第3章
認知症高齢者支援策の充実
第1節 予防対策の推進 [現況]
○ 認知症とは、脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶 機能及びその他の認知機能が低下した状態をいい、認知症を有する人は、今後、 高齢化の更なる進行と、75歳以上人口の増加に伴い、急速に増加していくことが 見込まれています。
○ 認知症の人については、平成27(2015)年1月に厚生労働省が公表した認知症の 有病率を踏まえて推計すると、平成26(2014)年10月現在、本県の認知症高齢者の 人 は 約 5万 人
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と 推 計さ れ ま す 。 また 、 平 成 37 (2 02 5) 年に は 、約 7万 人 と急 増 することが見込まれています。
○ 認知症の原因は、その多くが脳血管障がいによる脳血管疾患によるものと、原 因不明の脳の変性疾患であるアルツハイマー病によるものです。
○ 脳血管性認知症については、生活習慣の改善などによりその原因となる動脈硬化 や脳卒中を予防したり、また閉じこもりの防止、知的な活動の促進などにより、症状 の進行を防ぐことが可能であることから、有効な予防対策を進める必要があります。 [基本的方向]
○ 高齢者の生きがいづくりを支援し、社会参加を進めることにより、閉じこもり の防止や知的な活動を促進します。
○ 医療保険者による特定健康診査、特定保健指導の実施をはじめ、市町村による 健康相談、健康教育などの保健事業の充実を図ることで、生活習慣の改善を促進 することにより、危険因子となる高血圧症、動脈硬化症、糖尿病などを壮年期か ら予防することを推進します。
第2節 相談体制の整備
[現況]
○ 認知症を早期に発見し、周囲の者が適切に対応できるようにするためには、相 談しやすい体制を整備する必要があります。
○ 認知症の人やその家族に関する相談窓口としては、地域包括支援センター、保 健所、認知症疾患医療センター、医療機関、高齢者総合支援センター、認知症の 人と家族の会県支部などがあり、電話や面接による相談に応じています。また、 県 民 に わ か り や す い 相 談 窓 口 と し て 、 認 知 症 サ ポ ー ト 医
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等 を 「 み やざ き オ レ ンジドクター」として登録・公表しています。
○ 「認知症初期集中支援チーム」や「認知症地域支援推進員」の設置が進められ ており、当該支援推進員を中心として、認知症対応に係る医療と介護の連携強化 や、地域における相談支援体制の構築が図られています。
[基本的方向]
○ 認知症の人やその家族が身近な場所で相談できるよう、地域包括支援センター、 認知症疾患医療センター等の相談体制の整備・充実及び窓口の周知に努めます。
○ 宮崎県医師会、認知症疾患医療センターとの連携のもと、認知症の早期発見の 重要性を啓発するとともに、認知症サポート医を活用した保健医療関係者等に対 する認知症に関する研修を実施し、認知症の早期診断等を促進します。
○ 認知症地域支援推進員は、認知症の早期発見・早期対応に向けた体制づくりや 医療、介護及び生活支援のサービスが一体的に提供できる地域づくりなど、認知 症の人とその家族を支援する役割を担っています。推進員の活動を強化するため、 取組事例の紹介や情報共有の機会を提供し、ネットワークの充実等を図ります。
第3節 専門医療の提供体制の充実
[現況]
○ 認知症の対応を適切に行うためには、早期発見が重要であり、迅速な鑑別診断 を行い、確定診断に基づき適切に医療や介護の方針を決定することが不可欠です。
○ このため、認知症に関する専門医療の提供体制の充実強化を図るとともに、介 護との連携機能を強化する必要があります。
○ 認知症の人が日頃より受診する病院等のかかりつけ医や看護師が、日常の診療 の中で認知症に気づいた場合は、速やかに認知症疾患医療センター等の専門医療 機関につなぎ、早期診断・早期発見に繋ぐことが必要です。
[基本的方向]
○ 認知症の専門の医師、検査体制、相談窓口等の一定の体制を備えた病院を認知 症疾患医療センターとして指定し、認知症の専門医療相談、鑑別診断、身体合併 症を含めた急性期対応、地域包括支援センターとの連絡調整、保健医療関係者等 への研修等の業務を実施します。
○ 認知症疾患医療センターは、平成29(2017)年10月現在、県内に5箇所設置して いますが、二次医療圏に1箇所の設置(県内で7箇所)を目指します。
○ かかりつけ医や病院勤務の看護師を対象とした認知症対応力向上研修を行い、 専門医療機関への受診に繋げるほか、認知症の人が住み慣れた地域で生活ができ るよう、日常診療におけるサポートができるようにします。
○ 認知症サポート医等の技術力を高めるため、継続的に研修を行います。
第4節 介護人材の育成
[現況]
○ 認知症の人の尊厳を保持し、認知症ケアを推進できる認知症介護を担う人材の 育成が必要です。
[基本的方向]
第5節 地域の支援体制の整備
[現況]
○ 認知症の人が尊厳を保ちながら穏やかな生活を送り、その家族も安心して生活 ができるような状態を実現することが求められています。
○ このため、家族や地域住民が認知症を正しく理解するとともに、保健・医療・ 福祉に関する関係機関が相互に連携し、地域で支える体制づくりの整備が必要で す。
○ 認知症について正しく理解し、偏見を持たず、認知症の人や家族に対して温か い目で見守る認知症サポーターの養成講座には、平成29(2017)年9月末現在、県 内で 延べ11万1,040人が参 加され、また認知症 サポーターの指導者となる認知症 キャラバンメイトは、県内で2,256人が登録されています。
○ 行方不明の認知症高齢者の発見・保護活動等を行うため、地域包括支援センタ ー、警察、消防、郵便局、バス会社、タクシー協会、コンビニエンスストアなど の連携の下に「徘徊見守りSOSネットワーク」が構築され、平成29(2017)年10 月現在、26市町村全域をカバーする23のネットワークができています。
今後、認知症高齢者の増加が予測されるため、ネットワーク機能の充実・強化 を図るとともに、官民一体となった徘徊模擬訓練の実施など地域における発見・ 保護機能を高める必要があります。
[基本的方向]
○ 地域包括支援センター、保健所、認知症疾患医療センター、医療機関、高齢者 総合支援センターなどのネットワークの強化を支援するとともに、老人クラブや 自治会など地域の団体との連携を促進し、認知症の早期段階から切れ目なく支援 する体制づくりを推進します。
○ 認知症高齢者が住み慣れた地域で暮らせるよう、認知症高齢者グループホーム などの計画的な整備を進めます。また、認知症の人や家族の交流の場となる認知 症カフェ等の全市町村への設置を進めます。
○ 認知症キャラバンメイトの養成に取り組むとともに、認知症カフェでのボラン ティア活動など認知症サポーターが地域で活動できる認知症サポーターの育成を 推進します。
第6節 若年性認知症施策の推進 [現況]
○ 若年性認知症については、現役世代で発症することから、介護面での負担だけ ではなく、仕事が続けられないことなどによる経済的負担や、教育など子どもに 与える影響等、高齢者と異なる課題があります。
○ このため、若年性認知症についての正しい理解や適切な対応について、地域包 括支援センター等の担当者や地域住民、事業主等の理解を促進することが必要で す。
○ 若年性認知症相談窓口を設置し、様々な課題に対し、ワンストップで対応 しています。
[基本的方向]
○ 若年性認知症に関する地域住民や事業主等への啓発や、相談担当職員の研修を 行い、若年性認知症の人やその家族の支援に努めます。
徘徊見守りSOSネットワークの例
交通機関・日常生活関連業者等
医療機関
市町村
高 齢 者 福 祉 主 管 課 ○○警察署
(交番等)
第一次ネットワーク 第二次ネットワーク
○○消防署 ○○消防団
高 齢 者 の 家 族
保
護
家族
在宅ケ ア 医療 入院 施設入 所
・ 市町 村高 齢者福祉主 管課
・ 保健 所
・ 社会 福祉 協議会
・ 地域 包括 支援センター
・ 医療 機関 等
コーデ ィネートチーム
手配 ・ 連絡 発 見 ・ 情報 手 配 ・ 連絡 発 見 ・ 情報 引 継 ぎ
発 見 ・ 情報 手 配 ・ 連絡
手配 ・ 連絡 発 見 ・ 情報 届 出
連 絡
連 絡
連絡
届 出
緊 急 対 応
引 取 り
引 取 り