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モノ言うタテ軸、ヨコ軸を作るという事

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Academic year: 2018

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全文

(1)

関 口

仁 子

モ ノ

言 う

タ テ

軸 、

ヨ コ

軸 を

作 る

と い

う 事

Kimiko Sekiguchi

●1973 年埼玉県生ま れ。東京大学理学部物 理学科卒業。東京大学 理学系研究科、理化学 研究所を経て 2010 年 より東北大学へ。 専門は原子核物理学。

表と グラ フ 幼い 頃は

、日 本の 歴史 に夢 中だ っ た。 本を 読ん だり

、日 本史 を扱 っ たテ レビ 番組 を食 い入 るよ うに 見 て、 知り たい 情報 を入 手し た。 中 でも 楽し い﹁ 遊び

﹂は

、年 表や 系 図を 見て

、自 分な りの 歴史 物語 を 妄想 する こと であ った

。た ぶん そ の理 由は

、図 とな って まと まっ た もの が、 幼い 私の 理解 を助 け、 好 奇心 を多 いに 刺激 する もの だっ た から だろ う。

数字 ばか りが 並ん だ表

。あ る列 をヨ コ軸 に、 別の 列を タテ 軸に と って グラ フを 描く と、 なん だか 妙 に面 白い 現象 が見 えた りす る。 数 学、 理科

、社 会な どの 授業 中に そ んな 事を 感じ た事 はな いだ ろう か。 実は

、世 の中 をあ っと 言わ せ る新 しい 科学 の現 象も

、非 常に 身 近な 自然 の摂 理も

、ヨ コ軸 とタ テ 軸の 図の 中に

、静 かに

、し かし 力 強い 姿で 現れ る。 科学 者の 仕事 で あり

、腕 の見 せ所 であ り、 かつ ま た醍 醐味 でも ある 作業 は、

﹁モ ノ言 う﹂ ヨコ 軸、 タテ 軸を 作り 出す こ とで はな いだ ろう か。 時に 私は そ う思 う事 があ る。 原子 核に 触れ る 私は 原子 核物 理の 実験 研究 を専 門 とし てい る。 幼い 頃の 趣味

、志 向 性と は一 見異 なる ので

、な かな か 経緯 を説 明し にく いの だが

、最 終

サイクロトロンで加速した原子核ビームの姿を捉えたもの。ヨコ軸は水平方向、タテ軸は鉛直方向。1メモリは1ミリメートル。

的に この 道に 進む 事に なっ た理 由 は、 わか らな いも のに 対す る憧 れ、 また そう いう もの に触 れて みた い とい うど うし よう もな い気 持ち が 強か った から だと 思う

原子 核物 理の 実験 では

、通 常、 加速 器と 呼ば れる 巨大 装置 で原 子 核の 速さ を光 速の 5割 から 9割 に まで 加速 し、 原子 核同 士を 衝突 さ せる

、と いう こと を行 って いる

。 原子 核は 人間 の一 京分 の一 の大 き さな ので

、通 常は 目で みる 事は 出 来な い。 そん な原 子核 とい うモ ノ に﹁ 触れ た﹂ と私 が最 初に 感じ た のは

、加 速器 から 出て きた 原子 核 ビー ムが 蛍光 標的 板上 で光 る姿 を 見た 時で あっ た( 上図)

。磁 場と 電場 を駆 使し て加 速さ れ、 わず か数 ミ リメ ート ル四 方に 収束 した 原子 核 のビ ーム

。あ の中 には

、実 は何 百 万個 もの 原子 核が 詰ま って いる

。 あそ こで

、原 子核 反応 がお きる の だ。

実に 地味 にカ メラ を通 して 映し 出さ れる 映像

。し かし 雄弁 に原 子 核ビ ーム の存 在を 主張 して いる ヨ コ軸

、タ テ軸 の図 であ る。 原子 核を 俯瞰 する

ヨコ 軸、 タテ 軸 中学

、高 校の 理科 で元 素の 周期 律 表と いう もの に触 れる 機会 があ る だろ う。 周期 律表 は、 化学 的性 質 に従 って 元素 を配 置し た元 素の 地 図で ある

。化 学的 性質 は、 原子 の

(2)

表面 に存 在す る電 子が 支配 して い る。 原子 核は 電子 雲の 先に 存在 して いる

。原 子の 約十 万分 の一 のサ イ ズの 原子 核に も地 図が 存在 する

﹁核 図表

﹂と 呼ば れる その 地図 は、 ヨコ 軸を 中性 子数

、タ テ軸 を陽 子 数と して

、現 在確 認さ れて いる 原 子核 を示 して いる

。色 の違 いは

、 原子 核の 寿命 を反 映す る。 酸素 1 6、 窒素 14 など 我々 の身 近に あ る寿 命の 長い 原子 核は 黒色

。原 子 核総 数三 千に 比し て、 ほん のわ ず かで ある こと がわ かる だろ う。 原子 核物 理の 研究 者の 多く は、 この 地図 上で

、或 はこ の地 図に 挑 む形 で、 自分 たち のヨ コ軸

、タ テ 軸を 作っ てゆ く。 ある 人は

、こ の 地図 上に はな い全 くに 新し い原 子 核探 索に 挑み

、あ る人 は、 今我 々 の身 近に 存在 する 原子 核が

、宇 宙 創成 時に は地 図上 のど の経 路を 通 って 生成 され てい った かと いう 事 を探 って いる

。ま たあ る人 は、 原 子核 内の クォ ーク の種 類を 変化 さ せた り、 原子 核を ほぼ 完全 にク ォ ーク に分 解す る事 によ って

、ク ォ ーク から どの よう にし て原 子核 が 形成 され るの か、 とい う事 を研 究 して いる

この 原子 核の 地図 は、 研究 者の 土台 とな って いる と同 時に

、常 に 彼ら によ って

、新 たに 描き 換え 続 けら れて いる ので ある

。 最強 の道 具

∼フ ァイ ンマ ン図

∼ 物理 では

、あ る物 体の 状態 を変 化 させ る原 因と なる モノ

︵作 用︶ を

﹁力

﹂と 呼ん でい る。 だか ら、 あ る物 理現 象を 理解 する ため には

、 そこ に働 く力 を良 く理 解し なく て

はな らな い。 世の 中に は﹁ 重力

﹁電 磁力

﹂[ 弱い 力]

[強 い力

]と 呼ば れる 4つ の基 本的 な力 があ る と理 解さ れて いる

。面 白い 事に

、 この 4つ の力 は同 じ方 法で 表現 す る事 がで きる

。表 現方 法の 最初 の 提案 者が 物理 学者 ファ イン マン で あっ た事 から

、一 般に この 表記 は ファ イン マン 図と 呼ば れて いる

原子 核内 で働 く力 も、 ファ イン マン 図で 表す 事が でき る。 湯川 秀 樹は

、原 子核 内で 働く 力は

、核 子

︵陽 子と 中性 子の 総称

︶と 核子 の 間を 中間 子と いう 粒子 を媒 介す る 事に より 説明 され ると 説明 した

。 現在

、原 子核 物理 学で は、 核子 が 三つ 同時 に作 用す る事 によ って 生 じる 三体 力と 呼ば れる 力も 議論 さ れて いる が、 それ もフ ァイ ンマ ン 図で 表す 事が 出来 てし まう

様々 な力 を表 記し てし まう ファ イン マン 図は

、物 理学 者に とっ て は最 強の 道具 なの であ る

妄想 を形 に、

自然 の示 す姿 を明 らか に 一見 何と も感 じら れな い自 然現 象 から 新た な現 象や 法則 を導 き出 す、 科学 者の 抱く ロマ ンで ある

。 決し て容 易な 事で はな い。 科学 者 は、 わず かな きっ かけ を通 して 自 然が 私た ちに 語り かけ てく れる 姿 を見 える 形に しな けれ ばな らな い。 それ を適 える 手だ ては

、﹁ モノ 言う

﹂ヨ コ軸

、タ テ軸 を作 るこ と であ る。 どれ だけ モノ 申す 図を 作 り上 げる か。 最初 は妄 想の 軸か も 知れ ない

。そ れを 後世 に残 せる 軸 に仕 上げ るま でに 自然 と真 剣に 向 きあ う事

、そ れが 基礎 科学 を研 究 する 者た ちの 役割 では ない だろ う か。 私は そう 考え てい る。

ファインマン図あれこれ

中性子数→

陽子数→ 


レゴブロックで作成した核図表。現在、約 3000 の核種が確認されている(理研仁科加速器研究センター製作)。

原子核物理の実験で使用している加速器。

上記写真の理化学研究所 RI ビームファクトリー超伝導 リングサイクロトロンでは、原子核を光速の 70%にまで 加速する。

参照

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