冠省 畑田大兄
以下、覚書というか、メモをお送りします。
できるだけ平易に書いたつもりですが、わからない個所(用語)があれば、小 生なり
、
先生に訊いてください。 (あるいはググるか)
この問題は、一見「ただのマンション/超高層建築紛争」に見えますが、 ●建築行政の在り方の問題
●地方自治の在り方の問題
●コミュニティの在りよう、体質の差(計画敷地町会と隣接町会の体質の違 い)
●「景観」の価値、便益(権利)、保全の問題
●経済行為としての不動産開発の在り方、利権・利益の問題
●いわゆる「土建体質」の問題(地元のミクロの政治から、国家経済まで) ・・・
といくつものレイヤーに亘って、こもごもに、時に混乱しながら議論されていま す。
(新聞報道は、景観問題と都市計画の問題の峻別もできないものがかなりあり ます
わかりくいものは記事にしないで、「浅草寺」「景観」「提訴」「却下」と いうキャッチフレーズで記事を構成していきます。ましなのが東京新聞です。 意外なところではブルームバーグ(経済報道)の記事が視点はやはり財界報 道
ですが、記事内容自体はきわめて正確だったりします)
なかなかアクターの主張?を「すぱっ」とは切り分けられないのですが、 貴兄の現時点での「切り分け」を基本として、以下のメモから受けた印象を、 若い人の感性で、適宜、加味してくだされば幸甚です。
また、添付資料はじめ、各種新聞報道、この前の折の資料・取材等々、
上、遅れ馳せ乍 川西崇行 頓首
追記
「スマッチ」「マンションコミュニティ」という口コミ掲示板で
事業者側の人間・超高層再開発推進側と地元反対派・超高層型再開発への疑問 派の
どす黒いつばぜり合いが昼夜を問わず、ずっと行われています。 (両掲示板トップで「浅草タワー」で検索すると出てきます)
いかに台東区、区議会議員や古い体質の人の「土建依存」病が深刻かわかります。 両掲示板とも、今までに書き込み総数が三千を越していますので、
ゆっくり読むのは大変だと思いますが・・・
※このメールに、この問題のためにつくったパワーポイント、PDF各種も添えま す。
(少々重くなりますが)
時間の許す限り、あるいは全体の構成に支障のない限り適宜読解してくださ い。
これの複写、引用も自由にやってください。
---今回の浅草超高層ビル問題の構造(メモ)
---○浅草寺:信仰の場、観光資源としての境内からの景観の保全
(年間3千万人の参拝者・観光客やそれによる周辺の便益(公益)を代弁) (注)×浅草寺一法人の「景観利益の保全」を訴えているのではない
・この超高層以外にも、
雷門前の観光センター(門前に十数階相当の奇妙な意匠の区施設) 公園六区地区の再開発(区が主導して寂れた公園六区の再開発を誘 導)
など境内からの景観秩序を脅かす問題山積
→これらへの対応(行政への牽制)の一環としての訴訟
一点集中の人口急増による地域の問題の発生
(→避難所※のキャパシティ、職住のバランス、発生交通量など) ※災害対策基本法:自治体による防災計画の策定に拠る
(今回の計画は、台東区等などでも防災方面からは全く検討されず)
←「超高層は倒壊しない」という前提←ライフラインの停止などあり非現実 的
(例)トイレや給排水の問題(高層階と地上との徒歩往復の困難)
→ということは、結局、屋内に停留できず、避難所等へあふれ出る
○共通:台東区都市計画マスタープラン※が遵守されればこういう問題は起き ない。
(超高層マンションの周辺は「中低層」と明記)
※根拠法令:都市計画法第18条の2項(1号から4号) (自治体都市計画マスタープランの策定と順守の責務)
△無関心層:しかし遅まきながら報道等の効果で問題に気づき始める
△一部商店:人口増期待
(していたが、当該物件の売れ行き▲プラス近隣にある組事務所関係の入居懸 念)
※クリアランス型再開発+いんちき修景で「賑わう」との勘違い層も混在
□事業者側
○敷地旧住民(敷地にもと建っていた旧いマンション等の住民)回帰の問題 (事業スキームの中では「事業協力者」と定義、呼称されている)
←事業者は、開発に際して権利を整理し、「事業協力者」買収一時金を支払い、 加えてそれら旧住民らの新ビルへの優先入居などの手当している
(=緊要な金銭的利害:しかし敷地等は事業者に買上られており、権利はな い)
※この旧住民・旧マンション管理組合理事長(解体を決議)が保守系区議会議 員
○直近の数軒は事業者が補償等でしばる=言論封殺/コミュニティの分断
○事業者1―不動産事業者(藤和不動産・三菱地所ら)
旧住民・管理組合幹部の一部に「超高層建築=保留床で儲かる」という胸算 用
=これに(政治的に)のせられ、
必ずしも「有為・利益最大と言えない超高層化計画」に盲進
(=もう許可取消や、国レベルから「待った」がかからないと引っ込みがつかな い)
※「利益最大」を画するのであれば、上記の手当や南側隣地の買収等しないほう が善
※もっと都心に近い等開発圧力が高く、超高層のニーズのある場所での巨大開発 なら
「利益最大」を目したといえるが、ここはそれには必ずしも該当しない (裏路地)。
かえって、訴訟等を通じて企業イメージを損ねている。
※ちなみに、藤和不動産(現在、菱地所子会社)と三菱地所の一部(住宅部門) 三菱リアルエステートサービスの3社は、来年1月1日を以て統合・再編さ れる。
(三菱地所にとって、藤和&自社の住宅部門は不採算領域=会社整理・・・)
○事業者2―施工者
(建設業者:フジタ=今はゴールドマンサックスの傘下の再建会社) 大規模な土木・建築工事自体ができればそれでよい
(この計画は「工事ができればいい」立場の主体にとって重要)
※近隣対策に、不動産事業者ではなく、施工者が当たっているという不可思議 ※上記の(雷門前)区観光センターの建築業者と同じ
※その建築コンペ等を主導した区議会議員が、上記と同一人物
※フジタの請負総額160億。しかし一般には「事業総額は非開示」の怪し さ・・・
○東京都:処分庁=都マスタープランと要綱に適っているから問題ないという 立場
○台東区:処分庁は東京都なので権限がない、と見て見ぬふり。
=手続中に「区長の同意」を要するし、台東区長はそれに判を押した が、
議会対応や各種の照会・取材にはあやふやな対応 (問題点)
都(道府県)のマスタープランはもとより大雑把なもの。
本来、地域の計画は市区町村マスタープランで「具体化」させるべきもの なのだが、本件では、区長はマスタープランを自ら定めて、自ら踏み破った ことになる
(=ミクロの政治的問題が法理解、行政計画を曲げた)
※マスタープランを曲げて解釈する裁量が、都・区に認められるのか?
またこの「相互無責任体制」「区長の同意」とは何者なのか?という問題。
■1回目の司法判断(東京地裁:2010/10/15・川神裕裁判長)
(1)行政の言い分を全面的に肯定
(「現行の総合設計手続きに形式的な瑕疵はなかった」とした) (問題点)
●都建築審査会等の組織は、一体、何を審査したのか?
(審査会は、地元の環境に資してない、画一的な制度の運用をなした)
※都建築審査会事務局は、異例に二回、台東区に「同意なのか」を確認した。 実質的には、都当局も逡巡しながら形式的に許可を出した。
よって実質的には「台東区長の同意」が問題になるべきところであるが、 形式的には処分庁を相手取らねばならず、裁判はやや空転した感が否めない。
●都と区の二重行政:区の特殊な位置について司法が適切な判断をしなかった。 (一般の建築主事を置く市町村より、都の内部団体としての位置にある)
(2)都市計画法を根拠法とする重要な行政計画・都市計画マスタープランを 「単なる目標」「イメージにすぎない」とした
●市町村マスタープランは市民も参加して策定され、具体化を企図したもの。 それを「単なるイメージ」としたのは都市計画法の誤解釈。
(=マスタープランの遵守責務を明記した都市計画法18条2項4号の規定を 無視)
※都が処分庁=都のマスタープランを守っていればいいという誤った解釈。 ※その上、区マスタープランについても、上記のように「イメージ」と強弁。 →一連の手続中「台東区長の責任」を追及するに至る道筋を封じた。
(まさにマスタープランの遵守責務を明記した18条2項4号の規定を無視)
●処分庁=都道府県のマスタープランは既述の通り「大枠」のもので、 本来は建設省通達「都市計画運用指針」等で市町村マスタープランと 明確に役割を区別しているのにもかかわらず、判決は二者を混同。
(3)消極的に浅草寺の境内景観(歴史的景観)に意義をみとめたものの、 建築基準法には景観保全の責務がないとした、都市計画関係法規の解釈。 景観は「景観法」で保全せよ、という判断
(問題点)
●確かに、「総合設計」は建築基準法第59条の2項にその規定があるが、 建築基準法と都市計画法は1919年の制定時※から「双子の法律」として企図 され
本来、都市計画法の大枠の定め★に従って、個別の建築行為☆がなされるべき (=★地元区の「都市計画マスタープラン」>☆都の「総合設計許可要綱」)
※1919年当時は「市街地建築物法」(建築基準法の前身)と(旧)「都市計画 法」
※「地域の特色、個性あるまちづくり」を標榜しながら、実際は画一的運用という 問題
(=都総合設計要綱の運用の問題)
(大問題)
※区マスタープラン(行政計画)で明確に「3~5階」と定めているものを、 都総合設計許可(要綱)ゆえに「公開空地+37階」とする根拠は何か? (裁判官は、区マスタープランに「総合設計を使ってはならない」と書いてない =是、としている)
(総合設計の他、さまざまな「都市開発諸制度」でも同様のことが言えてしま う)
※この「都市開発諸制度」はそれぞれ要綱があるが、根拠法はさまざま。 しかし、都市計画法18条2項を殺してしまえば、相隣関係や広域・長期での まちづくりの指針を無視した「ミニ超高層開発」などが可能になってしまう。
●建築基準法と都市計画法を「別々のもの」としたら都市法の運用がおかしくな る
※ある意味では法の不備。
裁判官の建築法規への無理解(意識的誤解釈?)。
本来なら建築基準法の内容の一部は都市計画法に移すべきと何回も検討され、 1919年以降のまた裂き状態の改善に何の進歩もない。
●台東区は、景観法にもとづく景観行政団体に移行準備中であり 現在「景観素案」策定中(公聴会段階、未発効)にあって、
それらすでに公表されている行政計画案を司法は、あえて斟酌しなかった。
●景観法の他、景観・風致を守る、有効に生かす法規として
文化財保護法、歴史まちづくり法、観光圏促進法など関連法規は多数あるが、 それら諸法規の連動・有機的運用の実態を無視した判決への疑問。
(4)景観利益は一法人、一一の個人の利益ではないとした (問題点)
●景観の公益性に照らして、
それを保全すべき諸法規、各種の行政計画の常識的運用 (既定のマスタープランや策定中の景観計画素案等)によって おのずと形成されるものであることを無視。
※また原告らは一法人一個人等の景観利益などは主張していない。
(5)原告適格:浅草寺と計画建物高さ2倍範囲以外の原告適格を認めず (問題点)
●この根拠は何か。法的根拠なし
(諸条例等の慣例として、高さの2倍への周知義務などがあるが)
この「高さの2倍」がいかなる意味をもちうるのか、 司法がその根拠を明らかにしていない。
(6)風環境の悪化等は認めたが、安易に「受忍限度の範囲内」としたこと。 (問題点)
●確かに「商業地域」では日照権など環境の悪化については主張しがたいが、 都の総合設計要綱の中にある、といって、検証もせず「受忍限度内」とした。
●本来であれば、裁判所は、日本建築学会の「司法建築会議」など
専門家の判断を請うべきであったが、専門家の判断、参考人意見などを 一切採らなかった。
・・・
など、非常に深刻な問題のある判決が出たので、原告団は28日控訴した。
(現時点でのまとめ)
○地裁判決がマスタープランを「画餅」としたこと=都市計画法の形骸化など、 国、熱心にまちづくりに取り組んでいる他の行政(自治体)当局などからも 疑問の声があることが特徴
○根本にあるのは、
ダムなどの巨大公共事業ができなくなった
→都市の乱開発(小泉政権下での都市建築の大幅な規制緩和「都市再生」) で代替
---=都市の乱開発によって経済を刺激/建築業の縮退を防ごうとした構図 =いまだに、いわゆる「土建体質」から脱していない国情・経済構造・・・ (裁判官はこの判決で「ミニ超高層開発」ができなくなることの影響にビビっ た)