topology] と呼ばれる位相 P(X) (巾 集合) がある. 位相空間 (X, P(X)) を離散空間 [discrete space] と呼ぶ. 離散空間 とは, どんな部分集合も開集合かつ閉集合となる位相空間に他ならない.

演習 2.1 位相空間X が 離散空間であるためには,一点集合が すべて 開集合となること が 必要十分であることを示せ.

2.4 例 2 点集合 {0, 1} 上には 4 つの位相がある. 密着位相と離散位相以外の位相 は,

∅, {0}, {0, 1} ∅, {1}, {0, 1}である.

演習 2.2 3点集合 {0, 1, 2} 上には,いくつの位相が 定義できるか?

2.5 例 集合 X において, X の有限部分集合と X 自身を “閉集合” と呼ぶことに すると, 条件 (C-1), (C-2), (C-3) が満たされる. したがって, 次の Fc(X) は X 上 の位相である:

Fc(X) = U ⊂ X U = ∅ or X \ U : finite. この位相を X 上の有限補集合位相 [cofinite topology] と呼ぶ.

2.6 定義 集合 X 上の 2 つの位相 T, T に対し て, 包含関係 T⊂ T が 成り立つと, T は T より粗い [coarser] (または, T T より細かい [finer]) という. 密着位 相は 最も粗い位相であり, 離散位相は最も細かい位相である.

2.7 定義 集合 X の部分集合の族 S に対して, S を含むすべての X 上の位相の共 通部分族をT(S) とするとき, T(S) は定義 2.1 の 3 条件 (O-1), (O-2), (O-3) を満 たし, X 上の位相となる. この位相 T(S) は S を含む最も粗い位相であり, S に よって生成された位相[the topology generated by S] と呼ばれる. 離散位相は一点 集合全体 {{x} | x ∈ X} によって生成された位相に他ならない.

(17)

2.8 命題 位相空間 X の位相が S によって生成されているならば, 次が成り立つ: U : open in X ⇔ U = X or ∀x ∈ U, ∃V1,· · · , Vn∈ S

such that x∈ V1∩ · · · ∩ Vn ⊂ U.

証明概略 右辺の条件を 満たす U ⊂ X 全体を TS とし, これが X の位相 T と等し いことを 示す. (このとき, TS の 定義におけ るV1,· · · , Vn ∈ S は, その個数 n も含 めてx に依存するが, 個数 n も x に依存することに注意.) TS ⊂ T は, S ⊂ T と T が 条件 (O-1), (O-2), (O-3) を満たすことから導かれる. 逆の包含関係 T⊂ TS を 得

るには, TS X 上のS を含む位相となることを示せばよい.

2.9 定義 距離空間 X = (X, d) において, 次の Td X 上の位相となる: Td =

def

U ⊂ X ∀x ∈ U, ∃ε > 0 such that B(x, ε) ⊂ U.

このTd を距離 d によって導入された位相 [the topology induced by the metric d] と呼ぶ. 距離空間は, 常に, この位相が与えられた位相空間と見なす. すなわち,

U : open in X

def ∀x ∈ U, ∃ε > 0 such that B(x, ε) ⊂ U.

ノルムから 導入され る距離に よって 導入され た位相を ノルムによって導入され た 位相と呼ぶ. ノルム空間もこの位相が与えられた位相空間と見なす.

演習 2.3 上の定義におけ るTd X 上の位相であることを 確かめよ. (定義2.1 3条件 (O-1), (O-2), (O-3)を満たすことを確かめよ.)

2.10 命題 集合 X 上の互いに同値な 2 つの距離 d, ρ は, X 上に同じ位相を導入 する. すなわち, Td = Tρが 成り立つ.

演習 2.4 命題2.10 を証明せよ.

2.11 命題 距離空間 X = (X, d) において, 各点 x∈ X の ε 近傍 B(x, ε) は X の 開集合であり, ε 閉近傍 B(x, ε) は閉集合である.

証明概略 B(x, ε) に関しては, 補集合が開集合であることを示す. ∀y ∈ X \ B(x, ε) に 対し て, δ = d(x, y)− ε (> 0) とすれば, B(y, δ) ⊂ X \ B(x, ε).

注 B(x, ε) は閉集合になり得るし, B(x, ε) も開集合になり得る. 例えば, 例 1.5(2) (離散距離空間) や例 1.5(3) の距離 d を用いて考えよ.

2.12 定義 位相空間 X = (X, T) の位相 T が, X 上のある距離 d によって導入さ れたものであるとき, X は距離付け可能 [metrizable] であるという. すなわち,

X : metrizable

def ∃d : metric on X such that T = Td.

(18)

注 2 点以上の点を含む距離付け可能な位相空間の許容距離は無数に存在する. 一 方, 距離空間とは, 距離 d が与えられている集合 X のことであり, X と d の組を 意味するので, “距離付け可能な空間” と “距離空間” は異なる概念である.

a metrizable space≡ a metric space

2.13 例 離散空間は距離付け可能であり, 離散距離は許容距離である. (例 1.5(2), 演習 2.1 を参照)

演習 2.5 有限個の点からなる位相空間Xに関し て, Xが 距離付け可能になるための必 要十分条件は X が 離散空間であることを示せ.

演習 2.6 無限集合に 有限補集合位相を 与えた位相空間は, 距離付け 可能ではない. ( 2.5を参照)

ヒント 距離空間では 相異な る2 点 x, y に対して, 開集合 U , V で x∈ U, y ∈ V , U∩ V = ∅ となるものが取れる.

2.14 定義 全順序集合 X = (X,≤) に対して, X に属さない ∞, −∞ を取り, すべ ての x ∈ X に対して −∞ < x < +∞ と見なす. 次の T X 上の位相であり, 順序位相 [order topology] と呼ばれる:

T =

def

U ⊂ X ∀x ∈ U, ∃a, b ∈ X ∪ {±∞} such that x ∈ (a, b) ⊂ U.

ここで, (a, b) ={y ∈ X | a < y < b}. 全順序集合 X = (X, ≤) は, この位相が与え られた位相空間と見なす. すなわち,

U : open in X

def ∀x ∈ U, ∃a, b ∈ X ∪ {±∞} such that x ∈ (a, b) ⊂ U. 定義より, どんな a < b に対しても, (a, b) が X の開集合となることは明らか.

演習 2.7 上の定義2.14におけ るT X 上の位相とな ることを確かめよ.

注 定義 2.14 において, X が全順序でない場合には, Tが 位相になるとは限らな い. (下の演習を参照)

演習 2.8 集合X ={0, an, bn| n ∈ N} の上に 順序 0 = min X , an bm は 比 較不可能, m < nに 対し て, an < am, bn < bm と 定める. このとき, 定義 2.14に おけ る T X 上の位相とならないことを 示せ.

ヒント {0, an| n ∈ N} と {0, bn| n ∈ N} は通常の順序を入れた {0, 1/n | n ∈ N} と 順序同型.

2.15 命題 数直線 R における順序位相は, 通常の距離の導入する位相と一致する.

演習 2.9 命題2.15を証明せよ.

(19)

2.16 命題 整列集合 X に対しては, 次が成り立つことを示せ:

U : open in X ⇔ ∀x ∈ U, ∃a ∈ X ∪ {−∞} such that (a, x] ⊂ U. ここで, (a, x] =

y∈ X a < y ≤ x.

演習 2.10 命題 2.16を 証明せよ.

証明の詳細 命題 2.8

X の位相T, 次のTS に 等し いことを示せば よい:

TS = U ⊂ X U = X or ∀x ∈ U, ∃V1,· · · , Vn∈ S such that x∈ V1∩ · · · ∩ Vn⊂ U (TS⊂ T) X∈ T より, U ∈ TS\ {X} ⇒ U ∈ Tを 示せば よい

∀x ∈ U, ∃Vx,1,· · · , Vx,n(x) ∈ S such that x ∈ Vx,1∩ · · · ∩ Vx,n(x)⊂ U (ここで, TS の定義におけ るV1,· · · , Vn∈ S の個数 n も x に依存する) ここで, Vx = Vx,1∩ · · · ∩ Vx,n(x) とおくと

S ⊂ TでありTが 条件 (O-2)を満たすので, Vx ∈ T このとき, U =



x∈UVx (∵∀x ∈ U, x ∈ Vx⊂ U より, U ⊂x∈UVx⊂ U) さらに, Tが 条件 (O-3)を 満たすので, U ∈ T

(T⊂ TS) TS X 上の S を 含む位相とな ることを 示せば よい TS の定義より,S を含むことと 条件 (O-1)を満たすことは 明らか (O-2): U, V ∈ TS とする

∀x ∈ U ∩ V ,

∃V1,· · · , Vn∈ S such that x ∈ V1∩ · · · ∩ Vn⊂ U (∵ U ∈ TS, x∈ U)

∃W1,· · · , Wm∈ S such that x ∈ W1∩ · · · ∩ Wm ⊂ V (∵ V ∈ TS, x∈ V ) このとき, x∈ V1∩ · · · ∩ Vn∩ W1∩ · · · ∩ Wm ⊂ U ∩ V

U∩ V ∈ TS

(O-3): Uλ ∈ TS, λ∈ Λ,とする

∀x ∈λ∈ΛUλ,∃λx∈ Λ such that x ∈ Uλx

Uλx ∈ TS より,∃V1,· · · , Vn ∈ S such that x ∈ V1∩ · · · ∩ Vn⊂ Uλx

このとき, x∈ V1∩ · · · ∩ Vnλ∈ΛUλ

λ∈ΛUλ∈ TS

以上により, TS X 上の S を含む位相となる 

(20)

命題 2.11

y∈ B(x, ε)とすると,

d(x, y) < εより, δ = ε− d(x, y) > 0とおけ る

∀z ∈ B(y, δ), d(x, z)  d(x, y) + d(y, z) < d(x, y) + δ = ε

z∈ B(x, ε)

B(y, δ)⊂ B(x, ε)

距離によって導入され た位相の定義より, B(x, ε)は 開集合 y∈ X \ B(x, ε)とすると,

d(x, y) > εより, δ = d(x, y)− ε > 0とおけ る

∀z ∈ B(y, δ), d(x, z)  d(x, y) − d(y, z) > d(x, y) − δ = ε

z∈ X \ B(x, ε)

B(y, δ)⊂ X \ B(x, ε)

距離によって導入され た位相の定義より, X\ B(x, ε)は 開集合 

(21)

順序集合の復習

集合 X 上の次の条件を満たす 2項関係 を順序(関係) [order]と 呼ぶ: (O1) ∀x ∈ X, x  x 反射律 [refrective law]

(O2) ∀x, y ∈ X, x  y, y  x ⇒ x = y 反対称律 [antisymmetric law] (O3) ∀x, y, z ∈ X, x  y, y  z ⇒ x  z 推移律[transitive law]

ここで, x  y か つ x = y であ ることを x < y と 表す. また, x  y (x < y) y  x (y > x) とも書く. 順序が 与えられて いる集合を 順序集合[ordered set]と 呼ぶ. 2 つの元 x, y ∈ X に 対し て, x  y または x  y のど ちらかが 成立するとき, x y は 比較可能

[comparable]であるという.ど んな 2つの元も常に 比較可能であるような順序集合を全順

序集合[totally ordered set],その順序を 全順序 [total order]と 呼ぶ. Aを 順序集合 X の部分集合とする.

• a ∈ A Aの最大元 [maximum]

def ∀x ∈ A, a  x a∈ A Aの最小元 [minimum]

def ∀x ∈ A, a  x

• a ∈ A Aの極大元 [maximal element]

def  ∃x ∈ A such that x > a a∈ A Aの極小元 [minimal element]

def  ∃x ∈ A such that x > a

• b ∈ X Aの上界[upper bound]

def ∀x ∈ A, a  x b∈ X Aの下界[lower bound]

def ∀x ∈ A, a  x

ここで, A に 最大元あ るいは 最小元が 存在するなら, それらは 一意的に 決まり, それぞれ max A, min Aと表す. また, Aの最小上界[least upper bound]を上限[supremum],最大 下界[greatest lower bound]を下限 [infimum]と 呼ぶ. Aの上限あるいは 下限は 存在する なら,それらは 一意的に 決まり,それぞれ sup A, inf Aと 表す. Aが 上界(下界)を持つと , Aは 上に 有界 [upper bounded] (下に 有界 [lower bounded])であるといい, 上にも下 にも有界であるとき, Aは 有界[bounded]であるとい う.

ど んな 空でない部分集合も最小元を 持つよ うな 順序集合を 整列集合 [well ordered set], その順序を 整列順序 [well order] と 呼ぶ. また,ど んな 空でな い全順序部分集合も 上に 有 界であるよ うな順序集合を 帰納的順序集合 [inductive ordered set]と呼ぶ.

以下の3つの 主張は 互いに 同等であり,集合論に おけ る基本的な 主張である.

ツォルン の補題[Zorn’s Lemma] 帰納的順序集合は 極大元を持つ.

整列定理 [Well Ordering Theorem] ど のような 集合にも整列順序を 与え ることが できる.

選出公理[Axiom of Choice]空でない集合の族(Xλ)λ∈Λ の直積集合λ∈ΛXλ は 空 集合とはならない. すなわ ち, λ∈ Λに 対し て, f (λ)∈ Xλ とな る写像f : Λ



λ∈ΛXλが 存在する. (このf を 選出関数 [choice function]と呼ぶ.) 整列集合においては,数学的帰納法の一般化である超限帰納法が 有効である.

超限帰納法 [Transfinite Induction] 整列集合Xの元xに関する条件P (x)が 以下の(i), (ii)を満たせば,すべての x∈ X に 対し て P (x)が 成立する(∀x ∈ X, P (x)):

(i) P (min X) ; (ii) ∀x < a, P (x) ⇒ P (a)

(22)

3 近傍 , 内部 , 閉包

— Neighborhoods, Interiors and Closures ここでは, 断らない限り, X は位相空間とする.

3.1 定義 X において, 点 x を含む開集合を x の開近傍 [open neighborhood] と呼 び, x の開近傍を含む X の部分集合 U を x の近傍 [neighborhood] と呼ぶ. また, 点 x の近傍全体を x の近傍系 [neighborhood system] と呼び, Nbd(x) と表す. す なわち,

U ∈ Nbd(x) ⇔

def ∃G : open in X such that x ∈ G ⊂ U.

空間 X あるいは位相 T で考えているを明確にするために, NbdX(x) あるいは NbdÌ(x) と表したりすることもある.

3.2 例 (1) X が離散空間であれば, x ∈ X を含むどんな部分集合も x の開近傍 である. 特に, {x} は x の開近傍である.

(2) X が有限補集合位相を持つとき, x∈ X の近傍はすべて開近傍である. (3) X が距離空間であれば, x ∈ X の ε 近傍を含む部分集合が x の近傍である.

すなわち,

U ∈ Nbd(x) ⇔ ∃ε > 0 such that B(x, ε) ⊂ U. (4) X が全順序集合であれば,

U ∈ Nbd(x) ⇔ ∃a, b ∈ X ∪ {±∞} such that x ∈ (a, b) ⊂ U. 3.3 命題 X における点 x の近傍系 Nbd(x) に関して, 次が成り立つ:

(1) ∀x ∈ X, X ∈ Nbd(x) (∴ Nbd(x)= ∅); (2) ∀U ∈ Nbd(x), x ∈ U;

(3) U ∈ Nbd(x), U ⊂ V ⇒ V ∈ Nbd(x); (4) U, V ∈ Nbd(x) ⇒ U ∩ V ∈ Nbd(x); (5) G : open in X ⇔ ∀x ∈ G, G ∈ Nbd(x). 注 上の命題は次のように 言い換えられ る:

(1) X は x の近傍 (よって, x の近傍が少なくとも 1 つはある); (2) x のどんな近傍も x を含む;

(3) x の近傍を含む X の部分集合は x の近傍; (4) x の 2 つの近傍の共通部分は x の近傍;

(5) G⊂ X が開集合となるためには, G がすべての点 x ∈ G の近傍となることが 必要十分である.

なお, (3) によれば, 近傍では小さなものが重要であることが分かる. — 6 章参照.

(23)

証明概略 (1), (2), (3) および (5) の ⇒ は, 定義より明らか. (4) は (O-2) を用い, (5) の ⇐ は (O-3) を用いる.

3.4 定義 A⊂ X と x ∈ X に関して, 次の定義を与える:

• x は A の内点 [interior point]

def ∃U ∈ Nbd(x) such that U ⊂ A

⇔ A ∈ Nbd(x).

• x は A の触点 [closure point]

def ∀U ∈ Nbd(x), U ∩ A = ∅.

• x は A の境界点 [boundary point]

def ∀U ∈ Nbd(x), U ∩ A = ∅, U ∩ (X \ A) = ∅

⇔ x は A の触点で A の内点ではないもの.

• x は A の集積点 [accumulation (or cluster) point]

def ∀U ∈ Nbd(x), U ∩ A \ {x} = ∅

⇔ x は A \ {x} の触点 (A の点とは限らない).

• x は A の孤立点 [isolated point]

def ∃U ∈ Nbd(x), U ∩ A = {x}

⇔ x は集積点ではない A の点.

x は A の触点 ⇔ x は A の集積点または孤立点

3.5 定義 X における A⊂ X の内点全体のなす集合を A の内部 [interior], 触点全 体のなす集合を A の閉包 [closure], 境界点全体のなす集合を A の境界 [boundary] と呼び, それぞれ int A, cl A, bd A と表す. 複数の空間 (あるいは, 複数の位相) を 扱う場合は, intX A, clXA, bdXA (あるいは, intÌA, clÌA, bdÌA) と表す.

内部, 閉包, 境界には, 以下のような関係がある:

int A⊂ A ⊂ cl A ; bd A = cl A \ int A ; cl A = int A ∪ bd A = A ∪ bd A. 3.6 命題 A⊂ X に対して, 次が成り立つ:

int A = G G : open in X such that G ⊂ A; cl A = F F : closed in X such that F ⊃ A.

(24)

証明概略 int A に関しては, ∀x ∈ int A, A ∈ Nbd(x) であるから, 近傍の定義より int A⊂ (右辺) が得られ, G を A に含まれる開集合とすれば, ∀x ∈ G, A ∈ Nbd(x) であるから, 内点の定義より int A⊃ (右辺) が得られる.

cl A に関しては, x∈ X \ cl A とすれば, ∃U ∈ Nbd(x) such that U ∩ A = ∅. 近傍 の定義よりx∈ G ⊂ U となる開集合 G が取れるが, X \ G は A を含む閉集合なの , x∈ (右辺) となり, cl A ⊃ (右辺) が得られる. また, F を A を含む閉集合とし, x∈ X \ F とすれば, X \ F ∈ Nbd(x), (X \ F ) ∩ A = ∅ であるから, 触点の定義よ x∈ cl A となり, cl A ⊂ (右辺) が得られる.

注 上の命題と (O-3) および (C-3) により, 次が得られる:

• int A は A に含まれる最大の開集合. よって, A : open ⇔ A = int A.

• cl A は A を含む最小の閉集合. よって, A : closed ⇔ A = cl A.

演習 3.1 X におけ る内部と 閉包に 関し て,以下が 成り立つことを 示せ: int A = X\ cl(X \ A); cl A = X \ int(X \ A); int(A∩ B) = int A ∩ int B; cl(A ∪ B) = cl A ∪ cl B.

演習 3.2 数直線Rの部分集合 A, Bで以下のようになる例をあげ よ: int(A∪ B) = int A ∪ int B; cl(A ∩ B) = cl A ∩ cl B

演習 3.3 数直線 R の部分集合A cl(int A)= cl A, int(cl A) = int Aとな る例をあ げ よ.

3.7 命題 距離空間 X = (X, d) の部分集合 A⊂ X に対して, 次が成り立つ: cl A = x∈ X d(x, A) = 0 i.e., x∈ cl A ⇔ d(x, A) = 0.

証明概略 ⊂) ∀ε > 0, d(x, A) < ε を示す.

⊃) U ∈ Nbd(x) とすると, ∃ε > 0 such that B(x, ε) ⊂ U. このとき, U ∩ A ⊃ B(x, ε)∩ A = ∅ を示す.

注 ユークリッド 空間 Rn に おいては, 各点 x ∈ Rn と 任意の ε > 0 に対して, B(x, ε) = cl B(x, ε) となる. しかし, 一般の距離空間では, これが成立するとは限 らない. 例えば, 例 1.5(2) (離散距離空間) や例 1.5(3) の距離 d を用いて考えよ.

演習 3.4 ユークリッド 空間 Rnにおいて, B(x, ε) = cl B(x, ε)となることを示せ. 注 全順序集合 X の 2 点 a < b に対して, [a, b] は閉集合となるが, 一般に [a, b] = cl(a, b) とはならない. 例えば, N において, [1, 2] = {1, 2} = cl(1, 2) = ∅.

演習 3.5 全順序集合X 2 a≤ bに 対し て, [a, b]は 閉集合とな ることを 示せ. 3.8 定義 X において, 可算個の開集合の共通部分を Gδ 集合 [Gδ-set], 可算個の閉 集合の和集合を Fσ 集合[Fσ-set] と呼ぶ.

参照

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