南方島弧の古地熱系
著者
井沢 英二, 浦島 幸世
雑誌名
南方海域調査研究報告=Occasional Papers
巻
11
ページ
71-86
別言語のタイトル
Paleo-geothermal Systems in Island-arc
Settings of the Western Pacific Rim
鹿児島大学南方海域調査研究報告NQll(1987)「古地熱系と活地熱系一
南 方 島 弧 の 古 地 熱 系
井沢英二(九州大学工学部) 浦島幸世(鹿児島大学教養部)九州大学の井沢です。このシンポジウムで活地熱系についての詳しい報告がありました。その
なかで田口さんは,現在活動している地熱系で金が沈殿している例を話されました。私達は,南
方島弧にみられる古地熱系を広く浅く紹介することにします。
ここでは,地熱系を少し狭い意味に用いて高温熱水系に限定します。高温とは,200°Cを超え
る温度を考えます。活地熱系であれば,現在の技術水準で容易に地熱発電ができるような地熱系
に相当するものです。こうした活地熱系の構成要素としては,①熱源,②熱の運び手としての水,
③水の通路になる地下の割目あるいは透水性の良い地層を挙げることができます。従って古地熱
系とは,かつて高温熱水系であったが熱源の冷却によって現在は熱水の活動を停止したものを指
すことになります。これは,化石地熱系とも呼ばれています。
一方,浅熱水金鉱床と呼ばれる金鉱床を生成する場は,高温地熱系であることが最近明らかに
なってきました'’2)。このことから,浅熱水金鉱床の大部分は,古地熱系にほかならないといえま
す。浅熱水というのは,地下約1000mより浅い所で上昇流動する熱水といった意味で使われる
言葉です3)。次に,南方島弧とは,九州から南へ連なる島々を指すことにします(Figl)。台湾,フィリピ
ン諸島,マレー諸島スンダ列島,ニューギニア,ソロモン諸島バヌアツ,フイジー,トンガ・
ケルマディク,ニュージーランドなどで,主として太平洋西縁部の島弧です。地球上で最も活発
な火山・地熱帯を含む地域で,火山活動の歴史は数百万年から一千万年以上さかのぼることがで
きます。活動を停止した火山は,やがて侵食されて山の形を失い,地下にかくれていた岩石が地表に露
出するようになります。このとき火山の周囲に存在していた高温地熱系の位置は,熱水の作用で
地下に広く変質岩が生成していることによって知ることができます。金の沈殿は,一般に地下数
100mの深さで起こるので,地下で生成した熱水変質岩が地表に露出するようになった古地熱系
の地域で,金鉱床が発見される例が多いのです。南方島弧には,こうした古地熱系=金鉱床が多
数分布しています(Tablel)。まず南九州の例からお話します。ここには霧島桜島開聞など,この数万年あるいは数千年
の間活動を続けている活火山があります。活火山の深部には,高温のマグマが存在していて地熱
系を作る熱源となります。それでは,火山の周囲にはいたるところに高温熱水系があるのかとい
えば,そうではなく,地熱系の要素の1つである水の通路(割目など)がうまく熱源の近く迄発
達した所に限定されるわけです。そのため,地熱発電に適した熱水系を探すための様々な調査が
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夕 霧島の場合,地下の様子をボーリングによって調査した結果,火山の西側で、約400mの深さに 200°Cを超える高温熱水が活動していることがわかりました。西霧島地熱系の熱源としては,東 側にある新燃岳その他の活火山の地下深部に存在するマグマが考えられます。地下の温度は,全 体として東方に高く西へ向って低下している様子が認められます(Fig.2)。新燃岳を中心にとる と8km以内に200℃より高温の地域が分布しています。西霧島の活地熱系のすぐ西側には,かつて高温であった古地熱系が認められます。牧園町にあ
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FiglRegionswithactivevolcanoesandpaleo-geothermalsystemsinthewesternPacific ● rl1rn. 必要になります。 霧島の場合,地下の様子をボーリングによって調査した結果,Table 1 Epithermal gold deposits in the western Pacific rim. Region Island Goldfield (Beginning of igneous activities) Major deposit Amount of gold produced Remarks Japan Kyushu Taio (12 Ma) Taio* 35t Hokusatsu (9 Ma)
Kushikino Yamagano* Okuchi* Hishikari 54t 28t 19t (120t)»* Opened in 1985 Nansatsu (8 Ma)
Kasuga Iwato Akeshi* 6t 6t 5t Silicified rock a Taiwan Taiwan Chinkuashih (-5 Ma) Chinkuashih >50t a Philippines Luzon Baguio (15 Ma) Acupan-Antamok 341t Lepanto (-) Lepanto >39t Indonesia Sumatra Lebong (~5 Ma) Donok* Tandai 34t Reopened in 1986 Java West Java (-) Cikotok -Sulawesi North Sulawesi (16 Ma) Paleleh* 191 Two mines Papua New Guinea New Guinea Western Highlands (16 Ma) Nena* Porgera*
:
Silicified rock Morobe (13 Ma) Wau 18t + 102t placer gold Solomon Guadalcanal Gold Ridge (~5 Ma) Mavu* (90t)** Placer gold Fiji Viti Levu Tavua (7 Ma) Vatukoula 128t Vanua Levu Yanawai (-) Mt. Kasi* 2t Silicified rock New Zealand Morth Island Hauraki (16 Ma) Waihi* ~160t * Unexplored deposits or ** Assumed values ceased mines it 3 Dr 8- as Si74 「古 地 熱系 と活地 熱 系」
Fig. 2 Geologic map of the west Kirishima and Hishikari areas. Compiled from Sawamura and Matsui, MITI and Ota and Sawamura. Isothermal contour lines at sea level in the west Kirishima
geothermal area taken from Nakagawa et al.
1. Alluvium, 2. Terrace deposits, 3. Kirishima volcanics, 4. Pyroclastic flow deposits (mainly Aira pyroclastic flow), 5. Kakuto formation, 6. Kurino andesite, 7. Hishikari hornblende dacite, 8.
pliocene-Pleistocene andesite (Kakuto andesite etc.), 9. Areas of hydrothermal alteration.
る坂 下,牧 園 の 珪 石 鉱 床 です 。 これ は,地 表 に 湧 出 し た 温 泉 か ら沈 殿 した シ ン ター と呼 ば れ る も の で,地 下 の 温 度 が 少 く と も180℃ 以 上 で あ っ た こ と を示 して い ます。 火 山 岩 の年 令 は,K-Ar法 や フ ィ ッ シ ョン トラ ッ ク法 で 知 る こ とが で き ま す 。 各地 の 火 山岩 の 年 代 測 定 の 結 果,100万 年 ほ ど前 の 火 山 活 動 の 中 心 は,霧 島 火 山 の 西 側 に 隣 接 して あ った こ とが 分 って き ま し た。 例 えば,吉 松 町 の 西 方 に あ る デ イサ イ トの 山 は,火 山 の 地 形 は も うは っ き りし ませ ん が,100万 年 以 前 に 噴 出 した もの です 。 こ の デ イ サ イ トの 火 山 の 西 の 麓 に 熱 水 変 質 を受 け た 岩 石 が 分 布 して い ます(Fig.2)。 数 年 間 の 地 質 調 査 と物 理 探 査 の 後 に ボ ー リン グが 行 われ, 1981年 冬 に 地 下200mで 高 品 位 の 金 を含 有 した石 英 脈 が 発 見 され ま した 。 菱 刈 鉱 山 と して1985年 か ら試 験 採 掘 が 始 まっ て い ます が,鉱 石1ト ン中 に100gを こ え る 金 が 含 有 さ れ て い る とい う世 界 で も まれ に み る優 良 な鉱 脈 です 。 一 般 に1ト ン 中 に10gあ れ ば 立 派 な
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南方I約弧の古地熱系 Fig.3CrosssectionoftheHishikarideposit・DrillholedataarefromKondolo).1.Alluvium,2.Hishikari homblendedacite,3.Kakutoandesite,4.Shimantogroup,5.Zoneofhydrothermalalteration, 6.Veins.金の鉱脈とされているのですから,菱刈の金の含有率がいかに高いかがお分りいただけると思い
ます。いくつかの仮定を含んだ計算ですが,金の量として120トン存在するだろうといわれてい
ます'0)。これは過去,日本一の金山といわれた佐渡金山が,数百年にわたって採掘した84トンの
金をはるかに上まわる量です。菱刈鉱山で、鉱石となる石英脈が生成したのは,今から90∼100万年前'')です。岩石の割目を通
って流動した熱水から沈殿したものです。熱水の#,&度は,石英の中に微小な包有物として残され
た水を調べることによって,260∼160℃であったと分ります12)。菱刈は古地熱系といっても,地
質学的な時間では若い方に入ります。坑内では,鉱脈から湧出してくる65°Cのお湯を抜きながら
採掘を進めていますが,これは過去の高淵熱水の名残であるかもしれません。
菱刈鉱床の断面図(Fig.3)を見ると,地下の深い部分には基盤岩があります。今からおよそ
1億年前の中生代の海底に堆積した砂や泥が固まった地層で,四万I・層群と呼ばれています。上
部の岩石は,2百万年∼百万年前に陸上で噴出した火山岩です。熱水の通った割目は,基盤岩か
ら上位の火山岩へと連続しています。高品位の金が,これらの岩石の境界付近に産出することか
ら,性質の異なる岩石の境界が金の沈殿に好条件の場となった可能性が考えられます。四万十層
群の中の鉱脈の写真(Fig.4)とその近接写真(Fig.5)で,黒い筋が特に金の濃度の高い部分で
す。このような金に富む部分を反射顕微鏡でみますと明るく輝や〈金粒が暗灰色の石英の中に点
々と入っている様子が分かります(Fig.6)。菱刈から西方には,更に古い火山地熱系一金鉱床が分布し,串木野では4百万年前の地熱活動
によって生成した金鉱床が知られています'0)。また南九州で現在の火山活動に連続して行く最初
の火山活動は,串木野とその西方や野間半島に始まるといえます。時代としては,約9百万年前
のことです。鱒
回囚
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回国
口回
lロQDQl U.76 '古地熱系と活地熱系■ Fig.4Highgradegold-quartzveininshaleandsandstoneof theShimantogroup,Hosenlvein,85mL(WlBCross cutE30),Hishikarimine. Fig.5Close-upofthehighgradegold-quartzveininFig,4. Blackstringersarerichingold. 九州から南へ目を転じて,台湾に行きます。位置図(Fig.7)を示しますが,台北の北東方, キールン港の東にキールン山があり,そのすぐ南に金瓜石鉱山があります。地質図(Fig7)で みると,中新世という若い地質時代の石炭層を爽有する堆積岩が分布しています。この地域の断 層に沿ってデイサイトの貫入と噴出が起こり,金を含有する珪化岩が伴われています。地下に貫 入 し た 岩 石 も 現 在 で は 侵 食 の 結 果 地 表 に 露 出 し て い る と 解 釈 さ れ て い ま す 。 デ イ サ イ ト の 貫 入 と 噴出,熱水による鉱化作用の年代は,2百万年前後またはそれよりも新しい13)とされていますが,
南 方島 弧の古 地 熱 系 77
Fig. 6 Photomicrograph of polished section of the high grade ore from the Hishikari mine (E3-1-162.08 m). The
bright white mineral is mainly electrum with small
amount of chalcopyrite and pyrite. Naumannite is a
little darker. Sphalerite is grey. Quartz is dark grey.
The field is 520 gm across.
年 代 測 定 の 報 告 は あ り ま せ ん 。 断 層 沿 い に 珪 化 し た 岩 石 が 金 鉱 床 と な っ て い る 点 で は,枕 崎 市 付 近 の 岩 戸 鉱 山,春 日 鉱 山 な ど と類 似 し て い ま す 。 次 に フ ィ リ ピ ン の 例 を 示 し ま す 。 活 地 熱 系 に つ い て み ま す と,マ ニ ラ 南 西 方60kmの と こ ろ に ター ル 火 山 を は じめ と す る 活 火 山 が あ り ま す 。 安 山 岩 か ら な る マ キ リ ン グ 火 山 の 近 く に マ クバ ン 地 熱 発 電 所 が あ り,熱 源 と 関 連 の あ る 火 山 と 考 え ら れ る の は 数 十 万 年 前 に 噴 出 し た 流 紋 岩 の ブ ラ ロ 山 で す 。 そ の 西 の 麓 の 地 下600∼1500mの 深 さ か ら200℃ を こ え る 温 度 の 熱 水 を 汲 み 上 げ て, 33万kwの 発 電 を 行 な っ て い ま す 。 今 の と こ ろ,付 近 に 金 鉱 床 は 知 ら れ て い ま せ ん 。 一 方 ,マ ニ ラ 北 方250kmの バ ギ オ 地 域 に は,活 火 山 は な く,火 山 の 形 も残 っ て い な い の で す が,200万 年 よ り若 い 時 代 に 火 山 活 動 が あ っ た と 考 え ら れ,地 下 に は 温 泉 や,高 温 の 蒸 気 が 存 在 し て い ま す。 こ こ の ア ク パ ン と ア ン タ モ ク の 鉱 床 は,全 体 が 一 大 地 熱 系 で あ っ た と み な す こ と が で き ま す(Fig.8)。 ア ク パ ン に は,デ イ サ イ トの 小 岩 体 や 角 礫 岩 体 が あ り,火 山 の 中 心 の1つ が バ ラ ト ク プ ラ グ と 呼 ば れ る も の で す。 直 径1kmの 円 筒 状 の 形 を し た こ の 岩 体 は,地 下 深 部 の マ グ マ か ら,ガ ス が 爆 発 的 に 放 出 さ れ た と き に つ く ら れ た 火 道 を 種 々 の 岩 石 の 破 片 や 岩 粉 が 満 た し た も の で す 。 こ の バ ラ ト ク プ ラ グ と そ の 周 囲 の 割 目 に,石 英,菱 マ ン ガ ン 鉱(炭 酸 マ ン ガ ン)硬 石 膏(硫 酸 カ ル シ ウ ム)な ど が 金 を 伴 っ て 沈 殿 し て い ま す 。 ま わ り の 岩 石 は 熱 水 に よ っ て 広 く変 質 し て い ます。 プ ラ グ か ら2kmの 範 囲 が ア ク パ ン 鉱 山 と し て,そ の 北 方 の 鉱 脈 を ア ン タ モ ク 鉱 山 と し て,4×10kmの 範 囲 か ら 合 せ て こ れ ま で に341ト ン の 金 を 産 出 し,現 在 も盛 ん に 採 掘 が
78 「古地 熱 系 と活 地 熱系 」
Fig. 7 Geologic sketch map of the Chinkuashih mining area. Compiled from Wang and Tan et al. 1. Pyroclastic rocks, 2. Hornblende dacite (intrusive and effusive), 3. Miocene sediments (including
coal bearing formations), 4. Area of hydrothermal alteration, 5. Silicified zone and vein.
続 け られ て い ます。 浅 熱 水 金 鉱 床 と し て は,世 界 で も最 大 級 の もの で す 。 イ ン ドネ シア に も活 火 山帯 に隣 接 し て古 地 熱 系一 金 鉱 床 が あ り ます 。 特 に スマ トラ 島 で は,レ ボ ン ス トリー ク を 中心 に1930年 代 に は 多 くの鉱 山 が 採 掘 を行 な っ て い ま した 。 串木 野 や 菱 刈 な ど と類 似 した 鉱 脈 型 の 鉱 床 です 。 そ の 中の レ ボ ン タ ン ダ イが,最 近 再 開 発 さ れ た と伝 え られ て い ま す 。 南 半 球 に 行 き ま す と,パ プ ア ニ ュー ギ ニ ア の ワ ウ 鉱 床 が あ り ます 。3百 万年 前 頃 に 生 成 した 鉱 床 と され て い ます が,熱 帯 特 有 の 激 しい 風 化,侵 食,地辷 りな どの ため 鉱 床 上 部 の 形 態 は分 り に く くな って い ま す 。 デ イサ イ ト斑 岩 の貫 入,火 山 性 ガ スの 爆 発 的放 出が 金 の 鉱 化 作 用 と密 接 な 関 連 を示 して い ます 。 削 剥 さ れ た 鉱 脈 に 含 まれ て い た 金 は,砂 金 の 鉱 床 を 作 り,90ト ンに の ぼ る 金 が 採 取 され て い ます 。 も との 鉱 床 は,現 在 の 地 表 部 で 酸 化 帯 とな り赤 褐 色 を呈 し,そ の 下 の 黒 色 の 部 分 が 金 鉱 石 と して 採 掘 され て い ます 。 黒 色 の 原 因 は 二 酸 化 マ ン ガ ン が あ る た め で,も とは
南 方 島弧 の 古地 熱 系 79
Fig. 8 Simplified geologic map of Baguio district. Simplified from de Guzman.
1. Dacite and volcanic plug (Quaternary), 2. Vein system, 3. Upper Miocene-Pliocene sediments, 4. Granodiorite and
quartz diorite (Agno batholith of middle Miocene), 5. Paleocene-Miocene sediments and volcanics.
マ ン ガ ン方 解 石 や 菱 マ ン ガ ン鉱 な どの 炭 酸 塩 鉱 物 で あ っ た もの です 。 フ ィ ジー に も大 き な 金 鉱 床 が あ ります 。 ア ル カ リ岩 の 火 山 で カ ル デ ラ の 西 の 縁 に 生 成 した バ ト コ ウ ラ 鉱 床 です。 金 に 大 量 の テ ル ル を 伴 った 特 異 な 鉱 脈 で,4百 万 年 よ り若 い 地 熱 系 と考 え ら れ て い ます。 フ ィ ジー 第2の 島,バ ヌ ア ・レブ に も,マ ウ ン ト ・カシ と呼 ば れ る鉱 床 が あ ります 。 角 閃 石 安 山岩 の 活 動 と関 連 の あ る鉱 床 で,岩 戸 や 金 瓜石 と類 似 した珪 化 岩 に 金 を含 ん だ 型 式 の も の です(Fig.9)。 写 真(Fig.10)は,露 天 採 掘 の 跡 で 北 方 を見 た と こ ろ で す。 北 方4kmに あ る 角 閃 石 安 山岩 の 火 道 を 示 す 火 山岩 頸 が 見 え て い ます 。 ニ ュ ー ジー ラ ン ド北 島 に は,盛 ん な地 熱 活 動 が あ る タ ウ ポ 火 山 帯 で,金 が 沈 殿 しつ つ あ る 温 泉
Ⅷ :.!'f地熱系と活地熱系ロ Fig.9GeologicsketchmapoftheMt,Kasiarea AfterTumerl9). 1.Hornblendeandesite (intrusive:PIiocene),2.Yanawalvolcanics (Mio-Pliocene),3.Nakayagaformation(upper Miocene),4.Silicifiedzoneandvein. Fig.10Mt.KasiopencutandVatukaisiapeak(volcanic plug).Lookingnorth.
が知られています。それより古い火山帯が北西方のコロマンデル半島にあり,古地熱系一金鉱床
が多数分布しています。東西30km,南北lOOkmと,大口一枕│崎位の距離があり,地質条件も
九州とよく似ています。基盤岩は,グレイワッケと呼ばれる中生代の堆積岩で,四万十層群とそ
っくりの砂岩・頁岩の互層からなるものです。安山岩を主とする火山活動が8百万年前から盛ん
になり,その後,流紋岩が多くなり,火山活動の中心も東側に移動しているようです。最大の金
南方 島 弧 の古 地 熱 系 81
Fig. 11 Geologic sketch map of the Martha Hill area, Waihi. Modified from Brathwaite et al. 1
. Ignimbrite, 2. Rhyolite, 3. Hornblende dacite, 4. Andesite, 5. Area of hydrothermal alteration, 6. Chalcedonic silica. M : Martha vein. 鉱 床 は,ワ イ ヒで 主 に19世 紀 の 終 りか ら1930年 代 にか け て 採 掘 さ れ,160tの 金 を産 出 した と推 定 され ま す(Fig.11)。 現 在,再 開 発 の 準 備 が 進 め られ て い ます 。 以 上,西 太 平 洋 の 島 弧 を 中心 に 第 三 紀 後 半 か ら 第 四 紀 の 火 山 に 伴 う古 地 熱 系 を み て き ま し た。 これ ら 金 鉱 床 を生 成 した 古 地 熱 系 の 共 通 点 を挙 げ て み ます 。 ① 現 在 の 火 山 活 動 に 連 続 す る 火 成 活 動 の 開 始 時 期 は,1500万 年 ∼1600万 年 よ り新 し い。 ② 金 鉱 床 に 関 連 し た 火 成 岩 は,カ ル クア ル カ リ岩 系列 の デ イサ イ トあ る い は 角 閃 石 安 山 岩 で あ る場 合 が 多 く一 部 に ア ル カ リ岩 系 列 の 活 動 も認 め られ る。 い ず れ も磁 鉄 鉱 系 の も の です 。 ③ 鉱 床 は,火 山 の 活 動 中 心 か ら8km以 内 に あ り, そ の 多 くは4km以 内 に あ る。 ④ 鉱 床 型 式 と して は,石 英 ・氷 長 石 脈(し ば しば マ ン ガ ン鉱 物 を 伴 う)と 珪 化 岩 型 の 二 種 が 認 め られ ます 。 地 域 に よ る差 異 と して は,① 基 盤 岩 が 堆 積 岩 の 場 合(九 州,台 湾,ニ ュ ー ジー ラ ン ド)と 海 洋 性 地 殼 か ら成 る場 合(フ ィ ジー),② ポー フ ィ リ ・カ ッパ ー 鉱 床 が 密 接 に 存 在 す る場 合(フ ィ リ ピ ン,パ プ ア ニ ュ ー ギ ニ ア)と 認 め ら れ な い 場 合(九 州)が あ る 。 今 後,更 に 比 較 を行 う こ とに よ っ て南 方 島 弧 の 古 地 熱 系 の 性 質 が 明 らか に な る と期 待 され ます 。
82 「古 地 熱 系 と活地 熱 系」
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deposit,Waihi,Proc・ofSymposium5:Vblcanism,hydrothermalsystemsandrelated
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質 疑 応 答円城寺守(座長筑波大学地球科学系):どうもありがとうございました。
ただいまのは,太平洋の西縁から南西縁にわたっての非常に巾広いお話でした。何かご質疑,
ご討論がございましたらお願いします。
木村政昭:いまお話のあった地域に黒鉱鉱床はございませんか。お聞きしたいことは,黒鉱鉱床
の存在するバックアークベイスンにも金鉱床は生成するのか,それともマグマフロントに生成す
るのかということです。井沢:黒鉱との関係と共にポーフイリカッパーと金の関係も問題だと思います。簡単に言ってし
まえば,黒鉱は海底火山に伴った熱水系,ポーフイリカッパーや金は陸上の火山に伴ってて、きた
熱水系という差があるでしょう。したがって,分布が分れてしまう。しかし,北海道支坊湖東部
のように黒鉱と金鉱床が同一場所でみられることもある。これは生成の時代が違っていて,はじ
め海域で黒鉱ができて,その後に陸化して金鉱床ができています。
木村:そうしますと黒鉱はバックアークベイスンにできて,金は火山フロントにできた。そのよ
うにいえるでしょうか。つまり,応力場としては,黒鉱鉱床はテンシルな場,金鉱床は圧縮場と
いうことになるのでしょうか。
井沢:そのように見える例が多いと思います。しかし,必ずしも応力場と鉱床の種類が対応して
いるわけではないでしょう。ポーフイリカッパーと金が関連していると言いましたが,その場合
は圧縮場で生成することになるでしょう。一方,金はニュージーランドのタウポ火山帯のように
テンシルな場でも鉱床を作る可能性があります。バックアークベイスン,火山フロントの差とし
ては,塩水(海水)が熱水として循環すれば銅・亜鉛のような非金属鉱床を作り,陸上の淡水が
まわれば金鉱床を作るといったことはあるでしょう。
林正雄:金鉱床は,1500万年以降の新しい火山に伴われるということですが,古い火山に伴われ
るのはないということなのか,あっても削られてしまうからでしょうか。
井沢:少くとも南方島弧にはそのように若い鉱床しかないということです。古い鉱床は侵食によ
って削られてなくなることもあります。しかし,この地域の新しい火山活動が1500万年前に始ま
ったということもいえそうで、す。林:現在活動中の新しい地熱系でも,金鉱床を生成するものとそうでないものの区別ができるで
しょうか。84 「古地熱系と活地熱系」 井沢:中性高温熱水なら金を運んで来ると考えられ,その意味では地熱発電ができるような優勢 な地熱系なら,金鉱床を作る可能性があると考えられます。 林:たとえば,霧島ですとあまりシンターは見られませんが,それでも金鉱床は生成しますか。 井沢:霧島に似た安山岩地域の金鉱床は,枕崎付近にあり,串木野もそのような例かもしれませ ん。霧島でも可能性はあります。これから金鉱床ができるところでしょう。 田口幸洋:今の問題に関連して,霧島のように安山岩の層状火山は,熱水が地下から上ってきて もなかなか地表に達しない。シンターを沈殿するような出口がなく,途中からわきに流れる。こ れに対し,流紋岩の火山では熱水が地上へそのまま出てシンターを作り易いといったことがある のではないでしょうか。 井沢:地下の熱水の流動に対して,火山地形の影響は大きいと思います。 円城寺:だんだん話が核心に入ってきたのですが,このあと総合討論をひかえておりますので, このへんで質疑を終りたいと思います。よろしいでしょうか。
Kagoshima University Research Center for the South Pacific
Occasional Papers No. 11 (1987), "Paleo-Geothermal and Active Geothermal Sysyems"
Paleo-geothermal Systems in Island-arc Settings of the
Western Pacific Rim
Eiji IZAWA*
and
Yukitoshi URASHIMA**
* Department of Mining, Faculty of Engineering,
Kyushu University, Fukuoka 812.
* * College of Liberal Arts, Kagoshima University,
Kagoshima 890.
Abstract
An active high temperature geothermal system consists typically of a magmatic heat
source, water to tramsport the heat, and fractures or permeable zones where the water
flows.
When the heat source cools down and the geothermal system becomes inactive,
we call this a paleo-geothermal system or fossil geothermal system.
Gold is often transported by ascending waters in the high temperature geothermal
system related with volcanic activities.
The upper level of the system, at a depth of
around 400 m or less, is a favorable site of gold deposition.
Therefore, epithermal gold
deposits and their environments correspond to the paleogeothermal systems, of which
high level portions are often eroded away.
There are many active- and paleo-geothermal systems in island-arc settings of the
western Pacific rim
and
adjacent regions.
Representative gold
deposits are: Taio,
Kushikino, Hishikari and
Iwato in Kyushu, Japan; Chinkuashih in Taiwan;
Acupan-Antamok in the Philippines; Lebong Donok and Lebong Tandai in Sumatra, Indonesia ;
Wau in Papua New Guinea; Mavu in the Solomon Islands; Vatukoula and Mt. Kasi in
Fiji; and Waihi in New Zealand.
These late Cenozoic epithermal gold regions have several characteristics.
(1) Volcanic
activities started less than 15-16 million years ago and continued to the late Quaternary.
(2) Igneous rocks related to the gold mineralization are predominantly dacite or hornblende
andesite of the calc-alkalic series. Volcanic rocks of the alkalic series, however, host
some of the gold deposits.
(3) The site of the gold deposits are restricted to within 8 km
(usually 4 km) of the center of volcanic activity.
(4) Two types of gold deposits are
recognized, the quartz-adularia veins usually with Mn-carbonates, and those in massive
silicified rocks.
Basements consist of a thick sedimentary sequence in the case of Kyushu, Japan and
New Zealand; and probably of oceanic crust in the case of Fiji. Porphyry copper
86 r*llilft*tiSlftft*j