第 9 章 企業の行動:利潤最大化
9.1 企業
企業とは: 資本、労働、原材料といった生産要素 (input) を利用して、財 (output) を生産
企業 input
労働、 資本 など
output
図 9.1: 企業の位置付け
利潤最大化: 企業は利潤が最大となるように、生産量や生産要素の組み合わせを調節
• (総) 利潤 = 総収入 (売上げ) ー 総費用
• 企業の所有者である株主の期待に応えるため
9.2 収入
総収入 (Total Revenue): 生産により得られる収入の合計、TR = P × Q 平均収入 (Average Revenue): 生産量 1 単位あたりの収入、AR = TR/Q = P
限界収入 (Marginal Revenue): 1 単位生産量を増やした時に追加される収入、MR = dTR/dQ
9.3 費用
総費用 (Total Cost): 生産にかかるすべての費用、TC = FC + V C 固定費用 (Fixed Cost): 固定的生産要素にかかる費用 (工場の建設費)
可変費用 (Variable Cost): 可変的生産要素にかかる費用 (アルバイト代、材料費) 平均費用 (Average Cost): 1 個あたりの費用、AC = TC/Q = AFC + AV C 平均固定費用 (Average Fixed Cost): 1 個あたりの固定費用、AFC = FC/Q
平均可変費用 (Average Variable Cost): 1 個あたりの可変費用、AV C = V C/Q 限界費用 (Marginal Cost): 追加的に 1 単位生産量を増やすときにかかる費用、
M C = dT C/dQ = dF C/dQ + dV C/dQ = dV C/dQ (dF C/dQ = 0) 例題 1: 下記の表を埋めよ
表 9.1: 生産費用
Q F C V C T C M C AF C AV C AC 1 24 10
2 24 15 3 24 17 4 24 20 5 24 25 6 24 31 7 24 39 8 24 48 9 24 60
• M C: 当初下がるが、ある生産量を境に上昇する
– 生産施設に余裕があるうちは生産量とともに MC が下がる
– 生産施設が混んでくると生産量をさらに増やすことによって MC が上昇 – ただし産業構造にもよる
– 一般的に MC が右上がりの状況を考える
• M C と AV C が交わる点: AV C が最も低くなる点
• M C と AC が交わる点: AC が最も低くなる点
• M C が AC (もしくは AV C) を下回っていれば AC (AV C) を低下させ、M C が AC (AV C)を上回っていれば AC (AV C) を上昇させる
例題 2: 可変費用が q2、固定費用が 1 のとき、下記の値を求めよ (q: 生産量)
• 総費用:
• 平均可変費用:
• 平均固定費用:
• 平均費用:
• 限界費用:
図 9.2: 総費用、平均可変費用、平均固定費用、平均費用、限界費用
一般的な費用関数: 限界費用が逓減した後に逓増
TC
Q VC
FC
AVC AC MC
Q
図 9.3: 一般的な費用関数
例題 3: 総費用が TC = q3− 6q2+ 24qのときの限界費用と平均費用を求めよ。
•
•
図 9.4: T C = q3− 6q2+ 24qに対応する T C, MC, AC
短期と長期: 固定費用を考える際のタイムスパン
• 短期: 生産要素の一部が変更できない (固定) と見なすときの考え方
• 長期: すべての生産要素を自由に変えることができる (可変) と見なすときの考え方
9.4 利潤最大化
利潤 (profit, π) = TR − TC が最大になる生産量を考える T Rと TC の関係: 差が最も大きくなる点で利潤が最大
M Rと MC の関係: 利潤が最大となるときの MR と MC の関係
• M R が一定で M C が生産量 (Q) とともに上昇するケースを考える
• M R > M C: 生産を増加させた際、追加的な収入が追加的な費用を上回る (利潤増加)
• M R < M C: 生産を増加させた際、追加的な収入が追加的な費用を下回る (利潤減少)
• M R = M C まで生産すべき
– 追加的に得られる収入が追加的にかかる費用と等しくなるまで生産 – 追加的に得られる利潤が 0 になるまで生産 (限界利潤が 0)
9.5 産業構造と企業行動
産業構造が異なる理由: 技術や規制、需要の大きさ
企業に対する影響: 企業の最適規模、参入退出の容易さなどが変化 例: 固定費用が需要に比べて大きい → 新規参入がむずかしい → 寡占化
企業行動の分析: 産業構造をふまえて分析すべき
• ひとつの企業が価格をコントロールできるか?
• 他企業の行動にどれくらい影響を受けるか? 産業構造の分類: 完全競争、独占的競争、寡占、独占
9.6 生産要素別の分析
生産要素: 労働や資本
• 生産量を生産要素の関数として見ることができる 生産量を変数とした利潤最大化: 最適な生産量を分析
生産要素を変数とした利潤最大化: 最適な生産要素の組み合わせとその量を分析
• 生産量単位ではなく生産要素単位で企業の行動を考えるのが目的
• 例: 労働者を 1 人増やすと利益はどう変わるか
• 生産要素を変数とした分析の方が深く踏み込んで考察していると言える 生産要素
(労働、資本)
生産要素の価格 (賃金、利子率)
最適な生産要素の組み合わせ 生産関数
費用関数 (の元)
生産物の価格 (販売価格)
最適な生産量の決定
図 9.5: 生産要素の組み合わせと最適な生産量の決定
生産関数: 生産要素と生産量の関係を示す
• Q = f (L, K): 生産量 (Q) は L (労働投入量) と K (資本量) の関数 コブダグラス型生産関数: よく使われる生産関数の形状
• Q = AKαLβ (A: 定数)
• α + β = 1 のとき、規模に関して収穫一定 (K と L が 2 倍になれば生産量も 2 倍)
限界生産性 (Marginal Product): 生産要素をちょっと増やした時の生産量の増加分
• Q = AKαL1−α のときを考えると
• 労働の限界生産物 (Marginal Product of Labor)
∂Q
∂L = (1 − α)AKαL−α= (1 − α)AK
αL1−α
L = (1 − α) Q L
• 資本の限界生産物 (Marginal Product of Capital)
∂Q
∂K = αAK
α−1L1−α= αAK αL1−α
K = (1 − α) Q K 生産要素を変数とした利潤最大化: 定式化
• P Q(K, L) − (rK + wL) を K と L をコントロールして最大化 (r: 利子率、w: 賃金)
• 収入 (P Q(K, L))と費用 (rK + wL) の差 (利潤) が最大になるように、労働量 (L) と 資本量 (K) を決定
9.7 課題
1. 総費用関数が T C = 2Q3− 12Q2+ 30Q + 8で与えられた時の可変費用、固定費用、限界費 用、平均費用、平均可変費用を計算せよ。ただし Q は生産量とする。
2. 総費用、固定費用、可変費用の関係をグラフに示せ。 3. 限界費用、平均費用、平均可変費用の関係をグラフに示せ。
4. 人件費は固定費用、可変費用どちらと考えられるか。またその理由も説明せよ。 5. 利潤が最大化された際、限界費用と限界収入が等しくなるが、その理由を述べよ。 6. 下記の 4 つの競争形態について、その特徴を調べ、説明せよ。
(a) 完全競争 (b) 独占的競争
(c) 寡占 (d) 独占
7. 社会全体の総余剰を考えたとき、もっとも望ましい競争形態は 4 つのうちどれか。