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スウェーデンにおける移民・難民の就労-循環移民への挑戦

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2019 年 3 月 March 2019

桜美林大学 法学・政治学系

J. F. Oberlin University Division of Law and Political Science

桜美林論考

The Journal of J. F. Oberlin University

法・政治・社会

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スウェーデンにおける移民・難民の就労 ― 循環移民への挑戦

Employment of Migrants and Refugees in Sweden

– Challenge to Circular Migration

佐藤 以久子

SATO, Ikuko

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はじめに  本稿では、スウェーデンにおける難民の就労について、外国人労働者(移民労働者)1 び難民の就労に関する法政策と難民の労働市場統合プログラムを概要し、スウェーデンが 推進する循環移民(circular migration)政策との連動について若干考察する。スウェーデン は、すべての外国人に対し一定の条件はあるものの職種及び期間を問わず又雇用主のニー ズに基づいて労働市場を開放すると言うリベラルな政策に転換し、EUではもっとも早く かつ積極的に外国人労働者の受入れに取り組んでいる2。具体的には、2008年にとりわけ 第三国国民3の労働者の受入に的をあて外国人労働者の出入国管理等に関する規定4を定め (外国人法:2005:7165改正6)外国人に対し労働の権利を認めた。また、2009年より循環移 民政策を促進している。難民の労働についても2010年に難民の就労を促進する「特定の新 着移民のための定住に関する規定」7を中心に法改正を行い、2008年の移民労働者の自由 化政策に連動させて難民をスムーズに就労へと導くように8定住支援は労働市場統合を柱 としている。スウェーデンは人口比で最も多く庇護申請者を受入れ移民の多くは就労が最 も困難である難民であるが9、そうした就労に対しどのように取組んでいるのであろうか?  本稿の考察の対象は、第三国国民の外国人労働者、国際的保護付与者(難民、補完的保護)10 と庇護申請中及び庇護申請却下後の就労とする。手順は、まず、外国人労働者及び難民の 就労に関する法政策をそれぞれに概要し、次に、難民の労働市場統合プログラム内容を紹 介した上で最後に難民の場合にも循環移民となり得るのかについて若干考察する。なお、 現状については現地調査(2018年8月26日~ 31日)を加味するが、時間の制約上紹介程度 に留める。 1.移民の就労に関する法政策 (1)循環移民政策への転換  スウェーデンにおける外国人の就労は、北欧諸国の国民については1954年の北欧諸国間 の協定に基づき移動が自由化されておりゆえに居住権とともに労働が許可されている11 また、欧州諸国(EU・EEA加盟国、スイス)の国民にもEU域内の移動の自由により(EC条 約39条)一定の居住及び労働が許可されている12。他方、第三国国民は、入国前に労働許可 が必要であるが、労働許可の範囲は2008年末の外国人法改正により居住権許可を有するす べての外国人に対し職種を問わず労働の権利が認められることとなり拡大されている。  そうした第三国国民(以下、外国人)の労働許可について13、手続は、まず、雇用主が、外 国人の雇用が必要であることについて、スウェーデン国内・EU・EEZの労働市場で募集し たが応募者がいないことと労働協約を確認した上で雇用契約の成立に進み移民庁に労働許 可を申請する。次に、移民庁が外国人法に照らし労働を許可する。こうした手続は、1972 年以来採用されてきた政府による労働市場上必要な技能や受入人数を定める割当制やポ

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イント制を用いた労働力不足の補充は有効でないとして廃止されたことに代わるもので ある。よって、外国人の雇用は個々の企業から成る労働市場に任され、政府は雇用主が判 断した労働市場のニーズに応じて追認する形で労働を許可する。そうした新たな手続つま り、外国人労働者の受入方法の変更や職種の拡大後、労働許可数が倍増し(2007年9,859人、 2008年14,513人→2012年29,626人→2017年32,294人)、また、第三国国民の職種は低技能 が減り高度技能職の特にコンピューター・IT関連が増加した(2009年2,202人→2014年3,438 人)ことから、外国人法改正の影響を受けたと見られる14  外国人労働者の受入拡大政策について、スウェーデン政府は、 2006年の新政権より将来 の高齢化や労働人口減少を見据え社会保障制度維持のための財源及び労働力の確保を目的 とし、期間や職種を問わず外国人労働者の受入を促進するための新たな政策を模索するな かで、現状に即した永住移民に代わる一時移民の内母国に一旦戻るが再びスウェーデンに 戻る「循環」サイクルに着目した。2009年7月には「循環と開発」との関連を分析するべく 政府内部に議会が設置され、循環移民の実態把握、スウェーデンと出身国間を移動し移民 となる機会を創り出す要因を見極め、そうした移動における障害を取除くための施策が提 案され(2011年最終報告書15)具体化されるに至る16。こうした受入拡大路線への転換は第 二次世界大戦後~ 1970年代前半17以来の大転換である。  また、スウェーデンの循環移民政策はEUと連動する。EUの循環移民政策は、EUと第 三国との対外政策に関連した「移民と開発」の課題における一時移民の受入・帰還促進18 に対応し、EU加盟国の労働市場ニーズに適合した第三国とのバランスのとれたパートナー シップの進展を図りながら合法移民の機会をどのようにEU対外政策に組入れられるのか について第三国と協力し移民の移動を管理することを目的とし、特に、不法移民の撲滅、 EU領土へのより安全なアクセスの観点から必要な法政策の一環である19。また、欧州にお ける循環移民政策の争点は、発展途上国の都市化や開発ではなく先進国における人口移動、 労働市場、社会統合であり、1960年代より議論の中心にあるアフリカ、アジア、太平洋諸 国、米州の一部における都市化と開発ではないとの見解があるが20、スウェーデンの場合 は、前述のEUのように移民と開発の問題を連動させ、国内での外国人労働者のみならず 発展途上国地域での労働者の能力開発や移民労働者の管理も行っている。前者の最近の例 として、移民労働者政策及び能力強化に向けアフリカ連合委員会やアフリカ地域経済共同 体(RECs)他アフリカの政府機関に対し生産能力開発、移動、移民労働者管理全般に関す る政策に特化した資金供与を国際移住機関(IOM)を通して行っている21。また、第三国と のバランスを保つ例として、一方的な頭脳流出とならないように個人の自発的交流や仕事 を通して知識や職業経験の移転を図る機会が提供され、例えば、海外移住資料センターの 新設、医療職員や大学教員のスウェーデン及び出身国双方で仕事をする機会が日常生活の なかにある22  上述の循環移民に関する政策への取組みは新しいものではないが、法的枠組形成は道半 ばである。実際に、循環移民とは何かについて、国際社会及びEUにおいても統一した定義

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がなくまた循環移民政策分野を先導するスウェーデン23にも公式な定義がない。国連の国 際労働機関(ILO)及び国際移民労働者関連の公文書には、循環移民に言及せずに全て一時 移住者(temporary migration)と表記され、循環移民とは、概ね一時的移動の現象として他 国への入国と母国への帰還を1回以上経験し往来を繰返す移民であり一度限りの移住や母 国に帰還する移民とは区別されている24  また、EUにおける循環移民とは25、EU法上に定義がなくEU加盟国間で異なるが、 2007年に欧州委員会が示した定義によれば、幾らか法的な要素を伴う方法での2国間の往 来によって管理された合法移民であるとし、第三国国民の循環移民には2つの類型がある とする。類型の1つは、(1)EUに定住する第三国国民であり、EUに居住しながら事業や医 師等専門職に従事する活動の傍ら出身国等第三国に携わり又貢献し得る第三国国民であ る。もう一つの類型は、(2)第三国に居住する第三国国民であり、EU加盟国に滞在後は第 三国に居住及び活動等に復職しなければならないことを条件にEU加盟国には仕事、学業、 研修、或いはこれらの組合せの目的で一時滞在する者であり、そうした(一時滞在の)機会 を創出する型である。(2)は範囲が広く、例えば、季節労働者や上述の組合せとして学業後 に実習生として専門職の経験を積む場合、研究プロジェクトの遂行、知的交流、その他に 文化、市民活動、教育と青年領域の活動(例:研修、セミナー、イベント、学習訪問)への参加、 また、EU諸国にて一般的に関心のある目的を遂行するために無報酬で奉仕する第三国国 民であるとする。よって、対象は、労働者に限定されず「仕事又は学業」を主な目的として 二ヶ国以上の間を一時的に循環する人の移動である。  なお、循環を促進するEUの法的枠組として、長期滞在者と学業、交換学生、無報酬の研 修又は奉仕活動、そして、研究者の受入に関する指令があり26、さらに、季節労働者と研究 者、留学生、研修生、ボランティア、計画又は教育プロジェクトの交換学生、家事手伝いに 関する指令が発効又は更新されている27。こうして上述の類型に関する受入手続の共通化 が近年徐々に進んでいる。また、施策として、例えば、循環を促進する誘因となるように受 入手続の簡素化が図られているが、他方で、EUは、雇用契約等終了後に母国への帰還を確 実に実行するために出身国との再入国協定締結や合法移民の円滑な管理、そして、帰還指 令28による確実な帰還実施と言った不法移民撲滅にも積極的に取組んでいる29。こうした EUの取組みは、循環移民が合法移民の一形態であり帰還を前提としている点に留意する。  次に、スウェーデンの循環移民について、スウェーデンは厳格な定義付けは必要ないと して以下のように包括的に捉えている30。循環移民とは、他国への移動と母国への帰還を 含む移民の移動であり、回数や理由、居住許可の根拠及びスウェーデンを離れ又は戻る理 由に関わらず「すべての移民」を対象とし、教育又は職業レベルに基づき特に選別したグ ループ種分けをせず、長短期間の移民労働者、季節労働者、国際的企業内の移動、留学生を 含むとする。また、スウェーデンにはEUのような国家による循環又は一時的移民を管理 運営する国家間の移民労働者の交換プログラムや二国間協定はない。よって、滞在期間に は具体的な制限はないが、12ヵ月以上滞在する意向があることとする。また、一時訪問者

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は、後に移民となる可能性もあるが移民とは見做されない。これは、スウェーデンの人口 統計上滞在期間が12ヵ月以上の外国人は一時移民として登録されるが、一時来訪者の多く は滞在1年未満であるため登録されず、よって統計には含まれないためである。もっとも、 スウェーデンは、すべての移民労働者は当初は一時的であり、移民となる決断は幾分個人 の一時の人生設計であり自然現象であると捉え、よって、循環移民政策は移民の管理型で はなく個人を主体とする。こうした循環移民数は、2007年~ 2016年は625,470人、2006年 以前までの合計は813,712人31、また、国籍の内訳は、1990年代までは北欧諸国が際立って 多かったが2000年代には減り代わってEU加盟国、インド、中国が増加している32   (2)外国人法上の労働許可基準  次に、第三国国民に労働を許可する基準について、スウェーデンにおいては概して以下 の通りEU法と国内の外国人法の2種類あるが、ここでは主に該当者の多い国内の外国人法 を取上げる。    (1)EU法(ブルーカード指令)33に基づく労働許可  (2)外国人法に基づく労働許可 (以下対象者)    1) 一般外国人労働者    2) 国際的保護の地位付与者    3) 難民申請が却下された者  上述(1)のEU法に基づく労働許可は、難民、研究者、EU職員、長期滞在許可のある者、 季節労働者等を対象外とし、給料が構成国における同職のそれ以上でありかつ同国平均年 収の1.5倍以上であること、高等教育の学位又は5年間の職業相当の経験を有することを条 件とする34。よって、ハードルが高く、スウェーデンにおいては適用可能な第三国民は少な い35  他方、(2)のスウェーデンの外国人法に基づく場合36には、最低賃金の規定がない他条 件は(1)に比べかなり緩く移民の多くが該当する。スウェーデンにおける外国人労働者は、 EU加盟国としてEU法の労働規制に従うが、給与については、法定最低賃金規定がなく、 代りに雇用主と組合の交渉による合意(労働協約)に基づくこととし職業による給与レベ ルや労働条件の詳細については関連する組合に問合わせ37労働協約や慣行に従う。この点 は、雇用主による濫用が危惧され、実際に、2013年5月のスウェーデン労働組合会議報告 書38によれば、低賃金払いや労働条件の悪さ、さらに国内労働力不足ではない分野での外 国人の採用と言った雇用主による制度の濫用が見られた39。こうした批判に対し、ある工 業分野には外国人労働者の採用に厳格な要件を課し、また、2012年よりクリーニング・ホ テル・レストランのサービス業、建設、商業、農業、林業、そして自動車修理部門の仕事と 新規に外国人を雇入れる企業には実際に雇用期間中に正規給料を支払うことの証明義務を

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課し、2014年にはそれら新規の企業及び雇用主の業務遂行を監視することとした(外国人 法改正)40。他方、外国人労働者を頻繁に採用しかつ信頼のおける雇用主には労働許可及び 居住許可申請がより簡易かつ迅速に処理される手続(fast-tracking procedures)が新たに導 入されている41。前述のような厳格な要件を課した結果、制度の迂回による過剰採用分野 の労働許可数が減り改善された所もあるが、今後も雇用主の制度の乱用、搾取、不当な賃 金の問題を無くす努力が必要であり主な政治課題であると指摘されており42、さらに改善 が必要である。また、労働条件、給料、低賃金競争の問題には、ルーマニア人の物乞いでさ えも稼げる仕事と見做し得るのかと言った根本的な問題も見られる43  次に、スウェーデンの外国人法(2005:716改正法)上の労働許可要件について、第三国国 民の場合には、従来、査証(外国人法2条3項)と居住許可又は永住権許可を有する場合を 除き原則として「入国前に」労働許可が必要である(外国人法2条7項、6条4項)。こうし た外国人の労働許可要件は、前述の雇用主による雇用手続を含み整理すると次の通りであ る。   1. スウェーデン国内及びEU又は/EEA域内にて最低10日間以上人員募集すること 2. 雇用条件はスウェーデン国内の労働協約若しくは各職業又は産業における慣習と少 なくとも同等レベルであること 3. 本人が自ら生計を立てられること(外国人法6条2項)(給料で生計を立てられ社会保 障法(Slcialtjänstlagen 2001:453)に基づく財政支援を受けずに済むこと) 4. 最低月給は税込みSEK13,000(約156,000円)以上であること 5. 関係労働組合に対し当該外国人雇用の申出についての意見を述べる機会を与えること  上述の要件は、不正な雇用主が国民に適用する雇用条件よりも劣る条件で外国人を雇う ことを助長しないようにするためには合理的な根拠であるとの政府案に基づき制定され、 実際に要件に満たない場合には労働許可は取下げとなる。また、労働許可は、当初2年間は 特定の雇用主及び特定の職種に固定され、2年後には特定の職種にのみに固定される(外 国人法6条2項)。労働許可期間は、外国人法上や政策上に予め定めておらず雇用契約終了 までとなり、延長する場合には雇用の延長のための労働許可及び居住許可を申請する必要 がある。   2.難民の就労に関する法政策  難民の就労は、前述の通り、スウェーデンはすべての外国人に労働の権利を認め雇用促 進を目標としていることから庇護申請中、国際的保護の地位認定後、庇護申請却下後のす べての段階で認められている。外国人労働者の政策において、難民と移民労働者は、いず れも本人の生活や自立を支えられること又労働力としての国内の労働不足の補充や将来の

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深刻な人口減少と高齢化による持続可能な社会の担い手となり得る点では同じであり、ス ウェーデン社会への定住・社会統合政策は基本的に変わらない。他方、両者の違いは、受入 れに関し、移民労働者は主に受入国及び雇用主の利益や必要性に基づき選別されるが、難 民の場合には、難民条約上迫害の恐れがあり出身国又は常居所地国から強制移動させられ 国際的保護を必要とする者を他国が保護し庇護することであり労働力や社会適合能力によ る選別ではない。また、難民の受入れは、人道的支援の負担分担として国際難民法及びEU 法上難民の受入を確固たる義務とすることには疑問があるにせよ労働の権利を行使できる ようにすることは締約国の義務である(難民条約第3章、EU庇護要件指令(2011/95/EU、 第26条)。よって、難民の就労については、前述のような一般外国人労働者に対する労働許 可要件はなく、庇護申請手続段階に応じて労働が許可される。  まず、庇護申請手続中の労働について、庇護申請者ができる限り経済的自立ができるこ とを目的として通常の労働許可要件である外国人法令(Aliens Ordinance)44第2章4項の例 外として個々に労働許可を申請する必要はない。例外となる要件とは45、①正規の身元証 書又はその他身元証明に代るものを提出すること、②庇護申請はスウェーデン国内で審査 されること、③確固たる庇護申請理由(迫害の十分な根拠)があることである(外国人法第 4章)。実際に労働するためには証書(AT=UND)が必要であり、証書は、庇護申請者に配布 される庇護申請者カード(LMA-kort)に記され、居住許可が付与されるまで又は退去する まで有効である。  さらに、庇護申請が却下された場合、2008年の外国人法(2005:716)改正より労働許可 及び労働許可延期申請が認められ(外国人法5条15項a)、庇護申請から労働許可申請への 切替え(Change of queues/track)が可能である。同労働許可の要件は46、①庇護申請却下を 受けて2週間以内に申請すること、②有効な旅券を所持すること、③庇護申請者である間 に上述の証書(AT=UND)を有していたこと、④庇護申請手続中に少なくとも4ヵ月間以上 雇用されていたこと、⑤④と同じ雇用主よりさらに少なくとも12ヵ月間雇用の申出がある こと、⑥雇用条件はスウェーデンの労働協約又は産業界なし職業上の慣習と少なくとも同 等レベルであること、⑦雇用条件には給料に加え、医療保険、生命保険、労災、厚生年金を 含み且つ直近4ヵ月間の雇用に適合していること、また、⑧時間給労働の場合は、当該職業 の労働協約上の給料又は少なくとも手取り月給SEK13,000であること(前4ヵ月間に適用) とする。こうした切替え手続により以前のように労働許可を申請するために帰国する必要 はなくなった。  次に、難民への厳密には国際的保護の地位(条約難民の地位、補完的保護の地位)認定者 の就労法政策について、国際的保護の地位認定により居住権許可を取得した時点で労働も 許可されるが、実際には直ぐに就労できる場合は少なく、難民の雇用率は出身国により異 なるが相対的に低く半数は6~ 7年かかり10年後でも60%に留まる47。こうした現状を改 善すべく、2010年より難民へ支援は労働市場統合を柱とした新たな政策として難民の早 期就労に積極的に取組んでいる。

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 まず、2010年当初は、難民の就労を2倍に引上げることを目標とし難民の就労関連の法 改正を行い積極的に取組んだが、実際には財政負担が25%上昇しまた雇用率は5%上昇し たもののその後はさほど大きな効果や変化は見られない。もっとも主な原因は、後述する 難民の労働市場統合プログラムの参加者の急増にある。実際に、それら参加者数は2010年 は16,000人であったが2015年後半~ 2016年にはシリア難民等の大量流入により89,000人 から9万人と大幅に増加したため、現在は、未だ多くの難民が労働市場統合プログラム受 講中ないし修了直後であることから評価は早計である。他方、大量難民の流入を受けて従 来の庇護制度では対応できず、住居不足と庇護審査手続の遅れ、入管職員、ソーシャルワー カー、通訳などの人出不足により従来のように速やかに住居を提供し又庇護審査を実施す ることが困難になり、結果、庇護制度及び統合政策領域の双方に混乱と歪みが生じ、庇護 申請者の新規流入抑止のための庇護政策として国境管理の取締り強化と一時保護が導入さ れた。一時保護により、永住する見込みがない一時居住者に対するスウェーデン社会への 統合に投資することへの敬遠や企業がそうした者の採用を躊躇しているのではないかとの 懸念が生じた48。よって、庇護縮小の法政策が難民の労働市場を消極的な姿勢に導いたと 解することも否定できない。  一時保護とは、外国人法(2005:716)の庇護規定の適用を停止し2016年7月20日から3年 間の期限付きで居住権を制限すると言う一時制限法(2016:752)49に従い、国際的保護の地 位付与者の居住期間を50難民は3年間、補完的保護は13ヵ月に短縮したものである。よって、 保護は従来の恒久ではなく一時的なものとなっている。なお、同保護期間はEU基準(庇護 要件指令(Directive 2011/95/EU, 第24条)の最低限年数には一致している。保護期間後にも 保護が必要な場合には、従来、居住許可は、3年後に自動更新されていたが、現行では保護 の必要性を審査しさらに保護が必要であると判断された場合には延期される。また、永住 権許可の要件は、原則として自身で生計を立てられること、25歳以下の者は高卒相当の教 育修了者であること、ただし、例外として特別な場合や子どもの健康状態に照らし子ども 自身とその家族にも付与される可能性がある。なお、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) 及びEUとの合意による分担難民にはこれまで通り永住権が付与される。  次に、家族の帯同について、移民の家族は、その居住許可申請数が庇護申請数に比べ大幅 に多く最多の集団であり(家族の居住権許可申請数54,542人、庇護申請者数25,666人(2017 年)、また、労働許可申請も増加している(2014年32,546人→2017年38,395人)ことから、 家族の受入は大きな問題となっている51。難民の場合には、家族統合の権利があり家族の範 囲は21歳以上の配偶者と同居する両親及び18歳未満の子どもであるが、補完的保護の場合 は、家族統合の権利はなく例外として関係条約に抵触する場合には親族の受入れを認める 場合がある。これは、一般外国人の生計維持要件の例外となる場合であり、一般の要件とは、 安定した仕事を得て十分な収入があり家族を支えられること、家族用に十分な住居を有す ることであるが、国際的保護の地位付与者については、地位付与後3ヵ月以内に親族が居住 権許可を申請した場合には一般原則から免除される52。実際に生計維持の要件を満たす場

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合は非常に少なく非人道的な法政策であるとして多くの支援団体より批判されてきた53 こうした厳しい状況のなかで2018年11月の移民に関する最高裁判所判決54において、一時 制限法上の補完的保護付与者を家族統合の権利から排除することは、家族の利益(家族生 活の尊重)と難民の到着を減らすと言う国益と比較衡量すると(国家による)相応な干渉 にはあたらず、さらなる家族統合の遅延は子どもの最善の利益に反することを強調して判 示された。よって、今後は同判決の影響を受けて補完的保護の場合の家族の統合要件が緩 やかになるのではないかと期待される。なお、社会保障については、従来通り、少なくとも 12ヵ月間の滞在予定者(=人口統計に登録した者)は、居住者として社会保障制度上の保 障が受けられる55  一時制限法はその適用期日を3年間(2019年7月19日予定)としたが、現状では、国内の 移民排斥の世論とそうした政治志向の波を受けて政権交代の如何に関わらず期日後も存続 する可能性が高く、また、移民・難民の統合政策については、現行の民主党内でも議論が非 常に少ない56。よって、当面は庇護縮小の法政策が続く模様であるが、難民の労働市場統合 は推進すると見られ、就労支援が早期就労に繋がるような内容であるのか難民の労働市場 統合が益々重要である。   3.難民の労働市場統合プログラム (1)移民・難民の統合プログラム  スウェーデンにおける移民・難民の統合は、スウェーデン人口の16%が外国生まれ(2016 年)と多いことからも重要な課題である。移民・難民の統合政策(以下、統合政策)は、労働、 教育、医療保健の3つを柱としてそれぞれに分けて取組み、2010年以降は就労支援を強化 した統合政策が新たに実施されている。そうした新たな統合政策の評価は、経済開発機構 (OECD)の評価指標(British Migration Policy Index: MIPEX、労働市場移動性、教育、政治 参加、家族の統合、国籍取得、医療、長期滞在、反差別主義)において、加盟国の最上位に あり(2014年)、特に、労働市場の面と移民の権利取得及び権利保障の評価が高い57。他方、 スウェーデン生れと外国生まれの失業率の差が未だ大きく、また、上述の評価指標は実際 にどのように上手く社会に統合しているのかを計っていないと言う批判があり58、統合プ ログラムが仕事を得て安定した定住に繋がっているのかが課題である。  まず、現行の2年間の難民の労働市場統合プログラムの導入について、その内容は、従 来の新規移民の社会への導入プログラムを進化させたものである。従来の統合プログラム は、1980年半ばに新規移民のスウェーデン社会へ定着・統合促進のための導入として策 定され、当時は地方自治体が難民の住居と仕事探しを支援していたが、1997年には統合 政策を移民政策と称し、移民の統合は移民(自身)とスウェーデン社会(受入国)の双方 が定住を支えるような政策の下で地方自治体が2つのプログラム:スウェーデン語学習と スウェーデン社会のルール及び市民としての権利義務に関する市民オリエンテーション

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(civic orientation)を12ヵ月以上の居住者に対し提供されていた。しかし、自治体により内 容に違いが見られた。59  その後、2010年に難民の就労を柱とした2年間の難民の労働市場統合プログラムに刷新 され、同プログラムは政府の管理責任の下雇用庁(Arbetsförmedlingen)がプログラム運営 及び修了後の就労支援を主導し、難民の居住地の地方自治体とともに積極的に取組んでい る60。なお、国際的保護の地位認定者には同プログラムへの参加が義務付けられ、支援は参 加途中又は修了後に就職又は大人向けの教育(adult education)に就学する時点で終了とな る。なお、実際の就職は、難民の労働市場統合プログラム修了後となる場合が多く、同プロ グラム参加中に支給される生活給付金(一人につき1ヵ月€710)の受取が同プログラムへ の参加を義務とすること又参加中に収入を得ていても同給付金は支給されるためではない かとも見られている。ただし、係る2年間の統合プログラムへの参加が居住権許可を得る ための条件とはならない。61 (2)難民への就労支援  次に、難民への就労支援について、まず、個々に社会との接点を見出すマッピングを行 いながら個人に要求されるものは何かを明確すること、そして、職歴のある者には人手不 足の職種をまた仕事を探すために技能が必要と思われる者には教育又は職業訓練を行い、 就労に導く手法が取られている。さらに提供する仕事は、労働不足の分野での職業訓練や そうした経験が既にある者に対応すべく2016年より雇用庁及び雇用主と組合との間で合 意した30の職業に繋げ(fast track)、また、2017年には他国で取得した技能の証明書がな い場合の対応として研修や技能を検証するための特別プログラムが新設されている62  難民の労働市場統合プログラムについて63、従来の語学学習及び社会適合研修に職業訓 練等の労働支援を加えたものであり、計3つのプログラムとして現在10の自治体によって 運営されている。従来の2つのプログラムはクラス単位の受講式(後者60時間)であり授 業参加が義務付けられているが、労働には労働市場研修が週25時間とさらに職業に関する 語学研修が15時間提供されている。職業訓練の授業には語学教師が参加し専門用語やコ ミュニケーション力を指導し、職業訓練は職業(例:溶接工、バス運転手、個人介護、園芸 や清掃業)により20~ 60週間実施される。前述の職業訓練を修了すると職業及び訓練を 修得した公式の証書が発行され、証書を得て仕事を探す難民には公的職業安定所(日本の ハローワーク)が雇用主に連絡を取り就職を斡旋をする。そうした就職支援は、居住地域 の職業安定所にもよるが、カウンセリング、職探し、本人の専門技能証明、職業訓練、イン ターンシップ、そして、本人の健康や社会との接点を支えるための補助的な雇用及び活動 を含む。なお、一般的な就活や職の斡旋は、現実には雇用庁ではなく各職業や産業分野の ネットワークが主な手段であり、難民他移民にはそうした鍵となる雇用への道がないこと からマッチングも容易ではないと見られる64  さらに、上述の難民の労働市場統合プログラム修了後の就労支援について65、本来は、同

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プログラム修了後は仕事又は正規の教育に進むことが期待されているが実際には就職又は 就学率は3分の1と低く(2017年)、多くは一般失業者と同じ条件で公的職業安定所より支 援を受けている。具体的な就労支援措置について、もっとも一般的な支援措置は、補助金 付きの仕事であり(給与の80%政府支給)、新規到着した難民はそうした補助金付きの初 歩的な仕事を2年間できるが(語学研修受講中は仕事を休む)、実際には正規雇用にはつな がらず別の補助的仕事の梯子となっている。他方、新規移民と長期間失業者には新規の仕 事への補助金があり(給与の50%政府支給)、参加者の70%を移民が占め正規雇用への機 会がかなり多いが、欠点は既存の正規雇用者を締め出すような場合が見受けられることで ある。また、職業訓練として、スウェーデンに居住3年以下の失業中の難民に対しては、労 働市場研修プログラムへの参加が可能であり、総じて語学レベルが中上級の難民は職業訓 練に参加し又初級及び低レベルの場合には園芸や清掃業の職業訓練(新設)に参加してい る66  上述の就労支援の課題として67、職業訓練及び仕事の機会は都市部に限定され、そうし た訓練を受けるために200㎞以上も離れた場所から通う難民もいる。場所の問題は、庇護 申請者及び難民の居住地に関連し、自主的に選択した再定住先として都市がより好まれる こと、また、自治体が政府より振分けられた難民及び庇護申請者の受入に加え自主的にさ らに難民を受入れていることが影響している。現状では住居不足や支援人員不足により全 てを満たすことは難しいが、移動の自由や職業の自由に対する制限にあたるのか懸念され る。  以上のように就労支援は、職業訓練においては一辺倒ではなくまた雇用に直結する具体 的な支援措置も多様でありかつ増えている。2018年度は、職業紹介及び指導を強化し技能 に基づくマッチングや求人を妨げる問題の改善、新規到着した移民(特に女性)の雇用や 教育に関する導入プログラム中退者の著しい増加への対応、就業登録数の増加、就職又は 進学可能な統合プログラムの保証、そして、関連するすべての支援機関・団体・個人間の協 力や連携を密接に又強化することを目標に取組んでいる68 (3)教育支援  難民の就労状況は69約3人に1人と低くとりわけ女性の就業率が低い。その原因は、雇用 主側に移民と分かる氏名や出身国・地域への偏見や差別があるとも見られているが、概し て、難民の多くが若く又スウェーデンの多くの仕事は高卒程度の教育が要求されるなかで 教育歴は9年以下且つ非公式であり教育レベルが低いことにある。女性についてはさらに、 スウェーデン人女性の雇用率がOECD諸国と比べても格段に高く70、難民の女性は難民の 労働市場統合プログラム参加途中で辞める者が多く又職業訓練を受けるよりも仲間同士の 社交や社会的活動を好む傾向があり71、働く意欲も低いためと考えられる。教育不足の問 題を取除くために難民には労働市場統合プログラム修了後にも大人用の正規教育や自治 体等が提供する各種研修を受ける機会があり、通学期間及び成績については制限や基準を

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設けておらず本人次第で通学し続けることが可能であり、通学中はスウェーデン人が失業 中に通学する場合と同様に生活費の支給が受けられる72。こうした手厚い社会保障が雇用 率に還元するのか、スウェーデンは高度な知的社会であり女性の雇用率が高いことからス ウェーデン人に追いつくまでとは言わずとも73還元までは相当の時間を要することは想像 に難くない。実際に、他の主要庇護国(ドイツ、英国、オランダ、フランス)との雇用比較 によれば、スウェーデンは、就労のスタートが遅いが10年後は他国を抜いて雇用率が最も 高い。同データからは難民の就学率が不明なため教育効果を正確に判断できずまたスター トアップの仕事を提供する前段階の統計のため別途調査が必要であるが、相当に時間のか かる教育による効果も少なからず裏付けている可能性があるのではないだろうか。 4.庇護請求者の就労  庇護申請中の就労について74、庇護申請者は、前述のAT-UNDを取得した場合には自ら 居住地にある公的職業安定所に出向き就活を始め、そこではまず個人の能力及び希望と募 集条件との一致を探し出すためのマッピングが行われる。公的職業安定所には、自立に向 けた仕事又は教育を速やかに得られることを目的とした導入プログラムがあり(映像で紹 介)75、24~ 64歳を対象に(居住許可を得た難民とその家族も参加可能)マッチする職業 や各産業界のネットワークに自己の履歴書を掲載し自己アピールができる。また、必要な 技能修得のための職業訓練、研修、その他教育、社会活動、社会ネットワークの紹介が受け られる 76。なお、庇護申請者は上述の正規の難民の労働市場統合プログラムには参加でき ないが、庇護申請者の受入収容施設にて主に政府資金を得たボランティアにより語学と社 会適合に関する学習、そして、就労に関する手続等情報が提供されている。  こうして庇護申請中に仕事を得た場合には、その後に庇護申請が却下された場合であっ ても前述の雇用条件(職歴4ヵ月以上+新雇用契約12ヵ月以上)を満たす限りは、労働許 可と一時居住許可を得て働き続けることができる。庇護申請却下後の労働許可数は、2009 年425件、2010年565件、その後は2016年まで略300件未満、2017年955件~ 2018年は急 増したが77、増加傾向が続く見込みはないと見られている。最近の一例として、2017年5 月に庇護申請が却下されたアルバニア出身の4人家族(内スウェーデン生れ1人)が支援団 体や弁護士より申請の切替え(change track) 手続を知り、元獣医の夫が庭師の仕事を得て いたことから2年間の労働許可と居住権許可を取得した例がある78。語学の未習得に加え 労働市場ニーズとのミスマッチ等により、庇護申請段階中の短期間での就職は容易ではな いようである。しかし、庇護申請中及び庇護申請却下後においても、合法就労の機会を得 た者が少なからずいること、また、雇用条件は一般外国人労働者と変わらない点に留意す る。

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おわりに  スウェーデンにおける難民の就労は、すべての外国人に労働の門戸が開かれたことから 庇護申請段階から申請却下後にも就労の機会があり、技能レベルを問わず広範囲な職種を 射程としたことで従来よりも労働の機会がある。しかし、現実には、労働者不足の分野は 単純労働からIT関連まで幅広くあるものの市場労働統合プログラムや教育などの多くは 就労の機会に直ぐには結び付いていない。ただし、今後、大量難民流入時の庇護制度の混 乱が収まり多くのシリア難民が所定の難民の労働市場統合プログラムを修了した後には、 現在始まったばかりの技能認定や企業等に新規に仕事を創る等のスタートアップの新たな 施策が成果を上げる可能性がある。  また、外国人労働者の受入は、雇用主の外国人労働者の必要性に基づき決定されている ことから、企業や個人の移民に対する受入姿勢が難民の就労においても重要な鍵となる。 スウェーデンは移民国家ではないが、外国人労働者の受入には積極的であり、人口の65% は移民の受入に肯定的である。変化の速いグローバル社会においては、違いを困難と見る よりも多様性に着目し欧州以外の又従来見過ごされてきた人も取入れて新しいことに挑戦 し生産性を上げ、延いては社会に活力をもたらすと言う視点を持つ企業などの私人や市民 社会が難民の市場統合についてもさらに牽引するのではないだろうか。  最後に、難民が循環移民となり得るのかについて、スウェーデンの循環移民政策は、EU のような政府間協定等による外国人労働者の受入や帰還と言った管理型ではなく、自発的 移民を主とし又促進すると言う個人主体型であり期間も短期に限定していないことから難 民も労働及び帰還状況によっては論外ではない。また、移民労働者に対しスウェーデンは、 移民と開発の課題に取組むなかでスウェーデンと出身国を繋ぐような働き方や交流を取り 入れて双方の国を繋いでいる。こうした点を踏まえ、難民への一時保護の導入と難民の労 働市場統合促進との関係を考えると、単なる庇護縮小に終わらず、難民も労働力として経 済及び労働市場の活性化のために又難民自身のための教育及び技能取得の機会となるよう な労働市場統合プログラム及び積極的な就労支援によって、例え一時保護であっても、後 にスウェーデン社会と出身国社会双方の交流や発展に結び付くような(元)難民・庇護申 請者の往来の可能性がある。    ただし、難民の循環移民との連動には、労働市場統合の進展のみならず出身国への帰還 が可能であることが必要であるが、従来、そうした帰還は想定外であり、難民は庇護国で の永住を原則とし保護の受益者として循環移民の対象外であった。よって、スウェーデン の試みは挑戦的である。他方、一時保護が常態化される可能性がある現在、国際的保護は 帰還を念頭に置いた保護であり、ノン・ルフールマン原則遵守の下で自発的帰還が実施さ れ易い状況にある。難民が循環移民となることは、従来の庇護とは対極にある考え方であ るが、「移民と開発」の施策や、一時保護の下でも積極的な難民の労働市場統合が庇護国で あるスウェーデンでの就労を促進するのみならず出身国においても自立可能な労働を生み

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双方の国及び難民自身の利益となるならば、帰還可能な状況であることを条件に、庇護国 での永住、定住に加え、将来、難民が循環移民となる選択肢もあるかもしれない。

〔付記〕

 本稿は、JSPS科研費基盤研究(B)16KT0090の「サーキュラー・マイグレーションの研 究―EUの政策と帰還後の移民の調査・分析」(代表:中坂恵美子)の助成を受けたもので ある。また、短期間の調査に辺りMichael Williams氏(Migration consultant at the Church of Sweden head office Uppsala, Country expert on AIDA project run by ECRE, Vice- Chair of the Swedish Network of Refugee Support Groups)に資料収集の協力者として参加頂いた。

1 本稿では、migrant workerを移民労働者と訳し、国際的な移動労働をしている外国人労働者のこ とを指す(小西國友『国際労働法』信山社、2012年、70頁)。資料により外国人労働者、移住労働 者と称するが、同じ意味である。

2 Bernd Parusel, ʻCircular Migration and the need to define and measure it’, IOM Migration Policy Practice, Vol. VII, No.2 (April-September 2017), pp.38-41.

3 外国人法上、欧州連合(EU)加盟国、欧州経済領域(EEZ)加盟国又はスイス以外の国民及び市民 を言う(Utlänningslang (2005:716), issued on 29.9.2005, entered into force on 31.3.2006, Section 3c). 4 Nya regler för arbetskraftsinvandring (政府法案:Prop.2007/08:147).

5 Utlänningslang (2005:716), supra note (3).

6 Lag om ändring i utlänningslagen (2008:884) : SFS 2008:884, adopted 13.11.2008 (英訳:Act amending the Aliens Act (2005:716), SFS2009:1542, 30.12.2009), 改正条文:第5章〔居住権許可〕5条、10条、

18条、23条、第6章2条、第7章〔居住権許可取下げ〕3条は、第5章〔短期居住権許可)15条a項、 第6章〔労働許可〕第2条a項、第12章〔退去命令の履行〕第12条a項を新設し一部改正した(2008

年12月15日公布).

7 Lag om estableringsinsatser för vissa nyanlända invandrare (2010:197).

8 井樋三枝子「スウェーデンの外国人政策と立法動向」『外国人の立法』246号(2010年12月)、

pp.145-146.

9 雇用率:外国出生68%(EU66%), スウェーデン出生85%(EU72%), Eurostat 2016 and Facts about migration, integration and crime in Sweden (Government Offices of Sweden, 23.2.2017), https://www. government.se/articles/2017/02/facts-about-migration-and-crime-in-sweden/.

10 EUの庇護要件指令(DIRECTIVE 2011/95/EU OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 13 December 2011 on standards for the qualification of third-country nationals or stateless persons as beneficiaries of international protection, for a uniform status for refugees or for persons eligible for subsidiary protection, and for the content of the protection granted (recast))上の定義に従い、 難民(refugees)とは1951年の難民の地位に関する条約1条A項に該当する条約難民のことであり、 補完的保護(subsidiary protection)とは、主に欧州人権条約3条とEU基本権憲章上の生命・身体へ の重大な危害がありノン・ルフ―ルマン原則を遵守し保護する者である(Act amending the Aliens Act (2005:716), supra note (3), Ch.4 sec.1 and 2)。

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11 北欧諸国の移民労働者は二国間合意又はスウェーデン企業間を通して集団移送され主に熟練労 働者が産業界、ホテルやレストランの支店に雇用され、就労先への登録、必要な許可、住居は入 国前に準備された(Pieter Bevenlander and Henrik Emilsson, The Worldʼs Most Open Country: Labour Migration to Sweden After the 2008 Law, Current Themes in IMER Research, No.15 (Malmö University, 2014), p.13).

12 Utlänningslang (2005:716), supra note (3), Ch.3a. European Parliament and Council Directive on the right of citizens of the Union and their family members to move and reside freely within the territory of the Member States (2004/38/EC, OJEU L158/77, 30.4.2004).

13 Bevenlander and Emilsson, supra note (11), pp.18-19., and Bernd Parusel ed., EMN Report from Sweden 2013:1 Attracting highly qualified and qualified third-country nationals to Sweden, Migrationsverket, 2013, pp.11-12.

14 Swedish Migration Agency, ʻStatistics on Residence permits granted 1980-2017’(Migrationsverket). EMN Report from Sweden 2013:1, ibid., p.30.

15 Slutbetänkande av Kommittén för cirkulär migration och utvekling, Cirkulärmigration och utveckling - förslag och framåtblick(SOU 2011:28).

16 Government Offices of Sweden (Regeringskansliet), Sweden’s Committee for Circular Migration and Development, Fact Sheet (9.2010), Ministry of Justice(Swedish Government Report SOU 2010:40, 28 May 2010).

17 当時は、輸出産業を主とし高度成長期に必要な労働力として他の北欧諸国(最多フィンランド)、 ドイツ、オーストリア、イタリア、ユーゴスラビア、ギリシャより年約3万人の外国人労働者を受 入れた(Bevenlander and Emilsson supra note (11), p.12-13)。

18 European Commission, Migration and Development: some concrete orientations (COM (2005) 390, 1.9.2005), p.7.

19 Communication on circular migration and mobility partnerships between the European Union and third countries, COM (2007) 248 final, Brussels, 16.5.2007, p.2. その他法政策の枠組を成す文書:COM

(2005) 390, ibid., ; Communication on Policy priorities in the fight against illegal immigration of third-nationals (COM (2006)402, 19.7.2006; Communication on "The Global Approach to Migration one year on: Towards a comprehensive European migration policies (COM (2006)73, 30.11.2006). EU共 通の移民政策における労働について、労働政策研究・機構『労働政策研究報告書』No.59(2006年),

第6章参照。

20 Piyashiri Wickramasekara, Circular Migration: A Triple Win or a Dead End, GURN (Global Union Research Network), ILO discussion paper No.15, (2011), 2.2.

21 IOM, ʻAfrican Union and Partners Commit to Enhancing Labour Mobility in Africa with USD 9 Million Swedish Grant’(12.7.2018): https://www.iom.int/news/iom-african-union-and-partners-commit-enhancing-labour-mobility-africa-usd-9-million-swedish.

22 SOU 2011:28, supra note (15), EMN Report from Sweden 2013:1, supra note (13), p.14. 23 OECD (2011): Recruiting Immigrant Workers-SWEDEN 2011, OECD publishing, p.11. 24 ILO discussion paper No.15, Circular Migration, supra note(20), p.9.

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26 Council Directive 2003/109/EC concerning the status of third-country nationals who are long-term residents (OJ L16/44, 23.1.2004); Council Directive 2004/114 on the admission of third country nationals for the purpose of studies, pupil exchanges, unremunerated training or voluntary services

(L375/12, 23.12.2004); Council Directive 2005/71/EC on the admission of researchers(L289/15, 3.11.2005).

27 Council Directive 2014/36/EU on the conditions of entry and stay of third-country nationals for the purpose of employment as seasonal workers (OJ L94/375, 28.3. 2014); Directive (EU)2016/801 on the conditions of entry and residence of third-country nationals for the purposes of research, studies, training, voluntary service, pupil exchange schemes or educational projects and au pairing (recast)(OJ L132/21, 21.5. 2016).

28 Council Directive 2008/115/EC on common standards and procedures in Member States for returning illegally staying third-country nationals (OJ L348/100, 24.12.2008). 指令はシェンゲン領域国を含む が英国とアイルランドを除くEU加盟国に適用される.

29 COM (2007) 248, supra note (19), p.1 and p.11-12.

30 SOU 2011:28, supra note (15), pp.29-31, EMN Report: Temporary and Circular Migration -Empirical Evidence, Current Policy Practice and Future Options in EU Member States, Sweden, (Migrationsverket, October 2010), 1.3 and The United Nations Economic Commission for Europe (ECE) report: Defining and Measuring Circular Migration, prepared for the Conference of European Statisticians held in Ottawa, 11-12 October (ECE/CES/BUR/2016/OCT/18/Add.1, 21.9.2016), paras.45-49.

31 SCB, Population statistics by level of education, type of migrant and sex (age 20-64, 31.12.2016), 9.5. 2018.

32 SOU 2011:28, supra note (15), p.30.

33 Council Directive 2009/50/EC of 25 May 2009 on the conditions of entry and residence of third-country nationals for the purposes of highly qualified employment, OJ EU, L155, Vol.52, 18 June 2009, pp.17-29.同指令は、EU加盟国において高度技能を有する第三国国民を対象とした「高資格雇用目的の 第三国国民の入国及び滞在の条件に関する2009年5月25日の閣僚理事会指令EU 2009/50/EC」通 称EUのブルーカード指令(2011年7月29日施行)であり、スウェーデンにおいて2013年8月1日 より外国人法を改正し適用されている。

34 EMN Report from Sweden 2013:1, supra note (13), p.12.

35 インタビュー(Associate Prof. Andreas Inghammar, Head of the Department of Business Law, Lund University, Lund, 29.8.2018).

36 Ibid.

37 Ibid., and also see the working guide: Working In Sweden by several different Swedish authorities: Arbetsförmedlingen, Arbetsmiljöverket, Försäkringskassan, Kommerskollegium, Migrationsverket, Skatteverket, Svenska Institutet, and Tillväxtverket), https://workinginsweden.se/work/ (accessed on 13.11.2018).

38 Landsorganisationen i Sverige (2013): Fusk och utnyttjande- om avregleringen av arbetskraftsinvandringen

(Maj 2013).

39 EMN Report from Sweden 2013:1, supra note (13), p.15. 40 Ibid.

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41 申請結果の通知は通常は約90日であるが、公認雇用主の場合は20日以内でありまた労働許可 数は2018年度1月~10月までの6,847件中約20%を占める(Swedish Migration Agency, ʻBecome a certified employer’ and ʻStatistics on working permits granted from January to October 2018’ (Migrationsverket)。

42 EMN Report from Sweden 2013:1, supra note (13), p.15 and p.30, and Bernd, ʻThe Immigration of Workers and Circular Migration’(Bundeszentrale für politische Bildung (bpb)(26.11.2015), http:// www.bpb.de/gesellschaft/migration/laenderprofile/215658/immigration-circular-migration).

43 本調査期間中にストックホルム市街地で見られた。解説はPatrick Joyce (researcher and licentiate of Social Science, PATIO Institute)へのインタビューによる(28.8.2018).

44 Aliens Ordinance (2006:97)(Utlänningsförordning, issued 23.2.2006) with amendments up to and including Swedish Code of Statutes 2008:982.

45 Migrationsverket, Protection and asylum in Sweden, Working, https://www.migrationsverket.se/English/ Private-individuals/Protection-and-asylum-in-Sweden/While-you-are-waiting-for-a-decision/Working. html (last accessed on 16.11.2018).

46 Migrationsverket: https://www.migrationsverket.se/English/Private-individuals/Working-in-Sweden/ Employed/If-you-are-in-Sweden/Asylum-seekers-who-have-a-job.html (last accessed on 16.11.2018). 47 OECD 2013 in the Monthly Policy Review (3.3.2018), Jessica Nilsson Williams, “Please come – but

then what? Sweden and the dilemma of integration Part 2: “A labour market for insiders?”, pp.3-4. 48 Suzan Frantzke, Watering Crisis, Forging Ahead: Swedish Asylum and Integration Policy, Migration

Policy Institute (MPI), June 2017, p.10. Hereinafter, MPI report on Swedish asylum and Integration Policy.

49 Lag (2016:752) om tillfälliga begränsningar av möjligheten att få uppehållstillstånd i Sverige (SFS 2016:752), issued 22.6.2016, in force on 20.7.2016, the latest revised text: SFS 2018:756 (in force on 1.7.2018).

50 Government Office of Sweden, ʻProposal to temporarily restrict the possibility of being granted a residence permit in Sweden’(Minister for Justice and Migration, 3.5.2016), https://www.government. se/press-releases/2016/05/proposal-to-temporarily-restrict-the-possibility-of-being-granted-a-residence-permit-in-sweden/.

51 Migrationsverket, Statistics from the Swedish Migration Agency, 23.5.2018 (EMN Focussed Study:2018,

Labour market integration of third-country nationals in EU Member States, Country Report Sweden, p.13, footnote 31). なお、2017度統計の家族の統合の受入数は、47,963人内難民の家族19,124人(条約 難民14,366人)である(Swedish Migration Agency Statistics, supra note (14))。

52 Minister for Justice and Migration, 28.4.2016 (https://www.government.se/press-releases/2016/04/ proposal-to-temporarily-restrict-the-possibility-of-being-granted-a-residence-permit-in-sweden/)なお、

2015年11月24日までに庇護申請した子ども又は子どものいる家族の居住許可決定には適用 さ れ な い(Karin Borevi, Familj, medborgarskap, migration in the Delmi Report 2018:5, Summary in English, Statens Offentliga Utredningar, Delegationen för Migrationsstudier Ju 2013:17)。

53 Sweden for the Asylum Information Database (AIDA), ʻSweden: Suspension of Family Reunification Breaches Family Unity and Best Interests of the Child’, 15.11.2018. 批 判 に つ い て の イ ン タ ビ ュ ー (Michael Williams, Migration consultant at the Church of Sweden head office Uppsala, Country expert on

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Network of Refugee Support Groups, 27.8.2018)及び以下参照. Rådgivningsbyrån (Refugee Advisory Centre), ʻMigrationsrättens framtid – en redogörelse för de juridiska riskerna med att förlänga den tillfälliga lagen’(8.10.2018), http://sweref.org/migrationsrattens-framtid-en-redogorelse-de-juridiska-riskerna-med-att-forlanga-den-tillfalliga-lagen/), Rödakorset (Swedish Red Cross), ʻTillfälliga utlänningslagen – här är konsekvenserna’(3.10.2018), https://www.redcross.se/vart-arbete/p/pa-flykt/tillfalliga-utlanningslagen-har-ar-konsekvenserna/.

54 MIG 2018:20 (Migrationsöverdomstolen, case no. UM540-18, 13.11.2018).

55 EMN Repot (2010), Temporary and Circular Migration, Sweden,supra note (30), p.6, footnote 7. 56 一時制限法の継続は筆者による現地調査、また、日経新聞2018年8月9日(スウェーデン議会選挙

(2018年9月9日)を目前にした政党の動向ニュース(極右・民主党の第1党への躍進)参照. 57 Migrant Integration Policy Index 2015, Sweden 2014 (http://www.mipex.eu/sweden).

58 Jessica Nilsson Williams, supra note (47), p.3.

59 Patrick Joyce, Inspiration for Integration. Labour market policies for refugees in five Northern European countries, PATIO Working Paper No.308 (3 April 2018), p.6.

60 藤岡純一「スウェーデンにおける移民政策の現状と課題」関西福祉大学社会福祉学部紀要15号の

2(2012年3月)、45頁~56頁.

61 インタビュー(Joyce, supra note (43)) and Joyce, supra note (59), PATIO Working Paper No.308, p.11. 62 Ibid, Joyce, PATIO Working Paper, No.308, p.11.

63 European Resettlement Network, ʻLabour Market Training Programme and Swedish for Immigrants - Swedish Ministry of Labour, Swedish for Immigrants and Gävleborg Country Administrative Board’ (30.10.2013),

https://www.resettlement.eu/good-practice/labour-market-training-programme-and-swedish-immigrants-swedish-ministry-labour.

64 インタビュー(Joyce, supra note (43)). EMN Focussed Study: 2018, supra note (51), p.16. 65 Joyce, supra note (59), PATIO Working Paper, pp.10-11.

66 European Resettlement Network, ʻLabour Market Training Programme and Swedish for Immigrants,

supra note’(63). 67 Ibid.

68 EMN Focussed Study:2018, supra note (51), p.17.

69 Joyce, supra note (59), PATIO Working Paper No.308, p.6 and Frantzk, supra note (48), MPI Report on

Swedish Asylum Integration Policy.

70 EMN Focussed Study:2018, supra note (51), p.15. 71 インタビュー(Joyce, supra note (43)).

72 インタビュー(Henrik Emilsson, senior lecturer and member of the Malmö Institute for Studies of Migration, Diversity, and Welfare (MIM) at the Malmö University, Malmö, 30.8.2018).

73 Eurostat(Indicators of Immigrant Integration, 2017)より、難民及びその家族の雇用率は、最初は低 いが5年後は男性40%女性20%、その後60%に上昇するが、スウェーデン人約80%に追いつくこ とはない。

74 Migrationsverket, While you are waiting for a decision - Working, https://www.migrationsverket.se/ English/Private-individuals/Protection-and-asylum-in-Sweden/While-you-are-waiting-for-a-decision/ Working.html (last accessed on 16.11.2018).

(20)

75 Arbetsförmedlingen, about the Introduction Programme, https://www.arbetsformedlingen.se/For- arbetssokande/Stod-och-service/Ny-i-Sverige/engelska/New-in-Sweden/For-you-in-the-introduction-programme/About-the-introduction-programme.html (last accessed on 16.11.2018).

76 Ibid.

77 Migrationsverket Statistics on Rejected asylum applicants granted work permits 2009 to 2017. 78 Williams, supra note (53), より資料提供(8.10.2018).

(21)

参照

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